(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】膜式マイコンガスメータにおけるクランク部材の組み立て方法及びそれに用いられるカシメ用治具
(51)【国際特許分類】
G01F 3/22 20060101AFI20220331BHJP
B23P 19/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
G01F3/22 A
B23P19/00 304E
(21)【出願番号】P 2016146616
(22)【出願日】2016-07-26
【審査請求日】2019-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000150109
【氏名又は名称】株式会社竹中製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000116633
【氏名又は名称】愛知時計電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000156813
【氏名又は名称】関西ガスメータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100198797
【氏名又は名称】大橋 裕
(72)【発明者】
【氏名】石谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】能登 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】花木 克久
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 孝紘
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 和也
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰広
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-206656(JP,A)
【文献】特開2017-191061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク部材のクランク軸を両側からV溝内に挟み込んでクランク部材を垂直に保持したのち、クランク軸の軸線上に永久磁石の中心を合わせて
永久磁石取り付け用台座板をカシメ止めするためのクランク部材組み立て用の治具を用いた膜式マイコンガスメータにおけるクランク部材の組立方法であって、
可動側治具は天板と側板で到L字状に形成され、かつその内面に可動側V溝を正面に形成したスライドガイドを突出して形成し、このスライドガイドの上部には前記可動側V溝の中心線上に位置決め孔を形成したクランク固定板が形成され、更に前記天板の前記クランク固定板の上方にはコ字の開放部が形成され、
前記可動側治具と対面する固定側治具の内面には、前記可動側V溝と対向する固定側V溝が形成され、
クランク部材の上段に位置する永久磁石取り付け用台座板には永久磁石が固定され、この永久磁石の中心と前記クランク軸の中心を合わせてカシメ軸によりカシメ可能なカシメ孔及び位置決めピンを挿入する位置決めピン孔が形成され、
前記クランク軸を前記可動側及び固定側V溝内に挟み込みながら前記可動側及び固定側治具をねじで固定し、前記永久磁石取り付け用台座板に取り付けた永久磁石の中心とクランク軸の中心との位置合わせを行った上で前記位置決めピン孔と位置決め孔内に位置決めピンを挿し込んで永久磁石取り付け用台座板の位置決めを行い、前記永久磁石取り付け用台座板に形成したカシメ孔に上段クランク板に形成したカシメ軸のカシメ部を通してこのカシメ部をカシメ機によりカシメ止めを行う、
ことを特徴とする膜式マイコンガスメータにおけるクランク部材の組立方法。
【請求項2】
クランク部材のクランク軸を両側からV溝内に挟み込んでクランク部材を垂直に保持したのち、クランク軸の軸線上に永久磁石の中心を合わせて
永久磁石取り付け用台座板をカシメ止めするためのクランク部材組み立て用の治具であって、
可動側治具は天板と側板で到L字状に形成され、かつその内面に可動側V溝を正面に形成したスライドガイドを突出して形成し、このスライドガイドの上部には前記可動側V溝の中心線上に位置決め孔を形成したクランク固定板が形成され、更に前記天板の前記
クランク固定板の上方にはコ字の開放部が形成されていること、
前記可動側治具と対面する固定側治具の内面には、前記可動側V溝と対向する固定側V溝が形成されていること、
クランク部材の永久磁石取り付け用台座板には永久磁石が固定され、この永久磁石の中心と前記クランク軸の中心を合わせてカシメ軸により
カシメ可能なカシメ孔及び位置決めピンを挿入する位置決めピン孔が形成され、前記クランク軸を前記可動側及び固定側V溝内に挟み込みながら前記可動側及び固定側治具をねじで固定し、前記永久磁石取り付け用台座板に取り付けた永久磁石の中心とクランク軸の中心との位置合わせを行った上で前記位置決めピン孔と位置決め孔内に挿し込んで固定する位置決めピンを設けたこと、
を特徴とする膜式マイコンガスメータにおけるクランク部材の組立用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜式マイコンガスメータにおいて、計量膜の往復運動を回転運動に変換し、この回転運動を永久磁石取付台座板の回転運動に変換して永久磁石を回転させ、この回転をMRセンサで検出して流量に換算する所謂膜式マイコンガスメータであって、前記計量膜の運動を回転運動に変換するクランク部材の組み立て方法とそれに用いられるカシメ用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
膜式マイコンガスメータは、
図8、9に示すように、ガスメータ40の計量室41内において、計量膜42の往復運動で回転し、この回転運動で計量室41内に出入りするガスをバルブ44で制御するクランク部材20を組み込み、このクランク部材20に取り付けた永久磁石34を回転させ、この回転運動を電子室内のMRセンサ35で検出し、このパルス数からガスの流量を換算して流量を得る構成となっている。
図中47はガスの流入口金、48はガスの流出口金を示す。
【0003】
このようなことから、計量精度を高めるためには、永久磁石34はクランク軸21と同心的に回転することが必要であり、この同心的な回転に偏心的な回転が加わると、パルス信号が不安定となり、結果として計量誤差を生むことになることから、クランク部材20の組み立てに際しては、永久磁石34を取り付けた台座板27のカシメ止めが重要となり、作業には熟練者の存在が必要不可欠であった。
【0004】
しかし、現時においては熟練者の確保が難しく、この不足を補う解決手段の提案が望まれている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて提供されるものであって、その目的は、それ程の熟練を有しなくても高精度に組み立て(カシメ)作業が可能な治具とこれを用いた組み立て方法を提供することである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために提供される請求項1に記載の発明は、膜式マイコンガスメータにおけるクランク部材の組み立て方法において、クランク部材のクランク軸を両側からV溝内に挟み込んでクランク部材を垂直に保持したのち、クランク軸の軸線上に永久磁石の中心を合わせて永久磁石取り付け用台座板をカシメ止めするためのクランク部材組み立て用の治具を用いた膜式マイコンガスメータにおけるクランク部材の組立方法であって、可動側治具は天板と側板で到L字状に形成され、かつその内面に可動側V溝を正面に形成したスライドガイドを突出して形成し、このスライドガイドの上部には前記可動側V溝の中心線上に位置決め孔を形成したクランク固定板が形成され、更に前記天板の前記クランク固定板の上方にはコ字の開放部が形成され、前記可動側治具と対面する固定側治具の内面には、前記可動側V溝と対向する固定側V溝が形成され、クランク部材の上段に位置する永久磁石取り付け用台座板には永久磁石が固定され、この永久磁石の中心と前記クランク軸の中心を合わせてカシメ軸によりカシメ可能なカシメ孔及び位置決めピンを挿入する位置決めピン孔が形成され、前記クランク軸を前記可動側及び固定側V溝内に挟み込みながら前記可動側及び固定側治具をねじで固定し、前記永久磁石取り付け用台座板に取り付けた永久磁石の中心とクランク軸の中心との位置合わせを行った上で前記位置決めピン孔と位置決め孔内に位置決めピンを挿し込んで永久磁石取り付け用台座板の位置決めを行い、前記永久磁石取り付け用台座板に形成したカシメ孔に上段クランク板に形成したカシメ軸のカシメ部を通してこのカシメ部をカシメ機によりカシメ止めを行うことを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、膜式マイコンガスメータにおけるクランク部材の組み立て用治具において、クランク部材のクランク軸を両側からV溝内に挟み込んでクランク部材を垂直に保持したのち、クランク軸の軸線上に永久磁石の中心を合わせて永久磁石取り付け用台座板をカシメ止めするためのクランク部材組み立て用の治具であって、可動側治具は天板と側板で到L字状に形成され、かつその内面に可動側V溝を正面に形成したスライドガイドを突出して形成し、このスライドガイドの上部には前記可動側V溝の中心線上に位置決め孔を形成したクランク固定板が形成され、更に前記天板の前記クランク固定板の上方にはコ字の開放部が形成されていること、前記可動側治具と対面する固定側治具の内面には、前記可動側V溝と対向する固定側V溝が形成されていること、クランク部材の永久磁石取り付け用台座板には永久磁石が固定され、この永久磁石の中心と前記クランク軸の中心を合わせてカシメ軸によりカシメ可能なカシメ孔及び位置決めピンを挿入する位置決めピン孔が形成され、前記クランク軸を前記可動側及び固定側V溝内に挟み込みながら前記可動側及び固定側治具をねじで固定し、前記永久磁石取り付け用台座板に取り付けた永久磁石の中心とクランク軸の中心との位置合わせを行った上で前記位置決めピン孔と位置決め孔内に挿し込んで固定する位置決めピンを設けたこと
を特徴とするものである。
【0008】
上記構成において、クランク部材20は、
図2~
図6に示すように、クランク軸21の頂点に下段クランク板23を溶接又はろう付けしたのち、この下段クランク板23の上に偏心軸を介して上段クランク板24を偏心させて溶接又はろう付けを行い、次に永久磁石34を取り付けた永久磁石取り付け用台座板27を上段クランク板24上にカシメ軸25を介してカシメ止めする。
【0009】
カシメ止めの方法は、
図4に示すように、可動側治具aにおいて永久磁石取り付け用台座板27のカシメ孔28にカシメ軸25のカシメ部26を下方から通し、
図6に示すように、可動側治具aと固定側治具b間において可動側V溝5と固定側V溝13間にクランク軸21を挟みこみながら可動側治具aと固定側治具bをネジ8で固定する。
次に、永久磁石取り付け用台座板27の位置決めピン孔29からクランク固定板6の位置決め孔7内に位置決めピン50を押し込んで永久磁石34の中心がクランク軸21の中心に合致するように位置を定めたのち、カシメ機を用いてカシメ軸25のカシメ部26をカシメ止めする。
なお、永久磁石取り付け用台座板27に対しては、あらかじめ永久磁石34の中心と永久磁石取り付け用台座板27に形成した位置決めピン孔29の中心とを合致させてねじ33により永久磁石を固定しておく。
【0010】
この結果、クランク部材20において、クランク軸21の中心上に永久磁石取り付け用台座板27に固定した永久磁石34の中心が固定される。
なお、永久磁石取り付け用台座板27の永久磁石34の中心にズレがあった場合には、カシメ孔28とカシメ部26間にわずかな余裕を形成しておくことにより、この余裕で誤差を吸収し、正確にカシメ止めを行う。
【0011】
以上の状態でクランク部材20の組み立てを終了し、可動側治具a、固定側治具bを開放したのち、クランク部材を取り外し、ガスメータ側のクランク軸取付枠内にクランク軸を差し込み、次にカシメ軸に膜側から延長された肘金の先端を引っ掛け、更にバルブに連結されたクランクロッドの先端をカシメ軸に引っ掛けることによりクランク部材の組み立てを終了する。
【0012】
以上の方法によりクランク部材の組み立てを終了することで、計量膜の往復運動によりクランク部材が回転し、この回転による永久磁石の回転運動をMRセンサで検出し、この検出により電子回路で流量を演算し、この値を表示部に表示したり、流量信号として出力する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上に説明したように、クランク部材のクランク軸を治具内のV溝間に挟み込み、中心を確保した上で永久磁石を取り付けた台座板をカシメ軸にカシメ止めするため、クランク部材のクランク軸と永久磁石の中心を正確に出し易く、熟練者でない者でも簡単かつ正確に上段クランク板上に台座板の組み付け作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A),(B)は本発明に係る組み立て用治具の説明図である。
【
図3】組み立て終了後のクランク部材の側面図である。
【
図4】治具内にクランク部材を組み付けている状況の斜視図である。
【
図5】治具内にクランク部材を挟み込んだ状態の斜視図である。
【
図6】治具を組み合わせて内部にクランク部材を固定した状態の斜視図である。
【
図7】治具内にクランク部材を組み込み、治具a、bを固定した状態の治具の底面 図である。
【
図8】膜式マイコンガスメータの内部構造を示す正面図である。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明において使用されるクランク部材組み立て用の治具の一例を示すもので、この治具は、可動側治具aと固定側治具bの二つの部品構成から成り、二つの部品とも金属製である。
【0016】
可動側治具aは、側面視で側板1と天板2で到L字状を呈し、この内面の下部には中央に垂直の可動側V溝5を形成したスライドガイド4と、このスライドガイド4の上方に水平に突出させたクランク固定板6が形成され、このクランク固定板6の中央において、可動側V溝5の中心線上には位置決め孔7が形成されている。
【0017】
また、クランク固定板6上方の天板2には、コ字状に切り欠いた開放口3が形成されている。
【0018】
固定側治具bは、可動側治具aに合体自在の平面視L字状から成り、この内面には、スライドガイド4と対向すると共に可動側V溝5に正面側から合体し、間にクランク部材20のクランク軸21を垂直に挟み込んで固定する固定側V溝13を正面に形成したクランク軸固定部14を形成し、前記治具aと前記治具bとはネジ孔9を介してネジ8で合体し、固定することができる。
【0019】
クランク部材20は、
図2、
図3に示すように、クランク軸21の頂点に下段クランク板23を固定し、この下段クランク板23上に偏心軸を介して上段クランク板24を取り付け、この上段クランク板24の上にカシメ軸25を介して永久磁石取り付け用台座板27のカシメ孔28内にカシメ部26を挿し込み、位置を固定した上でカシメ部26をカシメ機で固定する。
【0020】
本発明は、このカシメ作業において、永久磁石取り付け用台座板27に取り付けた永久磁石34の中心と前記クランク軸21の中心に位置決めピン50を挿し込んで正確に中心同士を合致させたのち、カシメ止め作業を行うため、中心出し作業を熟練者でなくとも高精度で簡単に行うことができる。
【0021】
符号の35は、電子室内において、前記永久磁石27に対向するようにして取り付けられたMRセンサである。
【0022】
図4~
図7に基づいて本発明に係る可動側治具aと固定側治具bを使用してのクランク部材20の組み立て手順を説明すると、
図5に示すように、可動側治具aのクランク固定板6に形成された位置決め孔7と台座板27の位置決めピン孔29の位置を合わせながら可動側V溝5内にクランク軸21を係合させてクランク軸21の凡その中心位置を決める。
【0023】
次に、第6図に示すように、V溝5及びV溝13間にクランク軸21を挟みこみながら可動側治具aと固定側治具bをネジ8で固定する。
次に、可動側治具aの位置決め孔7と台座板27側の位置決めピン孔29内に位置決めピン50で固定し、クランク軸21の中心位置を決める。
【0024】
このとき、カシメ部26とカシメ孔28の形状のクリアランスにより、組立誤差を吸収する。
【0025】
以上の順序で組み立てを行うことにより、正確で簡単にクランク部材20のクランク軸21と永久磁石34の中心を合わせてカシメ止めを行うことができる。
【符号の説明】
【0026】
a 可動側治具
b 固定側治具
1 側板
2 天板
3 開放口
4 スライドガイド
5 可動側V溝
6 クランク固定板
7 位置決め孔
8 ネジ
9 ねじ孔
10 天面
11 側面
12 ガイド
13 固定側V溝
14 クランク軸固定部
20 クランク部材
21 クランク軸
22 天端
23 下段クランク板
24 上段クランク板
25 カシメ軸
26 カシメ部
27 永久磁石取り付け用台座板
28 カシメ孔
29 位置決めピン孔
30 ねじ穴
31 シールド板
32 ねじ穴
33 ねじ
34 永久磁石
35 MRセンサ
40 膜式ガスメータ
41 計量室
42 計量膜
43 クランク軸取付枠
44 バルブ
45 ひんじ金
46 バルブ桿
47 ガス流入口金
48 ガス送出口金
50 位置決めピン