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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】RFIDタグ
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20220330BHJP
   G06K 19/02 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
G06K19/077 224
G06K19/077 144
G06K19/077 296
G06K19/02 070
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020533958
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2018028757
(87)【国際公開番号】W WO2020026364
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】594127499
【氏名又は名称】マイティキューブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】竹井 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正志
【審査官】甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0278671(US,A1)
【文献】国際公開第2017/135331(WO,A1)
【文献】特開2013-089022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00-19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
該基材に設けられ、導電性材料からなるブーストアンテナと、
前記基材において前記ブーストアンテナに対応する所定位置に取り付けられる無線通信用のチップモジュールと、
前記基材上において前記ブーストアンテナ及び前記チップモジュールを覆うように取り付けられ、熱溶着性を有する熱溶着シートと、を備え、
該熱溶着シートによって繊維品に対し熱溶着することが可能なRFIDタグであって、
前記熱溶着シートは、
前記基材の面のうち、前記チップモジュールが取り付けられた部分及び/または周辺部分において、前記基材に対し取り付けられた状態で設けられる取り付け領域と、
該取り付け領域とは異なる部分であって、前記基材に対し取り付けられていない状態で設けられる非取り付け領域と、を有することを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記取り付け領域は、前記基材に対し前記熱溶着シートの一部が熱溶着されて取り付けられている熱溶着領域であって、
前記非取り付け領域は、前記熱溶着領域とは異なる部分であって、前記熱溶着シートが熱溶着されていない非熱溶着領域であることを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記非取り付け領域は、複数設けられ、前記取り付け領域を間に挟むように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のRFIDタグ。
【請求項4】
前記取り付け領域は、前記基材の長さ方向における中央部分に設けられ、
前記非取り付け領域は、前記基材の長さ方向における両側部分に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のRFIDタグ。
【請求項5】
前記基材は、伸縮性を有する絶縁シートからなり、
前記ブーストアンテナは、伸縮性を有する導電性インクからなり、前記基材上に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のRFIDタグ。
【請求項6】
前記基材は、折り畳まれた状態で構成され、
前記熱溶着シートは、
折り畳まれた前記基材の内部に前記ブーストアンテナ及び前記チップモジュールとともに設けられる第1熱溶着シートと、
前記基材上に取り付けられ、繊維品に対し熱溶着することが可能な第2熱溶着シートと、を備え、
前記第1熱溶着シート及び前記第2熱溶着シートは、それぞれ前記取り付け領域と、前記非取り付け領域と、を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のRFIDタグ。
【請求項7】
基材と、
該基材上に取り付けられ、熱溶着性を有する熱溶着シートと、
該熱溶着シートに設けられ、導電性材料からなるブーストアンテナと、
前記基材と前記熱溶着シートの間に挟まれた状態で、前記熱溶着シートにおいて前記ブーストアンテナに対応する所定位置に取り付けられる無線通信用のチップモジュールと、を備え、
前記熱溶着シートによって繊維品に対し熱溶着することが可能なRFIDタグであって、
前記熱溶着シートは、
前記基材の面のうち、前記チップモジュールが取り付けられた部分及び/または周辺部分において、前記基材に対し取り付けられた状態で設けられる取り付け領域と、
該取り付け領域とは異なる部分であって、前記基材に対し取り付けられていない状態で設けられる非取り付け領域と、を有することを特徴とするRFIDタグ。
【請求項8】
前記取り付け領域は、前記基材に対し前記熱溶着シートの一部が熱溶着された熱溶着領域であって、
前記非取り付け領域は、前記熱溶着領域とは異なる部分であって、前記熱溶着シートが熱溶着されていない非熱溶着領域であることを特徴とする請求項7に記載のRFIDタグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグに係り、特に、繊維品(繊維製品)に対し熱溶着することが可能なRFIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣服やリネン、ランドリー用品等の各種の繊維製品を管理するために、繊維製品に対してRFIDタグ(Radio Frequency Identification Tag)が取り付けられることがある。
繊維製品に対しRFIDタグを取り付ける方法として、ユーザーの利便性を高めるべく、熱溶着シート等を備えたRFIDタグが提案されている。
当該RFIDタグであれば、ユーザーがアイロン等で熱圧着する等してRFIDタグを簡易的に取り付けることが可能である(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に記載のRFIDタグでは、タグ基材上においてRFIDインレットやブーストアンテナ等を接着させるための接着剤層と、衣服等の布製品に接着させるための貼付け用接着剤層とがさらに設けられた構成となっている。
当該構成により、ユーザーがアイロン等で加熱することで布製品に対しRFIDタグを簡易的に取り付けることができる。
【0004】
また特許文献2に記載のRFIDタグにおいても同様であって、プラスチック製の支持シート上においてICチップ内蔵のチップモジュールやブーストアンテナ等がホットメルト接着剤で熱圧着されており、さらに繊維製品に貼り付けるためのホットメルト接着剤が積層された構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-171429号公報
【文献】特開2015-129989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1、2のようなRFIDタグでは、タグ基材上にチップモジュールやブーストアンテナ等を接着剤とともに積層させた上で、さらに繊維製品に接着させるための接着剤層を積層させているため、製造工程が余計に増えてしまい、製造コスト増につながる虞があった。
そのため、繊維製品に対し熱溶着することが可能なRFIDタグにおいて、そのタグの性能を損なわないようにしながら、より製造コストを抑えたものが望まれていた。
【0007】
また、繊維製品に対しては洗濯、脱水、乾燥、アイロン掛け等のクリーニング作業が繰り返し行われるため、RFIDタグにおいてICチップ及びアンテナに対する高度の防水性と耐薬品性を備えていること、また、タグの折れ曲がり、圧縮によるアンテナやICチップ周辺部の破損が発生しないような耐久性を備えていることが必要とされていた。
そのため、防水性と耐薬品性を含む総合的な耐久性を備え、また高い受信感度性能を兼ね備えたRFIDタグが望まれていた。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シンプルな構成によって製造コストを抑えた上で、繊維製品に対し熱溶着することが可能なRFIDタグを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、シンプルな構成で耐久性と高い受信感度性能を兼ね備えたRFIDタグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明のRFIDタグによれば、基材と、該基材に設けられ、導電性材料からなるブーストアンテナと、前記基材において前記ブーストアンテナに対応する所定位置に取り付けられる無線通信用のチップモジュールと、前記基材上において前記ブーストアンテナ及び前記チップモジュールを覆うように取り付けられ、熱溶着性を有する熱溶着シートと、を備え、該熱溶着シートによって繊維品に対し熱溶着することが可能なRFIDタグであって、前記熱溶着シートは、前記基材の面のうち、前記チップモジュールが取り付けられた部分及び/または周辺部分において、前記基材に対し取り付けられた状態で設けられる取り付け領域と、該取り付け領域とは異なる部分であって、前記基材に対し取り付けられていない状態で設けられる非取り付け領域と、を有すること、により解決される。
上記構成により、シンプルな製造工程で製造コストを抑えることができ、繊維製品に対し熱溶着することが可能なRFIDタグを実現することができる。
具体的には、熱溶着シートが取り付け領域と、非取り付け領域とを有しているため、基材に対してブーストアンテナ及びチップモジュールが熱溶着シート(取り付け領域)とともに取り付けられた上で、当該熱溶着シート(非取り付け領域)をそのまま繊維品に対し熱溶着させるためのシートとして利用することができる。そのため、シンプルな構成、シンプルな製造工程によって熱溶着シート付きのRFIDタグを製造することができる。
なお、熱溶着シートは基材に対し、例えば熱溶着シート自身の一部が熱溶着されて取り付けられていても良いし、接着剤等を用いて取り付けられていても良い。
【0010】
このとき、前記取り付け領域は、前記基材に対し前記熱溶着シートの一部が熱溶着されて取り付けられている熱溶着領域であって、前記非取り付け領域は、前記熱溶着領域とは異なる部分であって、前記熱溶着シートが熱溶着されていない非熱溶着領域であると良い。
上記構成により、熱溶着シートの取り付け領域は、基材に対しチップモジュールを熱溶着するために用いられ、その非取り付け領域はユーザーが繊維品に熱溶着させるために用いられることになる。そのため、一層シンプルな構成となり、製造コストを抑えることができる。
【0011】
このとき、前記非取り付け領域は、複数設けられ、前記取り付け領域を間に挟むように設けられていると良い。
また、前記取り付け領域は、前記基材の長さ方向における中央部分に設けられ、前記非取り付け領域は、前記基材の長さ方向における両側部分に設けられていると良い。
上記のように、熱溶着シートの取り付け領域が、基材の中央部分(中央部分側)に設けられているため、例えば、熱溶着用金型を用いてRFIDタグを製造するにあたって、取り付け領域の製造工程がシンプルで簡易的になるため、製造コストをより抑えることができる。
また、熱溶着シートの非取り付け領域が、基材の両側部分に設けられているため、ユーザーがアイロン等で繊維品に対しRFIDタグを一層容易に熱溶着させることができる。
【0012】
このとき、前記基材は、伸縮性を有する絶縁シートからなり、前記ブーストアンテナは、伸縮性を有する導電性インクからなり、前記基材上に設けられていると良い。
上記構成により、洗濯、脱水等で一時的にタグに強い圧力がかかって変形した場合であっても、当該圧力が取り除かれれば、ブーストアンテナの形状が元に戻り、コアアンテナを含むチップモジュールの位置とブーストアンテナの相対的な位置関係が復元される。その結果、RFIDタグとしての基本性能を復元することができる。
そのため、高い耐久性と同時に高い受信感度性能を備えたRFIDタグを実現できる。
【0013】
このとき、前記基材は、折り畳まれた状態で構成され、前記熱溶着シートは、折り畳まれた前記基材の内部に前記ブーストアンテナ及び前記チップモジュールとともに設けられる第1熱溶着シートと、前記基材上に取り付けられ、繊維品に対し熱溶着することが可能な第2熱溶着シートと、を備え、前記第1熱溶着シート及び前記第2熱溶着シートは、それぞれ前記取り付け領域と、前記非取り付け領域と、を有すると良い。
上記のように、折り畳まれた基材の内部にブーストアンテナ及びチップモジュールが格納される構成となるため、比較的製造コストが上がらないように配慮しながら防水性と耐薬品性に加えて耐久性を向上させることができる。
また、仮に基材全面にわたってブーストアンテナが配置されていれば、折り畳むことでより高い受信感度性能を備えたRFIDタグとなる。なお、基材が折り畳まれる際にはブーストアンテナ同士が極力重ならないように配慮すると良い。
【0014】
そのほか、基材と、該基材上に取り付けられ、熱溶着性を有する熱溶着シートと、該熱溶着シートに設けられ、導電性材料からなるブーストアンテナと、前記基材と熱溶着シートの間に挟まれた状態で、前記熱溶着シートにおいて前記ブーストアンテナに対応する所定位置に取り付けられる無線通信用のチップモジュールと、を備え、前記熱溶着シートによって繊維品に対し熱溶着することが可能なRFIDタグであって、前記熱溶着シートは、前記基材の面のうち、前記チップモジュールが取り付けられた部分及び/または周辺部分において、前記基材に対し取り付けられた状態で設けられる取り付け領域と、該取り付け領域とは異なる部分であって、前記基材に対し取り付けられていない状態で設けられる非取り付け領域と、を有するRFIDタグも実現することができる。
このとき、前記取り付け領域は、前記基材に対し前記熱溶着シートの一部が熱溶着された熱溶着領域であって、前記非取り付け領域は、前記熱溶着領域とは異なる部分であって、前記熱溶着シートが熱溶着されていない非熱溶着領域であると良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明のRFIDタグによれば、シンプルな構成によって製造コストを抑えた上で、繊維製品に対し熱溶着することが可能なタグとなる。
また、シンプルな構成で耐久性と高い受信感度性能を兼ね備えたタグとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るRFIDタグの外観斜視図である。
図2】RFIDタグの要部拡大図であり、チップモジュールを示す図である。
図3】RFIDタグの製造方法を模式的に示した正面断面図である。
図4A】RFIDタグの正面図である。
図4B】RFIDタグの平面図である。
図5A】第2実施形態のRFIDタグにおいて組み立て前のブーストアンテナを示す平面図である。
図5B】第2実施形態のRFIDタグの製造方法を模式的に示した側面断面図である。
図5C】第2実施形態のRFIDタグの底面図である。
図6A】第3実施形態のRFIDタグにおいて組み立て前のブーストアンテナを示す平面図である。
図6B】第3実施形態のRFIDタグの底面図である。
図7A】第4実施形態のRFIDタグの正面図である。
図7B】第4実施形態のRFIDタグの平面図である
図8A】第5実施形態のRFIDタグの正面図である。
図8B】第5実施形態のRFIDタグの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について図1図8A,Bを参照して説明する。
本実施形態は、基材と、基材に設けられ、導電性材料からなるブーストアンテナと、基材においてブーストアンテナに対応する所定位置に取り付けられる無線通信用のチップモジュールと、基材上においてブーストアンテナ及びチップモジュールを覆うように取り付けられ、熱溶着性を有する熱溶着シートとを備え、熱溶着シートによって繊維製品に対し熱溶着することが可能なRFIDタグであって、熱溶着シートが、基材の面のうち、チップモジュールが取り付けられた部分及び周辺部分において、基材に対し熱溶着シートの一部が熱溶着されて取り付けられている熱溶着領域と、熱溶着領域とは異なる部分であって、熱溶着シートが熱溶着されていない非熱溶着領域と、を有することを特徴とするRFIDタグの発明に関するものである。
【0018】
本実施形態のRFIDタグ1は、図1に示すように、衣服やリネン、ランドリー用品等の繊維製品を管理するための無線認証タグであって、ユーザーがアイロン等で熱圧着することで繊維製品に対し直接取り付け可能な構成となっている。
RFIDタグ1は、図1に示すように、シート状の布基材10と、布基材10上に設けられ、導電性材料からなるブーストアンテナ20と、布基材10上においてブーストアンテナ20に対応する位置に取り付けられる無線通信用のチップモジュール30と、布基材10上においてブーストアンテナ20及びチップモジュール30を覆うように取り付けられ、熱溶着性を有する熱溶着シート40と、から主に構成されている。
【0019】
布基材10は、図1に示すように、RFIDタグ1のタグ基材であって、伸縮性を有する絶縁シートからなり、具体的には、絹、麻、毛等の天然繊維や、ポリエステル、アセテート、レーヨン、ナイロン等の合成繊維を用いて形成される織布または編布である。
布基材10は、その長さが約7cm、幅が約1cmの大きさで形成されている。
【0020】
ブーストアンテナ20は、図1に示すように、RFIDタグ1の無線通信距離を拡張させるためのアンテナであって、チップモジュール30に含まれるコアアンテナ32と電磁結合するように設けられている。
ブーストアンテナ20は、伸縮性を有する導電性インクからなり、布基材10上において所定のアンテナパターンとなるようにスクリーン印刷されている。
「伸縮性を有する導電性インク」とは、シート圧力を加えられたときに伸びる性質を有し、伸びたときには導電性が低下するものの、元の状態に戻ったときには元の導電性を維持することが可能なインク材料である。導電性インクとして、良導電性の銀粉末を用いることが望ましいが、特に限定されることなく、銅やアルミニウム等の金属材料であっても良い。
【0021】
ブーストアンテナ20は、波線形状のアンテナパターンとして形成され、布基材10の長さ方向に沿って延びており、布基材10上に略全体にわたって配置されている。
詳しく言うと、ブーストアンテナ20は、その長さ方向の中央部において略U字形状のアンテナ中央部21を有し、アンテナ中央部21を中心部として左右対称の形状として形成されている。
布基材10上においてアンテナ中央部21が配置された部分には、アンテナ中央部21の外周縁部に沿うようにしてチップモジュール30が取り付けられている。
【0022】
チップモジュール30は、図2に示すように、識別番号などの識別データを記憶し、無線通信を制御するICチップ31を内部に格納するための円板形状のモジュールである。
具体的には、チップモジュール30は、ICチップ31と、ICチップ31と電気的に接続され、電波を送受信するためのコアアンテナ32と、ICチップ31及びコアアンテナ32を封止するための封止部材33と、から主に構成されている。
チップモジュール30は、ブーストアンテナ20の波形状のパターンの間に配置されており、詳しく言うと、チップモジュール30の外縁が、布基材10の厚み方向においてブーストアンテナ20と一部重なる、あるいは近接して略平行に延びるように配置されている。
【0023】
ICチップ31は、識別データを記憶し、コアアンテナ32を介して受信される電磁波に、識別データを変調させて返信する機能を備える集積回路である。
コアアンテナ32は、環状のアンテナパターンを有し、例えば銅、アルミニウム等の金属箔から形成されている。
コアアンテナ32は、不図示のインピーダンス整合回路を介してICチップ31と接続されている。
封止部材33は、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂材料からなり、ICチップ31及びコアアンテナ32を内部に格納するように形成されている。
上記構成により、ICチップ31及びコアアンテナ32を水、熱、衝撃等から保護することができる。
【0024】
熱溶着シート40は、図1図4A,Bに示すように、繊維製品に対しRFIDタグ1を熱溶着するための熱可塑性樹脂シートであって、例えば、熱可塑性ポリウレタンシートからなり、布基材10の表面を略全面にわたって覆うようにして取り付けられている。
熱溶着シート40は、布基材10の表面のうち、チップモジュール30が取り付けられた部分及び周辺部分に対し、熱溶着シート40の一部が熱溶着されて取り付けられている熱溶着領域41と、熱溶着領域41とは異なる部分であって、熱溶着シート40が熱溶着されていない非熱溶着領域42と、を備えている。
【0025】
熱溶着領域41は、布基材10に対しチップモジュール30を取り付けるために予め熱圧着されている略矩形状の取り付け領域となっている。
詳しくいうと、RFIDタグ1のうち熱溶着領域41において、布基材10と、布基材10上に印刷されたブーストアンテナ20と、布基材10上に配置されたチップモジュール30と、熱溶着シート40とが一体化した状態で構成されている。
非熱溶着領域42は、繊維製品に対しRFIDタグ1を熱溶着するための領域であって、予め熱圧着されておらず、熱溶着可能な非取り付け領域となっている。
詳しく言うと、非熱溶着領域42は、図1図4に示すように、布基材10の厚み方向において布基材10及びブーストアンテナ20から若干離間している。つまり、非熱溶着領域42と、布基材10及びブーストアンテナ20との間に隙間が形成されている。
上記構成により、1枚の熱溶着シートを有効利用して、シンプルな構成で製造コストを抑えたRFIDタグを実現することができる。
【0026】
熱溶着領域41は、布基材10の長さ方向における中央部分に配置されている。
そのため、図3に示すように、熱溶着用金型Mを用いてRFIDタグ1を簡易的に製造することができ、製造コストを抑えることができる。
非熱溶着領域42は、複数設けられ、熱溶着領域41を間に挟むように設けられ、布基材10の長さ方向における両側部分に配置されている。
そのため、ユーザーが、アイロン等で繊維製品に対しRFIDタグ1を容易に熱溶着させることができる。詳しく言うと、ユーザーが、繊維製品に対し、RFIDタグ1を裏返して熱溶着シート40を当接させた状態とし、RFIDタグ1の裏面からアイロン等で熱圧着させることで取り付けることできる。
【0027】
次に、RFIDタグ1の製造方法について図3図4A,Bに基づいて説明する。
まずは、布基材10の表面上に、導電性インクを用いて波線形状のアンテナパターンとなるようにブーストアンテナ20をスクリーン印刷する。
そして、図3に示すように、熱溶着用金型M及びタグ置き台Tを準備し、タグ置き台T上において下から順にブーストアンテナ20が印刷された布基材10、チップモジュール30、熱溶着シート40の3つの構成部品を重ねるように配置する。
ここで、熱溶着用金型Mとは、その底面においてチップモジュール30の形状に合わせた凹部を有し、熱溶着のために加熱される金型である。
また、タグ置き台Tとは、その表面上にチップモジュールの形状に合わせた凹部を有し、各構成部品を位置合わせしながら熱溶着するための置き台である。
【0028】
そして、図3に示すように、タグ置き台T上の凹部と、熱溶着用金型Mの凹部とに対してチップモジュール30が上下方向で対向するように3つの構成部品を位置合わせする。
そして、熱溶着用金型Mによって各構成部品の熱溶着領域41に相当する部分を所定の熱と圧力を加えて挟み込むことで、構成部品同士をつなぎ合わせる。
具体的には、熱溶着用金型Mによって、布基材10の面のうち、チップモジュール30が載置された部分及び周辺部分のみを熱溶着する。
詳しく言うと、熱溶着シート40において熱溶着領域41のみを熱溶着することで各構成部品を一体化させており、熱溶着領域41以外の領域は一体化しておらず、熱溶着領域41の両側の領域(非熱溶着領域42)については、布基材10の厚み方向にめくり上がるような構成となっている。
上記シンプルな製造工程によって、RFIDタグ1を製造することができる。
【0029】
<RFIDタグの第2実施形態>
次に、第2実施形態となるRFIDタグ100について、図5A-Cに基づいて説明する。
なお、以下の説明において、RFIDタグ1と重複する内容は説明を省略する。
RFIDタグ100では、RFIDタグ1と比較して、主に布基材110が折り畳まれた状態で構成されている点が異なっている。
【0030】
布基材110は、その幅方向の中央部に折り畳み境界線111を有し、折り畳み境界線111を境として折り畳まれることで、チップモジュール30を挟み込むことが可能な構成となっている。
ブーストアンテナ120は、図5A,Cに示すように、波線形状のアンテナパターンとして形成され、布基材10の長さ方向に沿って延びており、その長さ方向の中央部においてアンテナ中央部121を有し、アンテナ中央部121を中心部として点対称の形状として形成されている。
つまり、ブーストアンテナ120は、布基材110が折り畳まれたときに、折り畳まれた布基材110の内面上に略全体にわたって配置されるようになっている。
また、アンテナ中央部121は、折り畳み境界線111とブーストアンテナ120が重なる部分の中央に対して線対称となる2つの略U字形状のアンテナ部分からなり、布基材110が折り畳まれたときに互いに重なり合うように形成されている。
上記構成であれば、折り畳むことで布基材110全面にわたってブーストアンテナ120が配置されているため、高い受信感度性能を備えたRFIDタグとなる。
また、アンテナ中央部121においてチップモジュール30内のコアアンテナと略平行に延びているアンテナ部分が一層長くなるため、強い電磁結合を得ることができる。
【0031】
熱溶着シート140は、図5B,Cに示すように、折り畳まれた布基材110の内部でブーストアンテナ120及びチップモジュール30とともに設けられる第1熱溶着シート140aと、布基材110上に取り付けられ、繊維製品に対し熱溶着することが可能な第2熱溶着シート140bと、から構成されている。
第1熱溶着シート140a及び第2熱溶着シート140bは、それぞれ熱溶着領域141と、非熱溶着領域142とを有している。
上記構成であれば、比較的製造コストが上がらないように配慮しながらも、防水性と耐薬品性に加えて耐久性を向上させたRFIDタグとなる。
また、RFIDタグの一方の長辺の端面が閉じているため、タグ強度を向上させることができる。
【0032】
次に、RFIDタグ100の製造方法について図5B,Cに基づいて説明する。
まずは、布基材110の表面上に、波線形状のアンテナパターンとなるようにブーストアンテナ120をスクリーン印刷する。
そして、図5Bに示すように、熱溶着用金型M及びタグ置き台Tを準備し、タグ置き台T上において下から順に第2熱溶着シート140b、折り畳まれた布基材110(ブーストアンテナ120を含む)の一方側部分、チップモジュール30、第1熱溶着シート140a、折り畳まれた布基材110の他方側部分を重ねるように配置する。
【0033】
そして、熱溶着用金型Mによって各構成部品の熱溶着領域141に相当する部分を所定の熱と圧力を加えて挟み込むことで、構成部品同士をつなぎ合わせる。
具体的には、熱溶着用金型Mによって、布基材110の面のうち、チップモジュール30が重なる部分及び周辺部分のみを熱溶着させる。
詳しく言うと、第1熱溶着シート140a及び第2熱溶着シート140bにおいて熱溶着領域141のみを熱溶着することで各構成部品を一体化させており、熱溶着領域141の両側の領域については非熱溶着領域142となっている。
上記の製造工程によって、RFIDタグ100を製造することができる。
【0034】
<RFIDタグの第3実施形態>
次に、第3施形態となるRFIDタグ200について、図6A,Bに基づいて説明する。
RFIDタグ200では、RFIDタグ100と比較して、ブーストアンテナ220の形状が異なっている。
ブーストアンテナ220は、波線形状のアンテナパターンとして形成され、布基材110の長さ方向に沿って延びており、その長さ方向の中央部においてアンテナ中央部221を有している。
アンテナ中央部221は、折り畳み境界線111を境にして線対称となる2つの略半楕円形状のアンテナ部分からなり、布基材110が折り畳まれたときに互いに重なり合うように形成されている。
なお、アンテナ中央部221には、チップモジュール30との過度な干渉を抑制すべく、チップモジュール30が重なる部分においてくり抜き穴が形成されている。
RFIDタグ200の製造方法については、RFIDタグ100と同様である。
【0035】
上記構成であれば、アンテナ中央部221において、チップモジュール30内のコアアンテナと略平行に延びているアンテナ部分がより一層長くなるため、より強い電磁結合を得ることができる。
また、アンテナ中央部221の面積が広いため、折れ曲がりによる断線の虞を抑制することができる。
【0036】
<RFIDタグの第4実施形態>
次に、第4施形態となるRFIDタグ300について、図7A,Bに基づいて説明する。
RFIDタグ300では、RFIDタグ1と比較して、布基材10上にチップモジュール30を接着剤350で取り付けている点が主に異なっている。
接着剤350は、布基材10の表面のうち、チップモジュール30が取り付けられた部分及び周辺部分にのみ塗布されている。
言い換えると、熱溶着シート340が、図7Aに示すように、布基材10の表面のうち、チップモジュール30が取り付けられた部分及び周辺部分に対し、接着剤350で取り付けられている取り付け領域341と、取り付け領域341とは異なる部分であって、布基材10に対し取り付けられていない(対向していない)非取り付け領域342と、を有している。
【0037】
上記の場合、取り付け領域341及び非取り付け領域342は、繊維製品に対しRFIDタグ300を熱溶着するための領域であって、予め熱圧着されておらず、熱溶着可能な領域となっている。
また、非取り付け領域342は、布基材10の厚み方向において布基材10及びブーストアンテナ20から若干離間している。つまり、非取り付け領域342と布基材10及びブーストアンテナ20の間に隙間が形成されている。
上記構成であっても、1枚の熱溶着シートを有効利用して、シンプルな構成で製造コストを抑えたRFIDタグを実現できる。
【0038】
RFIDタグ300の製造方法について簡単に説明すると、ブーストアンテナ20が印刷された布基材10上にチップモジュール30を配置し、チップモジュール30の周辺部分に接着剤350を塗布する。
そして、布基材10の表面に対しチップモジュール30及び接着剤350を覆うように熱溶着シート340を押し当てて、布基材10、チップモジュール30、熱溶着シート340を一体化させる。
上記シンプルな製造工程によって、RFIDタグ300を製造することができる。
【0039】
<RFIDタグの第5実施形態>
次に、第5施形態となるRFIDタグ400について、図8A,Bに基づいて説明する。
RFIDタグ400では、RFIDタグ1と比較して、熱溶着シート40上にブーストアンテナがスクリーン印刷されている点が主に異なっている。
具体的には、RFIDタグ400は、布基材10と、布基材10上に取り付けられる熱溶着シート40と、熱溶着シート40上に印刷されるブーストアンテナ20と、布基材10と熱溶着シート40の間に挟まれた状態で布基材10に対して取り付けられるチップモジュール30と、から主に構成されている。
布基材10は、図8Aに示すように、熱溶着シート40の長さ方向において熱溶着シート40よりも短くなるように形成されており、詳しく言うと熱溶着シート40のうち、熱溶着領域41に対向する位置に設けられ、熱溶着領域41と略同じ大きさで形成されている。
なお、RFIDタグ400の製造方法については、RFIDタグ1と同様である。
上記構成であれば、シンプルな構成によって製造コストを一層抑えた上で、繊維製品に対し熱溶着することが可能なRFIDタグを実現することができる。
【0040】
<その他の実施形態>
上記実施形態において、図1に示すように、布基材10は、織布または編布であるが、特に限定されることなく変更可能であって、布材料以外の材料、例えば樹脂材料等から形成されていても良い。
【0041】
上記実施形態において、図1に示すように、ブーストアンテナ20は、波線形状のアンテナパターンとして形成されているが、特に限定されることなく、例えば、矩形状、円形状、直線状、曲線状等の形状として形成されていても良い。
【0042】
上記実施形態において、図1に示すように、ブーストアンテナ20は、布基材10上において導電性インクをスクリーン印刷することで形成されているが、特に限定されることなく、例えば布基材10に対し導電性糸を縫製する等、公知な方法で形成されていても良い。
【0043】
上記実施形態において、図1に示すように、熱溶着シート40は、布基材10の表面を全体にわたって覆っているが、特に限定されることなく、布基材10の表面を部分的に覆うように構成しても良い。
【0044】
上記実施形態において、図1図4A,Bに示すように、熱溶着シート40は、布基材10の表面のうち、チップモジュール30が取り付けられた部分及び周辺部分に対して取り付けられているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、熱溶着シート40が、布基材10の表面のうち、チップモジュール30が取り付けられた周辺部分に対してのみ取り付けられていても良いし、または、チップモジュール30が取り付けられた部分に対してのみ取り付けられていても良い。
【0045】
上記実施形態において、図1図4A,Bに示すように、熱溶着シート40は、布基材10に対して熱溶着シート40自身の一部が熱溶着されて取り付けられているが、特に限定されることなく、図7A,Bに示すように、布基材10に対し接着剤350等を用いて取り付けられていても良い。
【0046】
上記実施形態では、主として本発明に係るRFIDタグに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
特に、熱溶着シートに関する配置、構成について、上記の実施形態にて説明したものは、あくまで一例に過ぎず本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0047】
1,100,200,300,400 RFIDタグ
10,110,410 布基材(基材)
111 折り畳み境界線
20,120,220 ブーストアンテナ
21,121,221 アンテナ中央部
30 チップモジュール
31 ICチップ
32 コアアンテナ
33 封止部
40,140,340 熱溶着シート
41 熱溶着領域(取り付け領域)
42 非熱溶着領域(非取り付け領域)
140a 第1熱溶着シート
140b 第2熱溶着シート
141 熱溶着領域
142 非熱溶着領域
341 取り付け領域
342 非取り付け領域
350 接着剤
M 熱溶着用金型
T タグ置き台
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B