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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】接着方法及び接着構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/48 20060101AFI20220331BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20220331BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20220331BHJP
   B32B 15/06 20060101ALI20220331BHJP
   C09J 5/04 20060101ALI20220331BHJP
   C09J 111/00 20060101ALI20220331BHJP
   C09J 121/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B29C65/48
B32B5/18
B32B7/12
B32B15/06
C09J5/04
C09J111/00
C09J121/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018023864
(22)【出願日】2018-02-14
(65)【公開番号】P2019136982
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591136458
【氏名又は名称】株式会社ジャバラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修
(72)【発明者】
【氏名】米澤 琢朗
(72)【発明者】
【氏名】古澤 孝
(72)【発明者】
【氏名】尾上 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】敏森 幹雄
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-039808(JP,A)
【文献】特開昭63-276538(JP,A)
【文献】特公昭49-038710(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/48
B32B 5/18,7/12,15/06
C09J 5/04,111/00,121/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材と高分子発泡体とを接着する方法であって、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、フツ素ゴム及びエピクロヒドリンゴムから選ばれる1種または2種以上の未加硫ゴムと、加硫剤とを含有する未加硫ゴム組成物を前記金属部材に塗布して加熱することにより加硫ゴム層を形成する加硫ゴム層形成工程と、前記未加硫ゴム組成物で用いられる前記未加硫ゴムのうちの少なくとも1種を含有する液状の接着剤組成物(ただし、加硫剤を含む接着剤組成物を除く)を、前記加硫ゴム層及び高分子発泡体の表面に塗布して乾燥させることにより、第一接着剤層及び第二接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、前記第一接着剤層と第二接着剤層とを接着する接着工程とを備えたことを特徴とする接着方法。
【請求項2】
前記接着剤層形成工程の直前に、前記接着剤組成物に、当該接着剤組成物に含まれる前記未加硫ゴムを硬化させる硬化剤を配合することを特徴とする請求項1記載の接着方法。
【請求項3】
前記第一接着剤層及び第二接着剤層の表面の少なくとも一方の表面に溶剤を接触させることで、溶剤を接触させた表面の接着性を高めた後、第一接着剤層と第二接着剤層とを互いに圧接して両層を接着することを特徴とする請求項1又は2に記載の接着方法。
【請求項4】
前記未加硫ゴム組成物及び接着剤組成物が、同種のゴム成分としてポリクロロプレンを含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の接着方法。
【請求項5】
金属部材と高分子発泡体とが接着層を介して接着された接着構造であって、前記接着層は、金属部材側に近い第1層と、高分子発泡体側に近い第2層とが積層された積層構造を備え、前記第1層は、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、フツ素ゴム及びエピクロヒドリンゴムから選ばれる1種または2種以上のゴム成分を含有する加硫ゴムからなり、前記第2層は、前記第1層で用いられる前記ゴム成分のうちの少なくとも1種を含有する接着剤組成物(ただし、加硫剤を含む接着剤組成物を除く)からなることを特徴とする接着構造。
【請求項6】
前記接着剤組成物に、当該接着剤組成物に含まれる前記ゴム成分を硬化させる硬化剤が配合されたことを特徴とする請求項5記載の接着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材と高分子発泡体との接着方法及び接着構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
接着層を介して金属部材と高分子発泡体とを接着する接着構造は、幅広い分野にて採用されている。接着層を構成する接着剤としては、ゴム系の液状接着剤が多用される。ゴム系の液状接着剤は、乾燥することにより、優れた接着性を発揮する。
【0003】
しかしながら、金属部材と高分子発泡体との接着構造に対して、繰り返し応力がかかる環境下や、洗浄液等の化成品が接触する環境下においては、時間とともに高分子発泡体が金属部材から剥離するという問題が生じていた。
【0004】
金属部材と高分子発泡体との接着構造の具体例として、たとえば、特許文献1に開示されているように、高速鉄道の鉄道車両の車体間には、連結部を覆う外幌が用いられる。外幌は、厚みのある板状の高分子発泡体の前後両端に、車体に固定するための金属部材が接着された構成とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-268604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記外幌の高分子発泡体と、金属部材との接着構造には、繰り返し応力がかかるとともに、定期的に車体を洗浄する洗浄液が接触するため、高分子発泡体の剥離の問題が顕著となっていた。
【0007】
そこで、本発明では、上記問題に鑑み、接着層を介して金属部材と高分子発泡体とを接着する接着構造において、繰り返し応力や洗浄液等が接触しても高分子発泡体と金属部材との剥離の発生を抑制可能な接着方法及び接着構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者が鋭意検討した結果、接着層を介した金属部材と高分子発泡体との接着構造において、剥離の発生する面が金属部材と接着剤層との間の界面であることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一態様としての金属部材と高分子発泡体との接着方法は、前記金属部材に未加硫ゴム組成物を塗布して加熱することにより加硫ゴム層を形成する加硫ゴム層形成工程と、前記未加硫ゴム組成物と同種のゴム成分を含有する液状の接着剤組成物を、前記加硫ゴム層及び高分子発泡体の表面に塗布して乾燥させることにより、各層表面にそれぞれ第一接着剤層及び第二接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、前記第一接着剤層と第二接着剤層とを接着する接着工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
接着剤層形成工程の直前に、前記接着剤組成物に前記ゴム成分を硬化させる硬化剤を配合するようにしてもよい。また、第一接着剤層及び第二接着剤層の表面に溶剤を接触させることで各接着剤層表面の接着性を高めた後、第一接着剤層と第二接着剤層とを互いに圧接して両層を接着するようにしてもよい。また、未加硫ゴム組成物及び接着剤組成物が、同種のゴム成分としてポリクロロプレンを含有するようにしてもよい。
【0011】
上記態様によって得られる接着構造は、金属部材と高分子発泡体とが接着層を介して接着された構造であって、前記接着層は、金属部材側に近い第1層と、高分子発泡体側に近い第2層とが積層された積層構造を備え、前記第1層は、未加硫ゴム組成物を加熱加硫した加硫ゴム層から構成され、第2層は、第1層の未加硫ゴム組成物と同種のゴム成分を含有する液状の接着剤組成物を乾燥させた層から構成される。すなわち、第1層と第2層とは、同種のゴム成分を含有し、かつ、互いに異なる組成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、金属部材と高分子発泡体との間の接着層を、未加硫ゴム組成物を加熱加硫した加硫ゴム層と、未加硫ゴム組成物と同種のゴム成分を含有する液状の接着剤組成物を乾燥させた接着剤層とが積層された積層構造とし、加硫ゴム層と金属部材とを加硫接着により互いに強固に接着するとともに、加硫ゴム層と接着剤層とを同種ゴム成分で構成することにより互いに強固に接着する。これにより、金属部材と高分子発泡体とを強固に接着することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】高速鉄道の鉄道車両を示す概略図
図2】外幌を構成する幌ユニットを示す概略図
図3】分割幌を構成する、本発明の高分子発泡体と金属部材の接着構造体を示す平面図
図4】分割幌の断面図
図5】分割幌に金属プレートを取り付ける様子を示す側面図
図6】本発明の接着構造を示す部分拡大概略図
図7】本発明の接着方法の加硫ゴム層形成工程を示す部分拡大概略図
図8】本発明の接着方法の接着剤層形成工程を示す部分拡大概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を基に説明する。本実施形態では、高速鉄道用の鉄道車両に使用される外幌における金属部材と高分子発泡体の接着構造及び接着方法について説明する。
【0015】
図1は、高速鉄道の鉄道車両を示す概略図である。鉄道車両1は、台車2と、台車2に搭載される車体3とを備える。車体3、3間の連結部は車体3の外周に沿って外幌4により覆われる。外幌4は、複数の幌ユニット5からなる分割構造とされる。図2に示すように、幌ユニット5は、複数の分割幌6と、複数の分割幌6を隙間なく一体に固定して車体3に取り付ける固定金具7とを備える。以下、車体3の前後方向をX、外周方向をYとする。
【0016】
図3及び図4に示すように、分割幌6は、外側シート8と内側シート9との間に高分子発泡体11が介在した複層構造とされる。高分子発泡体11は、前後方向Xの断面形状がアーチ状の扁平ブロックから構成される。高分子発泡体11の前面及び後面にはそれぞれ金属部材としての金属プレート12、12が接着される。この接着構造体における高分子発泡体11と金属プレート12との接着構造が本発明の接着構造とされる。
【0017】
外側シート8と内側シート9は基材を編物で構成し、その一面に伸縮復元性に富むエラストマーをコーティングして耐久性を持たせている。その際、エラストマーは編物の表面繊維にのみ絡ませてコーティングすることにより編物の伸縮復元性を阻害しないようにしている。基材としての編物は高強度の繊維である芳香族ポリアミド繊維を緯編組織に編成しており、編物の引張強度と伸び量によって飛来物の衝撃エネルギーを吸収する緩衝機能を持たせている。エラストマーとしては耐久性、伸縮復元性に富んだウレタンエラストマーを用いており、繰り返し高速走行によっても破損・裂傷が発生するおそれのない外幌としている。高分子発泡体11としてはゴム状弾性体であるクロロプレンゴムの発泡体を採用している。
【0018】
金属プレート12には、図示しない複数のネジ孔が形成されており、このネジ孔にボルト(図示せず)が螺合可能とされる。高分子発泡体11は、外面が平面状で、内面が凹状に湾曲した湾曲面とされる。
【0019】
外側シート8の前後方向Xの長さは、高分子発泡体11の外面側の金属プレート12,12間の直線長さよりも長めに形成される。外側シート8は、高分子発泡体11の外面に接着し、その前後端部は、金属プレート12を覆うように折り返す。
【0020】
同様に、内側シート9の前後方向Xの長さも、高分子発泡体11の内面側の金属プレート12,12間の湾曲した長さよりも長めに形成される。そして、上述のごとく、内側シート9を高分子発泡体11の内面に接着し、その前後端部は金属プレート12を覆うように折り返し、ネジ孔を覆った外側シート又は内側シート部分に貫通孔を形成する。このようにして分割幌6が形成される。
【0021】
得られた分割幌6は、図2及び図5に示すように、複数向きを揃えた上で外周方向Yに1列に並べ、隣接する分割幌6の左右端同士を接合する。固定金具7には、図示しないボルト穴が形成されており、固定金具7のボルト穴と分割幌6に形成された貫通孔とを合わせて図示しないボルトにて締結する。これにより、分割幌6の前端及び後端にそれぞれ固定金具7,7が固定されて幌ユニット5が構成される。幌ユニット5は、前端側の固定金具7及び後端側の固定金具7がそれぞれ連結部の前側の車体3及び後側の車体3に取り付けられる。
【0022】
上述のごとく、分割幌6は、外側シート8、高分子発泡体11及び内側シート9の積層構造とされる。これにより、伸縮復元性を持たせ、高速走行時の膨らみ、分割幌のバタツキによる騒音発生や幌寿命の低下を防止している。
【0023】
一方、分割幌6には外力が作用し、伸縮を繰り返すことになる。これにより、時間経過とともに外側シート8及び内側シート9に細かいひび割れが発生し、そこから雨水や車体洗浄用の洗浄液が外側シート8の内部にしみ込む。従来は、これらの化学薬品や水分が高分子発泡体11と金属プレート12との接着面に達して金属プレート12と接着剤層との間に剥離が発生していた。
【0024】
そこで、本発明では、図6に示すように、金属プレート12と高分子発泡体11との間の接着層として、金属部材側に近い第1層13と、高分子発泡体側に近い第2層14とが積層された積層構造を採用している。
【0025】
具体的に、第1層13は、未加硫ゴム組成物を加熱加硫した加硫ゴム層から構成され、第2層14は、第1層13の未加硫ゴム組成物と同種のゴム成分を含有する液状の接着剤組成物を乾燥させた接着剤層から構成される。すなわち、第1層13と第2層14とは、同種のゴム成分を含有し、かつ、互いに異なる組成とされる。
【0026】
上記接着構造によれば、加硫ゴム層13と金属部材12とを加硫接着により互いに強固に接着するとともに、加硫ゴム層13と接着剤層14とを同種ゴム成分で構成することにより互いに強固に接着する。これにより、金属部材12と高分子発泡体11とを強固に接着することが可能となる。
【0027】
上記接着構造を形成する方法について説明する。先ず、図7に示すように、金属プレート(金属部材)12に未加硫ゴム組成物を塗布する。未加硫ゴム組成物は、未加硫ゴム及び加硫剤を含有しており、通常、溶剤や分散媒等によって希釈される。未加硫ゴム組成物には、加硫剤のほか、加硫助剤、加硫促進剤、老化防止剤などの公知の添加剤を適宜配合することができる。
【0028】
未加硫ゴム組成物は、金属部材12に塗布して溶剤や分散媒を蒸発させることで未加硫ゴム層が形成され、さらに未加硫ゴム層を加熱して加硫することで加硫ゴム層である第1層13を形成する(加硫ゴム層形成工程)。なお、金属部材を構成する金属の種類と加硫ゴムの種類との組み合わせによっては、金属部材12と加硫ゴム層13との接着性が低くなる場合が生じる。このような場合には、公知のプライマーによって金属部材12を表面処理することで金属部材12と加硫ゴム層13との接着性を良好に維持することができる。
【0029】
次いで、図8に示すように、金属部材12に形成した加硫ゴム層13の表面と、高分子発泡体11の表面とに、それぞれ液状の接着剤組成物を塗布し、乾燥させることにより、第一接着剤層15及び第二接着剤層16を形成する(接着剤層形成工程)。加硫ゴム層13の表面に液状の接着剤組成物を塗布する前に、加硫ゴム層13の表面をサンドペーパー等によって粗面化しておくのが好ましく、アンカー効果によって加硫ゴム層と第一接着剤層15との接着性をより高めることができる。そして、最後に、第一接着剤層15と第二接着剤層16とを接着することにより接着剤層14を形成することができる(接着工程)。
【0030】
なお、第一接着剤層15と第二接着剤層16とを接着する際には、両層が適度に乾燥した時点で接着を行うことで高い接着性を発揮する。ただ、両層を乾燥させすぎると両層の接着性が低下するため、第一接着剤層15と第二接着剤層16とを接着させるタイミングをはかるのは難しい。そこで、本発明では、いったん第一接着剤層15と第二接着剤層16を十分乾燥させた後に、両層15,16のうち、少なくとも一方の層に溶剤を刷毛塗り等の方法によって接触させるようにした。
【0031】
これにより、接着剤層の接着性を再度高めることが可能となる。その後、第一接着剤層15と第二接着剤層16とを互いに圧接して接着させる。各接着剤層15,16の接着性を再度高める方法としては、溶剤を塗布するのみならず、両層15,16のうち、少なくとも一方の層を加熱することで再度接着性を高めることも可能である。
【0032】
液状の接着剤組成物は、未加硫ゴム組成物と同種のゴム成分と、溶剤又は分散媒とを含有し、溶剤又は分散媒が蒸発乾燥することで接着剤層が形成される。すなわち、未加硫ゴム組成物は、加硫によって接着力を発揮し、接着剤組成物は、溶剤又は分散媒が蒸発することによって接着力を発揮する。
【0033】
接着剤組成物には、接着剤層形成工程の直前に、室温でゴム成分を硬化させる硬化剤を添加することも可能である。これにより、接着剤層14の耐熱性をより向上させることが可能となる。なお、この場合には、接着剤組成物のポットライフ(可使時間)内に第一接着剤層15と第二接着剤層16とを接着する必要がある。
【0034】
未加硫ゴムとしては、硫黄系や過酸化物系の加硫剤による架橋反応によりゴム状弾性体を形成可能なものであればよく、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム等のジエン系ゴムのほか、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコ-ンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、フツ素ゴム、エピクロヒドリンゴム等の非ジエン系ゴム等を挙げることができ、これらのうちの1 種または2 種以上をブレンドして使用することができる。
【0035】
未加硫ゴム組成物及び接着剤組成物で用いられる同種ゴム成分として、高分子発泡体11を構成するゴム成分と同じものを使用することができ、接着剤層である第2層14と高分子発泡体との高い接着性が期待できる。
【0036】
また、接着剤組成物のゴム成分としてクロロプレンゴム(ポリクロロプレン)を用いた場合、接着剤層の初期接着力が高く、化学的安定性に優れるという点で好ましい。なお、クロロプレンゴムと他のゴム種を併用する場合は、クロロプレンゴムを主成分とするのが好ましく、未加硫ゴム全体のうち、クロロプレンゴムを50質量%以上とするのがより好ましい。未加硫ゴム組成物及び液状接着剤組成物が複数種のゴム成分を含有する場合、少なくともそのうちの1種が同種のゴム成分であればよい。
【0037】
上述したように、加硫ゴム層である第1層13と接着剤層である第2層14とは、同種のゴム成分を含有し、かつ、互いに異なる組成とされる。具体的に、第1層では、未加硫ゴムを加硫するための加硫剤を含み、さらに加硫助剤及び加硫促進剤等を含む場合があるのに対し、第2層14では硬化剤を含むことはあっても、基本的に加熱により加硫する加硫剤を含まず、この点で第2層と組成及び物性が異なる。組成の差異は、光学的又は電子光学的な手法により確認することができる。
【実施例
【0038】
[金属部材と高分子発泡体との接着構造を備えた分割幌の作製]
本実施例では、上記実施形態で示した分割幌を作製して、耐久性を評価した。具体的には、高分子発泡体として発泡クロロプレンゴムを用い、これと金属プレートとを接着して接着構造を備えた分割幌を形成した。以下にその手順を記す。
【0039】
先ず、金属プレートの表面に、ゴムと金属との加硫接着用として公知のプライマーを用いてプライマー処理を行った。すなわち、金属プレート表面に下塗りプライマーを塗布し乾燥させた後、さらに上塗りプライマーを塗布し乾燥させた。
【0040】
プライマー処理した金属プレートに、ポリクロロプレン、加硫剤(硫黄、酸化亜鉛及び酸化マグネシウム)、加硫促進剤(チオウレア系及びジチオカルバミン酸塩類系)及び溶剤を含有する未加硫ゴム組成物を塗布し、130℃×2.5時間加熱して加硫ゴム層を形成した。
【0041】
金属プレート上に形成した加硫ゴム層の表面をサンドペーパーにて粗面化した後、トルエンにて清浄化した。そこに、溶剤型クロロプレン系接着剤にイソシアネート系硬化剤としてトリフェニルメタントリイソシアネートを混合した接着剤組成物を塗布すると共に、高分子発泡体の表面にも塗布した。
【0042】
接着剤組成物を十分乾燥させて接着剤層を形成した後、両接着剤層にトルエンを塗布して接着剤層の接着性を高めた状態で、両接着剤層を接着した。これにより、高分子発泡体と金属プレートとを接着した接着構造体を得た。その後、図6及び図7に示すように、接着構造体に外側シート及び内側シートを接着して分割幌を作製した(実施例)。
【0043】
これに対して、基本的な構成は実施例と同じとした上で、金属プレートの表面を化学的に粗面化(ケミカルブラスト処理)し、未加硫ゴム組成物を用いずに、金属プレートと高分子発泡体とを、直接、上記接着剤組成物で接着した分割幌を作製し、これを比較例とした。
【0044】
[評価試験]
実際の高速鉄道車両に搭載された分割幌にかかる1年分の伸縮量を測定してこれを1サイクルとし、伸縮試験装置にセットした分割幌を1サイクル分伸縮させた。1サイクルごとに分割幌にアルカリ性洗浄液を噴霧した。このように、分割幌を伸縮させることによって、外側シート及び内側シートに細かいひび割れが発生し、そこから洗浄液が高分子発泡体と金属プレートの接着面に浸透する。これによって高分子発泡体と金属プレートとの剥離が促進される。
【0045】
[評価結果]
実施例及び比較例で試験を行なった結果、比較例では、伸縮試験3サイクルで高分子発泡体と金属プレート(金属部材)の間で剥離が発生したのに対し、実施例では16サイクル終了時点でも剥離は発生しなかった。以上より、高分子発泡体と金属プレートとの間の接着層を、加硫ゴム層と、加硫ゴム層のゴム成分と同種のゴム成分を含有する液状の接着剤組成物を乾燥させた接着剤層とから構成することにより、金属部材と高分子発泡体とを強固に接着することが可能となる。
【0046】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。たとえば、本実施形態では鉄道車両の分割幌の接着構造について説明したが、これに限らず、本発明の接着構造は、高分子発泡体を貼着した金属ガスケットに用いることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 鉄道車両
2 台車
3 車体
4 外幌
5 幌ユニット
6 分割幌
7 固定金具
8 外側シート
9 内側シート
11 高分子発泡体
12 金属プレート(金属部材)
13 第1層(加硫ゴム層)
14 第2層(接着剤層)
15 第一接着剤層
16 第二接着剤層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8