(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】導電性粒子、組成物、物品、及び導電性粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 5/00 20060101AFI20220330BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20220330BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20220330BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220330BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20220330BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20220330BHJP
B22F 1/102 20220101ALI20220330BHJP
【FI】
H01B5/00 C
H01B1/00 C
H01B1/22 A
H01B13/00 501Z
B22F1/00 S
B22F1/00 N
B22F1/00 L
B22F1/00 M
B22F1/00 R
H05K9/00 W
B22F1/102
(21)【出願番号】P 2020534563
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2018086669
(87)【国際公開番号】W WO2019122366
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-08-18
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502099902
【氏名又は名称】エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Eckart GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シリング クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】ヒルトル ステファニー
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】Yilong Wang, et al.,Surface Thiolation of Al Microspheres to Deposit Thin and Compact Ag Shells for High Conductivigy,Langmuir,米国,ACS Publishing,2015年09月25日,2015 31,13441-13451
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00
H01B 1/00
H01B 1/22
H01B 13/00
B22F 1/00
B22F 1/17
B22F 1/102
B22F 1/16
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属コアと、前記金属コアを封入する誘電体層と、銀含有外層と、を含む導電性粒子であって、
前記金属コアはアルミニウム、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、並びにそれらの合金、酸化物、及び混合物から成る群から選択される元素状金属を含むかそれから成り、
前記誘電体層は少なくとも、有機ポリマー、又はケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、スズ酸化物、及びそれらの混合物から成る群から選択される1つの金属酸化物、を含み、
前記誘電体層はケイ素酸化物層を含み、
前記銀含有外層は連続且つ不透明な層であり、
前記誘電体層と前記銀含有外層との間に銀イオン配位層が配置されている
ことを特徴とし、及び
任意でさらなる表面修飾外層を、前記導電性粒子の総重量基準で0~3重量%の量で含む、導電性粒子。
【請求項2】
前記銀イオン配位層は、銀イオン配位部位を含む有機官能性シラン、チタネート、アルミネート、若しくはジルコネートを主体とすることを特徴とする、請求項1に記載の導電性粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導電性粒子であって、
前記銀イオン配位層は式(I)の少なくとも1つのシランを含み:
(R
1O)
(4-a-b-c)Si(R
2X)
a(R
3)
b(R
4)
c (I)
式中、
aは1、2、若しくは3から選択される整数であり、
b及びcは0、1、若しくは2から独立して選択される整数であり、ただしa+b+cは1~3の整数であり、
R
1は、炭素数1~4のアルキルであり、
R
2は、互いに独立して、それぞれ炭素数1~14の分枝鎖若しくは直鎖アルキレン又は炭素数5~11のシクロアルキレンから選択され、R
3又はR
4は、互いに独立して、それぞれ炭素数1~14の分枝鎖若しくは直鎖アルキル又は炭素数5~11のシクロアルキル又はHから選択され、Xは銀イオン配位部位であることを特徴とする、導電性粒子。
【請求項4】
前記銀イオン配位部位Xは独立して、メルカプト、炭素数1~6のアルキルを有するチオアルキル、アミノ、チオサルフェート、チオシアネート、シアネート、シアニド、ウレイド、カルバメート、ビピリジル、及びそれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の導電性粒子。
【請求項5】
前記銀イオン配位層は、メルカプトシラン、アミノシラン、チオシアネートシラン、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つのシランを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項6】
前記銀イオン配位層がメルカプトシランを含むかそれから成ることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項7】
前記誘電体層が前記金属コアの総重量基準で、0.5~15重量%の範囲の量で存在することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項8】
前記誘電体層は、ケイ素酸化物と、有機オリゴマー、有機ポリマー、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの有機成分と、のハイブリッド混合物を含むかそれから成る層であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項9】
前記誘電体層は、二酸化ケイ素層と、ポリマーから成る第2誘電体層と、から成り、前記第2誘電体層は、前記二酸化ケイ素層の上に直接、又は前記銀イオン配位層と前記二酸化ケイ素層との間に、位置付けされていることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項10】
前記銀含有外層は、前記導電性粒子に対して5~45重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1~
9のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項11】
前記導電性粒子は、0.2以上100mΩcm未満の範囲の電気粉末抵抗率を有することを特徴とする、請求項1~
10のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項12】
前記金属コアは、2μm~100μmの範囲のメジアン径d
50を有することを特徴とする、請求項1~
11のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項13】
前記金属コアは、球状若しくは小板状金属コアであるか又は樹状の形態を有することを特徴とする、請求項1~
12のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の導電性粒子を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項15】
下記の工程を含むことを特徴とする、請求項1~
13のいずれか1項に記載の導電性粒子を製造する方法:
(i)金属コア粒子を提供する工程;
(ii)前記金属コア粒子の上に誘電体層を適用する工程;
(iii)前記誘電体層の上に銀イオンのための配位層を適用する工程;
(iv)被覆済み粒子の前記配位層を、溶媒中に溶解された銀化合物によって提供される銀イオンと接触させて、前記銀イオンの少なくとも一部を前記配位層の上に配位させる工程;
(v)前記銀イオン配位層の表面上に配位した前記銀イオンをさらなる銀イオンとともに還元して、前記配位層の上に連続且つ不透明な銀含有外層を提供する工程;及び
(vi)任意で表面修飾外層を適用する工程。
【請求項16】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の導電性粒子の、電子アセンブリ、表示装置、RFIDタグ、センサー、EMIシールディング、タッチパネル、スマートパッケージ、メンブレンスイッチ、加熱可能コーティング、電気活性ポリマー、印刷電子機器、導電性接着剤コーティング、導電性散逸コーティング、及びガスケットにおける使用。
【請求項17】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の導電性粒子を含有する導電性製剤。
【請求項18】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の導電性粒子を含むことを特徴とする、物品。
【請求項19】
前記物品は、電子アセンブリ、表示装置、RFIDタグ、センサー、EMIシールディング、タッチパネル、スマートパッケージ、メンブレンスイッチ、加熱可能コーティング、電気活性ポリマー、印刷電子機器、導電性接着剤コーティング、導電性散逸コーティング、及びガスケットから成る群から選択されることを特徴とする、請求項
18に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属コアと、前記金属コアを封入する誘電体層と、銀含有外層と、を含む導電性粒子に関する。さらに本発明は、前記導電性粒子を含む組成物に関する。本発明はまた、導電性粒子の製造方法並びに前記導電性粒子を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粉末等の導電性粒子は電子アセンブリの製造において有用である。例えば、導電性粒子若しくは粉末は、接着剤、コーティング、ディスプレイ材料等を導電性とするためにこれらの材料に含まれ得る。
【0003】
特許文献1には、硬化低弾性エラストマーと治金的に結合されたミクロンサイズの金属粒子及びナノサイズの金属粒子とを含む導電性接着剤が開示されている。この導電性接着剤は、例えば印刷回路等の製造における相互接続材として、共晶スズ-鉛はんだ及び鉛非含有合金はんだの代替物として使用することができる。特許文献1によると、前記ナノ粒子及びミクロン粒子をエラストマー材料と組み合わせる。このエラストマー材料の硬化は、前記エラストマー材料中で及びそれに対して、十分な導電性を与えるべく、前記ナノ粒子及びミクロン粒子が互いに対して焼結する高温で行わなければならない。この金属粒子は好ましくは銀粒子である。互いにマッチする異なるサイズの銀粒子の使用は、厄介で費用がかかる。さらに、銀粒子の焼結を可能にする高温の使用はかなりのデメリットとなる。
【0004】
非特許文献1は、粉末の個々の粒子が中空のシリカシェルを含み、その中空シリカシェルの表面上に金属含有被膜を有する、粉末組成物に関する。この粒子は低い密度及び高い表面積を特徴とし、このことがこの生成組成物の触媒としての使用を可能とする。前記生成組成物は電気用途又は写真用途において使用することもできる。不都合なことには、中空シリカシェルを最初に製造しなければならない。さらに、この中空シリカ粒子はかなり低い密度を有し、このことがこれらの軽量粒子の接着剤、シーラント等の高分子塊への組み込みを複雑にする。最後に、この中空シリカ粒子は熱絶縁効果を有し、このことが熱放散若しくは放熱性の低さにつながる。電子用途においてはそのことは、電子部品への損傷を避けるために発生した熱が急速に放散される場合には有利である。
【0005】
特許文献2は、ベース粒子の表面上に多層金属酸化物フィルムを有し、いずれかの明色を有する粉末に関する。この粉末は、磁性着色トナー、磁性色インク等における磁性着色材料として使用するのに好適である。金属酸化物フィルムが適用される前記ベース材料は、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、シリカ、若しくはガラスビーズから選択することができる。
【0006】
特許文献3は、少なくとも金属顔料と、前記金属顔料の表面上の非晶質ケイ素酸化物フィルム層と、前記非晶質ケイ素酸化物フィルムの表面上に設けられた金属層と、前記金属層の表面上に設けられた金属粒子と、を含む着色金属顔料に関する。これらの着色金属顔料は、種々の色及び種々の干渉色を発色することができるとともに、改善された耐光性、耐候性、及び隠蔽力を有する。これらの着色金属顔料は、コーティング組成物及び化粧調製剤において使用されるものである。
【0007】
特許文献4は、小板状金属反射物コアと、前記反射物コア上に適用された誘電材料のスペーサ層と、前記スペーサ層上に適用され本質的に不連続の吸収材金属粒子を含む半透明吸収材層と、を含み、1~100nmの平均直径を有するエフェクト顔料に関する。これらのエフェクト顔料は、塗料、ワニス、粉末コーティング等において使用される。所望の光学特性を得るために、前記吸収材金属粒子は連続層を形成するのではなくナノ粒子状の形態で存在することが必要である。
【0008】
特許文献5は、樹脂と前記樹脂中に分散された導電性の成形粒子とを含む複合材を含む導電性物品に関する。これらの粒子は、単一粒径分布を有し、各粒子は少なくとも第1の表面及びこの第1表面と約5度~約150度の角度αで交差する第2の表面を含む形状を含む。好ましくはこれらの導電性成形粒子は、一点で交わる少なくとも3つの表面を含む形状を含む。コア及び金属コーティングを含むこれらの複雑な特殊幾何学粒子は、製造が困難である。
【0009】
特許文献6は、導電性金属粒子とその導電性金属粒子の表面を覆う無機酸化物被膜層とを含む導電性粉末に関する。前記導電性粉末はその後電極へと成形される。前記無機酸化物被膜層は絶縁性を有し、それによってプラズマ表示パネルの電極の製造プロセス中における前記電極の腐食が持続的に防止される。その後、前記無機酸化物被膜層は、実装プロセス中にテープキャリアパッケージ(TCP)などと接合される際に、例えば圧力によって破壊され、導電性を回復する。
【0010】
非特許文献2には、アルミニウム-銀コア-シェル粒子を得るための、無電解銀メッキと組み合わせた制御可能なチオール官能化のための方法が開示されている。残念ながらこの銀メッキアルミニウム球の導電性は十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2007/0131912号
【文献】欧州特許第0 852 977号
【文献】欧州特許第1 990 377号
【文献】米国特許第8,067,090号
【文献】国際公開第2015/073346号
【文献】欧州特許出願公開第1 780 747号
【非特許文献】
【0012】
【文献】米国法定発明登録(The United States Statutory Invention Registration)H1447号
【文献】Wang Y.ら、「Surface Thiolation of Al Microspheres to Deposite Thin and Compact Ag Shells for High Conductivity(高い導電率のために薄くてコンパクトなAgシェルを沈着させるためのAlミクロスフィアの表面チオール化)」、Langmuir 2015、31、13441-14451、
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
当該技術分野において、接着剤、シーラント等のキャリア材料を導電性となすために使用することができる導電性粒子に対し、大きな需要がある。さらに、そうした導電性粒子は容易に及びコスト効率よく製造されることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、金属コアと、前記金属コアを封入する誘電体層と、銀含有外層と、を含む導電性粒子であって、前記金属コアはアルミニウム、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、並びにそれらの合金及び混合物から成る群から選択される元素状金属を含むかそれから成り、前記誘電体層はケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、スズ酸化物から成る群から選択される少なくとも1つの金属酸化物、有機ポリマー、及びそれらの混合物を含み、前記銀含有層は連続且つ不透明な層であり、前記誘電体層と前記銀含有層との間に銀イオン配位層が配置され、及び任意でさらなる表面修飾外層を前記導電性粒子の総重量基準で0~3重量%の量で含む、導電性粒子を提供することによって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】導電性粒子の概略図である。図(a)~(c)は先行技術における導電性粒子を示す。導電性粒子(d)は本発明を例示している。
【
図2】
図1に概略的に示された当該導電性粒子のSEM画像を示す。画像A、B、C、Dは、それぞれ概略図(a)、(b)、(c)、及び(d)によって例示された実施形態に対応する。SEM画像A、B、Cにおけるスケールバーは2μmを反映し、SEM画像Dにおけるスケールバーは1μmを反映している。
【
図3】本発明の導電性粒子の銀含有量のよる粉末抵抗率を示すプロットであり、アルミニウムコア粒子はd
50=45μm(四角)及びd
50=20μm(丸)を有する。
【
図4】本発明の導電性粒子の銀含有量による粉末抵抗率を示すプロットであり、アルミニウムコア粒子はd
50=5μm(三角)を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
故に、本発明は、金属コアと、前記金属コアを封入する誘電体層と、銀含有外層と、を含む導電性粒子であって、前記金属コアはアルミニウム、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、並びにそれらの合金、酸化物、及び混合物から成る群から選択される元素状金属を含むかそれから成り、前記誘電体層は少なくとも、有機ポリマー、又はシリコーン酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、スズ酸化物、及びそれらの混合物から成る群から選択される1つの金属酸化物、を含み、前記銀含有層は連続且つ不透明な層であり、前記誘電体層と前記銀含有層との間に銀イオン配位層が配置されていることを特徴とし、及び任意でさらなる表面修飾外層を、前記導電性粒子の総重量基準で0~3重量%の量で含む、導電性粒子に関する。
【0017】
金属の導電性は様々である。それらの金属のうち、銀は最も高い導電性を有する。しかしながら、銀はコストがかかるという重大な欠点を有する。
【0018】
本発明者らは、驚くべきことに、金属コアと前記金属コアを封入する誘電体層とを含む複合材粒子上に、連続且つ不透明な銀含有層、好ましくは銀から成る連続且つ不透明な層を配置することが、前記誘電体層と前記銀含有層、好ましくは銀から成る層との間に銀イオン配位層を配置すれば可能であるということを見出した。
【0019】
元素状金属を含むかそれから成る前記金属コアは、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、並びにそれらの合金及び混合物から成る群から選択される。好ましい実施形態では、前記金属コアはアルミニウム若しくはそれらの合金を含むかそれから成る。さらに好ましい実施形態では、前記金属コアは、金属粉末を生ずる各対応する溶融金属若しくは溶融合金から、噴霧、好ましくは気体噴霧によって容易に製造することができる。噴霧中、前記溶融金属を気体、好ましくは不活性気体の高圧ジェットと接触させて、前記溶融金属を最終的に溶融金属の液滴に分割することができる。これらの最終的に分割された金属液滴は固化し、その後金属粒子として回収される。この噴霧による金属粉末の製造技術は当該技術分野において周知である。この噴霧のプロセスは、所望の粒径分布を有する金属粒子の粉末が得られるように最適化することができる。得られた金属粒子はその後、本発明で使用するための金属コアとして使用することができる。
【0020】
故に、それぞれ、例えば狭い若しくは広い粒径分布の、所望の粒径分布を有する金属粒子若しくは金属コアを、指定された元素状金属、又はそれらの合金若しくは混合物から容易に得ることができる。所望ならば、噴霧プロセスにより得られる、金属粒子、即ち得られる金属コアの粒径分布をさらに分級することができる。この分級は篩い分け、空気分級、気体分級、沈降、サイクロン分離等により行うことができる。
【0021】
さらなる実施形態では、前記金属コアは薄片若しくは薄片及び金属粉末の混合物から成る。前記薄片は金属粉末を当該技術分野において周知の方法によって粉砕することにより製造される。
【0022】
薄片様の金属コアは好ましくは10~60μmの範囲、より好ましくは12~50μmの範囲、及び最も好ましくは20~40μmの範囲のd50値を有する。
【0023】
その後、それぞれ好ましくは気体噴霧によって各対応する溶融金属から得られた前記金属粒子若しくは金属コアを、少なくとも有機ポリマー、又はケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、スズ酸化物から成る群から選択される1つの金属酸化物、又はそれらの混合物を含む誘電体層で封入する。
【0024】
金属酸化物又はポリマー又はそれらの混合物による金属粒子の封入は、当該技術分野において既知である。
【0025】
例えば、前記誘電体層は好ましくは、ゾルゲル法により前記金属コアに適用することができる。ゾルゲル法では、前記金属コアの存在下で金属アルコキシドを加水分解する。前記金属アルコキシドは水の存在下で、任意でわずかに酸性若しくはわずかにアルカリ性のpHにおいて加水分解する。前記金属アルコキシドは各対応する金属水酸化物に加水分解された後、前記金属コア上に沈着する。沈着した金属水酸化物は次いで水酸基の縮合により脱水されて各対応する金属酸化物及び/若しくは金属酸化物水和物を生じ、このようにして各対応する金属コアを封入する。
【0026】
もちろん、各対応する金属水酸化物はまた、水中で金属塩、好ましくは金属塩化物を加水分解することによって製造することもできる。前記金属水酸化物は次いで、ゾルゲル法に関して先に説明したように縮合して金属酸化物及び金属酸化物水和物となる。
【0027】
前記誘電体層は様々な目的を担う層である。
【0028】
前記誘電体層は前記金属コアを封入し、金属コアを例えば湿気若しくは水等の腐食環境に対して保護する。誘電体層はまた、金属コアから環境に放出され得る金属イオンに対して環境を保護する。故に、好ましくは誘電体層は、金属コアを環境から絶縁するとともに環境を金属コアから絶縁するバリアである。これらの特性は本発明の導電性粒子を好ましくは、水性系の製剤において使用できるようにする及び/若しくは例えば湿気等の腐食環境に曝されるコーティング中において適用できるようにする。
【0029】
さらに、前記誘電体層は前記金属コアを前記銀含有層、好ましくは銀から成る層から電気的に絶縁する。金属コアの銀含有層からの電気的絶縁の結果として、導電性は銀含有層のみによって決定される。銀含有層が各元素状金属若しくはその合金の金属コア上に直接適用された場合、導電性は金属コアの導電性とともに銀含有層の導電性によって決定されると考えられる。驚くべきことに、銀含有層が金属コアから誘電体層によって分離された複合材粒子の導電性は、銀含有層が金属コア上に直接適用された複合材粒子の導電性よりも高いということが分かった。
【0030】
本発明は、請求項1に記載したように、本発明の導電性粒子において様々な金属コアの混合物を使用することにも利点をもたらし、その導電性は銀含有層によってのみ決定される。故に、本発明の導電性粒子における金属コアの特定の性質は導電性になんら影響を与えない。
【0031】
さらに、前記誘電体層は、その後連続且つ不透明な銀含有層を適用するために重要な銀イオン配位層を確実に配置することを可能にする。好ましくは銀イオン配位層は、好ましくは誘電体層に共有結合する銀イオン結合若しくは錯化分子を含むかそれから成る。
【0032】
本発明の導電性粒子は、例えば、接着剤、シーラント、高分子材料や、インク、塗料、ラッカー等のコーティングなどの様々な材料に組み込むのに特に好適である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、前記金属コアの金属は、1.50g/cm3~15.00g/cm3の範囲、好ましくは2.00g/cm3~15.00g/cm3の範囲、より好ましくは1.50g/cm3~10.00g/cm3の範囲、より好ましくは2.00g/cm3~10.00g/cm3の範囲、最も好ましくは1.50g/cm3~8.00g/cm3の範囲、最も好ましくは2.00g/cm3~8.00g/cm3の範囲から成る密度を有する。
【0034】
本発明に従い使用される元素状金属はかなり多様な密度を有する。アルミニウムは2.71g/cm3、銅は約8.92g/cm3、鉄は7.86g/cm3、ニッケルは8.91g/cm3、及び亜鉛は7.13g/cm3の密度を有する。これらの導電性粒子を組み込むべき材料に応じてそれぞれの元素状金属を選択することにより、導電性粒子の密度を調節することができる。さらに、金属コアの密度は、指定された元素状金属の合金若しくは混合物を用いることによって具体的に調節することができる。例えば、導電性粒子の密度を、これらの粒子が組み込まれる材料中でそれらがリーフィングせず及び沈降しないという点において調節することができる。
【0035】
例えば接着剤、コーティング材料等の具体的な材料中に組み込むべき導電性粒子のリーフィングを回避するために、例えばその導電性粒子のより高い密度が必要であるならば、より高い密度を有する金属コアを使用して前記導電性粒子を提供することが、本発明では可能である。
【0036】
本発明の導電性粒子は金属コアに起因して優れた熱放散効果を有する。中空のベース粒子若しくはケイ素酸化物粒子等の純粋な金属酸化物粒子とは異なり、この金属コアは、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、又はそれらの合金若しくは混合物を含むかそれから成る前記コアに起因して優れた熱放散若しくは熱伝導を示す。これらの金属はすべて、優れた熱伝導特性を有する。特に本発明の導電性粒子を電気若しくは電子機器又は電子アセンブリに使用する場合には、電子部品の損傷を防ぐためにあらゆる熱を放散するということが極めて重要である。
【0037】
当該導電性粒子の好ましい実施形態は、従属請求項2~14において特定される。
【0038】
本発明の前記目的はまた、請求項1~14のいずれか1項に記載の導電性粒子を含む組成物を提供することによっても解決される。
【0039】
本発明の前記目的はまた、以下の工程を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の導電性粒子を製造する方法を提供することによっても解決される:
(i)金属コア粒子を提供する工程;
(ii)前記コア粒子上に誘電体層を適用する工程;
(iii)前記誘電体層上に銀イオンのための配位層を適用する工程;
(iv)被覆済み粒子の前記配位層を、溶媒中に溶解された銀化合物によって提供される銀イオンと接触させて、前記銀イオンの少なくとも一部を前記配位層上に配位させる工程;
(v)前記銀イオン配位層の表面上に配位した前記銀イオンをさらなる銀イオンとともに還元して、前記配位層上に連続且つ不透明な銀含有層を提供する工程;及び
(vi)任意で、表面修飾外層を適用する工程。
【0040】
最後に、本発明の前記目的は、請求項1~14のいずれか1項に記載の導電性粒子若しくは請求項15に記載の組成物を含む物品を提供することによって解決される。
【0041】
本発明の物品は好ましくは、電子アセンブリ、表示装置、RFIDタグ、センサー、EMIシールディング(EMI:電磁干渉材)、RFIシールディング(RFI:高周波干渉材)、タッチパネル、スマートパッケージ、メンブレンスイッチ、加熱可能コーティング、電気活性ポリマー、印刷電子機器、導電性接着剤コーティング、導電性散逸コーティング、及びガスケットから成る群から選択される。
【0042】
前記銀イオン配位層は好ましくは、銀イオンに結合若しくは錯化することが可能な有機基若しくは有機分子を含むかそれらから成る。
【0043】
本発明の別の実施形態によると、有機分子は好ましくは二官能性有機分子である。この有機分子の第1官能基は、銀イオンを結合若しくは錯化するための銀イオン結合部位若しくは銀イオン錯化部位であり得る銀配位部位を含むべきである。この有機分子の第2官能基は、この有機分子の前記誘電体層の表面上への接着を可能にする接着基である。好ましくはこの接着基は、誘電体層に対する共有結合の形成を可能にする。
【0044】
故に、前記有機分子は好ましくは、スペーサ基により離間された銀配位部位及び接着基を含有する。スペーサ基は炭素数2~24、好ましくは炭素数3~18のアルキレン鎖であることができる。このアルキル鎖は好ましくは直鎖状n-アルキルである。さらに、このアルキル鎖はまた、O、S、若しくはNR等のヘテロ原子を含有し、式中RはH若しくは炭素数1~6、好ましくは炭素数2~4の低級アルキルである。最も好ましくはRはHであり、前記アルキル鎖がヘテロ原子としてNHを含有することができるということを意味する。
【0045】
本発明の好ましい実施形態によると、銀イオン配位層は銀イオン配位部位を含み、及び好ましくは銀イオン配位部位を含む有機官能性シラン、チタネート、アルミネート、若しくはジルコネートを主体とする。
【0046】
本発明の好ましい実施形態によると、銀イオン配位層は銀イオン配位部位を含み又は複数の銀イオン配位部位を含む。
【0047】
好ましい実施形態によると、銀イオン配位層は、それぞれ銀イオン配位部位を含む有機官能性シラン、有機官能性チタネート、有機官能性アルミネート、若しくは有機官能性ジルコネートを主体とする。
【0048】
好ましくは、銀イオン配位部位(1つ若しくは複数)を含む有機官能性シランを、ケイ素酸化物、好ましくはSiO2を含むかそれから成る誘電体層と組み合わせて使用する。
【0049】
しかしながら、銀イオン配位部位を含む前記有機官能性シランはまた、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、スズ酸化物、及びそれらの混合物から成る群から選択される誘電体層にも共有結合するということがわかった。銀イオン配位部位を含む前記有機シランはまた、誘電体層としての有機ポリマーと組み合わせて使用することもできる。
【0050】
別の好ましい実施形態によると、銀イオン配位部位を含む有機官能性チタネートが、チタン酸化物、好ましくはTiO2を含むかそれから成る誘電体層と組み合わせて使用される。
【0051】
本発明の別の好ましい実施形態によると、銀イオン配位部位を含む有機官能性アルミネートが、アルミニウム酸化物、好ましくはAl2O3を含むかそれから成る誘電体層と組み合わせて使用される。
【0052】
本発明の別の好ましい実施形態によると、銀イオン配位部位を含む有機官能性ジルコネートが、ジルコニウム酸化物、好ましくはZrO2を含むかそれから成る誘電体層と組み合わせて使用される。
【0053】
前記有機官能性化合物の金属イオンが誘電体層の前記金属酸化物化合物の金属イオンと一致するならば、銀イオン配位層は誘電体層に容易に付着されることがわかった。
【0054】
例えば、前記有機官能性シランのシラノール基はケイ素酸化物含有誘電体層の表面上のシラノール基と容易に反応する。同じことが、それぞれチタン酸化物層、アルミニウム酸化物層、若しくはジルコニウム酸化物層の表面上の水酸基と容易に反応する、チタネート、アルミネート、若しくはジルコネートにも当てはまる。
【0055】
有機官能性シランはまた、有機ポリマーを含むかそれから成る誘電体層にも結合しやすいことがわかった。
【0056】
別の好ましい実施形態によると、銀イオン配位層は式(I)の少なくとも1つのシランを含み:
(R1O)(4-a-b-c)Si(R2X)a(R3)b(R4)c (I)
式中、aは1、2、若しくは3から選択される整数であり、b及びcは0、1、若しくは2から独立して選択される整数であり、ただしa+b+cは1~3の整数であり、R1は炭素数1~4のアルキルであり、R2は、互いに独立して、それぞれ炭素数1~14の分枝鎖若しくは直鎖アルキレン又は炭素数5~11のシクロアルキレンから選択され、及びR3又はR4は、互いに独立して、それぞれ炭素数1~14の分枝鎖若しくは直鎖アルキル又は炭素数5~11のシクロアルキル又はHから選択され、Xは銀イオン配位部位である。
【0057】
好ましい実施形態によると、R1はメチル、エチル、若しくはn-プロピルから成る群から選択される。好ましくは、R1はメチル若しくはエチルである。
【0058】
R2、R3、及びR4は好ましくは互いに独立して、それぞれ炭素数2~12、好ましくは炭素数3~10、より好ましくは炭素数3~8の分枝鎖若しくは直鎖アルケニルから選択される。R2、R3、及びR4はまた、シクロペンテニル若しくはシクロヘキセニル環を含むシクロアルケニルから選択することもできる。
【0059】
非常に好ましい実施形態によると、a=1及びb=c=0である。
【0060】
別の好ましい実施形態によると、使用すべきシランは予め加水分解済みのシランである。
【0061】
別の好ましい実施形態によると、銀イオン配位部位Xは独立して、メルカプト、チオアルキルエーテル、アミノ、チオシアネート、シアネート、シアニド、ウレイド、カルバメート、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0062】
異なる銀イオン配位部位Xの混合物の場合には、この混合物は異なるXを有する異なるシランの混合物を含むかそれから成ることができる。a=2若しくは3の場合には、1つのシラン分子内でXが異なる部位を示すこともできる。
【0063】
前記チオアルキルエーテルのアルキル基は好ましくは炭素数1~6、好ましくは炭素数2~4の低級アルキルである。チオアルキルエーテルは好ましくはチオメチル、チオエチル、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0064】
好ましくは、式(I)の銀イオン配位部位Xは、メルカプト、チオアルキルエーテル、好ましくはチオメチル、チオエチル、アミノ、チオサルフェート、カルバメート、ウレエート、チオシアネート、シアネート、シアニド、ビピリジル、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0065】
別の好ましい実施形態によると、銀イオン配位層はメルカプトシラン、アミノシラン、チオシアネートシラン、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つのシランを含み、別の非常に好ましい実施形態によると、銀イオン配位層は、メルカプトシラン、アミノシラン、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つのシランを含む。
【0066】
特に好ましい実施形態によると、銀イオン配位層は、好ましくは式(I)においてXがメルカプト(-SH)であるような構造を有するメルカプトシランを含むかそれから成る。
【0067】
銀イオンはイオウ含有基に対し特に親和性を有するため、メルカプトシラン、チオアルキルエーテル含有シラン、若しくはチオシアネート含有シランが特に好ましい。
【0068】
銀配位層の適用のために使用される銀イオン配位有機化合物は好ましくは、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-チオシアナトプロピルトリエトキシシラン、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0069】
最も好ましくは、銀イオン配位層のための銀イオン配位化合物として3-メルカプトプロピルトリメトキシシランが使用される。
【0070】
銀イオン配位化合物がアミノシランである場合には、それは好ましくは以下の例から選択される:
(6-アミノ-n-ヘキシル)(トリエトキシ)シラン、(6-アミノ-n-ヘキシル)(トリメトキシ)シラン、(4-アミノ-3,3-ジメチルブチル)(トリメトキシ)シラン、(H2N(CH2)3)Si(OCH3)3((3-アミノプロピル)(トリメトキシ)シラン、AMMO)、(H2N(CH2)3)Si(OC2H5)3((3-アミノプロピル)(トリエトキシ)シラン、AMEO)、(3-アミノイソブチル)(トリメトキシ)シラン、(3-アミノイソブチル)(トリエトキシ)シラン、(2-アミノエチル)(トリメトキシ)シラン、(2-アミノエチル)(トリエトキシ)シラン、(アミノメチル)(トリメトキシ)シラン、(アミノメチル)(トリエトキシ)シラン、(N-シクロヘキシルアミノメチル)(トリエトキシ)シラン(GENIOSIL XL 926)、(N-フェニルアミノメチル)(トリメトキシ)シラン、(6-アミノ-n-ヘキシル)(メチル)(ジメトキシ)シラン、(3-アミノプロピル)(メチル)(ジメトキシ)シラン、(3-アミノプロピル)(メチル)(ジエトキシ)シラン、(2-アミノエチル)(フェニル)(ジメトキシ)シラン、(2-アミノエチルアミノ)(エチル)(トリエトキシ)シラン (2-アミノエチル)(メチル)(ジエトキシ)シラン、(2-アミノエチル)(メチル)(ジメトキシ)シラン、(1-アミノメチル)(メチル)(ジエトキシ)シラン、(N-シクロヘキシル-アミノメチル)(メチル)(ジエトキシ(dieethoxy))シラン(GENIOSIL XL 924)、(N-エチルアミノ-i-ブチル)(トリメトキシ)シラン、(N-n-ブチル-3-アミノプロピル)(トリメトキシ)シラン、(N-n-ブチル-3-アミノプロピル)(トリエトキシ)シラン、(N-n-ブチル-1-アミノメチル)(トリエトキシ)シラン、(N-n-ブチル-1-アミノメチル)(トリメトキシ)シラン、(ベンジル-3-アミノプロピル)(トリメトキシ)シラン、(ベンジル-3-アミノプロピル)(トリエトキシ)シラン、(N-フェニルアミノメチル)(トリメトキシ)シラン(GENIOSIL XL 973)、(N-フェニルアミノプロピル)-(トリメトキシ)シラン (N-ホルミル-3-アミノプロピル)(トリエトキシ)シラン、(N-ホルミル-3-アミノプロピル)(トリメトキシ)シラン、(N-ホルミル-1-アミノメチル)(メチル)(ジメトキシ)シラン(silae)、(N-ホルミル-1-アミノメチル)(メチル)(ジエトキシ)シラン、(N-n-ブチル-3-アミノプロピル)(メチル)(ジエトキシ)シラン(silan)、(N-n-ブチル-3-アミノプロピル)(メチル)(ジメトキシ)シラン、(N-n-ブチル-1-アミノメチル)(メチル)-(ジメトキシ)シラン、(N-ブチル-1-アミノメチル)(メチル)(ジエトキシ)シラン、(ジアミノエチレン(diaminoethylen)-3-プロピル)(トリエトキシ)シラン、(N-(2-アミノエチル)アミノエチル)(トリメトキシ)シラン、(2-アミノエチルアミノエチル)(トリエトキシ)シラン、(N-(1-アミノエチル)アミノメチル)(トリメトキシ)シラン、(N-(1-アミノエチル)アミノメチル)(トリエトキシ)シラン、(H2N(CH2)2NH(CH2)3)Si(OCH3)3((N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル)(トリメトキシ)シラン、(DAMO))、(2-アミノエチルアミノプロピル)(トリエトキシ)シラン(Silquest A-1130)、(2-アミノエチルアミノエチル)(トリメトキシ)シラン、(2-アミノエチルアミノエチル)(トリエトキシ)シラン、(1-アミノエチルアミノプロピル)(トリメトキシ)シラン、(1-アミノエチルアミノプロピル)(トリエトキシ)シラン、(1-アミノエチルアミノメチル)(トリメトキシ)シラン、(1-アミノエチルアミノメチル)(トリエトキシ)シラン、(N-シクロヘキシル-3-アミノプロピル)(トリメトキシ)シラン(silan)、(N-(N-ベンジルアミノエチル)アミノプロピル)(トリメトキシ)シラン、(3-ウレイドプロピル)(トリメトキシ)シラン、(3-ウレイドプロピル)(トリエトキシ)シラン、(N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル)(メチル)(ジメトキシ)シラン、(N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル)(メチル)(ジエトキシ)シラン、H2N(CH2)2NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3((トリアミノジエチレン(triaminodiethylen)-3-プロピル)(トリメトキシ)シラン、TRIAMO)、(トリアミノジエチレン(triaminodiethylen)-3-プロピル)(トリエトキシ)シラン、(トリアミノジエチレン(triaminodiethylen)-3-プロピル)(トリメトキシ)シラン、(トリアミノジエチレン(triaminodiethylen)-3-プロピル)(トリエトキシ)シラン、(((アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピル)(トリメトキシ)シラン、(((アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピル)(トリエトキシ)シラン、アミノプロピルシラントリオール、(3-トリメトキシ)シリルメチル-O-メチルカルバメート(carbamat)、N-ジメトキシ-(メチル)シリルメチル-O-メチルカルバメート(carbamat)、トリエトキシシリルプロピル)-t-ブチルカルバメート、トリエトキシシリル-プロピルエチルカルバメート、Tris-AMEO) トリス(トリエトキシシリルメチル)アミン(amin)、(Tris-AMMO)、(ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン(amin)、Bis-AMEO)、(ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン(amin)。Bis-AMMO)、(H3CO)3Si(CH2)3NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3(Bis-DAMO)、(H3CO)3Si(CH2)3NH(CH2)2NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3(Bis-TRIAMO)、(H3CO)2(CH3)Si(CH2)3NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)2(CH3)、(H3CO)3(CH3)Si(CH2)SiNH(CH2)2NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)2(CH3)、(H3CO)3Si(CH2)3NH(CH2)2NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3(Bis-DAMO)、(H3CO)3Si(CH2)3NH(CH2)2NH(CH2)2NH(CH2)2NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3(Bis-TRIAMO)、及びそれらの混合物。
【0071】
より好ましくは前記アミノシランは、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノプロピルジメチルエトキシシラン、n-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノエチル-3-アミノ-プロピルメチルジメトキシシラン、若しくは2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランから選択される。
【0072】
3-アミノプロピルトリエトキシシラン若しくは3-アミノプロピルトリメトキシシランが最も好ましい。
【0073】
本発明の別の実施形態によると、前記誘電体層は金属コアの総重量基準で0.5~15重量%の範囲の量で存在する。好ましい実施形態によると、誘電体層は、それぞれ金属コアの総重量基準で、0.6~10重量%、より好ましくは0.7~5重量%の範囲、及びさらにより好ましくは1~3重量%の範囲の量で存在する。
【0074】
驚くべきことに、金属コアを腐食の影響に対して保護し、また環境を金属コアから放出される金属イオンから保護するという上述の目的を果たすためには、誘電体層はほんの微量だけ存在すればよい。
【0075】
別の好ましい実施形態によると、誘電体層は、金属酸化物、好ましくはケイ素酸化物と、有機オリゴマー、有機ポリマー、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの有機成分とのハイブリッド混合物を含むかそれから成る層である。このようなハイブリッド層は、欧州特許第1812519B1号に記載されており、この特許文献を本明細書に援用する。
【0076】
前記ハイブリッド相中の有機オリゴマーとは、本発明においては、高分子化学においては通念となっている概念、すなわち、2~20モノマー単位の連結(Hans-Georg Elias、「Makromolekuele」、4thEdition1981、Huethig & Wepf Verlag、Basle)を意味する。ポリマーは20よりも多くのモノマー単位の連結である。
【0077】
有機モノマーの多様性及び上述の金属酸化物若しくは金属酸化物混合物の使用を考慮すると、原理上、ハイブリッド無機/有機層の形成については広範なバリエーションの可能性がある。その有機セグメントの平均鎖長は2~10,000、好ましくは4~5,000、より好ましくは10~1,000、及び非常に好ましくは40~200モノマー単位である。
【0078】
有機成分として、さらに、21~15,000、好ましくは50~5,000、及びより好ましくは100~1,000モノマー単位の平均鎖長を有する有機ポリマーを使用することが特に好ましい。
【0079】
ハイブリッド層中の前記有機オリゴマー及び/若しくは有機ポリマーは、有機ポリマー化学においては慣例である足場分子によって構築される。例えば、C-C結合、アミン、エステル、アクリレート等がある。
【0080】
ハイブリッド層中の有機オリゴマー及び/若しくは有機ポリマーは、好ましくは好適なモノマーの重合により構築されてもよい。前記モノマーは、アミノ、ヒドロキシル、チオール、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、アルケニル、アルキニル、カルボキシ、カルボン酸無水物、イソシアネート、シアネート、ウレイド、カルバメート、及びエステル基、及びそれらの混合物から成る群から選択される官能性を有していてもよい。有機オリゴマー及び/若しくは有機ポリマーは好ましくは、各対応する金属酸化物に対し共有結合する。しかしながら、有機オリゴマー及び/若しくは有機ポリマーが前記金属酸化物と共有結合を形成しないこともまた可能である。
【0081】
本発明のさらなる実施形態では、有機オリゴマー及び/有機ポリマーはハイブリッド層の形成中に調製されるのではなく、その代わりに、使用される有機成分が、金属酸化物への付着を可能にする反応性基を有する反応性有機オリゴマー及び/若しくはポリマーを含む。
【0082】
反応中に、生ずる無機ネットワークに直接組み込むことのできる、反応性有機オリゴマー及び/若しくは有機ポリマーの例としては以下が挙げられる:シラン修飾ポリエチレンイミン若しくはポリブタジエン、又はアミノシラン修飾ポリエチレンオキシドウレタン。これらの化合物のためには、100~1.000g/molの特に低い分子量が好ましい。この種の低分子量化合物は、無機金属酸化物ネットワークに対し特に多数の連結部を有し、そのためより均質に分散された混合無機/有機層を生成する。
【0083】
この種の市販の化合物の例としては以下が挙げられる:
トリメトキシシリルプロピル置換ポリエチレンイミン、ジメトキシメチルシリルプロピル置換ポリエチレンイミン、トリエトキシシリル修飾ポリブタジエン、ジメトキシメチルシリル修飾ポリブタジエン、(N-トリエトキシシリルプロピル)-O-ポリエチレンオキシドウレタン、及びポリ(トリメチルシリルプロピン)(全て例えば、ABCR GmbH & Co.Postfach 210135、Hansastr.29c、D-76151 Karlsruhe、Germanyから入手可能)。さらなる例としては、Bakelite AG(Gennaer Strasse 2-4、D-58642 Iserlohn-Letmathe)によりリソール若しくはノボレークとして製造販売されている種類のシラン修飾フェノール-ホルムアルデヒドオリゴマーが挙げられる。
【0084】
本発明のさらなる実施形態では、反応性オリゴマー及び/若しくはポリマーとして、反応性の、好ましくは重合性の、官能基を有する化合物を使用することも可能である。前記重合性官能基は、例えば、オリゴマー及び/若しくはポリマーの一連の反応、例えばポリマー類似反応(polymer-analogous reaction)によって調製することができる。
【0085】
これらの反応性オリゴマー及び/若しくはポリマーは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド、ポリオール、ポリウレタン、ポリオレフィン、及びそれらの混合物から成る群から選択される反応性ポリマーであってよい。
【0086】
好ましい実施形態によると、前記誘電体層はケイ素酸化物層である。より好ましくは、ケイ素酸化物は二酸化ケイ素であるか二酸化ケイ素から成る。
【0087】
本発明の好ましい実施形態によると、前記ケイ素酸化物、好ましくはSiO2は、前記金属コアの総重量基準で0.5~15重量%の範囲、好ましくは0.6~10重量%の範囲、好ましくは0.7~5重量%の範囲、より好ましくは1~3重量%の範囲の量で存在する。
【0088】
本発明の別の実施形態によると、誘電体層は、二酸化ケイ素と、ポリマーから成る第2の誘電体層と、から成り、前記第2の誘電体層は二酸化ケイ素層上に直接、又は銀イオン配位層と二酸化ケイ素層との間に、位置付けされている。
【0089】
本発明の別の実施形態によると、誘電体層は2、3、若しくは4層のサブレーヤを含む多層構造を有することができる。好ましくは誘電体層は、好ましくは異なる性質の、2層のサブレーヤから成る。本発明の別の実施形態によると、誘電体層は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、スズ酸化物、若しくはそれらの混合物から成る群から選択される金属酸化物サブレーヤと、有機ポリマーサブレーヤを含むかそれから成るサブレーヤとから形成される。前記有機ポリマーサブレーヤは好ましくは、前述した金属酸化物サブレーヤよりも上若しくは下のいずれかでその金属酸化物サブレーヤと直接接触して配置される。
【0090】
本発明の別の実施形態によると、誘電体層は、ケイ素酸化物サブレーヤ、好ましくはSiO2サブレーヤと、誘電体有機ポリマーサブレーヤとから成り、前記有機ポリマーサブレーヤは前記ケイ素酸化物層、好ましくはSiO2サブレーヤと直接接触して位置付けされる。本発明の一実施形態によると、有機ポリマーサブレーヤは金属コアとケイ素酸化物層、好ましくはSiO2サブレーヤとの間に配置される。本発明の別の実施形態によると、有機ポリマーサブレーヤはケイ素酸化物層、好ましくはSiO2サブレーヤと銀イオン配位層との間に配置される。
【0091】
つまり、誘電体有機ポリマーサブレーヤはケイ素酸化物層、好ましくはSiO2サブレーヤよりも下若しくは上に配置されることができるが、好ましくはケイ素酸化物層、好ましくはSiO2サブレーヤと直接接触している。
【0092】
前記ポリマーサブレーヤはポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド、ポリオール、ポリウレタン、ポリオレフィン、及びそれらの混合物から成る群から選択されるポリマーであることができる。
【0093】
ポリアクリレート及び/若しくはポリメタクリレートが本発明で使用するのに特に好ましい有機ポリマーである。
【0094】
本発明の別の実施形態によると、誘電体層は有機ポリマー、好ましくは純粋な有機ポリマーである。有機ポリマーは好ましくはポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド、ポリオール、ポリウレタン、ポリオレフィン、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0095】
本発明の一実施形態によると、誘電体層はポリアクリレート及び/若しくはポリメタクリレート、好ましくは純粋なポリアクリレート及び/若しくはポリメタクリレートである。
【0096】
本発明の別の実施形態によると、前記銀含有層、好ましくは銀から成る層は、当該導電性粒子の総重量基準で5~45重量%、好ましくは10~40重量%、より好ましくは15~35重量%、より好ましくは20~30重量%の量で存在する。
【0097】
本発明の別の実施形態によると、銀含有層、好ましくは銀から成る層は、導電性粒子の総重量基準で20~40重量%、より好ましくは30~35重量%の量で存在する。
【0098】
別の実施形態によると、銀含有層、好ましくは銀から成る層は、導電性粒子の総重量基準で10~30重量%、好ましくは15~20重量%の量で存在する。
【0099】
本発明の別の実施形態によると、銀含有層、好ましくは銀から成る層の厚みは50nm~600nm、さらに好ましくは80nm~500nm、さらに好ましくは100nm~420nmの範囲である。
【0100】
本発明の一態様によると、銀含有層、好ましくは銀から成る層の導電性粒子の総重量に対する重量比は好ましくは、金属コアの粒径が小さいほど大きくなる。金属コアの粒径が大きくなると、銀含有層、好ましくは銀から成る層の導電性粒子の総重量に対する重量比は好ましくは小さくなる。
【0101】
例えば、金属コアのメジアン粒径がd50=5μmである場合には、銀含有層、好ましくは銀から成る層の重量は好ましくは導電性粒子の総重量基準で20~40重量%の範囲、より好ましくは30~40重量%の範囲となる。
【0102】
例えば、金属コアのメジアン粒径がd50=20μmである場合には、銀含有層、好ましくは銀から成る層の重量は好ましくは、それぞれ導電性粒子の総重量基準で10~30重量%の範囲、より好ましくは15~25重量%の範囲となる。
【0103】
例えば、金属コアのメジアン粒径がd50=45μmである場合には、銀含有層、好ましくは銀から成る層の重量は好ましくは、それぞれ導電性粒子の総重量基準で5~30重量%の範囲、より好ましくは7~15重量%の範囲である。
【0104】
本発明の別の実施形態によると、銀含有層は滑らかな表面を有する。
【0105】
本発明の別の実施形態によると、銀含有層は、前記銀含有層の総重量基準で少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも90重量%、さらに好ましくは少なくとも98重量%の元素状銀を含む。好ましい実施形態によると、銀含有層は元素状銀から成る。
【0106】
本発明の一実施形態によると、当該導電性粒子は、0.2以上100mΩ*cm未満の範囲の電気粉末抵抗率を有する。好ましくは、導電性粒子は0.3以上50mΩcm未満の範囲、さらに好ましくは0.4以上20mΩcm未満の範囲、さらに好ましくは0.45以上10mΩcm未満の範囲、さらに好ましくは0.5~5mΩcmの範囲、さらに好ましくは0.55~1.5mΩcmの範囲、さらに好ましくは0.6~1mΩcmの範囲の電気粉末抵抗率を有する。
【0107】
電気粉末抵抗率は、Milliohmmeter Resistomat(登録商標)2316(Burster Praezisionsmesstechnik GmbH & Co.KG、76593 Gernsbach、Germany)を用いて、その実験パートの指示に従い測定される。
【0108】
本発明の別の実施形態によると、金属コアは、2μm~100μmの範囲、さらに好ましくは3μm~85μmの範囲、さらに好ましくは4μm~75μmの範囲、最も好ましくは4μm~40μmの範囲、及び非常に最も好ましくは4μm~30μmの範囲のメジアン径d50を有する。
【0109】
メジアンd50値は、粒子の50%がその値以下の直径を有する金属コアの体積基準累積粒径分布の直径を示す。粒子の残りの50%は指定された値よりも大きな直径を有する。
【0110】
粒径分布は、Helos/BF(Sympatec GmbH System-Partikel-Technik、38678 Clausthal-Zellerfeld、Germany)を用いたレーザー回折によりメーカーの指示書に従って測定される。
【0111】
金属コアのd50値は意図される用途に応じて選択される。
【0112】
例えば、印刷電子機器及び導電性接着剤用途のための導電性インク及び塗料用には、2~10μm、好ましくは3~8μmの範囲のメジアン径d50を有する金属コアが使用される。
【0113】
例えば、導電性接着剤及びシーラント、電気活性ポリマー及びEMI/RFIシールディングのためには、20~75μmの範囲のメジアン径d50を有する金属コアが使用される。
【0114】
本発明の別の実施形態によると、金属コアは球状形態、板状形態、若しくは樹状形態を有する。本発明の一態様によると、金属コアはまた、球状金属コア、板状金属コア、及び樹状金属コアの混合物とすることもできる。本発明の好ましい実施形態によると、金属コアは実質的に球状形態であり、好ましくは球状形態である。
【0115】
本発明の一態様によると、金属コアは、スパンΔDにより規定した場合に狭い粒径分布を有する:
ΔD=(d90-d10)/d50
【0116】
d90値は、レーザー回折により測定した場合に、金属コアの90%が体積基準の累積分布の指定された値未満の粒径を有することを意味する。d50値は、レーザー回折により測定した場合に、金属コアの50%が体積基準の累積分布の指定された値未満の粒径を有することを意味する。d10値は、レーザー回折により測定した場合に、金属コアの10%が体積基準の累積分布の指定された値未満の粒径を有することを意味する。
【0117】
スパンΔDは好ましくは、0.5と5未満の間の範囲、さらに好ましくは0.7と4未満の間の範囲、さらに好ましくは0.8と3未満の間の範囲、さらに好ましくは0.9と2.5未満の間の範囲である。
【0118】
金属コアが特に粉末(ショット)であるならば、5~10μmのd50を有する粉末については前記スパンΔDは好ましくは1.9~2.2の範囲である。10より大きく20μm以下の範囲のd50を有する粉末については、前記スパンは好ましくは1.2~4.6の範囲、及びより好ましくは1.5~1.7の範囲である。
【0119】
スパンがより小さいと、当該導電性粒子を含有する硬化コーティング中でより多くの粒子-粒子相互作用が生じ得るため、より良好な導電性が保証される。
【0120】
接着剤においては、10より大きく20μm以下の範囲のd50を有する粉末を使用するのが好ましい。
【0121】
スクリーン印刷用途においては、5~10μmの範囲のd50を有する粉末を使用するのが好ましい。
【0122】
前記金属コアが特に板状(薄片)であるならば、20~40μmの範囲のd50を有する薄片に対して好ましいスパンΔDは1.0~1.4、特に1.1~1.35の範囲である。
【0123】
このような薄片は好ましくは導電性コーティング若しくはEMIシールディングにおいて使用される。
【0124】
前記金属板状コアが10以上20μm未満の範囲のd50を有する場合には、スパンΔDは好ましくは0.9~2.1の範囲、及びより好ましくは1.3~2.0の範囲である。
【0125】
スパンが減少すると当該導電性粒子の導電性が増加するということがわかった。
【0126】
理論に拘泥されるものではないが、本発明者らは、導電性粒子の粒径分布が小さくなるほど、即ちスパンΔDが小さくなるほど、導電性粒子の塗料、ラッカー、接着剤、シーラント等のキャリア材料内への充填が改善すると考えている。本発明の導電性粒子の密な充填は、導電性を改善するため有利である。そのことを考慮して、本発明の一実施形態によると、当該導電性粒子は実質的に球状形態であることが好ましい。
【0127】
さらに本発明者らは、金属コアのスパンΔDが狭くなるほど、銀含有層、好ましくは銀から成る層の厚みは粒子間でより均質となると考えている。銀含有層、好ましくは銀から成る層は、厚さに関してより均一に沈着されていることがわかった。
【0128】
本発明の別の実施形態によると、金属コアは、メジアン径d50の平均厚h50に対するアスペクト比が5:1~1000:1の範囲、好ましくは20:1~500:1の範囲であるようなメジアン径d50及び平均厚h50を有する板状金属コアである。
【0129】
金属コアのメジアン径d50もまた、上述したようなレーザー回折を用いて測定される。
【0130】
板状金属コアの平均厚は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて決定することができる。この際、代表となる平均値を得るためには十分な数の粒子を測定する必要がある。慣習的に、およそ100個の粒子が測定される。
【0131】
電子顕微鏡において慣例的に使用される樹脂、例えばTEMPFIX(Gerhard Neubauer Chemikalien、D-48031 Munster、Germany)を試料板に適用し、ホットプレート上で加熱して軟化させる。その後、試料板をホットプレートから外し、各板状金属コアを軟化した樹脂上に散布する。冷却の結果、樹脂は再び固体となり、散布されたアルミニウム顔料は-接着と重力との相互作用に起因して-ほぼ垂直に直立して調製されて試料板に固定されることができる。結果として、板状金属コアは、電子顕微鏡において横方向に容易に測定することができる。厚さの測定において、表面に垂直な平面に対する板状金属コアの方位角アルファαが見積もられ、次式に従って厚さを評価すること可能となる:
heff=hmes/cosα
【0132】
板状金属コアは、導電性粒子が、例えばある領域上の導電経路として、平面内に配置されるべき場合には好ましい。例えば導電性粒子が、平坦な領域上に導電経路が配置される印刷回路の製造において使用される場合には、板状構造が有利である。ある領域上で板状粒子が互いよりも上及び下に配置されることができ、このようにして導電経路が形成される。
【0133】
2次元の態様でのみならず3次元の態様で電気接触が配置されるべき場合には、球状導電性粒子が好ましい。例えば、2つの印刷回路間で電気接触が行われるべき場合には、各対応するキャリア媒体、例えば接着剤中に、球状導電性粒子を組み込むべきである。この場合には、球状導電性粒子が互いに積み重ねられ、このようにして3次元電気接触が構築される。
【0134】
面実装接着剤においては、球状導電性粒子を使用するのが好ましい。
【0135】
製品が使用時にその機能において活性となる厚膜特性を含む電子製品の製造用にも、球状導電性粒子を使用するができる。例えば、当該導電性粒子は、スーパーキャパシタを含むチップキャパシタ設計のための、及び特には多層キャパシタのためのキャパシタ電極を作製するために使用されてもよい。当該導電性粒子はまた、電流を集めて分配するための厚膜格子に使用することもできる。例えば当該導電性粒子は、例えば除氷及び/若しくは防曇のために窓上に抵抗加熱のための線を作製するために使用してもよい。また、当該導電性粒子は光起動モジュール用の格子電極を作製するために使用してもよい。
【0136】
当該導電性粒子のための別の重要な用途は、携帯電話及びコンピュータ等の電子部品の動作による電磁波の干渉を防ぐための電磁シールディング用のフィルム若しくはシーラントを作製することである。
【0137】
本発明の好ましい実施形態によると、前記金属コアは本質的に、球状金属コアである。
【0138】
真円ファクター(円形度)は好ましくは、シスメックス株式会社(日本、神戸)の湿式フロー式粒子径・形状分析装置(Flow Particle Image Analyzer)FPIA-3000を用いて測定される。FPIA-3000はメーカーの指示に従い操作され、真円ファクターの算出は数により重み付けされ、即ち算出は数基準で行われる。
【0139】
好ましい実施形態によると、真円ファクターは0.85~1の範囲、さらに好ましくは0.88~0.98の範囲、さらに好ましくは0.90~0.97の範囲である。円形ファクターRfが1であるとは、その金属コアが完全に球形であるということを意味する。
【0140】
可能な限り完全球に近い金属コアを有することが好ましいが、金属コアは完全球の形態を有している必要はない。
【0141】
上記で説明したように、3次元導電経路を製造する場合に球状導電性粒子を使用することは有利である。この目的のためには、円形ファクターが上記指定された範囲内であれば十分である。指定された範囲内では、当該導電性粒子は十分に3次元の接触を有し、十分な3次元導電経路を構築する。
【0142】
本発明はまた、請求項1~14のいずれか1項に記載の導電性粒子を含む組成物に関する。
【0143】
当該組成物中の、接着剤及びシーラント用途における、当該導電性粒子の充填剤添加量は好ましくは、組成物の総重量基準で50~95重量%の範囲、好ましくは60~90重量%の範囲、さらに好ましくは65~85重量%の範囲、さらに好ましくは70~80重量%の範囲である
【0144】
当該組成物中の、導電性コーティング用途における、当該導電性粒子の充填剤添加量は好ましくは15~30重量%の範囲、好ましくは18~25重量%の範囲である。
【0145】
好ましくは、当該組成物は、ペースト、コーティング、フィルム、箔、接着剤、充填剤、プラスチック、エラストマー、シーラント、ゴム、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0146】
好ましくは、前記コーティングは、インク、塗料、ラッカー、及びそれらの混合物から成る群から選択される。
【0147】
本発明の好ましい実施形態によると、導電性粒子を含む当該組成物はペースト様若しくはペーストである
【0148】
前記接着剤は好ましくは面実装接着剤である。
【0149】
導電性接着剤は好ましくは、電子部品と組み合わせて使用され、例えば電子部品及び電子組立部品を印刷回路上に接着する。
【0150】
例えば、前記導電性接着剤は、電子システム中の変動性を改善するために熱的及び電気的な相互接続及び構造的な接合において使用される導電性エポキシ接着剤であり得る。有利には、導電性エポキシ接着剤は室温で硬化する。
【0151】
当該導電性粒子はまた、導電性フィルム、好ましくは導電性接着剤フィルムにおいて使用することができる。これらの導電性接着剤フィルムは自動車用電子機器、顧客用及び産業用電子機器、防衛及び空域電子機器、携帯型通信機器及び計算機、太陽電池技術、LED照明、医療用電子機器、並びにRFIDラベル等のRFID技術において使用することができる。
【0152】
前記導電性のインク、塗料、若しくはラッカーは、触覚メンブレンスイッチ用フレキシブル回路、デスクトップ及びノートブックPC用キーボード、加熱素子、自動車用センサー、バイオセンサー、例えばブドウ糖検査用紙、EKG-ECG電極、特に筋肉刺激用の、TENSパッド(TENS:経皮的電気的神経刺激)、特に薬物送達用の、イオン泳動パッド、非接触型スマートカード用アンテナ、及びRFIDラベル、タッチスクリーン、照明、印刷回路基板、電位差計、並びに家庭用機器の製造において使用することができる。
【0153】
前記RFIDラベル及び技術はスマートカード、パスポート、クレジットカード、輸送決済システム等において使用することができる。
【0154】
導電性印刷インク等の導電性インク、導電性塗料、及び導電性ラッカーは、繊細なライン印刷を可能とし、同時に信頼性の高い導電性経路を構築することができる。
【0155】
導電性インクは一般に、印刷電子機器の製造のために使用することができる。導電性インクはまた、触覚メンブレンスイッチ、自動車用タッチスクリーン、バックライトスイッチ、キーレスエントリー装置、発光表示装置、印刷LED照明、シールディング、太陽電池セル、及び高アンペア設計のために使用することもできる。
【0156】
さらに、本発明の導電性粒子は、高い導電性を伴う用途において使用される純粋な銀粒子のコスト効率の良い代替物である。
【0157】
前記RFID技術は、スマートカード、パスポート、クレジットカード、輸送決済システム等において使用される。本発明の導電性インクを使用して、印刷によりRFID製品を製造することができる。
【0158】
本発明の導電性粒子を含有する接着剤は、面実装接着剤の提供を可能にする。面実装接着剤は特に、電子アセンブリの製造における高速組立プロセスにおいて使用される。
【0159】
好ましい実施形態によると、本発明の導電性粒子は導電性ペースト及び導電性コーティングにおいて使用される。
【0160】
特に、本発明の導電性粒子は電子アセンブリ、表示装置、RFIDタグ、センサー、EMIシールディング、タッチパネル、スマートパッケージ、メンブレンスイッチ、加熱可能コーティング、電気活性ポリマー、印刷電子機器、導電性接着剤コーティング、導電性散逸性コーティング、及びガスケットにおいて使用される。
【0161】
請求項1~14のいずれか1項に記載の導電性粒子を含有する導電性製剤。
【0162】
ペースト、コーティング、フィルム、箔、接着剤、充填剤、プラスチック、エラストマー、シーラント、ゴム、及びそれらの混合物における本発明の導電性粒子は、特に低コストで、優れた導電性と優れた熱伝導の両方の提供を可能にする。金属コアの使用に起因して、当該導電性粒子は優れた熱放散及び放熱を提供する。電子部品は通常熱の影響を受けやすいため、このことは特に電子アセンブリにおいて有利である。したがって、電子アセンブリがその内装プロセスによって生じ得る熱に曝された場合には、その熱が電子アセンブリから放散され放出される。故に、本発明の導電性粒子は金属コアを用いることにより大きな利点を提供する。
【0163】
本発明の導電性粒子は、下記の工程を含む製造方法によって製造される:
(i)金属コア粒子を提供する工程;
(ii)前記コア粒子上に誘電体層を適用する工程;
(iii)前記誘電体層上に銀イオンのための配位層を適用する工程;
(iv)工程(iii)で得られた粒子の前記配位層を、溶媒中に溶解された銀化合物により提供された銀イオンと接触させ、前記銀イオンの少なくとも一部を前記配位層上に配位させる工程;
(v)前記銀イオン配位層の表面上に配位した前記銀イオンをさらなる銀イオンとともに還元して、前記配位層上に連続且つ不透明な銀含有層を提供する工程;及び
(vi)任意で、表面修飾外層を適用する工程。
【0164】
前記金属コア粒子は、気体、好ましくは不活性気体を用いた溶融金属の噴霧により製造することができる。得られる金属粒子の粒径分布は噴霧プロセスにより制御することができる。例えば、前記好ましくは不活性の気体の圧力及び前記気体ジェットの種類が、得られる金属粒子、即ち前記金属コアの粒径及び粒径分布に影響し得る。任意で、得られる金属粒子を、気体分級、空気分離、沈降、サイクロン技術、篩い分け等によって分級することができる。
【0165】
前記誘電体層は、湿潤化学的に前記金属コア粒子に適用できる。例えば誘電体層は、ゾルゲル法を用いて、若しくは各対応する金属塩を水中で加水分解することによって適用することができる。誘電体層を化学蒸着(CVD)若しくは物理蒸着(PVD)を用いて適用することも可能である。
【0166】
誘電体層は好ましくはゾルゲル法により適用され、その後20~200℃の範囲の温度、さらに好ましくは25~100℃の範囲の温度で乾燥することができる。あるいは、誘電体層で被覆された被覆済み金属コアは、乾燥工程を経ずにフィルターケーキ若しくはペーストとして使用することができる。別の好ましい実施形態によると、誘電体層は適用後に焼成されない。
【0167】
誘電体層が焼成されない場合、即ち完全に脱水されない場合には、誘電体層はその表面になお複数の水酸基を含有し、それにより前記銀イオン配位層、好ましくは銀イオン配位有機分子の共有結合が可能となる。
【0168】
銀イオン配位層を誘電体層上に適用するために、実質的に誘電体層の形成工程後に、銀イオン配位剤、例えば銀イオン配位部位を含む有機官能性シラン、銀イオン配位部位を含む有機官能性チタネート、銀イオン配位部位を含む有機官能性アルミネート、若しくは銀イオン配位部位を含む有機官能性ジルコネートを分散物に加える。好ましくは、銀イオン配位部位を含む有機官能性シランが使用される。
【0169】
誘電体層がゾルゲル法によって形成される場合、銀イオン配位層は好ましくは、ワンポット合成において、誘電体層を形成するゾルゲル法の反応の最後に、例えば各対応する有機官能性シランを分散物に加えることによって形成される。
【0170】
別の実施形態では、配位層を形成する前に、シリカ被覆金属粒子をゾルゲル法の反応混合物から分離することができる。
【0171】
銀イオン配位剤はその後、誘電体層の表面に、好ましくは共有結合により、結合する。
【0172】
これに続いて、このようにして被覆された粒子をその後、銀イオン生成剤、例えば可溶性銀塩、例えば硝酸銀と接触させる。銀イオン生成剤は粒子分散物、好ましくは有機溶媒中の粒子分散物に添加される。例えば加水分解により、銀イオン生成剤から放出された銀イオンはその後、誘電体層の表面上の銀イオン配位剤によって捕捉される。その後、還元剤を加えて誘電体層上に配位された銀イオンを元素状銀へと還元する。任意の適切な還元剤、例えばグルコースを使用することができる。銀イオンは好ましくはナノメートルの銀粒子に還元され、それが次に初期核若しくは結晶核として作用してさらなる銀及び銀イオンの沈着をもたらし、それらが還元されて誘電体層上に均質且つ不透明な銀層を提供する。
【0173】
銀層の厚さは、元素状銀の誘電体層上への沈着の持続時間によって制御することができる。
【0174】
任意で、表面修飾剤の表面修飾外層を適用することができる。これらの表面修飾剤は例えば独国特許第198 20 112号により既知である。こうした表面修飾剤の助けを借りて、当該導電性粒子はそれらの塗布特性の点において、例えばコーティング材料、印刷インク、接着剤、若しくはシーラントであってよい、使用される各塗布媒体と適合性となされ得る。
【0175】
本発明を、以下の実施例及び図面においてより詳細に説明するが、それらにおける多くの修正及び変更が当業者には明らかであるため、それらは例示を意図したものにすぎない。
【実施例】
【0176】
<図面>
図1は、導電性粒子の概略図である。図(a)~(c)は先行技術に従う導電性粒子を示す。導電性粒子(d)は本発明を例示している。
【0177】
導電性粒子(a)は、銀層が球状基材上に直接適用された構造を有する(比較例1)。
【0178】
導電性粒子(b)は、銀イオン配位層が球状基材と銀層との間に配置された構造を有する(比較例2)。
【0179】
導電性粒子(c)は、誘電体層が球状基材上に直接適用され、及び銀層が誘電体層上に直接適用された構造を有する(比較例3)。
【0180】
本発明の導電性粒子(d)は、誘電体層が球状金属コア上に適用され、前記誘電体層上に銀イオン配位層が適用され、及び最後に前記銀イオン配位層上に銀含有層が適用された構造を有する(本発明例)。
【0181】
図2は、
図1に概略的に示された導電性粒子のSEM画像を示す。画像A、B、C、Dは、それぞれ概略図(a)、(b)、(c)、及び(d)によって例示された実施形態に対応する。SEM画像A、B、Cにおけるスケールバーは2μmを反映し、SEM画像Dにおけるスケールバーは1μmを反映している。
【0182】
SEM Aは比較例1に従う銀被覆アルミニウム粉末である。
【0183】
SEM Bは、銀イオン配位層で被覆された後、銀層で被覆された、比較例2に従うアルミニウム粉末である。
【0184】
SEM Cは、誘電体層及び銀層で被覆された、比較例3に従うアルミニウム粉末である。
【0185】
SEM Dは、誘電体層、銀イオン配位層、及び銀層で被覆された、実施例28に従うアルミニウム粉末である。
【0186】
図3は、本発明の導電性粒子の銀含有量のよる粉末抵抗率を示すプロットであり、アルミニウムコア粒子はd
50=45μm(四角)及びd
50=20μm(丸)を有する。
【0187】
図4は、本発明の導電性粒子の銀含有量による粉末抵抗率を示すプロットであり、アルミニウムコア粒子はd
50=5μm(三角)を有する。
【0188】
<実施例>
1.実施例及び比較例の調製
1.1 比較例
1.1.1 Al-Ag(比較例1)
撹拌機(250rpm)及び縮合器を備えた1Lの二重壁ガラス反応器中で、50gのアルミニウム粉末(d50=20μm)を183gのエタノール中に分散させた。この分散物を溶媒の沸点未満に加熱した。その後、32.40gの水中に溶解した29.3gのグルコース、及び8.5gのジエタノールアミンを加えた(それぞれの溶液を1バッチとして)。5分間の分散の後、6.4gの水中に溶解した13.8gの硝酸銀(15%Agに等しい)を15分かけて加えた。この分散物を1時間撹拌した。室温に冷却した後、この銀被覆アルミニウムをろ過し、水(各250ml)及びエタノール(各250ml)で2度ずつ洗浄した。得られた材料を減圧下で5時間乾燥した。
【0189】
1.1.2 Al-MTMO-Ag(比較例2;Wang Y.ら、「Surface Thiolation of Al Microspheres to Deposite Thin and Compact Ag Shells for High Conductivity(高い導電率のために薄くてコンパクトなAgシェルを沈着させるためのAlミクロスフィアの表面チオール化」、Langmuir 2015、31、13441-14451に記載の方法とは対照的な、ワンポット合成)
撹拌機(250rpm)及び縮合器を備えた1Lの二重壁ガラス反応器中で、50gのアルミニウム粉末(d50=20μm)を183gのエタノール中に分散させた。この分散物を溶媒の沸点未満に加熱した。0.25gの3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MTMO)を加え、混合物を2時間撹拌した。32.40gの水中に溶解した29.3gのグルコース、及び8.5gのジエタノールアミンを加えた(それぞれの溶液を1バッチとして)。5分間の分散の後、6.4gの水中に溶解した13.8gの硝酸銀(15重量%Agに相当)を15分かけて加えた。この分散物を1時間撹拌した。室温に冷却した後、この銀被覆アルミニウムをろ過し、水(2回、各250ml)及びエタノール(2回、各250ml)で洗浄した。得られた材料を減圧下で5時間乾燥した。
【0190】
1.1.3 Al-SiO2-Ag(比較例)
1.1.3.1 Al-SiO2(比較例12~14)
撹拌機(250rpm)及び縮合器を備えた1Lの二重壁ガラス反応器中で、240gのアルミニウム粉末(d50=20μm)を293gエタノール中に分散させた。17.64gのテトラエトキシシラン(2重量%のSiO2に相当)を添加した後、混合物を溶媒の沸点未満に加熱した。その後、4.5gのNH3(水中25%)及び20gの水を1バッチにおいて加えた。さらに3時間撹拌した後、生成物を室温に冷却し、ろ過し、及びエタノール(3回、各100ml)で洗浄した。さらなる実験には、この材料をペースト形態で直接使用した。
【0191】
d50=5μm(比較例14)及びd50=45μm(比較例13)を有する出発原料もまたSiO2で被覆した。
【0192】
【0193】
1.1.3.2 Al-SiO2-Ag(比較例3~11)
1.1.3.1項で調製された材料を1.1.1項に従い銀でコーティングした。
【0194】
硝酸銀、グルコース、及びジエタノールアミンの量及び投入比を変化させることにより、他の銀含有量(10~40重量%)を有する材料を調製した(表2参照)。さらに、より粗大な(d50=45μm)及びより微細な(d50=5μm)SiO2被覆アルミニウム粒子上の銀被覆を行った。
【0195】
【0196】
1.1.4 Wang Y.ら、「Surface Thiolation of Al Microspheres to Deposite Thin and Compact Ag Shells for High Conductivity(高い導電率のために薄くてコンパクトなAgシェルを沈着させるためのAlミクロスフィアの表面チオール化」、Langmuir 2015、31、13441-14451)による導電性粒子
1.1.4.1 Al-MTMO(比較例15a、16a)
撹拌器(250rpm)及び縮合器を備えた1Lの二重壁ガラス反応器中で、40gの出発原料(d50=20μm)を200mlのエタノール及び600mlの水中(比較例15)又は400mlのエタノール及び400mlの水中(比較例16)に分散させた。各実験に対し20gの3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(33%のMTMOに等しい)を加え、混合物を還流下で加熱した。さらに6時間撹拌した後、この材料を室温に冷却し、ろ過し、及びエタノール(3回、各100ml)で洗浄した。生成物を減圧下、60℃で4時間乾燥した。
【0197】
1.1.4.2 Al-MTMO-Ag(比較例17、18)
1.1.4.1項で調製された材料を銀で被覆した。撹拌機(250rpm)及び縮合器を備えた1Lの二重壁ガラス反応器中で、30gのMTMO修飾材料を110gのエタノール中に分散させた。この分散物を溶媒の沸点未満に加熱した。その後、27.60gの水中に溶解した25gのグルコース、及び7.3gのジエタノールアミンを別々に加えた。5分間の分散の後、5.5gの水中に溶解した11.8gの硝酸銀(20重量%のAgに相当)を60分かけて加えた。この分散物を1時間撹拌した。室温に冷却した後、この銀被覆アルミニウムをろ過し、それぞれ水(各250ml)及びエタノール(各250ml)で2回ずつ洗浄した。得られた材料を真空下、室温で5時間乾燥した。
【0198】
比較例15を銀被覆することによって比較例17を調製した。同様に比較例18は比較例16に対応する。
【0199】
1.2 本発明による実施例
1.2.1 Al-SiO2-MTMO-Ag
1.2.1.1 Al-SiO2-MTMO(実施例19a~23a)
撹拌機(250rpm)及び縮合器を備えた1Lの二重壁ガラス反応器中で、240gアルミニウム粉末(d50=20μm)を293gのエタノール中に分散させた。17.64gのテトラエトキシシラン(2重量%のSiO2に相当)を添加した後、混合物を溶媒の沸点未満に加熱した。その後、4.5gのNH3(水中25%)及び20gの水を1バッチにおいて加えた。さらに2時間撹拌した後、1.2gの3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(0.5重量%のMTMOに等しい)を加え、混合物を1時間撹拌した。最後に、生成物を室温に冷却し、ろ過し、及びエタノール(3回、各100ml)で洗浄した。さらなる実験には、この材料をペースト形態で直接使用した。
【0200】
反応混合物に添加する3-メルカプトプロピルトリメトキシシランの量を調節することによって、最終生成物中の3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン含有量を0.5重量%~1重量%の間で変化させた。他の粒径(5μm、45μm)を有するアルミニウム粒子に上述の指示を転用した。対応する実施例19~23を表3にまとめる。
【0201】
【0202】
1.2.1.2 Al-SiO2-MTMO-Ag(実施例24~34)
1.2.1.1項で調製された材料を1.1.1項に従い銀で被覆した。
【0203】
硝酸銀、グルコース、及びジエタノールアミンの量及び投入比を変化させることにより、他の銀含有量(5~40重量%)を有する材料を調製した。さらに、より粗大な(d50=45μm)及びより微細な(d50=5μm)アルミニウム粒子上の銀被覆を行った。全ての実施例において、使用したMTMO濃度はAlに対して0.5重量%であった。
【0204】
【0205】
1.2.2 Al-SiO2-AMEO-Ag
1.2.2.1 Al-SiO2-AMEO(実施例35a~38a)
撹拌機(250rpm)及び縮合器を備えた1Lの二重壁ガラス反応器中で、240gのアルミニウム粉末(d50=5μm)を293gエタノール中に分散させた。17.64gのテトラエトキシシラン(2重量%のSiO2に相当)を添加した後、混合物を溶媒の沸点未満に加熱した。その後、4.5gのNH3(水中25%)及び20gの水を1バッチにおいて加えた。さらに2時間撹拌した後、1.2gの3-アミノプロピルトリエトキシシラン(0.5重量%のAMEOに等しい)を加え、混合物を1時間撹拌した。最後に、生成物を室温に冷却し、ろ過し、及びエタノール(3回、各100ml)で洗浄した。さらなる実験には、この材料をペースト形態で直接使用した。
【0206】
反応混合物に添加される3-アミノプロピルトリエトキシシランの量を調節することによって、最終生成物中の3-アミノプロピルトリエトキシシラン含有量を0.5重量%~4重量%の間で変化させた。対応する実施例35a~38aを表5にまとめる。
【0207】
【0208】
1.2.2.2 Al-SiO2-AMEO-Ag(実施例39~42)
撹拌機(250rpm)及び縮合器を備えた1Lの二重壁ガラス反応器中で、50gのAl-SiO2-AMEOアルミニウム粉末(d50=5μm)を183gエタノール中に分散させた。この分散物を溶媒の沸点未満に加熱した。その後、120gの水中に溶解した111.3gのグルコース、及び32.5gジエタノールアミンを加えた(それぞれの溶液を1バッチとして)。5分間の分散の後、25gの水中に溶解した52.5gの硝酸銀(40%のAgに等しい)を15分かけて加えた。この分散物を1時間撹拌した。室温に冷却した後、この銀被覆アルミニウムをろ過し、水(各250ml)及びエタノール(各250ml)で2度ずつ洗浄した。得られた材料を減圧下で5時間乾燥した。
【0209】
対応する実施例39~42を表6にまとめる。
【0210】
【0211】
1.2.3 Al-SiO2-VPSI363-Ag
1.2.3.1 Al-SiO2-VPSI363(実施例43a~44a)
撹拌機(250rpm)及び縮合器を備えた1Lの二重壁ガラス反応器中で、240gのアルミニウム粉末(d50=5μm)を293gのエタノール中に分散させた。17.64gのテトラエトキシシラン(2重量%のSiO2に相当)を添加した後、混合物を溶媒の沸点未満に加熱した。その後、4.5gのNH3(水中25%)及び20gの水を1バッチにおいて加えた。さらに2時間撹拌した後、2.4gの3-メルカプトプロピル-ジ(トリデカン-1-オキシ-13-ペンタ(エチレンオキシド))エトキシシラン(1.0重量%のVPSI363に等しい)を加え、混合物を1時間撹拌した。最後に、生成物を室温に冷却し、ろ過し、及びエタノール(3回、各100ml)で洗浄した。さらなる実験には、この材料をペースト形態で直接使用した。
【0212】
反応混合物に添加された3-アミノプロピルトリエトキシシランの量を調節することによって、最終生成物中のVPSI363含有量を1.0重量%~4重量%の間で変化させた。対応する実施例43a~44aを表7にまとめる。
【0213】
【0214】
1.2.3.2 Al-SiO2-VPSI363-Ag(実施例45~46)
撹拌機(250rpm)及び縮合器を備えた1Lの二重壁ガラス反応器中で、50gのAl-SiO2-VPSI363アルミニウム粉末(d50=5μm)を183gのエタノール中に分散させた。この分散物を溶媒の沸点未満に加熱した。その後、120gの水中に溶解した111.3gのグルコース、及び32.5gのジエタノールアミンを加えた(それぞれの溶液を1バッチとして)。5分間の分散の後、25gの水中に溶解した52.5gの硝酸銀(40%のAgに等しい)を15分かけて加えた。この分散物を1時間撹拌した。室温に冷却した後、この銀被覆アルミニウムをろ過し、水(各250ml)及びエタノール(各250ml)で2度ずつ洗浄した。得られた材料を減圧下で5時間乾燥した。
【0215】
対応する実施例43~44を表8にまとめた。
【0216】
【0217】
2.試験方法:
2a.顔料の二酸化ケイ素含有量
前記試料の前記二酸化ケイ素含有量を重量測定により決定した。1gの試料を25mlの塩酸中に溶解した。上澄みを沸騰加熱中で蒸留した。試料をろ過して水で洗浄した後、残渣を800℃で1時間処理して秤量した。SiO2含有量をIPCによりSiの量として決定しSiO2に換算した。
【0218】
2b.銀含有量
試料の銀含有量を重量測定により決定した。1gの銀被覆アルミニウム粉末を20mlの硝酸と混合し沸騰加熱中で溶解した。ろ過後、塩化ナトリウム水溶液(水1L中100gのNaCl)により、ろ液から銀を塩化銀として沈殿させた。ろ過後、その沈殿物を水で洗浄し、乾燥して秤量した。ICPによりAg含有量を決定した。
【0219】
2c.粒径分布
特に(被覆)アルミニウム粉末のd50値としての粒径分布を、レーザー回折(Sympatec - Helos/BF)により粒径分布曲線の体積平均メジアンとして決定した。空気流中で乾燥粒子の分散を行った。
【0220】
2d.Sysmex FPIA3000S測定
シスメックス株式会社製のFPIA3000S装置を用いて流動粒子画像分析を行った。粒径分布及び円形度の測定のために、試料チャンバ中に均質な試料を沈積させた(deposited)。試料チャンバ中で、材料をイソプロパノール(5ml)と混合し、超音波を適用して分散させた。1分後、カメラのレンズを横切って試料をフラッシュさせ、個々の粒子の対応するコントラスト画像を作成した。
【0221】
2e.粉末抵抗率
導電性顆粒材料の粉末抵抗率を決定するために、設定点間の抵抗率の決定に先立ち、規定量の試料を円筒形セットアップ中に固く詰めた。
【0222】
カスタムメイドのセットアップは以下の部品から成っていた:ラボシェイカー、真ちゅうベース用のカスタムメイドアダプタ、PVC管、目盛り付真ちゅうプランジャ、追加の重り(2kg)、接触クリップ、Milliohmmeter Resistomat(登録商標)2316(Burster Praezision messtechnik GmbH&Co.KG、Germany)。
【0223】
最初に、PVC管を、糸を介して真ちゅうベースに取り付けた。次いで両方の部品を、アダプタを介してラボシェイカーに取り付けた。30gの各試料をほぐして、全ての目に見える塊を壊してシェイカー上のPVC管中に充填した。目盛り付真ちゅうプランジャをPVC管内に注意深く下ろして追加の重りで荷重をかけた。1000rpmで2分間振盪することによって材料を固く詰めた。ブラスプランジャの目盛りにより、この充填工程の前後のPVC管の充填高さを得た。粉末の電気抵抗率の測定のために、接触クリップをResistomatに接続し、真ちゅうベース及びプランジャに取り付けた。Resistomat(登録商標)2316により対応する抵抗率値R
totalを得た:
【数1】
【0224】
RSystemは真ちゅうベース及びプランジャの抵抗率に相当し、0.18mΩと決定された。
【0225】
次いで、比粉末抵抗率(Ωcm)を以下のように定義した:
【数2】
式中、dは充填後のPVC管の充填高さであり(→プランジャ目盛り)、Aは真ちゅうベースの面積である。比粉末抵抗率は比導電率に反比例する。
【0226】
3.結果
i.導電率:比較(Wang Yら、対本発明例)
【表9】
【0227】
比較例17及び18の調製については1.1.4.2項に記載されている。比較例4の調製については1.1.3.2項に記載されている。実施例29の調製は1.2.1.2項に従い、銀含有量を20重量%に増やして行った。
【0228】
本発明による材料(実施例4)は、比較例17及び18と比較して改善された導電率を与える。さらに、本発明による材料の製造コストは、MTMOの量の減少に起因して低減される。
【0229】
【0230】
表9及び10を参照した結果の考察:
比較例1及び2は、銀被覆アルミニウム粉末の導電率はメルカプトシラン(0.5%MTMO)の中間層の使用によって有意に向上させることができる(
図1B参照)という点で、本質的にWangらの知見を再現していた。
図2A及びBの粒子のSEM画像を比較すると、
図2B、即ち中間層顔料の場合に、より滑らかなAg層を観察することができる。
【0231】
比較例1及び3の導電率の比較は、シリカ中間層による導電率の有意な増加を示している(表10参照)。
図2A(比較例1)と
図2C(比較例3)のSEM画像の比較は、Al/SiO
2/Ag系のより均質なコーティングを示している。
【0232】
実施例28の導電率を比較例1~3の導電率と比較すると(全ての系は、2重量%のSiO2及び15重量%Agで被覆した20μmの球状Alショットである)、実施例28が最も高い導電率を有することがわかる。故に、本発明による第1シリカ及びその後のメルカプトシランの中間層コーティングは、導電率に対して相乗効果を示す。さらに、必要とされるメルカプトシランは、Wangらの実験よりもはるかに少ない。
【0233】
同様の結果は、Wangらの方法により被覆された20μmのAlショット(比較例17及び18、表9参照)と、SiO2単独被覆Alショット(比較例4)及び本発明例29との比較に対しても得られ、やはりこの系列の中でも本発明例29が最も高い導電率(0.9mΩcm)を示している。比較例17及び18では、AlコアのMPTMSによる被覆工程におけるエタノール/水溶媒の比率についてのWangらの記述を検証することができたが、本発明顔料によりはるかに良好な導電率が達成された。
【0234】
さらに本発明による粒子の導電率をAg/SiO2/Al系と比較すると、本発明粒子について常により高い導電率が得られる。表10における直接比較可能な試料は例えば、実施例33と比較例10(5μmAlショット;30重量%Ag)、及び実施例34と比較例11(5μmAlショット;40重量%Ag)、及び実施例26(45μmAlショット;15重量%Ag)と比較例7(45μmAlショット;15重量%Ag)である。
【0235】
図2D(本発明によるコーティング)のSEM画像を
図2A~Cからの他の全ての画像と比較すると、
図2Dによる顔料は、最も少ない量の2次的沈殿とともに、最も均質なコーティングを示している。
【0236】
そのより高い効率に起因して、本発明による顔料の銀含有量は低減することができる。例えば、実施例28の顔料(15重量%Ag)は比較例4と比較して類似した導電率を有する。同様に、実施例29の顔料(20重量%Ag)は比較例5と比較して類似した導電率を有する。この銀含有量の減少は、本発明顔料についてのコストの有意な減少を意味する。
図3において、粉末抵抗率の銀の量への依存性がd
50=45μm及び20μmのコアショットを有する本発明粒子に対して示されている。20μmコアについて、銀の量が増加するにつれ抵抗が低くなる、有意な非線状の依存性が見られる。45μmショットについては、有意な依存性はみられない。この場合、コア材料の比表面積は最も低く、そのため高い導電率を付与するためのAg層の臨界厚さは、より微細なショットの場合よりも少ない量で到達される。
【0237】
微細な顔料(d
50=5μm)に関しては、本発明例32(20重量%Ag)が14.6mΩcmの導電率を有するのに対し、比較例9の対応するAl/SiO
2/Ag系については導電率を測定することができなかった。粉末抵抗率の銀の量への強い依存性が、
図4においてd
50=5μmのコアショットを有する本発明粒子について示されている。