(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】車体後部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20220331BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20220331BHJP
B62D 25/04 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B62D25/08 K
B60J5/10
B62D25/04
(21)【出願番号】P 2018072482
(22)【出願日】2018-04-04
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡之
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/125172(WO,A1)
【文献】特開平07-246837(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19857385(DE,A1)
【文献】特開2001-328562(JP,A)
【文献】特開平04-334666(JP,A)
【文献】特開平09-150752(JP,A)
【文献】特開2003-220831(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0140693(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B60J 5/10
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のバックドア開口部の車幅方向外側部に配置され、車両上下方向に延びるバックピラーと、該バックピラーにヒンジを介して取り付けられた横開き可能なバックドアと、を備えている車体後部構造において、
前記バックピラーの内側には、前記ヒンジが取り付けられている第1の閉断面構造部と、前記バックドア開口部の開口縁を構成する第2の閉断面構造部が設けられ、
前記第1の閉断面構造部と前記第2の閉断面構造部は、車両前後方向に並んで
隣接して配置され、
前記第1の閉断面構造部の前
面と、第2の閉断面構造部の後
面とが接合されていることを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記第2の閉断面構造部は、少なくとも2つの内壁面を有しており、
前記第2の閉断面構造部の内側には、外側に少なくとも2つの平面部が設けられた第1の補強部材が配置され、
前記第1の補強部材の少なくとも2つの前記平面部が、対応する前記第2の閉断面構造部の前記内壁面に接合されており、
前記第1の閉断面構造
部と、前記第2の閉断面構造
部と、前記第1の補強部材とが重なる部分で接合されていることを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記第1の閉断面構造部の外側に設けられたヒンジ取付面部と、前記第1の補強部材の外側の平面部とが車両前後方向に並んで配置されており、
前記第1の閉断面構造部の前部に設けられた角部と、前記第1の補強部材の後部に設けられた角部とが、車幅方向で同じ位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記第2の閉断面構造部の車両前方側の車体側には、第2の補強部材が配置され、
前記第2の補強部材は、前記バックピラーと、前記バックピラーの車両前方側に配置されたセンターピラーとの間を繋ぐように、車両前後方向に延びていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の車体後部構造。
【請求項5】
車体のバックドア開口部の車幅方向外側部に配置され、車両上下方向に延びるバックピラーと、該バックピラーにヒンジを介して取り付けられた横開き可能なバックドアと、を備えている車体後部構造において、
前記バックピラーの内側には、前記ヒンジが取り付けられている第1の閉断面構造部と、前記バックドア開口部の開口縁を構成する第2の閉断面構造部が設けられ、
前記第1の閉断面構造部と前記第2の閉断面構造部は、車両前後方向に並んで配置され、
前記第1の閉断面構造部の前部と、第2の閉断面構造部の後部とが接合され、
前記第2の閉断面構造部は、少なくとも2つの内壁面を有しており、
前記第2の閉断面構造部の内側には、外側に少なくとも2つの平面部が設けられた第1の補強部材が配置され、
前記第1の閉断面構造部の外側に設けられたヒンジ取付面部と、前記第1の補強部材の外側の平面部とが車両前後方向に並んで配置されており、
前記第1の閉断面構造部の前部に設けられた角部と、前記第1の補強部材の後部に設けられた角部とが、車幅方向で同じ位置に配置されていることを特徴とする車体後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体後部のバックドアは、車体後部のバックドア開口部を開閉可能に、車体側に取り付けられている。当該バックドアには、例えば特許文献1に開示されているように、横開きのバックドアが知られている。
【0003】
車体後部のバックドア開口部の車幅方向外側部には、バックピラーが配置されている。当該バックピラーには、上下に間隔を空けて配置された2つのヒンジが取り付けられており、横開きのバックドアは、これらのヒンジを介してバックピラーに取り付けられている。
【0004】
特許文献1に開示された構造では、例えばバックピラー等を構成する車体パネルに設けられたヒンジ取付座面は、車幅方向内側に臨むように配置されている。このような配置は、ヒンジ取付座面を車両前方又は後方を臨むように配置する場合に比べ、バックドア開口部を広く設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
横開きのバックドアは、その構造上、一方の車幅方向側部に負荷が集中するため、必要な強度や剛性を得にくくなる可能性がある。例えば、特許文献1に開示されている構造では、車体側部の車体パネルに設けられたヒンジ取付座面に作用する荷重によって、ヒンジ取付座面周辺の車体パネルが変形することを抑制する必要がある。
【0007】
この例のヒンジ取付座面の前部及び後部には、縦壁が設けられている。前部の縦壁は、ヒンジ取付座面の前端から車幅方向内側の延びており、後部の縦壁は、ヒンジ取付座面の後端から車幅方向外側に延びている。このような構造では、前後の縦壁が車幅方向にずれて配置され、前後の縦壁がヒンジ取付面から延びる方向が異なるため、剛性が不十分になる可能性がある。また、車体パネルに発生するねじれ等の変形を十分に抑えることができない可能性がある。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、横開きのバックドアの取付部の剛性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明に係る車体後部構造は、車体のバックドア開口部の車幅方向外側部に配置され、車両上下方向に延びるバックピラーと、該バックピラーにヒンジを介して取り付けられた横開き可能なバックドアと、を備えている。当該車体後部構造において、前記バックピラーの内側には、前記ヒンジが取り付けられている第1の閉断面構造部と、前記バックドア開口部の開口縁を構成する第2の閉断面構造部が設けられ、前記第1の閉断面構造部と前記第2の閉断面構造部は、車両前後方向に並んで隣接して配置され、前記第1の閉断面構造部の前面と、第2の閉断面構造部の後面とが接合されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、横開きのバックドアの取付部の剛性を向上させることでできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る車体後部構造を有する車体を斜め後方から見た斜視図である。
【
図3】
図1のバックドア及びヒンジを取り外した状態のバックドア開口部の一部を示す斜視図である。
【
図4】
図1の車体後部を車両室内側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る車体後部構造の実施形態について、図面(
図1~
図5)を参照して説明する。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示し、矢印O方向は車幅方向における外側を示している。また、実施形態の説明における「前部(端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。
【0013】
本実施形態の車体後部構造では、
図1~
図3に示すように、バックピラー1と、テールエンドメンバ4と、該バックピラー1にヒンジ75を介して取り付けられた横開きのバックドア3とを備えている。さらに、当該車体後部構造は、複数のリンフォースメント30,40,60を有している。
【0014】
詳細な説明は省略するが、
図2に示すように、バックドア3は、バックドアインナパネル3b及びバックドアアウタパネル3aを有している。バックドアインナパネル3b及びバックドアアウタパネル3aは、間隔を空けた状態で、各パネル3a,3bの縁部で接合されている。バックドア3の側部には、後述するヒンジ75の可動部77が取り付けられている。
【0015】
バックピラー1は、
図3に示すように、車両上下方向に延びる部材で、車体後部のバックドア開口部8の車幅方向両側部に配置されている。当該バックピラー1は、車体の最外を構成するサイドボディアウタパネル(この例では、リアホイールハウジングパネル72)の車両後部に取り付けられている。テールエンドメンバ4は、車幅方向に延びる部材で、バックドア開口部8の車幅方向中間部に配置されている。テールエンドメンバ4の車幅方向両側部は、バックピラー1の下部に接続されている。
【0016】
バックピラー1は、
図2及び
図3に示すように、バックピラーインナパネル20と、該バックピラーインナパネル20の外側に配置されたバックピラーアウタパネル10と、を有している。
【0017】
バックピラーアウタパネル10は、ヒンジ取付面部11と、前側縦壁部12と、後側縦壁部13と、前側フランジ部14と、後側フランジ部15とを有している。
【0018】
図2及び
図3に示すように、ヒンジ取付面部11は、車幅方向内側を臨む壁面で、ヒンジ75が取り付けられている。前側縦壁部12は、ヒンジ取付面部11の前部から車幅方向内側に延び、車両上下方向に延びている。後側縦壁部13は、ヒンジ取付面部11の後部から車両後方に傾斜して突出し、車両上下方向に延びている。後側縦壁部13は、車両後方に向かうに従い、車幅方向外側に傾斜している。
【0019】
図2に示すように、前側フランジ部14は、前側縦壁部12の車幅方向内側から車両後方に突出し、車両上下方向に延びている。前側フランジ部14は、後述するバックピラーインナパネル20の内側フランジ部24に、インナリンフォースメント40を介して接合されている。後側フランジ部15は、後側縦壁部13の後端から車両後方に突出し、車両上下方向に延びている。後側フランジ部15は、後述するアウタリンフォースメント30と、リアホイールハウジングパネル72のフランジ部72aとに接合されている。
【0020】
図2に示すように、アウタリンフォースメント30は、前壁部31と外壁部32を備え、上面視で略L字状の断面を有している。前壁部31は、車幅方向に延び、且つ車両上下方向に延びており、バックピラーアウタパネル10の前側縦壁部12の前側面に接合されている。前壁部31の車幅方向内側端は、バックピラーアウタパネル10の前側縦壁部12の車幅方向中間部に配置され、前壁部31の車幅方向外側端は、バックピラーアウタパネル10のヒンジ取付面部11及び前側縦壁部12よりも車幅方向外側に配置されている。
【0021】
外壁部32は、前壁部31の車幅方向外側端から連続して車両後方に延び、且つ車両上下方向に延びており、バックピラーアウタパネル10のヒンジ取付面部11に対して車幅方向に間隔を空けて配置されている。当該外壁部32は、バックピラーアウタパネル10の後側フランジ部15の外側面に接合されている。
【0022】
外壁部32と、バックピラーアウタパネル10の後側フランジ部15と、リアホイールハウジングパネル72のフランジ部72aとは、3枚重ねで接合されている。ここで、3枚重ねの接合は、スポット溶接等により行われ、接合ポイントは、車両前後方向視で重なるように配置される。
【0023】
図2及び
図5に示すように、バックピラーアウタパネル10のヒンジ取付面部11及び後側縦壁部13と、アウタリンフォースメント30の前壁部31及び外壁部32とによって、第1の閉断面構造部51が形成されている。この例の第1の閉断面構造部51は、上面視で車両前後方向に延びる略台形状をなしている。第1の閉断面構造部51には、ヒンジ75が取り付けられている。
【0024】
ここで、ヒンジ75の取付けについて説明する。
図3及び
図4に示すように、ヒンジ取付面部11の下部には、4つの取付孔11aが設けられている。車両前後方向に間隔を空けて配置された2つの取付孔11aが、車両上下方向に間隔を空けて配置されている。また、ヒンジ取付面部11に間隔を空けて配置されたアウタリンフォースメント30の外壁部32にも、ヒンジ取付面部11の取付孔11aに対応する位置に、4つの取付孔(図示せず)が設けられている。
【0025】
ヒンジ75は、
図2に示すように、板状の固定部76と、板状の可動部77と、これらを連結する軸部材78とを有している。可動部77は、軸部の回動軸の回りを回動可能である。固定部76はヒンジ取付面部11に取り付けられ、可動部77はバックドア3の車幅方向側部に取り付けられている。
【0026】
固定部76には、4つの取付孔(図示せず)が設けられており、これらの取付孔は、ヒンジ取付面部11の取付孔11a及びアウタリンフォースメント30の外壁部32の取付孔に対応している。ヒンジ75の固定部76の取付孔、ヒンジ取付面部11の取付孔11a及びアウタリンフォースメント30の外壁部32の取付孔に、ボルト79aを貫通させて、外壁部32の外側に配置されたナット79bを締め付けることにより、ヒンジ75の固定部76は、ヒンジ取付面部11に固定される。
【0027】
第1の閉断面構造部51の内側には、スペーサ55が設けられている。当該スペーサ55は、ボルト79aを取り囲む円柱状の部材である。ボルト79a及びナット79bにより締結されたとき、スペーサ55の端面は、ヒンジ取付面部11の内壁面と、アウタリンフォースメント30の外壁部32の内壁面とに当接される。
【0028】
また、詳細な説明は省略するが、可動部77もバックドア3にボルト等により取り付けられている。
【0029】
続いて、バックピラーインナパネル20について説明する。バックピラーインナパネル20は、
図2に示すように、板状の部材が屈曲又は湾曲させることにより形成された部材であり、内側縦壁部21と、前側縦壁部22と、後側縦壁部23と、内側フランジ部24と、外側フランジ部25と、を有している。内側縦壁部21、前側縦壁部22及び後側縦壁部23は、バックドア開口部8の車幅方向外側の開口縁を構成している。
【0030】
内側縦壁部21は、
図2に示すように、車幅方向内側を臨み、車両上下方向に延びている。前側縦壁部22は、内側縦壁部21の前部から連続して車幅方向外側に延び、車両上下方向に延びている。前側縦壁部22は、車幅方向外側に向かうに従い車両前方に傾斜している。後側縦壁部23は、内側縦壁部21の後部から連続して車幅方向外側に突出し、車両上下方向に延びている。後側縦壁部23は、車幅方向外側に向かうに従い車両後方に傾斜している。
【0031】
内側フランジ部24は、後側縦壁部23の後部から車両後方に突出し、車両上下方向に延びている。当該内側フランジ部24は、車両後方に向かうに従い車幅方向内側にやや傾斜している。内側フランジ部24は、インナリンフォースメント40を介してバックピラーアウタパネル10の前側フランジ部14に接合されている。
【0032】
外側フランジ部25は、前側縦壁部22の車幅方向外側部から連続して車両前方に突出し、車両上下方向に延びている。外側フランジ部25は、インナリンフォースメント40に接合されている。この例のバックピラーインナパネル20は、上方視で車幅方向内側に凸となる横断面を有している。
【0033】
インナリンフォースメント40は、
図2に示すように、後壁部41と、外壁部42と、前側フランジ部43と、後側フランジ部44とを有している。
【0034】
後壁部41は、バックピラーインナパネル20の前側縦壁部22の車両後方側に間隔を空けて配置され、車幅方向及び車両上下方向に延びている。外壁部42は、後壁部41の車幅方向外端部から、連続して車両前方に延び、且つ車両上下方向に延びている。
【0035】
前側フランジ部43は、外壁部42の前端から車両前方に突出し、車両上下方向に延びている。前側フランジ部43は、バックピラーインナパネル20の外側フランジ部25に接合されている。後側フランジ部44は、後壁部41の車幅方向内側端から車両後方に突出し、車両上下方向に延びている。後側フランジ部44は、バックピラーインナパネル20の内側フランジ部24の外側面と、バックピラーアウタパネル10の前側フランジ部14の内側面に接合されている。
【0036】
すなわち、バックピラーインナパネル20の内側フランジ部24、バックピラーアウタパネル10の前側フランジ部14、及びインナリンフォースメント40の後側フランジ部44は、3枚重ねで接合されている。ここで、3枚重ねの接合は、スポット溶接等により行われ、接合ポイントは、車幅方向視で重なるように配置される。
【0037】
図2に示すように、バックピラーインナパネル20の内側縦壁部21及び前側縦壁部22と、インナリンフォースメント40の後壁部41及び外壁部42とによって、第2の閉断面構造部52が形成されている。この例の第2の閉断面構造部52は、上面視で車幅方向に延びる略台形状をなし、バックドア開口部8の開口縁を構成している。
【0038】
第1の閉断面構造部51と第2の閉断面構造部52は、車両前後方向に並んで配置されている。この例では、第1の閉断面構造部51が、第2の閉断面構造部52の車両後方に並んで配置され、第1の閉断面構造部51の前部と、第2の閉断面構造部52の後部とが接合されている。詳細には、第1の閉断面構造部51を構成するアウタリンフォースメント30の前壁部31と、第2の閉断面構造部52を構成するインナリンフォースメント40の後壁部41が接合されている。
【0039】
第1の閉断面構造部51にヒンジ取付面部11を設けることにより、バックドア3の自重等による荷重により、ヒンジ取付面部11の変形を抑制することが可能となる。また、第1の閉断面構造部51及び第2の閉断面構造部52を隣接して並べることにより、ヒンジ取付面部11に作用する応力を、隣接する第1及び第2の閉断面構造部51,52に分散することが可能となり、その結果、車体の変形を低減させることができる。さらに、第1の閉断面構造部51の前面と第2の閉断面構造部52の後面を面接合することにより、当該接合部における局所的な応力の集中が緩和され、その結果、車体の変形を低減させることができる。
【0040】
ヒンジ75は、上下に間隔を空けて配置されるが、本実施形態でが、上側のヒンジの取付けについての説明は省略している。本実施形態の第1の閉断面構造51及び第2の閉断面構造52を設ける構造は、レイアウト上、バックピラー1のバックピラーインナパネル20とバックピラーアウタパネル10との間の空間が大きく設定されやすい下側のヒンジ75の取付構造を補強するのに有効である。
【0041】
本実施形態の第2の閉断面構造部52の内側には、
図2に示すように、柱状リンフォースメント(第1の補強部材)60が配置されている。柱状リンフォースメント60は、車両上下方向に延びる前面(平面部)61、外面(平面部)64、内面(平面部)63、及び後面(平面部)62を有しており、上面視で4角形の横断面を有している。一方、第2の閉断面構造部52は、少なくとも2つの平らな内壁面を有している。この例の第2の閉断面構造部52は、車両上下方向に延びる4つの平らな内壁面を有している。
【0042】
柱状リンフォースメント60の前面61、外面64及び後面62は、第2の閉断面構造部52の対応する内壁面に接合されている。詳細には、前面61は、バックピラーインナパネル20の前側縦壁部22の内壁面に接合され、外面64は、インナリンフォースメント40の外壁部42の内壁面に接合され、後面62は、インナリンフォースメント40の後壁部41の内壁面に接合されている。
【0043】
本実施形態では、第1の閉断面構造部51と、第2の閉断面構造部52と、柱状リンフォースメント60とが、重なる部分が、3枚重ねで接合されている。詳細には、柱状リンフォースメント60の後面62と、インナリンフォースメント40の後壁部41と、アウタリンフォースメント30の前壁部31とが、3枚重ねで接合されている。ここで、3枚重ねの接合は、スポット溶接等により行われ、接合ポイントは、車両前後方向視で重なるように配置される。
【0044】
柱状リンフォースメント60を設けることにより、第2の閉断面構造部52の変形を抑制することができる。ヒンジ取付面部11から、第1及び第2の閉断面構造部51,52を介して、伝達される入力荷重を、柱状リンフォースメント60で受けることができ、第1の閉断面構造部51及びヒンジ取付面部11の変形を低減させることができる。さらに、第2の閉断面構造部52の変形を抑制することで、ヒンジ取付面部11が受ける荷重応力を、第2の閉断面構造部52を介して、周辺の車体構造体に確実に分散させることができる。
【0045】
図2に示すように、第1の閉断面構造部51を構成するヒンジ取付面部11と、柱状リンフォースメント60の内面63とが、車両前後方向に連続して並んで配置されている。また、第1の閉断面構造部51の前部に設けられた角部19と、柱状リンフォースメント60の後部に設けられた角部69とが、車幅方向で同じ位置に配置されている。
【0046】
ここで、第1の閉断面構造部51の前部に設けられた角部19は、バックピラーアウタパネル10のヒンジ取付面部11とアウタリンフォースメント30の前壁部31によって構成される角部19である。また、柱状リンフォースメント60の後部に設けられた角部69は、内面63と後面62によって構成される角部69である。
【0047】
ヒンジ取付面部11と、柱状リンフォースメント60の平面部(内面63)とを、車両前後方向に沿って並べることにより、ヒンジ取付面部11への入力荷重を、柱状リンフォースメント60の内面63が、面内方向で受けることになり、引っ張り方向又は圧縮方向で受ける。このため、より安定して荷重に対して変形を抑えることができる。
【0048】
第2の閉断面構造部52の前方側の車体側部には、リアホイールインナパネル(第2の補強部材)71及びリアホイールハウジングパネル(第2の補強部材)72が取り付けられている。リアホイールインナパネル71及びリアホイールハウジングパネル72は、サイドボディを構成する部材であり、
図4及び
図5に示すように、バックピラー1と、バックピラー1の前方側に配置されたセンターピラー2との間を繋ぐように、車両前後方向に延びている。
【0049】
ヒンジ取付面部11からの荷重入力を、リアホイールインナパネル71及びリアホイールハウジングパネル72に分散させることができ、その結果、当該入力荷重を、サイドボディ全体に分散させ、ヒンジ取付面部11に応力が集中することによって発生する変形を低減させることができる。
【0050】
以上の説明から分かるように、本実施形態の車体後部構造により、横開きのバックドア3の取付部の取付剛性を向上させることが可能となる。
【0051】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0052】
本実施形態では、柱状リンフォースメント60の3面(前面61、後面62及び外面64)が、第2の閉断面構造部52の内壁面に接合されているが、これに限らない。例えば、前面61及び後面62の2面が内壁面に接合されていればよい。
【符号の説明】
【0053】
1 バックピラー
2 センターピラー
3 バックドア
4 テールエンドメンバ
8 バックドア開口部
10 バックピラーアウタパネル
11 ヒンジ取付面部
11a 取付孔
12 前側縦壁部
13 後側縦壁部
14 前側フランジ部
15 後側フランジ部
19 角部
20 バックピラーインナパネル
21 内側縦壁部
22 前側縦壁部
23 後側縦壁部
24 内側フランジ部
25 外側フランジ部
30 アウタリンフォースメント
31 前壁部
32 外壁部
40 インナリンフォースメント
41 後壁部
42 外壁部
43 前側フランジ部
44 後側フランジ部
51 第1の閉断面構造部
52 第2の閉断面構造部
55 スペーサ
60 柱状リンフォースメント(第1の補強部材)
61 前面(平面部)
62 後面(平面部)
63 内面(平面部)
64 外面(平面部)
69 角部
71 リアホイールインナパネル(第2の補強部材)
72 リアホイールハウジングパネル(第2の補強部材)
75 ヒンジ
76 固定部
77 可動部
78 軸部材
79a ボルト
79b ナット