(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】抽出物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20220331BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220331BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20220331BHJP
C12G 3/04 20190101ALI20220331BHJP
【FI】
A23L5/00 Z
A23L33/105
A23L2/38 C
C12G3/04
(21)【出願番号】P 2018012551
(22)【出願日】2018-01-29
【審査請求日】2020-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591016839
【氏名又は名称】長岡香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104318
【氏名又は名称】深井 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100182796
【氏名又は名称】津島 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100181308
【氏名又は名称】早稲田 茂之
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢一
(72)【発明者】
【氏名】辻 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】増田 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】竹内 弘明
(72)【発明者】
【氏名】生形 義人
(72)【発明者】
【氏名】石川 基樹
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 浩之
(72)【発明者】
【氏名】塙 靖広
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/074613(WO,A1)
【文献】特表2005-512999(JP,A)
【文献】特開2017-108643(JP,A)
【文献】特開2000-350571(JP,A)
【文献】国際公開第2016/148151(WO,A1)
【文献】特開2005-073599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、C12G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実類、ハーブ類
、茶類および野菜類からなる群より選択される少なくとも1種の抽出原料と抽出溶媒とを
、抽出原料を切断せずに混合する工程と、
抽出溶媒中で抽出原料を粉砕する工程と、
抽出溶媒をさらに追加して、粉砕された抽出原料から抽出成分を抽出する工程と、
を含む抽出物の製造方法。
【請求項2】
前記抽出溶媒が飲食品に許容される溶媒である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記抽出原料が、18メッシュ以下の粉砕物を90質量%以上の割合で含むように粉砕される請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
果実類、ハーブ類
、茶類および野菜類からなる群より選択される少なくとも1種の抽出原料と抽出溶媒とを
、抽出原料を切断せずに混合する工程と、
抽出溶媒中で抽出原料を粉砕する工程と、
抽出溶媒をさらに追加して、粉砕された抽出原料から抽出成分を抽出する工程と、
抽出された抽出成分および飲食品原材料を混合する工程と、
を含む飲食品の製造方法。
【請求項5】
前記飲食品が、アルコール飲料、ノンアルコール飲料、清涼飲料水、健康食品、菓子類または調味料類である請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽出物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抽出原料から抽出物を製造する場合、例えば特許文献1にも記載のように、抽出効率を考慮して予め粉砕された抽出原料が使用される。このように予め粉砕された抽出原料を使用することによって、未粉砕の抽出原料を使用する場合と比べて、例えば抽出溶媒との接触面積が多くなり効率よく成分を抽出することができる。
【0003】
しかし、抽出原料を粉砕する際に、抽出原料に含まれる揮散性の成分(例えば、香気成分など)は揮散しやすく、このような揮散性の成分を十分に抽出できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、煩雑な工程を経ずに、抽出成分の損失が抑制された高力価の抽出物を製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)果実類、ハーブ類、スパイス類、茶類、穀類および野菜類からなる群より選択される少なくとも1種の抽出原料と抽出溶媒とを混合する工程と、抽出溶媒中で抽出原料を粉砕する工程と、粉砕された抽出原料から抽出成分を抽出する工程とを含む抽出物の製造方法。
(2)抽出溶媒が飲食品に許容される溶媒である上記(1)に記載の製造方法。
(3)抽出原料が、18メッシュ以下の粉砕物を90質量%以上の割合で含むように粉砕される上記(1)または(2)に記載の製造方法。
(4)果実類、ハーブ類、スパイス類、茶類、穀類および野菜類からなる群より選択される少なくとも1種の抽出原料と抽出溶媒とを混合する工程と、抽出溶媒中で抽出原料を粉砕する工程と、粉砕された抽出原料から抽出成分を抽出する工程と、抽出された抽出成分および飲食品原材料を混合する工程とを含む飲食品の製造方法。
(5)果実類、ハーブ類、スパイス類、茶類、穀類および野菜類からなる群より選択される少なくとも1種の原料の溶媒中粉砕物のろ液からなる抽出物。
(6)上記(5)に記載の抽出物と飲食品原材料とを含む飲食品。
(7)アルコール飲料、ノンアルコール飲料または清涼飲料水である上記(6)に記載の飲食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る抽出物の製造方法によれば、煩雑な工程を経ずに、抽出成分の損失が抑制された高力価の抽出物を製造することができる。このようにして得られた抽出物を含む飲食品には、抽出原料由来の風味や香気が十分に付与される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1および比較例1で得られた原料酒に含まれる香気成分を分析したガスクロマトグラフィーのチャートを示す。
【
図2】実施例1および比較例1で得られた試験飲料に含まれる香気成分を分析したガスクロマトグラフィーのチャートを示す。
【
図3】
図1および
図2に示すチャートにおいて、各ピークのピーク面積を積算したグラフを示す。
【
図4】実施例2および比較例2で得られた原料酒に含まれる香気成分をガスクロマトグラフィーで分析し、各ピークのピーク面積を積算したグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る抽出物の製造方法は、下記の工程(i)~(iii)を含む。
(i)果実類、ハーブ類、スパイス類、茶類、穀類および野菜類からなる群より選択される少なくとも1種の抽出原料と抽出溶媒とを混合する工程。
(ii)抽出溶媒中で抽出原料を粉砕する工程。
(iii)粉砕された抽出原料から抽出成分を抽出する工程。
【0010】
抽出原料と抽出溶媒とを混合する工程(i)において、香気成分の揮散などを考慮すると、抽出原料は可能な限り切断しない方が好ましい。例えば、グレープフルーツ、メロン、スイカなどの比較的大きな抽出原料の場合は、半分あるいは1/4程度に切断するのは差し支えない。一実施形態に係る抽出物の製造方法において、抽出原料としては、果実類、ハーブ類、スパイス類、茶類、穀類および野菜類からなる群より選択される少なくとも1種が使用される。
【0011】
果実類としては、例えば下記に示す果実が挙げられる。
柑橘類果実:レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、柚子、ミカン、カボス、すだち、シークワシャー、キンカンなど。
仁果類果実:リンゴ、梨、カリン、マルメロなど。
核果類果実:桃、梅、サクランボ、杏など。
ブドウ類:巨峰、マスカットなど。
熱帯果実:パイナップル、バナナ、マンゴー、パパイヤ、パッションフルーツなど。
ベリー類:苺、ブルーベリー、クランベリー、ラズベリーなど。
その他:メロン、スイカなど。
【0012】
ハーブ類としては、例えば、アニス、アンゼリカ、エシャロット、オレガノ、カフィアライム、カモミール、カレープラント、カレーリーフ、キャットニップ、クレソン、コリアンダー、サボリー、サラダバーネット、シソ、ジャスミン、ステビア、セージ、セロリ、センテッドゼラニウム、ソレル、タイム、タデ、タラゴン、ダンディライオン、チャイブ、チャービル、ドクダミ、ナスタチウム、ニガヨモギ、ニラ、ハイビスカス、バジル、パセリ、ハッカ、ローズ、ヒソップ、ベルガモット、ボリジ、マーシュ、マジョラム、ミョウガ、ヤロウ、ヨモギ、ラベンダー、ルッコラ、ルバーブ、レモングラス、レモンバーム、レモンバーベナ、レモンマートル、ローズマリー、ローレルなどが挙げられる。
【0013】
スパイス類としては、例えば、アサ、アサフェチダ、アジョワン、アニス、ウイキョウ、ウコン、オールスパイス、オレンジピール、ガジュツ、カショウ、カシア、ガランガル、カルダモン、カンゾウ、キャラウェイ、クチナシ、クミン、クローブ、ケシ、ケーパー、コショウ、ゴマ、コリアンダー、サフラン、サンショウ、シナモン、ジュニパーベリー、ショウガ、スターアニス、西洋ワサビ、タマリンド、チンピ、ディル、トウガラシ、ナツメグ、ニジェラ、ニンニク、バジル、バニラ、パプリカ、パラダイスグレイン、ローズヒップ、フェネグリーク、ピンクペッパー、マスタード、レモンピール、ロングペッパー、ワサビなどが挙げられる。
【0014】
茶類としては、緑茶などの不発酵茶、ウーロン茶などの半発酵茶、紅茶などの発酵茶、プーアル茶などの後発酵茶などが挙げられる。
【0015】
穀類としては、例えば、二条大麦や六条大麦など大麦、麦芽、小麦、ライ麦などが挙げられる。
【0016】
野菜類としては、例えば下記に示す野菜が挙げられる。
果菜類:ナス、トマト、ピーマン、かぼちゃ、きゅうり、唐辛子など。
葉菜類:キャベツ、ケール、セロリ、ニラ、白菜、パセリ、ほうれん草、レタスなど。
茎菜類:アスパラガス、たけのこ、ニンニク、ネギ、タマネギなど。
根菜類:大根、カブ、わさび、ゴボウ、生姜、ニンジン、レンコンなど。
【0017】
一実施形態に係る抽出物の製造方法において抽出溶媒は特に限定されず、例えば、水、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、植物油、動物油などが挙げられる。これらの抽出溶媒は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの抽出溶媒は、抽出原料や抽出条件に応じて、適宜選択される。これらの中でも、飲食品に許容される溶媒が好ましく、水、エタノール、含水エタノールなどがより好ましい。含水エタノールに含まれるエタノールの濃度は、通常95%(v/v)以下であり、好ましくは30~60%(v/v)、より好ましくは50~60%(v/v)である。飲食品に許容される溶媒を用いると、得られた抽出物は、そのままの形態で飲食品原材料に配合して使用することができる。例えば、抽出溶媒として酒類原料用アルコールを使用すると、チューハイやカクテルなどの原料酒として使用できる。
【0018】
抽出溶媒の使用量は特に限定されず、使用する抽出原料や抽出溶媒、あるいは抽出方法によって適宜設定される。通常、抽出溶媒は、抽出原料100質量部に対して300~5000質量部、より好ましくは500~1000質量部の割合で使用される。
【0019】
抽出原料と抽出溶媒とを混合した後、工程(ii)に供されて抽出溶媒中で抽出原料が粉砕される。粉砕の程度は特に限定されず、抽出原料が一般的なみじん切り程度の大きさに粉砕されていればよい。抽出原料が、好ましくは、18メッシュ以下の粉砕物を50質量%以上の割合で含むように粉砕され、より好ましくは、90質量%以上の割合で含むように粉砕される。
【0020】
抽出原料の粉砕方法は、抽出溶媒中で粉砕し得る方法であれば特に限定されない。例えば、ミキサー、粉体溶解ポンプ(粉砕溶解機)、ホモジナイザー、磨砕器などを用いて、抽出原料を抽出溶媒中で粉砕すればよい。
【0021】
抽出溶媒中で抽出原料が粉砕された後、工程(iii)において、抽出原料から抽出成分が抽出される。抽出方法は特に限定されず、例えば、浸漬抽出、撹拌抽出、循環抽出、シャワー抽出などが挙げられる。抽出時間は特に限定されず、抽出原料や抽出溶媒に応じて適宜設定すればよく、例えば0.5~72時間程度である。抽出溶媒がエタノールの場合は、数ヶ月程度の長期間かけて抽出してもよい。抽出温度も抽出原料や抽出溶媒に応じて適宜設定され、香気成分の揮散を抑制するためには、例えば-18℃~100℃程度であり、10~60℃程度が好ましい。
【0022】
工程(iii)では、必要に応じて、抽出溶媒を追加してもよい。例えば、抽出溶媒を追加することによって抽出溶媒の濃度を変更することができる。例えば、抽出溶媒としてエタノールを含む溶媒を使用する場合、水またはエタノールを追加することによって、エタノールの濃度を変更することができ、抽出成分を変更することができる。
【0023】
工程(i)~(iii)の少なくともいずれかの工程において、必要に応じて、糖類(例えば、砂糖、黒糖、果糖ぶどう糖液糖、水飴など)、甘味料、ハチミツ、酸味料(クエン酸など)、着色料、ラム酒などを添加してもよい。
【0024】
このようにして、煩雑な工程を経ることなく、抽出成分の損失が抑制された高力価の抽出物が得られる。特に、抽出成分のうち揮散性の高い香気成分を効率よく抽出することができ、例えば、同じ原料および同じ溶媒をそれぞれ同じ量を用いて、従来の製造方法と本発明の製造方法で抽出物を得ると、本発明の製造方法で得られる抽出物の方が、従来の方法で得られる抽出物よりも香気の強い抽出物が得られる。抽出物は種々の化合物の混合物であり、微量成分も多く含まれるため、抽出物に含まれる抽出成分を具体的に特定することや、各抽出成分の割合を具体的に特定することは困難である。しかし、従来の製造方法で得られる抽出物と本発明の製造方法で得られる抽出物とは、同じ原料を使用しても特に香気が異なるため、明らかに全く異なるものである。
【0025】
工程(iii)の後に、抽出原料の皮、果肉、殻、種子、繊維質などの残渣を除去する目的で、必要に応じて、ろ過、遠心分離、デキャンティングなどによって固液分離を行いろ液(本明細書では、遠心分離やデキャンティングによって分離された液相も、便宜上「ろ液」と記載する)を回収してもよい。
【0026】
一実施形態に係る抽出物の製造方法によって得られた抽出物は、例えば、抽出原料に由来する香気や味を飲食品に付与するために使用される。具体的には、一実施形態に係る抽出物の製造方法によって得られた抽出物と各種飲食品原材料と混合することによって、抽出原料に由来する香気や味が付与された飲食品が得られる。
【0027】
飲食品原材料としては、果実や野菜の搾汁や果肉、甘味料(ショ糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、高甘味度甘味料など)、ハチミツ、糖アルコール、食塩、醤油、食酢、食用油脂、酸味料(クエン酸など)、穀類(小麦(小麦粉)、米(米粉)など)、乳類(牛乳、脱脂粉乳、生クリームなど)、豆乳、ゼラチン、タマゴ、寒天、エタノール、水、乳化剤、増粘剤、着色剤、香料、酸化防止剤、防腐剤、保存剤など種々の原材料が挙げられる。
【0028】
一実施形態に係る抽出物の製造方法によって得られた抽出物と各種飲食品原材料と混合することによって得られる飲食品としては、例えば、果実系飲料、野菜系飲料、スポーツドリンク、茶系飲料などの清涼飲料水;栄養補給に適したドリンク剤、栄養機能食品などの健康食品;ワイン、カクテル、チューハイなどのアルコール飲料;チューハイ風味、カクテル風味、ワイン風味などのノンアルコール飲料;ゼリー、アイスクリーム、シャーベット、ケーキ、スナック菓子などの菓子類;ソース、ポン酢、代替塩、焼き肉のたれ、塩コショウ(混合調味料)、カレールウ、ドレッシング類、ケチャップ、マスタードなどの調味料類などが挙げられる。
【0029】
飲食品中に含まれる抽出物の含有量は特に限定されず、飲食品に応じて適宜設定される。例えば、香気を付与するために若干量を添加する場合もあれば、チューハイやカクテルなどのアルコール飲料の場合には、抽出物をエタノール源(原料酒)として使用することもできるため、ある程度の量が添加される。具体的には、抽出物は、飲食品中に好ましくは0.01~5質量%程度、より好ましくは0.1~1質量%程度の割合で含まれる。
【0030】
このようにして得られた飲食品は、抽出成分の損失が抑制された高力価の抽出物を含む。そのため、この飲食品を摂取すると、抽出物(抽出原料)に由来する香気や味を強く感じることができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
レモン全果を8等分するようにくし形切りにした。ミキサー容器に、くし形切りにしたレモン100gとアルコール分を約59%(v/v)に調整した酒類原料用アルコール1000mLとを入れた。次いで、ミキサーでレモンを粉砕し、その後20時間室温で静置して浸漬抽出を行った。抽出後、ろ布ろ過および遠心分離によって固液分離し、さらに300メッシュの篩に通して、液中粉砕による製造方法によって抽出物(レモン原料酒)1000mLを得た。
【0033】
(比較例1)
ミキサーでレモンを粉砕しなかった以外は、実施例1と同様の手順で抽出物(レモン原料酒)985mLを得た。
【0034】
実施例1および比較例1で得られたレモン原料酒を、国税庁所定分析法によってアルコール分およびエキス分を分析した。結果を表1に示す。「アルコール分」とは、温度15℃で製品体積におけるエタノールの体積を意味する。「エキス分」とは、製品100mL中に含まれる不揮発性成分の質量を意味する。
【0035】
【0036】
表1に示すように、実施例1で得られたレモン原料酒には、比較例1で得られたレモン原料酒よりも約2.6倍多いエキス分が含まれていることがわかる。すなわち、実施例1に記載の方法では、比較例1に記載の方法よりもレモンから多くのエキス成分が抽出されたことがわかる。
【0037】
実施例1および比較例1で得られたレモン原料酒をそれぞれ用いて、表2に示すように、市販されているレモンチューハイ(RTDと称される酒類)に近い処方の試験飲料を調製した。得られた飲料のアルコール分は、それぞれ5%(v/v)であった。
【0038】
<官能評価>
得られた試験飲料をそれぞれ6名のパネラー(40代の男性)に試飲してもらい、「フレッシュ感」、「酸味感」、「ピール感」および「果実感」の各項目について、2点識別法で官能評価してもらい、各項目で強く感じた方の飲料を選択してもらった。試験飲料の提示順を変えて2回試験を行った。結果を表2に示す。2回試験を行っているため、パネラーは6名であるが、表2では合計12名(6名×2回)となっている。
【0039】
【0040】
表2に示すように、実施例1で得られたレモン原料酒を用いた試験飲料の方が、全ての評価項目において強く感じていることがわかる。
【0041】
<香気成分>
実施例1および比較例1で得られたレモン原料酒、ならびにこれらのレモン原料酒を用いて得られた上記の試験飲料のそれぞれについて、含まれる香気成分を分析した。レモン原料酒については、精製水で20倍(体積)に希釈した希釈物を使用した。
【0042】
各試料をバイアル瓶に10g精秤し、Twister(スターラーバーに吸着剤であるポリジメチルシロキサンをコーティングしたもの)を試料中で30分間撹拌し、香気成分をTwisterに吸着させた。このTwisterを装置にセットして加熱することで吸着している香気成分を脱離させ、GC-MSを用いて測定した。使用した装置および分析条件は下記のとおりである。各試料のチャートを
図1および2に示す。さらに、得られたチャートの各ピークのピーク面積を積算したグラフを
図3に示す。
(TDS(加熱脱着装置))
脱着温度:20℃(0.5分)~200℃(60℃/分、4.5分保持)
装置:GERSTEL TDS2(ゲステル社製)
(GC-MS)
カラム:InertCap-WAX(60m×0.25mmI.D.、Film:0.25μm)
カラム温度:70℃(5分)~240℃(3℃/分)
注入温度:-150℃~250℃(12℃/秒、5分保持)
流量:2mL/分
スプリットレス:1分
装置:Agilent GC7890, MSD5975C(アジレント社製)
【0043】
図1~3に示すように、実施例1で得られたレモン原料酒、ならびに実施例1で得られたレモン原料酒を用いて得られた試験飲料の方が、レモンに特徴的な香気成分の量が多いことがわかる。特に、実施例1で得られたレモン原料酒は、比較例1で得られたレモン原料酒よりも約2倍の香気成分を含んでいることがわかる。
【0044】
<呈味成分>
実施例1および比較例1で得られたレモン原料酒、ならびにこれらのレモン原料酒を用いて得られた上記の試験飲料のそれぞれについて、含まれる呈味成分を分析した。呈味成分としては、レモンに特徴的な酸味成分であるクエン酸およびリンゴ酸、ならびに苦味成分であるリモニンおよびノミリンを定量分析した。
【0045】
レモン原料酒については精製水で10倍(体積)に希釈した希釈物を使用し、試験飲料については精製水で5倍(体積)に希釈した希釈物を使用した。それぞれの希釈物を、メンブレンフィルター(SLLHH13NL、孔径0.45μm、メルクミリポア社製)でろ過した。酸味成分および苦味成分の分析条件は下記のとおりである。結果を表3に示す。
(酸味成分)
装置:高速液体クロマトグラフィー(NexeraX2、(株)島津製作所製)
検出器:PDA検出器(SPD-M30A(210nm)、(株)島津製作所製)
カラム:Triart C18(1.9μm、2.0mmI.D.×100mmL.、(株)ワイエムシィ)
カラム温度:40℃
移動相:2液グラジエント、A/B=100/0→10/90(v/v)
A:20mMリン酸緩衝溶液(pH2.5)、B:アセトニトリル
移動相流速:0.3mL/分
試料注入量:10μL
(苦味成分)
装置:高速液体クロマトグラフィー(NexeraX2、(株)島津製作所製)
検出器:PDA検出器(SPD-M30A(210nm)、(株)島津製作所製)
カラム:Triart C18(1.9μm、2.0mmI.D.×100mmL.、(株)ワイエムシィ)
カラム温度:40℃
移動相:2液グラジエント、A/B=70/30→20/80(v/v)
A:水、B:アセトニトリル
移動相流速:0.4mL/分
試料注入量:1μL
【0046】
【0047】
表3に示すように、実施例1で得られた原料酒および試験飲料は、それぞれ比較例1で得られた原料酒および試験飲料よりも呈味成分を多く含んでいることがわかる。この結果は、表1に示すエキス分の結果とも整合している。
【0048】
(実施例2)
ミキサー容器に、ジュニパーベリー100gとアルコール分を約54%(v/v)に調整した酒類原料用アルコール540mLとを入れた。次いで、ミキサーでジュニパーベリーを粉砕し、その後3時間60℃で撹拌しながら抽出を行った。抽出後、ろ布ろ過および遠心分離によって固液分離し、さらに300メッシュの篩に通して、液中粉砕による製造方法によって抽出物(ジュニパーベリー原料酒)450mLを得た。
【0049】
(比較例2)
酒類原料用アルコールを入れる前にジュニパーベリーを粉砕した以外は、実施例2と同様の手順で抽出物(ジュニパーベリー原料酒)470mLを得た。
【0050】
実施例2および比較例2で得られたジュニパーベリー原料酒を、国税庁所定分析法によってアルコール分およびエキス分を分析した。結果を表4に示す。
【0051】
【0052】
表4に示すように、実施例2で得られたジュニパーベリー原料酒には、比較例2で得られたジュニパーベリー原料酒よりも約5%多いエキス分が含まれていることがわかる。すなわち、実施例2に記載の方法では、比較例2に記載の方法よりもジュニパーベリーから多くのエキス成分が抽出されたことがわかる。
【0053】
<香気成分>
レモン原料酒の代わりに、実施例2および比較例2で得られたジュニパーベリー原料酒を用いた以外は、実施例1と同様の手順でジュニパーベリー原料酒に含まれる香気成分を分析した。得られたチャートの各ピークのピーク面積を積算したグラフを
図4に示す。
図4に示すように、実施例2で得られたジュニパーベリー原料酒は、比較例2で得られたジュニパーベリー原料酒よりも約30%多く香気成分を含んでいることがわかる。
【0054】
(実施例3)
ミキサー容器に、焙煎された大麦25gと60℃のイオン交換水500gとを入れた。次いで、ミキサーで大麦を粉砕し、その後30分間60℃で静置して浸漬抽出を行った。抽出後、60メッシュの篩に通して固液分離し、さらにろ紙ろ過して液中粉砕による製造方法によって抽出物(大麦エキス)435gを得た。
【0055】
(比較例3)
ミキサーで大麦を粉砕しなかった以外は、実施例3と同様の手順で抽出物(大麦エキス)465gを得た。
【0056】
実施例3および比較例3で得られた大麦エキスについて、Brix値を測定して固形分回収率を算出した。固形分回収率とは、大麦から抽出された抽出成分の回収率を意味し、下記の式で算出される。結果を表5に示す。
固形分回収率(%)=((大麦エキスの総量×Brix値)/原料大麦の質量)×100
【0057】
【0058】
表5に示すように、実施例3で得られた大麦エキスには、比較例3で得られた大麦エキスよりもBrix値が10倍高く、固形分回収率も約10倍高い。したがって、実施例3では、原料の大麦からより多くの可溶性成分が抽出されていることがわかる。