(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 1/01 20060101AFI20220331BHJP
E03D 5/01 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
E03D1/01 Z
E03D5/01
(21)【出願番号】P 2020029309
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2021-06-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】刀根 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】頭島 周
(72)【発明者】
【氏名】岩城 秀夫
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-180305(JP,A)
【文献】特開2009-002075(JP,A)
【文献】特開平08-311952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部と、このボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、を備えた便器本体と、
この便器本体に洗浄水を供給するタンク装置と、を有し、
このタンク装置は、上記便器本体の後方且つ床面よりも上方に
離間して設けられ、上記便器本体に供給するための洗浄水を貯留する貯水タンクと、この貯水タンクに洗浄水を給水する給水部と、上記貯水タンク内の洗浄水を上記便器本体に圧送するポンプと、を備えており、
上記貯水タンクは、その上下方向に二等分する中央高さ位置よりも上方に形成される上側タンク領域内の容積が上記中央高さ位置よりも下方に形成される下側タンク領域内の容積よりも大きく、
上記貯水タンクは、高低差を有する上面を備えており、この上面の最高面には、上記給水部から給水される洗浄水を上記貯水タンク内へ通水可能に貫く通水口が設けられており、この通水口は、常時開放されて
おり、上記最高面は、上記貯水タンクを左右中央で二分割する鉛直面に対して左右一方側に配置されていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記貯水タンクの上面は、上記通水口が形成される面からその外側周囲に向かって連続的又は段階的に低くなるように形成されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記便器本体は、陶器製であり、上記貯水タンクは、上記便器本体に対して固定可能な固定部を備えている請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記貯水タンクは、上下方向に互いに接合される上タンク部及び下タンク部をそれぞれ備えており、
上記固定部は、上記上タンク部及び上記下タンク部のうちの少なくとも上記下タンク部に設けられていると共に、上記上タンク部よりも上記下タンク部の方が多く設けられている請求項3記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記貯水タンクは、これを左右中央で二分割したときに容積が大きい側である大タンク部と、上記貯水タンクを左右中央で二分割したときに容積が小さい側である小タンク部と、を備えている左右非対称の形状であり、
上記便器本体は、上記大タンク部に対して前後方向に対向する側の面が上方から上記貯水タンクの下方に向かって傾斜する傾斜面を形成し、
上記大タンク部の前端部は、上記貯水タンクの固定部が上記便器本体に対して固定された状態において、上記便器本体の傾斜面に隣接して配置されると共に、この便器本体の傾斜面に沿うように傾斜している請求項3又は4に記載の水洗大便器。
【請求項6】
洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部と、このボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、を備えた便器本体と、
この便器本体に洗浄水を供給するタンク装置と、を有し、
このタンク装置は、上記便器本体の後方且つ床面よりも上方に設けられ、上記便器本体に供給するための洗浄水を貯留する貯水タンクと、この貯水タンクに洗浄水を給水する給水部と、上記貯水タンク内の洗浄水を上記便器本体に圧送するポンプと、を備えており、
上記貯水タンクは、その上下方向に二等分する中央高さ位置よりも上方に形成される上側タンク領域内の容積が上記中央高さ位置よりも下方に形成される下側タンク領域内の容積よりも大きく、
上記貯水タンクは、高低差を有する上面を備えており、この上面の最高面には、上記給水部から給水される洗浄水を上記貯水タンク内へ通水可能に貫く通水口が設けられており、
上記便器本体は、陶器製であり、上記貯水タンクは、上記便器本体に対して固定可能な固定部を備えており、
上記貯水タンクは、上下方向に互いに接合される上タンク部及び下タンク部をそれぞれ備えており、上記固定部は、上記上タンク部及び上記下タンク部のうちの少なくとも上記下タンク部に設けられていると共に、上記上タンク部よりも上記下タンク部の方が多く設けられていることを特徴とする水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器として、例えば、特許文献1、2に記載されているように、貯水タンクに貯留された洗浄水をポンプによって便器本体に加圧し、便器洗浄を行うものが知られている。
このような従来の水洗大便器の貯水タンクには、貯水タンクへの給水を可能にする給水部が設けられている。また、この給水部は、貯水タンク内の洗浄水が逆流することを防止するために、貯水タンクの内部とは縁切りされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-30405号公報
【文献】特開2014-114627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の水洗大便器においては、貯水タンクの天面が平坦な場合、例えば、便器本体の製造誤差や、貯水タンクと便器本体との組み付けの誤差等によって、貯水タンクが傾いて設置されると、傾いた側に空気溜まりが形成されてしまうという問題がある。
これにより、貯水タンク内に貯留される洗浄水量は、空気溜まりの体積分により少なくなってしまったり、ばらついてしまったりするおそれがあるという問題がある。
また、貯水タンク内に空気溜まりが発生することにより、貯水タンクへの給水時において、貯水タンク内の洗浄水の上昇に伴って、空気溜まりが洗浄水に取り込まれて異音が発生してしまうおそれがあるという問題もある。
したがって、貯水タンクの傾きを抑制することにより、貯水タンク内における空気溜まりの発生をいかに抑制するかが、従来から要請されている課題となっている。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題や従来から要請されている課題を解決するためになされたものであり、貯水タンクの傾きによる空気溜まりを抑制して、貯水タンク内により多くの洗浄水量を貯留することができると共に、空気溜まりによる異音の発生を抑制することができる水洗大便器を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、汚物を受けるボウル部と、このボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、を備えた便器本体と、この便器本体に洗浄水を供給するタンク装置と、を有し、このタンク装置は、上記便器本体の後方且つ床面よりも上方に設けられ、上記便器本体に供給するための洗浄水を貯留する貯水タンクと、この貯水タンクに洗浄水を給水する給水部と、上記貯水タンク内の洗浄水を上記便器本体に圧送するポンプと、を備えており、上記貯水タンクは、その上下方向に二等分する中央高さ位置よりも上方に形成される上側タンク領域内の容積が上記中央高さ位置よりも下方に形成される下側タンク領域内の容積よりも大きく、上記貯水タンクは、高低差を有する上面を備えており、この上面の最高面には、上記給水部から給水される洗浄水を上記貯水タンク内へ通水可能に貫く通水口が設けられており、この通水口は、常時開放されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、高低差を有する上面を備えた貯水タンクが傾いたときに、貯水タンクの上下方向に二等分する中央高さ位置よりも上方に形成される上側タンク領域内の容積が、貯水タンクの中央高さ位置よりも下方に形成される下側タンク領域内の容積よりも大きいために、貯水タンク内の上側タンク領域内では空気溜まりが発生し易い。
しかしながら、本発明によれば、給水部から貯水タンクへの給水時に貯水タンク内の空気溜まりが発生したとしても、貯水タンクの上面の最高面に設けられた通水口が常時開放されているため、空気溜まりの空気を予め逃がし易くする通気口としても機能することができる。
したがって、貯水タンクの上下方向に二等分する中央高さ位置よりも上方に形成される上側タンク領域内の容積が、貯水タンクの中央高さ位置よりも下方に形成される下側タンク領域内の容積よりも大きくても、給水部から給水されて貯水タンク内に貯留される洗浄水量が、貯水タンク内の空気溜まりによって減少したり、ばらついたりしてしまうことを抑制することができる。よって、貯水タンク内により多くの洗浄水量を貯留することができる。
また、給水部から貯水タンク内に給水が行われ、貯水タンク内の水位が上昇する際には、貯水タンク内の空気溜まりの空気を常時開放されている通水口から予め逃がし易くしているため、空気溜まりによる異音(例えば、貯水タンク内の空気溜まりが給水に取り込まれるときに発生する異音や、空気溜まりの空気が通水口から脱気する際に発生する異音(脱気音)等)の発生についても抑制することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記貯水タンクの上面は、上記通水口が形成される面からその外側周囲に向かって連続的又は段階的に低くなるように形成されている。
このように構成された本発明においては、貯水タンクの上面が、通水口が形成される面からその外側周囲に向かって連続的又は段階的に低くなるように形成されているため、仮に貯水タンクが傾いたとしても、貯水タンク内の空気は、貯水タンクの連続的又は段階的に低くなる上面に沿って貯水タンクの通水口へと導くことができる。
したがって、貯水タンク内の空気溜まりを確実に抑制することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記便器本体は、陶器製であり、上記貯水タンクは、上記便器本体に対して固定可能な固定部を備えている。
このように構成された本発明においては、陶器製の便器本体は、製造時において寸法誤差が生じ易いため、便器本体の寸法誤差が大きい程、貯水タンクを便器本体に設置した際には、貯水タンクの傾きも大きくなってしまうおそれがある。
しかしながら、本発明によれば、貯水タンクの固定部により貯水タンクを便器本体に対して確実に固定し、安定して固定することができるため、貯水タンクのがたつきを抑制することができる。
また、便器本体が陶器製であっても、貯水タンクのがたつきによる空気溜まりの発生を抑制することができるため、貯水タンク内により多くの洗浄水量を貯留することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記貯水タンクは、上下方向に互いに接合される上タンク部及び下タンク部をそれぞれ備えており、上記固定部は、上記上タンク部及び上記下タンク部のうちの少なくとも上記下タンク部に設けられていると共に、上記上タンク部よりも上記下タンク部の方が多く設けられている。
このように構成された本発明においては、便器本体に対して固定される貯水タンクの固定部について、上下方向に互いに接合される上タンク部及び下タンク部のうちの少なくとも下タンク部に設けることができると共に、上タンク部よりも下タンク部の方に対して多く設けることができる。
したがって、貯水タンクの固定部を下タンク部側に可能な限り集約化させることができるため、貯水タンクを便器本体に対して組み付けた後に、貯水タンクの固定部を固定した際に、組み付け誤差等を低減させることができる。
よって、貯水タンクの傾きを抑制することができるため、貯水タンクの傾きによる空気溜まりの発生を抑制することができる。
また、貯水タンク内の洗浄水の重量は、主として下タンク部により下側から支持される。よって、貯水タンクの固定部については、上タンク部よりも下タンク部の方に対して多く設けた方が、貯水タンクを便器本体に対してより安定して固定することができるため、貯水タンクの傾きをより低減させることができる。
さらに、貯水タンクの固定部について、下タンク部よりも上タンク部の方に対して多く設けた場合に比べて、固定部に作用する固定荷重等により上タンク部が変形し、貯水タンクの上面において撓み等が発生することにより、貯水タンク内に空気溜まりが発生し易くなるリスクを低減することができる。
また、貯水タンクの固定部を上タンク部よりも下タンク部に対して多く設けた方が、貯水タンクの固定部に要する上タンク部の上方スペース等を削減することができる。これにより、貯水タンクの上端高さ位置を可能な限り低く設定することができ、水洗大便器全体のローシルエット化を実現することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記貯水タンクは、これを左右中央で二分割したときに容積が大きい側である大タンク部と、上記貯水タンクを左右中央で二分割したときに容積が小さい側である小タンク部と、を備えている左右非対称の形状であり、上記便器本体は、上記大タンク部に対して前後方向に対向する側の面が上方から上記貯水タンクの下方に向かって傾斜する傾斜面を形成し、上記大タンク部の前端部は、上記貯水タンクの固定部が上記便器本体に対して固定された状態において、上記便器本体の傾斜面に隣接して配置されると共に、この便器本体の傾斜面に沿うように傾斜している。
このように構成された本発明においては、便器本体が、貯水タンクの大タンク部に対して前後方向に対向する側の面が上方から貯水タンクの下方に向かって傾斜する傾斜面を形成し、貯水タンクの大タンク部の前端部が便器本体の傾斜面に隣接して配置されると共に、この便器本体の傾斜面に沿うように傾斜しているため、例えば、貯水タンクの固定部が破損する等のトラブルが発生して貯水タンクが傾いた場合であっても、貯水タンクの前端部が、これと対向して隣接する便器本体の傾斜面に対して当接することができる。
したがって、貯水タンクが大きく傾いてしまうことを抑制することができるため、貯水タンクの傾きによる空気溜まりの発生を確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水洗大便器によれば、貯水タンクの傾きによる空気溜まりを抑制して、貯水タンク内により多くの洗浄水量を貯留することができると共に、空気溜まりによる異音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による水洗大便器を斜め後方且つ上方から見た概略斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態による水洗大便器のタンクユニットの部分を拡大した部分拡大平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態による水洗大便器の貯水タンクを斜め後方且つ上方から見た斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態による水洗大便器の貯水タンクの背面図である。
【
図7】本発明の一実施形態による水洗大便器における便器本体、タンク取付部材、及び、貯水タンクを示す分解斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態による水洗大便器における便器本体に対してタンク取付部材が取り付けられた状態を示す平面図である。
【
図9】本発明の一実施形態による水洗大便器における便器本体に対して貯水タンクがタンク取付部材を介して取り付けられた状態を示す平面図である。
【
図10】本発明の一実施形態による水洗大便器における貯水タンクについて、斜め後方かつ下方から見た斜視図である。
【
図11】
図9のXI-XI線に沿った断面図であり、便器本体の後方側における貯水タンク及びタンク取付部材の部分を拡大した部分拡大断面図である。
【
図12】
図10に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の貯水タンクの取付部の部分について拡大した部分拡大図である。
【
図13A】
図11に示す本発明の一実施形態による水洗大便器において、貯水タンクの大タンク後方側取付部及びタンク取付部材の後方側被取付部の部分を拡大した部分拡大断面図であり、貯水タンクの大タンク後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動される前の状態(係止前状態)を示す。
【
図13B】本発明の一実施形態による水洗大便器における貯水タンクの大タンク後方側取付部及びタンク取付部材の後方側被取付部の部分を拡大した
図13Aと同様な部分拡大断面図であり、貯水タンクの大タンク後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動されて位置決めが完了した状態(位置決め完了状態)を示す。
【
図13C】本発明の一実施形態による水洗大便器において、
図13Aと同様に、貯水タンクの小タンク後方側取付部及びタンク取付部材の後方側被取付部の部分を拡大した部分拡大断面図であり、貯水タンクの小タンク後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動される前の状態(係止前状態)を示す。
【
図13D】本発明の一実施形態による水洗大便器における貯水タンクの小タンク後方側取付部及びタンク取付部材の後方側被取付部の部分を拡大した
図13Cと同様な部分拡大断面図であり、貯水タンクの小タンク後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動されて位置決めが完了した状態(位置決め完了状態)を示す。
【
図14A】
図11に示す本発明の一実施形態による水洗大便器において、貯水タンクの前方側取付部及びタンク取付部材の前方側被取付部の部分を拡大した部分拡大断面図であり、貯水タンクの前方側取付部がタンク取付部材の前方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動される前の状態(位置決め前状態)を示す。
【
図14B】本発明の一実施形態による水洗大便器における貯水タンクの前方側取付部及びタンク取付部材の前方側被取付部の部分を拡大した
図13Bと同様な部分拡大断面図であり、貯水タンクの前方側取付部がタンク取付部材の前方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動されて位置決めが完了した状態(位置決め完了状態)を示す。
【
図15】本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体及び貯水タンクの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器について説明する。
まず、
図1は、本発明の一実施形態による水洗大便器を斜め後方且つ上方から見た概略斜視図である。また、
図2は、本発明の一実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、その後方側に設けられたタンク装置4と、を備えている。
また、便器本体2は、汚物を受けるボウル部2aと、このボウル部2aの底部から延びてボウル部2a内の汚物を排出する排水トラップ部(排水トラップ管2b)と、ボウル部2aの上縁に形成されるリム部2cと、を備えている。
【0014】
つぎに、
図1及び
図2に示すように、タンク装置4は、その上流側及び下流側にそれぞれ接続された給水管6及び吐水管8をそれぞれ備えている。
給水管6の上流側は、水道等の外部の給水源(図示せず)に接続されている。一方、給水管6の下流側は、タンク装置4の貯水タンク10(詳細は後述する)に接続されている。これらにより、給水管6から貯水タンク10に洗浄水が供給されるようになっている。
また、給水管6には、上流側から下流側に向かって、止水栓12、バルブユニット14がそれぞれ設けられている。
さらに、バルブユニット14は、給水管6に設けられた定流量弁16、並びに、この定流量弁16の下流側に設けられた開閉弁(ダイヤフラム弁17)を開閉する電磁弁18をそれぞれ含む。
【0015】
つぎに、
図1及び
図2に示すように、タンク装置4は、さらに、給水管6のバルブユニット14の下流側に接続されている連結ユニット20と、この連結ユニット20の下流側に接続されて貯水タンク10を含むタンクユニット22とを備えている。
バルブユニット14において、給水管6内の洗浄水が定流量弁16により流量が一定に調整されるようになっている。
その後、電磁弁18が電磁的に開弁し、開閉弁(ダイヤフラム弁17)により給水管6の流路が開放されると、給水管6内の洗浄水が連結ユニット20を経てタンクユニット22に供給されるようになっている。
【0016】
図2に示すように、連結ユニット20は、水受けハウジング24と、オーバーフロー管26と、逆止弁28と、を備えている。
また、水受けハウジング24は、その下方開口部24aがタンクユニット22の貯水タンク10の上方開口部(通水口10a)に着脱可能に接続されている。
【0017】
つぎに、オーバーフロー管26は、水受けハウジング24の側壁の一部に設けられたオーバーフロー口24bと吐水管8とを接続している。
吐水管8は、その上流側がタンク装置4のポンプ30に接続された接続管(洗浄水供給管)であり、その下流側が便器本体2のリム部2cの内部のリム導水路2dに接続されている。
さらに、逆止弁28は、オーバーフロー口24bに設けられており、水受けハウジング24内の洗浄水がオーバーフロー口24bからオーバーフロー管26に流入することを可能にする一方、オーバーフロー管26内の洗浄水が水受けハウジング24内へ逆流することを妨げることができるようになっている。
【0018】
つぎに、
図2に示すように、タンクユニット22は、貯水タンク10、ポンプ30、フロートスイッチ32、水抜き栓34、及び、コントローラC等をそれぞれ備えている。
ポンプ30は、吐水管8の上流側に接続されている通水管36の一部(途中)に設けられている。この通水管36の上流端36aは、貯水タンク10内に設けられた吸引管38の下流端38aに接続されている。
【0019】
貯水タンク10内に貯水されている洗浄水は、ポンプ30が作動することにより、吸引管38から通水管36内に吸引された後、ポンプ30を経て吐水管8に圧送されるようになっている。
これにより、貯水タンク10からポンプ30により吐水管8に供給された洗浄水のうちのすべてがリム導水路2dの入口2eからリム導水路2d内に供給されるようになっている。
そして、リム導水路2d内の洗浄水はリム導水路2dの下流端のリム吐水口2fからボウル部2a内に吐水され、便器洗浄(いわゆる、リム吐水100%による便器洗浄)が行われるようになっている。
すなわち、これらの通水管36及び吐水管8のそれぞれは、貯水タンク10からポンプ30によって圧送された洗浄水を便器本体2に供給する洗浄水供給管として機能するようになっている。
【0020】
フロートスイッチ32は、貯水タンク10内の水位を検知するものである。バルブユニット14の電磁弁18の開閉動作は、フロートスイッチ32が検知した貯水タンク10内の水位に基づいてコントローラCにより制御されるようになっている。
また、ポンプ30の作動についても、フロートスイッチ32が検知した貯水タンク10内の水位に基づいてコントローラCにより制御されるようになっている。
例えば、フロートスイッチ32が検知した貯水タンク10内の水位が所定以下である場合には、電磁弁18が開弁して給水管6が開放され、ポンプ30が作動されるようになっている。
そして、貯水タンク10内の水位が所定水位まで到達すると、電磁弁18が閉弁して給水管6が閉鎖され、ポンプ30が停止されるようになっている。
【0021】
水抜き栓34は、貯水タンク10の底面に設けられている。この水抜き栓34は、通常使用時では、常時閉鎖されており、必要に応じて開放され、貯水タンク10内の洗浄水を外部に排出することができるようになっている。
【0022】
つぎに、
図3~
図6を参照して、タンクユニット22の貯水タンク10の詳細について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による水洗大便器のタンクユニットの部分を拡大した部分拡大平面図である。また、
図4は、
図3のIV-IV線に沿った断面図である。
まず、
図3及び
図4に示すように、タンクユニット22の貯水タンク10は、単一のタンク本体40と、このタンク本体40の外側を覆う防露材42とを備えている。
つぎに、
図5は、本発明の一実施形態による水洗大便器の貯水タンクを斜め後方且つ上方から見た斜視図である。また、
図6は、本発明の一実施形態による水洗大便器の貯水タンクの背面図である。
図3~
図6に示すように、タンクユニット22の貯水タンク10を左右中央で二分割する仮想の鉛直面を「鉛直面A1」とすると、貯水タンク10の単一のタンク本体40及びその外側の防露材42は、鉛直面A1に対して左右に大タンク部44及び小タンク部46をそれぞれ備えており、鉛直面A1によって、大タンク部44と小タンク部46とに左右に二分割されている。
すなわち、
図6に示すように、大タンク部44は、タンク本体40及び防露材42を背面側から見て鉛直面A1の左側に配置され、小タンク部46は、タンク本体40及び防露材42を背面側から見て鉛直面A1の右側に配置されており、大タンク部44の容積V1は、小タンク部46の容積V2よりも大きく設定(V1>V2)されている。
これにより、貯水タンク10は、大タンク部44と小タンク部46とにより左右非対称の形状(平面視において概ねC字形又はU字形の異形状)となっている。
【0023】
つぎに、
図4に示すように、便器本体2は、ボウル部2aよりも後方側の領域において、大タンク部44及び小タンク部46のそれぞれを床面よりも上方の位置で収容する大タンク収容部S1及び小タンク収容部S2をそれぞれ備えている。
すなわち、大タンク収容部S1は、便器本体2のボウル部2aよりも後方側の領域において、左右中央で二分割した鉛直面A1に対して左右一方側(便器本体2を正面側から見て鉛直面A1の右側)に形成されている。
一方、小タンク収容部S2は、便器本体2のボウル部2aよりも後方側の領域において、鉛直面A1に対して左右他方側(便器本体2を正面側から見て鉛直面A1の左側)に形成されている。
【0024】
また、
図4~
図6に示すように、大タンク部44及び小タンク部46のそれぞれが大タンク収容部S1及び小タンク収容部S2のそれぞれに設置された状態では、大タンク部44の底面44aの最低位置P1が、小タンク部46の底面46aの最低位置P2よりも下方に位置している。
さらに、
図4~
図6に示すように、大タンク部44及び小タンク部46のそれぞれが大タンク収容部S1及び小タンク収容部S2のそれぞれに設置された状態では、大タンク部44の上面44bの位置P3(最高位置P3)が、小タンク部46の上面46bの位置P4よりも上方に位置し、かつ、便器本体2のリム部2cの上面2gよりも下方に位置している。
なお、便器本体2の後方には、詳細は後述するタンク取付部材48が固定されており、貯水タンク10がタンク取付部材48に対して上方から取り付け可能となっている。これにより、貯水タンク10が便器本体2に対して組み付けられるようになっている。つまり、貯水タンク10は、タンク取付部材48を介して、間接的に便器本体2に取り付けられる。
なお、タンク取付部材48を設けずに、貯水タンク10が便器本体2に直接的に取り付けられてもよい。
【0025】
つぎに、
図6に示すように、貯水タンク10の大タンク部44の最低位置P1と最高位置P3との間の上下方向の距離(鉛直方向距離H1)を二等分する中央高さ位置(上下中央高さ位置P0)よりも上方に形成される貯水タンク10の上側タンク領域Ta内の容積Vaが、中央高さ位置P0よりも下方に形成される貯水タンク10の下側タンク領域Vb内の容積Vbよりも大きく設定されている(Va>Vb)。
また、
図4~
図6に示すように、貯水タンク10の大タンク部44の上面44b及び小タンク部46の上面46bのそれぞれは、高低差を有している。
特に、貯水タンク10の大タンク部44の上面44bの最高面A2には、通水口10aが鉛直方向に貫くように設けられている。この通水口10aにより、給水管6の下流端に接続される給水部である給水ノズル6a(
図2、
図4参照)から水受けハウジング24内に給水された洗浄水W1は、貯水タンク10内へ通水されて貯水されるようになっている。
なお、本実施形態では、貯水タンク10について、互いに高低差を有する大タンク部44及び小タンク部46の上面同士が平面である形態を説明するが、このような形態に限られず、例えば、貯水タンク10の最高面が平面であって、この最高面から下方に向かって傾斜する面を備えるように、高低差を有する形態であってもよい。
【0026】
さらに、
図5及び
図6に示すように、貯水タンク10の大タンク部44の上面44bは、通水口10aが形成される面A2からその外側周囲の面A3に向かって、僅かな段差G1を介して連続的に、かつ、段階的に低くなるように形成されている。
なお、貯水タンク10の大タンク部44の上面44bについては、通水口10aが形成される面A2からその外側周囲の面A3に向かって、連続的に下り傾斜する、いわゆる、テーパ状に低くなるように形成されていてもよいし、上述した僅かな段差G1よりも大きい段差により、いわゆる、階段状に低くなるように形成されていてもよい。
また、貯水タンク10の小タンク部46の上面46bについては、大タンク部44の上面A3と同一高さの面A4で水平左右方向に延びた後、段差G2により下方に平面A5を形成している。
【0027】
ちなみに、
図2及び
図4に示すように、吸引管38は、タンク本体40の大タンク部44内に設けられており、ポンプ30から上流側(側方)に延びる通水管36の上流端36aは、大タンク部44の一部である吸引管38の下流端38aに水密に接続されている。
また、
図3に示すように、ポンプ30から下流側(上方)に延びる通水管36の下流端には、吐水管8の上流端が接続されており、吐水管8の下流端(出口部8a)は、便器本体2の鉛直面A1に対して左右他方側(便器本体2を正面側から見て鉛直面A1よりも左側)のリム導水路2dの入口2eに接続されている。
【0028】
つぎに、
図4に示すように、大タンク部44は、その鉛直面A1側(左右中央側)の側壁面44cが大タンク収容部S1内における排水トラップ管2bの外側(排水トラップ管2bを正面側から見て右側)に配置されている。
同様に、小タンク部46は、その鉛直面A1側(左右中央側)の側壁面46cが小タンク収容部S2内における排水トラップ管2bの外側(排水トラップ管2bを正面側から見て左側)に配置されている。
また、
図4及び
図5に示すように、排水トラップ管2bは、便器本体2の左右中央に設けられており、通水管36の上流端36aは、大タンク部44の左右側面のうちの排水トラップ管2b側の側壁面44cに接続されている。
【0029】
さらに、
図3及び
図4に示すように、ポンプ30は、便器本体2のボウル部2aよりも後方で且つ排水トラップ管2bの上方に配置されている。
また、ポンプ30は、大タンク部44と小タンク部46との間の左右方向のスペースに配置されており、通水管36の上流端36a及び吐水管8の下流端(出口部8a)よりも便器本体2の左右中央側に設けられている。
【0030】
つぎに、
図4、
図7~
図14を参照して、便器本体2に固定される上述したタンク取付部材48について具体的に説明すると共に、貯水タンク10の固定部(取付部M1)とタンク取付部材48の被取付部M2との取付構造について具体的に説明する。
まず、
図7は、本発明の一実施形態による水洗大便器における便器本体、タンク取付部材、及び、貯水タンクを示す分解斜視図である。
つぎに、
図8は、本発明の一実施形態による水洗大便器における便器本体に対してタンク取付部材が取り付けられた状態を示す平面図である。
また、
図9は、本発明の一実施形態による水洗大便器における便器本体に対して貯水タンクがタンク取付部材を介して取り付けられた状態を示す平面図である。
【0031】
まず、
図4、
図7~
図9に示すように、タンク取付部材48は、便器本体2のボウル部2aよりも後方に固定されるベース部(ベースプレート50)と、このベースプレート50の後端から上方に延びる背面側支持プレート52と、を備えている。
また、
図8及び
図9に示す平面視において、便器本体2の排水トラップ管2bは、便器本体2のボウル部2aの下方に接続される排水トラップ管2bの入口部2hからボウル部2aよりも後方の出口部2iに向かって前後方向に延びている。
そして、
図4、
図7及び
図8に示すように、便器本体2における排水トラップ管2bの出口部2iの上方の排水トラップ管2bの上部及びその側方には、ベースプレート50が固定される支持面2jが陶器で形成されている。
これにより、ベースプレート50は、便器本体2の後方の支持面2jで下方から支持された状態で、上方から複数(4つ)のねじ54で固定されている。
また、
図8及び
図9に示すように、タンク取付部材48が便器本体2に対して固定された状態では、背面側支持プレート52がその後方側の外部壁面Wに隣接して配置されている。
【0032】
つぎに、
図10は、本発明の一実施形態による水洗大便器における貯水タンクについて、斜め後方かつ下方から見た斜視図である。また、
図11は、
図9のXI-XI線に沿った断面図であり、便器本体の後方側における貯水タンク及びタンク取付部材の部分を拡大した部分拡大断面図である。
まず、
図7、
図10及び
図11に示すように、貯水タンク10は、上下方向に互いに接合される上タンク部(上タンク部材T1)及び下タンク部(下タンク部材T2)をそれぞれ備えている。
また、上タンク部材T1は、上側タンク本体40aと、その外側の上側防露材42aと、を含み、下タンク部材T2は、下側タンク本体40bと、その外側の下側防露材42bと、を含む。
すなわち、貯水タンク10の上タンク部材T1の下縁接合部10bと下タンク部材T2の上縁接合部10cとが接合された状態では、上タンク部材T1の上側タンク本体40aの下縁接合部40cと下タンク部材T2の下側タンク本体40bの上縁接合部40dとが水密に接合され、単一のタンク本体40が形成されている。
さらに、このタンク本体40の外側は、上側防露材42a及び下側防露材42bにより上下方向から覆われている。
【0033】
つぎに、
図9及び
図10に示すように、貯水タンク10の大タンク部44は、排水トラップ管2bの後方側に配置される後方側大タンク部56と、この後方側大タンク部56から前方に延びて排水トラップ管2bの左右一方側(便器本体2の正面側から見て右側)に配置された前方側大タンク部58と、後方側大タンク部56から下方に延びる下方側大タンク部60と、を備えている。
つぎに、
図9及び
図10に示すように、貯水タンク10の小タンク部46は、排水トラップ管2bの後方側に配置される後方側小タンク部62と、この後方側小タンク部62から前方に延びて排水トラップ管2bの左右他方側(便器本体2の正面側から見て左側)に配置された前方側小タンク部64と、を備えている。
また、
図9及び
図10に示すように、前方側大タンク部58の前端58aの位置P5は、前方側小タンク部64の前端64aの位置P6よりも前方に位置している。
さらに、
図4及び
図10に示すように、下方側大タンク部60の底面60aは、後方側小タンク部62の底面62a及び前方側小タンク部64の底面64bよりも下方に位置している。
【0034】
つぎに、
図12は、
図10に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の貯水タンクの取付部の部分について拡大した部分拡大図である。
まず、
図7及び
図9~
図11に示すように、貯水タンク10の固定部(取付部M1)は、貯水タンク10の後方側大タンク部56の底面56a及び後方側小タンク部62の底面62a(すなわち、
図10に示す貯水タンク10の下タンク部材T2の後方側の底面10d)において、左右一対設けられた大タンク側取付部(後方側取付部66)及び小タンク側取付部(後方側取付部68)をそれぞれ備えている。
また、
図7及び
図9~
図11に示すように、貯水タンク10の固定部(取付部M1)は、さらに、貯水タンク10の前方側大タンク部58の内側面58bの一部及び前方側小タンク部64の内側面64cの一部(すなわち、
図7、
図9に示す貯水タンク10の下タンク部材T2の内側面10e,10f)において、左右一対設けられた大タンク側取付部(前方側取付部70)及び小タンク側取付部(前方側取付部72)をそれぞれ備えている。
すなわち、貯水タンク10を便器本体2及びタンク取付部材48に対して固定するための貯水タンク10の固定部については、取付部M1(66,68,70,72)として下タンク部材T2側にのみ複数(4つ)設けられているが、上タンク部材T1側には設けられていない。
なお、本実施形態では、貯水タンク10の固定部については、下タンク部材T2のみに複数(4つ)設けられた形態について説明するが、4つ以外の複数設けられていてもよい。
或いは、貯水タンク10の固定部は、上タンク部材T1及び下タンク部材T2のそれぞれに設けられていてもよい。この場合、下タンク部材T2に設けられる貯水タンク10の固定部が上タンク部材T1よりも多く設けられることが好ましい。
【0035】
一方、
図7、
図8及び
図11に示すように、タンク取付部材48の被取付部M2は、タンク取付部材48のベースプレート50上の後方側に左右一対設けられた後方側被取付部74,76をそれぞれ備えている。各被取付部74,76においては、貯水タンク10の後方側取付部66,68のそれぞれが上方から取付可能となっている。
また、
図7、
図8及び
図11に示すように、タンク取付部材48の被取付部M2は、さらに、タンク取付部材48のベースプレート50上の前方側に左右一対設けられた前方側被取付部78,80をそれぞれ備えている。各被取付部78,80においては、貯水タンク10の前方側取付部70,72のそれぞれが上方から取付可能となっている。
なお、
図11に示す貯水タンク10の取付部66,70及びタンク取付部材48の被取付部74,78については、貯水タンクの取付部66,70のそれぞれがタンク取付部材48の被取付部74,78のそれぞれに上方から取り付けられて係合した後、互いが固定される前の状態を示している。
【0036】
つぎに、
図12は、
図10に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の貯水タンクの取付部の部分について拡大した部分拡大図である。
また、
図13Aは、
図11に示す本発明の一実施形態による水洗大便器において、貯水タンクの大タンク後方側取付部及びタンク取付部材の後方側被取付部の部分を拡大した部分拡大断面図であり、貯水タンクの大タンク後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動される前の状態(位置決め前状態)を示す。
一方、
図13Bは、
図13Aと同様な部分拡大断面図であり、貯水タンクの大タンク後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動されて位置決めが完了した状態(位置決め完了状態)を示す。
つぎに、
図13Cは、本発明の一実施形態による水洗大便器において、
図13Aと同様に、貯水タンクの小タンク後方側取付部及びタンク取付部材の後方側被取付部の部分を拡大した部分拡大断面図であり、貯水タンクの小タンク後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動される前の状態(係止前状態)を示す。
一方、
図13Dは、本発明の一実施形態による水洗大便器における貯水タンクの小タンク後方側取付部及びタンク取付部材の後方側被取付部の部分を拡大した
図13Cと同様な部分拡大断面図であり、貯水タンクの小タンク後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動されて位置決めが完了した状態(位置決め完了状態)を示す。
【0037】
まず、
図12、
図13A、
図13C及び
図14Aに示すように、貯水タンク10の各後方側取付部66,68は、タンク本体40の底面から下方に突出しており、その下端がタンク取付部材48の各後方側被取付部74,76内の底面に接触可能な足部となっている。
また、貯水タンク10における各後方側取付部66,68の周囲の防露材42は切り欠かれており、各後方側取付部66,68の下端(足部の底面)が、貯水タンク10の底面56a,62a(防露材42の底面42c)よりもわずかに下方に位置している。
さらに、各後方側取付部66,68の下端部(足部)には、タンク取付部材48の各後方側被取付部74,76に係止される係止部(取付側係止部66a,68a)が設けられている。
一方、
図13A~
図13Dに示すように、タンク取付部材48の各後方側被取付部74,76は、貯水タンク10の各後方側取付部66,68全体を上方から受け入れ可能に凹状に形成されており、その後方側には、貯水タンク10の各後方側取付部66,68の各取付側係止部66a,68aと共に互いに係止可能な係止部(被取付側係止部74a,76a)が設けられている。
つぎに、
図12及び
図13A~
図13Dに示すように、貯水タンク10の各係止部66a,68aは、各取付部66,68の底部後端から後方に突出する係止突起66b,68bと、この係止突起66b,68bとその上方のタンク本体40の底面40eとの間に形成される係止凹部66c,68cと、をそれぞれ備えている。
また、
図13A~
図13Dに示すように、タンク取付部材48の各係止部74a,76aは、ベースプレート50の後端近傍から上方に突出する係止突起74b,76bをそれぞれ備えている。
【0038】
ここで、
図13Aに示すように、便器本体2の後方に固定されているタンク取付部材48に対して貯水タンク10が上方から取り付けられた際、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の底面は、上方からタンク取付部材48の後方側被取付部74の底面に接触して互いが係合している状態となっている。
しかしながら、
図13Aに示すように、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の取付側係止部66aと、これと対応するタンク取付部材48の後方側被取付部74の被取付側係止部74aとが互いに係止されていないため、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の取付側係止部66aが、これと対応するタンク取付部材48の後方側被取付部74の被取付側係止部74aに対して位置決めされていない状態(位置決め前状態)となっている。
そして、貯水タンク10がタンク取付部材48に対して後方に移動された際には、
図13Aに示す状態の貯水タンク10の大タンク後方側取付部66がタンク取付部材48の後方側被取付部74に対して後方(
図13Aに示す矢印R方向)に移動されるようになっている。
これにより、
図13Bに示すように、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の取付側係止部66aと、これと対応するタンク取付部材48の後方側被取付部74の被取付側係止部74aとが互いに係止されるようになっている。
すなわち、
図13Bに示すように、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の取付側係止部66aの係止突起66bの後端部は、タンク取付部材48の後方側被取付部74の被取付側係止部74aの係止突起74bの前面に当接するようになっている。
このとき、タンク取付部材48の後方側被取付部74の被取付側係止部74aの前端部は、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の取付側係止部66aの係止凹部66c内に嵌合されるようになっている。
これらの結果、
図13Bに示すように、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の各取付側係止部66aは、タンク取付部材48の各後方側被取付部74の各被取付側係止部74aに対して位置決めされた状態(位置決め完了状態)となっている。
【0039】
つぎに、
図13Cに示すように、便器本体2の後方に固定されているタンク取付部材48に対して貯水タンク10が上方から取り付けられた際、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の底面は、その下方に位置するタンク取付部材48の後方側被取付部76の底面に対して接触することなく、隙間G0が形成されている状態となっている。
しかしながら、
図13Cに示すように、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の取付側係止部68aと、これと対応するタンク取付部材48の後方側被取付部76の被取付側係止部76aとが互いに係止されていないため、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の取付側係止部68aが、これと対応するタンク取付部材48の後方側被取付部76の被取付側係止部76aに対して位置決めされていない状態(位置決め前状態)となっている。
そして、貯水タンク10がタンク取付部材48に対して後方に移動された際には、
図13Cに示す状態の貯水タンク10の小タンク後方側取付部68がタンク取付部材48の後方側被取付部76に対して後方(
図13Cに示す矢印R方向)に移動されるようになっている。
これにより、
図13Dに示すように、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の取付側係止部68aと、これと対応するタンク取付部材48の後方側被取付部76の被取付側係止部76aとが互いに係止されるようになっている。
すなわち、
図13Dに示すように、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の取付側係止部68aの係止突起68bの後端部は、タンク取付部材48の後方側被取付部76の被取付側係止部76aの係止突起76bの前面に当接するようになっている。
このとき、タンク取付部材48の後方側被取付部76の被取付側係止部76aの前端部は、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の取付側係止部68aの係止凹部68c内に嵌合されるようになっている。
これらの結果、
図13Dに示すように、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の各取付側係止部68aは、タンク取付部材48の後方側被取付部76の被取付側係止部76aに対して位置決めされた状態(位置決め完了状態)となっている。
このとき、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の底面は、その下方に位置するタンク取付部材48の後方側被取付部76の底面に対して接触することなく、隙間G0が形成されている状態が維持されている。
【0040】
さらに、
図13A~
図13Dに示すように、タンク取付部材48の各後方側被取付部74,76の各係止部74a,76aの各係止突起74b,76bは、その上端から前方に向かって斜め下方に傾斜する傾斜面74c,76cをそれぞれ備えている。
これにより、貯水タンク10の各後方側取付部66,68が上方からタンク取付部材48の各後方側被取付部74,76各取付部74,76に取り付けられる際、万一、貯水タンク10の各取付部66,68の各取付部66,68が上方からタンク取付部材48の各被取付部74,76の係止突起74b,76bの上端や傾斜面74c,76cに載った状態になっても、この傾斜面74c,76cが貯水タンク10の各取付部66,68の係止部66a,68aを後方から前方のタンク取付部材48の各被取付部74,76の範囲内に導くガイド面として機能するようになっている。
【0041】
つぎに、
図14Aは、
図11に示す本発明の一実施形態による水洗大便器において、貯水タンクの前方側取付部及びタンク取付部材の前方側被取付部の部分を拡大した部分拡大断面図であり、貯水タンクの前方側取付部がタンク取付部材の前方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動される前の状態(位置決め前状態)を示す。
一方、
図14Bは、
図14Aと同様な部分拡大断面図であり、貯水タンクの後方側取付部がタンク取付部材の後方側被取付部に上方から係合した後、後方に移動されて位置決めが完了した状態(位置決め完了状態)を示す。
図14A及び
図14Bに示すように、貯水タンク10の各前方側取付部70,72、及び、これらと対応するタンク取付部材48の各前方側被取付部78,80は、互いにねじ固定が可能なねじ固定部(以下「タンク取付部材48のねじ固定部70,72」、「貯水タンク10のねじ固定部78,80」と呼ぶ)となっている。
具体的には、
図14A及び
図14Bに示すように、タンク取付部材48の各ねじ固定部78,80は、ベースプレート50の前方領域において左右両側から上方に突出する突出部78a,80aを備えており、その内部には上下方向に貫くねじ穴(下側ねじ穴78b,78b)が形成されている。
【0042】
一方、
図14A及び
図14Bに示すように、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72の下方には、タンク取付部材48の各ねじ固定部78,80の突出部78a,80aが下側から挿入可能な嵌合凹部70a,72aが設けられている。
また、貯水タンク10の各嵌合凹部70a,72aは、タンク取付部材48の各ねじ固定部78,80の突出部78a,80aの前後方向の寸法よりも大きく形成されている。 これにより、貯水タンク10の各嵌合凹部70a,72aとタンク取付部材48の各ねじ固定部78,80の突出部78a,80aとが嵌合(係合)した状態では、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72がタンク取付部材48の各ねじ固定部78,80に対して前後方向に摺動可能となっている。
【0043】
さらに、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72の各嵌合凹部70a,72aの上方部分には、上下方向に貫くねじ穴(上側ねじ穴70b,72b)が形成されている。
ここで、
図14Aに示すように、貯水タンク10の各前方側取付部70,72が上方からタンク取付部材48の各前方側被取付部78,80に取り付けられて係合した後、後方に移動される前の状態(位置決め前状態)においては、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72の各嵌合凹部70a,72aの前端70c,72cが、タンク取付部材48の各ねじ固定部78,80の突出部78a,80aの前端78c,80cに対して離間している。
このとき、
図14Aに示すように、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72の各上側ねじ穴70b,72bの中心軸線C1は、タンク取付部材48の各ねじ固定部78,80の各下側ねじ穴78b,80bの中心軸線C2よりも前方に位置しており、各上側ねじ穴70b,72bと各下側ねじ穴78b,80bとが互いに一致していない状態となっている。
【0044】
そして、貯水タンク10がタンク取付部材48に対して後方に移動された際には、
図14Aに示す状態の貯水タンク10の各ねじ固定部70,72がタンク取付部材48の各後方側被取付部74,76に対して後方(
図14Aに示す矢印R方向)に移動されるようになっている。
これにより、
図14Bに示すように、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72の各嵌合凹部70a,72aの前端70c,72cがタンク取付部材48の各ねじ固定部78,80の突出部78a,80aの前端78c,80cに当接するようになっている。
このとき、
図14Bに示すように、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72の各上側ねじ穴70b,72bの中心軸線C1がタンク取付部材48の各ねじ固定部78,80の各下側ねじ穴78b,80bの中心軸線C2と一致し、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72とタンク取付部材48の各ねじ固定部78,80との位置決めが完了されるようになっている。
そして、互いが一致している各上側ねじ穴70b,72b及び各下側ねじ穴78b,80bに対して共通のねじ部材82(
図7、
図9参照)により締結されると、貯水タンク10の各ねじ固定部70,72がタンク取付部材48の各ねじ固定部78,80に対して固定されるようになっている。
【0045】
これらの結果、
図13A~
図14Bに示すように、これらの貯水タンク10の各取付部66,68,70,72と、これらと対応するタンク取付部材48の被取付部74,76,78,80とが互いに取り付けられる際には、貯水タンク10の各後方側取付部66,68の各取付側係止部66a,68aとこれらと対応するタンク取付部材48の各後方側被取付部74,76の各被取付側係止部74a,76aとの2箇所が係止されることにより、タンク取付部材48に対する貯水タンク10の取付性を向上させることができると共に、ねじ部材82によって固定される貯水タンク10の各前方側取付部(ねじ固定部)70,72とこれらと対応するタンク取付部材48の各前方側取付部(ねじ固定部)78,80との位置決めを容易にしている。
また、貯水タンク10の各取付部66,68,70,72と、これらと対応するタンク取付部材48の被取付部74,76,78,80とが互いに取り付けられた状態では、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の底面がタンク取付部材48の後方側被取付部74の底面に接触している一方、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の底面については、その下方に位置するタンク取付部材48の後方側被取付部76の底面に対して接触することなく、隙間G0が形成されている状態が維持された状態となっている。
これらにより、貯水タンク10の小タンク後方側取付部68の底面と、その下方に位置するタンク取付部材48の後方側被取付部76の底面とを接触させて固定した構造に比べて、貯水タンク10が過剰にねじれた姿勢でタンク取付部材48に対して固定されることを抑制することができると共に、貯水タンク10が長期的な観点からも強度不足になることを抑制することができるようになっている。
また、仮に、タンク取付部材48に対して取り付けられた状態の貯水タンク10が、容量の大きい(重心が寄っている)大タンク部44側に傾いたとしても、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の底面とタンク取付部材48の後方側被取付部74の底面との隙間がなく(あるいは、小タンク後方側取付部68側よりも隙間が小さく)、貯水タンク10の大タンク後方側取付部66の底面に着地している(あるいは、すぐに着地することができる)ため、貯水タンク10が傾いたときの変形量も小さく抑えることができようになっている。
【0046】
つぎに、
図15は、本発明の一実施形態による水洗大便器1の便器本体2及び貯水タンク10の側面図である。
図15に示すように、便器本体2は、その側方且つ後方側において、上方から貯水タンク10の下方に向かって傾斜する傾斜面2kを形成している。
そして、貯水タンク10が便器本体2対して固定された状態では、貯水タンク10の大タンク部44及び下タンク部材T2の前端部(前端面10g)は、便器本体2の傾斜面2kに隣接して配置されると共に、この便器本体2の傾斜面2kに沿うように傾斜している。
これにより、貯水タンク10の大タンク部44及び下タンク部材T2の前端面10gと、便器本体2の側方かつ後方側の傾斜面2kとは、互いに前後方向に対向する面を形成している(
図3、
図15参照)。
【0047】
つぎに、
図1~
図14Bを参照して、上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1の作用について説明する。
本実施形態による水洗大便器1によれば、高低差を有する上面44b,46bを備えた貯水タンク10が傾いたときに、貯水タンク10の上下方向に二等分する中央高さ位置P0よりも上方に形成される上側タンク領域Ta内の容積Vaが、貯水タンク10の中央高さ位置P0よりも下方に形成される下側タンク領域Tb内の容積Vbよりも大きいために、貯水タンク10内の上側タンク領域Ta内では空気溜まりが発生し易い。
しかしながら、本実施形態の水洗大便器1によれば、給水部(給水ノズル6a)から水受けハウジング24を介して貯水タンク10内に給水する際に、貯水タンク10内の空気溜まりが発生したとしても、貯水タンク10の大タンク部44の上面44bの最高面A2に設けられた通水口10a(
図5参照)が、空気溜まりの空気を予め逃がし易くする通気口としても機能することができる。
したがって、貯水タンク10の上下方向に二等分する中央高さ位置P0よりも上方に形成される上側タンク領域Ta内の容積Vaが、貯水タンク10の中央高さ位置P0よりも下方に形成される下側タンク領域Tb内の容積Vbよりも大きくても、給水部(給水ノズル6a)から水受けハウジング24を介して貯水タンク10内に給水されて貯留される洗浄水W1(
図4参照)の量が、貯水タンク10内の空気溜まりによって減少したり、ばらついたりしてしまうことを抑制することができる。よって、貯水タンク10内により多くの洗浄水量を貯留することができる。
また、給水部(給水ノズル6a)から水受けハウジング24を介して貯水タンク10内に洗浄水W1の給水が行われ、貯水タンク10内の水位が上昇する際には、貯水タンク10内の空気溜まりの空気を通水口10aから予め逃がし易くしているため、空気溜まりによる異音(例えば、貯水タンク10内の空気溜まりが給水に取り込まれるときに発生する異音や、空気溜まりの空気が通水口10aから脱気する際に発生する異音(脱気音)等)の発生についても抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、貯水タンク10の上面44bが、通水口10aが形成される面(最高面A2)からその外側周囲の面A3に向かって連続的かつ段階的に低くなるように形成されている。
これにより、仮に貯水タンク10が傾いたとしても、貯水タンク10内の空気は、貯水タンク10の連続的かつ段階的に低くなる上面44bに沿って貯水タンク10の通水口10aへと導くことができる。
したがって、貯水タンク10内の空気溜まりを確実に抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、便器本体2が陶器製であるため、製造時において寸法誤差が生じ易い。また、便器本体2の寸法誤差が大きい程、貯水タンク10を便器本体2に設置した際には、貯水タンク10の傾きも大きくなってしまうおそれがある。
しかしながら、本実施形態による水洗大便器1によれば、貯水タンク10の固定部(取付部M1)により貯水タンク10を便器本体2に対して確実に固定し、安定して固定することができるため、貯水タンク10のがたつきを抑制することができる。
また、便器本体2が陶器製であっても、貯水タンク10のがたつきによる空気溜まりの発生を抑制することができるため、貯水タンク10内により多くの洗浄水量を貯留することができる。
【0050】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、便器本体2に対して固定される貯水タンク10の固定部(取付部M1)が、上下方向に互いに接合される上タンク部材T1及び下タンク部材T2のうちの下タンク部材T2に設けされると共に、上タンク部材T1よりも下タンク部材T2の方に対して多く設けられている。
したがって、貯水タンク10の固定部(取付部M1)を下タンク部材T2側に可能な限り集約化させることができる。これにより、貯水タンク10を便器本体2に対して組み付けた後に、貯水タンク10の固定部(取付部M1)をタンク取付部材48の被取付部M2に固定して便器本体2に対して固定した際に、組み付け誤差等を低減させることができる。
よって、貯水タンク10の傾きを抑制することができるため、貯水タンク10の傾きによる空気溜まりの発生を抑制することができる。
また、貯水タンク10内の洗浄水の重量は、主として下タンク部材T2により下側から支持される。
よって、貯水タンク10の固定部(取付部M1)については、上タンク部材T1よりも下タンク部材T2の方に対して多く設けた方が、貯水タンク10を便器本体2に対してより安定して固定することができるため、貯水タンク10の傾きをより低減させることができる。
さらに、貯水タンク10の固定部(取付部M1)について、下タンク部材T2よりも上タンク部材T1の方に対して多く設けた場合に比べて、固定部(取付部M1)に作用する固定荷重等により上タンク部材T1が変形し、貯水タンク10の上面44b,46bにおいて撓み等が発生することにより、貯水タンク10内に空気溜まりが発生し易くなるリスクを低減することができる。
また、貯水タンク10の固定部(取付部M1)を上タンク部材T1よりも下タンク部材T2に対して多く設けた方が、貯水タンク10の固定部(取付部M1)に要する上タンク部材T1の上方スペース等を削減することができる。これにより、貯水タンク10の上端高さ位置を可能な限り低く設定することができ、水洗大便器1の全体のローシルエット化を実現することができる。
【0051】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、
図15に示すように、便器本体2が、貯水タンク10の大タンク部44に対して前後方向に対向する側の面が上方から貯水タンク10の下方に向かって傾斜する傾斜面2kを形成している。
また、貯水タンク10の大タンク部44の前端部(前端面10g)が便器本体2の傾斜面2kに隣接して配置されると共に、この便器本体2の傾斜面2kに沿うように傾斜している。
これらにより、例えば、貯水タンク10の固定部(取付部M1)が破損する等のトラブルが発生して貯水タンク10が傾いた場合であっても、貯水タンク10の前端部(前端面10g)が、これと対向して隣接する便器本体2の傾斜面2kに対して当接することができる。
したがって、貯水タンク10が大きく傾いてしまうことを抑制することができるため、貯水タンク10の傾きによる空気溜まりの発生を確実に抑制することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 本発明の一実施形態による水洗大便器
2 便器本体
2a ボウル部
2b 排水トラップ管(排水トラップ部)
2c リム部
2d リム導水路
2e リム導水路の入口(リム導水路の入口部)
2f リム吐水口
2g リム部の上面
2h 排水トラップ管の入口部
2i 排水トラップ管の出口部
2j 支持面
2k 便器本体の側方且つ後方側の傾斜面
4 タンク装置
6 給水管
6a 給水ノズル(給水部)
8 吐水管
8a 吐水管の出口部(洗浄水供給管の出口部)
10 貯水タンク
10a 通水口(上方開口部)
10b 上タンク部材の下縁接合部
10c 下タンク部材の上縁接合部
10d 下タンク部材の後方側の底面
10e 下タンク部材の内側面
10f 下タンク部材の内側面
10g 貯水タンクの大タンク部及び下タンク部材の前端面
12 止水栓
14 バルブユニット
16 定流量弁
17 ダイヤフラム弁
18 電磁弁
20 連結ユニット
22 タンクユニット
24 水受けハウジング
24a 下方開口部
24b オーバーフロー口
26 オーバーフロー管
28 逆止弁
30 ポンプ
32 フロートスイッチ
34 水抜き栓
36 通水管
36a 通水管の上流端
38 吸引管
38a 吸引管の下流端
40 タンク本体
40a 上側タンク本体
40b 下側タンク本体
40c 上側タンク本体の下縁接合部
40d 下側タンク本体の上縁接合部
40e タンク本体の底面
42 防露材
42a 上側防露材
42b 下側防露材
42c 防露材の底面
44 大タンク部
44a 大タンク部の底面
44b 大タンク部の上面
44c 大タンク部の側壁面
46 小タンク部
46a 小タンク部の底面
46b 小タンク部の上面
46c 小タンク部の側壁面
48 タンク取付部材
50 ベースプレート(ベース部)
52 背面側支持プレート
54 ねじ
56 後方側大タンク部
56a 後方側大タンク部の底面
58 前方側大タンク部
58a 前方側大タンク部の前端
58b 前方側大タンク部の内側面
60 下方側大タンク部
60a 下方側大タンク部の底面
62 後方側小タンク部
62a 後方側小タンク部の底面
64 前方側小タンク部
64a 前方側小タンク部の前端
64b 前方側小タンク部の底面
64c 前方側小タンク部の内側面
66 貯水タンクの大タンク後方側取付部(大タンク側取付部)
66a 取付側係止部(係止部)
66b 係止突起(係止部)
66c 係止凹部(係止部)
68 貯水タンクの小タンク後方側取付部(小タンク側取付部)
68a 取付側係止部(係止部)
68b 係止突起(係止部)
68c 係止凹部(係止部)
70 貯水タンクの前方側取付部(大タンク側取付部、ねじ固定部)
70a 嵌合凹部
70b 上側ねじ穴
70c 嵌合凹部の前端
72 貯水タンクの前方側取付部(小タンク側取付部、ねじ固定部)
72a 嵌合凹部
72b 上側ねじ穴
74 タンク取付部材の後方側被取付部(大タンク側取付部)
74a 被取付側係止部(係止部)
74b 係止突起(係止部)
74c 傾斜面
76 タンク取付部材の後方側被取付部(小タンク側取付部)
76a 被取付側係止部(係止部)
76b 係止突起(係止部)
76c 傾斜面
78 タンク取付部材の前方側被取付部(大タンク側取付部、ねじ固定部)
78a 突出部
78b 下側ねじ穴
78c 突出部の前端
80 タンク取付部材の前方側被取付部(小タンク側取付部、ねじ固定部)
80a 突出部
80b 下側ねじ穴
80c 突出部の前端
82 ねじ部材
A1 貯水タンクを左右中央で二分割する鉛直面
A2 貯水タンクの大タンク部の上面の最高面
A3 貯水タンクの大タンク部の上面における通水口が形成される面の外側周囲の面
A4 貯水タンクの小タンク部の上面
A5 貯水タンクの小タンク部の上面
F 床面
C1 上側ねじ穴の中心軸線
C2 下側ねじ穴の中心軸線
H1 大タンク部の最低位置と最高位置との間の鉛直方向距離
G0 隙間
G1 段差
M1 貯水タンクの取付部(貯水タンクの固定部)
M2 タンク取付部材の被取付部
P0 貯水タンクの最低位置と最高位置との間の上下中央高さ位置
P1 大タンク部の底面の最低位置
P2 小タンク部の底面の最低位置
P3 大タンク部の上面の位置
P4 小タンク部の上面の位置
P5 前方側大タンク部の前端位置
P6 前方側小タンク部の前端位置
R 貯水タンクの各後方側取付部の移動方向
S1 便器本体の大タンク収容部
S2 便器本体の小タンク収容部
T1 貯水タンクの上タンク部材(上タンク部)
T2 貯水タンクの下タンク部材(下タンク部)
Ta 貯水タンクの上側タンク領域
Tb 貯水タンクの下側タンク領域
V1 大タンク部の容積
V2 小タンク部の容積
Va 貯水タンクの上側タンク領域の容積
Vb 貯水タンクの下側タンク領域の容積
W 外部壁面
W1 洗浄水