(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】照光式押しボタンスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/02 20060101AFI20220330BHJP
H01H 9/18 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
H01H13/02 A
H01H9/18 B
(21)【出願番号】P 2020553989
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2019042622
(87)【国際公開番号】W WO2020090910
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】201811284417.X
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】張 国強
(72)【発明者】
【氏名】陸 倩▲ナン▼
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-204045(JP,A)
【文献】特開2005-285736(JP,A)
【文献】特開2013-62124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00-13/88
H01H 9/16- 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照光式押しボタンスイッチであって、
スイッチ素子及び光源を収納し、シェル部の上表面から突出する1つ以上の開口部を有すシェル部と、
前記開口部を覆うように設けられ、前記開口部に沿って上下移動し得るボタン部と、
前記ボタン部の外側を取り囲み、前記シェル部の上表面の上に設置されるパネル部と、を含み、
上面視において、前記パネル部と前記ボタン部との間に隙間が存在し、
前記シェル部の前記上表面が前記ボタン部の上下移動方向に直交する平面に沿って延伸し、前記上表面のうち、前記隙間の下方に位置する箇所に前記上表面と所定角度を成す斜面部が形成され、
前記上下移動方向に沿う前記斜面部の高さが前記ボタン部側から前記パネル部側へ次第に減少する、照光式押しボタンスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載の照光式押しボタンスイッチであって、
前記パネル部及び前記シェル部は、不透光性材料を成形することにより形成される、照光式押しボタンスイッチ。
【請求項3】
請求項1に記載の照光式押しボタンスイッチであって、
上面視において、前記斜面部は、前記開口部を取り囲むように形成され、前記斜面部の少なくとも一部は、前記隙間の真下に位置する、照光式押しボタンスイッチ。
【請求項4】
請求項3に記載の照光式押しボタンスイッチであって、
前記隙間は、前記ボタン部の外側壁と、前記外側壁に対向する前記パネル部の内側壁との間に存在し、
前記外側壁及び前記内側壁の断面視において、前記斜面部と、前記上表面との間の夾角を第一夾角とし、前記外側壁の最下端を経由して前記内側壁に接する接線の方向と、前記上表面に垂直な垂線方向との間の夾角を第二夾角とする場合、前記第一夾角は、前記第二夾角以上である、照光式押しボタンスイッチ。
【請求項5】
請求項1に記載の照光式押しボタンスイッチであって、
前記斜面部は、前記上表面から突出する、照光式押しボタンスイッチ。
【請求項6】
請求項1に記載の照光式押しボタンスイッチであって、
前記斜面部は、前記上表面から窪む、照光式押しボタンスイッチ。
【請求項7】
請求項1~6のうちの何れか1項に記載の照光式押しボタンスイッチであって、
前記斜面部は、前記シェル部と一体成形される、照光式押しボタンスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押しボタンの内部に設けられる光源により押しボタンの頂部に対して照光する照光式押しボタンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED)光源が広く用いられるようになるにつれて、多くの電子機器の押しボタンスイッチは、照光式押しボタンスイッチを採用している。自動車の内装加飾の分野では、例えば、車窓操作パネル部の押しボタン、中央操作パネル部の押しボタンなどに照光式押しボタンスイッチを使用する場合が多い。
【0003】
以下、
図1~
図3に基づいて従来の照光式押しボタンスイッチ900について説明する。
【0004】
図1は、従来の照光式押しボタンスイッチ900を示す斜視図である。
図2は、従来の照光式押しボタンスイッチ900を構成する各部品を示す分解斜視図である。
【0005】
図1に示すように、照光式押しボタンスイッチ900は、2つの照光式のボタン部901を含み、2つのボタン部901は、一列に並んでシェル部902の上に設置される。また、シェル部902の上には、パネル部903がさらに設けられ、該パネル部903は、周囲から2つのボタン部901を取り囲み、パネル部903とボタン部901との間には、所定の隙間が存在する。
【0006】
図2に示すように、シェル部902は、シェル部902の上表面から突出する複数の開口部904を有し、複数のボタン部901は、それぞれ、複数の開口部904を覆うように設けられ、且つ開口部904に沿って上下移動することができる。パネル部903は、例えば、係止する方式でシェル部902の上表面の上に設置される。また、シェル部902の、下方に面して開口する空間には、ほぼ平板状のゴム部品905、回路基板906及びボトムカバー907がこの順に収納される。回路基板906には、2つのボタン部901に対応してそれぞれ2つの光源909が設けられる。
【0007】
図3は、
図1における平面Aの沿った断面図である。
図3に示すように、ボタン部901は、透光性材料により形成され、ほぼ逆U字型の操作部901a及び操作部901aから下方へ延伸して形成されるスライド壁901bを含む。ボタン部901の操作部901aの表面のほぼ全面には、遮光層910が形成される。また、レーザー加工等の技術を用いて遮光層910の一部を除去することにより、操作部901aには、数字、文字、図形などのパターン(非図示)がさらに設けられるが、これらのパターン(非図示)は、その上に遮光層910が形成されないので、光源909からの光を透過することができる。
【0008】
また、
図3に示すように、光源909が発光するときに、一部の光L1が操作部901aの表面へ出射しパターン(非図示)を透過して照光式押しボタンスイッチ900の外部へと射出し、一部の光L2が遮光層910により吸収され、遮光層910により吸収されない他の一部の光L3が遮光層910及びシェル部902の上表面912により反射された後にパネル部903とボタン部901との間の隙間から射出する。
【0009】
しかし、パネル部903とボタン部901との間から射出する光(光漏れ)が所定の値を超える場合、照光式押しボタンスイッチ900全体の美観性に影響を与えることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、パネル部とボタン部との光漏れを軽減し得る照光式押しボタンスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明の一側面では、照光式押しボタンスイッチが提供され、該照光式押しボタンスイッチは、スイッチ素子及び光源を収納するシェル部であって、前記シェル部の上表面から突出する1つ以上の開口部を有するシェル部;前記開口部を覆うように設置され、前記開口部に沿って上下移動し得るボタン部;及び、前記ボタン部の外側を取り囲み、前記シェル部の上表面の上に設けられるパネル部を有し、上面視において前記パネル部と前記ボタン部との間には、隙間が存在し、前記シェル部の前記上表面は、前記ボタン部の上下移動方向に直交する平面に沿って延伸し、前記上表面では、前記隙間の下方に位置する箇所において前記上表面と所定角度を成す斜面部が形成され、前記上下移動方向に沿う前記斜面部の高さは、前記ボタン部側から前記パネル部側へ次第に減少する。
【0012】
上記照光式押しボタンスイッチの構成により、ボタン部の遮光層により反射された後の光がシェル部の上表面へ出射するときに、これらの光は、前記斜面部により反射された後に、パネル部とボタン部との間の隙間でなく、パネル部の内側壁へ出射する。言い換えると、このような斜面部を設置することで、元々パネル部とボタン部との間の隙間から漏れるはずである光の出射方向がパネル部側に傾くようにさせ、このような光がパネル部の内側壁により複数回反射された後に、前記隙間から射出する光を大幅に減少させることができる。これにより、パネル部とボタン部との間の隙間からの光漏れを大幅に軽減し、照光式押しボタンスイッチの美観性を向上させることができる。
【0013】
また、上記照光式押しボタンスイッチでは、前記パネル部及び前記シェル部は、不透光性材料を成形することにより形成される。
【0014】
上記照光式押しボタンスイッチの構成により、光源からの光がパネル部又はシェル部を透過して漏れることを防止できる。また、斜面部により反射された後にパネル部へ出射する光が不透光材料の内側壁により複数回反射され、反射される度に一部の光が吸収されるので、パネル部とボタン部との間の隙間から射出する光をさらに減少させることができる。
【0015】
また、上記照光式押しボタンスイッチでは、上面視において、前記斜面部は、前記開口部を取り囲むように形成され、前記斜面部の少なくとも一部が前記隙間の真下に位置する。
【0016】
パネル部とボタン部との間の隙間から漏れる光の大部分が該隙間の真下に位置するシェル部の上表面の一部により反射された後に該隙間から直接射出するため、斜面部を隙間の真下に位置する箇所に配置することで、反射光をより有効に斜めに出射させ、パネル部とボタン部との間の隙間からの光漏れをより確実に低減することができる。
【0017】
また、上記照光式押しボタンスイッチでは、前記隙間が前記ボタン部の外側壁と、該外側壁に対向する前記パネル部の内側壁との間に存在し、前記外側壁及び前記内側壁の断面視において、前記斜面部と、前記上表面との間の夾角を第一夾角とし、前記外側壁の最下端を経由して前記内側壁に接する直線(接線)の方向と、前記上表面に垂直な垂線方向との間の夾角を第二夾角とする場合、第一夾角は、第二夾角以上である。
【0018】
斜面部が設置されない場合、シェル部の上表面により反射された後に隙間から直接射出し得る光束のうち、反射角が最大である光束(以下、「最大反射角光束」ともいう)が、ボタン部の外側壁の最下端を経由してパネル部の内側壁に接する直線(接線)の方向における光束(「最大射出角光束」ともいう)である。光束の反射角が最大反射角光束の反射角(「最大反射角」ともいう)以下であれば、光束は隙間から射出する可能性がある。逆に、光束の反射角が最大反射角光束の反射角よりも大きい場合、光束は隙間から射出することができない。
【0019】
斜面部が設置されており、且つ第一夾角が第二夾角以上である場合、幾何学的関係から分かるように、ボタン部側からの光束が斜面部により反射されるときに反射角が増加する角度が最大反射角以上であるから、これらの光束の反射角は、必ず最大反射角よりも大きい。そのため、ボタン部側から来た、且つ斜面部により反射された後の光束は、隙間から直接射出することができない。これにより、反射光を隙間以外の不透光領域へ最大限に反射することができる。
【0020】
また、上記照光式押しボタンスイッチでは、前記斜面部は、前記上表面から突出し、又は、前記上表面から窪む。
【0021】
これにより、シェル部の上表面の壁厚が不足している場合、前記斜面部は、上表面から突出する突起形状になるように設けられても良く、シェル部の上表面の壁厚が十分である場合、上表面から窪む凹陥形状になるように設置されても良い。また、突起形状の斜面部を設けると、ボタン部の下端との干渉が生じ、ボタン部のスライディングに影響を及ぼす場合がある。このような場合、斜面部を凹陥形状に形成することが好ましい。
【0022】
また、上記照光式押しボタンスイッチでは、前記斜面部は、前記シェル部と一体成形される。
【0023】
これにより、シェル部を形成すると同時に前記斜面部を形成することもできるので、加工プロセスの複雑化を引き起こすことがない。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一側面による照光式押しボタンスイッチは、パネル部とボタン部との間の隙間からの光漏れを大幅に軽減することができ、照光式押しボタンスイッチの美観性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来の照光式押しボタンスイッチの外観を示す斜視図である。
【
図2】従来の照光式押しボタンスイッチの各部品を示す分解斜視図である。
【
図4】一実施例における照光式押しボタンスイッチの外観を示す斜視図である。
【
図5】一実施例における照光式押しボタンスイッチの上面図である。
【
図6】一実施例における照光式押しボタンスイッチの各部品を示す分解斜視図である。
【
図11】斜面部120が設けられない場合の光束の伝播経路図である。
【
図12】所定角度θ1の斜面部120が設置されているときの光束の伝播経路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付した図面を参照しながら発明を実施するための好適な形態を詳細に説明する。
【0027】
<実施例>
図4~
図12に基づいて本実施例を以下に詳しく説明する。
【0028】
まず、
図4~
図5を用いて本実施例における照光式押しボタンスイッチ100全体の構成を説明する。
【0029】
図4は、本実施例における照光式押しボタンスイッチ100の外観を示す斜視図であり、
図5は、本実施例における照光式押しボタンスイッチ100の上面図であり、
図6は、本実施例における照光式押しボタンスイッチ100の各部品を示す分解斜視図である。なお、実際に本実施例における照光式押しボタンスイッチ100の外観が
図1に示す従来の照光式押しボタンスイッチ900の外観と同じであるが、説明の便宜のため、図面における照光式押しボタンスイッチ100の符号は、従来の照光式押しボタンスイッチ900とは異なる符号を使用する。
【0030】
図4に示すように、照光式押しボタンスイッチ100は、2つの独立したボタン部101を含み、2つのボタン部101は、一列に並んでシェル部102の上に設置される。また、シェル部102の上には、パネル部103がさらに設けられ、該パネル部103は、周囲から2つのボタン部101を取り囲む。
【0031】
図5に示すように、上面視において、2つのボタン部101の外周縁は、四角形状(「ほぼ四角形状」ともいう)になるように形成され、パネル部103は、2つのボタン部101を取り囲んでほぼ四角形状の帯状に形成され、パネル部103の内周縁と、ボタン部101の外周縁との間には、所定の隙間Sが存在する。また、互いに独立した各ボタン部101の間にも、所定の隙間が存在する。
【0032】
ボタン部101は、透光性合成樹脂により形成され、
図6に示すように、各ボタン部101は、手指操作用の操作部104及び操作部104から下方に延伸して成す延伸部105を有する。
【0033】
シェル部102は、不透光性合成樹脂からなり、
図6に示すように、一体成形されるベース部106及び凸台部107を有し、凸台部107は、ベース部106の上方に突出する。
【0034】
ベース部106は、下方に向けて開口するカバー形状に形成され、ベース部106の内部には、上から下へ順にほぼ平板状のゴム部品108、回路基板109及びボトムカバー110が収納される。
【0035】
凸台部107は、パネル部103の真下に位置し、上面視においてほぼ四角形状の形状を有する。凸台部107は、側壁111及び頂壁112からなり、頂壁112には、頂壁112から突出し、且つ上下方向に延伸する2つの開口部113が設置される。上下方向において、2つのボタン部101は、それぞれ、2つの開口部113に相対する。
【0036】
また、パネル部103は、不透光性合成樹脂からなり、
図6に示すように、パネル部103の側壁には、下方に延伸するほぼ扉状の係止部114が複数設けられ、凸台部107の側壁111には、複数の係止部114に対応して複数の係止突起115が設置される。
図4に示すように、係止機構としての係止部114及び係止突起115が互いに係止する状態で、パネル部103とシェル部102とを組み立てることができる。
【0037】
また、
図6に示すように、回路基板109には、2つのボタン部101に対応して2つのスイッチ素子116及び2つのほぼ直方体の光源117がそれぞれ設置される。ゴム部品108には、2つのスイッチ素子116に対応して、上方に突起する錐台状の可動接点118が2つ設けられ、また、2つの光源117に対応して、上方に突起するほぼ直方体の光源カバー119が2つ設置される。
【0038】
回路基板109及びゴム部品108は、合成樹脂製のボトムカバー110の上に順次積層され、ボトムカバー110は、ベース部106を下方から封止し、ボトムカバー110とベース部106との間は、図示されないネジにより固定される。
【0039】
次に、
図7及び
図8を用いてシェル部102の構造についてさらに説明する。
図7は、シェル部102の上面図であり、
図8は、
図7における平面Bに沿った断面図である。
【0040】
図8に示すように、凸台部107の頂壁112の上表面は、ボタン部101の上下移動方向に直交する平面(「水平面」ともいう)に沿って延伸し、頂壁112の上表面には、水平面と所定角度を成す斜面部120が形成されている。斜面部120は、水平面に対して傾いて設けられており、前記上下移動方向に沿う斜面部120の高さは、開口部113側から頂壁112の周縁側(側壁111側)へ次第に減少する。
【0041】
図7に示すように、斜面部120は、2つの開口部113を取り囲むようにほぼ四角形状の帯状に形成される。斜面部120は、開口部113に接触せず、両者の間には、所定の隙間が存在する。
【0042】
続いて、
図9及び
図10を用いて、本実施例における照光式押しボタンスイッチ100の内部構造及び光源117からの光束の伝播経路について詳細に説明する。
図9は、
図4における平面Bに沿った断面図である。
図10は、
図9における領域Cの拡大図である。
【0043】
図9に示すように、延伸部105は、下方に向けて開口するほぼ桶状の形状に形成され、延伸部105の外側壁105aは、開口部113の内側壁113aの少なくとも一部と互いに接触し、且つ開口部113の開口方向(上下方向)に沿って相対的にスライドすることができる。これにより、ボタン部101は、上下にスライドすることができる。
【0044】
光源117は、延伸部105の真下に位置し、正確に言えば、延伸部105を真下に投影することにより回路基板109において形成される投影領域の内部に位置する。
【0045】
また、
図9に示すように、操作部104は、ほぼ平坦な頂壁123、及び頂壁123の周縁から下方に延伸する外側壁124を有する。ボタン部101は、その操作部104の操作面側の表面のほぼ全面に遮光層104aが形成される。また、レーザー加工等の技術を用いて遮光層104aの一部を除去することにより、操作部104の表面には、例えば、1、2、3などの数字、図形などのパターン(非図示)が形成され、これらのパターン(非図示)の位置には、遮光層104aが形成されない。
【0046】
図9では、さらに、光源117からの光束の伝播経路も示されている。光源117が発光するときに、一部の光F1は、操作部104の表面へ出射しパターン(非図示)を経由して射出し、一部の光F2は、遮光層104aにより吸収される。また、遮光層104aにより吸収されない他の一部の光F3は、遮光層104a及び凸台部107の頂壁112の上表面により反射された後に、ボタン部101に相対するパネル部103の内側壁126へ出射する。
【0047】
図10は、
図9における領域Cの拡大図である。
図10に示すように、パネル部103とボタン部101との間の隙間Sは、ボタン部101の操作部104の外側壁124と、パネル部103の内側壁126との間に位置する。詳細に言えば、ボタン部101に相対するパネル部103の内側壁126には、ボタン部101側へ突起する凸縁126aが形成され、上方から観察するときに、パネル部103とボタン部101との間の隙間Sとは、外側壁124と凸縁126aとの間の隙間を指す。言い換えると、本実施例における隙間Sは、上方から観察した、パネル部103とボタン部101との間の最短距離である。
【0048】
また、斜面部120は、凸台部107の頂壁112の上表面のうち、隙間Sの下方に位置する箇所に形成される。言い換えると、頂壁112の上表面のうちの一部が斜面部120になる。斜面部120の少なくとも一部が隙間Sの真下に位置する。斜面部120は、頂壁112の上表面から突出し、その高さは、ボタン部101側からパネル部103側へ次第に減少する。パネル部103側に近い斜面部120の端部は、頂壁112の上表面に接続され、ボタン部101側に近い斜面部120の端部は、操作部104の外側壁124の真下に位置している。
【0049】
図10に示すように、遮光層104aにより吸収されない他の一部の光F3は、遮光層104aにより反射された後に頂壁112の上表面へ出射する。頂壁112の上表面に斜面部120が設置されているため、斜面部120により反射された後の光F3は、出射方向がパネル部103側に傾くため、パネル部103の内側壁126へ出射する。
【0050】
以下、
図11~
図12を用いて斜面部120の所定角度について説明する。
【0051】
図11は、斜面部120が設置されない場合の光束の伝播経路図である。説明の便宜のため、
図11には、ボタン部104、パネル部103及び頂壁112の三者間の位置関係のみが示されている。
【0052】
斜面部120が設置されない場合、頂壁112の上表面により反射された後に隙間Sから直接射出し得る光束のうち、反射角が最大である光束(「反射角最大光束」ともいう)が、ボタン部104の外側壁124の最下端を経由してパネル部103の内側壁126に接する直線(接線)の方向における光束(「最大反射角光束」ともいう)である。
図11に示すように、最大反射角光束F3'の、頂壁112の上表面における反射角(「最大反射角」ともいう)は、2θである。θは、最大反射角光束F3'の射出方向と、頂壁112の上表面に垂直な垂直線の方向(上下方向)との間の夾角(第二夾角)である。最大反射角光束F3'に比べ、光束の反射角が2θ以下の場合、光束は、隙間Sから直接射出する可能性がある。逆に、光束の反射角が2θよりも大きい場合、光束は、隙間Sから直接射出することがなく、外側壁124の下端又は内側壁126へ出射するようになる。
【0053】
図12は、所定角度φの斜面部120が設けられているときの光束の伝播経路図である。説明の便宜のため、
図12には、ボタン部104、パネル部103及び頂壁112の三者間の位置関係のみが示される。
【0054】
所定角度φの斜面部120が設置されている場合、幾何学的関係から分かるように、ボタン部101側からの光束F3が斜面部120により反射されるときに反射角が2φ増加する。所定角度φとは、斜面部120と、頂壁112の上表面(即ち、水平面)との間の夾角(第一夾角)である。
図12における光束F3の入射角が
図11における光束F3'の入射角と同じであるとすれば、幾何学的関係によれば、斜面部120における光束F3の反射角は、2θ+2φに等しい。
【0055】
第一夾角φが第二夾角θ以上であると設定する場合、ボタン部101側からの光束F3が斜面部120により反射されるときに反射角が増加する角度が最大反射角2θ以上であるので、これらの光束の反射角は、必ず最大反射角2θよりも大きい。よって、ボタン部101側から来た、且つ斜面部120により反射された後の光束は、隙間から直接射出することができない。これにより、反射光F3を隙間S以外の不透光領域(外側壁124の下端又は内側壁126)へ最大限に反射することができる。
【0056】
以下、本実施例が奏する効果について説明する。
【0057】
上述のような照光式押しボタンスイッチ100の構成により、ボタン部101の遮光層104aにより反射された後の光F3がシェル部102の上表面へ出射するときに、これらの光F3は、高さがボタン部101側からパネル部103側へ次第に減少する斜面部120により反射された後に、パネル部103とボタン部101との間の隙間Sでなく、パネル部103の内側壁126へ出射する。言い換えると、このような斜面部120を設定することで、元々パネル部103とボタン部101との間の隙間Sから漏れるはずである光の出射方向がパネル部103側に傾くようになり、このような光がパネル部103の内側壁126により複数回反射された後に、隙間Sから射出する光を大幅に減少させることができる。これにより、パネル部103とボタン部101との間の隙間Sから漏れる光束F3を大幅に減少させ、照光式押しボタンスイッチ100の美観性を向上させることができる。
【0058】
また、上述のような照光式押しボタンスイッチ100の構成により、パネル部103及びシェル部102は、不透光性材料を成形することにより形成されるため、光源117からの光がパネル部103又はシェル部102を透過して漏れることを防止できる。また、斜面部120により反射された後にパネル部103へ出射する光が不透光性材料の内側壁126により複数回反射され、反射される度に一部の光が吸収されるので、パネル部103とボタン部101との間の隙間Sから射出する光をさらに減少させることができる。
【0059】
また、パネル部103とボタン部101との間の隙間Sから漏れる光の大部分が該隙間Sの真下に位置するシェル部102の上表面の一部により反射された後に該隙間Sから直接射出するから、斜面部120を隙間Sの真下の箇所に配置することで、反射光をより有効に斜めに出射させ、パネル部103とボタン部101との間の隙間Sからの光束F3の漏れをより確実に低減することができる。
【0060】
また、斜面部120が設置されており、且つ第一夾角φが第二夾角θ以上である場合、幾何学的関係から分かるように、ボタン部101側からの光束F3が斜面部120により反射されるときに反射角が増加する角度が最大反射角2θ以上であるため、これらの光束F3の反射角は、必ず最大反射角2θよりも大きい。よって、ボタン部101側から来た、且つ斜面部120により反射された後の光束F3は、隙間Sから直接射出することができない。これにより、反射光を隙間S以外の不透光領域へ最大限に反射することができる。
【0061】
また、上述のような照光式押しボタンスイッチ100により、斜面部120は、シェル部102と一体成形される。これにより、シェル部102を形成すると同時に斜面部120を形成することもでき、加工プロセスの複雑化を引き起こすことがない。
【0062】
<変形例>
上述の実施例は、好適な実施例であるが、本発明は、このような実施例に限定されず、本発明の趣旨を離脱しない限り、本発明に対するあらゆる変更は本発明の技術的範囲に属する。
【0063】
上述のような照光式押しボタンスイッチ100では、斜面部120は、シェル部102の頂壁112の上表面から突出するように形成されるが、これに限られない。
図13及び
図14に示すように、本変形例では、斜面部128がシェル部102の頂壁112の上表面から窪むように形成されても良い。
【0064】
これにより、頂壁112の上表面の壁厚が不足している場合、斜面部は、頂壁112の上表面から突出する突起形状になるように設けられても良く(
図7及び
図8参照)、頂壁112の上表面の壁厚が十分である場合、頂壁112の上表面から窪む凹陥形状になるように設けられても良い(
図13及び
図14参照)。
【0065】
また、突起形状の斜面部120を設置すると、ボタン部101の外側壁124の下端との干渉が発生し、ボタン部101のスライディングに影響を与える場合がある。このような場合に、凹陥形状の斜面部128を設けることが望ましい。
【0066】
さらに、ボタン部101側に近い斜面部120の端部と開口部113とを直接接続し、且つパネル部103側に近い斜面部120の端部と凸台部107の側壁111とを直接接続しても良い。言い換えれば、凸台部107の上表面全体が斜面部120になるようにさせても良い。
【0067】
また、ボタン部101が透光性材料からなるが、実際には、ボタン部101が不透光性材料からなっても、斜面部120を設置することで、隙間Sからの光漏れをある程度軽減することもできる。
【0068】
本出願は、2018年10月31日に中国国家知識産権局に出願された中国特許出願第201811284417.X号明細書に基づく優先権を主張するものであり、中国特許出願第201811284417.X号明細書の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0069】
100 照光式押しボタンスイッチ
101 ボタン部
102 シェル部
103 パネル部
104 操作部
104a 遮光層
105 延伸部
105a 延伸部の外側壁
106 ベース部
107 凸台部
108 ゴム部品
109 回路基板
110 ボトムカバー
111 側壁
112 頂壁
113 開口部
113a 開口部の内側壁
114 係止部
115 係止突起
116 スイッチ素子
117 光源
118 可動接点
119 光源カバー
120、128 斜面部
123 頂壁
124 外側壁
126 内側壁
126a 内側壁の凸縁
S 隙間
φ 第一夾角
θ 第二夾角