(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】水中測位システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01S 1/76 20060101AFI20220331BHJP
G01S 5/22 20060101ALI20220331BHJP
G01S 7/526 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
G01S1/76
G01S5/22
G01S7/526 M
(21)【出願番号】P 2021125104
(22)【出願日】2021-07-30
【審査請求日】2022-01-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000172961
【氏名又は名称】あおみ建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】吉原 到
(72)【発明者】
【氏名】海老原 格
(72)【発明者】
【氏名】水谷 孝一
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-204970(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0140054(US,A1)
【文献】特開2013-24647(JP,A)
【文献】国際公開第2020/003459(WO,A1)
【文献】特開平7-116162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/18 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台以上の送波器及び1台以上の受波器のうち少なくとも1台以上が既知座標に設けられ、他の前記送波器又は受波器が設けられた未知座標の未知点を測位する水中測位システムであって、
水中測位範囲を分割して設定された複数の領域内に前記未知点を設定した場合に、前記送波器から発せられた音波が前記受波器に到達する時間窓を前記領域毎に予め記憶したデータベースと、
前記時間窓と前記送波器から前記受波器までの音波の伝播路のインパルス応答との内積である時間窓適用インパルス応答を前記領域毎に算出し、前記時間窓適用インパルス応答のエネルギーが最大となる前記領域に前記未知点が位置すると推定する座標推定部と、
を備えていることを特徴とする水中測位システム。
【請求項2】
前記時間窓適用インパルス応答のピーク到達時間に基づいて、推定された前記領域内における未知点の座標を特定する座標特定部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の水中測位システム。
【請求項3】
前記時間窓は、前記領域内において前記送波器が前記受波器に最も近くに位置する場合の直達波到達時間と、前記領域内において前記送波器が前記受波器から最も遠くに位置する場合の直達波到達時間と、を含む時間範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水中測位システム。
【請求項4】
前記音波は、パルス信号又は変調信号であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の水中測位システム。
【請求項5】
前記領域は、複数の第一の領域と、前記第一の領域を分割して設定された複数の第二の領域と、を有し、
前記データベースには、前記第一の領域及び第二の領域毎に前記時間窓が記憶され、
前記座標推定部は、前記第一の領域毎の時間窓適用インパルス応答に基づいて前記未知点が位置する前記第一の領域を推定し、推定された前記第一の領域における前記第二の領域毎の時間窓適用インパルス応答に基づいて前記未知点が位置する前記第二の領域を推定することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の水中測位システム。
【請求項6】
1台以上の送波器及び1台以上の受波器のうち少なくとも1台以上が既知座標に設けられ、他の前記送波器又は受波器が設けられた未知座標の未知点を測位する水中測位方法であって、
水中測位範囲を分割して設定された複数の領域内に前記未知点を設定した場合に、前記送波器から発せられた音波が前記受波器に到達する時間窓を前記領域毎にデータベースに予め記憶する工程と、
送波器から発せられた音波を受波器がそれぞれ受波する工程と、
座標推定部が、前記時間窓と前記送波器から前記受波器までの音波の伝播路のインパルス応答との内積である時間窓適用インパルス応答を前記領域毎に算出し、前記時間窓適用インパルス応答のエネルギーが最大となる領域に前記未知点が位置すると推定する工程と、
を含むことを特徴とする水中測位方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中測位システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水中や水底で作業を行うバックホウ、ブルドーザ等の重機や沈埋函等の構造体の水中位置を測位することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、既知座標に設置された送波器と、バックホウに設置された受波器と、送波器に接続された信号生成部、D/Aコンバータ、アンプ及びGNSSアンテナと、送波器から受波器に向けて所定間隔おきに発せられる音波の伝播時間に基づいてバックホウの座標を推定する制御装置と、を備えている水中音響測位システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のシステムでは、
図14に示すように、送波器から発せられて受波器に到達した音波は、送波器から受波器に向かって直進する音波(直達波)の他に、水面、水底又は構造体で反射した音波(反射波)や水底、構造体で回折した音波(回折波)が含まれる。
【0006】
したがって、
図15に示すように、送波器と受波器との間の伝播路のインパルス応答を個別に算出し、そのピーク到達時間を直達波到達時間として送波器の座標を推定しようとしても、受波器が受波した音波には、直達波、反射波及び回折波が干渉しているため、各インパルス応答のピーク到達時間を個別に算出するだけでは、直達波の到達時間を正確に算出できず、受波器の位置推定結果に大きな誤差が生じたり欠測が生じる虞がある。
【0007】
そこで、正確に水中測位を行うために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る水中測位システムは、1台以上の送波器又は1台以上の受波器のうち少なくとも1台以上が既知座標に設けられ、他の前記送波器又は受波器が設けられた未知座標の未知点を測位する水中測位システムであって、水中測位範囲を分割して設定された複数の領域内に前記未知点を設定した場合に、前記送波器から発せられた音波が前記受波器に到達する時間窓を前記領域毎に予め記憶したデータベースと、前記時間窓と前記送波器から前記受波器までの音波の伝播路のインパルス応答との内積である時間窓適用インパルス応答を前記領域毎に算出し、前記時間窓適用インパルス応答のエネルギーが最大となる前記領域に前記未知点が位置すると推定する座標推定部と、を備えている。
【0009】
この構成によれば、インパルス応答と時間窓との内積をとってインパルス応答に含まれる意図しない音波を除外し、時間窓適用インパルス応答の総エネルギーの大小を領域毎に比較することにより、未知点に設けられた送波器又は受波器が位置する領域を精度良く推定することができる。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る水中測位方法は、1台以上の送波器又は1台以上の受波器のうち少なくとも1台以上が既知座標に設けられ、他の前記送波器又は受波器が設けられた未知座標の未知点を測位する水中測位方法であって、水中測位範囲を分割して設定された複数の領域内に前記未知点を設定した場合に、前記送波器から発せられた音波が前記受波器に到達する時間窓を前記領域毎にデータベースに予め記憶する工程と、送波器から発せられた音波を受波器がそれぞれ受波する工程と、座標推定部が、前記時間窓と前記送波器から前記受波器までの音波の伝播路のインパルス応答との内積である時間窓適用インパルス応答を前記領域毎に算出し、前記時間窓適用インパルス応答のエネルギーが最大となる領域に前記未知点が位置すると推定する工程と、を含む。
【0011】
この構成によれば、インパルス応答と時間窓との内積をとってインパルス応答に含まれる意図しない音波を除外し、時間窓適用インパルス応答の総エネルギーの大小を領域毎に比較することにより、未知点に設けられた送波器又は受波器が位置する領域を精度良く推定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、未知点に設けられた送波器又は受波器の水中位置を正確に測位することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る水中測位システムの構成を示す図である。
【
図2】(a)は、送波器及び受波器との位置関係を示す模式図であり、(b)は、送波器の位置を推定・特定する手順を示す模式図である。
【
図3】水中測位範囲を分割した複数の未知点存在候補領域を示す模式図。
【
図4】送波器と受波器との間の伝播路のインパルス応答において、直達波が存在し得る時間窓を示す模式図。
【
図5】音波が送波器から2台の受波器にそれぞれ到達するまでの時間窓群を示す図である。
【
図6】2台の受波器が受波した音波をそれぞれパルス圧縮して得られた、送波器と受波器との間の伝播路のインパルス応答を示す図である。
【
図7】
図5の時間窓と
図6のインパルス応答との内積である時間窓適用インパルス応答を示す図である。
【
図8】第一の領域、第二の領域の順に送波器の座標を大局的に推定する手順を示す模式図。
【
図9】(a)は、本発明の第2実施形態に係る水中測位システムにおける送波器及び受波器との位置関係を示す模式図であり、(b)は、本実施形態に係る水中測位システムにおいて、受波器の位置を推定・特定する手順を示す模式図である。
【
図10】(a)は、本発明の第3実施形態に係る水中測位システムにおける送波器及び受波器との位置関係を示す模式図であり、(b)は、本実施形態に係る水中測位システムにおいて、送波器の位置を推定・特定する手順を示す模式図である。
【
図11】(a)は、本発明の第4実施形態に係る水中測位システムにおける送波器及び受波器との位置関係を示す模式図であり、(b)は、本実施形態に係る水中測位システムにおいて、受波器の位置を推定・特定する手順を示す模式図である。
【
図12】(a)は、本発明の第5実施形態に係る水中測位システムにおける送波器及び受波器との位置関係を示す模式図であり、(b)は、本実施形態に係る水中測位システムにおいて、送波器の位置を推定・特定する手順を示す模式図である。
【
図13】(a)は、本発明の第6実施形態に係る水中測位システムにおける送波器及び受波器との位置関係を示す模式図であり、(b)は、本実施形態に係る水中測位システムにおいて、受波器の位置を推定・特定する手順を示す模式図である。
【
図14】送波器と受波器との間を音波が伝播する様子を示す模式図。
【
図15】送波器と受波器との間の伝播路のインパルス応答に、直達波、反射波及び回折波が含まれる様子を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る各種実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0015】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0016】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る水中測位システム1を示す模式図である。水中測位システム1は、水中に位置するバックホウ、ブルドーザ等の重機や沈埋函等の構造体の水中位置を取得するものである。
【0018】
水中測位システム1は、送波器2と、2台の受波器3と、時間窓DB4と、を備えている。
【0019】
送波器2は、重機や構造体等に取り付けられて音波を送波する。受波器3は、送波器2から発せられた音波を受波する。送波器2及び受波器3の時刻は、予め同期されている。本実施形態では、座標が既知である既知点に2台の受波器3を設け、座標が未知である未知点に配置された1台の送波器2の座標を測位する場合を例に説明する。時間窓DB4には、後述する時間窓が予め記憶されている。
【0020】
水中測位システム1は、信号生成部5と、座標推定・特定部6と、を備えている。信号生成部5は、水中測位に用いる信号を生成する。生成された信号は、D/Aコンバータ7、アンプ2aを介して送波器2から音波として送波される。
【0021】
座標推定・特定部6は、受波器3が音波を受波してアンプ3aを介してA/Dコンバータ8に収録された信号に基づいて、送波器2の水中位置を大局的に推定する。また、座標推定・特定部6は、推定された送波器2の大まかな位置に基づいて、送波器2の座標を特定する。なお、座標推定・特定部6は、必要に応じて、送波器2の水中位置を大局的に推定する機能と送波器2の座標を特定する機能とを分割しても構わない。
【0022】
信号の種類は、送波器2に入力する信号と受波器3が受波した信号との相互相関関数演算(パルス圧縮処理)に適したものであれば如何なるものであっても構わず、例えば、M系列変調信号、TSP(Time Stretched Pulse)信号、チャープ信号(スイープ信号、LFM信号)、トーンバースト信号、パルス信号、ランダムノイズ信号等が考えられる。特に、チャープ信号は、エネルギーが大きく、ノイズの影響を受けにくいため、パルス圧縮処理に好適である。また、M系列変調信号は、パルス圧縮処理に好適なことに加えて、複数の送波器2や受波器3の水中測位を行う場合に好適である。
【0023】
水中測位システム1を構成する各種機器は、図示しないコンピュータで動作制御されている。コンピュータは、例えば、通信インターフェース、メモリ、プロセッサ及び計時機構等を含んで構成されている。
【0024】
通信インターフェースは、無線又は有線の通信回路等であり、コンピュータと水中測位システム1を構成する各種機器とを通信可能に接続する。メモリは、制御プログラム及びデータを予め保持しているROM、制御プログラムの実行に際してデータ等の記憶するRAM等である。プロセッサは、メモリに格納された制御プログラムを実行することによって通信インターフェース等を制御して各種処理を行う。計時機構は、時計等である。コンピュータは、ユーザインターフェースとしての表示装置及び入力装置を備えてもよい。
【0025】
また、コンピュータは、通信インターフェースを介して、例えば外部のサーバ装置と通信してサーバ装置から水中測位に必要な情報を受波してもよいし、その必要な情報のユーザによる入力を、入力装置を介して受け付けてもよい。
【0026】
<水中測位の手順>
次に、水中測位システム1を用いて送波器2の水中位置を推定する手順について、図面に基づいて説明する。
図2(a)は、本実施形態における送波器2と受波器3との位置関係を示す模式図であり、
図2(b)は、送波器2の水中位置を推定する手順を示す模式図である。なお、以下では、説明の都合上、送波器2及び受波器3が同一のxy平面(z=Zs一定)上に配置されている場合を例に説明するが、送波器2及び受波器3は、それぞれ異なるz座標に配置されても構わない。
【0027】
<シミュレーションフェーズ>
まず、図示しない計算機(仮想空間)上で実際に送波器2や受波器3を設置する現場水域を地形情報等に基づいて再現した音場において、送波器2が水中測位範囲を分割して設定された複数の未知点存在候補領域(以下、単に「領域」という)内に存在すると仮定した場合に、音波が送波器2から各受波器3に到達するまでの時間窓をそれぞれ算出し、各時間窓が時間窓DB4に記憶される。
【0028】
具体的には、まず、
図3に示すように、送波器2が取り付けられた重機や構造体等が配置される水中測位範囲を所定サイズ(
図3に図示する例では、一辺の長さがdの正方形)のメッシュ状に分割した複数の領域Rを設定する。なお、
図3中では、水中測位範囲を(i×j)個の領域Rに区分している。水中測位範囲は、高さ一定(z=Zs)の水平なxy平面である。
【0029】
次に、送波器2を各領域R内に設置した場合に、送波器2から発せられた直達波が各受波器3に到達するまでの時間窓を領域R毎に算出し、領域R毎の複数の時間窓(時間窓群)が受波器3毎に時間窓DB4に記憶される。このとき、送波器2のxy座標は、領域R内の任意の座標(例えば、中心点)に設定され、各受波器3のxy座標は既知点に設定される。なお、各受波器3のxy座標は、水中測位範囲内の任意の場所に設定可能であるが、送波器2の領域R毎の時間窓がなるべく一意に定まるように最適化されるのが好ましい。なお、時間窓が設定される音波は、直達波に限らず、反射波を含めても構わない。
【0030】
時間窓は、領域R内において送波器2が受波器3の最も近くに位置する場合の音波の最小到達時間と、領域R内において送波器2が受波器3から最も遠くに位置する場合の音波の最大到達時間と、を含むように設定される。
【0031】
数式1は、領域R(id≦Xi<(i+1)d、jd≦Yj<(j+1)d、Zs)において、中心のxy座標が(i+d/2、j+d/2、Zs)である領域R内に位置する送波器2から、座標(Xrn、Yrn、Zs)に設けられたn(n=1、2)番目の受波器3に音波が到達する時間の最小値を示す。数式2は、領域Rにおける送波器2からn番目の受波器3に音波が到達する時間の最大値を示す。なお、数式1、2における「c」は、水中測位範囲における音速である。また、数式1、2に基づいて算出された時間窓を
図4に示す。
【0032】
【0033】
【0034】
また、領域Rに位置する送波器2から発せられた音波が2台の受波器3に到達するまでの時間窓群を
図5に示す。そして、時間窓DB4には、2台の受波器3それぞれについて時間窓群が記憶される。なお、時間窓の形状は、
図4、5に示す矩形に限定されるものではない。
【0035】
なお、領域Rのサイズは、データ量に比例して増大する処理コストや測位の精度を考慮して適宜変更可能である。例えば、領域Rのサイズを大きく設定すると、計算コストが少ない一方で測位精度が悪くなるのに対して、領域Rのサイズを小さく設定すると、測位精度は良好でほぼ一定で安定する一方で、領域Rのサイズが小さくなるにしたがって計算コストが増大する。また、領域Rの形状は、如何なる平面形状でも構わない。さらに、水中測位範囲を3次元で設定する場合には、領域Rを立体形状に設定しても構わない。
【0036】
<測位フェーズ>
次に、送波器2と受波器3との間で音波を実際に伝播させて、座標推定・特定部6が、送波器2の水中位置を大まかに推定した後に、送波器2の座標を特定する。
【0037】
具体的には、信号生成部5が生成したデジタル電気信号は、D/Aコンバータ7によってアナログ電気信号として出力され、アンプ2aで増幅された後に送波器2で音波に変換されて水中に送波される。
【0038】
音波は、約1500m/秒で水中を伝播した後に受波器3に到達する。2台の受波器3は、既知の座標(Xr1、Yr1、Zs)、(Xr2、Yr2、Zs)にそれぞれ配置されている。
【0039】
各受波器3で受波された信号は、アンプ3aで増幅された後に、A/Dコンバータ8でデジタル電気信号(受波信号)に変換されて収録される。
図6は、2台の受波器3がそれぞれ受波した信号をパルス圧縮して得られた送波器と受波器との間の伝播路のインパルス応答を示す模式図である。
【0040】
一般的に、受波器3が受波した音波には、送波器2から受波器3に向かって直進する直達波の他に、水面、水底又は構造体で反射した音波(反射波)や水底又は構造体で回折した音波(回折波)が含まれる。
図6に示すような反射波が直達波より大振幅であるインパルス応答の場合、そのピーク到達時間を直達波到達時間と誤って判断する虞がある。
【0041】
そこで、座標推定・特定部6は、数式3に示すように、
図5に示す時間窓と
図6に示すインパルス応答との内積をとって、時間窓が適用されたインパルス応答(以下、「時間窓適用インパルス応答」という)を算出する。なお、時間窓適用インパルス応答は、2台の受波器3のそれぞれについて算出される。
【0042】
【0043】
さらに、座標推定・特定部6は、数式4に示すように、領域R毎に、全受波器3の時間窓適用インパルス応答の総エネルギー(出力)を算出する。
【0044】
【0045】
そして、座標推定・特定部6は、時間窓適用インパルス応答の総エネルギーが最大となる(i、j)に対応する領域Rを、送波器2が存在する領域Rtと推定する。
【0046】
次に、座標推定・特定部6は、送波器2が位置すると推定された領域Rtのうち、送波器2の座標を特定する。
【0047】
具体的には、座標推定・特定部6が、2台の受波器3それぞれについて、
図7に示すような領域Rtにおける時間窓適用インパルス応答におけるピーク到達時間を直達波到達時間として算出する。
【0048】
次に、数式5に示すように、水中測位範囲における音速cを直達波到達時間に乗じることにより、送波器2からn番目の受波器3までの距離lnが得られる。以下、同様にして、全ての受波器3について直達波到達時間及び距離lnを算出する。
【0049】
【0050】
そして、座標推定・特定部6が、各受波器3の座標及び距離lnに基づいて、数式6に示す連立方程式を最小二乗法等を用いて解き、送波器2の水中位置、即ち座標(Xt、Yt、Zs)を特定する。
【0051】
【0052】
なお、水中測位範囲を区分する領域Rは上述したものに限定されず、例えば、
図8に示すように、水中測位範囲を、大面積の第一の領域R1と、第一の領域R1を分割して設定された小面積の第二の領域R2とから成る階層構造で区分しても構わない。
【0053】
図8に示すように、水中測位範囲を第一の領域R1から成る上位階層と第二の領域R2から成る下位階層とに分ける場合、時間窓DB4には、第一の領域R1及び第二の領域R2毎に時間窓が記憶され、座標推定・特定部6が、第一の領域R1毎に時間窓適用インパルス応答の総エネルギーを比較して、送波器2が位置する第一の領域R1を推定し、推定された第一の領域R1における第二の領域R2毎に時間窓適用インパルス応答の総エネルギーを比較して、送波器2が位置する第二の領域R2を推定するように構成することが考えられる。また、水中測位範囲の階層構造は、上述した2層に限らず、3層以上であっても構わない。
【0054】
このようにして、大面積の第一の領域R1及び小面積の第二の領域R2の順に推定することにより、位置推定に要するデータ処理を省力化することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、送波器2から受波器3に伝播した音波に含まれる直達波に着目して、送波器2の水中位置を特定する場合を例に説明したが、送波器2から受波器3に伝播した音波に含まれる反射波に着目して、送波器2の水中位置を特定しても構わない。
【0056】
この場合には、シミュレーションフェーズにおいて時間窓群を算出するにあたり、現場水域を再現した音場を設定するにあたり、反射波の伝播が徒に複雑になることを避けるために、反射波の境界を岸壁、人工的な信号反射装置又は平均的な海底面等に限定することが好ましい。
【0057】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る水中測位システム1について、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態に係る水中測位システム1は、上述した第1実施形態に係る水中測位システム1と比べて、後述する構成が相違し、その他の構成は共通する。なお、本実施形態に係る水中測位システム1と第1実施形態に係る水中測位システム1とで共通する構成は同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0058】
図9(a)は、本実施形態における送波器2と受波器3との位置関係を示す模式図である。本実施形態に係る水中測位システム1は、送波器2と、2台の受波器3と、を備えている。
【0059】
本実施形態では、既知点の座標(Xt、Yt、Zs)に1台の送波器2を設け、重機や構造体等に取り付けられて未知点の座標(Xrn、Yrn、Zs)に配置された2台の受波器3の座標を測位する場合を例に説明する。なお、2台の受波器3間の距離lは既知とし、受波器3に別途設置された方向計から得られる方位角から、2台の受波器3間の位置関係、すなわちxy座標上の差分(ΔX、ΔY)が得られる。なお、以下では、説明の都合上、送波器2及び受波器3が同一のxy平面(z=Zs一定)上に配置されている場合を例に説明するが、送波器2及び受波器3は、それぞれ異なるz座標に配置されても構わない。
【0060】
<水中測位の手順>
次に、本実施形態に係る水中測位システム1を用いて、2台の受波器3の座標を推定する手順について、図面に基づいて説明する。
図9(b)は、受波器3の水中位置を推定する手順を示す模式図である。
【0061】
<シミュレーションフェーズ>
まず、仮想空間上において、受波器3が水中測位範囲を分割して設定された領域R内に存在したと仮定した場合に、音波が既知点の送波器2から未知点の1台目の受波器3に到達するまでの時間窓を領域R毎に算出され、また1台目の受波器3の時間窓及び1台目の受波器3とのxy座標上の差分(ΔX、ΔY)に基づいて2台目の受波器3の時間窓が算出され、領域R毎の複数の時間窓(時間窓群)が受波器3毎に時間窓DB4に記憶される。
【0062】
なお、時間窓は、領域R内において受波器3が送波器2の最も近くに位置する場合の音波の最小到達時間と、領域R内において受波器3が送波器2から最も遠くに位置する場合の音波の最大到達時間と、を含むように設定される。
【0063】
数式7は、既知点の座標(Xt、Yt、Zs)に設けられた送波器2から、領域R(id≦Xi<(i+1)d、jd≦Yj<(j+1)d、Zs)において、中心のxy座標が(i+d/2、j+d/2、Zs)である領域R内に位置する1番目の受波器3に音波が到達する時間の最小値を示し、数式8は、2番目の受波器3に音波が到達する時間の最小値を示す。数式9は、送波器2から領域R内に位置する1番目の受波器に音波が到達する時間の最大値を示し、数式10は、送波器2から領域R内に位置する2番目の受波器に音波が到達する時間の最大値を示す。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
<測位フェーズ>
次に、既知点の座標(Xt、Yt、Zs)に配置された送波器2から、未知の座標(Xrn、Yrn、Zs)に配置された2台の受波器3へ音波を実際に伝播させる。また、受波器3が受波した受波信号をパルス圧縮して、送波器2と受波器3との間の伝播路のインパルス応答を得る。
【0069】
次に、数式3により、n番目の受波器3が領域R内に存在する場合に音波が受波器3に到達する時間範囲である時間窓と、送波器2とn番目の受波器3との間の伝播路のインパルス応答との内積をとり、時間窓適用インパルス応答が得られる。
【0070】
さらに、数式4により、領域R毎に、全受波器3の時間窓適用インパルス応答の総エネルギーを算出する。そして、時間窓適用インパルス応答の総エネルギーが最大となる(i、j)に対応する領域Rを、2台の受波器3が存在する領域Rt1、Rt2と推定する。
【0071】
次に、座標推定・特定部6は、受波器3が位置する領域Rt1、Rt2のうち、受波器3の座標を特定する。具体的には、まず、座標推定・特定部6は、受波器3毎に領域Rt1、Rt2における時間窓適用インパルス応答のピーク到達時間を直達波到達時間として算出する。
【0072】
次に、数式5に示すように、水中測位範囲における音速cを直達波到達時間に乗じることにより、送波器2からn番目の受波器3までの距離lnが得られる。以下、同様にして、全ての受波器3について直達波到達時間及び距離lnを算出する。
【0073】
そして、座標推定・特定部6が、送波器2の座標、2台の受波器3間の位置関係(ΔX、ΔY)及び距離lnに基づいて、数式11に示す連立方程式を最小二乗法等を用いて解き、2台の受波器3の水中位置、即ち座標(Xrn、Yrn、Zs)を特定する。
【0074】
【0075】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る水中測位システム1について、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態に係る水中測位システム1は、上述した第1実施形態に係る水中測位システム1と比べて、後述する構成が相違し、その他の構成は共通する。なお、本実施形態に係る水中測位システム1と第1実施形態に係る水中測位システム1とで共通する構成は同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0076】
図10(a)は、本実施形態における送波器2と受波器3との位置関係を示す模式図である。水中測位システム1は、2台の送波器2と、1台の受波器3と、を備えている。
【0077】
本実施形態では、既知点の座標(Xtn、Ytn、Zs)に設けられた2台の送波器2を設け、重機や構造体等に取り付けられて未知点の座標(Xr、Yr、Zs)に配置された1台の受波器3の座標を測位する場合を例に説明する。なお、以下では、説明の都合上、送波器2及び受波器3が同一のxy平面(z=Zs一定)上に配置されている場合を例に説明するが、送波器2及び受波器3は、それぞれ異なるz座標に配置されても構わない。
【0078】
<水中測位の手順>
次に、本実施形態に係る水中測位システム1を用いて、受波器3の座標を推定する手順について、図面に基づいて説明する。
図10(b)は、受波器3の水中位置を推定する手順を示す模式図である。
【0079】
<シミュレーションフェーズ>
まず、仮想空間上において、受波器3が水中測位範囲を分割して設定された領域R内に存在したと仮定した場合に、音波が既知点の送波器2から未知点の各受波器3に到達するまでの時間窓を領域R毎に算出し、領域R毎の複数の時間窓(時間窓群)が送波器2毎に時間窓DB4に記憶される。
【0080】
なお、時間窓は、領域R内において受波器3が送波器2の最も近くに位置する場合の音波の最小到達時間と、領域R内において受波器3が送波器2から最も遠くに位置する場合の音波の最大到達時間と、を含むように設定される。
【0081】
数式12は、既知点の座標(Xtn、Ytn、Zs)に設けられた送波器2から、領域R(id≦Xi<(i+1)d、jd≦Yj<(j+1)d、Zs)において、中心のxy座標が(i+d/2、j+d/2、Zs)である領域R内に位置する受波器3に設けられた受波器3に音波が到達する時間の最小値を示す。数式13は、送波器2から領域Rにおける受波器3に音波が到達する時間の最大値を示す。
【0082】
【0083】
【0084】
<測位フェーズ>
次に、既知点の座標(Xt1、Yt1、Zs)、(Xt2、Yt2、Zs)、にそれぞれ配置された2台の送波器2から、未知の座標(Xr、Yr、Zs)に配置された受波器3へ音波を実際に伝播させる。また、受波器3が受波した受波信号をパルス圧縮して、各送波器2と受波器3との間の伝播路のインパルス応答をそれぞれ得る。なお、2台の送波器2からそれぞれ発せられるパルス伸長信号は、互いに相関が小さいものに設定されるのが好ましい。
【0085】
次に、数式3により、受波器3が領域R内に存在する場合に音波が受波器3に到達する時間範囲である時間窓と、送波器2と受波器3との間の伝播路のインパルス応答との内積をとり、時間窓適用インパルス応答が得られる。
【0086】
さらに、数式4により、領域R毎に、受波器3の時間窓適用インパルス応答の総エネルギーを算出する。そして、時間窓適用インパルス応答の総エネルギーが最大となる(i、j)に対応する領域Rを、受波器3が存在する領域Rtと推定する。
【0087】
次に、座標推定・特定部6は、受波器3が位置する領域Rtのうち、受波器3の座標を特定する。具体的には、まず、座標推定・特定部6は、領域Rtにおける時間窓適用インパルス応答のピーク到達時間を直達波到達時間として算出する。
【0088】
次に、数式5に示すように、水中測位範囲における音速cを直達波到達時間に乗じることにより、各送波器2から受波器3までの距離lnがそれぞれ得られる。
【0089】
そして、座標推定・特定部6が、2台の送波器2の座標及び距離lnに基づいて、数式14に示す連立方程式を最小二乗法等を用いて解き、受波器3の水中位置、即ち座標(Xr、Yr、Zs)を特定する。
【0090】
【0091】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る水中測位システム1について、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態に係る水中測位システム1は、上述した第1実施形態に係る水中測位システム1と比べて、後述する構成が相違し、その他の構成は共通する。なお、本実施形態に係る水中測位システム1と第1実施形態に係る水中測位システム1とで共通する構成は同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0092】
図11(a)は、本実施形態における送波器2と受波器3との位置関係を示す模式図である。水中測位システム1は、2台の送波器2と、1台の受波器3と、を備えている。
【0093】
本実施形態では、既知点の座標(Xr、Yr、Zs)に1台の受波器3を設け、重機や構造体等に取り付けられて未知点の座標(Xrn、Yrn、Zs)に配置された2台の送波器2の座標を測位する場合を例に説明する。なお、2台の送波器2間の位置関係、すなわちxy座標上の差分(ΔX、ΔY)は既知とする。なお、以下では、説明の都合上、送波器2及び受波器3が同一のxy平面(z=Zs一定)上に配置されている場合を例に説明するが、送波器2及び受波器3は、それぞれ異なるz座標に配置されても構わない。
【0094】
<水中測位の手順>
次に、本実施形態に係る水中測位システム1を用いて、2台の送波器2の座標を推定する手順について、図面に基づいて説明する。
図11(b)は、送波器2の水中位置を推定する手順を示す模式図である。
【0095】
<シミュレーションフェーズ>
まず、仮想空間上において、送波器2が水中測位範囲を分割して設定された領域R内に存在したと仮定した場合に、音波が未知点の各送波器2から既知点の受波器3に到達するまでの時間窓を領域R毎に算出し、領域R毎の複数の時間窓(時間窓群)が送波器2毎に時間窓DB4に記憶される。
【0096】
なお、時間窓は、領域R内において受波器3が送波器2の最も近くに位置する場合の音波の最小到達時間と、領域R内において受波器3が送波器2から最も遠くに位置する場合の音波の最大到達時間と、を含むように設定される。
【0097】
数式15は、領域R(id≦Xi≦(i+1)d、jd≦Yj≦(j+1)d、Zs)において、中心のxy座標が(i+d/2、j+d/2、Zs)である領域R内に位置するn番目(n=1、2)の送波器2から、既知点の座標(Xr、Yr、Zs)に設けられた受波器3に音波が到達する時間の最小値を示す。数式16は、領域Rにおけるn番目の送波器2から受波器に音波が到達する時間の最大値を示す。
【0098】
【0099】
【0100】
<測位フェーズ>
次に、未知点の座標(Xrn、Yrn、Zs)に配置されたn番目の送波器2から、既知点の座標(Xr、Yr、Zs)に配置された受波器3へ音波を実際に伝播させる。また、受波器3が受波した受波信号をパルス圧縮して、各送波器2と受波器3との間の伝播路のインパルス応答をそれぞれ得る。なお、2台の送波器2からそれぞれ発せられるパルス伸長信号は、互いに相関が小さいものに設定されるのが好ましい。
【0101】
次に、数式3により、n番目の送波器2が領域R内に存在する場合に音波が受波器3に到達する時間範囲である時間窓と、n番目の送波器2と受波器3との間の伝播路のインパルス応答との内積をとり、時間窓適用インパルス応答が得られる。
【0102】
さらに、数式4により、領域R毎に、受波器3の時間窓適用インパルス応答の総エネルギーを算出する。そして、時間窓適用インパルス応答の総エネルギーが最大となる(i、j)に対応する領域Rを、2台の送波器2が存在する領域Rt1、Rt2と推定する。
【0103】
次に、座標推定・特定部6は、送波器2が位置する領域Rt1、Rt2のうち、送波器2の座標を特定する。具体的には、まず、座標推定・特定部6は、送波器2毎に領域Rt1、Rt2における時間窓適用インパルス応答のピーク到達時間を直達波到達時間として算出する。
【0104】
次に、数式5に示すように、水中測位範囲における音速cを直達波到達時間に乗じることにより、各送波器2から受波器3までの距離lnがそれぞれ得られる。
【0105】
そして、座標推定・特定部6が、受波器3の座標、2台の送波器2間の位置関係(ΔX、ΔY)及び距離lnに基づいて、数式17に示す連立方程式を最小二乗法等を用いて解き、2台の送波器2の水中位置、即ち座標(Xt1、Yt1、Zs)、(Xt2、Yt2、Zs)をそれぞれ特定する。
【0106】
【0107】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態に係る水中測位システム1について、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態に係る水中測位システム1は、上述した第1実施形態に係る水中測位システム1と比べて、後述する構成が相違し、その他の構成は共通する。なお、本実施形態に係る水中測位システム1と第1実施形態に係る水中測位システム1とで共通する構成は同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0108】
図12(a)は、本実施形態における送波器2と受波器3との位置関係を示す模式図である。水中測位システム1は、1台の送波器2と、1台の受波器3と、を備えている。
【0109】
本実施形態では、既知点の座標(Xr、Yr、Zs)に設けられた受波器3を設け、重機や構造体等に取り付けられて未知点の座標(Xt、Yt、Zs)に配置された送波器2の座標を測位する場合を例に説明する。なお、以下では、説明の都合上、送波器2及び受波器3が同一のxy平面(z=Zs一定)上に配置されている場合を例に説明するが、送波器2及び受波器3は、それぞれ異なるz座標に配置されても構わない。
【0110】
<水中測位の手順>
次に、本実施形態に係る水中測位システム1を用いて、送波器2の座標を推定する手順について、図面に基づいて説明する。
図12(b)は、送波器2の水中位置を推定する手順を示す模式図である。
【0111】
<シミュレーションフェーズ>
まず、図示しない計算機上において、送波器2が水中測位範囲を分割して設定された領域R内に存在したと仮定した場合に、直達波及び反射波が送波器2から受波器3にそれぞれ到達するまでの時間窓を算出し、領域R毎に算出された各時間窓が時間窓DB4に記憶される。
【0112】
なお、直達波に関する時間窓は、領域R内において受波器3が送波器2の最も近くに位置する場合の直達波の最小到達時間と、領域R内において受波器3が送波器2から最も遠くに位置する場合の直達波の最大到達時間と、を含むように設定される。また、反射波に関する時間窓は、領域R内において受波器3が送波器2の最も近くに位置する場合の反射波の最小到達時間と、領域R内において受波器3が送波器2から最も遠くに位置する場合の反射波の最大到達時間と、を含むように設定される。
【0113】
数式18は、領域R(id≦Xi<(i+1)d、jd≦Yj<(j+1)d、Zs)において、中心のxy座標が(i+d/2、j+d/2、Zs)である領域R内に位置する送波器2から、既知点の座標(Xr、Yr、Zs)に設けられた受波器3に直達波が到達する時間の最小値を示し、数式19は、送波器2から受波器3に反射波が到達する時間の最小値を示す。数式20は、領域Rにおける送波器2から受波器3に直達波が到達する時間の最大値を示し、数式21は、送波器2から受波器3に反射波が到達する時間の最大値を示す。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
<測位フェーズ>
次に、未知点の座標(Xt、Yt、Zs)に配置された送波器2から、既知点の座標(Xr、Yr、Zs)に配置された受波器3へ音波を実際に伝播させる。また、受波器3が受波した受波信号をパルス圧縮して、送波器2と受波器3との間の伝播路のインパルス応答を得る。
【0119】
次に、数式3により、送波器2が領域R内に存在する場合に直達波及び反射波が受波器3に到達する時間範囲である時間窓と、送波器2と受波器3との間の伝播路のインパルス応答との内積をとり、直達波及び反射波に関する時間窓適用インパルス応答がそれぞれ得られる。
【0120】
さらに、数式4により、領域R毎に、直達波及び反射波に関する時間窓適用インパルス応答の総エネルギーを算出する。そして、時間窓適用インパルス応答の総エネルギーが最大となる(i、j)に対応する領域Rを、送波器2が存在する領域Rtと推定する。
【0121】
次に、座標推定・特定部6は、送波器2が位置する領域Rtのうち、送波器2の座標を特定する。
【0122】
具体的には、まず、座標推定・特定部6は、領域Rtにおける直達波に関する時間窓適用インパルス応答のピーク到達時間を直達波到達時間とし、領域Rtにおける反射波に関するピーク到達時間を反射波到達時間として算出する。
【0123】
次に、数式5に示すように、水中測位範囲における音速cを直達波到達時間に乗じることにより、送波器2から受波器3までの距離l1が得られる。
【0124】
同様にして、水中測位範囲における音速cを反射波到達時間に乗じることにより、送波器2から発せられた音波が境界で反射して受波器3に至るまでの距離l2が得られる。なお、受波器3と反射波が反射する境界との距離dは既知である。
【0125】
そして、座標推定・特定部6が、受波器3の座標、受波器3と境界との距離d及び距離l1、l2に基づいて、数式22に示す連立方程式を最小二乗法等を用いて解き、送波器2の水中位置、即ち座標(Xt、Yt、Zs)を特定する。
【0126】
【0127】
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態に係る水中測位システム1について、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態に係る水中測位システム1は、上述した第1実施形態に係る水中測位システム1と比べて、後述する構成が相違し、その他の構成は共通する。なお、本実施形態に係る水中測位システム1と第1実施形態に係る水中測位システム1とで共通する構成は同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0128】
図13(a)は、本実施形態における送波器2と受波器3との位置関係を示す模式図である。水中測位システム1は、1台の送波器2と、1台の受波器3と、を備えている。
【0129】
本実施形態では、既知点の座標(Xt、Yt、Zs)に送波器2を設け、重機や構造体等に取り付けられて未知点の座標(Xr、Yr、Zs)に配置された受波器3の座標を測位する場合を例に説明する。なお、以下では、説明の都合上、送波器2及び受波器3が同一のxy平面(z=Zs一定)上に配置されている場合を例に説明するが、送波器2及び受波器3は、それぞれ異なるz座標に配置されても構わない。
【0130】
<水中測位の手順>
次に、本実施形態に係る水中測位システム1を用いて、受波器3の座標を推定する手順について、図面に基づいて説明する。
図13(b)は、受波器3の水中位置を推定する手順を示す模式図である。
【0131】
<シミュレーションフェーズ>
まず、図示しない計算機上において、受波器3が水中測位範囲を分割して設定された領域R内に存在したと仮定した場合に、直達波及び反射波が送波器2から受波器3にそれぞれ到達するまでの時間窓を算出し、領域R毎に算出された各時間窓が時間窓DB4に記憶される。
【0132】
なお、直達波に関する時間窓は、領域R内において受波器3が送波器2の最も近くに位置する場合の直達波の最小到達時間と、領域R内において受波器3が送波器2から最も遠くに位置する場合の直達波の最大到達時間と、を含むように設定される。また、反射波に関する時間窓は、領域R内において受波器3が送波器2の最も近くに位置する場合の反射波の最小到達時間と、領域R内において受波器3が送波器2から最も遠くに位置する場合の反射波の最大到達時間と、を含むように設定される。
【0133】
数式23は、既知点の座標(Xt、Yt、Zs)に設けられた送波器2から、領域R(id≦Xi<(i+1)d、jd≦Yj<(j+1)d、Zs)において、中心のxy座標が(i+d/2、j+d/2、Zs)である領域R内に位置する受波器3に直達波が到達する時間の最小値を示し、数式24は、送波器2から受波器3に反射波が到達する時間の最小値を示す。数式25は、送波器2から領域Rにおける受波器3に直達波が到達する時間の最大値を示し、数式26は、送波器2から受波器3に反射波が到達する時間の最大値を示す。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
<測位フェーズ>
次に、既知点の座標(Xt、Yt、Zs)に配置された送波器2から、未知点の座標(Xr、Yr、Zs)に配置された受波器3へ音波を実際に伝播させる。また、受波器3が受波した受波信号をパルス圧縮して、送波器2と受波器3との間の伝播路のインパルス応答を得る。
【0139】
次に、数式3により、送波器2が領域R内に存在する場合に直達波及び反射波が受波器3に到達する時間範囲である時間窓と、送波器2と受波器3との間の伝播路のインパルス応答との内積をとり、直達波及び反射波に関する時間窓適用インパルス応答がそれぞれ得られる。
【0140】
さらに、数式4により、領域R毎に、直達波及び反射波に関する時間窓適用インパルス応答の総エネルギーを算出する。そして、時間窓適用インパルス応答の総エネルギーが最大となる(i、j)に対応する領域Rを、受波器3が存在する領域Rtと推定する。
【0141】
次に、座標推定・特定部6は、受波器3が位置する領域Rtのうち、受波器3の座標を特定する。
【0142】
具体的には、まず、座標推定・特定部6は、領域Rtにおける直達波に関する時間窓適用インパルス応答のピーク到達時間を直達波到達時間とし、領域Rtにおける反射波に関する時間窓適用インパルス応答のピーク到達時間を反射波到達時間として算出する。
【0143】
次に、数式5に示すように、水中測位範囲における音速cを直達波到達時間に乗じることにより、送波器2から受波器3までの距離l1が得られる。
【0144】
同様にして、水中測位範囲における音速cを反射波到達時間に乗じることにより、送波器2から発せられた音波が境界で反射して受波器3に至るまでの距離l2が得られる。なお、受波器3と反射波が反射する境界との距離dは既知である。
【0145】
そして、座標推定・特定部6が、送波器2の座標、送波器2と境界との距離d及び距離l1、l2に基づいて、数式27に示す連立方程式を最小二乗法等を用いて解き、受波器3の水中位置、即ち座標(Xr、Yr、Zs)を特定する。
【0146】
【0147】
このようにして、本発明に係る水中測位システム1は、1台以上の送波器2又は1台以上の受波器3のうち少なくとも1台以上が既知座標に設けられ、他の送波器2又は受波器3が設けられた未知座標の未知点を測位する水中測位システムであって、水中測位範囲を分割して設定された複数の領域R内に未知点を設定した場合に、送波器2から発せられた音波が受波器3に到達する時間窓を領域R毎に予め記憶した時間窓DB4と、時間窓と送波器2から受波器3までの音波の伝播路のインパルス応答との内積である時間窓適用インパルス応答を領域R毎に算出し、時間窓適用インパルス応答のエネルギーが最大となる領域Rに未知点が位置すると推定する座標推定・特定部6と、を備えている構成とした。
【0148】
この構成によれば、インパルス応答と時間窓との内積をとってインパルス応答に含まれる意図しない音波を除外し、時間窓適用インパルス応答の総エネルギーの大小を領域R毎に比較することにより、未知点に設けられた送波器2又は受波器3が位置する領域Rを精度良く推定することができる。
【0149】
また、水中測位システム1は、座標推定・特定部6は、時間窓適用インパルス応答のピーク到達時間に基づいて、推定された領域R内における未知点の座標を特定する構成とした。
【0150】
この構成によれば、座標推定・特定部6が、推定された領域Rにおける時間窓適用インパルス応答のピーク時間に音波を乗じて、既知点から未知点までの距離を算出することにより、領域R内における未知点の座標を正確に特定することができる。
【0151】
また、本発明に係る水中測位方法は、1台以上の送波器2又は1台以上の受波器3のうち少なくとも1台以上が既知座標に設けられ、他の送波器2又は受波器3が設けられた未知座標の未知点を測位する水中測位方法であって、水中測位範囲を分割して設定された複数の領域R内に未知点を設定した場合に、送波器2から発せられた音波が受波器3に到達する時間窓を領域毎に時間窓DB4に予め記憶する工程と、送波器2から発せられた音波を受波器3がそれぞれ受波する工程と、座標推定・特定部6が、時間窓と送波器2から受波器3までの音波の伝播路のインパルス応答との内積である時間窓適用インパルス応答を領域R毎に算出し、時間窓適用インパルス応答のエネルギーが最大となる領域に未知点が位置すると推定する工程と、を含む構成とした。
【0152】
この構成によれば、インパルス応答と時間窓との内積をとってインパルス応答に含まれる意図しない音波を除外し、時間窓適用インパルス応答の総エネルギーの大小を領域R毎に比較することにより、未知点に設けられた送波器2又は受波器3が位置する領域Rを精度良く推定することができる。
【0153】
なお、本発明は、上述した構成以外にも本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0154】
1 :水中測位システム
2 :送波器
2a:アンプ
3 :受波器
3a:アンプ
4 :時間窓DB
5 :信号生成部
6 :座標推定・特定部
7 :D/Aコンバータ
8 :A/Dコンバータ
R、Rt、Rt1、Rt2 :領域
【要約】 (修正有)
【課題】正確に水中測位できる水中測位システム及び方法を提供することを目的とする。
【解決手段】1台以上の送波器2又は1台以上の受波器3のうち少なくとも1台以上が既知座標に設けられ、他の送波器2又は受波器3が設けられた未知座標の未知点を測位する水中測位システム1は、水中測位範囲を分割して設定された複数の領域R内に未知点を設定した場合に、送波器2から発せられた音波が受波器3に到達する時間窓を領域R毎に予め記憶した時間窓DB4と、時間窓と送波器2から受波器3までの音波の伝播路のインパルス応答との内積である時間窓適用インパルス応答を領域R毎に算出し、時間窓適用インパルス応答のエネルギーが最大となる領域Rに未知点が位置すると推定する座標推定・特定部6と、を備えている。
【選択図】
図1