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特許7049613加圧ヘッド、複合材料成形装置及び複合材料成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】加圧ヘッド、複合材料成形装置及び複合材料成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/52 20060101AFI20220331BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20220331BHJP
   B29C 70/28 20060101ALI20220331BHJP
   B29C 70/46 20060101ALI20220331BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20220331BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20220331BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20220331BHJP
【FI】
B29C43/52
B29C70/06
B29C70/28
B29C70/46
B29C70/54
H05B6/10 331
B29K105:08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018015618
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019133853
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神原 信幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 賢剛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 清嘉
(72)【発明者】
【氏名】阿部 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】村岡 幹夫
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0071217(US,A1)
【文献】国際公開第2017/183467(WO,A1)
【文献】特開2013-154625(JP,A)
【文献】特開平03-058809(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133406(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C43/00-43/58,70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気伝導性を有する強化繊維に反応前の樹脂を含浸させた反応前の複合材料の一方側に設けられる磁場コイルと前記複合材料を介して対向して前記複合材料の他方側に設けられる加圧ヘッドであって、
前記磁場コイルが印加する磁場に対して透明な材料で形成された加圧ヘッド本体と、
前記加圧ヘッド本体の前記複合材料と対向する側に設けられ、前記磁場コイルが印加する磁場に対して透明であり、かつ、前記複合材料よりも熱伝導率が高い材料で形成された高熱伝導材層と、
前記加圧ヘッド本体と前記高熱伝導材層との間に設けられ、前記磁場コイルが印加する磁場に応じて発熱し、かつ、前記複合材料よりも熱容量が低い材料で形成された発熱材層と、
を有することを特徴とする加圧ヘッド。
【請求項2】
前記高熱伝導材層を形成する材料は、窒化アルミニウム、窒化珪素、サファイア、アルミナ、炭化珪素、及び、前記磁場コイルが印加する磁場に応じて渦電流が未発生となる一方向材を含むシート材料のうちいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の加圧ヘッド。
【請求項3】
前記発熱材層は、金属薄膜であることを特徴とする請求項または請求項に記載の加圧ヘッド。
【請求項4】
前記高熱伝導材層及び前記発熱材層に対して前記加圧ヘッド本体がある側に設けられ、前記加圧ヘッド本体よりも熱伝導率が低い材料で形成された断熱材層と、をさらに含むことを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の加圧ヘッド。
【請求項5】
前記断熱材層は、樹脂材であることを特徴とする請求項に記載の加圧ヘッド。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の加圧ヘッドと、
前記複合材料に、前記複合材料の一方側から磁場を印加して、前記複合材料を加熱する磁場コイルと、
を備えることを特徴とする複合材料成形装置。
【請求項7】
電気伝導性を有する強化繊維に反応前の樹脂を含浸させた反応前の複合材料に向けて磁場コイルを配置して、前記複合材料の一方側から磁場を印加して前記複合材料を加熱する加熱ステップと、
加圧ヘッドの高熱伝導材層が設けられた側を前記複合材料の他方側に向けて、前記複合材料の他方側から前記加圧ヘッドで加圧することで、前記複合材料を加圧するとともに、前記複合材料を均熱化する加圧均熱化ステップと、
を有し、
前記加熱ステップでは、前記加圧ヘッドの前記磁場コイルが印加する磁場に対して透明な材料で形成された加圧ヘッド本体と前記高熱伝導材層との間に設けられ、前記複合材料よりも熱容量が低い材料で形成された発熱材層が、前記磁場コイルが印加する磁場によって内部に弱い渦電流が誘起され、さらに前記発熱材層自体の電気抵抗によって内部に発熱を生じさせ、
前記加圧均熱化ステップでは、前記発熱が前記高熱伝導材層に伝達され、前記高熱伝導材層は、前記発熱の分だけ、全面に均熱化された前記複合材料の温度を上昇させる、
ことを特徴とする複合材料成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧ヘッド、複合材料成形装置及び複合材料成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量性及び高い強度を有する材料には、強化繊維に樹脂を含浸させた複合材料が知られている。複合材料は、航空機、自動車及び船舶等に用いられている。複合材料を製造する方法としては、強化繊維に樹脂を含浸させた複合材料のシートを積層し、積層したシートを加圧した状態で磁場を印加して加熱する方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-116293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複合材料は、強化繊維の部分において導線性を有する。このため、複合材料は、特定の方向を除き、電気伝導率が低い。特許文献1の方法で、このような複合材料を成形する場合、複合材料の電気伝導率が低いために、複合材料に対して全体的に磁場を印加して加熱したとしても、加熱中の複合材料に温度ムラが生じてしまうという問題があった。これにより、特許文献1の方法で樹脂を反応させて得られる複合材料は、強度ムラが生じてしまい、高品質のものとはならないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、加熱中の複合材料に温度ムラが生じることを低減する加圧ヘッド、複合材料成形装置及び複合材料成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、加圧ヘッドは、反応前の複合材料の一方側に設けられる磁場コイルと前記複合材料を介して対向して前記複合材料の他方側に設けられる加圧ヘッドであって、前記磁場コイルが印加する磁場に対して透明な材料で形成された加圧ヘッド本体と、前記加圧ヘッド本体の前記複合材料と対向する側に設けられ、前記磁場コイルが印加する磁場に対して透明であり、かつ、前記複合材料よりも熱伝導率が高い材料で形成された高熱伝導材層と、を有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、高熱伝導材層が複合材料の内部で生じた発熱を面内方向に分散させることができるため、加熱中の複合材料に温度ムラが生じることを低減することができる。これにより、この構成によれば、樹脂を反応させて得られる複合材料に強度ムラが生じることを低減することができるので、高品質な複合材料を得ることができる。
【0008】
この構成において、前記高熱伝導材層を形成する材料は、窒化アルミニウム、窒化珪素、サファイア、アルミナ、炭化珪素、及び、前記磁場コイルが印加する磁場に応じて渦電流が未発生となる一方向材を含むシート材料のうちいずれか1つを含むことが好ましい。この構成によれば、高熱伝導材層が複合材料の内部で生じた発熱を面内方向に素早く分散させることができるため、加熱中の複合材料に温度ムラが生じることをより低減することができる。
【0009】
これらの構成において、前記加圧ヘッド本体と前記高熱伝導材層との間に設けられ、前記磁場コイルが印加する磁場に応じて発熱し、かつ、前記複合材料よりも熱容量が低い材料で形成された発熱材層と、をさらに含むことが好ましい。あるいは、前記高熱伝導材層の前記複合材料と対向する側に設けられ、前記磁場コイルが印加する磁場に応じて発熱し、かつ、前記複合材料よりも熱容量が低い材料で形成された発熱材層と、をさらに含むことが好ましい。これらの構成によれば、発熱材層が、磁場コイルにより印加され、複合材料により発熱に供されることなく加圧ヘッドの側に漏れてくる磁場に応じて発熱を生じさせることができるので、効率よく複合材料を加熱することができる。
【0010】
発熱材層を含む構成において、前記発熱材層は、金属薄膜であることが好ましい。この構成によれば、発熱材層がより効率よく発熱することができるので、より効率よく複合材料を加熱することができる。
【0011】
発熱材層を含む構成において、前記高熱伝導材層及び前記発熱材層に対して前記加圧ヘッド本体がある側に設けられ、前記加圧ヘッド本体よりも熱伝導率が低い材料で形成された断熱材層と、をさらに含むことが好ましい。この構成によれば、断熱材層が複合材料及び発熱材層での発熱が加圧ヘッド本体の方向へ伝達することを低減することができるので、さらに効率よく複合材料を加熱することができる。
【0012】
発熱材層を含まない構成において、前記加圧ヘッド本体と前記高熱伝導材層との間に設けられ、前記加圧ヘッド本体よりも熱伝導率が低い材料で形成された断熱材層と、をさらに含むことが好ましい。この構成によれば、断熱材層が複合材料での発熱が加圧ヘッド本体の方向へ伝達することを低減することができるので、さらに効率よく複合材料を加熱することができる。
【0013】
断熱材層を含む構成において、前記断熱材層は、樹脂材であることが好ましい。この構成によれば、断熱材層が複合材料等での発熱が加圧ヘッド本体の方向へ伝達することをより低減することができるので、さらに効率よく複合材料を加熱することができる。
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、加圧ヘッドは、反応前の複合材料に配置された金属ナノコイルと対向して設けられる加圧ヘッドであって、前記金属ナノコイルに印加される電場に対して透明な材料で形成された加圧ヘッド本体と、前記加圧ヘッド本体の前記複合材料と対向する側に設けられ、前記金属ナノコイルに印加される電場に対して透明であり、かつ、前記複合材料よりも熱伝導率が高い材料で形成された高熱伝導材層と、を有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、高熱伝導材層が金属ナノコイルで生じた発熱を面内方向に分散させることができるため、加熱中の複合材料に温度ムラが生じることを低減することができる。これにより、この構成によれば、樹脂を反応させて得られる複合材料に強度ムラが生じることを低減することができるので、高品質な複合材料を得ることができる。
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、複合材料成形装置は、上記したいずれか1つの磁場コイルと対向して設けられる加圧ヘッドと、前記複合材料に、前記複合材料の一方側から磁場を印加して、前記複合材料を加熱する磁場コイルと、を備えることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、高熱伝導材層が複合材料の内部で生じた発熱を面内方向に分散させることができるため、加熱中の複合材料に温度ムラが生じることを低減することができる。これにより、この構成によれば、樹脂を反応させて得られる複合材料に強度ムラが生じることを低減することができるので、高品質な複合材料を得ることができる。
【0018】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、複合材料成形装置は、上記した金属ナノコイルと対向して設けられる加圧ヘッドと、前記複合材料に配置された金属ナノコイルと、前記複合材料に、前記複合材料の延びる方向に沿って電場を印加して、前記金属ナノコイルを発熱させることで、前記複合材料を加熱する電場印加部と、を備えることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、高熱伝導材層が金属ナノコイルで生じた発熱を面内方向に分散させることができるため、加熱中の複合材料に温度ムラが生じることを低減することができる。これにより、この構成によれば、樹脂を反応させて得られる複合材料に強度ムラが生じることを低減することができるので、高品質な複合材料を得ることができる。
【0020】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、複合材料成形方法は、反応前の複合材料に向けて磁場コイルを配置して、前記複合材料の一方側から磁場を印加して前記複合材料を加熱する加熱ステップと、加圧ヘッドの高熱伝導材層が設けられた側を前記複合材料の他方側に向けて、前記複合材料の他方側から前記加圧ヘッドで加圧することで、前記複合材料を加圧するとともに、前記複合材料を均熱化する加圧均熱化ステップと、を有することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、高熱伝導材層が複合材料の内部で生じた発熱を面内方向に分散させることができるため、加熱中の複合材料に温度ムラが生じることを低減することができる。これにより、この構成によれば、樹脂を反応させて得られる複合材料に強度ムラが生じることを低減することができるので、高品質な複合材料を得ることができる。
【0022】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、複合材料成形方法は、反応前の複合材料に金属ナノコイルを配置し、前記複合材料に向けて電場印加部を配置して、前記複合材料の延びる方向に沿って電場を印加して前記金属ナノコイルを発熱させることで、前記複合材料を加熱する加熱ステップと、加圧ヘッドの高熱伝導材層が設けられた側を前記複合材料の他方側に向けて、前記複合材料の他方側から前記加圧ヘッドで加圧することで、前記複合材料を加圧するとともに、前記複合材料を均熱化する加圧均熱化ステップと、を有することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、高熱伝導材層が金属ナノコイルで生じた発熱を面内方向に分散させることができるため、加熱中の複合材料に温度ムラが生じることを低減することができる。これにより、この構成によれば、樹脂を反応させて得られる複合材料に強度ムラが生じることを低減することができるので、高品質な複合材料を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、加熱中の複合材料に温度ムラが生じることを低減する加圧ヘッド、複合材料成形装置及び複合材料成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る複合材料成形装置の概略構成図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係る複合材料成形方法のフローチャートである。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係る複合材料成形装置によって成形処理された後の複合材料の状態の一例を示す図である。
図4図4は、比較例に係る複合材料成形装置の概略構成図である。
図5図5は、比較例に係る複合材料成形装置によって成形処理された後の複合材料の状態の一例を示す図である。
図6図6は、本発明の第1の実施形態に係る複合材料成形装置と比較例に係る複合材料成形装置とがそれぞれ複合材料を成形処理した際の複合材料の内部の最大温度差を示すグラフである。
図7図7は、本発明の第2の実施形態に係る複合材料成形装置の概略構成図である。
図8図8は、本発明の第3の実施形態に係る複合材料成形装置の概略構成図である。
図9図9は、本発明の第4の実施形態に係る複合材料成形装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0027】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る複合材料成形装置10の概略構成図である。複合材料成形装置10は、図1に示すように、加圧ヘッド20と、磁場コイル30と、制御部40と、を備える。複合材料成形装置10は、強化繊維に反応前の樹脂を含浸させた反応前の複合材料2を、所定の大きさ及び所定の形状に成形しつつ、反応させる。樹脂は、加熱されることで軟化状態または半硬化状態から硬化状態に熱硬化反応する熱硬化性樹脂と、加熱されることで熱溶融反応する熱可塑性樹脂と、が例示される。以下において、樹脂は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを区別しない場合には、熱硬化性樹脂の熱硬化反応と熱可塑性樹脂の熱溶融反応とを、単に反応と称する。
【0028】
複合材料2は、第1の実施形態では、複合材料成形装置10において、鉛直方向である図1のZ方向に沿う方向に直交し、水平方向である図1のX方向を含む方向に沿って延びる平板形状に、水平方向に延びる平面台8の上に配置され、成形される。詳細には、複合材料2は、後述する強化繊維が水平方向に沿って延びるように配置され、成形される。すなわち、第1の実施形態では、鉛直方向と、複合材料2の厚さ方向とが一致する。第1の実施形態では、複合材料2における鉛直方向下側を一方側と称し、複合材料2における鉛直方向上側を他方側と称する。また、第1の実施形態では、複合材料2において加圧ヘッド20及び磁場コイル30により加圧及び加熱加工をされている領域を、所定の領域4と称する。なお、本発明では、複合材料2は、このような配置をされる形態に限定されず、いかなる配置がなされてもよい。また、本発明では、複合材料2は、このような平板形状に成形される形態に限定されず、曲線を有する複雑な形状等、いかなる形状に成形されてもよい。また、本発明では、所定の領域4は、このような複合材料2の一部の領域である形態に限定されず、複合材料2の全体の領域であってもよい。
【0029】
複合材料2に含まれる強化繊維は、電気伝導性を有するので、後述する磁場コイル30が印加する磁場32によって複合材料2の内部に渦電流を誘起される。複合材料2に含まれる強化繊維は、内部に渦電流が誘起されることで、強化繊維自体の電気抵抗によって発熱34が生じる。すなわち、複合材料2は、磁場32に応じて内部に発熱34を生じさせる。複合材料2に含まれる強化繊維で生じた発熱34は、複合材料2に含まれる樹脂に伝えられ、樹脂の反応に寄与する。
【0030】
複合材料2は、軽量性及び高い強度を有する。複合材料2に含まれる強化繊維は、第1の実施形態では炭素繊維が例示されるが、これに限定されることはなく、その他の金属繊維でもよい。複合材料2に含まれる樹脂は、第1の実施形態では、熱硬化性樹脂である場合、エポキシ系樹脂を有する樹脂が例示される。複合材料2に含まれる樹脂がエポキシ系樹脂を有する場合、さらに軽量性及びさらに高い強度を有するので、好ましい。樹脂は、第1の実施形態では、熱硬化性樹脂である場合、他には、ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂が例示される。樹脂は、第1の実施形態では、熱可塑性樹脂である場合、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、及びポリフェニレンサルファイド(PPS)等が例示される。ただし、樹脂は、これらに限定されず、その他の樹脂でもよい。
【0031】
平面台8は、磁場コイル30が印加する磁場32に対して透明な材料、すなわち、磁場コイル30が印加する磁場32によってほとんど内部に渦電流を誘起されず、磁場コイル30が印加する磁場32に応じてほとんど内部に発熱を生じさせない材料で構成されている。平面台8を形成する材料は、第1の実施形態では、いずれも、磁場32に対して透明であり、かつ、耐圧性及び耐熱性が高い材料であるPEEK樹脂、及びセラミックスが好ましい。
【0032】
加圧ヘッド20は、図1に示すように、複合材料2の所定の領域4の他方側と対向して設けられており、複合材料2及び平面台8を介して、磁場コイル30と鉛直方向に対向して設けられている。加圧ヘッド20は、複合材料2の所定の領域4を、複合材料2の他方側から加圧する。
【0033】
加圧ヘッド20は、図1に示すように、加圧ヘッド本体22と、高熱伝導材層24と、発熱材層26と、断熱材層28と、を含む。加圧ヘッド20では、断熱材層28が加圧ヘッド本体22の鉛直方向下側に設けられている。加圧ヘッド20では、発熱材層26が断熱材層28の鉛直方向下側に設けられている。加圧ヘッド20では、高熱伝導材層24が発熱材層26の鉛直方向下側に設けられている。高熱伝導材層24、発熱材層26及び断熱材層28は、いずれも、水平方向に沿って延びる形状及び大きさが、加圧ヘッド本体22の水平方向に沿って延びる形状及び大きさと等しい形態が例示される。高熱伝導材層24、発熱材層26及び断熱材層28は、いずれも、鉛直方向に沿う厚さが、水平方向に沿う位置に依らず均一な形態が例示される。加圧ヘッド20は、このような構成を有するので、高熱伝導材層24を複合材料2に押し当てながら、複合材料2を加圧することができる。
【0034】
加圧ヘッド本体22は、磁場コイル30が印加する磁場32に対して透明な材料で形成されている。加圧ヘッド本体22を形成する材料は、磁場32に対して透明で、かつ、耐圧性及び耐熱性が高い材料であるPEEK樹脂、及びセラミックスであることが好ましい。
【0035】
加圧ヘッド本体22は、図1における鉛直方向上側に、図示しない加圧シリンダが設けられており、この加圧シリンダが制御部40と電気的に接続されている。加圧ヘッド20は、制御部40により加圧ヘッド本体22の加圧シリンダが制御されることにより、複合材料2に対して相対的に鉛直方向上下に移動することができ、かつ、複合材料2に対して鉛直方向下側へ向けて印加する圧力を変更することができる。加圧ヘッド20は、複合材料2の所定の領域4を200kPa以上800kPa以下で加圧することが好ましく、300kPa以上600kPa以下で加圧することがより好ましい。
【0036】
高熱伝導材層24は、加圧ヘッド本体22の複合材料2の所定の領域4と対向する側に、すなわち鉛直方向下側に、断熱材層28及び発熱材層26を介して、加圧ヘッド本体22の鉛直方向下側の水平方向に沿って延びる面を覆うように設けられている。高熱伝導材層24は、磁場コイル30が印加する磁場32に対して透明であり、かつ、複合材料2よりも熱伝導率が高い材料で形成されている。
【0037】
高熱伝導材層24は、複合材料2よりも高い熱伝導率を有するので、複合材料2の内部で生じた発熱34を面内方向に分散させて、複合材料2の所定の領域4の他方側に、全面に均熱化された加熱領域38を形成することができる。このため、高熱伝導材層24は、加熱中の複合材料2に温度ムラが生じることを低減することができる。これにより、高熱伝導材層24は、樹脂を反応させて得られる複合材料2に強度ムラが生じることを低減することができるので、高品質な複合材料2を得ることに寄与することができる。
【0038】
また、高熱伝導材層24は、後述する発熱材層26で生じた発熱36を、複合材料2の所定の領域4の他方側に伝達して、複合材料2の加熱に寄与させることができる。このため、高熱伝導材層24は、発熱36を伝達することで、効率よく複合材料2を加熱することを補助する。
【0039】
高熱伝導材層24を形成する材料は、20W/m・K以上の熱伝導率を有する材料が好ましく、100W/m・K以上の熱伝導率を有する材料がより好ましい。高熱伝導材層24を形成する材料は、具体的には、150W/m・K以上285W/m・K以下の熱伝導率を有する窒化アルミニウム、27W/m・K以上50W/m・K以下の熱伝導率を有する窒化珪素、30W/m・K以上40W/m・K以下の熱伝導率を有するサファイア及びアルミナ、200W/m・K以上の熱伝導率を有する炭化ケイ素、並びに、磁場コイル30が印加する磁場32に応じて渦電流が未発生となる一方向材である20W/m・K以上の熱伝導率を有する炭素繊維またはチラノ繊維等を含むシート材料が好ましい。
【0040】
発熱材層26は、加圧ヘッド本体22と高熱伝導材層24との間に設けられている。発熱材層26は、磁場コイル30が印加する磁場32に応じて発熱36が生じ、かつ、複合材料2よりも熱容量が低い材料で形成されている。発熱材層26は、磁場コイル30により印加され、複合材料2により発熱34に供されることなく加圧ヘッド20の側に漏れてくる磁場32によって内部に弱い渦電流が誘起され、さらに、発熱材層26自体の電気抵抗によって内部に発熱36を生じさせる。発熱材層26は、複合材料2よりも熱容量が低いので、すなわち、十分に薄いので、磁場コイル30が印加する磁場32に応じて内部に十分に弱い渦電流が誘起されるため、強い渦電流が誘起されて磁場コイル30が印加する磁場32を相殺して複合材料2の加熱を妨げることがないので、磁場コイル30が印加する磁場32に応じて効率よく複合材料2を加熱することを補助する。
【0041】
発熱材層26を形成する材料は、金属薄膜が好ましく、具体的には、厚さが100μm以下のアルミニウム箔が好ましく、厚さが20μm以下のアルミニウム箔がより好ましく、厚さが10μm以上20μm以下のアルミニウム箔がさらに好ましい。
【0042】
断熱材層28は、加圧ヘッド本体22と発熱材層26との間に設けられている。すなわち、断熱材層28は、高熱伝導材層24及び発熱材層26に対して加圧ヘッド本体22がある側に設けられている。断熱材層28は、加圧ヘッド本体22よりも熱伝導率が低い材料で形成されている。断熱材層28を形成する材料は、具体的には、樹脂材であることが好ましい。断熱材層28は、複合材料2に含まれる強化繊維で生じた発熱34と発熱材層26で生じた発熱36とが加圧ヘッド本体22へ伝達されることを低減することで、発熱34と発熱36とが効率よく複合材料2の加熱に寄与することを補助する。このため、断熱材層28は、効率よく複合材料2を加熱することを補助する。
【0043】
磁場コイル30は、図1に示すように、複合材料2の所定の領域4の一方側と対向して設けられており、平面台8及び複合材料2を介して、加圧ヘッド20と鉛直方向に対向して設けられている。磁場コイル30は、複合材料2の所定の領域4に、複合材料2の一方側から磁場32を印加する。
【0044】
磁場コイル30は、第1の実施形態では、1つのコイルが配置された形態が例示されるが、複数のコイルが所定の形状、例えば正方形状に配列された形態が用いられてもよい。磁場コイル30は、コイルが配置された水平方向の領域と同等の領域に磁場32を印加する。第1の実施形態では、磁場コイル30が磁場32を印加する領域は、複合材料2の所定の領域4に対応している。
【0045】
磁場コイル30に含まれるコイルは、コイルの中心軸が複合材料2の延びる面と交差する方向を向いている。磁場コイル30は、複合材料2の延びる面と交差する方向に沿って磁場32を発生させることで、複合材料2に含まれる強化繊維が延びる方向と交差する方向に沿って磁場32を発生させる。磁場コイル30は、磁場コイル30の鉛直方向上側の端部が複合材料2の一方側の面と所定の距離を離して配置されている。この所定の距離は、1.5cmが例示される。
【0046】
磁場コイル30に含まれるコイルは、コイルの中心軸が鉛直方向に沿った方向を向いていることが好ましい。この場合、磁場コイル30は、複合材料2の延びる面と直交する方向に沿って磁場32を発生させることで、複合材料2に含まれる強化繊維が延びる方向と直交する方向に沿って磁場32を発生させる。そして、複合材料2に含まれる強化繊維は、複合材料2の強化繊維が延びる方向と直交する方向に沿った磁場32が印加されることで、効率よく渦電流が誘起されるため、効率よく発熱34を生じさせることができる。このため、磁場コイル30は、効率よく複合材料2の所定の領域4を加熱することができる。
【0047】
磁場コイル30は、制御部40と電気的に接続されている。磁場コイル30は、制御部40により制御されることにより、複合材料2に対して鉛直方向上側へ向けて印加する磁場32の大きさ及び周波数等を変更することができる。磁場コイル30は、複合材料2の所定の領域4に900kHz以上の高周波磁場を印加することが好ましい。
【0048】
制御部40は、加圧ヘッド本体22に設けられている加圧シリンダと、電気的に接続されている。制御部40は、磁場コイル30と電気的に接続されている。制御部40は、加圧シリンダを制御することで加圧ヘッド20を制御し、これにより、加圧ヘッド20の複合材料2に対する相対的な鉛直方向の位置と、複合材料2に対して鉛直方向下側へ向けて印加する圧力と、等を制御することができる。制御部40は、磁場コイル30に流す電流を制御することで、磁場コイル30が印加する磁場32の大きさ及び周波数を制御することができ、これにより、複合材料2の具体的な樹脂の組成等に応じて、複合材料2を加熱する加熱温度、昇温速度、及び加熱時間を制御することができる。
【0049】
制御部40は、記憶部と、処理部と、を備える。記憶部は、例えばRAM、ROM及びフラッシュメモリー等の記憶装置を有し、処理部により処理されるソフトウェア・プログラム及びこのソフトウェア・プログラムにより参照されるデータ等を記憶する。また、記憶部は、処理部が処理結果等を一時的に記憶する記憶領域としても機能する。処理部は、記憶部からソフトウェア・プログラム等を読み出して処理することで、ソフトウェア・プログラムの内容に応じた機能、具体的には、複合材料成形装置10によって実行される複合材料成形方法の実行を可能にする種々の機能を発揮する。
【0050】
複合材料成形装置10は、複合材料2に対する加圧ヘッド20の水平方向の位置と、複合材料2に対する磁場コイル30の水平方向の位置と、を同期して変化させる図示しない移動機構が設けられていてもよい。この移動機構は、制御部40により制御され、複合材料成形装置10による成形加工中に、加圧ヘッド20により加圧する領域及び磁場コイル30により磁場32を印加する領域である所定の領域4を、複合材料2において移動させることができる。制御部40は、所定の領域4が複合材料2のどの領域を移動したかどうかを、随時判定することができる。
【0051】
以上のような構成を有する第1の実施形態に係る複合材料成形装置10の作用について以下に説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る複合材料成形方法のフローチャートである。第1の実施形態に係る複合材料成形装置10によって実行される処理方法である第1の実施形態に係る複合材料成形方法について、図2を用いて説明する。第1の実施形態に係る複合材料成形方法は、図2に示すように、加熱ステップS12と、加圧均熱化ステップS14と、を有する。
【0052】
先に、加熱ステップS12及び加圧均熱化ステップS14に入る前の準備ステップを行う。準備ステップは、強化繊維に反応前の樹脂を含浸させた反応前の複合材料2を、平面台8の鉛直方向上側に、水平方向に沿って延びる平板形状に配置するステップである。
【0053】
加熱ステップS12は、準備ステップの後に行われる。加熱ステップS12は、まず、制御部40が、平面台8の上に配置された複合材料2の所定の領域4の一方側と鉛直方向に対向する位置に、複合材料2の所定の領域4に向けて磁場コイル30を移動させて配置する。加熱ステップS12は、次に、制御部40が、磁場コイル30に電流を流すことで、磁場コイル30により複合材料2の一方側から磁場32を印加して、複合材料2の所定の領域4を加熱するステップである。
【0054】
加熱ステップS12では、複合材料2と発熱材層26以外の構成部分、具体的には、平面台8、加圧ヘッド本体22、高熱伝導材層24及び断熱材層28は、いずれも磁場コイル30が印加する磁場32に対して透明であるため、磁場32によってほとんど内部に渦電流を誘起されず、磁場32に応じてほとんど内部に発熱を生じさせない。
【0055】
加熱ステップS12では、複合材料2は、複合材料2の所定の領域4に存在する強化繊維が、磁場32によって内部に渦電流が誘起され、さらに、強化繊維自体の電気抵抗によって内部に発熱34を生じさせる。これにより、複合材料2は、この発熱34が樹脂に伝えられることで、加熱され、樹脂が反応される。
【0056】
加熱ステップS12では、加えて、発熱材層26が、磁場32によって内部に弱い渦電流が誘起され、さらに、発熱材層26自体の電気抵抗によって内部に発熱36を生じさせる。これにより、複合材料2は、この発熱36が樹脂に伝えられることで、加熱が補助され、樹脂の反応が補助される。
【0057】
加圧均熱化ステップS14は、準備ステップの後に、かつ、加熱ステップS12と並行して行われる。加圧均熱化ステップS14は、まず、制御部40が、平面台8の上に配置された複合材料2の他方側と鉛直方向に対向する位置に、加圧ヘッド20を移動させて、加圧ヘッド20の高熱伝導材層24が設けられた側を複合材料2の所定の領域4に向けた状態とする。加圧均熱化ステップS14は、次に、制御部40が、加圧ヘッド20の高熱伝導材層24が設けられた側を複合材料2の所定の領域4の他方側に押し当てながら、複合材料2の所定の領域4を他方側から加圧するステップである。
【0058】
加圧均熱化ステップS14では、加圧ヘッド20の高熱伝導材層24が設けられた側が複合材料2の所定の領域4に押し当てられるので、加熱ステップS12において複合材料2の所定の領域4でまばらに生じた発熱34が、高熱伝導材層24に伝達される。高熱伝導材層24は、複合材料2よりも高い熱伝導率を有するので、この発熱34を面内方向に分散させて、複合材料2の所定の領域4の他方側に、全面に均熱化された加熱領域38を形成する。このため、高熱伝導材層24は、加熱中の複合材料2に温度ムラが生じることを低減することができる。これにより、高熱伝導材層24は、樹脂を反応させて得られる複合材料2に強度ムラが生じることを低減することができるので、高品質な複合材料2を得ることに寄与することができる。
【0059】
加圧均熱化ステップS14では、加えて、発熱材層26で生じた発熱36が、高熱伝導材層24に伝達される。これにより、高熱伝導材層24は、この発熱36の分だけ、全面に均熱化された加熱領域38の温度を上昇させることができる。このため、高熱伝導材層24は、発熱36を伝達することで、効率よく複合材料2を加熱することを補助する。
【0060】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る複合材料成形装置10によって成形処理された後の複合材料2の状態の一例を示す図である。複合材料成形装置10によって成形処理された後の複合材料2は、図3に示すように、複合材料2の所定の領域4の全面が黒色化している。このことは、複合材料2の所定の領域4の全面において樹脂が反応したことを示しており、複合材料2の所定の領域4の全面に均熱化された加熱領域38が形成されていたことの痕跡である。
【0061】
図4は、比較例に係る複合材料成形装置110の概略構成図である。図5は、比較例に係る複合材料成形装置110によって成形処理された後の複合材料102の状態の一例を示す図である。比較例に係る複合材料成形装置110は、第1の実施形態に係る複合材料成形装置10に対して加圧ヘッド20に高熱伝導材層24、発熱材層26及び断熱材層28が設けられない構成である。なお、比較例に係る複合材料成形装置110は、他の構成については、第1の実施形態に係る複合材料成形装置10と同様である。以下、比較例に係る複合材料成形装置110について、第1の実施形態に係る複合材料成形装置10と区別するため、異なる符号を付して説明する。比較例に係る複合材料成形装置110は、図4に示すように、加圧ヘッド本体122のみで構成される加圧ヘッド120と、磁場コイル130と、制御部140と、を備える。磁場コイル130は、制御部140により制御されることにより、平面台108の鉛直方向上側に水平方向に沿って延びる平板形状に配置された複合材料102の所定の領域104に、複合材料102の一方側から磁場132を印加する。複合材料102は、磁場132によって内部に渦電流が誘起され、これにより内部に発熱134を生じさせる。
【0062】
複合材料成形装置110によって成形処理された後の複合材料102は、図5に示すように、複合材料102の所定の領域104の図5における上側の一部の領域のみが黒色化している。このことは、複合材料102の所定の領域104のこの一部の領域においてのみ樹脂が反応したことを示しており、複合材料102の所定の領域104のこの一部の領域に発熱134が生じ、発熱134が水平方向に伝達していなかったことの痕跡である。
【0063】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る複合材料成形装置10と比較例に係る複合材料成形装置110とがそれぞれ複合材料2,102を成形処理した際の複合材料2,102の内部の最大温度差を示すグラフである。図6におけるAは、第1の実施形態に係る複合材料成形装置10が複合材料2を成形処理した際の複合材料2の内部の最大温度と最小温度との温度差を表しており、この温度差は、図6に示すように、80℃程度であった。図6におけるBは、比較例に係る複合材料成形装置110が複合材料102を成形処理した際の複合材料102の内部の最大温度と最小温度との温度差を表しており、この温度差は、図6に示すように、250℃程度であった。このことから、第1の実施形態に係る複合材料成形装置10は、加圧ヘッド本体22の複合材料2の所定の領域4と対向する側に高熱伝導材層24を設けたことにより、最大温度と最小温度との温度差が3分の1程度に低減することができたことがわかる。
【0064】
加圧ヘッド20、複合材料成形装置10及び複合材料成形装置10による複合材料成形方法は、以上のような構成を有するので、高熱伝導材層24が複合材料2の内部で生じた発熱34を面内方向に分散させることができるため、加熱中の複合材料2に温度ムラが生じることを低減することができる。これにより、加圧ヘッド20、複合材料成形装置10及び複合材料成形装置10による複合材料成形方法は、樹脂を反応させて得られる複合材料2に強度ムラが生じることを低減することができるので、高品質な複合材料2を得ることができる。
【0065】
また、加圧ヘッド20、複合材料成形装置10及び複合材料成形装置10による複合材料成形方法は、高熱伝導材層24を形成する材料が、窒化アルミニウム、窒化珪素、サファイア、アルミナ、炭化珪素、及び、磁場コイル30が印加する磁場32によって渦電流が未発生となる一方向材を含むシート材料のうちいずれか1つを含む。このため、加圧ヘッド20、複合材料成形装置10及び複合材料成形装置10による複合材料成形方法は、高熱伝導材層24が複合材料2の内部で生じた発熱34を面内方向に素早く分散させることができるため、加熱中の複合材料2に温度ムラが生じることをより低減することができる。
【0066】
また、加圧ヘッド20、複合材料成形装置10及び複合材料成形装置10による複合材料成形方法は、加圧ヘッド本体22と高熱伝導材層24との間に設けられ、磁場コイル30が印加する磁場32に応じて発熱し、かつ、複合材料2よりも熱容量が低い材料で形成された発熱材層26と、をさらに含む。このため、加圧ヘッド20、複合材料成形装置10及び複合材料成形装置10による複合材料成形方法は、発熱材層26が、磁場コイル30により印加され、複合材料2により発熱34に供されることなく加圧ヘッド20の側に漏れてくる磁場32に応じて発熱36を生じさせることができるので、効率よく複合材料2を加熱することができる。
【0067】
また、加圧ヘッド20、複合材料成形装置10及び複合材料成形装置10による複合材料成形方法は、発熱材層26が、金属薄膜である。このため、加圧ヘッド20、複合材料成形装置10及び複合材料成形装置10による複合材料成形方法は、発熱材層26がより効率よく発熱することができるので、より効率よく複合材料2を加熱することができる。
【0068】
また、加圧ヘッド20、複合材料成形装置10及び複合材料成形装置10による複合材料成形方法は、加圧ヘッド本体22と発熱材層26との間に設けられ、加圧ヘッド本体22よりも熱伝導率が低い材料で形成された断熱材層28と、をさらに含む。このため、加圧ヘッド20、複合材料成形装置10及び複合材料成形装置10による複合材料成形方法は、断熱材層28が複合材料2及び発熱材層26での発熱34,36が加圧ヘッド本体22の方向へ伝達することを低減することができるので、さらに効率よく複合材料2を加熱することができる。
【0069】
また、加圧ヘッド20、複合材料成形装置10及び複合材料成形装置10による複合材料成形方法は、断熱材層28が、樹脂材である。このため、加圧ヘッド20、複合材料成形装置10及び複合材料成形装置10による複合材料成形方法は、断熱材層28が複合材料2及び発熱材層26での発熱34,36が加圧ヘッド本体22の方向へ伝達することをより低減することができるので、さらに効率よく複合材料2を加熱することができる。
【0070】
[第2の実施形態]
図7は、本発明の第2の実施形態に係る複合材料成形装置50の概略構成図である。第2の実施形態に係る複合材料成形装置50は、第1の実施形態に係る複合材料成形装置10に対して加圧ヘッド20に発熱材層26が省略された構成である。なお、第2の実施形態に係る複合材料成形装置50は、他の構成については、第1の実施形態に係る複合材料成形装置10と同様である。以下、第2の実施形態に係る複合材料成形装置50における加圧ヘッド60について、第1の実施形態に係る複合材料成形装置10における加圧ヘッド20と区別するため、異なる符号を付して説明する。第2の実施形態に係る複合材料成形装置50は、その他の第1の実施形態と同様の構成に第1の実施形態と同一の符号群を用い、その詳細な説明を省略する。
【0071】
複合材料成形装置50は、図7に示すように、加圧ヘッド60と、磁場コイル30と、制御部40と、を備える。加圧ヘッド60は、図7に示すように、加圧ヘッド本体22と、高熱伝導材層24と、断熱材層28と、を含む。
【0072】
以上のような構成を有する第2の実施形態に係る複合材料成形装置50の作用について以下に説明する。第2の実施形態に係る複合材料成形装置50によって実行される処理方法である第2の実施形態に係る複合材料成形方法は、第1の実施形態に係る複合材料成形装置10によって実行される処理方法である第1の実施形態に係る複合材料成形方法に対して、加熱ステップS12において発熱材層26が発熱36を生じさせる部分が省略された構成である。なお、第2の実施形態に係る複合材料成形方法は、他の構成については、第1の実施形態に係る複合材料成形方法と同様である。
【0073】
加圧ヘッド60、複合材料成形装置50及び複合材料成形装置50による複合材料成形方法は、以上のような構成を有するので、発熱材層26によって引き起こされる作用効果を除き、加圧ヘッド20、複合材料成形装置10及び複合材料成形装置10による複合材料成形方法と同様の作用効果を奏する。
【0074】
[第3の実施形態]
図8は、本発明の第3の実施形態に係る複合材料成形装置70の概略構成図である。第3の実施形態に係る複合材料成形装置70は、第2の実施形態に係る複合材料成形装置50に対して高熱伝導材層24の複合材料2の所定の領域4と対向する側に金属ナノコイルシート80がさらに配置され、磁場32を印加する磁場コイル30が、電場92を印加する電場印加部90に変更された構成である。なお、第3の実施形態に係る複合材料成形装置70は、他の構成については、第2の実施形態に係る複合材料成形装置50と同様である。以下、第3の実施形態に係る複合材料成形装置70における制御部100について、それぞれ第2の実施形態に係る複合材料成形装置50における制御部40と区別するため、異なる符号を付して説明する。第3の実施形態に係る複合材料成形装置70は、その他の第2の実施形態と同様の構成に第2の実施形態と同一の符号群を用い、その詳細な説明を省略する。
【0075】
複合材料成形装置70は、図8に示すように、加圧ヘッド60と、電場印加部90と、制御部100と、金属ナノコイルシート80と、を備える。加圧ヘッド60は、加圧ヘッド本体22と、高熱伝導材層24と、断熱材層28と、を備え、加圧ヘッド本体22、高熱伝導材層24及び断熱材層28は、いずれも、電場印加部90により印加される電場92に対して透明な材料で形成されている。加圧ヘッド本体22及び断熱材層28は、いずれも、第1の実施形態で例示された材料と同様の物が例示される。高熱伝導材層24は、第1の実施形態で例示された材料のうち、磁場コイル30が印加する磁場32に応じて渦電流が未発生となる一方向材である20W/m・K以上の熱伝導率を有する炭素繊維またはチラノ繊維等を含むシート材料を除く材料と同様の物が例示される。加圧ヘッド60は、高熱伝導材層24が設けられた側が、金属ナノコイルシート80と対向して設けられている。金属ナノコイルシート80は、複合材料2の所定の領域4の他方側に配置されている。金属ナノコイルシート80は、金属ナノコイルが塗布されたシートである。金属ナノコイルは、溶液に分散して吹き付けることで塗布される。
【0076】
金属ナノコイルシート80に塗布された金属ナノコイルは、金属ナノコイルの軸方向に沿った電場印加部90が印加する電場92によって、分子運動量が増加して、金属ナノコイルの内部に発熱94が誘起される。一方、複合材料2は、電場92が印加されても、発熱が未発生となる。このため、複合材料2の所定の領域4の他方側に金属ナノコイルシート80を配置することで、複合材料2の所定の領域4の延びる方向に沿って電場印加部90が印加する電場92で、複合材料2の所定の領域4を選択的に加熱可能な状態にすることができる。金属ナノコイルは、直径が約100μmである。金属ナノコイルを構成する金属線の直径は、約90nmである。なお、金属ナノコイルの配置形態は、第3の実施形態では金属ナノコイルシート80の配置が例示されるが、これに限定されることなく、複合材料2の所定の領域4の他方側に金属ナノコイルを塗布する形態でもよく、予め複合材料2の所定の領域4の内部に金属ナノコイルを含ませておく形態でもよい。
【0077】
第3の実施形態では、加圧ヘッド60と金属ナノコイルシート80とは別々に設けられているが、これに限定されることなく、加圧ヘッド60と金属ナノコイルシート80とが一体化された構成としてもよい。
【0078】
電場印加部90は、図8に示すように、複合材料2の所定の領域4の延びる方向に向けて設けられている。電場印加部90は、複合材料2の所定の領域4の延びる方向に沿って、複合材料2の所定の領域4に向けて電場92を印加する。電場印加部90は、電源及び一対の電極が例示される。
【0079】
以上のような構成を有する第3の実施形態に係る複合材料成形装置70の作用について以下に説明する。第3の実施形態に係る複合材料成形装置70によって実行される処理方法である第3の実施形態に係る複合材料成形方法は、第2の実施形態に係る複合材料成形装置50によって実行される処理方法である第2の実施形態に係る複合材料成形方法に対して、加熱ステップS12と加圧均熱化ステップS14がそれぞれ次のように変更された構成である。第3の実施形態に係る加熱ステップS12は、第2の実施形態に係る加熱ステップS12において磁場コイル30により磁場32を印加して直接的に複合材料2を加熱することが、電場印加部90により電場92を印加して金属ナノコイルシート80を介して間接的に複合材料2を加熱することに変更された構成である。第3の実施形態に係る加圧均熱化ステップS14は、第2の実施形態に係る加圧均熱化ステップS14において加熱ステップS12の変更に伴って変更された構成である。なお、第3の実施形態に係る複合材料成形方法は、他の構成については、第2の実施形態に係る複合材料成形方法と同様である。
【0080】
具体的には、第3の実施形態に係る複合材料成形方法では、加熱ステップS12は、まず、複合材料2の所定の領域4の他方側に金属ナノコイルシート80を配置し、制御部100が、平面台8の上に配置された複合材料2の所定の領域4の延びる方向に向けた位置に、複合材料2の所定の領域4に向けて電場印加部90を移動させて配置する。加熱ステップS12は、次に、制御部100が、電場印加部90に電圧を印加することで、電場印加部90により複合材料2の所定の領域4の延びる方向に沿って電場92を印加して、複合材料2の所定の領域4を加熱するステップである。
【0081】
加熱ステップS12では、金属ナノコイルシート80は、電場92が印加されることによって、分子運動量が増加して、金属ナノコイルシート80に含まれる金属ナノコイルの内部に発熱94が誘起される。金属ナノコイルシート80の内部に生じた発熱94は、複合材料2の所定の領域4に伝達する。これにより、複合材料2は、この発熱94が樹脂に伝えられることで、加熱され、樹脂が反応される。
【0082】
加圧均熱化ステップS14では、金属ナノコイルシート80の内部に生じた発熱94は、金属ナノコイルシート80と隣接する高熱伝導材層24に伝達し、高熱伝導材層24によって面内方向に分散して、複合材料2の所定の領域4の他方側に、全面に均熱化された加熱領域98を形成する。
【0083】
第3の実施形態に係る加圧ヘッド60、複合材料成形装置70及び複合材料成形装置70による複合材料成形方法は、以上のような構成を有するので、第2の実施形態に係る加圧ヘッド60、複合材料成形装置50及び複合材料成形装置50による複合材料成形方法と同様の作用効果を奏する。
【0084】
第3の実施形態に係る加圧ヘッド60及び複合材料成形装置70は、第1の実施形態に係る加圧ヘッド20及び複合材料成形装置10と同様の発熱材層26がさらに設けられてもよい。ただし、この場合には、発熱材層26は、第1の実施形態で例示した金属薄膜ではなく、電場印加部90による電場92が印加されることで発熱する別の材料が用いられる。この場合、第3の実施形態に係る加圧ヘッド60、複合材料成形装置70及び複合材料成形装置70による複合材料成形方法は、加圧ヘッド20、複合材料成形装置10及び複合材料成形装置10による複合材料成形方法において発熱材層26によって引き起こされる作用効果と同様の作用効果を奏する。
【0085】
第3の実施形態に係る加圧ヘッド60及び複合材料成形装置70は、電場印加部90を第1の実施形態に係る加圧ヘッド20及び複合材料成形装置10と同様の磁場コイル30に変更してもよい。この場合、金属ナノコイルシート80に含まれる金属ナノコイルは、第1の実施形態における磁場コイル30に印加された磁場32よりも小さい磁場により、内部に十分な渦電流が誘起され、これにより内部に十分な発熱94を生じさせる。このため、第3の実施形態に係る加圧ヘッド60及び複合材料成形装置70は、磁場コイル30に印加させる磁場32を、第1の実施形態に係る加圧ヘッド20及び複合材料成形装置10よりも小さくすることができる。この場合にも、第3の実施形態に係る加圧ヘッド60、複合材料成形装置70及び複合材料成形装置70による複合材料成形方法は、その他の部分については、第1の実施形態に係る加圧ヘッド20、複合材料成形装置10及び複合材料成形装置10による複合材料成形方法と同様の作用効果を奏する。
【0086】
[第4の実施形態]
図9は、本発明の第4の実施形態に係る複合材料成形装置10´の概略構成図である。第4の実施形態に係る複合材料成形装置10´は、第1の実施形態に係る複合材料成形装置10において高熱伝導材層24と発熱材層26との鉛直方向の位置関係を入れ替えた構成である。なお、第4の実施形態に係る複合材料成形装置10´は、他の構成については、第1の実施形態に係る複合材料成形装置10と同様である。以下、第4の実施形態に係る複合材料成形装置10´について、第1の実施形態に係る複合材料成形装置10と区別するため、異なる符号を付して説明する。第4の実施形態に係る複合材料成形装置10´は、その他の第1の実施形態と同様の構成に第1の実施形態と同一の符号群を用い、その詳細な説明を省略する。
【0087】
複合材料成形装置10´における発熱材層26は、図9に示すように、高熱伝導材層24の複合材料2と対向する側に設けられている。すなわち、複合材料成形装置10´における加圧ヘッド20では、断熱材層28が加圧ヘッド本体22の鉛直方向下側に設けられており、高熱伝導材層24が断熱材層28の鉛直方向下側に設けられており、発熱材層26が高熱伝導材層24の鉛直方向下側に設けられている。
【0088】
以上のような構成を有する第4の実施形態に係る複合材料成形装置10´の作用は、第1の実施形態に係る複合材料成形装置10の作用とほぼ同様である。すなわち、第4の実施形態に係る複合材料成形装置10´によって実行される処理方法である第4の実施形態に係る複合材料成形方法は、第1の実施形態に係る複合材料成形装置10によって実行される処理方法である第1の実施形態に係る複合材料成形方法とほぼ同様である。
【0089】
複合材料成形装置10´における加圧ヘッド20、複合材料成形装置10´及び複合材料成形装置10´による複合材料成形方法は、以上のような構成を有するので、複合材料成形装置10における加圧ヘッド20、複合材料成形装置10及び複合材料成形装置10による複合材料成形方法と同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0090】
2,102 複合材料
4,104 所定の領域
8,108 平面台
10,10´,50,70,110 複合材料成形装置
20,60,120 加圧ヘッド
22,122 加圧ヘッド本体
24 高熱伝導材層
26 発熱材層
28 断熱材層
30,130 磁場コイル
32,132 磁場
34,36,94,134 発熱
38,98 加熱領域
40,100,140 制御部
80 金属ナノコイルシート
90 電場印加部
92 電場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9