(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】支保工装置および地下埋設管更生方法
(51)【国際特許分類】
E03F 7/00 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
E03F7/00
(21)【出願番号】P 2018066408
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】502444733
【氏名又は名称】日軽金アクト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592012650
【氏名又は名称】足立建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】福富 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】明石 泰知
(72)【発明者】
【氏名】松井 正
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 健一
(72)【発明者】
【氏名】埴原 強
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-125274(JP,A)
【文献】特開2013-002133(JP,A)
【文献】特開昭59-096363(JP,A)
【文献】特開平10-121565(JP,A)
【文献】特開2008-031755(JP,A)
【文献】特開2002-333082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の地下埋設管の更生工事で前記地下埋設管の内側に裏込め材を注入する際の内側の型枠となる内面管を内部から支持する支保工装置であって、
前記内面管の内周面に沿った円弧状に湾曲する複数の支持体を組み合わせてなる支保工リング体と、当該支保工リング体を内側から支持する変形防止材とを備えており、
前記支持体は、周方向に延在するとともに端部が開口する中空部を備えた押出形材からなり、
前記支保工リング体の上端部は、周方向に隣り合う前記支持体同士が所定間隔の隙間をあけて離間しており、
前記変形防止材は、前記支保工リング体の下部と上部との間に架け渡され、上下方向に伸縮可能に構成されており、
前記変形防止材の上端部には、二股に分岐された一対のアーム部が形成され、
前記アーム部は、前記支持体の端部の前記中空部に挿入される爪部を備えている
ことを特徴とする支保工装置。
【請求項2】
前記変形防止材の上端部における一対の前記アーム部の分岐はV字形状であり、
一対の前記アーム部の間には、前記支保工リング体の上端部の前記隙間を広げるための伸縮機構が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の支保工装置。
【請求項3】
前記各アーム部が有する爪部は、前記内面管の軸方向に間隔をあけて二つ設けられており、
前記各爪部は前記内面管の軸方向に隣接した前記支保工リング体の各中空部にそれぞれ挿入されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の支保工装置。
【請求項4】
前記変形防止材の下端部には、腹起し材が載置される平面を備えた載置部が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の支保工装置。
【請求項5】
前記支持体は、前記内面管の軸方向に間隔をあけて設けられた複数の円弧部材を備えており、
前記載置部には、下方に突出する係止片が形成されており、
前記係止片は、前記内面管の軸方向に間隔をあけて二つ設けられており、
軸方向に沿って設けられた二つの前記係止片は、軸方向に隣接する前記支持体の前記円弧部材を軸方向両側から挟む
ことを特徴とする請求項4に記載の支保工装置。
【請求項6】
前記支持体は、隣り合う前記円弧部材を連結する複数の桟部材をさらに備えており、
前記係止片は、前記内面管の周方向に間隔をあけて二つ設けられており、
周方向に沿って設けられた二つの前記係止片は、前記桟部材を周方向両側から挟む
ことを特徴とする請求項5に記載の支保工装置。
【請求項7】
前記円弧部材の前記桟部材が連結される側面には、その長手方向に沿った凸条または凹溝が形成されており、
前記桟部材の端部には、前記凸条または前記凹溝と係合する溝部または凸部が形成されており、
前記桟部材は、前記溝部が前記凸条に係合した状態または前記凸部が前記凹溝に係合した状態で、前記円弧部材に固定されている
ことを特徴とする
請求項6に記載の支保工装置。
【請求項8】
隣接する前記支持体に対向する前記円弧部材の側面は、平面状に形成されている
ことを特徴とする請求項7に記載の支保工装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項
8のいずれか一項に記載の支保工装置を用いて既設の地下埋設管の更生を行う地下埋設管更生方法であって、
前記地下埋設管の内側に、前記地下埋設管の内周面と間隙を保った状態で内面管を設置する内面管設置工程と、
前記内面管内に、前記支保工リング体を設置するリング体設置工程と、
前記支保工リング体の内側に前記変形防止材を設置して、前記支保工リング体の形状を保持する変形防止材設置工程と、
前記内面管の底部に直接又は間接に着座するとともにその上端部が前記内面管の頂部を貫通して前記地下埋設管の内周面に当接する反力部材を設置する反力部材設置工程と、
前記地下埋設管と前記内周面との隙間に裏込め材を充填する裏込め材充填工程と、
前記支保工装置を撤去する支保工装置撤去工程と、を備えた
ことを特徴とする地下埋設管更生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設埋設管の更生において、その埋設管の内面にライニング層として設置される内面管(ライニング管)の設置に関する。より詳細には円形の断面を有する内面管内に挿入設置されて、内面管の変形を防止する支保工装置および地下埋設管更生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水道管、上水道管及びガス管等の埋設管は重要なインフラストラクチャーであるが、長期間の使用により腐蝕、劣化すると、破損の恐れが出てくる。腐蝕、劣化した埋設管の補修方法としては、埋設管の長手方向に沿って管内にライニング管を配置し、埋設管とライニング管との間に裏込め材を注入し、埋設管とライニング管とを裏込め材によって一体化する方法が知られている。上記方法により更生された埋設管の品質を確保するためには、裏込め材を一定の圧力で注入して、埋設管とライニング管との間に裏込め材を均等に充填する必要がある。しかし、この裏込め材の充填時の圧力により、ライニング管が埋設管内で変形や浮き上がりを起こし、品質確保に支障をきたす恐れがある。
【0003】
このような変形や浮き上がりを防止する方法として、ライニング管内に当接するリング体を有する支保工を配置する技術が知られている。例えば特許文献1には、リング体の上下間に伸縮機能を有する支柱を架け渡し、裏込め材充填時による変形を防止する技術が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記した特許文献1の技術では、支柱とリング体との連結のためにブラケットや台座をリング体に固設する必要があり、支保工の製造コスト及び重量が嵩んでしまうという問題があった。
【0006】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、軽量でありながらもライニング管の変形を防止できる支保工装置および地下埋設管更生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するための第一の本発明は、既設の地下埋設管の更生工事で前記地下埋設管の内側に裏込め材を注入する際の内側の型枠となる内面管を内部から支持する支保工装置である。かかる支保工装置は、前記内面管の内周面に沿った円弧状に湾曲する複数の支持体を組み合わせてなる支保工リング体と、当該支保工リング体を内側から支持する変形防止材とを備えている。前記支持体は、周方向に延在するとともに端部が開口する中空部を備えた押出形材からなる。前記支保工リング体の上端部は、周方向に隣り合う前記支持体同士が所定間隔の隙間をあけて離間している。前記変形防止材は、前記支保工リング体の下部と上部との間に架け渡され、上下方向に伸縮可能に構成されている。前記変形防止材の上端部には、二股に分岐された一対のアーム部が形成され、前記アーム部は、前記支持体の端部の前記中空部に挿入される爪部を備えている。
【0008】
かかる支保工装置によれば、支持体が中空部を備えた押出形材からなるので、支保工リング体の軽量化が図れる。また、爪部を中空部に挿入することで、変形防止材を支保工リング体に固定できるので、構造が簡単となり、現場での作業性が向上する。さらに、変形防止材が、内面管の内側に沿って配置された支保工リング体を内側から支えるので、内面管(ライニング管)の変形を防止することができる。
【0009】
前記変形防止材の上端部における一対の前記アーム部はV字形状であり、一対の前記アーム部の間には、前記支保工リング体の上端部の前記隙間を広げるための伸縮機構が設けられているものが好ましい。このような構成を採用し、支保工リング体の隙間を広げれば、支保工リング体が内面管を外側に向けて押圧するので、内面管が裏込め材の圧力に確実に対抗することができる。
【0010】
前記各アーム部が有する爪部は、前記内面管の軸方向に間隔をあけて二つ設けられており、前記各爪部は前記内面管の軸方向に隣接した前記支保工リング体の各中空部にそれぞれ挿入されているものが好ましい。このような構成を採用すれば、変形防止部材を介して、隣接する支保工リング体同士を一体的に固定することができる。
【0011】
前記変形防止材の下端部には、腹起し材が載置される載置部が形成されているものが好ましい。このような構成を採用し、載置部に腹起し材を載置すれば、隣接する支保工リング体の位置がずれるのを防止できる。
【0012】
前記支持体は、前記内面管の軸方向に間隔をあけて設けられた複数の円弧部材を備えている。さらに、前記載置部には、下方に突出する係止片が形成されており、前記係止片は、前記内面管の軸方向に間隔をあけて二つ設けられていることが好ましい。そして、軸方向に沿って設けられた二つの前記係止片は、軸方向に隣接する前記支持体の前記円弧部材を軸方向両側から挟むものが好ましい。このような構成を採用すれば、隣接する支保工リング体を一体的に係止することができるとともに、支保工リング体に対する変形防止材の下端部の位置決めを容易に行うことができる。
【0013】
前記支持体は、隣り合う前記円弧部材を連結する複数の桟部材をさらに備えている。前記係止片は、前記内面管の周方向に間隔をあけて二つ設けられており、周方向に沿って設けられた二つの前記係止片は、前記桟部材を周方向両側から挟むものが好ましい。このような構成を採用すれば、支保工リング体に対する変形防止材の下端部の周方向における位置決めを容易に行うことができる。
【0014】
前記円弧部材の前記桟部材が連結される側面には、その長手方向に沿った凸条または凹溝が形成されており、前記桟部材の端部には、前記凸条または前記凹溝と係合する溝部または凸部が形成されており、前記桟部材は、前記溝部が前記凸条に係合した状態または前記凸部が前記凹溝に係合した状態で、前記円弧部材に固定されているものが好ましい。
【0015】
かかる支保工装置によれば、支持体の円弧部材が中空部を備えた押出形材からなるので、支保工リング体の軽量化が図れる。また、円弧部材を複数の桟部材で連結しているので、支持体が梯子形状となる。したがって、支持体の形状が安定するので、支持体の設置作業が容易になり、ひいては施工コストを抑えることができる。桟部材の溝部(または凸部)を円弧部材の凸条(または凹溝)に沿わして位置をずらして固定すれば、桟部材の取付位置を変更することができる。これによって、支持部材の開口位置を移動できるので、たとえば地下埋設管の横から流入する管路等に対応することができ、支保工装置の設置に高い自由度を持たせることができる。さらに、変形防止材が、内面管の内側に沿って配置された支保工リング体を内側から支えるので、内面管(ライニング管)の変形を防止することができる。
【0016】
隣接する前記支持体に対向する前記円弧部材の側面は、平面状に形成されているものが好ましい。このような構成を採用すれば、支保工リング体同士の接合が容易且つ安定したものとなる。
【0017】
前記課題を解決するための第二の本発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の支保工装置を用いて既設の地下埋設管の更生を行う地下埋設管更生方法である。かかる地下埋設管再生方法は、前記地下埋設管の内側に、前記地下埋設管の内周面と間隙を保った状態で内面管を設置する内面管設置工程と、前記内面管内に、前記支保工リング体を設置するリング体設置工程と、前記支保工リング体の内側に前記変形防止材を設置して、前記支保工リング体の形状を保持する変形防止材設置工程と、前記内面管の底部に直接又は間接に着座するとともにその上端部が前記内面管の頂部を貫通して前記地下埋設管の内周面に当接する反力部材を設置する反力部材設置工程と、前記地下埋設管と前記内周面との隙間に裏込め材を充填する裏込め材充填工程と、前記支保工装置を撤去する支保工装置撤去工程と、を備えている。
【0018】
かかる地下埋設管再生方法によれば、中空部を備えた押出形材からなる支持体にて支保工リング体を構成しているので、支保工リング体の軽量化が図れる。また、変形防止材が、内面管の内側に沿って配置された支保工リング体を内側から支えるので、内面管(ライニング管)の変形を防止することができる。さらに、裏込め材を充填した際に内面管が浮き上がろうとするが、反力部材が地下埋設管の頂部から反力を得るので、内面管の浮き上がりを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、支保工装置が軽量となるとともに、低コストで製造可能となる。さらに、内面管(ライニング管)の変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る支保工装置の設置状態を示した全体斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る支保工装置を示した斜視図である。
【
図5】(a)は円弧部材と桟部材との固定状態を示した断面図、(b)は桟部材を示した端面図である。
【
図6】円弧部材と連結部材との納まりを示した断面図である。
【
図7】変形防止材の上端部と支持体との納まりを示した斜視図である。
【
図8】変形防止材の下端部と支持体との納まりを示した斜視図である。
【
図9】変形防止材の下端部と円弧部材および桟部材との納まりを示した底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る支保工装置について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、かかる支保工装置1は、既設の地下埋設管2の更生工事において、地下埋設管2の内側に裏込め材(図示せず)を注入する際の内側の型枠となる内面管3を内部から支持するものである。
【0022】
地下埋設管2は、たとえば、下水道管、上水道管及びガス管等からなる。地下埋設管は、長期間の使用により腐蝕、劣化し、破損の恐れが出てくる。腐蝕、劣化した地下埋設管2の補修方法としては、たとえば、地下埋設管2の長手方向に沿って内側に内面管(ライニング管)3を配置し、地下埋設管2と内面管3との間に裏込め材を注入し、埋設管と内面管3とを一体化する方法がある。
【0023】
図2にも示すように、支保工装置1は、支保工リング体10と変形防止材30とを備えている。支保工リング体10は、内面管3の内周面に当接して、内面管3を内側から支える部材である。支保工リング体10は、裏込め材の圧力に対抗する強度を備えている。支保工リング体10は、内面管3の内周面に沿った円弧状に湾曲する複数(本実施形態では3つ)の支持体11を組み合わせてなる。
【0024】
図3乃至
図5に示すように、支持体11は、複数の円弧部材12と、隣り合う円弧部材12,12を連結する複数の桟部材13とを備えて構成されている。円弧部材12は、内面管3の周方向に延在するとともに端部が開口する中空部14を備えた押出形材からなる。詳しくは、円弧部材12は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の中空押出形材を内面管3の内周面に沿って湾曲させて形成されている。円弧部材12は、内面管の軸方向に間隔をあけて複数(本実施形態では一対)設けられている。一対の円弧部材12,12は、互いに平行に配置されている。
【0025】
円弧部材12は、断面矩形形状を呈している(
図5の(a)参照)。円弧部材12の側面のうち、対をなす他の円弧部材12に対向する側面(桟部材13が連結される側面)15aには、その長手方向に沿った凸条16が形成されている。凸条16は、矩形断面を呈している。円弧部材12の側面のうち、凸条16が形成された側面15aとは逆側の側面(隣接する支持体11に対向する側面)15bは、平面状に形成されている。側面15bから側面15aの凸条16の先端面に向かって、ボルト孔17が貫通している。ボルト孔17には、円弧部材12と桟部材13を固定するためのボルトB1が挿通される。側面15b側のボルト孔17の開口端部は、拡径してボルト頭部が収容可能になっており、挿通されたボルトB1のボルト頭部と側面15bの表面が面一となっている。ボルト孔17は、円弧部材12の長手方向に間隔をあけて形成されている。ボルト孔17は、桟部材13の設置本数よりも多く形成されており、桟部材13の設置位置を適宜選択可能になっている。
【0026】
図3および
図4に示すように、桟部材13は、平行配置された円弧部材12,12間に架け渡されている。桟部材13は、円弧部材12に対して直交した状態で、周方向に間隔をあけて複数配置されている。つまり、円弧部材12,12と桟部材13,13,13・・とで梯子型形状を呈している。
図5の(b)に示すように、桟部材13は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の押出形材にて構成されている。桟部材13は、ウェブ18aとその両端のフランジ18b,18bとを備え、断面H型形状を呈している。ウェブ18aは、ボルトBのボルト軸部が挿通できるように断面円形に膨らんでいる。
【0027】
桟部材13の長手方向両端部には、円弧部材12の凸条16と係合する溝部19が形成されている。溝部19は、ウェブ18aの端部に形成されており、凸条16と噛合する矩形断面の凹形状を呈している。桟部材13の長手方向両端部には、ネジ穴20が形成されている。ネジ穴20には、ボルトB1のボルト軸部が螺合する。なお、本実施形態では、桟部材13は、ネジ穴20が両端部にそれぞれ形成された中実形状であるが、両端部のネジ穴20,20同士が連通する中空形状であってもよい。桟部材13は、溝部19が凸条16に係合した状態で、ボルトBを介して円弧部材12に固定されている。
【0028】
図2および
図3に示すように、支持体11は、120度より少し小さい中心角の円弧形状を呈している。そして、3つの支持体11,11,11を周方向に連接して固定することで、支保工リング体10が形成されている。支保工リング体10の上端部は、周方向に隣り合う支持体11同士が所定間隔の隙間Sをあけて離間している。つまり、支保工リング体10は、上端部の一部が開放された円弧形状を呈している。支保工リング体10の上端部で、周方向に隣り合う支持体11の円弧部材12の端部は、隙間Sに向かって中空部14が開口している。
【0029】
図3,
図4および
図6に示すように、周方向に連接する支持体11,11は、連結部材21を介して固定されている。連結部材21は、ピン状の部材であって、円弧部材12の中空部14の端部に挿入される。連結部材21は、円弧部材12と同等の曲率で湾曲している。連結部材21の長手方向一方の半分は、一方の支持体11の中空部14に挿入され、長手方向他方の半分は、他方の支持体11の中空部14に挿入される。連結部材21の両端部には、ネジ孔22がそれぞれ形成されている。ネジ孔22は、内面管3の径方向に延在して貫通している。ネジ孔22には、連結部材21を円弧部材12の端部に固定するためのボルトB2が螺合される。ボルトB2は、円弧部材12の内周面15cに形成されたボルト孔24から挿通される。ボルトB2のボルト軸部の先端部は、ネジ孔22を挿通して、円弧部材12の外周面15dに同軸で形成されたボルト孔24に入り込んでいる。連結部材21の端部の出隅角部は面取りされている。
【0030】
図2に示すように、変形防止材30は、支保工リング体10の下部と上部との間に架け渡され、上下方向に伸縮可能に構成されている。変形防止材30は、上端部の隙間幅調整部31と、高さ調整部32と、下端部の脚部33とを備えている。
【0031】
隙間幅調整部31は、支保工リング体10の上端部で、周方向に隣り合う支持体11間の隙間Sの幅(支持体11,11間の距離)を調整する。隙間幅調整部31は、二股に分岐された一対のアーム部34,34を備えている。アーム部34,34は、高さ調整部32の上端部に設けられたブラケット35にピン結合されており、ピンを中心にV字形状に分岐している。アーム部34,34は、ピンを中心に回動することで、アーム部34,34の先端同士の距離を変更できるようになっている。一方のアーム部34は、アーム本体36と、アーム本体36の先端部(上端部)に設けられた受側ブラケット37とを有している。他方のアーム部34は、アーム本体36と、アーム本体36の先端部に設けられたジャッキ側ブラケット38とを有している。受側ブラケット37とジャッキ側ブラケット38とは、ジャッキネジ39を介して近接離反可能に連結されている。
【0032】
受側ブラケット37は、平面視L字状の第一受側ブラケット37aと、側面視L字状の第二受側ブラケット37bとを備えている。第一受側ブラケット37aの一方の面(内面管3の断面方向に沿って広がる面)にはアーム本体36がピン結合されている。第一受側ブラケット37aの他方の面(内面管3の軸方向に沿って広がる面)には、ジャッキネジ39を回転可能に支持するネジ受部40が設けられている。第二受側ブラケット37bは、垂直面と水平面とを備えている。第一受側ブラケット37aの一方の面には、第二受側ブラケット37bの垂直面が当接した状態で固定されている。
【0033】
図7にも示すように、ジャッキ側ブラケット38は、平面視L字状の第一ジャッキ側ブラケット38aと、側面視L字状の第二ジャッキ側ブラケット38bとを備えている。第一ジャッキ側ブラケット38aの一方の面(内面管3の断面方向に沿って広がる面)にはアーム本体36がピン結合されている。第一ジャッキ側ブラケット38aの他方の面(内面管3の軸方向に沿って広がる面)には、ジャッキネジ39が螺合するメネジ部41が形成されている。ジャッキネジ39は、ネジ受部40とメネジ部41間に水平状態で架け渡されている。ジャッキネジ39を回転させることで、ジャッキ側ブラケット38が、受側ブラケット37に対して近接離反する。これに伴ってアーム部34,34の上端部が開閉する。第二ジャッキ側ブラケット38bは、垂直面と水平面とを備えている。第一ジャッキ側ブラケット38aの一方の面には、第二ジャッキ側ブラケット38bの垂直面が当接した状態で固定されている。
【0034】
受側ブラケット37およびジャッキ側ブラケット38は、それぞれ爪部43を備えている。受側ブラケット37の爪部43は、第一受側ブラケット37aの他方の面の上端部から、内面管3の周方向に沿って隙間Sの外側に向かって延出している。ジャッキ側ブラケット38の爪部43は、第一ジャッキ側ブラケット38aの他方の面の上端部から、内面管3の周方向に沿って隙間Sの外側(受側ブラケット37の爪部43とは逆側)に向かって延出している。爪部43は、支持体11の端部の中空部14に挿入される。爪部43は、内面管3の軸方向に間隔をあけて二つ設けられている。各爪部43は内面管3の軸方向に隣接した支保工リング体10の円弧部材12の各中空部14にそれぞれ挿入されている。これによって、隣接する支保工リング体10,10が密着した状態で固定される。
【0035】
高さ調整部32は、隙間幅調整部31と脚部33の間に設けられたターンバックルにて構成されている。ターンバックルは、上下方向に延在して配置されており、ナット部を回転させることで、右ネジ部と左ネジ部が近接離反して隙間幅調整部31を昇降させる。
【0036】
図2および
図8に示すように、脚部33は、支保工リング体10の底部上に載置される部分である。脚部33は、下側部材44と上側部材45とを備えている。下側部材44は、底面部44aと立上面部44bとを備えている。底面部44aは、支保工リング体10の底部の円弧部材12上に載置される部分であって、水平に配置されている。底面部44aの上には腹起し材26(
図1参照)が載置される。つまり、底面部44aは、腹起し材26が載置される平面を備えた載置部を構成している。
【0037】
立上面部44bは、底面部44aの両端部(内面管3の周方向両端部)から上方に向かってそれぞれ立ち上がっている。立上面部44bの上端部には、上側部材45がそれぞれ接続されている。上側部材45は、下側部材44をターンバックルの下端部に設けられたブラケット48に連結するための連結プレートからなる。上側部材45,45は、上側に向かうに連れて互いに近接し、上端部は、ブラケット48を挟持した状態で、ブラケット48にボルト止めされている。下側部材44と上側部材45とで囲まれた空間に腹起し材26が挿入されている。腹起し材26は、断面矩形の角パイプからなり、内面管3の軸方向に延在している。
【0038】
図8および
図9に示すように、底面部(載置部)44aには、下方に突出する係止片50が形成されている。係止片50は、内面管3の軸方向および周方向に間隔をあけて2つずつ配列されている。つまり、係止片50は、前後左右に4つ設けられている。軸方向に沿って設けられた二つの係止片50,50の間隔は、二つの支持体11,11の円弧部材12,12の幅寸法より僅かに大きい寸法となっている。前記係止片50,50は、軸方向に隣接する円弧部材12,12を軸方向両側から挟む。周方向に沿って設けられた二つの係止片50,50の間隔は、支持体11の桟部材13の幅寸法より僅かに大きい寸法となっている。前記係止片50,50は、桟部材13の端部を周方向両側から挟む。
【0039】
次に前記構成の支保工装置1を用いて行う地下埋設管2の地下埋設管再生方法を説明する。かかる地下埋設管更生方法は、内面管設置工程と、リング体設置工程と、変形防止材設置工程と、反力部材設置工程と、裏込め材充填工程と、支保工装置撤去工程と、を備えている。
【0040】
内面管設置工程は、地下埋設管2の内側に、地下埋設管2の内周面と間隙を保った状態で内面管3を設置する工程である。内面管設置工程では、地下埋設管2の底面に所定高さの土台を設置して、その上に内面管3を載置する。
【0041】
リング体設置工程は、内面管3内に、支保工リング体10を設置する工程である。リング体設置工程では、支保工リング体10を1リングずつ組み立てる。詳しくは、工場等で形成した支持体11を、内面管3内に搬送し、内面管3内で、連結部材21を介して支持体11同士を連結する。このとき、支保工リング体10は、隙間Sを有する円弧形状であるので、内面管3の周方向に移動可能となる。これによって、連結部材21による連結作業が非常に行い易い。
【0042】
変形防止材設置工程は、支保工リング体10の内側に変形防止材30を設置する工程である。変形防止材設置工程では、隣接する2つの支保工リング体10が組み立てられた後に、変形防止材30を設置する。まず、高さ調整部32のターンバックルを短くするとともに、隙間幅調整部31のアーム部34,34の先端同士を近接させておく。そして、支保工リング体10,10の底部に、脚部33を上方から設置する。このとき、脚部33の4つの係止片50,50・・が、隣接する支持体11の円弧部材12,12を軸方向両側から挟むとともに、支持体11の桟部材13を周方向両側から挟むように脚部33を載置する。
【0043】
その後、高さ調整部32のターンバックルを長くして、隙間幅調整部31のアーム部34,34の先端部を隙間Sに配置させ、爪部43を円弧部材12の端部の側部に位置させる。そして、ジャッキネジ39を回転させて、受側ブラケット37とジャッキ側ブラケット38とを離反させる。すると、爪部43が、円弧部材12の端部の中空部14に挿入されて、隙間幅調整部31が支保工リング体10の上端部に係止される。受側ブラケット37とジャッキ側ブラケット38とを所定の間隔まで離反させると、支保工リング体10が所望の形状に押し広げられて、支保工リング体10の形状が保持され、内面管3を内側から支持することとなる。
【0044】
リング体設置工程と変形防止材設置工程を繰り返し行って、支保工装置1を内面管3の軸方向に沿って順次設置する。支保工装置1が所定長さ設置されたなら、反力部材設置工程を行う。
【0045】
反力部材設置工程は、内面管3の浮き上がりを防止するための反力部材60を設置する工程である。反力部材60は、内面管3の底部に直接又は間接に着座するとともにその上端部が内面管3の頂部を貫通して地下埋設管2の内周面に当接するものである。本実施形態では、反力部材60は、支保工装置1内に設置された腹起し材26上に設置されており、内面管3の底部に間接的に着座している。反力部材60は、着座プレート61と、支柱62とを備えている。着座プレート61は、腹起し材26の上端部を囲うように断面下向きU字状に形成されている。支柱62は、高さ調整可能に構成されており、着座プレート61上に設けられている。反力部材設置工程は、反力部材60の設置位置の内面管3の上端部に、支柱62が挿通可能な貫通孔を形成する。反力部材60の長さを短くした状態で、反力部材60を腹起し材26の上に立設する。そして、支柱62を伸長させて、支柱62の上端部を内面管3の貫通孔に挿通させ、支柱62の上端を地下埋設管2に当接させる。
【0046】
裏込め材充填工程は、地下埋設管と前記内周面との隙間に裏込め材を充填する工程である。裏込め材は、コンクリート等を充填する。このとき、内面管3には、内側に向かって裏込め材の圧力が作用するが、支保工リング体10で内面管3を内側から支持しているので、内面管の変形を防止できる。支保工リング体10は変形防止材30で内側から支持されているので、変形せずに裏込め材の圧力に対抗することができる。また、裏込め材の荷重によって、内面管3には浮き上がろうとする応力が作用するが、反力部材60が地下埋設管2の頂部に反力を得ているので、内面管3の浮き上がりを防止できる。
【0047】
支保工装置撤去工程は、支保工装置1を内面管3の内部から撤去する工程である。支保工装置撤去工程内側は、裏込め材が所定の強度を発現した後に行う。撤去した支保工装置1は、再利用可能である。
【0048】
以上説明した支保工装置1および地下埋設管再生方法によれば、支持体11が中空部14を備えた押出形材からなるので、支保工リング体10の軽量化が図れる。また、爪部43を中空部14に挿入することで、変形防止材30を支保工リング体10に固定できるので、構造が簡単となり、現場での作業性が向上するとともに、低コストで製造可能となる。円弧部材12,12を複数の桟部材13,13・・で連結して支持体11を形成しているので、支持体11が梯子形状となる。したがって、効率的に支持体11の剛性が大きくなるので、製造コストを抑えることができる。
【0049】
さらに、変形防止材30が、内面管3の内側に沿って配置された支保工リング体10を内側から支えるので、内面管(ライニング管)3の変形を防止することができる。また、変形防止材30は、ジャッキネジ39を回転させるだけで、アーム部34,34の先端部同士を離間させることができる。このようにして、支保工リング体10の隙間Sを広げれば、支保工リング体10が内面管3を外側に向けて押圧するので、内面管3が裏込め材の圧力に確実に対抗することができる。
【0050】
また、支持体11が円弧部材12,12を複数の桟部材13,13・・で連結している構成されているので、支持体11が梯子形状となる。したがって、支持体11の形状が安定するので、支持体11の設置作業が容易になり、ひいては施工コストを抑えることができる。さらに、内面管3の軸方向に間隔をあけて二つ設けられた爪部43,43によって、隣接した支保工リング体10,10の円弧部材12,12を係止しているので、隣接する支保工リング体10,10同士を一体的に固定することができる。
【0051】
また、変形防止材30の下端部に、腹起し材26を載置すれば、隣接する支保工リング体10,10の位置がずれるのを防止できる。さらに、係止片50,50・・が隣接する支持体11の円弧部材12,12を軸方向両側から挟むとともに、支持体11の桟部材13を周方向両側から挟むので、支保工リング体10に対する変形防止材30の位置決めを容易に行うことができる。さらに、隣接する支保工リング体10,10同士の位置がずれるのを防止できる。
【0052】
桟部材13の溝部19を円弧部材12の凸条16に沿わして位置をずらして固定すれば、桟部材13の取付位置を変更することができる。これによって、支持体11の開口位置を移動できるので、たとえば地下埋設管2の横から流入する管路等に対応することができ、支保工装置の設置に高い自由度を持たせることができる。
【0053】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、支持体11が一対の円弧部材12を複数の桟部材13,13で連結する構造となっているが、これに限定されるものではない。円弧部材12が3列以上設けられ、隣り合う円弧部材12,12同士を複数の桟部材13,13で連結する構造であってもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、円弧部材12の凸条16を桟部材13の溝部19に挿入させているが、これに限定されるものではない。円弧部材に凹溝を形成して、桟部材の端部に、凸部を形成し、桟部材の凸部を円弧部材の凹溝に挿入させてもよい。このような構成によっても、桟部材の円弧部材に対する取付位置を変更することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 支保工装置
2 地下埋設管
3 内面管
10 支保工リング体
11 支持体
12 円弧部材
13 桟部材
14 中空部
16 凸条
19 溝部
26 腹起し材
30 変形防止材
34 アーム部
43 爪部
50 係止片
60 反力部材