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特許7049609耐震式供養塔並びに耐震式供養塔の施工方法
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  • 特許-耐震式供養塔並びに耐震式供養塔の施工方法 図1
  • 特許-耐震式供養塔並びに耐震式供養塔の施工方法 図2
  • 特許-耐震式供養塔並びに耐震式供養塔の施工方法 図3
  • 特許-耐震式供養塔並びに耐震式供養塔の施工方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】耐震式供養塔並びに耐震式供養塔の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 13/00 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
E04H13/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018109845
(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2019203364
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】309039370
【氏名又は名称】株式会社花匠
(72)【発明者】
【氏名】真田 昌幸
【審査官】新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-252313(JP,A)
【文献】実開平07-034166(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項4】
上部に水平の載置面を備えた基台を構成する際に、この基台に上方に突出する垂直筋の下端一部を埋設する第1の工程。
前記した載置面の前方位置に、直方体状の納骨ユニットを積み重ねて設置する第2の工程。
前記した納骨ユニットに、垂直筋の位置を通過する長さの水平の連結筋を固定し、その突出端によって型枠板を配設する第3の工程。
納骨ユニットの背面と型枠板の前面に形成される充填スペースにコンクリート材を流し込み、垂直筋と連結筋とを埋設した立壁を構成する第4の工程。
以上の第1の工程乃至第4の工程を含むことを特徴とする耐震式供養塔の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震式供養塔並びに耐震式供養塔の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本国内の各地で大きな地震が度々発生しており、その際に生ずる縦横の揺れによって霊園などに設置した墓石、供養塔の倒壊が起きている。この対策として、特許文献1および特許文献2に開示される耐震技術が提案されている。
【0003】
特許文献1の発明には、墓石を構成するように段積みされた芝台、台石、竿石の中心内部に縦方向の貫通孔を設け、これら石材を貫通孔に挿入した連結ボルトによって各石材を一体的に結合する耐震技術が開示される。
【0004】
また特許文献2の発明には、本発明と隣接した技術分野ではあるが、一般住宅における家具部材の耐震技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-147922
【文献】特開2012-026079
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明においては、芝台、台石、竿石の形状がそれぞれ異なり、特に最上部の竿石が最も大きく積み重ね状態が不安定である。このため、比較的小さい地震であっても転倒の恐れがあり、対策が講じられている。すなわち、縦揺れに対しては立方向の連結ボルトが対応し、横揺れに対しては各石材の接合面に設けた横ズレ防止部材が対応したものである。
【0007】
従ってこの耐震墓石では、各石材の中心内部に貫通孔を設け、これに連結ボルトを装着する必要があり、また各石材の接合面に溝を設け、これに突起部材を装着する必要があり、製作に多くの加工さらには工程が不可欠なものとなり、総じて費用が嵩み、施工にも多くの手数を要するという問題があった。
【0008】
また特許文献2の発明は、石材など重量があるものと違って家具部材を耐震対象としており、家具の背板を柱材に直接に止めつけるだけで横揺れ耐力を得ることができ、また家具部材の下端と床材の間、上端と天井の間にスペーサを介在することによって縦揺れ耐力を確保したものである。しかしながら、上記した簡便な耐震構成を環境が異なる屋外で、しかも重量のある墓石、供養塔に適用することは到底できないものであった。
【0009】
本発明は、上記した従来技術の問題点に着目してなされたものであり、構造が簡単で容易に施工を行なうことができ、また構成強度が大きくて十分な耐震性を得ることができる耐震式供養塔並びに耐震式供養塔の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る耐震式供養塔は、水平の載置面を設けた基台と、この基台に設け、かつ前記した載置面の後方位置に上方に向けて突設した垂直筋と、前記した載置面の前方位置に積み重ねて配置した直方体状の納骨ユニットと、上記納骨ユニットに固定し、かつ後端が垂直筋の位置を通過するように突出した水平の連結筋と、載置面と納骨ユニットの背面に密着し、かつ内部に垂直筋と連結筋の両方を埋設したコンクリート製の立壁を設けたことを特徴としている。
【0011】
また本発明に係る耐震式供養塔において、納骨ユニットは、前部に開口する納骨室と開口部に嵌着した銘板を備えると共に、後部に開口する小径の挿通孔を備え、この挿通孔に連結筋を通して固定したことを特徴としている。
【0012】
また本発明に係る耐震式供養塔は、連結筋の先端に型枠板を固定して取りつけ、この型枠板と納骨ユニットの背面に形成される充填スペースにコンクリート材を充填して立壁を構成したことを特徴としている。
【0013】
また本発明に係る耐震式供養塔の施工方法は、上部に水平の載置面を備えた基台を構成する際に、この基台に上方に突出する垂直筋の下端一部を埋設する第1の工程。前記した載置面の前方位置に、直方体状の納骨ユニットを積み重ねて設置する第2の工程。前記した納骨ユニットに、垂直筋の位置を通過する長さの水平の連結筋を固定し、その突出端によって型枠板を配設する第3の工程。納骨ユニットの背面と型枠板の前面に形成される充填スペースにコンクリート材を流し込み、垂直筋と連結筋とを埋設した立壁を構成する第4の工程。の以上の第1の工程乃至第4の工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように構成した本発明の耐震式供養塔によれば、各納骨ユニットに固定した水平の連結筋と、基台に固定した垂直筋とをコンクリート製の立壁内に一体的に埋設するだけで、立壁と納骨ユニットを強固に結合することができる。このため、構造が簡単であり、また各納骨ユニットが立壁に密接し、内部の垂直筋が縦揺れに、水平の連結筋が横揺れに対応するので高い耐震性を得ることができる。
【0015】
また本発明の耐震式供養塔によれば、納骨ユニットから突出する連結筋を使用して型枠板の位置、すなわち立壁の厚さを決めることができる。このため、部分むらのない均一強度の耐震壁を構成することができることは勿論、突出長さを変えることで立壁強度を変え、大小様々の供養塔に適切に対応することができる。
【0016】
さらに本発明における耐震式供養塔の施工方法によれば、充填スペース内にコンクリートを流し込むだけで主要工事を完了することができるので、工程数を減らして簡単容易に施工ができる。また本発明の施工方法によれば、納骨ユニットの背面部と立壁とを密着することができる。このため、納骨室への雨水の侵入などを効果的に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】 本発明に係る耐震式供養塔の一実施例を示す縦断側面図である。
図2】 同じく、一部を拡大して示す縦断側面図である。
図3】 同じく、施工状態の説明図である。
図4】 耐震式供養塔の全体構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る耐震式供養塔の一実施例をその施工手順と共に説明する。
【0019】
図3において、Hは下段の基礎30と上段の載置台31によって構成したコンクリート製の基台 これら基礎30と載置台31にはそれぞれ水平筋1、1を埋設し構成強度を確保する。なお、これら基礎30と載置台31は、一度のコンクリート流し込みにより、同時に構成することが望ましい。Aは基台Hの上部、すなわち載置台31の上面に形成した水平の載置面 2は上記の基台Hを構成するときに、載置面Aの後方位置に上方に突出するように配設した垂直筋 この垂直筋2の下端は、基台H内に埋設されるもので、基礎30と載置台31の水平筋1の位置に達している。上記の水平筋1と垂直筋2は網枠状に形成するものであり、鉄筋の太さは、図の例で直径13mmとする。また垂直筋2の載置面Aからの突出長さは1500mmである。
【0020】
Bは外形を直方体状に形成した納骨ユニットであり、大理石などの石材によって構成する。この納骨ユニットBは、前記した載置面Aの上部に段積み状(図例では3段)に配設する。これら納骨ユニットBにおける相互の接合面および最下段の納骨ユニットBと載置面Aの接合部には接着剤を施して硬化固定する。また各納骨ユニットBの背面部は、アンカーボルト((図示省略))を用いた固定金具3によって連結固定する。
【0021】
なお供養塔の外観デザインは、霊園あるいは寺院など設置場所によって決められるもので多種多様である。このため、図4に例示すような形態をとる場合があり、この実施例では、平面視ほぼL字形状の載置ベースA上に多数個の納骨ユニットBを立横両方向に配列した集合型をなしている。
【0022】
上記の納骨ユニットBは、予め工場などにおいて機械加工したものを施工現場に運搬し、所要形状に整列配置する。この納骨ユニットB内には、図1図2に示すように、前方に開口する複数の納骨室4を設ける。納骨室4の前部開口部には、供養塔の施工後に戒名などを刻印した銘板5を嵌着し、後部には、納骨ユニットBの背面部に開口する小径の挿通孔6(図2参照)を設ける。
【0023】
上記の挿通孔6には、納骨ユニットBの配置後または事前に、座金を介して後ろ向きに第1のねじ軸7を挿通し、その後端のねじ部にナット筒8を螺合して納骨ユニットBに固定する。このとき、第1のねじ軸7と挿通孔6の隙間には接着剤を充填する。続いて、上記のナット筒8の後端には後向きに第2のねじ軸9を螺着し、第1のねじ軸7に接続する。そして、図3に明示すように第2のねじ軸9の後端に、先太テーパ状のスペーサ部材10を螺合する。なお、このスペーサ部材10には、後方に突出する小径のねじ端12が付いている。
【0024】
上記の第1のねじ軸7、ナット筒8、第2のねじ軸9の各部材は、納骨ユニットBの背面から水平に突出する一連の連結筋Cを構成しており、端末のスペーサ部材10の位置調整により、突出長さを調整できるようにしてある。この連結筋Cは、基台Hに突設した垂直筋2の位置を通過するように延在させる。なお、第1のねじ軸7、第2のねじ軸9の太さは直径8mm程度である。
【0025】
図3において、11は下端を載置面Aに接し、側面をスペーサ部材10に接合するように配置したベニヤ合板などの型枠板 この型枠板11と、納骨ユニットBの背面とにはコンクリート材の充填スペースDを形成する。上記の型枠板11には、前記したスペーサ部材10に対応する小穴((図示省略))を設けるもので、ねじ端12が小穴を通して型枠板11の外側に突出する。このねじ端12には、ナットの付いたU字金具20を外側から螺合し、その締め込み操作によって型枠板11を固定する。
【0026】
また上記の型枠板11の外側には、通常の現場手法に従って立押えパイプ21と横押えパイプ22を配設し、そして、これらのパイプ部材をU字金具20に挿入した楔片23によって前向きに押圧する。このことによって型枠板11の平面度が確保されると共にその構造強度が確保される。
【0027】
以上において説明した各部材の配置および調整、すなわち、納骨ユニットBの配置、連結筋Cの取りつけ、スペーサ部材10の位置調整、型枠板11の配設および固定保持などの作業が終了したならば、充填スペースDにコンクリート材を流し込み、立壁Eを構成する。
【0028】
この立壁Eは、基台Hの垂直筋2と納骨ユニットBの連結筋Cを同時に埋設し、また基台Hの載置面Aに一体的に結合する構造体であるため、優れた耐震性を発揮することができる。また充填したコンクリート材は、納骨ユニットBの背面部に隙間なく密着するので、そこからの雨水、湿気の侵入を防止できる。このため、連結筋Cが腐食するおそれがなく、耐久的に初期強度を保持することができる。なお、万全を期するため、連結筋Cはステンレス鋼材を使用することが望ましい。
【0029】
充填スペースDのコンクリート材が十分に硬化したならば、楔片23を外して立押えパイプ21と横押えパイプ22を取り外し、さらにU字金具20を離脱して型枠板11を取り外す。この状態において、スペーサ部材10とねじ端12が立壁Eの外側面に露出するが、この部材は第2のねじ軸9から螺脱して取り外す。離脱後に残る凹部には、第2のねじ軸9の先端が突出することになるが、そこには座金を介してナット部材25を螺合する。そして、残余の部分にはモルタルなどの閉塞材13を充填し、立壁Eの外側面を平らにする。
【0030】
なお、この状態において、立壁Eの外側面にはコンクリート肌が露出することになるが、この部分には図1のように接着剤を用いて化粧石材14を配設し、また納骨ユニットB上面には装飾用の化粧石材15を配設する。このことによって供養塔としての美観および荘厳さを得ることができる。
【0031】
以上記載した手順により、集合型供養塔の耐震施工を合理的かつ簡単確実に行うことができる。特に本発明における供養塔は、納骨ユニットBに接合した立壁Eを構造主体として耐震強度を確保するようにした点で特徴的であり、積み重ね状態が異なるデザインの供養塔であってもこれに的確に対応することができる。
【0032】
なお一実施例では、基台Hから立ち上げた垂直筋2は短列配置となっているが、納骨ユニットBの積み重ね段数がさらに増加する場合、大型の納骨ユニットBを配置する場合などのおいては複列配置とし、さらに型枠板11の位置調整によってコンクリート材の充填スペースDを拡大して立壁Eの厚さを大きくすることができ、その構造強度を増大することができる。
【0033】
また一実施例では、ナット筒8を介して第1のねじ軸7と第2のねじ軸9とを連結する構成を採っているが、両ねじ軸7、8は一連のものであっても良いことは勿論である。このことによって、構成部品の点数削減を図ることができる。
【0034】
また本発明において使用するコンクリート材は、砂や砂利、水などをセメントで結合硬化させたものを指しているが、アスファルトで結合硬化させたもの、また合成樹脂や金属の繊維を混ぜ込んで強度・延性を増強させたものでも良く、これらについても本発明の技術思想の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0035】
H 基台
A 載置面
1 水平筋
2 垂直筋
B 納骨ユニット
3 固定金具
4 納骨室
5 銘板
6 挿通孔
7 第1のねじ軸
8 ナット筒
9 第2のねじ軸
10 スペーサ部材
C 連結筋
11 型枠板
12 ねじ端
D 充填スペース
E 立壁
13 閉塞部材
14 化粧石材
15 化粧石材
20 U字金具
21 立押えパイプ
22 横押えパイプ
23 楔片
25 ナット部材
30 基礎
31 載置台
図1
図2
図3
図4