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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
B60H1/32 613Z
B60H1/32 613M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017118848
(22)【出願日】2017-06-16
(65)【公開番号】P2019001353
(43)【公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】井戸 稔
(72)【発明者】
【氏名】岩田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晃
(72)【発明者】
【氏名】片岡 慧人
(72)【発明者】
【氏名】笠原 彬裕
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-106562(JP,A)
【文献】特開平11-048753(JP,A)
【文献】特開2007-313986(JP,A)
【文献】特開2014-088059(JP,A)
【文献】特開2011-251555(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0009912(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の流通する通路を内部に有した空調ケースと、該空調ケースの内部に設けられ前記空気の冷却を行うエバポレータと、前記空気の加熱を行うヒータコアと、前記エバポレータに対して冷媒を供給・排出する冷媒配管と、前記ヒータコアに対して温水を供給・排出する温水配管と、前記空調ケースに設けられ前記冷媒配管の端部に接続された膨張弁及び前記温水配管の端部が取り出される配管導出部とを有し、前記空調ケースが、幅方向と直交する上下方向に分割可能な第1及び第2ケース部から構成された車両用空調装置において、
前記配管導出部は、前記第1ケース部に形成される第1接続部と、
前記第1ケース部の下方に配置された前記第2ケース部に形成され前記第1接続部に嵌合される第2接続部と、
を備え、
前記第1接続部には、前記第2接続部側まで延在し、前記第1接続部と前記第2接続部との嵌合部を覆うカバーを有し、前記カバーが前記第2ケース部の側壁と略同一平面状に設けられ
前記第1接続部と前記第2接続部との間には、前記第1及び第2ケース部の分割方向に沿って延在する間隙が前記嵌合部の下方に設けられ、少なくとも前記間隙の一部は、前記第1接続部と前記第2接続部との間の離間距離が毛細管現象の発生しない大きさで形成されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記カバーは、前記配管導出部の取付面側に設けられ、前記嵌合部を覆う第1カバー部と、
前記第1カバー部に対して略直交方向に延在し、前記嵌合部を延在方向に沿って覆う第2カバー部と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用空調装置において、
前記配管導出部の取付面には、パッキンを装着するための貼着部材が貼着され、前記貼着部材が前記第1接続部と前記第2接続部とに跨るように設けられることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項記載の車両用空調装置において、
前記第1及び第2ケース部の分割方向から見て、前記カバーが前記第2接続部の空間部に収納され、該カバーと前記第2接続部との間の間隙がクランク状に形成されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、
前記嵌合部は、前記第1接続部に形成され前記第2接続部側に向かって開口した溝部を有する第1嵌合部と、
前記第2接続部に形成され、前記第1接続部側に向かって突出し前記溝部へ挿入される第2嵌合部と、
を備え、
前記第1嵌合部が前記第2嵌合部へと嵌合された際、前記カバー側で重力方向下方となる端面が前記第2接続部と非接触に設けられることを特徴とする車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され車室内へ送風される空気の温度調整を行う車両用空調装置に関し、一層詳細には、空調ケースから車室内への水の浸入を防止可能な車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載される車両用空調装置は、例えば、特許文献1に開示されるように、冷却手段であるエバポレータ及び加熱手段であるヒータコアが空調ケースの内部にそれぞれ収納されると共に、前記エバポレータに対して冷媒を供給・排出するエバポレータチューブが前記空調ケースのエンジン側壁部まで延在している。
【0003】
また、空調ケースは、アッパーケースとロアケースで上下に分割可能に形成され、エバポレータチューブの端部が収納されるハウジング部を有している。ハウジング部は、アッパーケースにおける上部ハウジングとロアケースにおける下部ハウジングとから分割可能に形成され、その開口孔にはエバポレータチューブに接続された膨張弁が外部に露呈するように設けられ、エンジン側の冷媒配管と接続される。
【0004】
さらに、上部ハウジングと下部ハウジングとの分割面近傍には、該上部ハウジングから下方へと延在し、前記分割面を覆うカバー部が設けられる。そして、空調ケースに対して雨水等が外部からかかった際に、カバー部によって分割面を通じた水の浸入が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-161969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した車両用空調装置では、万が一、雨水等がカバー部の下方から越えてハウジング部へとかかった場合、上部ハウジングと下部ハウジングとの分割面の隙間から水が毛細管現象によって内部へと吸い込まれ、空調ケースを伝って車室内へと浸入してしまうことが懸念される。
【0007】
また、カバー部が上部ハウジング及び下部ハウジングの側壁に対して突出しているため、ハウジング部が大型化してしまうと共に、ハウジング部の端面及びカバー部の当接するファイアーウォール(隔壁)も突出した前記カバー部に合わせて形状を変更する必要があり、さらに気密性を向上させるためのパッキン等の装着も困難になることからコストの上昇を招くこととなる。
【0008】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、空調ケースの大型化及びコスト上昇を抑制しつつ該空調ケースから車室内への水の浸入をより確実に防止することが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、空気の流通する通路を内部に有した空調ケースと、空調ケースの内部に設けられ空気の冷却を行うエバポレータと、空気の加熱を行うヒータコアと、エバポレータに対して冷媒を供給・排出する冷媒配管と、ヒータコアに対して温水を供給・排出する温水配管と、空調ケースに設けられ冷媒配管の端部に接続された膨張弁及び温水配管の端部が取り出される配管導出部とを有し、空調ケースが、幅方向と直交する上下方向に分割可能な第1及び第2ケース部から構成された車両用空調装置において、
配管導出部は、第1ケース部に形成される第1接続部と、
第1ケース部の下方に配置された第2ケース部に形成され第1接続部に嵌合される第2接続部と、
を備え、
第1接続部には、第2接続部側まで延在し、第1接続部と第2接続部との嵌合部を覆うカバーを有し、カバーが第2ケース部の側壁と略同一平面状に設けられ
第1接続部と第2接続部との間には、第1及び第2ケース部の分割方向に沿って延在する間隙が嵌合部の下方に設けられ、少なくとも間隙の一部は、第1接続部と第2接続部との間の離間距離が毛細管現象の発生しない大きさで形成されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、車両用空調装置の空調ケースが、上下方向に分割可能な第1及び第2ケース部から構成されると共に、エバポレータに接続された冷媒配管の端部に接続された膨張弁及びヒータコアに接続された温水配管の端部が共に取り出される配管導出部を備え、この配管導出部は、第1ケース部に第1接続部が形成され、第1ケース部の下方に配置された第2ケース部に第2接続部が形成され第1接続部へと嵌合される。また、第1接続部には、第2接続部側まで延在したカバーを備え、第1接続部と第2接続部との嵌合部を覆うと共に第2ケース部の側壁と略同一平面状に設けられる。
【0011】
従って、例えば、エンジンルームから車両用空調装置側へと雨水等が浸入した場合でも、上下に分割自在な配管導出部では、下方となる第2接続部側に向かって延在したカバーによって第1接続部と第2接続部との間から水が嵌合部側へと浸入することが防止され、しかも、第1接続部のカバーが第2ケース部の側壁から外側へと突出することがないため装置の大型化を抑制できると共に、エンジンルーム側の隔壁の形状変更も不要となるためコストの上昇を回避できる。
【0012】
その結果、装置の大型化を抑制しつつ、第1及び第2接続部からなる配管導出部を通じた外部からの水の浸入を確実に防止することで、空調ケースを伝った車室内への水の浸入をより一層確実に防止することが可能となる。
【0013】
また、第1接続部と第2接続部との間に、第1及び第2ケース部の分割方向に沿って延在する間隙を嵌合部の下方に設け、少なくとも間隙の一部を、第1接続部と第2接続部との間の離間距離が毛細管現象の発生しない大きさで形成するとよい。
【0014】
さらに、カバーは、嵌合部に対して配管導出部の取付面側を覆う第1カバー部と、第1カバー部に対して略直交方向に延在し、嵌合部を延在方向に沿って覆う第2カバー部と、を備えるとよい。
【0015】
さらにまた、配管導出部の端面には、パッキンを装着するための貼着部材が貼着され、貼着部材を第1接続部と第2接続部とに跨るように設けるとよい。
【0016】
またさらに、第1及び第2ケース部の分割方向から見て、カバーが第2接続部の空間部に収納され、カバーと第2接続部との間の間隙をクランク状に形成するとよい。
【0017】
また、嵌合部は、第1接続部に形成され第2接続部側に向かって開口した溝部を有する第1嵌合部と、第2接続部に形成され、第1接続部側に向かって突出し溝部へ挿入される第2嵌合部と、を備え、第1嵌合部を第2嵌合部へと嵌合させた際、カバー側で重力方向下方となる端面を第2接続部と非接触に設けるとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0019】
すなわち、膨張弁及び温水配管の取り出される配管導出部において、第1ケース部に形成された第1接続部に、下方となる第2ケース部の第2接続部側まで延在したカバーを備え、このカバーが第1接続部と第2接続部との嵌合部を覆うと共に第2ケース部の側壁と略同一平面状に形成される。これにより、例えば、エンジンルームから車両用空調装置側へと雨水等が浸入した場合でも、カバーによって上下に分割自在な第1接続部と第2接続部との間から水が嵌合部側へと浸入することを防止し、さらに、第1接続部のカバーが第2ケース部の側壁から外側へと突出することがないため装置の大型化を抑制することができると共に、エンジンルーム側への取付面の形状変更が必要ないためコストの上昇を招くことがない。
【0020】
その結果、車両用空調装置の大型化及びコストの上昇を抑制しつつ、上下に分割自在な第1及び第2接続部からなる配管導出部を通じた外部からの水の浸入を確実に防止し、それに伴って、空調ケースを伝った車室内への水の浸入をより一層確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置の全体正面図である。
図2図2Aは、図1の車両用空調装置における配管導出部を示す拡大正面図であり、図2Bは、図2Aにおける第1接続部と第2接続部との接続部近傍を示すさらなる拡大正面図である。
図3図2BのIII-III線に沿った断面図である。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る車両用空調装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す。
【0023】
この車両用空調装置10は、図1に示されるように、空気の各通路を構成する空調ケース12と、該空調ケース12の幅方向に沿った側部に接続され、外気・内気を取り込んで前記空調ケース12へと供給する内外気切替ユニット14とを含み、前記空調ケース12の内部には、前記内外気切替ユニット14から供給された空気を冷却するエバポレータ16と、前記空気を加熱するヒータコア(図示せず)が収納されている。
【0024】
空調ケース12は、例えば、樹脂製材料から形成され、上下方向(矢印A1、A2方向)に分割可能なアッパーケース(第1ケース部)18とロアケース(第2ケース部)20とを含み、その幅方向端部となる側壁に内外気切替ユニット14が接続されると共に、エバポレータ16に接続された冷媒配管22及びヒータコアに接続された温水配管24の端部が取り出され、図示しないエンジン側へと接続される配管導出部26が形成される。
【0025】
配管導出部26は、図1図3に示されるように、例えば、エンジンルームと車内とを隔離する隔壁に臨むように設けられ、この隔壁に開口した配管孔を介して図示しないエンジンの冷却回路等と接続される。
【0026】
この配管導出部26は、空調ケース12の側壁に対して幅方向外側(矢印B1方向)に膨出し、アッパーケース18及びロアケース20に跨るように設けられる。そして、配管導出部26は、アッパーカバー側(矢印A1方向)に形成される第1接続部28と、ロアケース20側(矢印A2方向)に形成される第2接続部30とから構成される。
【0027】
また、第1及び第2接続部28、30には、図3に示されるように、車両前方側(矢印C1方向)となる取付面26aが平面状に形成される。
【0028】
第1接続部28は、図2A図4に示されるように、断面L字状に形成され、幅方向(矢印B1、B2方向)に沿って略水平方向に延在すると共に、幅方向外側(矢印B1方向)には下方へ突出した突部31を有し、この突部31にはさらに第2接続部30側(矢印A2方向)へと突出したカバー壁(カバー)32が形成される。
【0029】
このカバー壁32は、突部31において幅方向内側(矢印B2方向)に形成され、第1接続部28の幅方向と直交するように鉛直下方向(矢印A2方向)に向かって所定高さで延在し、車両前方側(図3中、矢印C1方向)で幅方向に延在する第1カバー部34と、該第1カバー部34と直交して車両後方側(図3中、矢印C2方向)へと延在する第2カバー部36とからなる。この第2カバー部36は、第2接続部30に形成される第1開口部44に臨むように形成される。
【0030】
すなわち、カバー壁32は、図3に示されるように、その高さ方向から見て第1カバー部34と第2カバー部36とが直交した断面L字状に形成される。なお、第1及び第2カバー部34、36は、その下端部が略同一高さとなるように形成される。
【0031】
また、第1接続部28には、図3及び図4に示されるように、第2カバー部36に対して幅方向外側(矢印B1方向)となる位置に所定間隔離間して嵌合部(第1嵌合部)38が設けられる。この嵌合部38は、第2カバー部36から幅方向外側に延在する接続壁40(図4参照)を介して一体的に形成され、車両後方(図3中、矢印C2方向)に向かって延在すると共に、下方に向かって開口した溝部39を有している。
【0032】
第2接続部30は、図2Aに示されるように、その上端が幅方向(矢印B1、B2方向)に沿って略水平方向に延在すると共に、幅方向に沿った中央には膨張弁42の収納される第1開口部44が形成される。また、第1開口部44の下方となる幅方向外側には、温水配管24の収納される一対の第2開口部46が形成される。
【0033】
そして、第2接続部30には、図1及び図2Aに示されるように、その幅方向外側を覆うように配管カバー48が装着され、該配管カバー48によって第2開口部46及び一対の温水配管24が覆われる。
【0034】
また、第2接続部30は、第1開口部44の幅方向外側が下方に窪んだ段付状に形成され、その窪んだ部位には、第1接続部28の突部31が係合されると共に、さらに下方に向かって断面矩形状に窪んだ凹部50が形成される。凹部50は、第1開口部44に臨むように形成され、第2接続部30において車両前方側(図3中、矢印C1方向)に形成されると共に、幅方向外側となる側壁部には、上部がさらに幅方向外側(矢印B1方向)へと広がった段付部52を有している。
【0035】
そして、第1接続部28と第2接続部30とが組み付けられた配管導出部26を構成する際、図2B及び図3に示されるように、凹部50にはカバー壁32の第1カバー部34が挿入され、該第1カバー部34の下端と前記凹部50の底部との間には所定間隔の第1間隙G1を有し、前記凹部50の側壁部と第1カバー部34の側部との間にも所定間隔の第2間隙(間隙)G2が形成される。
【0036】
この際、第2間隙G2は、図2Bに示されるように、その下部に対して上部側(矢印A1方向)が段付部52によって広く形成され、この第2間隙G2の上部側の離間距離(大きさ)は、毛細管現象の発生することがない間隔に設定される。なお、この毛細管現象の発生することがない離間距離とは、水の表面張力と、樹脂製材料から形成され前記水が付着する第1及び第2接続部28、30(空調ケース12)の濡れ易さ、前記水の密度等に基づいて適宜設定される。
【0037】
また、第1カバー部34が、図3に示されるように第2接続部30の取付面26aと略同一平面となるように形成され、第2カバー部36が、図2A及び図2Bに示されるように前記第2接続部30の第1開口部44と略同一平面となるように形成される。すなわち、カバー壁32は、第2接続部30の側壁に対して突出することがないように設けられる。
【0038】
なお、上述したように、凹部50における側壁部の一部に段付部52を設ける代わりに、前記側壁部全体が段付部を設けた場合と同一の離間距離となるように形成し、第1カバー部34と前記側壁部との間での毛細管現象の発生を防止可能としてもよい。
【0039】
一方、第2接続部30には、図3に示されるように、凹部50に対して車両後方(矢印C2方向)となる位置に、第2カバー部36側(矢印B2方向)へと突出した突出壁54が形成される。
【0040】
この突出壁54は、該突出壁54に臨むように設けられた第1接続部28の第2カバー部36に向かって直交するように形成され、該第2カバー部36との間には所定間隔の第3間隙G3が形成されると共に、凹部50に設けられた第1カバー部34と略平行となり、両者の間にも所定間隔の第4間隙G4を有している。この第3及び第4間隙G3、G4は、上述した毛細管現象の発生することがない離間距離にそれぞれ設定される。
【0041】
また、突出壁54のさらに車両後方(矢印C2方向)には、該突出壁54に対して幅方向外側(矢印B1方向)へと拡がった空間部56が形成され、車両後方側に向かって延在すると共に、第1接続部28の第2カバー部36が臨むように設けられる。
【0042】
すなわち、配管導出部26は、図3に示されるように、幅方向と直交する高さ方向から見た際、第1接続部28のカバー壁32と第2接続部30の凹部50、突出壁54及び空間部56とによって車両前後方向(矢印C1、C2方向)に沿ってクランク状となったラビリンス構造となっている。
【0043】
第2接続部30の上面には、図3及び図4に示されるように、空間部56に対して幅方向外側となる位置に上方(矢印A1方向)に向かって突出した嵌合リブ(第2嵌合部)58が形成される。この嵌合リブ58は、車両後方側(図3中、矢印C2方向)に向かって延在すると共に、図4に示されるように、上方から第1接続部28の嵌合部38が嵌合されることで、第1接続部28と第2接続部30とが嵌合され所定位置に位置決めされる。
【0044】
また、図4に示されるように、嵌合部38が嵌合リブ58と嵌合された際、該嵌合部38における幅方向内側(矢印B2方向)の下端部38aは、第2接続部30に対して接触することがなく凹部50の空間に臨んだ状態にある。
【0045】
そして、配管導出部26には、図2A図3に示されるように、車両前方側(矢印C1方向)となる取付面26aに複数の両面テープ(貼着部材)60a~60cを介して図示しないパッキンが貼着され、前記パッキンを介して前記配管導出部26が、隔壁を介して図示しないエンジン側に接続された配管等と接続される。
【0046】
この両面テープ60aは、図2Aに示されるように、例えば、第1接続部28において第1開口部44の上方となる取付面26aに装着されると共に、両面テープ60b、60cが、前記第1開口部44の側方において第1接続部28と第2接続部30とに跨るようにそれぞれ取付面26aに装着される。
【0047】
これにより、両面テープ60b、60cが、第1接続部28と第2接続部30との接続部位を覆うように設けられる。より詳細には、図2Bに示されるように、両面テープ60bが、第1カバー部34と第2接続部30との間の第2間隙G2を覆うように装着される。
【0048】
次に、配管導出部26の第1開口部44に収納される膨張弁42について簡単に説明する。膨張弁42は、図2Aに示されるように、例えば、略直方体形状のボディ62の端部に対して一組の第1及び第2ポート64、66が開口し、前記第1ポート64には図示しない圧縮機等から高圧の冷媒が供給され、エバポレータ16において空気と熱交換された低圧の冷媒が第2ポート66から排出される。
【0049】
また、第1及び第2ポート64、66は、ボディ62の内部においてエバポレータ16の冷媒配管22とそれぞれ連通すると共に、ボディ62の内部に設けられたダイヤフラム式の弁開度調節手段(図示せず)によって、第1及び第2ポート64、66と冷媒配管22との連通状態を冷媒温度に応じて切り替えている。
【0050】
そして、膨張弁42は、配管導出部26の第1開口部44において、第1及び第2ポート64、66の開口したボディ62の端部が外部に露呈した状態で収納される。
【0051】
以上のように、本実施の形態では、車両用空調装置10を構成する空調ケース12の配管導出部26が、アッパーケース18側の第1接続部28と、ロアケース20側の第2接続部30とから上下に分割自在に形成され、前記第1接続部28に、第2接続部30側となる下方に向かって延在し、該第2接続部30の凹部50及び空間部56へ収納されるカバー壁32を設けることで、例えば、エンジンルームから隔壁の配管孔を通じて車両用空調装置10側へと雨水等が浸入した場合でも、カバー壁32によって水が第1接続部28と前記第2接続部30との間から嵌合部38側へと浸入することが好適に防止される。
【0052】
また、第1接続部28のカバー壁32が、第2接続部30の取付面26aを含む壁面から外側に突出することなく略同一平面状に形成されるため、カバー壁がハウジング部に対して外側へ突出していた従来技術に係る車両用空調装置と比較し、車両用空調装置10の大型化を抑制することが可能となり、しかも、エンジンルームと車内とを隔離する隔壁の形状変更が不要となると共に、取付面26aと前記隔壁との間へのパッキン等の装着も容易となることから、カバー部がハウジング部の側壁から突出した従来技術に係る車両用空調装置と比較し、その製造コストを削減することが可能となる。
【0053】
さらに、第1接続部28のカバー壁32と第2接続部30の凹部50との間に設けられ、アッパーケース18とロアケース20の分割方向に延在する第2間隙G2は、その上部側(矢印A1方向)が広く形成されているため、前記第1カバー部34と第2接続部30との間に水が浸入した場合でも、毛細管現象によって水が上方へと吸い上げられ嵌合部38まで到達してしまうことが防止される。
【0054】
さらにまた、第1接続部28と第2接続部30とに跨るように、パッキンを装着するための両面テープ60b、60cを貼着することで、前記第1接続部28と前記第2接続部30との間を通じた水の内部への浸入を防止することが可能である。
【0055】
換言すれば、配管導出部26において一対の温水配管24が取り出され、取付面26aに対して全面的に両面テープを貼着できない場合でも、第1接続部28と第2接続部30との間を通じた水の浸入を確実に防止できる。
【0056】
またさらに、第1接続部28の嵌合部38が第2接続部30の嵌合リブ58と嵌合された際、水の浸入方向となる嵌合部38における幅方向内側の下端部38aが、第2接続部30に対して接触することがなく凹部50の空間に臨んだ状態にあるため、例えば、前記下端部38aが第2接続部30とを接触させた場合に、その嵌合面に溜まった水が毛細管現象によって吸い上げられ前記嵌合部38側へと浸入してしまうということを回避できる。
【0057】
上述したように、車両用空調装置10を構成する空調ケース12において、上下に分割自在な配管導出部26を通じた嵌合部38側への水の浸入を確実に防止でき、それに伴って、前記空調ケース12を伝って水が車室内へと浸入してしまうことをより一層確実に防止できる。
【0058】
また、配管導出部26を構成する第1及び第2接続部28、30に対して、カバー壁32、凹部50、空間部56等を予め形成しておくことで、前記第1接続部28を含むアッパーケース18と前記第2接続部30を含むロアケース20とを組み付けるだけで、容易且つ確実に空調ケース12への水の浸入を防止することが可能となる。
【0059】
さらに、第2接続部30には、その取付面26aから車両後方に向かって凹部50、突出壁54及び空間部56を形成し、第1接続部28のカバー壁32との間において幅方向に凹凸状となったクランク状の第2~第4間隙G2、G3、G4を設けているため、前記取付面26a側から空調ケース12の内部への水の浸入を抑制することができる。
【0060】
さらにまた、第2接続部30と第1接続部28の第2カバー部36との間に幅方向に広い空間部56を設けることで、車両前方から空間部56まで水が浸入した場合でも、所定容積を有した空間部56によって毛細管現象の発生が防止されるため、前記第1接続部28と第2接続部30との嵌合部38側への浸入が防止される。
【0061】
なお、本発明に係る車両用空調装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0062】
10…車両用空調装置 12…空調ケース
18…アッパーケース 20…ロアケース
24…温水配管 26…配管導出部
28…第1接続部 30…第2接続部
32…カバー壁 34…第1カバー部
36…第2カバー部 38…嵌合部
44…第1開口部 50…凹部
52…段付部 54…突出壁
56…空間部 58…嵌合リブ
60a~60c…両面テープ
図1
図2
図3
図4