(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】シート状印刷物及びシート状印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B42D 15/04 20060101AFI20220330BHJP
B42D 15/08 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
B42D15/04 A
B42D15/08 Z
(21)【出願番号】P 2021212223
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2022-01-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年9月24日にSwallows CREW会員へ郵送により配布
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512210836
【氏名又は名称】株式会社ウイル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀江
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 浩一郎
【審査官】富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】特許第5223559(JP,B2)
【文献】特開2008-87361(JP,A)
【文献】特許第5773395(JP,B2)
【文献】特開2010-12701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 15/00-15/08
A63H 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷が施されて谷折り線で開閉可能に折り畳まれた状態から展開可能なシート状印刷物であって、
展開時に前記谷折り線を境に一方側に形成される第1面部と、
前記第1面部の反対側に形成される第2面部とを備え、
前記第1面部及び前記第2面部は、縁部を除いた前記谷折り線に隣接する本体部が、いずれも少なくとも一部が接着された2層に形成されているとともに、
折り畳まれた状態では、前記第1面部の1層の縁部に対して、前記第2面部の一体化された3層の縁部が剥離可能に接着されていることを特徴とするシート状印刷物。
【請求項2】
前記第1面部及び前記第2面部は略長方形に形成されているとともに、前記第1面部及び前記第2面部の縁部はコ字状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシート状印刷物。
【請求項3】
前記第2面部の縁部は、第1層目と第2層目とが粘着糊で接合されるとともに、第2層目と第3層目とは接着糊で接合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート状印刷物。
【請求項4】
前記第1面部及び前記第2面部の本体部には、前記展開時に露出する上層の一部を開閉可能にする切り込みが形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシート状印刷物。
【請求項5】
谷折り線で開閉可能に折り畳まれた状態から展開可能なシート状印刷物の製造方法であって、
略長方形のシート材を長手方向に4分割した両端領域となる第1シート領域と第4シート領域に対して、前記第1シート領域については周縁部を除いた所定範囲に粘着糊又は接着糊を塗布し、前記第4シート領域については周縁部を含む所定範囲に粘着糊又は接着糊を塗布する工程と、
前記第1シート領域の周縁部の上縁及び下縁並びに第2シート領域と隣接する側縁に剥離糊を塗布する工程と、
前記第1シート領域と前記第2シート領域の境界及び前記第4シート領域と第3シート領域の境界を谷折りすることで、前記粘着糊又は接着糊の塗布面を貼り合わせる工程と、
上層となった前記第1シート領域及び前記第4シート領域の所定箇所に切り込みを入れるとともに、前記第1シート領域の前記剥離糊が塗布された縁部の内縁側に切り込みを入れる工程と、
前記第1シート領域と前記第2シート領域の境界及び前記第4シート領域と前記第3シート領域の境界の谷折り部分を断裁する工程と、
前記第4シート領域の縁部に接着糊を塗布する工程と、
前記第1シート領域と前記第4シート領域の境界を谷折りして前記接着糊が塗布された縁部を接合させる工程とを備えたことを特徴とするシート状印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷が施されて谷折り線で開閉可能に折り畳まれた状態から展開可能なシート状印刷物及びシート状印刷物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された封筒のように、紙を折り畳んで郵送可能な郵便物を作製するときには、谷折り線を除く3辺の縁部を糊付けして、封緘する必要がある。特許文献1で封緘に使用している糊は接着糊であって、一度、貼り合わせるときれいに剥がすことはできないので、ミシン目を境に縁部を切り取ることで、郵便物を開封することになる。
【0003】
また、特許文献2の
図5に開示されているように、谷折り線に対向する1辺の縁部のみを糊付けして、上縁部と下縁部は貼り合せずに開放状態にした場合、郵送ができず、送付コストの高い宅配便などを利用することになる。
【0004】
一方、特許文献3に開示されているように、接着糊だけでなく剥離糊も使用して折り畳まれた状態から展開可能なシート状印刷物を製造する場合、剥離糊を剥がして展開したときに、受け取った者の興味を引くような様々な仕掛けを施すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3047632号公報
【文献】特開2010-12701号公報
【文献】特許第5773395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、工場で大量に印刷から封緘までを行ってシート状印刷物を製造する場合、接着糊と剥離糊といった複数種類の糊を塗布するために、複数の糊付け機を使用することになるが、糊付け機は高価で、それによって製造コストが高くなることがある。
【0007】
そこで、本発明は、接着糊と剥離糊を使用して様々な工夫が施せる展開可能な状態にできるうえに、安価に大量の製造が可能となる構造を有するシート状印刷物及びシート状印刷物の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明のシート状印刷物は、印刷が施されて谷折り線で開閉可能に折り畳まれた状態から展開可能なシート状印刷物であって、展開時に前記谷折り線を境に一方側に形成される第1面部と、前記第1面部の反対側に形成される第2面部とを備え、前記第1面部及び前記第2面部は、縁部を除いた前記谷折り線に隣接する本体部が、いずれも少なくとも一部が接着された2層に形成されているとともに、折り畳まれた状態では、前記第1面部の1層の縁部に対して、前記第2面部の一体化された3層の縁部が剥離可能に接着されていることを特徴とする。
【0009】
ここで、前記第1面部及び前記第2面部は略長方形に形成されているとともに、前記第1面部及び前記第2面部の縁部はコ字状に形成されている構成とすることができる。また、前記第2面部の縁部は、第1層目と第2層目とが粘着糊で接合されるとともに、第2層目と第3層目とは接着糊で接合されている構成とすることができる。さらに、前記第1面部及び前記第2面部の本体部には、前記展開時に露出する上層の一部を開閉可能にする切り込みが形成されている構成とすることもできる。
【0010】
また、シート状印刷物の製造方法の発明は、谷折り線で開閉可能に折り畳まれた状態から展開可能なシート状印刷物の製造方法であって、略長方形のシート材を長手方向に4分割した両端領域となる第1シート領域と第4シート領域に対して、前記第1シート領域については周縁部を除いた所定範囲に粘着糊又は接着糊を塗布し、前記第4シート領域については周縁部を含む所定範囲に粘着糊又は接着糊を塗布する工程と、前記第1シート領域の周縁部の上縁及び下縁並びに第2シート領域と隣接する側縁に剥離糊を塗布する工程と、前記第1シート領域と前記第2シート領域の境界及び前記第4シート領域と第3シート領域の境界を谷折りすることで、前記粘着糊又は接着糊の塗布面を貼り合わせる工程と、上層となった前記第1シート領域及び前記第4シート領域の所定箇所に切り込みを入れるとともに、前記第1シート領域の前記剥離糊が塗布された縁部の内縁側に切り込みを入れる工程と、前記第1シート領域と前記第2シート領域の境界及び前記第4シート領域と前記第3シート領域の境界の谷折り部分を断裁する工程と、前記第4シート領域の縁部に接着糊を塗布する工程と、前記第1シート領域と前記第4シート領域の境界を谷折りして前記接着糊が塗布された縁部を接合させる工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明のシート状印刷物は、展開時に谷折り線を境に第1面部と第2面部とが現れる構成となっているとともに、2層となる本体部の周囲の縁部が、第1面部では1層となり、第2面部では3層となる構造になっている。
【0012】
このような構造とすることで、使用する糊付け機が1台であっても、安価に大量のシート状印刷物が製造できるようになる。また、接着糊だけでなく剥離糊を使用することで、展開時に興味を引くような様々な工夫が施せるようになる。
【0013】
また、上記したシート状印刷物の製造方法の発明によれば、接着糊や粘着糊と剥離糊とを使用して、様々な工夫が施された展開可能なシート状印刷物を、1台の糊付け機を使用して、安価に大量に製造することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施の形態のシート状印刷物の展開状態を示した説明図である。
【
図2】本実施の形態のシート状印刷物の製造方法の工程を説明するフローチャートである。
【
図4】端縁をカットする工程を示した説明図である。
【
図6】両端領域の谷折り工程を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態のシート状印刷物の展開状態を示した説明図である。また、
図2は、本実施の形態のシート状印刷物の製造方法の工程を説明するフローチャートである。
【0016】
本実施の形態のシート状印刷物1は、一部又は全体に印刷が施された上質紙などの紙やシート体を折り畳んで製作され、
図1に示すように、谷折り線13で開閉可能に折り畳まれた状態から展開可能な構成となっている。
【0017】
ここで、
図1は、封緘されたシート状印刷物1を、矢印の方向に展開する途中の状態を示している。そして、展開時に谷折り線13を境に一方側に形成される
図1の左側面を第1面部11とし、第1面部11の谷折り線13を挟んだ反対側に形成される
図1の右側面を第2面部12とする。
【0018】
略長方形の第1面部11は、谷折り線13に1辺が接する略長方形の本体部112と、本体部112の外周をコ字状に囲む縁部111とを備えている。すなわち縁部111は、谷折り線13側を除く本体部112の3辺に隣接して設けられる。
【0019】
一方、略長方形の第2面部12も、谷折り線13に1辺が接する略長方形の本体部122と、本体部122の外周をコ字状に囲む縁部121とを備えている。すなわち縁部121は、谷折り線13側を除く本体部122の3辺に隣接して設けられる。
【0020】
そして、第1面部11の本体部112及び第2面部12の本体部122は、いずれも少なくとも一部が接着された2層の紙などによって形成される。例えば、後述するように帯状の紙を折り畳んで2層の本体部112,122とすることもできるし、2枚の長方形の紙を貼り合わせて2層の本体部112,122とすることもできる。
【0021】
これに対して、第1面部11の縁部111は、1層に形成される。他方、第2面部12の縁部121は、3層に形成される。これらの縁部111,121は、折り畳まれた状態では、第1面部11の1層の縁部111に対して、第2面部12の一体化された3層の縁部121が剥離可能に接着された状態となっている。
【0022】
少なくとも一部が接着されて2層に形成される本体部112,122には、展開時に露出して上層となる部分に、開閉可能となる切り込みが形成される。
図1には、展開の動作に伴って起立する扇状の起立部14と、複数の扉部15とが設けられた本体部112,122が例示されている。
【0023】
扉部15は、後述するようにカット部5Bから捲ることで、開くことができる。要するに、扉部15と起立部14が設けられる範囲は、本体部112,122の1層目と2層目とが接着されておらず、扉部15及び起立部14以外の範囲において、1層目と2層目とが接着されている。
【0024】
次に、本実施の形態のシート状印刷物の製造方法の工程について、
図2に示したフローチャートと、
図3-
図9に示した説明図とを参照しながら説明する。
【0025】
まず、本実施の形態のシート状印刷物1の製造方法を実施する前には、ロール紙から紙を引き出して、両面印刷機によって紙の両面に印刷を行う。すなわち、折り畳まれた状態、展開された状態、起立部14や扉部15などが開いた状態などで露出する紙面などにおいて、印刷を施す必要がある範囲には、この段階で印刷をしておく。
【0026】
続いて、
図3に示すように帯状の略長方形に切り出されたシート材2に対して、ステップS1では、粘着糊の塗布を行う。ここで、シート材2には、長手方向に略等幅間隔で4分割した長方形領域を形成して、
図3の左端から、第1シート領域21、第2シート領域22、第3シート領域23、第4シート領域24とする。
【0027】
第1シート領域21と第2シート領域22の境界は、後工程において谷折り線26Aとなり、第2シート領域22と第3シート領域23の境界は谷折り線25となり、第3シート領域23と第4シート領域24の境界は谷折り線26Bとなる。
【0028】
そして、両端領域となる第1シート領域21と第4シート領域24に対して、粘着糊の塗布を行う。粘着糊は、貼ったり剥がしたりすることを繰り返すことが可能な糊で、糊付け機の版を使って塗布される。第1シート領域21については、
図3に示したように、周縁部211を除いた所定範囲が、粘着糊が塗布された粘着糊面3となる。
【0029】
周縁部211は、第1シート領域21の4辺に沿って長方形の枠状に形成される部分で、周縁部211の上縁、下縁及び第2シート領域22と隣接する右側縁が、第1面部11の縁部111になる。一方、周縁部211の左側縁は、後工程でカットされる除去部27Aになる。
【0030】
また、第1面部11の本体部112には、粘着糊が塗布された所定範囲の粘着糊面3と、粘着糊が塗布されない非塗布面31とが形成される。この非塗布面31は、後工程で起立部14や扉部15が形成される範囲である。
【0031】
一方、第4シート領域24については、周縁部及び第2面部12の本体部122となる範囲の所定範囲に対して、粘着糊を塗布する。ここで、第4シート領域24の右側縁は、後工程でカットされる除去部27Bになるため、粘着糊は塗布されない。
【0032】
そして、第2面部12の縁部121となる第4シート領域24の上縁、下縁及び左側縁並びに第2面部12の本体部122の所定範囲が、粘着糊が塗布された粘着糊面3となる。また、後工程で起立部14や扉部15が形成される範囲は、粘着糊が塗布されない非塗布面31になる。
【0033】
粘着糊を塗布した後は、乾燥させる。そして、
図4に示すように、シート材2の長手方向の両側の端縁を、除去部27A,27Bとしてカットする。続いてステップS2では、剥離糊の塗布を行う。剥離糊の塗布は、粘着糊の塗布で使用した同じ糊付け機の版を使って行われる。
【0034】
剥離糊は、第1シート領域21の周縁部211の上縁及び下縁並びに第2シート領域22と隣接する右側縁に塗布する。すなわち、
図5に示すように、前工程で粘着糊を塗布しなかった第1面部11の縁部111になる範囲に、剥離糊を塗布する。剥離糊は、接着後に簡単に剥がすことができ、再び接着させることができない糊である。
【0035】
詳細には、剥離糊は、周縁部211の上縁、下縁及び右側縁に塗布するが、下縁と右側縁とが交差する第1シート領域21の右下隅角部には、剥離糊を塗布しない。この剥離糊を塗布しない右下隅角部は、折り畳まれた状態のシート状印刷物1(
図9参照)を展開する際に指をかける、捲り始めの位置となる。
【0036】
ステップS3は、両端領域(第1シート領域21、第4シート領域24)の谷折り工程となる。すなわち、第1シート領域21と第2シート領域22の境界の谷折り線26A、及び第4シート領域24と第3シート領域23の境界の谷折り線26Bを谷折りする。
【0037】
図6は、
図5に示した状態のシート材2を、谷折り線26A,26Bで谷折りした状態を示している。この両端領域の谷折り工程によって、粘着糊の塗布面である粘着糊面3は、対峙する紙面に貼り合わされることになる。要するに、第1シート領域21の粘着糊面3は第2シート領域22に貼り合わされ、第4シート領域24の粘着糊面3は第3シート領域23に貼り合わされる。
【0038】
ステップS4の切り込み工程では、
図7に示すように、上層となった第1シート領域21及び第4シート領域24の所定箇所に切り込みを入れる。切り込みは、起立部14や扉部15の形状に合わせたダイカットで行う。
【0039】
詳細には、起立部14や扉部15の開き始めにする所定箇所は、カット部5Bとして連続した切り込みを入れる。また、扉部15を開く際に、徐々に切り離す所定箇所は、間隔を置いて非カット箇所を残したキスカット部5Cにする。さらに、起立部14や扉部15の折り目を付ける所定箇所は、ミシン目部5Dにする。
【0040】
そして、第1シート領域21の剥離糊が塗布された縁部111となる内縁側にも、内縁カット部5Aとなる切り込みを入れる。すなわち、第1シート領域21の谷折り線25側を除いた3辺の内側に、それぞれ内縁カット部5Aの切り込みが入れられる。後工程では、この内縁カット部5Aに沿って、剥離糊が剥がされることになる。
【0041】
続いてステップS5では、
図7に示すような展開状態のシート材2の両側縁を断裁する。すなわち、第1シート領域21と第2シート領域22の境界(谷折り線26Aが含まれる範囲)及び第4シート領域24と第3シート領域23の境界(谷折り線26Bが含まれる範囲)を、除去部28A,28Bとして断裁して取り除く。
【0042】
ステップS6の接着糊の塗布工程では、
図8に示すように、第4シート領域24の縁部に接着糊を塗布して接着糊面6とする。接着糊は、貼ったらきれいに剥がせなくなる程度に接着力が強い糊である。接着糊の塗布も、粘着糊と剥離糊の塗布で使用した同じ糊付け機の版を使って行われる。
【0043】
この第4シート領域24の谷折り線25側を除いた3辺に形成される接着糊面6が、第2面部12の縁部121になる。また、起立部14の谷折り線25に隣接した所定範囲にも、三角形状に接着糊を塗布して接着糊面61を形成する。
【0044】
ステップS7は、接着糊面6,61を接合させる封緘工程となる。
図9は、
図8に示した状態のシート材2を、谷折り線25で谷折りした状態を示している。この谷折りによって、接着糊の塗布面である接着糊面6,61は、対峙する紙面に貼り合わされることになる。
【0045】
要するに、第4シート領域24の縁部121になる接着糊面6は、第1シート領域21の縁部111となる範囲に接合される。また、起立部14になる谷折り線25を挟んだ両側の三角形の範囲が接着糊面61で接合されることにより、展開時に起立部14は扇状に立ち上がることができるようになる。なお、
図8の谷折り線25は、封緘後に展開した際の谷折り線13になる(
図1参照)。
【0046】
このようにして製造された
図9に示したようなシート状印刷物1は、右下隅角部に「OPEN」や「ここから開ける」や矢印などの印刷が施されており、そこから折り畳まれた状態のシート状印刷物1を捲ると、
図1に示したような展開した状態になる。
【0047】
ここで、製造時の展開状態では、
図8に示したように、第1面部11と第2面部12は、それぞれ全体が2層で形成されている。これに対して、封緘後に展開した
図1に示した状態では、第1面部11は本体部112のみが2層(22,21)のままで、縁部111は1層(22)になっている。一方、第2面部12は本体部122は2層(23,24)のままであるが、縁部121は3層(23,24,21)になっている。
【0048】
これは、第2面部12の縁部121が接着糊面6を介して第1面部11の縁部111に接合されているので、封緘後にシート状印刷物1を開く際に、接着糊より接着力が弱い剥離糊面4(
図5参照)が剥がれて第2面部12側に移動し、第2面部12の縁部121が3層になることによる。
【0049】
次に、本実施の形態のシート状印刷物及びシート状印刷物の製造方法の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態のシート状印刷物1は、
図1に示すように、展開時に谷折り線13を境に第1面部11と第2面部12とが現れる構成となっている。
【0050】
そして、2層(22,21)となる第1面部11の本体部112の周囲の縁部111が1層(22)であるのに対し、第2面部12では、2層(23,24)となる本体部122の周囲の縁部121が3層(23,24,21)となる構造となっている。すなわち、第2面部12の縁部121は、剥離糊より接着力の強い粘着糊及び接着糊の接着力により、3層が一体化されている。
【0051】
このような構造とするのであれば、工場における製造時に1台の糊付け機を使用して、粘着糊、剥離糊及び接着糊という3種類の糊を塗布することができる。そして、剥離糊を塗布する範囲(剥離糊面4)と、内縁カット部5Aを設ける範囲を工夫したことにより、製造ラインで大量にシート状印刷物1を製造することも可能になった。
【0052】
こうした複数種類の糊を使用して封緘状態にする印刷物は、複数の糊付け機を使用すれば製造することもできるが、糊付け機が高価であるため製造コストが高くなる。そこで、本実施の形態のシート状印刷物1の縁部111,121のような構造を採用することで、1台の糊付け機を使用するだけで、大量の製造ができるようにした。
【0053】
要するに、1台の糊付け機を使用するだけで、安価に大量のシート状印刷物1が製造できるようになる。また、接着糊だけでなく剥離糊を使用することで、展開時に興味を引くような様々な工夫を、シート状印刷物1に施せるようになる。
【0054】
また、谷折り線25(13)以外の3辺の周縁が接合されて、封緘状態になったシート状印刷物1であれば、送付コストが安価な郵便物にすることができるので、宅配便などを使って配送する場合と比べて、配送費用を抑えることができる。
【0055】
また、上述したシート状印刷物の製造方法の発明によれば、接着糊と剥離糊を使用して、様々な工夫が施された展開可能なシート状印刷物1を、1台の糊付け機を使用して、安価に大量に製造することができるようになる。
【0056】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0057】
例えば、前記実施の形態では、ステップS1で粘着糊を塗布する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、粘着糊に代えて接着糊を使用することもできる。
【0058】
また、前記実施の形態では、1枚のシート材2を折り畳んで製造されるシート状印刷物1について説明したが、これに限定されるものではなく、複数のシート材を重ねて貼り合わせることでシート状印刷物を製造することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1 :シート状印刷物
11 :第1面部
111 :縁部
112 :本体部
12 :第2面部
121 :縁部
122 :本体部
13 :谷折り線
2 :シート材
21 :第1シート領域
22 :第2シート領域
23 :第3シート領域
24 :第4シート領域
25,26A,26B:谷折り線
28A,28B:除去部
211 :周縁部
3 :粘着糊面(粘着糊)
4 :剥離糊面(剥離糊)
5A :内縁カット部(切り込み)
5B :カット部(切り込み)
5C :キスカット部(切り込み)
5D :ミシン目部(切り込み)
6 :接着糊面(接着糊)
【要約】
【課題】接着糊と剥離糊を使用して様々な工夫が施せる展開可能な状態にできるうえに、安価に大量の製造が可能となる構造を有するシート状印刷物を提供する。
【解決手段】印刷が施されて谷折り線で開閉可能に折り畳まれた状態から展開可能なシート状印刷物1である。
そして、展開時に谷折り線13を境に一方側に形成される第1面部11と、第1面部の反対側に形成される第2面部12とを備え、第1面部及び第2面部は、縁部111,121を除いた谷折り線に隣接する本体部112,122が、いずれも少なくとも一部が接着された2層に形成されている。
また、折り畳まれた状態では、第1面部の1層の縁部に対して、第2面部の一体化された3層の縁部が剥離可能に接着されている。
【選択図】
図1