(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】蓄電素子、蓄電素子を備える蓄電装置、蓄電素子を備える移動体、及び蓄電素子を備える蓄電システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220331BHJP
H01M 6/02 20060101ALI20220331BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20220331BHJP
H01G 11/22 20130101ALI20220331BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20220331BHJP
H01G 11/82 20130101ALI20220331BHJP
H01G 11/76 20130101ALI20220331BHJP
H01M 10/0587 20100101ALN20220331BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20220331BHJP
H01M 10/0566 20100101ALN20220331BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M6/02 Z
H01G11/10
H01G11/22
H01G11/52
H01G11/82
H01G11/76
H01M10/0587
H01M10/052
H01M10/0566
(21)【出願番号】P 2018519521
(86)(22)【出願日】2017-05-22
(86)【国際出願番号】 JP2017018973
(87)【国際公開番号】W WO2017204137
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2016102569
(32)【優先日】2016-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】森 澄男
(72)【発明者】
【氏名】中井 健太
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-324568(JP,A)
【文献】特開2008-210729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 50/40
H01M 6/02
H01G 11/10
H01G 11/22
H01G 11/52
H01G 11/82
H01G 11/76
H01M 10/0587
H01M 10/052
H01M 10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回された電極を有する複数の電極体と、
電解液と、
前記複数の電極体を前記電解液とともに収容するケースと、
前記ケースの外面から突出し且つ前記複数の電極体と導通する外部端子と、を備え、
前記複数の電極体は、各々の巻回中心軸が互いに平行な状態で前記外部端子の突出方向に並び、
隣り合う電極体同士は、該電極体の外周面を互いに接触させることによって液絡させている、蓄電素子。
【請求項2】
巻回された電極を有する複数の電極体と、
電解液と、
巻回中心軸が互いに平行となる状態で前記複数の電極体を前記電解液とともに収容するケースと、を備え、
前記ケース内に溜まっている前記電解液の量は、収容された電極体の巻回中心軸が水平で且つ一端の電極体が他端の電極体より上方に位置するように前記ケースが配置されたときに、液面が該ケース内において最も上に位置する電極体の下端より低くなるように設定され、
隣り合う電極体同士は、該電極体の外周面を互いに接触させることによって液絡させている、蓄電素子。
【請求項3】
前記隣り合う電極体同士は、充放電過程において前記外周面を常に液絡させている、請求項1又は2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記複数の電極体のそれぞれは、セパレータを有し、
前記複数の電極体のそれぞれにおける前記電極と前記セパレータとは、積層された状態で巻回されており、
前記電極体の外周面は、前記セパレータによって構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
巻回された電極を有する複数の電極体と、
電解液と、
前記複数の電極体を前記電解液とともに収容するケースと、
前記ケースの外面から突出し且つ前記複数の電極体と導通する外部端子と、を備え、
前記複数の電極体は、各々の巻回中心軸が互いに平行な状態で前記外部端子の突出方向に並び、
隣り合う電極体同士は、該電極体の外周面を互いに液絡させ、
前記複数の電極体のそれぞれは、セパレータを有し、
前記複数の電極体のそれぞれにおける前記電極と前記セパレータとは、積層された状態で巻回されており、
前記電極体の外周面は、前記セパレータによって構成され、
前記複数の電極体のそれぞれは、前記外周面を含み且つ前記セパレータのみが巻回されている外側領域を有し、
前記隣り合う電極体のうちの一方の電極体の外側領域の前記セパレータの巻数は、前記隣り合う電極体のうちの他方の電極体の外側領域の前記セパレータの巻数より多い、蓄電素子。
【請求項6】
巻回された電極を有する複数の電極体と、
電解液と、
巻回中心軸が互いに平行となる状態で前記複数の電極体を前記電解液とともに収容するケースと、を備え、
前記ケース内に溜まっている前記電解液の量は、収容された電極体の巻回中心軸が水平で且つ一端の電極体が他端の電極体より上方に位置するように前記ケースが配置されたときに、液面が該ケース内において最も上に位置する電極体の下端より低くなるように設定され、
隣り合う電極体同士は、該電極体の外周面を互いに液絡させ、
前記複数の電極体のそれぞれは、セパレータを有し、
前記複数の電極体のそれぞれにおける前記電極と前記セパレータとは、積層された状態で巻回されており、
前記電極体の外周面は、前記セパレータによって構成され
前記複数の電極体のそれぞれは、前記外周面を含み且つ前記セパレータのみが巻回されている外側領域を有し、
前記隣り合う電極体のうちの一方の電極体の外側領域の前記セパレータの巻数は、前記隣り合う電極体のうちの他方の電極体の外側領域の前記セパレータの巻数より多い、蓄電素子。
【請求項7】
前記複数の電極体は、巻回中心軸と直交する方向に並び、
前記直交する方向の一方側にある前記電極体ほど、前記外側領域における前記セパレータの巻数が多い、請求項5又は6に記載の蓄電素子。
【請求項8】
巻回された電極を有する複数の電極体と、
電解液と、
前記複数の電極体を前記電解液とともに収容するケースと、
前記ケースの外面から突出し且つ前記複数の電極体と導通する外部端子と、を備え、
前記複数の電極体は、各々の巻回中心軸が互いに平行な状態で前記外部端子の突出方向に並び、
隣り合う電極体同士は、該電極体の外周面を互いに液絡させ、
前記複数の電極体のそれぞれにおいて、前記電極は、該電極体における直交する方向の径が長径と短径となるように巻回されており、
前記複数の電極体は、前記ケースの内部において、前記外部端子の突出方向と前記電極体の短径方向とが一致するように配置されている、蓄電素子。
【請求項9】
巻回された電極を有する複数の電極体と、
電解液と、
巻回中心軸が互いに平行となる状態で前記複数の電極体を前記電解液とともに収容するケースと、
前記ケースの外面から突出する外部端子と、を備え、
前記ケース内に溜まっている前記電解液の量は、収容された電極体の巻回中心軸が水平で且つ一端の電極体が他端の電極体より上方に位置するように前記ケースが配置されたときに、液面が該ケース内において最も上に位置する電極体の下端より低くなるように設定され、
隣り合う電極体同士は、該電極体の外周面を互いに液絡させ、
前記複数の電極体のそれぞれにおいて、前記電極は、該電極体における直交する方向の径が長径と短径となるように巻回されており、
前記複数の電極体は、前記ケースの内部において、前記外部端子の突出方向と前記電極体の短径方向とが一致するように配置されている、蓄電素子。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子を保持する保持部材と、
前記外部端子に接続されるバスバと、を備え、
前記複数の蓄電素子は、前記電極体の長径方向に並び、
前記保持部材は、前記蓄電素子の並び方向における前記複数の蓄電素子の両側に配置される一対の終端部材と、前記一対の終端部材を連結する連結部と、を有し、
前記バスバは、異なる蓄電素子の外部端子同士を接続する、蓄電装置。
【請求項11】
各蓄電素子の前記ケースは、開口部を有するケース本体と、前記外部端子が配置され且つ前記開口部を塞ぐ蓋と、を有し、
前記ケースの内部において前記蓋と前記電極体との間に隙間が形成されている、請求項10に記載の蓄電装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の蓄電素子と、
前記蓄電素子が搭載される移動体本体と、
前記蓄電素子から供給される電力によって前記移動体本体を駆動する駆動部と、を備え、
前記蓄電素子は、前記ケースの外面から突出する外部端子を有し、
前記蓄電素子は、前記ケースにおける前記外部端子が突出している部位である端子側部位が、該ケースにおける前記端子側部位と反対側の部位より上方に位置するように配置される、移動体。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の蓄電素子と、
前記蓄電素子が載置される蓄電システム本体と、
前記蓄電素子の外部端子と接続され、且つ、外部から電力の入力及び外部への電力の出力が可能な入出力端子と、を備え、
前記蓄電素子は、前記ケースにおける前記外部端子が突出している部位である端子側部位が、該ケースにおける前記端子側部位と反対側の部位より上方に位置するように配置される、蓄電システム。
【請求項14】
電極が巻回される複数の電極体と、
前記複数の電極体を収容するケースと、
前記ケースの外面から突出し且つ前記複数の電極体と導通する外部端子と、を備え、
前記複数の電極体のそれぞれにおいて、前記電極が該電極体における直交する方向の径が長径と短径となるように巻回されており、
前記複数の電極体は、前記ケースの内部において、巻回中心軸が互いに平行で且つ前記外部端子の突出方向と前記電極体の短径方向とが一致した状態で並び、
前記ケースは、開口部を有するケース本体と、前記開口部を塞ぎ且つ前記外部端子が配置される蓋と、を有し、
前記ケースの内部において前記蓋と前記電極体との間に隙間が形成され、
隣り合う電極体同士は、該電極体の外周面を互いに接触させることによって液絡させている、蓄電素子。
【請求項15】
電極が巻回される複数の電極体と、
電解液と、
前記複数の電極体を
前記電解液とともに収容するケースと、
前記ケースの外面から突出し且つ前記複数の電極体と導通する外部端子と、
前記電解液を吸い上げる少なくとも一つの液絡部材と、を備え、
前記複数の電極体のそれぞれにおいて、前記電極が該電極体における直交する方向の径が長径と短径となるように巻回されており、
前記複数の電極体は、前記ケースの内部において、巻回中心軸が互いに平行で且つ前記外部端子の突出方向と前記電極体の短径方向とが一致した状態で並び、
前記ケースは、開口部を有するケース本体と、前記開口部を塞ぎ且つ前記外部端子が配置される蓋と、を有し、
前記ケースの内部において前記蓋と前記電極体との間に隙間が形成され、
前記液絡部材は、前記電極体の周囲を囲まずに隣り合う電極体の外周面とそれぞれ接触した状態で該隣り合う電極体に挟み込まれ、
前記隣り合う電極体同士は、互いの外周面を前記液絡部材によって液絡させている、蓄電素子。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子を保持する保持部材と、
前記外部端子に接続されるバスバと、を備え、
前記複数の蓄電素子は、前記電極体の長径方向に並び、
前記保持部材は、前記蓄電素子の並び方向における前記複数の蓄電素子の両側に配置される一対の終端部材と、前記一対の終端部材を連結する連結部と、を有し、
前記バスバは、異なる蓄電素子の外部端子同士を接続する、蓄電装置。
【請求項17】
巻回された電極を有する複数の電極体と、
電解液と、
前記複数の電極体を前記電解液とともに収容するケースと、
前記ケースの外面から突出し且つ前記複数の電極体と導通する外部端子と、
前記電解液を吸い上げる少なくとも一つの液絡部材と、を備え、
前記複数の電極体は、各々の巻回中心軸が互いに平行な状態で前記外部端子の突出方向に並び、
前記液絡部材は、前記電極体の周囲を囲まずに隣り合う電極体の外周面とそれぞれ接触した状態で該隣り合う電極体に挟み込まれ、
前記隣り合う電極体同士は、互いの外周面を前記液絡部材によって液絡させている、蓄電素子。
【請求項18】
巻回された電極を有する複数の電極体と、
電解液と、
巻回中心軸が互いに平行となる状態で前記複数の電極体を前記電解液とともに収容するケースと、
前記電解液を吸い上げる少なくとも一つの液絡部材と、を備え、
前記ケース内に溜まっている前記電解液の量は、収容された電極体の巻回中心軸が水平で且つ一端の電極体が他端の電極体より上方に位置するように前記ケースが配置されたときに、液面が該ケース内において最も上に位置する電極体の下端より低くなるように設定され、
前記液絡部材は、前記電極体の周囲を囲まずに隣り合う電極体の外周面とそれぞれ接触した状態で該隣り合う電極体に挟み込まれ、
前記隣り合う電極体同士は、互いの外周面を前記液絡部材によって液絡させている、蓄電素子。
【請求項19】
前記液絡部材は、連続気泡を有する多孔質部材によって形成される、請求項15、17又は18に記載の蓄電素子。
【請求項20】
前記液絡部材は、充電又は放電による前記電極体の膨張又は収縮に伴って、前記隣り合う電極体が並ぶ方向に縮み又は伸びる、請求項15、17~19のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項21】
前記電極体は、三つ以上配置され、
巻回中心軸と直交する方向における前記電極体の一方側に配置される前記液絡部材の保持できる前記電解液の量は、前記直交する方向における前記電極体の他方側に配置される前記液絡部材の保持できる前記電解液の量より多い、請求項15、17~20のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2016-102569号の優先権を主張し、日本国特願2016-102569号の内容は、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、複数の巻回型の電極体を備える蓄電素子、前記蓄電素子を備える蓄電装置、前記蓄電素子を備える移動体、及び前記蓄電素子を備える蓄電システムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来から複数の電極組立体を備えた二次電池が知られている(特許文献1参照)。この二次電池は、
図18に示すように、複数の電極組立体101、第一集電板102、ケース103、及びキャップ組立体104を含む。
【0004】
複数の電極組立体101のそれぞれは、薄い板型或いは膜型に形成された第一電極板、セパレータ、及び第二電極板を積層して巻回することで形成される。これら複数の電極組立体101は、ケース103内において一方向に並列して配置される。このとき、隣り合う電極組立体101の間に、隙間が形成されている。
【0005】
前記一方向に配置される複数の電極組立体101の一側端部に、前記第一電極板と電気的に連結されるための第一集電板102が結合される。また、複数の電極組立体101の他側端部に、前記第二電極板と電気的に連結されるために極性を有するケース103が接触する。このとき、第一集電板102と電極組立体101の一側端部(前記第一電極板)とは、溶接によって結合されている。また、ケース103と電極組立体101の他側端部(前記第二電極板)とも、溶接によって結合されている。
【0006】
ケース103は、電解液、複数の電極組立体101、及び第一集電板102が収納されるように、底部105と、底部105から延長された側壁部106と、を含んでいる。このケース103は、導電性金属によって形成され、一つの極性を有する電極の役割をする。即ち、ケース103は、複数の電極組立体101の他側端部(前記第二電極板)と電気的に連結され、第二集電板としての役割をする。
【0007】
キャップ組立体104は、ケース103を密封するキャッププレート107と、キャッププレート107を貫通して第一集電板102と連結される第一電極端子108と、第一電極端子108に形成されたねじ山に沿って締結されて、第一電極端子108をキャッププレート107に固定する第一ナット109と、を含む。
【0008】
以上の二次電池100では、各電極組立体101の巻回中心軸が水平になるようにケース103が配置される、より具体的には、一端(例えば、
図18における左端)の電極組立体101が他端(例えば、
図18における右端)の電極組立体101より上方に位置するようにケース103が配置されると、一部の電極組立体101しかケース103内に溜まっている電解液(余剰電解液)に接しない。このため、二次電池100では、前記姿勢のままで充放電が繰り返されると、複数の電極組立体101のうちの余剰電解液に接していない電極組立体101では電解液不足が生じる。このように、複数の電極組立体101のうちの一部に電解液不足が生じると、二次電池100全体での出力低下が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本実施形態は、複数の巻回型の電極体と、巻回中心軸が互いに平行となる状態で複数の電極体を電解液とともに収容するケースとを備え、各電極体の巻回中心軸が水平で且つ一端の電極体が他端の電極体より上方に位置するようにケースが配置されたときに、上側の電極体に電解液が供給される蓄電素子、前記蓄電素子を備える蓄電装置、前記蓄電素子を備える移動体、及び前記蓄電素子を備える蓄電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態の蓄電素子は、
電極が巻回される複数の電極体と、
電解液と、
前記複数の電極体を前記電解液とともに収容するケースと、
前記ケースの外面から突出し且つ前記複数の電極体と導通する外部端子と、を備え、
前記複数の電極体は、巻回中心軸が互いに平行な状態で前記外部端子の突出方向に並び、
隣り合う電極体同士は、該電極体の外周面を互いに液絡させている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III位置における断面図である。
【
図5】
図5は、前記蓄電素子における余剰電解液の量を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第二実施形態に係る蓄電素子の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、第三実施形態に係る蓄電装置の一部を省略した斜視図である。
【
図8】
図8は、前記蓄電装置の一部を省略した分解斜視図である。
【
図9】
図9は、前記蓄電装置が備える蓄電素子の分解斜視図である。
【
図11】
図11は、前記蓄電素子が有する電極体を説明するための図である。
【
図13】
図13は、蓄電システムを説明するための模式図である。
【
図14】
図14は、他実施形態の蓄電素子における複数の電極体の配置を説明するための図である。
【
図15】
図15は、他実施形態の蓄電素子における複数の電極体の配置を説明するための図である。
【
図16】
図16は、電極体の外側領域を説明するための断面の模式図である。
【
図17】
図17は、第一又は第二実施形態に係る蓄電素子を含む蓄電装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の蓄電素子は、
巻回された電極を有する複数の電極体と、
電解液と、
前記複数の電極体を前記電解液とともに収容するケースと、
前記ケースの外面から突出し且つ前記複数の電極体と導通する外部端子と、を備え、
前記複数の電極体は、巻回中心軸が互いに平行な状態で前記外部端子の突出方向に並び、
隣り合う電極体同士は、該電極体の外周面を互いに液絡させている。
【0014】
かかる構成によれば、隣り合う電極体同士が、外周面を互いに液絡させることで、各電極体の巻回中心軸が水平で且つ一端の電極体が他端の電極体より上方に位置するようにケースが配置されても、電解液が下側の電極体から上側の電極体に供給される。これにより、ケース内に溜まっている電解液(以下、「余剰電解液」とも称する。)を下側の電極体から上側の電極体に供給可能となる。
【0015】
また、本実施形態の蓄電素子は、
巻回された電極を有する複数の電極体と、
電解液と、
巻回中心軸が互いに平行となる状態で前記複数の電極体を前記電解液とともに収容するケースと、を備え、
前記ケース内に溜まっている前記電解液の量は、収容された電極体の巻回中心軸が水平で且つ一端の電極体が他端の電極体より上方に位置するように前記ケースが配置されたときに、液面が該ケース内において最も上に位置する電極体の下端より低くなるように設定され、
隣り合う電極体同士は、該電極体の外周面を互いに液絡させている。
【0016】
かかる構成によれば、隣り合う電極体同士が、外周面を互いに液絡させることで、各電極体の巻回中心軸が水平で且つ一端の電極体が他端の電極体より上方に位置するようにケースが配置されたときに該ケース内において余剰電解液(ケース内に溜まっている電解液)の液面より上側に電極体が位置していても、電解液が下側の電極体から上側の電極体に供給されるため、余剰電解液が前記液面より上側に位置する電極体に供給される。
【0017】
前記蓄電素子では、
前記隣り合う電極体同士は、充放電過程において前記外周面を常に液絡させてもよい。
【0018】
かかる構成によれば、充放電によって電極体の巻回中心軸と直交する断面が膨張・収縮しても隣り合う電極体の外周面同士が常に液絡しているため、各電極体の巻回中心軸が水平になるようにケースが配置されても、余剰電解液が下側の電極体から上側の電極体に常に供給され続ける。
【0019】
前記蓄電素子では、
前記隣り合う電極体同士は、前記外周面を互いに接触させることによって液絡させてもよい。
【0020】
このように、隣り合う電極体の外周面同士が互いに接触していることで、各電極体の巻回中心軸が水平になるようにケースが配置されても、電解液が下側の電極体から上側の電極体に供給される。
【0021】
前記蓄電素子では、
前記複数の電極体のそれぞれは、絶縁性を有するセパレータを有し、
前記複数の電極体のそれぞれにおける前記電極と前記セパレータとは、積層された状態で巻回されており、
前記電極体の外周面は、前記セパレータによって構成されてもよい。
【0022】
かかる構成によれば、複数の電極体のそれぞれの外周面が絶縁性を有するセパレータによって構成されているため、電極体間の絶縁が確実に図られる。また、電極とセパレータとが積層された状態で巻回されている電極体では、電解液が、電極において巻回方向(周方向)に移動するのに加え、セパレータにおいて厚み方向及び巻回方向(周方向)に移動するため、電極体の外周面に供給された電解液は、電極体の巻回中心部まで効率よく供給される(移動する)。しかも、セパレータの圧縮性及び復元性が電極と比べてよいため、電極体における電極の膨張・収縮をセパレータが吸収することができ、これにより、充放電によって電極が収縮・膨張したときの隣接する電極体同士の離間が抑えられる。
【0023】
前記蓄電素子では、
前記複数の電極体のそれぞれは、前記外周面を含み且つ前記セパレータのみが巻回されている外側領域を有し、
前記隣り合う電極体のうちの一方の電極体の外側領域の前記セパレータの巻数は、前記隣り合う電極体のうちの他方の電極体の外側領域の前記セパレータの巻数より多くてもよい。
【0024】
かかる構成によれば、各電極体の巻回中心軸が水平になり且つ前記一方の電極体が前記他方の電極体より上側になるようにケースが配置されたときに、下側の電極体(前記他方の電極体)の外側領域より多くの電解液が上側の電極体(前記一方の電極体)の外側領域に保持されているため、かかる姿勢で該蓄電素子を使用し続けたときに、前記下側の電極体に比べて余剰電解液が供給され難い前記上側の電極体での電解液不足を防ぐことができる。
【0025】
前記蓄電素子では、
前記複数の電極体は、巻回中心軸と直交する方向に並び、
前記直交する方向の一方側にある前記電極体ほど、前記外側領域における前記セパレータの巻数が多くてもよい。
【0026】
かかる構成によれば、各電極体の巻回中心軸が水平になり且つ前記直交する方向の一方側が上側となるようにケースが配置されたときに、上側(前記直交する方向の一方側)の前記電極体ほど外側領域により多くの電解液が保持されているため、かかる姿勢で該蓄電素子を使用し続けたときに、下側(前記直交する方向の他方側)の電極体に比べて余剰電解液が供給され難い上側の電極体での電解液不足をより好適に防ぐことができる。
【0027】
前記蓄電素子では、
前記隣り合う電極体の外周面とそれぞれ接触可能であり且つ前記電解液を吸い上げる少なくとも一つの液絡部材を備え、
前記隣り合う電極体同士は、互いの外周面を前記液絡部材によって液絡させてもよい。
【0028】
かかる構成によれば、液絡部材が電解液を吸い上げるため、各電極体の巻回中心軸が水平になるようにケースが配置されても、電解液が液絡部材を通じて下側の電極体から上側の電極体に供給される。
【0029】
前記蓄電素子では、
前記液絡部材は、連続気泡を有する多孔質部材によって形成されてもよい。
【0030】
かかる構成によれば、液絡部材がより効果的に電解液を吸い上げることができるため、各電極体の巻回中心軸が水平になるようにケースが配置されたときに、下側の電極体から上側の電極体により効果的に電解液が供給される。
【0031】
前記蓄電素子では、
前記液絡部材は、充電又は放電による前記電極体の膨張又は収縮に伴って、前記隣り合う電極体が並ぶ方向に縮み又は伸びてもよい。
【0032】
液絡部材が蓄電素子の充放電に伴う電極体の外周面間の距離の変動に追従して伸縮するため、各電極体の巻回中心軸が水平になるようにケースが配置された状態で蓄電素子が充放電されて電極体が膨張又は収縮しても、隣り合う電極体の外周面同士が液絡部材によって液絡し続けるため、電解液が下側の電極体から上側の電極体に供給され続ける。
【0033】
前記蓄電素子では、
前記電極体は、三つ以上配置され、
巻回中心軸と直交する方向における前記電極体の一方側に配置される前記液絡部材の保持できる前記電解液の量は、前記直交する方向における前記電極体の他方側に配置される前記液絡部材の保持できる前記電解液の量より多くてもよい。
【0034】
かかる構成によれば、各電極体の巻回中心軸が水平になるように、且つ前記一方側に配置される液絡部材が前記他方側に配置される液絡部材より上側となるようにケースが配置されたときに、上側(前記一方側)の液絡部材が下側(前記他方側)の液絡部材より保持できる電解液の量が多い。このため、かかる姿勢で該蓄電素子を使用し続けたときに、下側の電極体(前記下側の液絡部材に接し且つ該下側の液絡部材の上側にある電極体)に比べて余剰電解液が供給され難い上側の電極体(前記上側の液絡部材に接し且つ該上側の液絡部材の上側にある電極体)での電解液不足の発生を防ぐことができる。
【0035】
前記蓄電素子では、
前記複数の電極体のそれぞれにおいて、前記電極は、該電極体における直交する方向の径が長径と短径となるように巻回されており、
前記複数の電極体は、前記ケースの内部において、前記外部端子の突出方向と前記電極体の短径方向とが一致するように配置されてもよい。
【0036】
短径と長径とが生じるように電極が巻回されている電極体では、充電時に短径方向の膨らみが長径方向の膨らみより大きくなるため、かかる構成によれば、充電時における前記長径方向へのケースの膨らみを抑えることができる。
【0037】
本実施形態の蓄電装置は、
上記の長径と短径を有する電極体を有する複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子を保持する保持部材と、
前記外部端子に接続されるバスバと、を備え、
前記複数の蓄電素子は、前記電極体の長径方向に並び、
前記保持部材は、前記蓄電素子の並び方向における前記複数の蓄電素子の両側に配置される一対の終端部材と、前記一対の終端部材を連結する連結部と、を有し、
前記バスバは、異なる蓄電素子の外部端子同士を接続する。
【0038】
かかる構成によれば、充電時において、複数の蓄電素子のそれぞれのケースにおける蓄電素子の並び方向(電極体の長径方向)の膨らみが抑えられるため、保持部材に加わる力(間隔が広がる方向に一対の終端部材を押し広げる力)が抑えられる。
【0039】
しかも、充電時における蓄電素子の並び方向へのケースの膨らみが抑えられる、即ち、前記並び方向における蓄電素子の外部端子同士の間隔の変化が抑えられるため、バスバと外部端子との接続部位における前記間隔の変化に起因する応力発生が抑えられ、これにより、充放電での電極体の膨張・収縮に起因するバスバと外部端子との接続部位の損傷を防ぐことができる。
【0040】
前記蓄電装置では、
各蓄電素子の前記ケースは、開口部を有するケース本体と、前記外部端子が配置され且つ前記開口部を塞ぐ蓋と、を有し、
前記ケースの内部において前記蓋と前記電極体との間に隙間が形成されてもよい。
【0041】
かかる構成によれば、充電時の電極体の短径方向の膨張が前記隙間に吸収され、ケースの前記短径方向への膨らみを抑えることができる。即ち、電極体の長径方向と蓄電素子の並び方向とを一致させることで前記並び方向へのケースの膨みを抑えて充電時の保持部材に加わる力(即ち、一対の終端部材を押し広げる力)が抑えられると共に、電極体の膨張し易い方向(短径方向)に形成された電極体とケース(蓋)との間の隙間によって電極体の充電時の短径方向の膨張を吸収させてケースの同方向への膨らみを抑えることでバスバと外部端子との接続部位におけるケースの膨らみ(前記短径方向の膨らみ)に起因する応力発生が抑えられる。
【0042】
本実施形態の移動体は、
上記のいずれかの蓄電素子と、
前記蓄電素子が搭載される移動体本体と、
前記蓄電素子から供給される電力によって前記移動体本体を駆動する駆動部と、を備え、
前記蓄電素子は、前記ケースにおける前記外部端子が突出している部位である端子側部位が、該ケースにおける前記端子側部位と反対側の部位より上方に位置するように配置される。
【0043】
かかる構成によれば、当該移動体に搭載された蓄電素子において、隣り合う電極体同士が外周面を互いに液絡させているため、電解液が下側の電極体から上側の電極体に供給され、これにより、ケース内に溜まっている電解液が下側の電極体から上側の電極体に供給される。
【0044】
本実施形態の蓄電システムは、
上記のいずれかの蓄電素子と、
前記蓄電素子が載置される蓄電システム本体と、
前記蓄電素子の外部端子と接続され、且つ、外部から電力の入力及び外部への電力の出力が可能な入出力端子と、を備え、
前記蓄電素子は、前記ケースにおける前記外部端子が突出している部位である端子側部位が、該ケースにおける前記端子側部位と反対側の部位より上方に位置するように配置される。
【0045】
かかる構成によれば、当該蓄電システムに載置された蓄電素子において、隣り合う電極体同士が外周面を互いに液絡させているため、電解液が下側の電極体から上側の電極体に供給され、これにより、ケース内に溜まっている電解液が下側の電極体から上側の電極体に供給される。
【0046】
本実施形態の蓄電素子は、
電極が巻回される複数の電極体と、
前記複数の電極体を収容するケースと、
前記ケースの外面から突出し且つ前記複数の電極体と導通する外部端子と、を備え、
前記複数の電極体のそれぞれにおいて、前記電極が該電極体における直交する方向の径が長径と短径となるように巻回されており、
前記複数の電極体は、前記ケースの内部において、巻回中心軸が互いに平行で且つ前記外部端子の突出方向と前記電極体の短径方向とが一致した状態で並び、
前記ケースは、開口部を有するケース本体と、前記開口部を塞ぎ且つ前記外部端子が配置される蓋と、を有し、
前記ケースの内部において前記蓋と前記電極体との間に隙間が形成されている。
【0047】
かかる構成によれば、ケース内において、充電時に膨らみの小さな長径方向を揃えて電極体を並べることで、充電時における電極体の長径方向へのケースの膨らみが抑えられると共に、電極体の膨張し易い方向(短径方向)に形成された電極体とケース(蓋)との間の隙間によって電極体の充電時の短径方向の膨張が吸収されてケースの同方向への膨らみが抑えられる。
【0048】
本実施形態の蓄電装置は、
上記の長径と短径を有する電極体を有する複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子を保持する保持部材と、
前記外部端子に接続されるバスバと、を備え、
前記複数の蓄電素子は、前記電極体の長径方向に並び、
前記保持部材は、前記蓄電素子の並び方向における前記複数の蓄電素子の両側に配置される一対の終端部と、前記一対の終端部材を連結する連結部と、を有し、
前記バスバは、異なる蓄電素子の外部端子同士を接続してもよい。
【0049】
かかる構成によれば、充電時において、複数の蓄電素子のそれぞれのケースにおける蓄電素子の並び方向(電極体の長径方向)の膨らみが抑えられるため、保持部材に加わる力(間隔が広がる方向に一対の終端部材を押し広げる力)が抑えられる。
【0050】
しかも、充電時における蓄電素子の並び方向へのケースの膨らみが抑えられる、即ち、前記並び方向における蓄電素子の外部端子同士の間隔の変化が抑えられるため、バスバと外部端子との接続部位における前記間隔の変化に起因する応力発生が抑えられ、これにより、充放電での電極体の膨張・収縮によるバスバと外部端子との接続部位の損傷を防ぐことができる。
【0051】
以上より、本実施形態によれば、複数の巻回型の電極体と、巻回中心軸が互いに平行となる状態で複数の電極体を電解液とともに収容するケースとを備え、各電極体の巻回中心軸が水平になるようにケースが配置されても、上側の電極体に電解液が供給される蓄電素子、前記蓄電素子を備える蓄電装置、前記蓄電素子を備える移動体、及び前記蓄電素子を備える蓄電システムを提供することができる。
【0052】
以下、本発明の第一実施形態について、
図1~
図5を参照しつつ説明する。蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。本発明の第一実施形態は、蓄電素子である。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0053】
本実施形態の蓄電素子は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。前記蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
【0054】
蓄電素子は、
図1~
図4に示すように、複数(本実施形態では三つ)の電極体2と、電解液と、複数の電極体2を前記電解液とともに収容するケース3と、ケース3の外面から突出する外部端子4と、を備える。また、蓄電素子1は、複数の電極体2のそれぞれと外部端子4とを導通させる集電体5と、複数の電極体2とケース3との間に配置される絶縁材6等も、備える。
【0055】
複数の電極体2のそれぞれは、いわゆる巻回型の電極体である。具体的に、複数の電極体2のそれぞれは、電極23、24とセパレータ25とを有し、且つこれら電極23、24とセパレータ25とが積層された状態で巻回されている。本実施形態の電極は、正極23と負極24とを有する。より具体的に、複数の電極体2のそれぞれは、巻芯21と、正極23と負極24とが互いに絶縁された状態で積層された積層体22であって、巻芯21の周囲に巻回された積層体22と、を備える(
図3及び
図4参照)。そして、複数の電極体2の各外周面は、セパレータ25によって構成されている。即ち、複数の電極体2(巻回された積層体22)のそれぞれの最外層は、セパレータ25である。これら複数の電極体2のそれぞれにおいてリチウムイオンが正極23と負極24との間を移動することにより、蓄電素子1が充放電する。
【0056】
巻芯21は、通常、絶縁材料によって形成される。本実施形態の巻芯21は、筒状、より詳しくは、円筒状である。この巻芯21は、可撓性又は熱可塑性を有するシートを巻回することによって形成される。本実施形態の前記シートは、合成樹脂によって形成されている。
【0057】
正極23は、帯状の金属箔231と、金属箔231に重ねられる正極活物質層232と、を有する。この正極活物質層232は、金属箔231における幅方向の一方の端縁部(非被覆部)を露出させた状態で、該金属箔231に重ねられている。本実施形態の金属箔231は、例えば、アルミニウム箔である。
【0058】
負極24は、帯状の金属箔241と、金属箔241に重ねられる負極活物質層242と、を有する。この負極活物質層242は、金属箔241における幅方向の他方(正極23の金属箔231の非被覆部と反対側)の端縁部(非被覆部)を露出させた状態で、該金属箔241に重ねられている。本実施形態の金属箔241は、例えば、銅箔である。
【0059】
本実施形態の電極体2では、以上のように構成される正極23と負極24とがセパレータ25によって絶縁された状態で巻回される。即ち、本実施形態の電極体2では、正極23、負極24、及びセパレータ25の積層体22が巻回されている。
【0060】
セパレータ25は、絶縁性を有する部材であり、正極23と負極24との間に配置される。これにより、電極体2(詳しくは、積層体22)において、正極23と負極24とが互いに絶縁される。また、セパレータ25は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、セパレータ25を挟んで交互に積層される正極23と負極24との間を、リチウムイオンが移動可能となる。
【0061】
セパレータ25は、帯状である。このセパレータ25は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリアミドなどの多孔質膜によって構成される。本実施形態のセパレータ25は、SiO2粒子、Al2O3粒子、ベーマイト(アルミナ水和物)等の無機粒子を含んだ無機層を、多孔質膜によって形成された基材の上に設けることで形成されている。本実施形態のセパレータ25の基材は、例えば、ポリエチレンによって形成される。
【0062】
セパレータ25の幅方向の寸法は、負極活物質層242の幅より大きい。セパレータ25は、正極活物質層232と負極活物質層242とが厚さ方向(積層方向)に重なるように幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされた正極23と負極24との間に配置される。このとき、正極23の非被覆部と、負極24の非被覆部とは重なっていない。即ち、正極23の非被覆部が、正極23と負極24との重なる領域から幅方向(積層方向と直交する方向)に突出し、且つ、負極24の非被覆部が、正極23と負極24との重なる領域から幅方向(正極23の非被覆部の突出方向と反対の方向)に突出する。このような状態で積層された正極23、負極24、及びセパレータ25(即ち、積層体22)が巻回されることによって、電極体2が形成される。また、本実施形態の複数の電極体2のそれぞれでは、正極23の非被覆部又は負極24の非被覆部のみが積層された部位によって、電極体2における非被覆積層部26が構成される。
【0063】
非被覆積層部26は、電極体2における集電体5と導通される部位である。この非被覆積層部26は、電極体2の各極に設けられる。即ち、正極23の非被覆部のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における正極の非被覆積層部を構成し、負極24の非被覆部のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における負極の非被覆積層部を構成する。
【0064】
以上のように構成される複数の電極体2は、巻回中心軸Cが互いに並行な状態で、ケース3の外面(詳しくは、ケース3の後述する蓋板32の外面)からの外部端子4の突出方向(
図2における上下方向)に並んでいる。複数の電極体2のそれぞれの非被覆積層部26は、集電体5に接続されている。具体的に、複数の電極体2のそれぞれの正極の非被覆積層部26は、一方の集電体5(
図2における左側の集電体5)に接続されている。また、複数の電極体2のそれぞれの負極の非被覆積層部26は、他方の集電体5(
図2における右側の集電体5)に接続されている。
【0065】
前記突出方向に並ぶ複数の電極体2において、隣り合う電極体2同士は、外周面(即ち、積層体22における最外層のセパレータ25)同士を互いに液絡させている。本実施形態の隣り合う電極体2同士は、外周面(詳しくは、外周面を構成するセパレータ25)を互いに接触させることによって液絡させている。また、本実施形態の隣り合う電極体2同士は、充放電過程において前記外周面を常に液絡させている。詳しくは、充電又は放電に伴って電極体2の巻回中心軸Cと直交する断面が膨張又は収縮するが、本実施形態の蓄電素子1では、隣り合う電極体2同士は、前記充放電に伴う膨張・収縮に関わりなく、外周面を構成するセパレータ25同士を常に接触(液絡)させている。ここで、液絡とは、隣り合う電極体2において一方の電極体2の外周面を構成するセパレータ25から他方の電極体2の外周面を構成するセパレータ25に電解液が案内される状態をいう。
【0066】
ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。ケース3は、複数の電極体2及び集電体5等と共に、電解液を内部空間33(
図3参照)に収容する。このため、ケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。本実施形態のケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。
【0067】
ケース3は、ケース本体31の開口周縁部34と、蓋板32の周縁部とを重ね合わせた状態で接合することによって形成される。また、ケース3では、ケース本体31と蓋板32とによって内部空間33が画定されている。本実施形態のケース3では、ケース本体31の開口周縁部34と蓋板32の周縁部とが溶接によって接合されている。
【0068】
ケース本体31は、板状の閉塞部311と、閉塞部311の周縁に接続される筒状の胴部312と、を備える。
【0069】
閉塞部311は、ケース本体31が開口を上に向けた姿勢で配置されたときにケース本体31の下端に位置する(即ち、前記開口が上を向いたときのケース本体31の底壁となる)部位である。閉塞部311は、該閉塞部311の法線方向から見て、矩形状である。
【0070】
以下では、閉塞部311の長辺方向を直交座標系のX軸方向とし、閉塞部311の短辺方向を直交座標系のY軸方向とし、閉塞部311の法線方向を直交座標系のZ軸方向とする。
【0071】
胴部312は、角筒形状、詳しくは、偏平な角筒形状を有する。胴部312は、閉塞部311の周縁における長辺から延びる一対の長壁部313と、閉塞部311の周縁における短辺から延びる一対の短壁部314とを有する。即ち、一対の長壁部313は、Y軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における短辺に相当する間隔)をあけて対向し、一対の短壁部314は、X軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における長辺に相当する間隔)をあけて対向する。短壁部314が一対の長壁部313の対応(詳しくは、Y軸方向に対向)する端部同士をそれぞれ接続することによって、角筒状の胴部312が形成される。
【0072】
以上のように、ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。このケース本体31には、上述のように、複数の電極体2のそれぞれが、巻回中心軸C方向をX軸方向に向け且つZ軸方向に並んだ状態で収容される。
【0073】
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。具体的に、蓋板32の輪郭は、Z軸方向から見て、ケース本体31の開口周縁部34に対応した形状である。即ち、蓋板32は、Z軸方向から見て、X軸方向に長い矩形状の板材である。この蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐように該ケース本体31に当接する。より具体的には、蓋板32が開口を塞ぐように、蓋板32の周縁部がケース本体31の開口周縁部34に重ねられる。開口周縁部34と蓋板32とが重ねられた状態で、蓋板32とケース本体31との境界部が溶接される。これにより、ケース3が構成される。
【0074】
外部端子4は、他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部位である。外部端子4は、導電性を有する部材によって形成される。例えば、外部端子4は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成される。本実施形態の外部端子4は、
図1~
図3に示す通り、バスバ等が溶接可能な面41を有する。
【0075】
集電体5は、ケース3内に配置され、複数の電極体2のそれぞれと通電可能に直接又は間接に接続される。本実施形態の集電体5は、複数の電極体2のそれぞれの非被覆積層部26と直接接続されている。この集電体5は、導電性を有する部材によって形成され、ケース3の内面に沿って配置される。本実施形態の集電体5は、外部端子4と複数の電極体2とを通電可能に接続する。
【0076】
具体的に、集電体5は、
図2及び
図3に示すように、外部端子4と通電可能に接続される第一接続部51と、複数の電極体2と通電可能に接続される第二接続部52と、第一接続部51と第二接続部52とを接続する屈曲部53と、を有する。集電体5では、屈曲部53がケース3内の蓋板32と短壁部314との境界近傍に配置され、第一接続部51が屈曲部53から蓋板32に沿って延びると共に、第二接続部52が屈曲部53から短壁部314に沿って延びる。第二接続部52は、複数(本実施形態では三つ)の電極体2の非被覆積層部26と導通状態で接続されている。本実施形態の第二接続部52は、例えば、レーザ溶接によって複数の電極体2のそれぞれの非被覆積層部26と接合される。
【0077】
以上のように構成される集電体5は、蓄電素子1の正極と負極とにそれぞれ配置される。本実施形態の蓄電素子1では、集電体5は、ケース3内において、電極体2の正極側の非被覆積層部26と、負極側の非被覆積層部26とにそれぞれ配置される。正極の集電体5と負極の集電体5とは、異なる素材によって形成される。具体的に、正極の集電体5は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成される。負極の集電体5は、例えば、銅又は銅合金によって形成される。
【0078】
絶縁材6は、ケース3(詳しくはケース本体31)と、複数の電極体2と、の間に配置される。この絶縁材6は、絶縁性を有する樹脂によって形成されている。本実施形態の絶縁材6は、所定の形状に裁断された絶縁性を有するシート状の部材を折り曲げることによって袋状に形成されている。
【0079】
上述のように、ケース3内に、電解液が注液されている。本実施形態の蓄電素子1では、
図5に示すように、複数の電極体2(詳しくは、各電極体2のセパレータ25)が保持できる量より多くの電解液がケース3内に注液されている。複数の電極体2に保持されずにケース3内に溜まっている電解液(余剰電解液)の量は、ケース3に収容された複数の電極体2のそれぞれの巻回中心軸Cが水平となるようにケース3が配置されたときに、液面が該ケース3内において最も上に位置する電極体2の下端29より低くなるように設定されている。即ち、複数の電極体2が余剰電解液に漬かった状態(
図5の二点鎖線参照)でもよい。本実施形態の蓄電素子1では、ケース3に収容された複数の電極体2のそれぞれの巻回中心軸Cが水平となるようにケース3が配置されたときに、最も下にある電極体2のみが余剰電解液に漬かっている。尚、この余剰電解液は、本実施形態の蓄電素子1のように、充放電による電極体2の膨張・収縮に関わらずケース3の下端に溜まっている電解液に限定されない。例えば、余剰電解液は、急速充電等によって、電極体2を構成する電極23、24が急激に膨張してセパレータ25が保持していた電解液が該セパレータ25から押し出されることで、ケース3の下端に溜まった電解液であってもよい。また、余剰電解液は、充放電による電極体2の膨張・収縮に関わらずケース3の下端に溜まっている電解液と、急速充電等によって、電極体2を構成する電極23、24が急激に膨張してセパレータ25が保持していた電解液が該セパレータ25から押し出されることでケース3の下端に溜まった電解液と、の両方であってもよい。
【0080】
電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO4、LiBF4、及びLiPF6等である。本実施形態の電解液は、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、プロピレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5の割合で調整した混合溶媒に、1mol/LのLiPF6を溶解させたものである。
【0081】
以上の蓄電素子1によれば、隣り合う電極体2同士が、外周面を互いに液絡させることで、各電極体2の巻回中心軸Cが水平になるようにケース3が配置されたとき(
図5に示す例では、外部端子4の面41を上方に向けた状態でケース3が配置されたとき)に該ケース3内において余剰電解液(ケース3内に溜まっている電解液)の液面より上側に電極体2が位置していても(
図5参照)、電解液が下側の電極体2(例えば、余剰電解液に接している電極体2)から上側の電極体2(例えば、前記下側の電極体2の上側において該電極体2と外周面同士を接触させた状態で隣り合い且つ余剰電解液と接していない電極体2)に供給されるため、余剰電解液が前記液面より上側に位置する電極体2に供給される。
【0082】
また、本実施形態の蓄電素子1では、隣り合う電極体2同士が外周面を互いに液絡させているため、隣り合う電極体2同士が液絡している部位を通じて各電極体2に電解液が移動できる。このため、ケース3内の複数の電極体2における電解液の偏り、即ち、電極体2毎の電解液の保持量の偏りも抑えられる。
【0083】
本実施形態の蓄電素子1では、充放電によって電極体2の巻回中心軸Cと直交する断面が膨張・収縮しても隣り合う電極体2の外周面同士が常に液絡している。このため、各電極体2の巻回中心軸Cが水平になるようにケース3が配置されても、余剰電解液が下側の電極体2から上側の電極体2に常に供給され続ける。
【0084】
また、本実施形態の蓄電素子1では、複数の電極体2のそれぞれにおいて、電極23、24とセパレータ25とが、積層された状態で巻回されている。また、各電極体2の外周面は、セパレータ25によって構成されている。このように、複数の電極体2のそれぞれの外周面が絶縁性を有するセパレータ25によって構成されているため、蓄電素子1において電極体2間の絶縁が確実に図られる。また、電極23、24とセパレータ25とが積層された状態で巻回されている電極体2では、電解液が、電極23、24(特に負極24)において巻回方向(周方向)に移動するのに加え、セパレータ25において厚み方向と巻回方向(周方向)とに移動する。このため、電極体2の外周面に供給された電解液は、電極体2の巻回中心部まで効率よく供給される(移動する)。しかも、セパレータ25の圧縮性及び復元性が電極23、24と比べてよいため、電極体2における電極23、24の膨張・収縮をセパレータ25が吸収することができ、これにより、充放電によって電極23、24が収縮・膨張したときの隣接する電極体2同士の離間が抑えられる。
【0085】
次に、本発明の第二実施形態について
図6を参照しつつ説明するが、上記第一実施形態と同様の構成には同一符号を用いて詳細な説明を繰り返さず、異なる構成についてのみ詳細に説明する。本発明の第二実施形態は、蓄電素子である。
【0086】
蓄電素子1Aは、複数(本実施形態では三つ以上)の電極体2と、電解液と、ケース3と、外部端子4と、集電体5と、絶縁材6と、を備える。本実施形態の複数の電極体2は、Z軸方向に間隔をあけて配置されている。また、蓄電素子1Aは、隣り合う電極体2の外周面(詳しくは、外周面を構成するセパレータ25)とそれぞれ接触し、且つ、電解液を吸い上げる少なくとも一つの液絡部材7を備える。
【0087】
液絡部材7は、多孔質部材によって形成される。この液絡部材7は、該液絡部材7が接触している電極体2同士を液絡させる。この液絡部材7は、充電又は放電による電極体2の膨張又は収縮に伴って(追従して)、隣り合う電極体2が並ぶ方向(
図6における上下方向)に縮み又は伸びる。本実施形態の液絡部材7は、複数(本実施形態では、電極体2の数より一つ少ない数)の電極体2間のそれぞれに配置されている。即ち、蓄電素子1Aは、複数の液絡部材7を備える。また、本実施形態の液絡部材7は、電極体2間において、巻回中心軸C方向の一部に配置されている。即ち、液絡部材7は、電極体2間の巻回中心軸C方向において、隣り合う電極体2を局所的に液絡させている。
【0088】
本実施形態の液絡部材7は、液保持能力の観点から、連続気泡の多孔質部材によって形成されている。この液絡部材7は、多孔質の樹脂によって形成されている。例えば具体的に、液絡部材7は、柔軟性や耐電解液性の観点から、多孔質ポリオレフィン樹脂(低密度又は高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリプロピレンの混合)、多孔質PEEK樹脂、多孔質ラテックス樹脂、多孔質フッ素樹脂によって形成される。また、液絡部材7は、これらの樹脂と、無機粒子又は多孔質無機粒子と、の混合物によって形成されてもよい。
【0089】
また、本実施形態の蓄電素子1Aでは、Z軸方向における電極体2(
図6における中央の電極体2)の一方側(
図6の上方側)に配置される液絡部材7の保持できる電解液の量は、Z軸方向における前記電極体2(
図6における中央の電極体2)の他方側(
図6の下方側)に配置される液絡部材7の保持できる電解液の量より多い。本実施形態の蓄電素子1Aでは、液絡部材7の体積を調整することによって、該液絡部材7の保持できる電解液の量が調整されている。即ち、
図6に示す蓄電素子1Aでは、上側の液絡部材7の体積が、下側の液絡部材7の体積より大きい。
【0090】
多孔質部材は、吸液性や液保持性等によって電解液を上側に導くことができる。このため、本実施形態の蓄電素子1Aのように、隣り合う電極体2の外周面同士が連続気泡の多孔質部材(液絡部材7)によって液絡することで、各電極体2の巻回中心軸Cが水平になるようにケース3が配置されても、余剰電解液が液絡部材7を通じて下側の電極体2から上側の電極体2に効果的に供給される。
【0091】
本実施形態の蓄電素子1Aでは、液絡部材7が、充電又は放電による電極体2の膨張又は収縮に伴ってZ軸方向に縮み又は伸びる。このように、液絡部材7が蓄電素子1Aの充放電に伴う電極体2の外周面間の距離の変動に追従して伸縮することで、各電極体2の巻回中心軸Cが水平になるようにケース3が配置された状態で蓄電素子1Aが充放電されて各電極体2が膨張又は収縮しても、隣り合う電極体2の外周面同士が液絡部材7によって液絡し続ける。即ち、液絡部材7は、蓄電素子1Aが完全放電状態及び完全充電状態のときでも、隣り合う電極体2同士を液絡させ続ける。これにより、蓄電素子1Aでは、充放電過程のいずれの状態においても、余剰電解液が下側の電極体2から上側の電極体2に供給され続ける。
【0092】
本実施形態の蓄電素子1Aでは、Z軸方向(巻回中心軸Cと直交する方向)における中央の電極体2の一方側に配置される液絡部材7の保持できる電解液の量が、該電極体2の他方側に配置される液絡部材7の保持できる電解液の量より多い。
【0093】
かかる構成によれば、各電極体2の巻回中心軸Cが水平になるように、且つ前記一方側に配置される液絡部材7が前記他方側に配置される液絡部材7より上側となるようにケース3が配置されたときに(
図6参照)、上側(前記一方側)の液絡部材7が下側(前記他方側)の液絡部材7より保持できる電解液の量が多い。このため、かかる姿勢で該蓄電素子1Aを使用し続けたときに、下側の電極体2(前記下側の液絡部材7に接し且つ該下側の液絡部材7の上側にある電極体2(
図6に示す例では、中央の電極体2))に比べて余剰電解液が供給され難い上側の電極体2(前記上側の液絡部材7に接し且つ該上側の液絡部材7の上側にある電極体2(
図6に示す例では、最も上側の電極体2))での電解液不足の発生を防ぐことができる。
【0094】
次に、本発明の第三実施形態について、
図7~
図11を参照しつつ説明するが、上記第一実施形態及び第二実施形態と同様の構成には同一符号を用いて詳細な説明を繰り返さず、異なる構成についてのみ詳細に説明する。本発明の第三実施形態は、蓄電装置である。
【0095】
蓄電装置10は、
図7~
図10に示すように、外部端子4を備える複数の蓄電素子1Bと、複数の蓄電素子1Bを保持する保持部材13と、外部端子4に接続されるバスバ15と、を備える。また、蓄電装置10は、蓄電素子1Bと隣接する複数の隣接部材12と、複数の蓄電素子1Bと保持部材13との間に配置されるインシュレータ14と、備える。本実施形態の保持部材13は、複数の蓄電素子10と複数の隣接部材12とをひとまとめに保持する。
【0096】
蓄電素子1Bは、電極23、24が巻回される複数の電極体2Bと、複数の電極体2Bを収容するケース3と、ケース3の外面から突出し且つ複数の電極体2Bと導通する外部端子4と、を備える。また、蓄電素子1Bは、複数の電極体2Bのそれぞれと外部端子4とを導通させる集電体5と、複数の電極体2Bとケース3との間に配置される絶縁部材6等も、備える。
【0097】
図11に示すように、複数の電極体2Bのそれぞれにおいて、電極23、24が該電極体2Bにおける直交する方向の径が長径dlと短径dsとなるように巻回されている。具体的には、各電極体2Bは、巻芯21と、巻芯21の周囲に巻回される正極(電極)23、負極(電極)24、及びセパレータ25と、を有する。この電極体2Bでは、正極23と負極24とがセパレータ25を介して重ねられた状態で、扁平な筒状に(本実施形態では、いわゆるレーストラック型となるように)巻回されている。また、電極体2Bの最外周には、セパレータ25が位置している。以下では、電極体2Bにおいて、正極23と負極24とがセパレータ25を介して湾曲した状態で交互に重なっている部位を湾曲部20aと称する。また、電極体2Bにおいて、正極23と負極24とがセパレータ25を介して平坦な状態で交互に重なっている部位を平坦部20bと称する。
【0098】
図7~
図10に戻り、それぞれが以上のように構成される複数の電極体2Bは、ケース3の内部において、巻回中心軸Cが互いに平行で且つ外部端子4の突出方向(
図9における上下方向)と電極体2Bの短径Ds方向とが一致した状態で並んでいる。また、隣り合う電極体2B同士は、最外周に位置するセパレータ25が互いに接触するように配置されている。即ち、複数の電極体2Bは、隣り合う電極体2Bの平坦部20b同士が接触し、且つ湾曲部20aが同じ向きに膨出するように並んでいる。このように複数の電極体2Bがケース3に収容されることで、ケース3内において、各電極体2Bの長径dlが同じ方向を向くと共に、各電極体2Bの短径dsが同じ方向を向いている。
【0099】
また、ケース3の内部において、蓋板(蓋)32と、該蓋板32と隣り合う電極体2Bとの間に隙間330が形成されている(
図10参照)。本実施形態の蓄電素子1Bでは、外部端子4の一部、具体的には、外部端子4を蓋板32に固定すると共に集電体5に接続される部位45(
図10参照)が、蓋板32からケース3の内側に向けて(
図10における下側に)突出しており、この突出している部位(外部端子4の一部)45が電極体2Bに接触しないように、隙間330が設けられている。
【0100】
それぞれが以上のように構成される複数の蓄電素子1Bは、電極体2Bの長径dl方向(ケース3から外部端子4が突出する方向(Z軸方向)に直交し且つ電極体2Bの巻回中心軸Cの延びる方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向))に並んでいる。
【0101】
隣接部材12は、Y軸方向(長径dl方向)に並ぶ蓄電素子1Bの間、又は蓄電素子1Bと該蓄電素子1Bに対してY軸方向に並ぶ部材(本実施形態の例では、保持部材13の一部)との間に配置される。この隣接部材12は、複数種の隣接部材を含む。本実施形態の隣接部材12は、隣り合う蓄電素子1Bの間に配置される第一隣接部材121と、Y軸方向において最も端にある蓄電素子1Bの外側に配置される第二隣接部材122とを含む。
【0102】
第一隣接部材121は、絶縁性を有し、隣り合う蓄電素子1Bの間に配置されることで蓄電素子1B間の間隔(沿面距離等)を確保する。具体的に、第一隣接部材121は、X-Z面(X軸とZ軸とを含む面)方向に広がり、且つ、隣接する蓄電素子1Bとの間に温度調整用の流体(本実施形態の例では空気)が流通可能な流路を形成する第一本体部1211と、第一本体部1211からY軸方向に延び、且つ、第一本体部1211と隣接する蓄電素子1BとX-Z面方向の外側から当接することによって該蓄電素子1Bの第一本体部1211に対するX-Z面方向への相対移動を規制する第一規制部1212と、を有する。
【0103】
第二隣接部材122は、絶縁性を有し、X軸方向において蓄電素子1Bと保持部材13(終端部材131)との間に配置されることで蓄電素子1Bと保持部材13(終端部材131)との間の間隔(沿面距離等)を確保する。具体的に、第二隣接部材122は、X-Z面方向に広がり、且つ、隣接する蓄電素子1Bとの間に温度調整用の流体(本実施形態の例では空気)が流通可能な流路を形成する第二本体部1221と、第二本体部1221からY軸方向に延び、且つ、第二本体部1221と隣接する蓄電素子1BとX-Z面方向の外側から当接することによって該蓄電素子1Bの第二本体部1221に対するX-Z面方向への相対移動を規制する第二規制部1222と、を有する。
【0104】
保持部材13は、複数の蓄電素子1Bと複数の隣接部材12との周囲を囲むことで、これら複数の蓄電素子1B及び複数の隣接部材12をひとまとめに保持する。この保持部材13は、金属等の導電性を有する部材によって構成される。具体的に、保持部材13は、Y軸方向(蓄電素子1Bの並び方向)における複数の蓄電素子1Bの両側に配置される一対の終端部材131と、一対の終端部材131を連結する連結部材132と、を有する。
【0105】
一対の終端部材131のそれぞれは、Y軸方向の端に配置された蓄電素子1Bとの間に第二隣接部材122を挟み込むように配置される。この終端部材131は、X-Z面方向に広がる。
【0106】
一対の連結部材132は、X軸方向において複数の蓄電素子1Bの両側に配置される。これら一対の連結部材132のそれぞれは、Y軸方向に延び且つZ軸方向に間隔をあけて配置される一対の梁部1320と、一対の梁部1320の端部同士を連結する一対の第一連結部1321と、Y軸方向における途中位置において一対の梁部1320同士を連結する第二連結部1322と、を有する。
【0107】
インシュレータ14は、絶縁性を有する。このインシュレータ14は、連結部材132と、複数の蓄電素子1Bとの間に配置される。具体的に、インシュレータ14は、連結部材132における少なくとも複数の蓄電素子1Bと対向する領域を覆う。これにより、インシュレータ14は、連結部材132と、複数の蓄電素子1Bとの間を絶縁する。
【0108】
バスバ15は、金属等の導電性を有する板状の部材である。バスバ15は、異なる蓄電素子1Bの外部端子4同士を導通させる。バスバ15は、蓄電装置10において複数(複数の蓄電素子1Bと対応する数)設けられる。本実施形態の複数のバスバ15は、蓄電装置10に含まれる複数の蓄電素子1Bの全てを直列に接続する(導通させる)。
【0109】
以上の蓄電装置10によれば、充電時において、複数の蓄電素子1Bのそれぞれのケース3における蓄電素子1Bの並び方向(電極体2Bの長径dl方向:Y軸方向)の膨らみが抑えられるため、保持部材13に加わる力(間隔が広がる方向に一対の終端部材131を押し広げる力)が抑えられる。しかも、充電時における蓄電素子1Bの並び方向へのケース3の膨らみが抑えられる、即ち、前記並び方向における蓄電素子1Bの外部端子4同士の間隔の変化(Y軸方向の間隔の変化)が抑えられるため、バスバ15と外部端子4との接続部位における前記間隔の変化に起因する応力発生が抑えられる。これにより、充放電での電極体2Bの膨張・収縮に起因するバスバ15と外部端子4との接続部位の損傷を防ぐことができる。
【0110】
また、本実施形態の蓄電装置10では、各蓄電素子1Bのケース3内において、蓋板32と、該蓋板32と隣り合う電極体2Bとの間に隙間330が形成されている。これにより、充電時の電極体2Bの短径ds方向(Z軸方向)の膨張が隙間330に吸収され、ケース3の短径ds方向(Z軸方向)への膨らみを抑えることができる。即ち、本実施形態の蓄電装置10では、電極体2Bの長径dl方向と蓄電素子1Bの並び方向とを一致させることで前記並び方向へのケース3の膨みを抑えて充電時の保持部材13に加わる力(即ち、一対の終端部材131を押し広げる力)が抑えられると共に、電極体2Bの膨張し易い方向(短径ds方向)に形成された電極体2Bとケース3(蓋板32)との間の隙間330によって電極体2Bの充電時の短径ds方向の膨張を吸収させてケース3の同方向への膨らみを抑えることでバスバ15と外部端子4との接続部位におけるケース3の膨らみ(短径ds方向の膨らみ)に起因する応力発生が抑えられる。
【0111】
尚、本実施形態の蓄電装置10では、各蓄電素子1Bにおいて、蓋板32からケース3の内側に向けて(
図10における下側に)突出する外部端子4の一部45が電極体2Bに接触しないように設けられた隙間330を利用して、電極体2Bの短径ds方向の膨張を吸収してケース3のZ軸方向(短径ds方向)の膨らみを抑えている。
【0112】
また、蓄電装置10において、蓄電素子1Bの並び方向(長径dl方向:Y軸方向)のケース3の膨らみが抑えられることで、保持部材13に加わる力(即ち、一対の終端部材131を押し広げる力)が抑制されるため、一対の終端部材131によって複数の蓄電素子1B全体をY軸方向に挟み込む力を抑えることができる。即ち、保持部材13の強度を抑えて、蓄電装置10の寸法(外寸)を抑えることができる。
【0113】
さらに、各蓄電素子1Bがケース3内に余剰電解液を有する場合には、各蓄電素子1Bのケース3内において、隣り合う電極体2B同士が、外周面を構成するセパレータ25同士を互いに接触させている、即ち、液絡させているため、各電極体2Bの巻回中心軸Cが水平で且つZ軸方向の一端の電極体2Bが他端の電極体2Bより上方に位置するようにケース3が配置されたとき(
図7に示す例では、各蓄電素子1Bの外部端子4の面41を上方に向けた状態で蓄電装置10が配置されたとき)に該ケース3内において余剰電解液(ケース3内に溜まっている電解液)の液面より上側にいずれかの電極体2Bが位置していても、電解液が下側の電極体2B(例えば、余剰電解液に接している電極体2B)から上側の電極体2B(例えば、前記下側の電極体2Bの上側において該電極体2Bと外周面同士を接触させた状態で隣り合い且つ余剰電解液と接していない電極体2B)に供給される。このため、余剰電解液が前記液面より上側に位置する電極体2Bに供給される。
【0114】
次に、本発明の第四実施形態について、
図12を参照しつつ説明するが、上記第一~第三実施形態と同様の構成には同一符号を用いて詳細な説明を繰り返さず、異なる構成についてのみ詳細に説明する。本発明の第四実施形態は、移動体である。
【0115】
移動体500は、蓄電素子1と、蓄電素子1が搭載される移動体本体501と、蓄電素子1から供給される電力によって移動体本体501を駆動する駆動部502と、を備える。本実施形態の移動体500は、自動車であり、移動体本体501は車体であり、駆動部502は、モーターである。尚、移動体500は、自動車に限定されず、航空機、船舶、鉄道、建機等でもよい。即ち、蓄電素子1から供給される電力を利用して移動(走行等)するものであればよい。
【0116】
この移動体500において、蓄電素子1は、ケース3における外部端子4が突出している部位である端子側部位(蓋板32側の端部)が、該ケース3における前記端子側部位と反対側の部位(閉塞部311側の端部)より上方に位置するように配置される。
【0117】
本実施形態の移動体500では、複数の蓄電素子1が同じ姿勢で移動体本体501に搭載されている。尚、複数の蓄電素子1が保持部材13によって保持されている蓄電装置10が移動体500に搭載されていてもよい。この場合でも、各蓄電素子1がケース3における蓋板32側の端部が、該ケース3における閉塞部311側の端部より上方に位置するように、蓄電装置10が移動体本体501に搭載される。
【0118】
以上の移動体500によれば、当該移動体500に搭載された蓄電素子1において、隣り合う電極体2同士が外周面を互いに液絡させているため、電解液が下側の電極体2から上側の電極体2に供給され、これにより、ケース3内に溜まっている余剰電解液が下側の電極体2から上側の電極体2に供給される。
【0119】
次に、本発明の第五実施形態について、
図13を参照しつつ説明するが、上記第一~第三実施形態と同様の構成には同一符号を用いて詳細な説明を繰り返さず、異なる構成についてのみ詳細に説明する。本発明の第五実施形態は、蓄電システムである。
【0120】
蓄電システム600は、蓄電素子1と、蓄電素子1が載置される蓄電システム本体601と、蓄電素子1の外部端子4と接続され、且つ、外部から電力の入力及び外部への電力の出力が可能な入出力端子602と、を備える。本実施形態の蓄電システム600は、風力発電や太陽光発電等に用いられるものであり、蓄電システム本体601は、設置場所Gに据え付けられる筐体であり、入出力端子601は、風車や太陽光電池、外部への送電系統等に接続される端子である。尚、蓄電システム600は、風車や太陽光電池によって発電した電力を蓄電するものに限定されず、安価な夜間電力を蓄電する家庭用システム、災害に備えて常時一定量の電力を蓄電しておくバックアップシステム等でもよい。
【0121】
この蓄電システム600において、蓄電素子1は、ケース3における外部端子4が突出している部位である端子側部位(蓋板32側の端部)が、該ケース3における前記端子側部位と反対側の部位(閉塞部311側の端部)より上方に位置するように配置される。
【0122】
本実施形態の蓄電システム600では、複数の蓄電素子1が同じ姿勢で蓄電システム本体601に載置されている。尚、複数の蓄電素子1が保持部材13によって保持されている蓄電装置10が載置されていてもよい。この場合でも、各蓄電素子1がケース3における蓋板32側の端部が、該ケース3における閉塞部311側の端部より上方に位置するように、蓄電装置10が蓄電システム本体601に載置される。
【0123】
以上の蓄電システム600によれば、当該蓄電システム600に載置された蓄電素子1において、隣り合う電極体2同士が外周面を互いに液絡させているため、電解液が下側の電極体2から上側の電極体2に供給され、これにより、ケース3内に溜まっている余剰電解液が下側の電極体2から上側の電極体2に供給される。
【0124】
尚、本発明の蓄電素子、前記蓄電素子を備える蓄電装置、前記蓄電素子を備える移動体、及び前記蓄電素子を備える蓄電システムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0125】
上記第一~第五実施形態の蓄電素子1、1A、1Bでは、複数の電極体2、2Bの全てが液絡しているが、この構成に限定されない。複数の電極体2、2Bのうちの少なくとも一部(二つ以上)の電極体2、2B同士が液絡していればよい。
【0126】
上記第一~第五実施形態の蓄電素子1、1A、1Bでは、電極体2は、三つであるが、この構成に限定されない。電極体2、2Bは、二つでもよく、四つ以上でもよい。
【0127】
また、上記第一~第五実施形態の蓄電素子1、1A、1Bでは、一つ蓄電素子1、1A、1Bにおいて一つの方法によって隣り合う電極体2、2Bを液絡させているが、この構成に限定されない。例えば、一つの蓄電素子1、1A、1Bにおいて、外周面同士を接触させることによって隣り合う電極体2、2Bを液絡させている箇所と、外周面間に液絡部材7を挟み込むことによって隣り合う電極体2、2Bを液絡させている箇所と、があってもよい。
【0128】
上記第一及び第二実施形態の蓄電素子1、1Aの複数の電極体2のそれぞれは、円筒状であるが、この構成に限定されない。複数の電極体2のそれぞれは、例えば、第三実施形態の蓄電素子1Bのような所謂レーストラック形状や楕円形状等の扁平な円筒状(長径dlと短径dsとを有する形状)であってもよい。
【0129】
上記第一~第五実施形態の蓄電素子1、1A、1Bでは、X軸方向から見て、複数の電極体2、2BがZ軸方向に真っ直ぐ一列に並んでいるが、この構成に限定されない。
図14に示すように、X軸方向から見て、複数の電極体2が波打つように並んでいてもよく、
図15に示すように、X軸方向から見て、Z軸方向に真っ直ぐ並ぶ電極体2の列が、Y軸方向に複数配置されてもよい。即ち、各電極体2、2Bの巻回中心軸Cが水平で且つ電極体2、2Bの並び方向の一端の電極体2、2Bが他端の電極体2、2Bより上方に位置するようにケース3が配置されたときに、隣り合う電極体2、2Bのうちの一方の電極体2、2Bが他方の電極体2、2Bの上側に位置し、且つ互いの外周面同士が液絡していればよい。
【0130】
上記第一~第五実施形態の蓄電素子1、1A、1Bでは、隣り合う電極体2、2Bは、該蓄電素子1、1A、1Bの充放電過程において常に液絡しているが、この構成に限定されない。隣り合う電極体2、2B同士は、蓄電素子1、1A、1Bの充放電過程の一部において、液絡していればよい。即ち、隣り合う電極体2、2B同士は、蓄電素子1、1A、1Bの充放電が行われるときに、常に液絡していなくてもよい。隣り合う電極体2、2Bは、蓄電素子1、1A、1Bの充放電が行われたときの所定のタイミング(例えば、最も電極体2、2Bが膨張したときのみ)において液絡(外周面同士が接触又は外周面間に配置された液絡部材7が各外周面と接触)してもよい。かかる構成によっても、上側の電極体2、2Bに対し下側の電極体2、2Bから電解液が供給される。
【0131】
上記第一~第五実施形態の蓄電素子1、1A、1Bでは、複数の電極体2、2Bのそれぞれの外周面(最外層)は、セパレータ25によって構成されているが、この構成に限定されない。複数の電極体2、2Bのそれぞれの外周面は、電極(正極23又は負極24)によって構成されてもよい。正極活物質層232及び負極活物質層242も多孔質であるため、最外周の電極23、24に電解液が供給されることで、電極体2、2Bの巻回中心部まで前記電解液が供給される。
【0132】
上記第一実施形態の蓄電素子1では、複数の電極体2(セパレータ25)のそれぞれが保持できる電解液の量が同じ若しくは略同じであるが、この構成に限定されない。例えば、複数の電極体2のそれぞれが、外周面を含み且つセパレータ25のみが巻回されている外側領域250を有し、且つ、隣り合う電極体2のうちの一方の電極体2の外側領域250のセパレータ25の巻数(
図16の上側の電極体2Aのαで示す領域におけるセパレータ25の巻数)が、前記隣り合う電極体2のうちの他方の電極体2Bの外側領域250のセパレータ25の巻数(
図16の下側の電極体2のβで示す領域におけるセパレータ25の巻数)より多くてもよい。かかる構成によれば、各電極体2の巻回中心軸Cが水平になり且つ一方の電極体2Aが他方の電極体2Bより上側になるようにケース3が配置されたときに、下側の電極体2(他方の電極体2B)の外側領域250より多くの電解液が上側の電極体2(一方の電極体2A)の外側領域250に保持されている。このため、かかる姿勢で該蓄電素子1を使用し続けたときに、前記下側の電極体2Bに比べて余剰電解液が供給され難い前記上側の電極体2Aでの電解液不足を防ぐことができる。
【0133】
この場合、前記一方側にある電極体2ほど、外側領域250におけるセパレータ25の巻数が多い構成が好ましい。かかる構成によれば、各電極体2の巻回中心軸Cが水平になり且つ前記一方側が上側となるようにケース3が配置されたときに、上側(前記一方側)の電極体2ほど外側領域250により多くの電解液が保持されている。このため、かかる姿勢で該蓄電素子1を使用し続けたときに、下側(前記他方側)の電極体2に比べて余剰電解液が供給され難い上側の電極体2での電解液不足をより好適に防ぐことができる。
【0134】
また、第一実施形態の蓄電素子1では、複数の電極体2のそれぞれが保持できる電解液の量を、外側領域250におけるセパレータ25の巻数によって調整しているが、この構成に限定されない。例えば、セパレータ25の空孔率、セパレータ25の厚さを変更することで、複数の電極体2のそれぞれの外側領域250が保持できる電解液の量を調整してもよい。
【0135】
上記第二実施形態の蓄電素子1Aでは、複数の液絡部材7のそれぞれの保持できる電解液の量が異なっているが、全てが同じでもよい。また、液絡部材7が三つ以上配置されている場合には、全ての液絡部材7が同じ量の電解液を保持してもよく、複数の液絡部材7の一部が同じ量の電解液を保持してもよい。
【0136】
また、上記第二実施形態の蓄電素子1Aでは、液絡部材7の体積によって、複数の液絡部材7のそれぞれの保持できる電解液の量を調整しているが、この構成に限定されない。例えば、液絡部材7の空孔率、形状等を変更することで、複数の液絡部材7のそれぞれが保持できる電解液の量を調整してもよい。また、隣り合う電極体2間毎に、配置される液絡部材7の数を変更してもよい。
【0137】
上記第二実施形態の蓄電素子1Aでは、液絡部材7は、柔軟性を有し、これにより、充電又は放電による電極体2の膨張又は収縮に伴ってZ軸方向に縮み又は伸びるが、この構成に限定されない。液絡部材7は、例えば、多孔質無機焼結体であってもよい。
【0138】
また、上記第二実施形態の蓄電素子1Aでは、液絡部材7は、多孔質部材によって形成されているが、この構成に限定されない。液絡部材7は、例えば、表面を親液化した部材、又は表面にスリット(細い複数の溝等)を有する部材であってもよい。即ち、液絡部材7は、毛細管現象等を利用して下側の電極体2から上側の電極体2に電解液を吸い上げる機能を有していればよい。
【0139】
前記表面に親液性を有する部材、又は前記表面にスリットを有する部材は、例えば、ポリオレフィン、フッ素樹脂等の有機材料、又はセラミック、ガラス等の無機材料の表面に、微細加工処理(レーザ、サンドブラスト、ナノインプリント等)、表面官能基付与処理(コロナ放電処理、プラズマ処理等)等を施して親液性を向上させたブロック状又はシート状の部材である。
【0140】
また、上記第二実施形態の蓄電素子1Aでは、液絡部材7は、連続気泡の多孔質部材であるが、独立気泡の多孔質部材でもよい。液絡部材7は、例えば、圧縮後の復元性を重視する場合に、独立気泡の多孔質部材を用い、保液量(液保持性)を重視する場合には、連続気泡の多孔質部材を用いる。
【0141】
また、上記実施形態においては、蓄電素子1、1Aが充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0142】
蓄電素子(例えば電池)1、1Aは、
図17に示すような蓄電装置(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)11に用いられてもよい。蓄電装置11は、少なくとも二つの蓄電素子1、1Aと、二つの(異なる)蓄電素子1、1A同士を電気的に接続するバスバ部材12と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子1、1Aに適用されていればよい。