(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】蓄冷機能付きエバポレータ
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20220331BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20220331BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20220331BHJP
F28F 1/40 20060101ALI20220331BHJP
F28F 17/00 20060101ALI20220331BHJP
F28D 20/02 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
F28F1/32 W
F25B39/02 C
B60H1/32 613C
F28F1/40 K
F28F17/00 501B
F28D20/02 D
(21)【出願番号】P 2018036752
(22)【出願日】2018-03-01
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】鴨志田 理
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-006058(JP,A)
【文献】特開2014-124971(JP,A)
【文献】特開2018-021725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/32
F25B 39/02
B60H 1/32
F28F 1/40
F28F 17/00
F28D 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に間隔をおいて配置された複数の冷媒流通管と、左右両側壁を有しかつ蓄冷材が封入された蓄冷材容器と、アウターフィンとを備えており、隣り合う冷媒流通管どうしの間に間隙が形成され、蓄冷材容器が、前記全間隙のうちの一部である複数の容器用間隙に冷媒流通管に接するように配置され、アウターフィンが、前記全間隙のうちの残部である複数のフィン用間隙に冷媒流通管に接するように配置されている蓄冷機能付きエバポレータであって、
容器用間隙の左右方向の幅およびフィン用間隙の左右方向の幅が、それぞれ3~4mmであるとともに互いに等しくなって
おり、
蓄冷材容器内に熱伝導部材が配置されており、熱伝導部材が、蓄冷材容器の左右両側壁から離隔したベース板と、ベース板の左側面から左方に突出するように設けられた複数の左凸部と、ベース板の右側面から右方に突出するように設けられた複数の右凸部とよりなり、全左凸部のうちの少なくとも一部の先端が蓄冷材容器の左側壁内面に接触し、全右凸部のうちの少なくとも一部の先端が蓄冷材容器の右側壁内面に接触している蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項2】
熱伝導部材のベース板が、熱を面方向に伝えるようになっている請求項1記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項3】
熱伝導部材の少なくとも一部の左凸部および右凸部が、左右方向に隣り合う冷媒流通管の前後方向の全幅の範囲内に位置している請求項1または2記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項4】
蓄冷材容器が扁平状であり、かつ長手方向を上下方向に向けるとともに幅方向を前後方向に向けて配置され、蓄冷材容器が、左側壁および右側壁に加えて、上側壁、下側壁、前側壁および後側壁を有するとともに、これらの側壁により囲まれた中空状の蓄冷材封入部を有しており、熱伝導部材が蓄冷材封入部内に配置され、蓄冷材容器の左右両側壁内面に、それぞれ蓄冷材封入部内に開口しかつ左右方向外方に凹んだ複数の凹部が形成されている請求項1~3のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項5】
熱伝導部材の全左凸部に、ベース板の左側面からの突出高さの異なる複数種の左凸部が混在し、同じく全右凸部に、ベース板の右側面からの突出高さの異なる複数種の右凸部が混在し、熱伝導部材の全左凸部のうちの一部の複数の左凸部が、蓄冷材容器の左側壁内面における凹部が形成されていない部分に接触するとともに、全左凸部のうちの一部の複数の左凸部が前記凹部の底面に接触し、熱伝導部材の全右凸部のうちの一部の複数の右凸部が、蓄冷材容器の右側壁内面における凹部が形成されていない部分に接触するとともに、全右凸部のうちの一部の複数の右凸部が前記凹部の底面に接触している請求項4記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項6】
熱伝導部材のベース板に、前後方向に間隔をおいて設けられた複数の左凸部からなる横左凸部列と、前後方向に間隔をおいて設けられた複数の右凸部からなる横右凸部列とが上下方向に間隔をおいて複数設けられており、各横左凸部列の全左凸部および各横右凸部列の全右凸部が上下方向の同一位置にあり、横左凸部列と横右凸部列とが上下方向に隣り合っている請求項5記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項7】
熱伝導部材の全左凸部のうちの少なくとも一部の先端が、蓄冷材容器の左側壁内面における凹部が形成されていない部分に接触し、熱伝導部材の全右凸部のうちの少なくとも一部の先端が、蓄冷材容器の右側壁内面における凹部が形成されていない部分に接触している請求項4記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項8】
熱伝導部材のベース板に、上下方向に間隔をおいて設けられた複数の左凸部および右凸部からなる縦凸部列が、前後方向に間隔をおいて複数設けられており、各縦凸部列の全左凸部および全右凸部が前後方向の同一位置にあり、各縦凸部列に、左凸部および右凸部が上下方向に交互に並んで設けられている請求項7記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項9】
蓄冷材容器の左右両側壁外面に、上下方向に一定の流路長さを有する複数の凝縮水排水路が形成され、各凝縮水排水路が、蓄冷材容器の容器本体部の左右両側壁に設けられて外方に膨出し、かつ膨出端の少なくとも一部が冷媒流通管に接合されている2つの排水路用凸部間に形成され、当該排水路用凸部の内側が、蓄冷材容器の左右両側壁内面の前記凹部となっている請求項4~8のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項10】
熱伝導部材のベース板に複数の貫通穴が形成され、ベース板における各貫通穴の縁部の一部に連なって左凸部および右凸部のうちのいずれか一方が一体に設けられている請求項1~9のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項11】
前後方向に間隔をおいて配置された2つの冷媒流通管からなる管組が左右方向に間隔をおいて複数配置されることにより、左右方向に隣り合う管組どうしの間に間隙が形成され、蓄冷材容器およびアウターフィンが、前記間隙に管組の2つの冷媒流通管に跨るように配置されている請求項1~10のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンに用いられる蓄冷機能付きエバポレータに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図面に矢印Xで示す通風方向の下流側を前、これと反対側を後というものとする。また、図面に矢印Xで示す通風方向の下流側から見た上下、左右(
図1の上下、左右)を上下、左右というものとする。
【背景技術】
【0003】
近年、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0004】
しかしながら、通常のカーエアコンにおいては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とする圧縮機が停止するので、エバポレータに冷媒が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、圧縮機の作動時に冷熱を蓄え、エンジンが停止して圧縮機が停止した際に蓄えられた冷熱を放冷しうる種々の蓄冷機能付きエバポレータが提案されている。
【0006】
本出願人も、先に、長手方向を上下方向に向けるとともに幅方向を前後方向に向けた複数の扁平状冷媒流通管と、蓄冷材が封入された蓄冷材容器と、アウターフィンとを有する熱交換コア部を備えており、熱交換コア部において、前後方向に間隔をおいて配置された2つの冷媒流通管からなる管組が左右方向に間隔をおいて複数配置されることにより、左右方向に隣り合う管組どうしの間に間隙が形成され、蓄冷材容器が、前記全間隙のうちの一部である複数の容器用間隙に冷媒流通管に接するように配置され、アウターフィンが、前記全間隙のうちの残部である複数のフィン用間隙に冷媒流通管に接するように配置されている蓄冷機能付きエバポレータを提案した(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1には、蓄冷材容器内に封入される蓄冷材の量を確保して必要な蓄冷機能を得るとともに、通気抵抗の上昇を抑制する目的で、容器用間隙の左右方向の幅、すなわち蓄冷材容器の左右方向の最大高さを5~11mmとすることが好ましい、と記載されている。
【0008】
なお、特許文献1に記載された蓄冷機能付きエバポレータにおいては、製造の容易化の観点から、容器用間隙の左右方向の幅と、フィン用間隙の左右方向の幅とを等しくすることが好ましいと考えられている。
【0009】
ところで、最近では、蓄冷機能付きエバポレータが小型化される傾向にあり、容器用間隙の左右方向の幅、すなわち蓄冷材容器の左右方向の最大高さを5~11mmとした上で、容器用間隙の左右方向の幅とフィン用間隙の左右方向の幅とを等しくした場合、蓄冷材容器の数を多くして蓄冷材の総量を確保すると、空気が通過するフィン用間隙の数が減少して通気抵抗が上昇し、通気抵抗の上昇を抑制するために蓄冷材容器の数を減らして空気が通過するフィン用間隙の数を増やすと、蓄冷材の総量が不足して蓄冷機能が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明の目的は、上記問題を解決し、必要な蓄冷機能を確保するとともに通気抵抗の上昇を抑制した上で、小型化を図りうる蓄冷機能付きエバポレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0013】
1)左右方向に間隔をおいて配置された複数の冷媒流通管と、左右両側壁を有しかつ蓄冷材が封入された蓄冷材容器と、アウターフィンとを備えており、隣り合う冷媒流通管どうしの間に間隙が形成され、蓄冷材容器が、前記全間隙のうちの一部である複数の容器用間隙に冷媒流通管に接するように配置され、アウターフィンが、前記全間隙のうちの残部である複数のフィン用間隙に冷媒流通管に接するように配置されている蓄冷機能付きエバポレータであって、
容器用間隙の左右方向の幅およびフィン用間隙の左右方向の幅が、それぞれ3~4mmであるとともに互いに等しくなっており、
蓄冷材容器内に熱伝導部材が配置されており、熱伝導部材が、蓄冷材容器の左右両側壁から離隔したベース板と、ベース板の左側面から左方に突出するように設けられた複数の左凸部と、ベース板の右側面から右方に突出するように設けられた複数の右凸部とよりなり、全左凸部のうちの少なくとも一部の先端が蓄冷材容器の左側壁内面に接触し、全右凸部のうちの少なくとも一部の先端が蓄冷材容器の右側壁内面に接触している蓄冷機能付きエバポレータ。
【0014】
2)熱伝導部材のベース板が、熱を面方向に伝えるようになっている上記1)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0015】
3)熱伝導部材の少なくとも一部の左凸部および右凸部が、左右方向に隣り合う冷媒流通管の前後方向の全幅の範囲内に位置している上記1)または2)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0016】
4)蓄冷材容器が扁平状であり、かつ長手方向を上下方向に向けるとともに幅方向を前後方向に向けて配置され、蓄冷材容器が、左側壁および右側壁に加えて、上側壁、下側壁、前側壁および後側壁を有するとともに、これらの側壁により囲まれた中空状の蓄冷材封入部を有しており、熱伝導部材が蓄冷材封入部内に配置され、蓄冷材容器の左右両側壁内面に、それぞれ蓄冷材封入部内に開口しかつ左右方向外方に凹んだ複数の凹部が形成されている上記1)~3)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0017】
5)熱伝導部材の全左凸部に、ベース板の左側面からの突出高さの異なる複数種の左凸部が混在し、同じく全右凸部に、ベース板の右側面からの突出高さの異なる複数種の右凸部が混在し、熱伝導部材の全左凸部のうちの一部の複数の左凸部が、蓄冷材容器の左側壁内面における凹部が形成されていない部分に接触するとともに、全左凸部のうちの一部の複数の左凸部が前記凹部の底面に接触し、熱伝導部材の全右凸部のうちの一部の複数の右凸部が、蓄冷材容器の右側壁内面における凹部が形成されていない部分に接触するとともに、全右凸部のうちの一部の複数の右凸部が前記凹部の底面に接触している上記4)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0018】
6)熱伝導部材のベース板に、前後方向に間隔をおいて設けられた複数の左凸部からなる横左凸部列と、前後方向に間隔をおいて設けられた複数の右凸部からなる横右凸部列とが上下方向に間隔をおいて複数設けられており、各横左凸部列の全左凸部および各横右凸部列の全右凸部が上下方向の同一位置にあり、横左凸部列と横右凸部列とが上下方向に隣り合っている上記5)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0019】
7)熱伝導部材の全左凸部のうちの少なくとも一部の先端が、蓄冷材容器の左側壁内面における凹部が形成されていない部分に接触し、熱伝導部材の全右凸部のうちの少なくとも一部の先端が、蓄冷材容器の右側壁内面における凹部が形成されていない部分に接触している上記4)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0020】
8)熱伝導部材のベース板に、上下方向に間隔をおいて設けられた複数の左凸部および右凸部からなる縦凸部列が、前後方向に間隔をおいて複数設けられており、各縦凸部列の全左凸部および全右凸部が前後方向の同一位置にあり、各縦凸部列に、左凸部および右凸部が上下方向に交互に並んで設けられている上記7)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0021】
9)蓄冷材容器の左右両側壁外面に、上下方向に一定の流路長さを有する複数の凝縮水排水路が形成され、各凝縮水排水路が、蓄冷材容器の容器本体部の左右両側壁に設けられて外方に膨出し、かつ膨出端の少なくとも一部が冷媒流通管に接合されている2つの排水路用凸部間に形成され、当該排水路用凸部の内側が、蓄冷材容器の左右両側壁内面の前記凹部となっている上記4)~8)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0022】
10)熱伝導部材のベース板に複数の貫通穴が形成され、ベース板における各貫通穴の縁部の一部に連なって左凸部および右凸部のうちのいずれか一方が一体に設けられている上記1)~9)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0023】
11)前後方向に間隔をおいて配置された2つの冷媒流通管からなる管組が左右方向に間隔をおいて複数配置されることにより、左右方向に隣り合う管組どうしの間に間隙が形成され、蓄冷材容器およびアウターフィンが、前記間隙に管組の2つの冷媒流通管に跨るように配置されている上記1)~10)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【発明の効果】
【0024】
上記1)~11)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、容器用間隙の左右方向の幅およびフィン用間隙の左右方向の幅が、それぞれ3~4mmであるとともに互いに等しくなっているので、蓄冷材容器の数を多くして蓄冷材の総量を確保した上で、空気が通過するフィン用間隙の数を増やして通気抵抗の上昇を抑制することが可能になる。したがって、必要な蓄冷機能を確保するとともに通気抵抗の上昇を抑制した上で、小型化を図ることが可能になる。
【0025】
また、寸法を従来の蓄冷機能付きエバポレータと同等にした場合、冷媒流通管の数、蓄冷材容器の数およびアウターフィンの数を多くすることが可能になるので、設計の自由度が上昇し、通常運転時の冷却性能、蓄冷性能および通気抵抗を適切に決めることが可能になる。
【0026】
上記1)および2)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、蓄冷材容器内に熱伝導部材が配置されており、熱伝導部材が、蓄冷材容器の左右両側壁から離隔したベース板と、ベース板の左側面から左方に突出するように設けられた複数の左凸部と、ベース板の右側面から右方に突出するように設けられた複数の右凸部とよりなり、全左凸部のうちの少なくとも一部の先端が蓄冷材容器の左側壁内面に接触し、全右凸部のうちの少なくとも一部の先端が蓄冷材容器の右側壁内面に接触しているので、圧縮機の作動時には、冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱は、蓄冷材容器の左右両側壁に伝わり、左右両側壁から蓄冷材に伝わる。また、蓄冷材容器の左右両側壁に伝わった冷熱は、熱伝導部材の左凸部および右凸部を通って蓄冷材に伝わる。これと同時に、蓄冷材容器の左右両側壁に伝わった冷熱は、熱伝導部材の左凸部および右凸部を通ってベース板に伝わり、ついでベース板を面方向に伝わった後にベース板から蓄冷材に伝わる。一方、圧縮機の停止時には、蓄冷材容器内の蓄冷材に蓄えられた冷熱は、直接蓄冷材容器の左右両側壁に伝わるとともに、熱伝導部材の左凸部および右凸部を経て蓄冷材容器の左右両側壁に伝わる。これと同時に、蓄冷材容器内の蓄冷材における蓄冷材容器の左右両側壁から離れた部分に蓄えられた冷熱は、熱伝導部材のベース板に伝わり、ついでベース板を面方向に伝わった後に左凸部および右凸部に伝わり、左凸部および右凸部を経て蓄冷材容器の左右両側壁に伝わる。蓄冷材容器の左右両側壁に伝わった冷熱は、冷媒流通管を通過して隣の間隙を流れる空気に伝わる。したがって、蓄冷材容器内の蓄冷材全体への冷熱の授受効率が向上し、上記1)のように蓄冷材容器の左右方向の寸法を3~4mmにして各蓄冷材容器内に封入される蓄冷材の量を少なくした場合にも、蓄冷材への蓄冷性能の低下および蓄冷材からの放冷性能の低下が抑制される。
【0027】
上記3)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、蓄冷材容器の左右両側壁を介しての冷媒流通管と熱伝導部材の左凸部および右凸部との間の冷熱の授受効率が優れたものになる。
【0028】
上記10)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、1枚の金属板にプレス加工を施すことによりベース板、左凸部および右凸部を形成することができ、用いられる金属板の大きさを、比較的小さくすることが可能になる。したがって、熱伝導部材の軽量化を図ることが可能になり、ひいては蓄冷機能付きエバポレータ全体の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】この発明の蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示す一部を省略した斜視図である。
【
図2】
図1の蓄冷機能付きエバポレータの容器用間隙およびその両側のフィン用間隙の部分の構造を拡大して示す一部を省略した水平断面図である。
【
図3】蓄冷機能付きエバポレータに用いられる蓄冷材容器を示す左側面図である。
【
図4】蓄冷材容器内に配置される熱伝導部材を示し、熱伝導部材を備えた蓄冷材容器の左側の容器構成板を取り去った状態の左側面図である。
【
図5】蓄冷材容器内に配置される熱伝導部材の一部分を示す拡大斜視図である。
【
図6】蓄冷材容器内に配置される熱伝導部材の変形例を示す
図2相当の図である。
【
図7】
図6の熱伝導部材を備えた蓄冷材容器の分解斜視図である。
【
図8】
図6の熱伝導部材の一部分を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0031】
以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0032】
全図面を通じて同一物および同一部分には同一符号を付す。
【0033】
図1はこの発明による蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示し、
図2~
図5はその要部の構成を示す。
【0034】
図1において、蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、長手方向を左右方向に向けるとともに幅方向を前後方向に向けた状態で上下方向に間隔をおいて配置されたアルミニウム製上ヘッダタンク(2)およびアルミニウム製下ヘッダタンク(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)間に設けられた熱交換コア部(4)とを備えている。
【0035】
上ヘッダタンク(2)は、前側(風下側)に位置する前側上ヘッダ部(5)と、後側(風上側)に位置しかつ前側上ヘッダ部(5)に一体化された後側上ヘッダ部(6)とを備えている。前側上ヘッダ部(5)の左端部に冷媒入口(7)が設けられ、後側上ヘッダ部(6)の左端部に冷媒出口(8)が設けられている。下ヘッダタンク(3)は、前側に位置する前側下ヘッダ部(9)と、後側に位置しかつ前側下ヘッダ部(9)に一体化された後側下ヘッダ部(11)とを備えている。
【0036】
熱交換コア部(4)において、前側上ヘッダ部(5)と前側下ヘッダ部(9)との間、および後側上ヘッダ部(6)と後側下ヘッダ部(11)との間に、それぞれ長手方向を上下方向に向けるとともに幅方向を前後方向に向けた複数のアルミニウム製扁平状冷媒流通管(12)が左右方向に間隔をおいて配置されており、前側に並んだ冷媒流通管(12)の上端部は前側上ヘッダ部(5)に接続されるとともに、同下端部は前側下ヘッダ部(9)に接続され、後側に並んだ冷媒流通管(12)の上端部は後側上ヘッダ部(6)に接続されるとともに、同下端部は後側下ヘッダ部(11)に接続されている。前側に並んだ冷媒流通管(12)と後側に並んだ冷媒流通管(12)とは左右方向の同一位置にあり、前後方向に並んだ2つの冷媒流通管(12)により管組(13)が構成され、左右方向に隣り合う管組(13)どうしの間に間隙(14A)(14B)が形成されている。
【0037】
熱交換コア部(4)における全間隙(14A)(14B)のうちの一部である複数の容器用間隙(14A)に、アルミニウム製蓄冷材容器(15)が、各管組(13)を構成する2つの冷媒流通管(12)に跨るように配置されており、蓄冷材容器(15)は2つの冷媒流通管(12)に接した状態でろう材を介して接合されている。以下、ろう材を介しての接合をろう付と称する。熱交換コア部(4)における全間隙(14A)(14B)のうちの残部である複数のフィン用間隙(14B)に、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなり、かつ前後方向にのびる波頂部、前後方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるアウターフィン(16)が、各管組(13)を構成する2つの冷媒流通管(12)に跨るように配置されており、アウターフィン(16)は両冷媒流通管(12)に接した状態でろう付されている。また、左右両端の管組(13)の外側にも、アウターフィン(16)が、管組(13)を構成する2つの冷媒流通管(12)に跨るように配置されて両冷媒流通管(12)に接した状態でろう付され、さらに左右両端のアウターフィン(16)の外側にアルミニウム製サイドプレート(17)が配置されてアウターフィン(16)にろう付されている。
【0038】
図2に示すように、容器用間隙(14A)の左右方向の幅(W1)およびフィン用間隙(14B)の左右方向の幅(W2)は、それぞれ3~4mmであるとともに互いに等しくなっている。したがって、容器用間隙(14A)に配置される蓄冷材容器(15)の左右方向の寸法、およびフィン用間隙(14B)に配置されるアウターフィン(16)の左右方向の寸法は、それぞれ3~4mmであるとともに、互いに等しくなっている。
【0039】
この実施形態のエバポレータ(1)の場合、冷媒は、冷媒入口(7)を通って前側上ヘッダ部(5)内に入り、全冷媒流通管(12)と両下ヘッダ部(9)(11)を通って後側上ヘッダ部(6)に入り、冷媒出口(8)から流出する。空気は、アウターフィン(16)が配置されたフィン用間隙(14B)を図面に矢印Xで示す方向に通過する。
【0040】
図2~
図4に示すように、蓄冷材容器(15)は、長手方向を上下方向に向けるとともに幅方向を前後方向に向けた略縦長方形の扁平中空状であり、熱交換コア部(4)の前後方向の全幅の範囲内に位置している。蓄冷材容器(15)は、左側壁(15a)、右側壁(15b)、上側壁(15c)、下側壁(15d)、前側壁(15e)および後側壁(15f)を有しているとともに、これらの側壁(15a)~(15f)に囲まれた中空状の蓄冷材封入部(10)を備えている。蓄冷材容器(15)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工が施されることにより形成され、かつ一定幅を有する周縁の帯状部(18a)(19a)どうしが互いにろう付された2枚の略縦長方形状のアルミニウム製容器構成板(18)(19)からなり、両容器構成板(18)(19)のうちの少なくともいずれか一方、ここでは両容器構成板(18)(19)における帯状部(18a)(19a)を除いた部分が外方に膨出させられることにより蓄冷材封入部(10)が設けられている。蓄冷材容器(15)の上下両側壁(15c)(15d)および前後両側壁(15e)(15f)は、両容器構成板(18)(19)における左右両側壁(15a)(15b)となっている部分と帯状部(18a)(19a)とを連結する部分からなる。蓄冷材容器(15)の上下両側壁(15c)(15d)と前後両側壁(15e)(15f)との間に存在する4つの連接部(29)は円弧状である。
【0041】
蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)(15b)内面に、それぞれ蓄冷材封入部(10)内に開口しかつ左右方向外方に凹んだ複数の凹部(20)が形成されている。蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)(15b)外面に、それぞれ上下方向に一定の流路長さを有するとともに上下両端が開口し、かつ凝縮水を上方から下方に流して下端開口から排水する複数の凝縮水排水路(21)が前後方向に間隔をおいて形成されている。各凝縮水排水路(21)は、蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)(15b)に設けられて外方に膨出した2つの排水路用凸部(22)の間に形成されており、1つの凝縮水排水路(21)を形成する2つの排水路用凸部(22)のうち少なくともいずれか一方の排水路用凸部(22)の長さは、蓄冷材容器(15)の前後方向の幅よりも長くなっている。各蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)(15b)のすべての排水路用凸部(22)の膨出高さは等しくなっており、すべての排水路用凸部(22)の膨出端壁は同一垂直面上に位置している。また、排水路用凸部(22)における容器用間隙(14A)を形成する左右両管組(13)を構成する2つの冷媒流通管(12)の前後方向の範囲内に位置する部分の膨出端壁が、冷媒流通管(12)に接触した状態でろう付されている。なお、隣り合う2つの凝縮水排水路(21)は、両凝縮水排水路(21)間に位置する排水路用凸部(22)を共有している。
【0042】
そして、排水路用凸部(22)の内側が、蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)(15b)内面に形成され、かつ蓄冷材封入部(10)内に開口しかつ左右方向外方に凹んだ凹部(20)となっている。蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)(15b)のすべての排水路用凸部(22)の膨出高さは等しくなっており、すべての排水路用凸部(22)の膨出端壁は同一垂直面上に位置していることから、全凹部(20)の深さは等しくなっている。
【0043】
なお、蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)(15b)外面にそれぞれ排水路用凸部(22)が設けられているので、容器用間隙(14A)に配置される蓄冷材容器(15)の左右方向の寸法は、左側壁(15a)の排水路用凸部(22)の膨出端が位置する垂直面と、右側壁(15b)の排水路用凸部(22)の膨出端が位置する垂直面との間の最短直線距離となる。
【0044】
蓄冷材容器(15)の蓄冷材封入部(10)の左側壁(15a)の凝縮水排水路(21)および排水路用凸部(22)と、右側壁(15b)の凝縮水排水路(21)および排水路用凸部(22)とは、全体に重複しないように、同一水平面内において前後方向にずれて設けられている。これに代えて、左側壁(15a)の凝縮水排水路(21)および排水路用凸部(22)と、右側壁(15b)の凝縮水排水路(21)および排水路用凸部(22)とが、蓄冷材容器(15)の左右方向の中心を通る垂直面を対称中心として面対称となるように設けられ、全体として重複していてもよい。なお、凝縮水排水路(21)内を微量の空気も流れる。
【0045】
蓄冷材容器(15)の蓄冷材封入部(10)内には、アルミニウム製熱伝導部材(70)が、蓄冷材容器(15)の上下方向および前後方向のほぼ全体にわたって配置されている。
図2、
図4および
図5に示すように、熱伝導部材(70)は、蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)(15b)から離隔したベース板(24)と、ベース板(24)の左側面から左方に突出するように設けられた複数の左凸部(71A)(71B)と、ベース板(24)の右側面から右方に突出するように設けられた複数の右凸部(72A)(72B)とよりなる。ベース板(24)には、前後方向に間隔をおいて設けられた複数の左凸部(71A)(71B)からなる横左凸部列(73)と、前後方向に間隔をおいて設けられた複数の右凸部(72A)(72B)からなる横右凸部列(74)とが上下方向に間隔をおき、かつ上下交互に並ぶように複数設けられている。また、各横左凸部列(73)の全左凸部(71A)(71B)および各横右凸部列(74)の全右凸部(72A)(72B)がそれぞれ上下方向の同一位置にある。
【0046】
熱伝導部材(70)のベース板(24)は、熱を面方向に伝えるようになっている。ここで、ベース板(24)の面方向とは、ベース板(24)の厚み方向と直交する方向を意味する。熱伝導部材(70)のベース板(24)は縦長の長方形状であるとともに、ベース板(24)の4角がそれぞれ円弧状連接部(29)の内面に当接し、これによりベース板(24)、すなわち熱伝導部材(70)の位置決めがなされている。
【0047】
熱伝導部材(70)の全左凸部(71A)(71B)に、ベース板(24)の左側面からの突出高さの異なる複数種、ここでは2種類の左凸部(71A)(71B)が混在し、同じく全右凸部(72A)(72B)に、ベース板(24)の右側面からの突出高さの異なる複数種、ここでは2種類の右凸部(72A)(72B)が混在している。各横左凸部列(73)においても、ベース板(24)の左側面からの突出高さの異なる2種類の左凸部(71A)(71B)が混在し、各横右凸部列(74)においても、ベース板(24)の右側面からの突出高さの異なる2種類の右凸部(72A)(72B)が混在している。
【0048】
そして、ベース板(24)の左側面からの突出高さの低い左凸部(71A)の先端が、蓄冷材容器(15)の左側壁(15a)内面における凹部(20)が形成されていない部分、すなわち凝縮水排水路(21)の底壁となっている部分の内面に接触した状態でろう付され、同じく突出高さの高い左凸部(71B)の先端が、排水路用凸部(22)の内側に形成された凹部(20)の底面に接触した状態でろう付されている。また、ベース板(24)の右側面からの突出高さの低い右凸部(72A)の先端が、蓄冷材容器(15)の右側壁(15b)内面における凹部(20)が形成されていない部分、すなわち凝縮水排水路(21)の底壁となっている部分の内面に接触した状態でろう付され、同じく突出高さの高い右凸部(72B)の先端が、排水路用凸部(22)の内側に形成された凹部(20)の底面に接触した状態でろう付されている。
【0049】
左凸部(71A)(71B)は、熱伝導部材(70)のベース板(24)に形成された前後方向に長い四角形状貫通穴(75)の縁部の対向する前後2辺に連なって一体に設けられ、かつ貫通穴(75)の内方に向かって蓄冷材容器(15)の左側壁(15a)側に斜めに突出した2つの突出片(71a)と、両突出片(71a)の先端どうしを一体に連結し、かつ蓄冷材容器(15)の左側壁(15a)内面の上述した部分に面接触した状態でろう付された接触片(71b)とよりなる。右凸部(72A)(72B)は、熱伝導部材(70)のベース板(24)に形成された前後方向に長い四角形状貫通穴(75)の縁部の対向する前後2辺に連なって一体に設けられ、かつ貫通穴(75)の内方に向かって蓄冷材容器(15)の右側壁(15b)側に斜めに突出した2つの突出片(72a)と、両突出片(72a)の先端どうしを一体に連結し、かつ蓄冷材容器(15)の右側壁(15b)内面の上述した部分に面接触した状態でろう付された接触片(72b)とよりなる。左右両凸部(71A)(71B)(72A)(72B)および貫通穴(75)は、ベース板(24)に互いに平行となるように入れられた上下1対のスリット間の部分を突出させることにより形成されている。
【0050】
上述した蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、車両のエンジンを駆動源とする圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ(冷媒冷却器)、コンデンサを通過した冷媒を減圧する膨張弁(減圧器)とともに冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両、たとえば自動車に搭載される。
【0051】
圧縮機が作動している通常の冷房時には、圧縮機で圧縮されてコンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(7)を通って蓄冷機能付きエバポレータ(1)の前側上ヘッダ部(5)内に入り、全冷媒流通管(12)と両下ヘッダ部(9)(11)を通って後側上ヘッダ部(6)に入り、冷媒出口(8)から流出する。冷媒が冷媒流通管(12)内を流れる間に蓄冷機能付きエバポレータ(1)のアウターフィン(16)が配置されたフィン用間隙(14B)を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。すなわち、フィン用間隙(14B)を通過する空気には、フィン用間隙(14B)の左右両側に隣接する管組(13)の冷媒流通管(12)内を流れる冷媒が有する冷熱が、アウターフィン(16)を介して伝えられて当該空気が冷却され、冷却された空気が車室内の冷房に供される。
【0052】
圧縮機の作動時には、容器用間隙(14A)の左右両側の冷媒流通管(12)内を流れる冷媒の有する冷熱は、蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)(15b)に設けられた排水路用凸部(22)の膨出端壁を経て当該膨出端壁を含む左右両側壁(15a)(15b)全体に伝わり、左右両側壁(15a)(15b)から蓄冷材容器(15)内の蓄冷材に伝わる。また、蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)(15b)全体に伝わった冷熱は、熱伝導部材(70)の左凸部(71A)(71B)および右凸部(72A)(72B)を通って蓄冷材に伝わる。これと同時に、蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)(15b)全体に伝わった冷熱は、熱伝導部材(70)の左凸部(71A)(71B)および右凸部(72A)(72B)を通ってベース板(24)に伝わり、ベース板(24)を面方向に伝わった後にベース板(24)の全体から蓄冷材における蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)(15b)から離れた部分に伝わる。こうして、蓄冷材容器(15)内の蓄冷材に冷熱が蓄えられる。
【0053】
また、圧縮機の作動時には、蓄冷材容器(15)表面に凝縮水が発生し、当該凝縮水は凝縮水排水路(21)内に入り、表面張力により凝縮水排水路(21)の両側の排水路用凸部(22)に沿うようにして凝縮水排水路(21)内に溜まる。溜まった凝縮水が多くなると、溜まった凝縮水に作用する重力が表面張力よりも大きくなって、凝縮水排水路(21)内を流下し、下方に排水される。
【0054】
一方、圧縮機の停止時には、蓄冷材容器(15)内の蓄冷材に蓄えられた冷熱は、直接蓄冷材容器(15)の排水路用凸部(22)の膨出端壁を含む左右両側壁(15a)(15b)全体に伝わるとともに、熱伝導部材(70)の左凸部(71A)(71B)および右凸部(72A)(72B)を経て蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)(15b)全体に伝わる。これと同時に、蓄冷材容器(15)内の蓄冷材における蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)(15b)から離れた部分に蓄えられた冷熱は、熱伝導部材(70)のベース板(24)に伝わり、ついでベース板(24)を面方向に伝わった後に左凸部(71A)(71B)および右凸部(72A)(72B)を経て蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)(15b)全体に伝わる。蓄冷材容器(15)の左右両側壁(15a)(15b)に伝わった冷熱は、冷媒流通管(12)を通過して隣のフィン用間隙(14B)に配置されているアウターフィン(16)に伝わり、アウターフィン(16)が配置されているフィン用間隙(14B)を通過する空気に伝えられる。したがって、蓄冷機能付きエバポレータ(1)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0055】
図6~
図8は蓄冷材容器(15)の蓄冷材封入部(10)内に配置される熱伝導部材の変形例を示す。
【0056】
図6~
図8に示す熱伝導部材(23)の場合、ベース板(24)には、上下方向に間隔をおいて設けられた複数の左凸部(25A)および右凸部(25B)からなる縦凸部列(26)(27)が、前後方向に間隔をおいて複数、ここでは2つ設けられている。各縦凸部列(26)(27)の全左凸部(25A)および全右凸部(25B)は前後方向の同一位置にあり、各縦凸部列(26)(27)に、左凸部(25A)および右凸部(25B)が上下方向に交互に並んで設けられている。前後2つの縦凸部列(26)(27)において、一方の縦凸部列(26)の左凸部(25A)と他方の縦凸部列(27)の左凸部(25A)、および一方の縦凸部列(26)の右凸部(25B)と他方の縦凸部列(27)の右凸部(25B)とが上下方向の同一位置にある。前側縦凸部列(26)の全左凸部(25A)および全右凸部(25B)は左右の前側冷媒流通管(12)間に位置し、後側縦凸部列(27)の全左凸部(25A)および全右凸部(25B)は左右の後側冷媒流通管(12)間に位置している。
【0057】
全左凸部(25A)のうちの少なくとも一部、ここでは全左凸部(25A)の先端が、蓄冷材容器(15)の左側壁(15a)内面における凹部(20)が形成されていない部分、すなわち凝縮水排水路(21)の底壁となっている部分の内面に接触した状態でろう付されている。また、熱伝導部材(23)の全右凸部(25B)のうちの少なくとも一部、ここでは全右凸部(25B)の先端が、蓄冷材容器(15)の右側壁(15b)内面における凹部(20)が形成されていない部分、すなわち凝縮水排水路(21)の底壁となっている部分の内面に接触した状態でろう付されている。
【0058】
左凸部(25A)は、熱伝導部材(23)のベース板(24)に形成された前後方向に長い四角形状貫通穴(28)の縁部の対向する前後2辺に連なって一体に設けられ、かつ貫通穴(28)の内方に向かって蓄冷材容器(15)の左側壁(15a)側に斜めに突出した2つの突出片(25a)と、両突出片(25a)の先端どうしを一体に連結し、かつ蓄冷材容器(15)の左側壁(15a)内面の上述した部分に面接触した状態でろう付された接触片(25b)とよりなる。右凸部(25B)は、熱伝導部材(23)のベース板(24)に形成された前後方向に長い四角形状貫通穴(28)の縁部の対向する前後2辺に連なって一体に設けられ、かつ貫通穴(28)の内方に向かって蓄冷材容器(15)の右側壁(15b)側に斜めに突出した2つの突出片(25a)と、両突出片(25a)の先端どうしを一体に連結し、かつ蓄冷材容器(15)の右側壁(15b)内面の上述した部分に面接触した状態でろう付された接触片(25b)とよりなる。左右両凸部(25A)(25B)および貫通穴(28)は、ベース板(24)に互いに平行となるように入れられた上下1対のスリット間の部分を突出させることにより形成されている。
【0059】
その他の構成は、上述した実施形態の熱伝導部材(70)と同様である。
【0060】
上述した実施形態の熱伝導部材(70)および変形例の熱伝導部材(23)においては、蓄冷材が液相である場合に、左右両凸部(71A)(71B)(72A)(72B)(25A)(25B)の突出片(71a)(72a)(25a)の働きによって、蓄冷材容器(15)内の蓄冷材の前後方向の大きな移動が抑制される。したがって、蓄冷材容器(15)内での蓄冷材の大きな移動に起因する異音の発生が抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
この発明による蓄冷機能付きエバポレータは、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンを構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0062】
(1):蓄冷機能付きエバポレータ
(10):蓄冷材封入部
(12):冷媒流通管
(13):管組
(14A):容器用間隙
(14B):フィン用間隙
(15):蓄冷材容器
(15a):左側壁
(15b):右側壁
(15c):上側壁
(15d):下側壁
(15e):前側壁
(15f):後側壁
(16):アウターフィン
(20):凹部
(21):凝縮水排水路
(22):排水路用凸部
(23)(70):熱伝導部材
(24):ベース板
(25A)(71A)(71B):左凸部
(25B)(72A)(72B):右凸部
(26)(27):縦凸部列
(28)(75):貫通穴
(73):横左凸部列
(74):横右凸部列