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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】ドア駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20220331BHJP
   F24F 13/15 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B60H1/00 102H
F24F13/15
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018053148
(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公開番号】P2019162991
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】秋山 槙吾
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-175147(JP,A)
【文献】特開2001-354024(JP,A)
【文献】特開平04-297319(JP,A)
【文献】特開2008-094232(JP,A)
【文献】実開昭63-125738(JP,U)
【文献】実開昭63-046750(JP,U)
【文献】実開平06-000816(JP,U)
【文献】特開2002-321524(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0095105(US,A1)
【文献】特開2016-068885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
F24F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部と、車室内へ送風される空気の流れる流路を有した空調ケースと、該空調ケースの内部において前記流路の開度を調節する複数のドアと、前記複数のドアのうちの第1のドアを駆動する第1回転体と、該第1回転体と連動して第2のドアを駆動する第2回転体と、前記駆動部の駆動力を前記第1及び第2回転体へと伝達するドア駆動装置において、
前記第1回転体と前記第2回転体とを前記駆動部からの駆動力を伝達可能に接続し、前記第1回転体及び第2回転体の回転軸と直交した伝達シャフトを備え、
前記伝達シャフトは、前記第1回転体と接続される第1接続部と、前記第2回転体と接続される第2接続部とを有し、
前記第1接続部は、前記第1回転体の回転方向を変換し前記駆動部の駆動力を前記伝達シャフトへと伝達する変換伝達機構であると共に、前記第1接続部と前記第2接続部との回転軸方向に沿った長さを調整自在な調整機構を備えることを特徴とするドア駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載のドア駆動装置において、
前記調整機構は、前記伝達シャフトにおいて前記回転軸方向に分割可能な複数の分割体からなり、前記第1接続部が一方の分割体に設けられ、前記第2接続部が他方の分割体に設けられると共に、一方及び他方の分割体は、前記回転軸方向において相対移動可能であり、且つ、前記伝達シャフトの回転方向への相対移動が規制されることを特徴とするドア駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のドア駆動装置において、
前記第2回転体の回転軸は、前記第1回転体の回転軸と平行に設けられることを特徴とするドア駆動装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のドア駆動装置において、
前記第1回転体及び前記第2回転体のいずれか一方は、前記駆動部によって駆動されることを特徴とするドア駆動装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のドア駆動装置において、
前記第1回転体及び前記第2回転体のいずれか一方は、リンク機構を介して前記駆動部と接続されることを特徴とするドア駆動装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のドア駆動装置において、
前記第1及び第2接続部は、前記第1及び第2回転体に設けられた第1のギアと、前記伝達シャフトに設けられた第2のギアとが噛合されることで構成されることを特徴とするドア駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源からの駆動力を車両用空調装置における複数のドアへと伝達して開閉動作させるためのドア駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用空調装置の空調ケース内に設けられた複数のドアに対して駆動源からの駆動力を伝達することで移動させ、前記ドアの駆動によって複数の流路を流れる空気の流通状態を切り替えることが行われている。
【0003】
このような車両用空調装置では、例えば、特許文献1に開示されるように、空調ケースの内部に上下方向へスライド変位自在な第1及び第2エアミックスドアを備え、上方に配置された第1エアミックスドアには第1シャフトの第1外部歯車が噛合され、下方に配置された第2エアミックスドアには、第2シャフトの第2内部歯車が噛合されると共に、前記第1シャフトの第1内部歯車と前記第2シャフトの第2外部歯車とが、斜めに傾斜するように設けられた棒状のラックの端部にそれぞれ噛合されている。
【0004】
そして、第1シャフトを回転させることで、第1エアミックスドアが上方へとスライドし、それに伴ってラックも斜め上方へと移動することで、該ラックに噛合された第2シャフトが第1シャフトとは反対方向に回転し第2エアミックスドアが下方へとスライドする。
【0005】
また、特許文献2に開示された空調装置のドア駆動装置では、使用者が操作レバーを操作することで回動するプレートを有し、このプレートの端部に設けられた平歯車がシャフトの端部に設けられた笠歯車と噛合され、前記シャフトの中央部に設けられたウォームギアがドア軸と連結されたウォームホイールと噛合されている。
【0006】
そして、操作レバーの操作によってプレートが回動することでシャフトが所定方向へと回転し、このシャフトからウォームホイールへと駆動力が伝達され回動することでドア軸を介してエアミックスドアが開閉動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-110404号公報
【文献】特許第4092803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に係る車両用空調装置では、空調ケースの壁面にラックが斜め上下方向に可動するためのスペースを設けておく必要があるため、そのスペースの分だけ車両用空調装置が大型化してしまうと共に、第1及び第2エアミックスドア、第1及び第2シャフト、ラックに製造誤差や組付ばらつきが生じた場合に、前記ラックと前記第1及び第2シャフトを所定の位置関係で組み付けることができず、例えば、第1及び第2シャフトとラックとの間の抵抗が増加して作動性が低下したり組み付けられないことが懸念される。
【0009】
また、ラックを空調ケースの壁面に沿って摺動させる構成としているため、この壁面とラックとの摺動抵抗を低減させるためにグリスを塗布する必要があり、製造コストの増加を招くと同時に組付性が低下してしまうという問題がある。
【0010】
一方、上述した特許文献2に係るドア駆動装置でも、製品誤差等の原因によってエアミックスドアとプレートとの距離にばらつきが生じた場合、プレートの平歯車、シャフトの笠歯車及びウォームギア等の間の抵抗が増加して円滑に動作させることが困難になると共に、前記ばらつきが過大な場合には組み付けができないという問題がある。
【0011】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、ドアに対する駆動力の伝達効率を高めつつ、小型化及び組付性の向上を図ることが可能なドア駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明は、駆動部と、車室内へ送風される空気の流れる流路を有した空調ケースと、空調ケースの内部において流路の開度を調節する複数のドアと、複数のドアのうちの第1のドアを駆動する第1回転体と、第1回転体と連動して第2のドアを駆動する第2回転体と、駆動部の駆動力を第1及び第2回転体へと伝達するドア駆動装置において、
第1回転体と第2回転体とを駆動部からの駆動力を伝達可能に接続し、第1回転体及び第2回転体の回転軸と直交した伝達シャフトを備え、
伝達シャフトは、第1回転体と接続される第1接続部と、第2回転体と接続される第2接続部とを有し、
第1接続部は、第1回転体の回転方向を変換し駆動部の駆動力を伝達シャフトへと伝達する変換伝達機構であると共に、第1接続部と第2接続部との回転軸方向に沿った長さを調整自在な調整機構を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、空調ケース内における第1のドアを駆動する第1回転体と、第2のドアを駆動する第2回転体と、第1回転体と第2回転体とを駆動部からの駆動力を伝達可能に接続する伝達シャフトとを有し、伝達シャフトを、第1回転体及び第2回転体の回転軸と直交するように設けると共に、第1回転体と接続される第1接続部と、第2回転体と接続される第2接続部とを備えている。
【0014】
そして、第1回転体の回転方向が第1接続部によって変換され駆動部の駆動力が伝達シャフトへと伝達されると共に、第1接続部と第2接続部との回転軸方向に沿った長さを調整機構によって調整可能としている。
【0015】
従って、駆動部の駆動力を第1回転体から伝達シャフトを介して第2回転体へと伝達可能とすることで、ラックを介して第1及び第2シャフトを駆動させていた従来技術に係るドア駆動装置と比較し、グリス等を用いることなく摺動抵抗を低減できるため、第1及び第2回転体に対して駆動力を確実且つ円滑に伝達することでその伝達効率を高めることができる。
【0016】
また、伝達シャフトが回転することで第1及び第2回転体へと駆動力を伝達可能な構成としているため、空調ケース内をラックが斜め上下方向に移動するためのスペースを必要としていた従来技術のドア駆動装置と比較して省スペース化を図ることができ、それに伴って、装置の小型化を図ることができる。
【0017】
さらに、伝達シャフトの回転軸方向に沿った長さを調整機構で調整可能としているため、例えば、第1回転体と第2回転体との間の距離が、製造誤差や組付ばらつき等によってばらついた場合でも、第1接続部と第2接続部との距離を伝達シャフトで調整することで容易且つ確実に所定位置へと組み付けることができるため、組付性の向上を図ることができる。また、第1及び第2回転体に対して伝達シャフトを所定の位置に組み付けることで、第1及び第2回転体と伝達シャフトとの間の作動抵抗が低減され円滑に作動させることができる。
【0018】
また、伝達シャフトは、回転軸方向に分割可能な複数の分割体からなり、第1接続部を一方の分割体に設け、第2接続部を他方の分割体に設けると共に、一方及び他方の分割体を、回転軸方向において相対移動可能とし、且つ、伝達シャフトの回転方向への相対移動を規制するとよい。
【0019】
さらに、第2回転体の回転軸を、第1回転体の回転軸と平行に設けるとよい。
【0020】
さらにまた、第1回転体及び第2回転体のいずれか一方を、駆動部によって駆動させるとよい。
【0021】
またさらに、第1回転体及び第2回転体のいずれか一方を、リンク機構82を介して駆動部と接続させるとよい。
【0022】
また、第1及び第2接続部は、第1及び第2回転体に設けられた第1のギアと、伝達シャフトに設けられた第2のギアとを噛合させることで構成するとよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0024】
すなわち、空調ケース内における第1のドアを駆動する第1回転体と、第2のドアを駆動する第2回転体とを駆動部からの駆動力を伝達可能に接続する伝達シャフトを備えることで、ラックを介して第1及び第2シャフトを駆動させていた従来技術に係るドア駆動装置と比較し、グリス等を用いることなく摺動抵抗を低減できるため、第1及び第2回転体に対する駆動力の伝達効率を高めることができ、しかも、空調ケース内をラックが斜め上下方向に移動するためのスペースが不要となるため従来技術のドア駆動装置と比較して小型化が可能となる。
【0025】
また、製造誤差や組付ばらつき等によって第1回転体と第2回転体との間の距離にばらつきが生じた場合でも、第1接続部と第2接続部との距離を伝達シャフトの調整機構で調整することで容易且つ確実に所定位置へと組み付けることが可能となるため組付性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態に係るドア駆動装置の適用された車両用空調装置の全体正面図である。
図2図2Aは、図1のIIA-IIA線に沿った断面図であり、図2Bは、図2AのIIB-IIB線に沿った断面図である。
図3図1に示す駆動力伝達機構を模式化した模式正面図である。
図4図4Aは、変形例に係る駆動力伝達機構を示す模式正面図であり、図4Bは、図4Aの状態から第1及び第2リンクプレートが回動した状態を示す模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係るドア駆動装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係るドア駆動装置の適用された車両用空調装置を示す。
【0028】
この車両用空調装置10は、図1に示されるように、空気の各通路を構成する空調ケース12と、該空調ケース12の内部に配設され空気を冷却するエバポレータ14と、前記空気を加熱するヒータコア16と、前記空調ケース12内において調温された冷風及び温風を所定の混合比率で混合して混合風とするエアミックス機構18と、前記空調ケース12の側面に設けられた駆動部20からの駆動力を前記エアミックス機構18へと伝達する駆動力伝達機構(ドア駆動装置)22とを含む。
【0029】
この空調ケース12の内部において、上流側(矢印A方向)にエバポレータ14が設けられ、該エバポレータ14に対して下流側(矢印B方向)にヒータコア16が設けられると共に、前記エバポレータ14と前記ヒータコア16との間には、該エバポレータ14によって冷却された空気を下流へと流通させる際、その流通量及び流通状態を調整するためのエアミックス機構18が設けられる。
【0030】
エアミックス機構18は、上方(矢印D方向)に設けられる第1エアミックスドア(ドア)24と、該第1エアミックスドア24の下方(矢印E方向)に設けられる第2エアミックスドア(ドア)26とから構成され、前記第1及び第2エアミックスドア24、26は、例えば、大きな半径で形成された断面円弧状のプレートからなり、エバポレータ14から離間する方向、すなわち、ヒータコア16側(矢印B方向)に向かって緩やかな凸状となるように形成される。
【0031】
また、第1及び第2エアミックスドア24、26は、空調ケース12の幅方向(図2A中、矢印C方向)に沿って設けられると共に、前記空調ケース12の内壁面に設けられたガイド部28に沿ってそれぞれ案内され、エバポレータ14に臨む内周面に沿ってラックギア(図示せず)が設けられている。
【0032】
駆動力伝達機構22は、図1図3に示されるように、第1及び第2エアミックスドア24、26のラックギア(図示せず)にそれぞれ噛合される第1及び第2ドアシャフト(第1回転体、第2回転体)30、32と、前記第1及び第2ドアシャフト30、32の端部に噛合される伝達シャフト34とを含む。
【0033】
第1及び第2ドアシャフト30、32は、第1及び第2エアミックスドア24、26とエバポレータ14との間に設けられ、互いに略平行となるように設けられる。そして、第1及び第2ドアシャフト30、32は、空調ケース12の幅方向(図2中、矢印C方向)に沿って延在し、その両端部が空調ケース12の壁部36に形成された孔部38へと挿通されることで回転自在に支持される。すなわち、第1及び第2ドアシャフト30、32は幅方向(矢印C方向)に沿って略水平に延在するように設けられている。
【0034】
また、第1及び第2ドアシャフト30、32の一端部は、空調ケース12の孔部38に挿通されて外部へと所定長さだけ突出し、その外周面にはギア歯の形成された第1及び第2ギア部(第1接続部、第2接続部)40、42が形成される。この第1及び第2ギア部40、42は、第1及び第2ドアシャフト30、32の周方向に沿って複数のギア歯が刻設された平歯車である。
【0035】
伝達シャフト34は、例えば、軸方向(矢印D、E方向)に分割可能な第1及び第2分割軸(分割体)44、46からなり、空調ケース12における一方の壁部36の外側に設けられ、且つ、第1及び第2ドアシャフト30、32の軸方向(矢印C方向)と直交するように設けられる。すなわち、伝達シャフト34は、鉛直方向に沿って延在するように設けられている。
【0036】
第1分割軸44は、伝達シャフト34において上方(矢印D方向)に設けられ、一定径の軸体からなる第1軸部48と、前記第1軸部48の上端部に形成された第1フェースギア(第1接続部、第2接続部)50とを有し、前記第1軸部48の下端部には第2分割軸46側(矢印E方向)へと突出した凸部52が形成される。この凸部52は、図2Bに示されるように、例えば、断面円形状の一部が平面状に切り欠かれた断面半円状に形成される。
【0037】
第1フェースギア50は、第1軸部48から径方向外側に拡径した後に上方(矢印D方向)に向かって環状に立設した環状壁54を有し、この環状壁54の上端部に沿ってギア歯50aが形成されている。すなわち、第1フェースギア50では、第1軸部48の軸方向にギア歯50aを有している。
【0038】
第2分割軸46は、伝達シャフト34において第1軸部48の下方(矢印E方向)に設けられ、一定径の軸体からなる第2軸部56と、前記第2軸部56の下端部に形成された第2フェースギア(第1接続部、第2接続部)58とを有し、前記第2軸部56の上端部には第1分割軸44から離間する方向(矢印E方向)に窪んだ凹部60が形成される。なお、凹部60は、凸部52に対応して同一の断面形状である断面半円状に形成される(図2B参照)。
【0039】
第2フェースギア58は、第2軸部56から径方向外側に拡径した後に下方(矢印E方向)に向かって環状に立設した環状壁62を有し、この環状壁62の上端部に沿ってギア歯58aが形成されている。すなわち、第2フェースギア58では、第2軸部56の軸方向にギア歯58aを有している。
【0040】
また、第2フェースギア58の直径は、第1フェースギア50の直径と略同一に形成される。換言すれば、第1及び第2フェースギア50、58は断面U字状に形成される。
【0041】
さらに、伝達シャフト34は、空調ケース12の壁部36から水平方向に突出した一組の支持部64a、64bによって第1及び第2分割軸44、46がそれぞれ回転自在に支持されると共に、上方側(矢印D方向)に設けられた一方の支持部64aが第1フェースギア50の下面へと当接することで、該第1フェースギア50を含む第1分割軸44の下方(矢印E方向)への移動を規制している。
【0042】
そして、伝達シャフト34は、第1分割軸44の凸部52が第2分割軸46の凹部60へと挿入され、図2Aに及び図2Bに示されるように、断面半円状の凸部52と凹部60とが係合されることで互いの回転方向への移動が規制され、軸方向(矢印D、E方向)へと相対移動が可能な状態で接続されると共に、第1フェースギア50のギア歯50aが、上方に配置された第1ドアシャフト30の第1ギア部40と噛合され、第2フェースギア58のギア歯58aが、下方に配置された第2ドアシャフト32の第2ギア部42と噛合される。これにより、第1及び第2ドアシャフト30、32は、伝達シャフト34と略直交するようにそれぞれ噛合される。
【0043】
すなわち、伝達シャフト34における凸部52及び凹部60は、第1分割軸44と第2分割軸46とを軸方向(矢印D、E方向)に相対的に移動自在に接続することで、前記伝達シャフト34の長手寸法を調整可能な調整機構として機能する。
【0044】
なお、伝達シャフト34を構成する第1及び第2分割軸44、46は、凸部52及び凹部60の係合作用下に軸方向(矢印D、E方向)に相対移動可能に接続される構成に限定されるものではなく、例えば、2本の分割軸を一体とし、その両端部に対して第1及び第2フェースギア50、58が軸方向へ移動可能に設けられる構成であってもよい。
【0045】
駆動部20は、例えば、図示しないコントローラからの制御信号によって回転駆動するアクチュエータ等の回転駆動源からなり、その駆動軸66には外周面に複数のギア歯を有した駆動ギア68が連結され、第1フェースギア50とは反対側となる上方で第1ドアシャフト30の第1ギア部40と噛合している。なお、駆動軸66は、第1及び第2ドアシャフト30、32と略平行に設けられている。そして、駆動部20が回転駆動することで駆動軸66及び駆動ギア68を介して駆動力が第1ドアシャフト30へと伝達され回転する。
【0046】
本発明の実施の形態に係るドア駆動装置の適用された車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0047】
先ず、図示しない乗員の操作によってコントローラからの制御信号が駆動部20へと入力されることで、その駆動軸66及び駆動ギア68が回転し、それに伴って、該駆動ギア68に噛合された第1ドアシャフト30が所定方向へと回転する。また、第1ドアシャフト30が回転すると同時に、この第1ギア部40に第1フェースギア50を介して噛合された伝達シャフト34へと駆動力が伝達され所定方向へと回転する。すなわち、駆動部20からの駆動力は、第1ドアシャフト30から伝達シャフト34へと伝達されることで、その回転方向が直交するように変換される。
【0048】
そして、伝達シャフト34の第2フェースギア58が回転することで、この第2フェースギア58と第2ドアシャフト32の第2ギア部42との噛合作用下に駆動力が該第2ドアシャフト32へと伝達されて所定方向へと回転する。
【0049】
これにより、駆動部20の駆動作用下に伝達シャフト34を介して第1ドアシャフト30と第2ドアシャフト32とが同時、且つ、互いに異なる方向へと回転し、それに伴って、空調ケース12内において前記第1及び第2ドアシャフト30、32に噛合された第1及び第2エアミックスドア24、26が、互いに接近する方向、又は、互いに離間する方向へとガイド部28に沿ってスライドする。
【0050】
例えば、図1に示される第1及び第2エアミックスドア24、26が互いに接近した位置となることで、ヒータコア16側への流路が遮断され、エバポレータ14で冷却された冷風が前記ヒータコア16へと流れることなく車室内において乗員の顔近傍へと送られ、一方、前記第1及び第2エアミックスドア24、26が互いに離間した位置となることで、エバポレータ14を通過した空気がヒータコア16を通過することで加熱され温風となって車室内における乗員の足元近傍へと送られる。
【0051】
以上のように、本実施の形態では、空調ケース12内に設けられる第1エアミックスドア24を駆動する第1ドアシャフト30と、第2エアミックスドア26を駆動する第2ドアシャフト32とを備えると共に、前記空調ケース12の外側には、前記第1及び第2ドアシャフト30、32の軸方向と直交するように伝達シャフト34が設けられ、この伝達シャフト34が、前記第1ドアシャフト30の第1ギア部40と、前記第2ドアシャフト32の第2ギア部42に対してそれぞれ噛合され接続されている。
【0052】
従って、駆動部20の駆動力が第1ギア部40を介して第1ドアシャフト30へと伝達されると同時に、該第1ギア部40に噛合された第1フェースギア50を介して伝達シャフト34へと伝達されることで、この伝達シャフト34の回転作用下に駆動力が第2フェースギア58に噛合された第2ドアシャフト32へと伝達される。
【0053】
その結果、ラックを介して2つの第1及び第2シャフトを駆動させていた従来技術に係るドア駆動装置と比較し、駆動部20の駆動力を伝達シャフト34を介して第1及び第2ドアシャフト30、32へと伝達可能とすることで、グリス等を用いることなく摺動抵抗を低減でき、第1及び第2ドアシャフト30、32に対して駆動力を確実且つ円滑に伝達することで伝達効率を高めることができる。
【0054】
また、伝達シャフト34が空調ケース12の外側において回転することで第1及び第2ドアシャフト30、32へと駆動力を伝達可能な構成としている。そのため、空調ケース内をラックが斜め上下方向に移動するためのスペースを必要としていた従来技術のドア駆動装置と比較し、省スペース化を実現することができ、それに伴って、装置の小型化を図ることができる。
【0055】
さらに、伝達シャフト34における第1及び第2分割軸44、46を軸方向に沿って相対移動可能な分割構成とすることで、例えば、第1ドアシャフト30と第2ドアシャフト32との間の距離が、製造誤差や組付ばらつき等によってばらつきが生じた場合でも、前記第1分割軸44と前記第2分割軸46とを軸方向に移動させて距離を調整することで、第1フェースギア50を第1ギア部40へと噛合させ、第2フェースギア58を第2ギア部42へと噛合させて容易且つ確実に所定の位置で組み付けることができる。
【0056】
その結果、駆動力伝達機構22の組付性を向上することができ、さらに第1及び第2ドアシャフト30、32に対して伝達シャフト34を所定の位置に高精度に組み付けることで、両者の間の作動抵抗が増加してしまうことがなく円滑に作動させることができる。
【0057】
さらにまた、駆動部20からの駆動力で第1ドアシャフト30を駆動すると同時に、この駆動力を第2ドアシャフト32へと伝達する伝達シャフト34を設けることで、単一の駆動部20によって2つの第1及び第2ドアシャフト30、32を駆動させ、第1及び第2エアミックスドア24、26を開閉動作させることができる。そのため、第1及び第2ドアシャフト30、32を駆動させるためにそれぞれ別の駆動部を設ける場合と比較し、部品点数の削減及び消費電力の削減を図ることができる。
【0058】
一方、上述した駆動力伝達機構22では、駆動部20からの駆動力を第1及び第2ドアシャフト30、32に対して減速させることなく伝達シャフト34を介して直接伝達する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図4A及び図4Bに示される駆動力伝達機構80のように、リンク機構82を介在させることで、第1及び第2ドアシャフト30、32へ伝達される駆動力に対して所定の特性をもたせて伝達させるようにしてもよい。
【0059】
この駆動力伝達機構80では、図4A及び図4Bに示されるように、駆動部20における駆動軸66に連結された第1リンクプレート84と、第1ドアシャフト30の一端部に連結された第2リンクプレート86とからなるリンク機構82を有している。
【0060】
第1リンクプレート84は、例えば、円盤状に形成され、その中心に対して第1ドアシャフト30から離れる方向へと偏心した位置に駆動源の駆動軸66が連結されている。すなわち、第1リンクプレート84は、駆動部20の駆動作用下に第1ドアシャフト30に対して接近・離間するような軌跡で回転する。
【0061】
なお、図4Aに示される駆動力伝達機構80は、第1リンクプレート84が最も第1ドアシャフト30へと接近した状態にある。
【0062】
また、第1リンクプレート84には、その中心を挟んで駆動軸66に連結された部位と略対称となる位置にリンク溝88が形成される。このリンク溝88は、前記第1リンクプレート84の中心から径方向外側に向かって拡がった断面略V字状に形成され、前記第1リンクプレート84の外縁部近傍に形成され、周方向に沿って延在する第1及び第2分岐部90、92と、該第1分岐部90と第2分岐部92の端部がそれぞれ前記中心側に向かって緩やかに湾曲しながら合流した直線状の合流部94とを有する。
【0063】
なお、第1及び第2分岐部90、92は、合流部94を中心として対称形状となるように形成される。
【0064】
第2リンクプレート86は、例えば、楕円形状に形成され、その長軸に沿った一端部が第1ドアシャフト30の一端部に連結され、他端部にはリンクピン96が形成され、前記第1ドアシャフト30の軸方向に沿って突出している。そして、リンクピン96は、第1リンクプレート84のリンク溝88へと挿通される。
【0065】
そして、上述したリンク機構82を有した駆動力伝達機構80では、先ず、図4Aに示されるように、リンク溝88の合流部94にリンクピン96が位置し、該リンクピン96が、第1ドアシャフト30、伝達シャフト34及び第2ドアシャフト32と略一直線状に配置された状態から、図4Bに示されるように、駆動部20が駆動することで駆動軸66を中心として第1リンクプレート84が所定方向(時計回り)へと回転し、それに伴って、リンク溝88に挿通されたリンクピン96が合流部94から一方の第1分岐部90へと移動する。これにより、第2リンクプレート86が反時計回りに傾動することで第1ドアシャフト30が所定方向(反時計回り)に回転する。この際、駆動部20及び第1リンクプレート84の回転方向と第2リンクプレート86及び第1ドアシャフト30の回転方向とは反対方向となる。
【0066】
この際、リンクピン96がリンク溝88の合流部94を移動している間は、第2リンクプレート86は大きく回転し、一方、第1分岐部90又は第2分岐部92を移動している間は、前記第2リンクプレート86がほとんど回転せず、第1ドアシャフト30及び第1エアミックスドア24が大きく作動することがなく緩やかに駆動する。
【0067】
また、第1ドアシャフト30の回転に伴って、伝達シャフト34を介して第2ドアシャフト32へと駆動力が伝達され、前記第2ドアシャフト32が第1ドアシャフト30と同じ回転で回転することで第2エアミックスドア26が作動する。
【0068】
上述した駆動力伝達機構80のように、リンク溝88を有した第1リンクプレート84を駆動部20の駆動軸66に連結し、第1ドアシャフト30に連結された第2リンクプレート86のリンクピン96を前記リンク溝88へと挿通させることで、前記駆動部20からの駆動力が第1及び第2ドアシャフト30、32へと伝達される際の特性を自在に変化させることができる。
【0069】
すなわち、第1及び第2リンクプレート84、86の形状や、リンク溝88の形状を変更することで、駆動部20からの駆動力を所望の特性で第1及び第2ドアシャフト30、32へと伝達して第1及び第2エアミックスドア24、26の開閉制御を行うことが可能となる。
【0070】
また、上述した車両用空調装置10では、第1エアミックスドア24を駆動するための第1ドアシャフト30を駆動部20の駆動力で直接回転駆動させ、第2ドアシャフト32は、伝達シャフト34を介して伝達される駆動力を用いて駆動する構成としているが、これに限定されるものではなく、例えば、第2ドアシャフト32を駆動部20によって直接回転駆動させ、第1ドアシャフト30が伝達シャフト34を介して伝達される前記駆動力によって回転駆動するようにしてもよい。
【0071】
なお、本発明に係るドア駆動装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0072】
10…車両用空調装置 12…空調ケース
20…駆動部 22、80…駆動力伝達機構
24…第1エアミックスドア 26…第2エアミックスドア
30…第1ドアシャフト 32…第2ドアシャフト
34…伝達シャフト 40…第1ギア部
42…第2ギア部 44…第1分割軸
46…第2分割軸 50…第1フェースギア
52…凸部 58…第2フェースギア
60…凹部 82…リンク機構
84…第1リンクプレート 86…第2リンクプレート
図1
図2
図3
図4