(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】車両画像撮影システム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/222 20060101AFI20220331BHJP
H04N 5/247 20060101ALI20220331BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20220331BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220331BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20220331BHJP
G03B 17/00 20210101ALI20220331BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20220331BHJP
【FI】
H04N5/222
H04N5/247
H04N5/222 100
H04N7/18 U
H04N5/232 290
H04N5/232 960
H04N5/232 990
G03B15/00 V
G03B17/00 Q
G03B15/00 P
G03B17/00 B
G03B17/56 B
G03B15/00 Q
(21)【出願番号】P 2018070498
(22)【出願日】2018-03-31
【審査請求日】2021-03-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.発明の公開日 平成30年1月5日 2.発明を公開した場所 株式会社JU岐阜羽島オートオークション内の撮影スタジオ 3.公開者名 株式会社JU岐阜羽島オートオークション 4.発明の内容 車両画像撮影システムの使用
(73)【特許権者】
【識別番号】509190071
【氏名又は名称】株式会社ウォンツ
(73)【特許権者】
【識別番号】521094919
【氏名又は名称】株式会社WANTS-EX
(73)【特許権者】
【識別番号】517114609
【氏名又は名称】株式会社JU岐阜羽島オートオークション
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【氏名又は名称】澤田 高志
(72)【発明者】
【氏名】富永 英夫
(72)【発明者】
【氏名】中矢 博章
(72)【発明者】
【氏名】川島 紳
(72)【発明者】
【氏名】柴田 剛
(72)【発明者】
【氏名】高崎 幸之
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】高木 晃広
【審査官】吉川 康男
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-509232(JP,A)
【文献】特開2003-162653(JP,A)
【文献】特開2013-157766(JP,A)
【文献】特開2001-236455(JP,A)
【文献】特開2016-119499(JP,A)
【文献】特開2001-094857(JP,A)
【文献】特開2014-175706(JP,A)
【文献】特開2016-029755(JP,A)
【文献】特開2009-100301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222
H04N 7/18
H04N 5/247
H04N 5/232
G03B 15/00
G03B 17/00
G03B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の全周の車体画像を撮影する車両画像撮影システムであって、
撮影スタジオ内の所定位置に停車した車両を囲むように当該車両の四隅から所定距離内に設けられる少なくとも4つのカメラ支持構造体と、
前記4つのカメラ支持構造体のそれぞれにおいて前記車両の周囲方向に並んで設けられ前記車両の車体画像を所定期間中の動画として撮影可能なN(複数)台のカメラと、
前記4つのカメラ支持構造体のそれぞれに設けられている前記N台のカメラから出力される合計(4×N)の動画データを取得してこれら(4×N)の動画データからそれぞれ少なくとも1つの静止画データを切り出して前記全周の車体画像を生成する画像処理装置と、を備え、
前記4つのカメラ支持構造体のそれぞれに設けられている前記N台のカメラは、そのうちの少なくとも1台のカメラが広角レンズを有し当該広角レンズを介して前記動画を撮影することを特徴とする車両画像撮影システム。
【請求項2】
前記カメラ支持構造体は、直立姿勢の作業員を覆い隠し得る大きさ以上の板壁構造を有することを特徴とする請求項1に記載の車両画像撮影システム。
【請求項3】
前記カメラ支持構造体は、前記N台のカメラのそれぞれに対して、
前記カメラを固定する台座と、
前記カメラの撮影方向を左右方向に変更可能に前記台座を可動させる左右可動機構と、
前記左右可動機構を駆動可能な電動パンモータと、
前記カメラの撮影方向を上下方向に変更可能に前記台座を可動させる上下可動機構と、
前記上下可動機構を駆動可能な電動チルトモータと、
外部から入力される制御コマンドに従って前記電動パンモータおよび前記電動チルトモータを駆動制御するパン・チルト制御ユニットと、
を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両画像撮影システム。
【請求項4】
前記所定位置に停車した車両を前記カメラが撮影する際に撮影範囲の中心になるべき空間位置に位置基準の被写体を配置した場合において、
前記画像処理装置は、前記N台のカメラのそれぞれについて、
前記カメラが撮影した前記被写体の動画データまたは当該動画データから切り出した静止画データに基づいて前記被写体を画像認識するとともに前記動画データまたは前記静止画データの画像範囲内における画像内中心位置と前記被写体の位置とがほぼ同一になるように、当該カメラが固定されている前記台座を左右方向または上下方向に可動させる制御コマンドを前記パン・チルト制御ユニットに対して出力することを特徴とする請求項3に記載の車両画像撮影システム。
【請求項5】
前記N台のカメラが有するレンズは、ズームレンズであり、ズームインおよびズームアウトを行い得る電動ズーム機構と、外部から入力される制御コマンドに従って前記電動ズーム機構を駆動制御するズーム制御ユニットと、を備えている場合において、
前記画像処理装置は、前記N台のカメラが有する前記レンズのそれぞれについて、
前記カメラが撮影した前記被写体の動画データまたは当該動画データから切り出した静止画データに基づいて前記被写体を画像認識するとともに前記動画データまたは前記静止画データの画像範囲内において予め定められている前記被写体の基準サイズと前記被写体の画像サイズとがほぼ同一になるように、当該レンズの前記電動ズーム機構を駆動させる制御コマンドを前記ズーム制御ユニットに対して出力することを特徴とする請求項3または4に記載の車両画像撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の全周の車体画像を撮影する車両画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体画像の撮影に関する技術として、例えば、下記特許文献1に開示されている「中古自動車オークションシステム」がある。この技術では、オークションの対象である中古自動車をオークションに先立って1台ずつ、動画映像と静止画映像を撮影する。例えば、静止画映像については、静止画撮影場所で停止した車両を4台のカメラで4方向からそれぞれ撮影する。この4方向は、同文献1の
図5に開示されているように、車両の左右の斜め前方および左右の斜め後方である。これにより、オークション参加者は、下見情報表示画像において、同車両の左右の斜め前方および後方から見た静止画映像により対象車両の状態を目視確認することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の開示技術によると、車両の静止画は左右の斜め前方および後方から見たものに限れている。そのため、カメラに近い部分、即ち車両前後の左右角部については見やすい画像を撮影できても、カメラから遠い部分、即ち車両前後方向ほぼ中央付近(センターピラー付近)や車両左右方向ほぼ中央付近(フロントグリルやテールの中央付近)については見やすい画像を撮ることが難しい。したがって、例えば、オークション参加者が、車両の状態図には記載されにくい情報(例えば、細かな傷や僅かな凹み等)を目で確認しようとしても部分的にしか行うことができないという問題がある。状態図は、車両の屋根を中心に前後左右を展開図のように表示しそれに傷や凹みの位置や大きさを表したものである。
【0005】
このような問題は、例えば、撮影対象の車両をターンテーブルに載せて回転させながら動画映像や静止画映像を撮ることが可能であれば解決し得るものの、撮影場所にターンテーブルを設備可能な広さのスペースを確保する必要がある。そのため、撮影スタジオを新たに開設する場合にはそれが可能であっても、車両の幅方向にスペースに余裕がない既設スタジオの場合にはあまり現実的ではない。
【0006】
また、撮影対象の車両が停車する場所の周囲に多数のカメラを配置して動画映像や静止画映像を撮り得る構成もあるが、当該車両の前後にカメラを配置した場合には、それらのカメラが車両の出入りに際し障害になる。そのため、車両前後を撮影するカメラは、車両の出入りの邪魔にならないように、上方からつり下げられたり、下方からせり上がったりし得る機械的な構成を採る必要があり、設備コストが増大するという新たな問題の招来につながる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、簡素な構成であっても車両の全周の車体画像を撮影し得る車両画像撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載された請求項1の技術的手段を採用する。この手段によると、少なくとも4つのカメラ支持構造体は、撮影スタジオ内の所定位置に停車した車両を囲むように当該車両の四隅から所定距離内に設けられる。また、これら4つのカメラ支持構造体のそれぞれにおいて、車両の車体画像を所定期間中の動画として撮影可能なN(複数)台のカメラが車両の周囲方向に並んで設けられる。これらN台のカメラは、そのうちの少なくとも1台のカメラが広角ズームレンズを有し当該広角ズームレンズを介して動画を撮影する。そして、これら4つのカメラ支持構造体のN台のカメラから出力される合計(4×N)の動画データは、画像処理装置に取得されてこれら(4×N)の動画データからそれぞれ少なくとも1つの静止画データが切り出されて当該車両の全周の車体画像が生成される。なお、「撮影スタジオ内の所定位置」は、ある一定の範囲を意味するものであり、所定範囲を含む概念である。そのため、「当該車両の四隅」は、「所定範囲の四隅」に換言することができる。
【0009】
これにより、カメラ支持構造体に設けられているN台のカメラのうち、例えば、車両の前後方向ほぼ中央に近い一方の端に配置されたカメラが広角ズームレンズを有する場合には、車両前後方向ほぼ中央付近(センターピラー付近)について見やすい画像を撮ることが可能になる。また、車両の前方または後方に近い他方の端に配置されたカメラが広角ズームレンズを有する場合には、車両左右方向ほぼ中央付近(フロントグリルやテールの中央付近)について見やすい画像を撮ることが可能になる。つまり、車両の四隅からでは見にくい車両前後方向ほぼ中央付近や車両左右方向ほぼ中央付近についても、見やすい画像を撮ることが可能になる。また、車両の幅方向にスペースに余裕がない既設スタジオの場合においても、カメラ支持構造体に設けられているカメラが有するレンズを広角にすることにより被写体である車両とカメラの距離が近くても、当該車両の車体画像を広範囲に撮影することが可能になる。
【0010】
また、特許請求の範囲に記載された請求項2の技術的手段を採用する。この手段によると、カメラ支持構造体は、直立姿勢の作業員を覆い隠し得る大きさ以上の板壁構造を有する。これにより、例えば、当該車両を所定位置まで運転してきたドライバーや当該車両の内装を撮影した作業員等は、車体画像の撮影時においては板壁構造を有するカメラ支持構造体の背後に隠れることが可能になる。
【0011】
また、特許請求の範囲に記載された請求項3の技術的手段を採用する。この手段によると、カメラ支持構造体は、N台のカメラのそれぞれに対して、カメラを固定する台座と、カメラの撮影方向を左右方向に変更可能に台座を可動させる左右可動機構と、左右可動機構を駆動可能な電動パンモータと、カメラの撮影方向を上下方向に変更可能に台座を可動させる上下可動機構と、上下可動機構を駆動可能な電動チルトモータと、外部から入力される制御コマンドに従って電動パンモータおよび電動チルトモータを駆動制御するパン・チルト制御ユニットと、を備えている。これにより、4つのカメラ支持構造体のそれぞれに設けられているN台のカメラのそれぞれの撮影方向を遠隔制御することが可能になるので、例えば、これらのカメラに接続されるモニタやパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という)で撮影画像を目視確認しながら、遠隔操作で撮影方向を調整することが可能になる。
【0012】
また、特許請求の範囲に記載された請求項4の技術的手段を採用する。この手段によると、所定位置に停車した車両をカメラが撮影する際に撮影範囲の中心になるべき空間位置に位置基準の被写体を配置した場合においては、画像処理装置は、N台のカメラのそれぞれについて、カメラが撮影した被写体の動画データまたは当該動画データから切り出した静止画データに基づいて被写体を画像認識するとともに動画データまたは静止画データの画像範囲内における画像内中心位置と被写体の位置とがほぼ同一になるように、当該カメラが固定されている台座を左右方向または上下方向に可動させる制御コマンドをパン・チルト制御ユニットに対して出力する。これにより、4つのカメラ支持構造体のそれぞれに設けられているN台のカメラについて、それぞれの撮影方向のパン(左右方向)やチルト(上下方向)を自動的に調整することが可能になる。
【0013】
また、特許請求の範囲に記載された請求項5の技術的手段を採用する。この手段によると、N台のカメラが有するレンズは、ズームレンズであり、ズームインおよびズームアウトを行い得る電動ズーム機構と、外部から入力される制御コマンドに従って電動ズーム機構を駆動制御するズーム制御ユニットと、を備えている場合においては、画像処理装置は、N台のカメラが有するレンズのそれぞれについて、カメラが撮影した被写体の動画データまたは当該動画データから切り出した静止画データに基づいて被写体を画像認識するとともに動画データまたは静止画データの画像範囲内において予め定められている被写体の基準サイズと被写体の画像サイズとがほぼ同一になるように、当該レンズの電動ズーム機構を駆動させる制御コマンドをズーム制御ユニットに対して出力する。これにより、4つのカメラ支持構造体に設けられているN台のカメラにおいて、レンズによるズームイン(拡大)やズームアウト(縮小)を自動的に調整することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明では、車両の四隅からでは見にくい車両前後方向ほぼ中央付近や車両左右方向ほぼ中央付近についても、見やすい画像を撮ることが可能になる。また、車両の幅方向にスペースに余裕がない既設スタジオの場合においても、カメラ支持構造体に設けられているカメラが有するレンズを広角にすることにより被写体である車両とカメラの距離が近くても、当該車両の車体画像を広範囲に撮影することが可能になる。したがって、4つのカメラ支持構造体のそれぞれに設けられているN台のカメラから出力される合計(4×N)の動画データから、それぞれ少なくとも1つの静止画データを切り出してそれらを当該車両の周囲方向順に並べることによって、車両の全周の車体画像を得ることができる。つまり、4つのカメラ支持構造体のそれぞれに設けられているN台のカメラにより車両の全周の車体画像を、ターンテーブルや車両の全周にカメラを設けることなく、簡素な構成であっても撮影することができる。
【0015】
請求項2の発明では、例えば、当該車両を所定位置まで運転してきたドライバーや当該車両の内装を撮影した作業員等は、車体画像の撮影時においては板壁構造を有するカメラ支持構造体の背後に隠れることが可能になる。したがって、車体画像の背景に作業員等が写り込むことを防止することができる。
【0016】
請求項3の発明では、4つのカメラ支持構造体のそれぞれに設けられているN台のカメラのそれぞれの撮影方向を遠隔制御することが可能になるので、例えば、これらのカメラに接続されるモニタやパソコンで撮影画像を目視確認しながら、遠隔操作で撮影方向を調整することが可能になる。したがって、カメラの設置や調整作業において作業効率を向上させることができる。
【0017】
請求項4の発明では、4つのカメラ支持構造体のそれぞれに設けられているN台のカメラについて、それぞれの撮影方向のパン(左右方向)やチルト(上下方向)を自動的に調整することが可能になる。したがって、カメラの設置や調整作業において作業効率を格段に向上させることができる。
【0018】
請求項5の発明では、4つのカメラ支持構造体に設けられているN台のカメラについて、それぞれのレンズによるズームイン(拡大)やズームアウト(縮小)を自動的に調整することが可能になる。したがって、カメラの設置や調整作業において作業効率を格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両画像撮影システムを車両オークション用の撮影スタジオに適用した場合における構成例を示す説明図である。
【
図2】本実施形態の車両画像撮影システムを構成するカメラウォールの構成例を示す図である。
図2(A)は正面図であり、
図2(B)は平面図である。
【
図3】
図2(A)に示すIII線内の拡大図である。
【
図4】
図4(A)は、カメラウォールに設けられるカメラケース、カメラや雲台の構成例を示す説明図である。
図4(B)は雲台と雲台に取り付けられたカメラの構成例や可動例を示す説明図である。
図4(C)は、カメラの上方から見た場合におけるカメラと雲台の構成例や可動例を示す説明図である。
【
図5】本実施形態の車両画像撮影システムの電気的な構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図5に示すコンピュータにより実行される車両画像撮影処理の流れを表したフローチャートである。
【
図7】
図6に示す車両画像撮影処理においてコンピュータのディスプレィ画面に表示される画面の例である。
【
図8】本実施形態の改変例を示す説明図であり、
図4に相当するものである。
図8(A)は、カメラウォールに設けられるカメラケース、カメラや雲台の構成例を示す説明図である。
図8(B)は電動雲台と電動雲台に取り付けられたカメラの構成例や可動例を示す説明図である。
図8(C)は、カメラの上方から見た場合におけるカメラと電動雲台の構成例や可動例を示す説明図である。
【
図9】本実施形態の改変例に係る車両画像撮影システムの電気的な構成例を示すブロック図である。
【
図10】
図10(A)は、各カメラウォールに電動雲台を搭載した場合におけるカメラの撮影方向の調整に用いる基準被写体の位置関係等を示す説明図である。
図10(B)は、基準被写体の構成例を示す説明図である。
【
図11】
図9に示すコンピュータにより実行されるカメラ方向等自動調整処理の流れを表したフローチャートである。
【
図12】
図11に示すサブルーチン「カメラ設定データ調整処理」の流れを表したフローチャートである。
【
図13】
図11に示すサブルーチン「カメラ設定データ反映処理」の流れを表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の車両画像撮影システムの実施形態について図を参照して説明する。本実施形態は、中古自動車のオークション会場に設けられた大型ディスプレィ、同会場の端末装置やインターネットに接続された端末装置等に表示するための車体画像を、予め撮影するスタジオの車両アラウンド画像撮影システムに関するものである。以下、車両アラウンド画像撮影システムのことを単に「撮影システム」ともいう。
【0021】
≪撮影システム10の構成概要≫
まず、
図1に基づいて、本実施形態の撮影システム10の構成概要を簡単に説明する。
図1には、撮影システム10を車両オークション用の撮影スタジオに適用した場合における構成例を表した説明図が図示されている。なお、同図において表されている座標系は、X軸方向が車両8の進行方向、Y軸方向が車両8の高さ(車高)方向、Z軸方向が車両8の幅(車幅)方向をそれぞれ示す。本明細書では、このようなX軸方向のことを前後方向という場合もある。またY軸方向のことを上下方向という場合もある。さらにZ軸方向のことを左右方向という場合もある。他の図においてもこのような座標系が表されている場合には同様である。なお、本実施形態では、車両8は、中型車(例えば、全長:4.8メートル、全幅:1.7メートル、全高:1.5メートル)である。
【0022】
図1に示すように、撮影システム10が設けられる撮影スタジオ2は、車両8の進行方向に横長の撮影空間を壁3により区画形成した建屋である。
図1の紙面左側が入口5であり、同紙面右側が出口6である。被写体である車両8は、入口5から撮影スタジオ2内に入ると所定位置7において停車する。所定位置(所定範囲)7は、撮影スタジオ2のほぼ中央に設けられている。そして、車体周囲や車内の内装等が撮影された後、出口6から出る。なお、撮影スタジオ2の床面には、X軸方向に長い矩形の所定位置7を直接的に明示、または間接的に示唆する、線やマークが表示されている。なお、所定位置7は、例えば、長辺が6メートル、短辺が2メートルに設定されている。
【0023】
このような撮影スタジオ2等に設けられる撮影システム10は、主に、4つのカメラウォール20(20a,20b,20c,20d)とこれらのカメラウォール20を制御するコンピュータ11とにより構成されている。これらのカメラウォール20(20a,20b,20c,20d)は、特許請求の範囲に記載の「カメラ支持構造体」に相当し得るものである。また、後述するように、カメラウォール20は「板壁構造」を有する。
【0024】
4つのカメラウォール20は、本実施形態では、撮影スタジオ2内に設けられており、例えば、高さが約2.5メートルに設定され、またX軸方向の長さ(横幅)が約3メートルに設定されている。そのため、標準的な体格の作業員であれば、直立姿勢であってもカメラウォール20の裏側(退避スペース4)に移動することで身体を隠すことができる。
【0025】
これらのカメラウォール20は、本実施形態では、所定位置7の四隅から、それぞれ2メートル~3メートル離れた位置に配置されている。即ち、カメラウォール20a~20dは、撮影スタジオ2内の所定位置7に停車した車両8を囲むように当該車両8の四隅から所定距離内(例えば3メートル以内)に設けられている。
【0026】
例えば、カメラウォール20aは、所定位置7の出口6方向の左前角部7aから2メートル~3メートル(所定距離)だけ離れた位置に設けられている。またカメラウォール20bは、所定位置7の入口5方向の左後角部7bから同所定距離だけ離れた位置に設けられている。カメラウォール20c,20dは、右後角部7cや右前角部7dから、それぞれ同所定距離だけ離れた位置に設けられている。なお、
図1において、カメラウォール20(20a~20d)と壁3の間に表されている一点鎖線は、後述する退避スペース4を示すものである。
【0027】
撮影スタジオ2内において、このように配置されるカメラウォール20a~20dは、それぞれ3台のカメラ30を備えている。また、カメラウォール20a~20dは、それぞれ所定位置7(所定位置7に停車した車両8)を取り囲むように湾曲している。即ち、カメラウォール20a~20dの平面形状は、所定位置7の対角線の交点(所定位置7の中心)Pを中心に描かれる楕円Oの周上に沿う湾曲状に形成されている。楕円Oは、長径がX軸方向、短径がZ軸方向であり、例えば、長径が15メートル、短径が7メートルに設定されている。
【0028】
これら3台のカメラ30は、カメラウォール20のそれぞれにおいて所定位置7(所定位置7に停車した車両8)の周囲方向に並んで位置するように設けられている。より厳密には、前述の楕円Oの周上に位置するようにこれらのカメラ30が配置されている。例えば、所定位置7の左前角部7aから所定距離だけ離れた場所に設けられるカメラウォール20aには、出口6方向から車両8の前方左側方に向かって、カメラ30a,30b,30cがそれぞれ設けられている。同様に、右前角部7dから所定距離だけ離れた場所に設けられるカメラウォール20dには、出口6方向から車両8の前方右側方に向かって、カメラ30m,30k,30jがそれぞれ設けられている。
【0029】
即ち、これらのカメラ30a,30b,30c,30d,30e,30f,30g,30i,30j,30k,30m(以下、これらを総称して「カメラ30a等」という場合がある。図面に表されている符号30は、それが指す対象がカメラ30a,30b,30c,30d,30e,30f,30g,30i,30j,30k,30mのいずれかに該当することを示す。)は、所定位置7の中心Pに対して点対称に位置している。例えば、カメラ30aと30g、カメラ30bとカメラ30h、カメラ30cとカメラ30i、カメラ30dとカメラ30j、カメラ30eとカメラ30k、カメラ30fとカメラ30m、はそれぞれ所定位置7の中心Pに対して点対称に位置している。
【0030】
これにより、カメラウォール20aのカメラ30a,30b,30cにより車両8の前側8aの画像や左側8cの前方向等の画像を撮影することが可能になる。また、カメラウォール20dのカメラ30m,30k,30jにより車両8の前側8aの画像や右側8dの前方向等の画像を撮影することが可能になる。
【0031】
また、左後角部7bから所定距離だけ離れた場所に設けられるカメラウォール20bには、入口5方向から車両8の後方左側方に向かって、カメラ30f,30e,30dがそれぞれ設けられている。さらに、右後角部7cから所定距離だけ離れた場所に設けられるカメラウォール20cには、入口5方向から車両8の後方右側方に向かって、カメラ30g,30h,30iがそれぞれ設けられている。
【0032】
これにより、カメラウォール20bのカメラ30f,30e,30dにより車両8の後側8bおよび左側8cの後方向等の画像を撮影することが可能になる。また、カメラウォール20cのカメラ30g,30h,30iにより車両8の後側8bおよび右側8dの後方向等の画像を撮影することが可能になる。
【0033】
一方、コンピュータ11は、撮影スタジオ2とは別に部屋(例えば、オペレータ室や調整室)に設けられている。本実施形態では、コンピュータ11は、カメラウォール20a~20dのそれぞれに設けられている12台のカメラ30a等に接続されており、後述するような画像処理等を行う。コンピュータ11やその周辺機器等の構成については、後で
図5を参照しながら述べる。
【0034】
≪カメラウォール20の構成≫
ここで、カメラウォール20の構成について、
図2および
図3を参照しながら詳しく説明する。4つのカメラウォール20a~20dのうち、カメラウォール20aとカメラウォール20cは同様に構成されている。また、カメラウォール20aとカメラウォール20bはYZ平面に対して、またカメラウォール20aとカメラウォール20dはXY平面に対して、それぞれ鏡映対称に構成されている。そのため、ここでは4つのカメラウォール20a~20dのうち、カメラウォール20aを代表して説明する。
図2(A)には、カメラウォール20aの正面図が図示されている。また
図2(B)には、カメラウォール20aの平面図が図示されている。
図3には、
図2(A)に示すIII線内の拡大図が図示されている。なお、便宜的に
図2および
図3においては、透明パネル39の部分を薄い灰色に、またドームカバー38の部分を濃い灰色に、それぞれ着色している。
【0035】
図2および
図3に示すように、カメラウォール20aは、主に、縦枠21、横枠22、上面パネル23、側面パネル24、前面パネル25,26等により構成されている。縦枠21と横枠22は、例えば、アルミニウム製のL型アングルや角パイプであり、カメラウォール20aの骨組構造を構成している(
図2(B)参照)。X軸方向に掛け渡されている横枠22は、
図1に示す楕円Oの楕円弧やそれに近似した楕円弧に沿う形状に湾曲している。横枠22は、例えば、高さ方向に異なる位置の複数箇所(例えば3箇所)に設けられている。
【0036】
上面パネル23、側面パネル24および前面パネル25,26は、例えば、鉄製の平坦な平板(鉄板)で構成された板壁構造を有する壁体があり、表面が灰色に塗装されている。上面パネル23はカメラウォール20aの上方を塞ぐ天板の役割、側面パネル24はカメラウォール20aの側方を塞ぐ側板の役割をそれぞれ果たしている。X軸方向に掛け渡されている横枠22は、前述したように楕円弧に沿う形状に湾曲しているため、カメラウォール20aの前面は、複数枚の前面パネル25,26により構成される。
【0037】
本実施形態では、前面パネル25,26は、X軸方向(短手方向)の長さがいずれも同じ寸法に設定されており、前面パネル25,26の合計枚数は、例えば、所定位置7の周囲方向に並んで配置されるカメラ30の台数Nを2倍して1を引いた数S(=N×2-1)に設定されている。カメラウォール20aが備えるカメラ30は3台であるので、前面パネル25,26の合計枚数Sは5(=3×2-1)になる。
【0038】
本実施形態では、次に説明するように、前面パネル25は、カメラ30が取り付けられる部分を含めて覆うことから、カメラ30の台数と同数の3枚の前面パネル25と2枚の前面パネル26によりカメラウォール20aの前面が構成される。なお、前面パネル25,26として平坦な平面パネルを選択する必要はなく、短手方向が楕円弧に沿った曲面を有する曲面パネルを前面パネル25,26に用いてもよい。
【0039】
前面パネル25は、複数の壁体に分割されている。即ち、前面パネル25は、Y軸方向に上から、幕板壁25a、ブランク板壁25b、腰板壁25cの3種類の壁体で構成されている。これに対して、前面パネル26は、短冊状の長壁体で構成されている。
【0040】
幕板壁25aはブランク板壁25b等の上方、腰板壁25cはブランク板壁25b等の下方をそれぞれ塞ぐ壁体である。ブランク板壁25bは、カメラケース33を収容されていないラック空間の前面開口部を塞ぐ壁体である。本実施形態では、中段のラック空間28にカメラケース33が収容されており、上段のラック空間27と下段のラック空間29はカメラケース33が収容されていない。そのため、本実施形態では、ブランク板壁25bは、上下段のラック空間27,29を塞いでいる。なお、中段のラック空間28には、カメラケース33の前蓋36が取り付けられている。
図2(A)においては、ラック空間は、二点鎖線で表現されており、符号を付していないものもある。
【0041】
前面パネル26は、ラック空間27,28,29が設けられていない部分の前面開口部を塞ぐ壁体である。本実施形態では、カメラウォール20aは、3台のカメラ30が車両8の周囲方向に並ぶように設けられているため、3台のカメラの間の2箇所に前面パネル26が取り付けられている。前面パネル26により塞がれているカメラウォール20aの内部空間にも、ラック空間27,28,29等が設けられる場合にはカメラ30を取り付けることが可能になる。そのような場合には、前面パネル26に代えて、前面パネル25(幕板壁25a、ブランク板壁25b、腰板壁25c)等が取り付けられる。
【0042】
なお、本実施形態では、カメラウォール20aの背面には、図略の背面パネルが取り付けられている。これにより、後述するように、作業員がカメラウォール20aの裏側に隠れる際に身体の一部がカメラウォール20a内に入ったり、塵や埃等がカメラウォール20a内に入り込んだりするのを防止している。このようなことが想定されない場合には、背面パネルは設けなくてもよい。
【0043】
カメラ30が収容されるラック空間27,28,29には、カメラケース33や前蓋36等が取り付けられる。本実施形態では、中段のラック空間28にカメラ30を収容しており、その前面開口部には、前蓋36やドームカバー38を有するカメラボックス37が取り付けられている。なお、
図3においては、カメラ30の下方に雲台40も図示されている。カメラ30や雲台40の構成については
図4に詳しく図示されているので、ここからは、
図4も参照しながら説明する。
【0044】
≪カメラケース33、カメラボックス37の構成≫
図4(A)には、カメラウォール20に設けられるカメラケース33、カメラ30や雲台40の構成例を表した説明図が図示されている。また
図4(B)には、雲台40と雲台40に取り付けられたカメラ30の構成例や可動例を表した説明図が図示されている。さらに
図4(C)には、カメラ30の上方から見た場合におけるカメラ30と雲台40の構成例や可動例を表した説明図が図示されている。なお、便宜的に
図4(A)においては、透明パネル39の部分を薄い灰色に、またドームカバー38の部分を濃い灰色にそれぞれ着色されている。
【0045】
図4(A)に示すように、カメラ30は、カメラケース33を介してカメラウォール20に取り付けられる。カメラケース33は、カメラ30のレンズユニット側を除いてカメラ30の周囲を取り囲むようにコ字形状に形成される周囲プレート34と、カメラ30の底側(雲台40側)を覆うように周囲プレート34の下側開口部を閉塞する底面プレート35と、により構成されている。周囲プレート34と底面プレート35は、例えば、溶接されている。
【0046】
周囲プレート34は、カメラ30のレンズユニット側の開口部に外側にL字形状に折れ曲がるフランジ部34aを備えている。このフランジ部34aは、カメラウォール20の縦枠21に対してカメラケース33を固定するためのものである。つまり、図略のボルト等により縦枠21にフランジ部34aをねじ締結することによって、カメラケース33はカメラウォール20に取り付けられて固定される。
【0047】
カメラケース33の前面には、カメラ30のレンズユニット32が露出し得るように、窓部36aを有する前蓋36が取り付けられる。前蓋36は、前述した前面パネル25のブランク板壁25bと同様の外形寸法に構成されており、そのほぼ中央に矩形状の窓部36aが形成されている。この窓部36aは、カメラ30の撮影可能範囲を十分に確保可能な大きさと範囲に設定されており、雲台40がカメラ30の撮影方向(パンやチルト)を変更した場合にカメラ30の視野内に前蓋36が入らないように形成されている。
【0048】
前蓋36の幅方向(縦枠21に対して直交する方向)の両側には、裏側に向けてL字形状に折れ曲がる折曲げ部36bが形成されている。この折曲げ部36bは、当該前蓋36を縦枠21に対して、図略のボルト等によりねじ締結を可能にするためのものであり、ボルトを挿通可能な図略の貫通孔が形成されている。前蓋36の窓部36aには、例えば、光学的に透明な透明パネル等が取り付けられる。
【0049】
本実施形態では、窓部36aには、直接、透明パネル39が取り付けられるのではなく、カメラボックス37を介して透明パネル39が取り付けられている。カメラボックス37は、例えば、鉄板で構成された三角柱形状の箱体であり、斜辺相当の2つの側面に窓部が形成されている。一方の窓部は、前蓋36の窓部36aに連通可能に構成されており、他方の窓部は、透明パネル39を取り付け可能に構成されている。
【0050】
本実施形態では、カメラウォール20が撮影スタジオ2に設置された場合において、透明パネル39を有する他方の窓部が所定位置7に向くようにカメラボックス37が構成されている。このようなカメラボックス37を前蓋36が備える構成を採ることによって、例えば、カメラ30のレンズユニット32が前蓋36の窓部36aから外部に突出する構成であっても、外部(入口5や出口6)から侵入する風でレンズユニット32が揺れたり、撮影スタジオ2内に降り込んだ雨水でレンズユニット32が濡れたりする等の気象現象の影響を受けにくくしている。
【0051】
また、本実施形態では、半球形状に形成されている光学的に透明なドームカバー38が透明パネル39に取り付けられている。つまり、透明パネル39の境界面よりもさらに外部に突出可能にドームカバー38が取り付けられている。これにより、例えば、カメラ30の可動範囲内においてレンズユニット32が透明パネル39よりも外側に突出し得る場合があってもそれを可能にすることができる。
【0052】
なお、ドームカバー38を設ける場合には、透明パネル39の代わりに、例えば、鉄板等の光学的に不透明な部材で透明パネル39の部分を構成してもよい。これにより、外部からカメラボックス37内を視覚的にわかりにくくすることが可能になる。また、カメラ30のレンズユニット32が広角ズームレンズ32bである場合には、ドームカバー38を設けることにより、光学的に不透明なパネルが視野の妨げになりにくくなるため、カメラ30の画角をより広く確保することが可能になる。
【0053】
≪カメラ30、雲台40の構成≫
カメラ30は、カメラ本体31とレンズユニット32により構成されている。カメラ本体31は、例えば、動画を撮影可能な高精細ハイビジョンカラーカメラであり、撮影した動画データをSDI(Serial Digital Interface)を介して出力可能に構成されている。また、レンズユニット32は、電動ズームレンズ機構も備えており、オートフォーカスによるズーム調整も可能である。ズーム、ホワイトバランスや露出等は、外部から調整可能に構成されている。本実施形態では、これらの設定データは、カメラインタフェース14を介してRS-232Cケーブル17により接続されたコンピュータ11から受信し得るように構成されている(
図5参照)。
【0054】
レンズユニット32は、例えば、電動ズームレンズであり、ズームレンズ、電動ズーム機構、ズーム制御ユニット、それらを覆うカバー等により構成されている。ズームレンズ、電動ズーム機構、ズーム制御ユニットは図示されていない。ズームレンズは、標準ズームレンズ32aや広角ズームレンズ32bの場合がある。本実施形態のカメラ30は、取り付けられる場所の違いにより、標準ズームレンズ32aが選択されたり広角ズームレンズ32bが選択されたりする。一般的に、広角ズームレンズ32bは、標準ズームレンズ32aに比べて画角(撮影範囲)が広いが、製品コストが高い傾向にある。このようなレンズの種類については後で述べる。
【0055】
電動ズーム機構は、ズームレンズの可変機構をモータの駆動力により駆動するものであり、モータの駆動制御はズーム制御ユニットにより行われる。ズーム制御ユニットは、オートフォーカスによるズーム調整時に電動ズーム機構を制御したり、コンピュータ11から受信する制御コマンドにより電動ズーム機構を制御したりする。コンピュータ11から送られてくる制御コマンドは、カメラインタフェース14を介して受信可能に構成されている。
【0056】
雲台40は、雲台40に取り付けられたカメラ30の撮影方向を左右方向(車両8の前後方向)や上下方向に変更したり、カメラ30の位置を前後方向(車両8の左右方向)に変更したりし得るものである。雲台40は、主に、パン・チルトユニット41とスライドユニット45により構成されている。
【0057】
パン・チルトユニット41は、雲台40をカメラウォール20に取り付けた状態において、カメラ30の撮影方向を車両8(所定位置7)の前後方向(パン)や高さ方向(チルト)に変更可能に構成されている。パン・チルトユニット41は、ホルダ42、チルト軸43、パン軸44等により構成されている。ホルダ42は、チルト軸43によりカメラ30を上下方向(
図1に示すY軸方向)に回動可能に軸支している(
図4(B)に示す符号30YU,30YD)。また、パン・チルトユニット41は、スライドユニット45のスライダ47に対してパン軸44によりカメラ30を左右方向(
図1に示すX軸方向)に回動可能にしている(
図4(C)に示す符号30XL,30XR)。
【0058】
スライドユニット45は、雲台40をカメラウォール20に取り付けた状態において、カメラ30の位置を車両8(所定位置7)の左右方向(
図1に示すZ軸方向)に変更可能に構成されている。スライドユニット45は、ベースプレート46、スライダ47等により構成されている。スライダ47は、カメラケース33に固定されるベースプレート46に対して、パン・チルトユニット41を介してスライダ47に取り付けられた(軸支された)カメラ30を前後方向(
図1に示すZ軸方向)に移動可能にしている(
図4(B)や
図4(C)に示す符号30Z)。スライダ47の移動可能範囲は、スライダ47に形成されている長穴47aとこの長穴47aに挿通可能にベースプレート46に形成される凸部46aとにより決定される。
【0059】
このように構成される雲台40は、それぞれにカメラ30a等が取り付けられることによって、各カメラ30a等の撮影方向が所定位置7の中心P(
図1参照)を向くように、個々の雲台40のパンが調整される。また雲台40のチルトは、例えば、中型車両の全高(1.5メートル)の約1/2~約2/3の高さに調整されている。
【0060】
≪コンピュータ11、周辺機器の構成≫
次に、コンピュータ11やその周辺機器の構成を
図5に基づいて説明する。
図5には、撮影システム10の電気的な構成例を表したブロック図が図示されている。コンピュータ11は、典型的にはパソコンであり、例えば、MPU、メインメモリ(DRAM等)、ストレージデバイス(磁気ディスク、フラッシュメモリ等)、通信インタフェース(LANインタフェース、SDIインタフェース等)、ディスプレィやキーボード等により構成されている(
図5にはこれらは図示されていない)。
【0061】
後述するように、当該コンピュータ11が実行する車両画像撮影処理のプログラムは、ストレージデバイスに予め格納されている。この車両画像撮影処理により、コンピュータ11は、カメラウォール20a~20dのそれぞれのカメラ30a等から、ビデオハブ12およびSDIケーブル15,16を介してSDIインタフェースにより動画データを取得する。コンピュータ11は、LANインタフェースによりLANケーブル18に接続され、またカメラ30a等が有するカメラインタフェース14にもRS-232Cケーブル17を介して接続されている。コンピュータ11からディスプレィに出力されるビデオ信号は、分配器を介して図略のサブディスプレィにも送られている。このサブディスプレィは、例えば、カメラウォール20a~20dのいずれかの退避スペース4に配置されている。
【0062】
ビデオハブ12は、SDIインタフェースによる複数チャネルの映像信号を選択可能な集線装置であり、LANインタフェースを備えている。本実施形態では、ビデオハブ12は、例えば、12チャネルの入力系統に対して4チャネルの出力系統を選択可能に構成されている。入力系統のチャネル数は、カメラ30a等の台数12に合わせたものであり、また出力系統のチャネル数は、カメラウォール20a~20dの数に合わせている。これにより、例えば、各カメラウォール20a~20dごとに4チャネル(A~Dチャネル)に分割してコンピュータ11に送信することが可能になる。ビデオハブ12は、LANケーブル18にも接続されている。そのため、A~Dチャネルの動画データの送信は、コンピュータ11からLANを介して受け取る制御コマンドに従って行われる。
【0063】
例えば、ビデオハブ12は、Aチャネルの送信タイミングにおいては、カメラウォール20aのカメラ30a,30b,30cがそれぞれ撮影した動画データを所定のタイムスロットに時分割してコンピュータ11に送信する。またBチャネルの送信タイミングでは、カメラウォール20bのカメラ30d,30e,30fがそれぞれ撮影した動画データを所定のタイムスロットに時分割してコンピュータ11に送信する。同様に、カメラウォール20cのカメラ30g,30h,30iの動画データをCチャネルにより、またカメラウォール20dのカメラ30j,30k,30mの動画データをDチャネルにより、それぞれのタイミングで送信する。
【0064】
本実施形態では、カメラ30a等が有するカメラインタフェース14は、RS-232Cに準拠したインタフェースであり、デイジーチェーン状にそれぞれのカメラ30a等を電気的に数珠つなぎにするものである。コンピュータ11からアドレス付きの制御コマンドを受信すると、当該アドレスのカメラ30がその制御コマンドに従った制御を行う。
【0065】
なお、ビデオハブ12が備えるチャネル数は、入力系統数がカメラ30a等の台数以上であればよく、また出力系統数は多い方がよいが1チャネル以上カメラ30a等の台数以下でもよい。また、本実施形態では、LANケーブル18にファイルサーバ13等を接続している。このファイルサーバ13には、出品検査票に記載された車両8に関する固有情報(出品番号、車種、型式、排気量、走行距離、車名等)や、後述するように、コンピュータ11により実行される車両画像撮影処理によって動画データから切り出された(キャプチャーされた)静止画データ等が蓄積される。なお、ファイルサーバは、データベースサーバを含む概念である。
【0066】
このほか、LANケーブル18には、図示されていない周辺機器として、例えば、他のパソコン、プリンタや無線LANのアクセスポイント等が接続されている。なお、作業員が携帯する内装画像撮影用のデジタルカメラにより撮影された内装画像データは、無線LANのアクセスポイントを経由してファイルサーバ13に蓄積される。また場合によっては、カメラ30a等のうちの特定のカメラ30(例えば、カメラ30d)または別途設けられたカメラから送られてくる動画データを常時映し出すディスプレィ装置(モニタ装置)が設けられている。この場合には、次に説明する車両画像撮影処理の動画データ取得処理(S107)では、コンピュータ11のディスプレィに動画を映し出す必要はない。
【0067】
≪コンピュータ11による車両画像撮影処理≫
続いて、コンピュータ11が実行する車両画像撮影処理について
図6および
図7を参照しながら説明する。
図6には、コンピュータ11により実行される車両画像撮影処理の流れを表したフローチャートが図示されている。
図7には、車両画像撮影処理においてコンピュータ11のディスプレィ画面に表示される画面例が図示されている。
【0068】
なお、
図7のディスプレィ画面70に表示されているソフトウェアボタンは、それに対応するキースイッチがキーボードに存在する場合には、コンピュータ11のオペレータが当該キーを押下することで選択できるが、オペレータがマウス等のポインティングデバイスによりソフトウェアボタンをクリックすることによっても選択可能である。以下の説明においては、マウスのクリックにより選択可能な場合であっても、オペレータがキースイッチを押下することにより選択される場合を例示して説明する。
【0069】
図6に示すように、車両画像撮影処理が開始されると、まずステップS101により所定の初期化処理が行われた後、ステップS103により撮影モード設定処理が行われる。初期化処理では、例えば、当該車両画像撮影処理に関わるワークファイルやフラグ等をクリアしたり設定データ等をメインメモリ上に展開したりする。また、撮影モード設定処理では、それぞれのカメラ30a等に対して個々に設定されているズーム、ホワイトバランスや露出等に関する設定データのデフォルト値をカメラインタフェース14に送信する。これにより、カメラ30a等は、ズームやホワイトバランス等がそれぞれデフォルト値に設定される。
【0070】
本実施形態では、
図7に示すディスプレィ画面70のように、例えば、撮影モードが「晴れ」、「曇り」、「夕方」、「夜間」のようにカメラモードボタン96として表示されている。例えば、現在設定されている撮影モードの「晴れ」は黄色(
図7では薄灰色)で表示され、それ以外の「曇り」等は灰色で表示されている。この撮影モードは、オペレータがF9キーの「カメラモード切替」79を押下することによって、設定する撮影モードを「晴れ」→「曇り」→「夕方」→「夜間」→「晴れ」→…というようにサイクリックに切り替えることができる。
【0071】
ステップS103の撮影モード設定処理が済むと、撮影開始の指示があるまで待機する(S105)。即ち、
図7に示すように、コンピュータ11のディスプレィ画面70に表示されているファンクションのF5キーの「一括撮影」75またはF6キーの「4地点撮影」76が押下されるまで待機する(S105;No)。なお、
図7の表示例は、ある程度処理が進んだ状態の画面表示を例示しているため、このステップS103の処理時点では表示されていないもの(例えば、4地点静止画94、マルチ静止画95)が既に表示されていることに注意されたい。
【0072】
例えば、コンピュータ11のオペレータは、車両8が所定位置7に停車するまで撮影開始を待ったり、また作業員による車両8の内装画像の撮影が終了するまで撮影開始を待ったりする。また、カメラウォール20a~20dのカメラ30a等により動画の撮影が開始されると、作業員の姿が当該動画に写り込んでしまう場合がある。そのため、当該作業員は、車両8の移動や内装の撮影等の所定の作業を完了すると、カメラウォール20a~20dの裏側に設けられている退避スペース4(
図1参照)に隠れることで、このような写り込みを防ぐことが可能になる。オペレータは、作業員による所定の作業や退避が完了したことを、目視やインカム(インターコミュニケーション)等により確認したうえで、「一括撮影」75または「4地点撮影」76を押下する。
【0073】
「一括撮影」75や「4地点撮影」76が押下されると(S105;Yes)、コンピュータ11からカメラインタフェース14に対して各カメラ30a等のアドレスを付けた撮影開始の制御コマンドが送信される。これにより、カメラ30a等はそれぞれ車両8の動画撮影を始める。なお、特許請求の範囲に記載の「所定期間中」は、カメラ30a等が動画撮影を開始してから、少なくとも次のステップS107による動画データ取得処理によりビデオハブ12がカメラ30a等の動画データを送信するまでの期間内のことである。
【0074】
続くステップS107により動画データ取得処理が行われる。ここでは「一括撮影」75が押下された場合を例示して説明する。なお、「4地点撮影」76が押下された場合には、カメラウォール20a~20dが備える3台のカメラ30a等のうち、中央に配置されたカメラ30b,30e,30h,30kからビデオハブ12を介して送られてくる動画データだけが画像処理の対象になる。この点が、すべてのカメラ30a等の動画データを画像処理の対象にする「一括撮影」の場合と異なる。
【0075】
ステップS107の処理では、例えば、各カメラ30a等から送られてくる動画データのうちカメラ30a,30b,30cの動画データをAチャネルから出力するように指示可能な制御コマンドをビデオハブ12に対して送信する。これにより、ビデオハブ12からAチャネルを介してカメラ30a,30b,30cの動画データが送られてくる。これにより、コンピュータ11のディスプレィには、例えば、カメラ30a,30b,30cから送られてくる動画が
図7に示す4地点静止画94のように画面分割されて映し出される。特定の1台のカメラ30(例えば、カメラ30c)から送られてくる動画を符号94で示す破線内に大きく映し出してもよい。
【0076】
このため、次のステップS109では、Aチャネルから入力される画像データに対してキャプチャー処理を行い、動画データから静止画データを切り出して(キャプチャーして)、例えば、それをストレージデバイスに一時的に格納する。動画データから切り出す静止画データは、1つでも2つ以上でもよい。静止画データを2つ以上切り出した場合には、後述するトリミング処理(S117)も、これら2つ以上の静止画データに対して行われる。
【0077】
このような動画データ取得処理(S107)とキャプチャー処理(S109)をAチャネルからDチャネルまで行うことによって(S111;No)、カメラ30a等から出力される各動画データについて静止画データを切り出すことが可能になる。ステップS111によりキャプチャー処理が全データに対して行われたと判定すると(S111;Yes)、続くステップS113により撮影完了表示処理が行われる。
【0078】
撮影完了表示処理(S113)は、ディスプレィ画面70の撮影完了インジケータ99aの表示色を灰色から赤色に変更することにより行われる。つまり、撮影完了インジケータ99aは、撮影完了前は「撮影完了」の文字の背景色が灰色で表示され、撮影完了後は同背景色が赤色で表示される。なお、撮影完了インジケータ99aの右隣に表示されている調整完了インジケータ99bは、調整完了前は「調整完了」の文字の背景色が灰色で表示され、調整完了後は同背景色が赤色で表示される。
【0079】
なお、これらの撮影完了インジケータ99aや調整完了インジケータ99bは、作業員が待機可能なカメラウォール20a~20d裏の退避スペース4にサブディスプレィが設けられている場合には、そのディスプレィにもディスプレィ画面70が表示されるため、作業員はその画面によっても確認することができる。
【0080】
このように静止画の切り出し(キャプチャー)が完了すると、次にステップS115によりトリミング枠設定処理が行われる。本車両画像撮影処理におけるトリミングとは、車両8の画像を中心にその周囲の不要な画像部分を切り取ることをいい、そのために設定される境界線がトリミング枠である。トリミング枠の内側を残して、同枠の外側を削除する画像処理が次のステップS117により行われるトリミング処理である。トリミングは、「切り抜き」ともいう。
【0081】
図7に示すディスプレィ画面70のように、本実施形態では、トリミング枠のサイズが「枠1」~「枠9」の枠サイズボタン93として表示されている。例えば、現在設定されている所定サイズの「枠6」が黄色(
図7では薄灰色)で表示され、それ以外の「枠1」~「枠5」、「枠7」~「枠9」は灰色で表示されている。この枠サイズは、F10キーの「枠サイズ+」80を押下することにより設定する枠サイズが「枠1」方向にアップし、F11キーの「枠サイズ-」81を押下することにより設定する枠サイズが「枠9」方向にダウンする。
【0082】
トリミング枠は「枠1」~「枠9」の枠サイズボタン93をマウス等のポインティングデバイスでクリックすることによっても選択可能である。ここではオペレータが「枠6」を手動で設定している。このようにトリミング枠は任意に設定できることから、ステップS115ではトリミング枠設定処理の実行時に設定されている「枠1」~「枠9」に対応するトリミング枠のサイズを、メインメモリ上に展開された設定ファイル等から読み出す。そして、次に行うトリミング処理にそれを使用する。
【0083】
ステップS117によるトリミング処理では、カメラ30a等の動画データから切り出してストレージデバイス等に一時的に格納された静止画データを読み出した後、ステップS115のトリミング枠を用いて同枠内の画像データを切り抜く画像処理を行う。この処理は、ステップS109により切り出したすべての静止画データに対して終了するまで行われる(S119;No)。これにより、後述するように、ステップS117によるトリミング処理後の静止画データを当該車両8の周囲方向順に並ぶように繋げることにより、車両8の全周の車体周囲を見ることが可能なアラウンドビュー(360度画像)相当の車体画像データを生成できていることがわかる。
【0084】
なお、ステップS109により動画データから切り出された静止画データが同じカメラ30について複数存在する場合には、例えば、すべての静止画データをトリミングしてもよいし、また時間的に最初(または最後)に切り出された静止画データをトリミングしてもよい。そして、同じカメラ30についてトリミング後の静止画データが複数存在する場合には、例えば、オペレータに選択することができるようにトリミング後のすべての静止画データをディスプレィ画面70に表示してもよい。
【0085】
ステップS119によりトリミング処理が全データに対して行われたと判定すると(S119;Yes)、続くステップS121により車体画像表示処理が行われる。この処理では、ステップS119によるトリミング後の静止画像をディスプレィ画面70の4地点静止画94とマルチ静止画95に表示する。つまり、
図7に表されている内容がコンピュータ11のディスプレィ画面70に表示される。即ち、4地点静止画94においては、右上画像がカメラ30b、右下画像がカメラ30e、左下画像がカメラ30h、左上画像がカメラ30kによりそれぞれ撮影したものである。
【0086】
また、マルチ静止画95においては、説明の便宜上、12枚の画像を上下左右に4分割すると、右上3枚のうち、左側画像がカメラ30a、中央画像がカメラ30b、右側画像がカメラ30cによりそれぞれ撮影したものであり、また右下3枚のうち、右側画像がカメラ30d、中央画像がカメラ30e、左側画像がカメラ30fによりそれぞれ撮影したものである。また、左下3枚のうち、右側画像がカメラ30g、中央画像がカメラ30h、左側画像がカメラ30iによりそれぞれ撮影したものであり、左上3枚のうち、左側画像がカメラ30j、中央画像がカメラ30k、右側画像がカメラ30mによりそれぞれ撮影したものである。
【0087】
なお、マルチ静止画95において表示される各静止画像を、例えば、上述した順番(当該車両8の周囲方向順に並ぶよう)に繋げることにより、車両8の全周の車体画像をアラウンドビュー(360度画像)のように回転させているかのように見せることができる。即ち、カメラ30aの右上左側画像→カメラ30bの右上中央画像→カメラ30cの右上右側画像→カメラ30dの右下右側画像→カメラ30eの右下中央画像→カメラ30fの右下左側画像→カメラ30gの左下右側画像→カメラ30hの左下中央画像→カメラ30iの左下左側画像→カメラ30jの左上左側画像→カメラ30kの左上中央画像→カメラ30mの左上右側画像の順に現れるように各静止画像データを順次表示する。これにより、アラウンドビュー(360度画像)相当の車体画像データを得ることが可能になる。
【0088】
なお、ステップS105において「4地点撮影」76が押下されている場合には、ステップS121では4地点静止画94だけがディスプレィ画面70に表示され、マルチ静止画95は表示されない。そのため、「4地点撮影」76を押下した場合には、アラウンドビュー(360度画像)相当の車体画像データは得ることができない。
【0089】
続くステップS123では調整完了表示処理が行われる。この処理では、ディスプレィ画面70の調整完了インジケータ99bの表示色を灰色から赤色に変更する。調整完了インジケータ99bは、前述のように調整完了前は背景色が灰色で表示されている。
【0090】
このような一連のキャプチャー(切り出し)とトリミング(切り抜き)が完了すると、コンピュータ11は、ステップS125により次の入力コマンドを待つ。即ち、ENTERキーの「保存」83、ESCキーの「画面クリア」71またはF12キーの「終了」82のいずれが押下されたか判定する。
【0091】
「保存」83が押下されたと判定した場合には(S125;「保存」)、続くステップS127の画像データ保存処理によりトリミングした後の静止画像の画像データをすべてファイルサーバ13に保存する。これにより、保存した静止画データに関連付けられている出品番号等の車両8に関する固有情報がディスプレィ画面70の保存履歴表示領域97に表示される。そして、ステップS129の画像表示消去処理によって現在表示している4地点静止画94やマルチ静止画95等を消去した後、ステップS105に処理を移行して次の撮影開始に備えて「一括撮影」75や「4地点撮影」76のキーが押下されるのを待つ。
【0092】
これに対して「画面クリア」71が押下されたと判定した場合には(S125;「画面クリア」)、ステップS127の画像データ保存処理をスキップして、ステップS129の画像表示消去処理を行う。つまり、トリミング後の静止画データを保存することなく破棄した後(S129)、ステップS105に処理を移行して次の撮影開始に備えて「一括撮影」75や「4地点撮影」76のキーが押下されるのを待つ。
【0093】
また「終了」82が押下された場合には(S125;「終了」)、例えば、本当に本車両画像撮影処理を終えてよいかを確認する別ウィンドウ等をディスプレィ画面70に表示して、最終確認の入力があった場合には本車両画像撮影処理を終えて、ディスプレィ画面70の表示を終了する。なお、「終了」82の押下は、他の処理を実行中等にも受け付けることができる。
【0094】
図6のフローチャートには記載されていない処理として、例えば、ファンクションのF2キーの「内装再表示」72を押下した場合には、内装画像表示領域92に車両8の内装画像が再表示される。当該内装画像のデータ(内装画像データ)は、カメラウォール20a~20dが備えるカメラ30a等とは別に作業員が携帯するデジタルカメラにより撮影されて無線LAN等を介してファイルサーバ13に蓄積される。またそれとほぼ同時または別のタイミングにディスプレィ画面70の内装画像表示領域92にも表示される。内装画像データは、出品番号等の当該車両8に固有のデータに関連付けられている。そのため、コンピュータ11は「内装再表示」72が押下されると、当該車両8の固有のデータに基づいてファイルサーバ13から車両8の内装画像データを取得して内装画像表示領域92に再度表示する。
【0095】
なお、内装画像表示領域92の左隣に設けられている内装画像削除領域91は、内装画像表示領域92内に表示されている内装画像を削除する場合に不要な内装画像をマウス等で当該内装画像削除領域91にドラッグ・アンド・ドロップすることにより、当該内装画像を内装画像表示領域92から排除するために用いられる。
【0096】
また、ファンクションのF3キーの「再トリミング」73は、例えば、トリミング枠を変更した場合にオペレータが押下する。「再トリミング」73が押下された場合には、コンピュータ11は、前述したトリミング処理(S117)と同様に、ストレージデバイス等から、一時的に格納された静止画データを読み出した後、新たに設定されたトリミング枠を用いて同枠内の画像データを切り抜く画像処理を行い、トリミング後の画像データを4地点静止画94やマルチ静止画95に表示する。
【0097】
ファンクションのF4キーの「手動」74は、これを押下することによりトグル(押下するごとに交互)でトリミング枠の手動設定と自動設定の選択を可能にする。つまり、手動設定が選択されている場合にはF4キーの部分には「手動」が表示され、自動設定が選択されている場合にはF4キーの部分には「自動」が表示される。前述した本車両画像撮影処理は、トリミング枠の手動設定を前提にするものであるため、「手動」が表示されている。なお、トリミング枠の自動設定については説明を省略する。
【0098】
また、ファンクションのF7キーの「マルチ撮影」77が押下された場合には、コンピュータ11は、トリミング処理(S117)によりトリミングされた後の12枚の静止画像を別ウィンドウ等において4地点静止画94と同程度に大きく表示する。この場合、ディスプレィ画面70において12枚の静止画像をすべて同時に表示することが難しい。そのため、例えば、マウスのスクロールホイールやキーボードの特定キー等の操作により大きく表示させる静止画像を前述のように、カメラ30aの右上左側画像→カメラ30bの右上中央画像→カメラ30cの右上右側画像→カメラ30dの右下右側画像→カメラ30eの右下中央画像→カメラ30fの右下左側画像→カメラ30gの左下右側画像→カメラ30hの左下中央画像→カメラ30iの左下左側画像→カメラ30jの左上左側画像→カメラ30kの左上中央画像→カメラ30mの左上右側画像の順に現れるように表示画像を変更する表示処理を行う。
【0099】
また、ファンクションのF8キーの「出品番号取得」78が押下された場合には、コンピュータ11は、当該車両8に固有のデータに基づいてファイルサーバ13から車両8の出品番号を取得して出品番号表示領域98にそれを表示する。また、オペレータがマウス等で出品番号表示領域98をクリックした後、当該車両8の出品番号をキーボードで直接入力することもできる。出品番号は、静止画データがファイルサーバ13に保存される際に当該静止画データに関連付けられる。
【0100】
次にカメラウォール20a~20dに設けられるカメラ30a等のレンズの種類について説明する。本実施形態では、カメラ30a等のレンズユニット32は、すべて同じものが選択されるわけではない。つまり、カメラ30a等は、標準ズームレンズ32aを有する場合と広角ズームレンズ32bを有する場合がある。
【0101】
例えば、カメラウォール20a~20dのいずれについても3台のうち車両8の周囲方向で当該車両8に最も近い位置に配置される、カメラ30c,30d,30i,30jについても、広角ズームレンズ32bが選択される。また、カメラウォール20a~20dのいずれについても3台のうち車両8の周囲方向中央に配置される、カメラ30b,30e,30h,30kについては、広角ズームレンズ32bが選択される。そして、残ったカメラ30a,30f,30g,30mには、標準ズームレンズ32aが選択される。
【0102】
これにより、カメラウォール20a~20dに設けられている3台のカメラ30のうち、車両8の前後方向ほぼ中央に近い端に配置されたカメラ30c,30d,30i,30jが広角ズームレンズ32bを有するため、車両8の反対側の端(カメラ30cの場合には車両8の左後角部7b付近、カメラ30dの場合には車両8の左前角部7a付近、カメラ30iの場合には車両8の右前角部7d付近、カメラ30jの場合には車両8の右後角部7c付近)を含めてセンターピラー付近についても見やすい画像を撮ることが可能になる。
【0103】
また、例えば、前後方向の長さ(車両の全長)が大きい車両に対しても広角ズームレンズ32bを用いることによりこれらのカメラ30c,30d,30i,30jの画角(撮影範囲)内に当該車両の反対側の端(カメラ30cの場合には車両8の左後角部7b付近、カメラ30dの場合には車両8の左前角部7a付近、カメラ30iの場合には車両8の右前角部7d付近、カメラ30jの場合には車両8の右後角部7c付近)まで見える画像を撮ることが可能になる。
【0104】
さらに、カメラウォール20a~20dに設けられている3台のカメラ30のうち、車両8の周囲方向中央に配置されたカメラ30b,30e,30h,30kが広角ズームレンズ32bを有するため、例えば、車高が高い車両に対しても、これらのカメラ30b,30e,30h,30kの画角(撮影範囲)内に当該車両の天井付近まで十分に見える画像を撮ることが可能になる。
【0105】
カメラウォール20a~20dに設けられている3台のカメラ30のうち、車両8から最も遠い端に配置されたカメラ30a,30f,30g,30mについては、広角ズームレンズ32bではなく標準ズームレンズ32aを有する。標準ズームレンズ32aは、広角ズームレンズ32bに比べて一般的に製品コストが安い傾向にある。そのため、すべてのカメラ30a等に広角ズームレンズ32bを選択した場合に比較して当該撮影システム10のコスト増加を抑制することができる。
【0106】
なお、このようなコストが問題にならない場合には、これらのカメラ30a,30f,30g,30mについても、広角ズームレンズ32bを用いることによって、車両8の反対側の端(カメラ30aの場合には車両8の右前角部7d付近、カメラ30fの場合には車両8の右後角部7c付近、カメラ30gの場合には車両8の左後角部7b付近、カメラ30mの場合には車両8の左前角部7a付近)まで見やすい画像を撮ることが可能になる。
【0107】
また、車両8の左右(車幅)方向にスペースに余裕がない既設スタジオの場合においても、カメラウォール20a~20dに設けられているカメラ30a等(特に、車両8の周囲方向中央に配置されたカメラ30b,30e,30h,30k)が広角ズームレンズ32bを有することにより車両8とカメラ30a等の距離が近くても、当該車両8の車体画像を広範囲に撮影することが可能になる。
【0108】
以上説明したように、本実施形態の撮影システム10では、4つのカメラウォール20a~20dは、撮影スタジオ2内の所定位置7に停車した車両8を囲むように当該車両8の四隅(所定位置7の左前角部7a、左後角部7b、右後角部7c、右前角部7d)から所定距離内に設けられる。また、これら4つのカメラウォール20a~20dのそれぞれにおいて、車両8の車体画像を所定期間中の動画として撮影可能な3台のカメラ30等が車両8の周囲方向に並んで設けられる。これら3台のカメラ30a等は、そのうちの少なくとも1台のカメラ30c,30d,30i,30jが広角ズームレンズ32bを有し当該広角ズームレンズ32bを介して動画を撮影する。これら4つのカメラウォール20a~20dの3台のカメラ30a等から出力される合計12の動画データは、コンピュータ11に取得されてこれら12の動画データからそれぞれ少なくとも1つの静止画データが切り出されて当該車両8の全周の車体画像が生成される。
【0109】
これにより、車両8の四隅(所定位置7の左前角部7a、左後角部7b、右後角部7c、右前角部7d)からでは見にくい車両前後方向ほぼ中央付近や車両左右方向ほぼ中央付近についても、見やすい画像を撮ることが可能になる。また、車両8の左右(車幅)方向にスペースに余裕がない既設等のスタジオ2の場合においても、カメラウォール20a~20dに設けられているカメラ30a等が有するレンズを広角ズームレンズ32bにすることにより被写体である車両8とカメラ30等の距離が近くても、当該車両8の車体画像を広範囲に撮影することが可能になる。
【0110】
したがって、4つのカメラウォール20a~20dのそれぞれに設けられている3台のカメラ30等から出力される合計12の動画データから、それぞれ少なくとも1つの静止画データを切り出してそれらを当該車両8の周囲方向順に並べることによって、車両8の全周の車体画像を得ることができる。つまり、4つのカメラウォール20a~20dのそれぞれに設けられている3台のカメラ30a等により車両8の全周の車体画像を、ターンテーブルや車両8の全周にカメラを設けることなく、簡素な構成であっても撮影することができる。
【0111】
また、3台のカメラ30等により車両8の車体画像を所定期間中の動画として撮影し、それらの動画データからそれぞれ少なくとも1つの静止画データを切り出して当該車両8の全周の車体画像を生成している。そのため、例えば、機械式のスイッチを有するシャッター方式のデジタルカメラで静止画を撮影する場合に比べて、撮影システム10のカメラウォール20a~20dが備えるカメラ30a等はこのような機械式のスイッチを用いないため、当該撮影システム10の故障率を低減することが可能になる。
【0112】
また、本実施形態の撮影システム10では、カメラウォール20a~20dは、直立姿勢の作業員を覆い隠し得る大きさ以上の板壁構造を有する。これにより、例えば、当該車両8を所定位置7まで運転してきたドライバーや当該車両8の内装を撮影した作業員等は、車体画像の撮影時においては板壁構造を有するカメラウォール20a~20dの背後に隠れることが可能になる。したがって、車体画像の背景に作業員等が写り込むことを防止することができる。
【0113】
≪撮影システム10の改変例≫
次に、本実施形態の撮影システム10においてカメラウォール20a~20dが備えるカメラ30の雲台を電動雲台50に変更した場合の本実施形態の改変例に係る撮影システム10’について、
図8~
図13に基づいて説明する。まず、改変例の電動雲台50について
図8および
図9を参照しながら説明する。本実施形態の改変例の撮影システム10’は、前述した撮影システム10に対する機器構成の相違点がカメラ30の電動雲台50と当該電動雲台50に対する制御系統だけである。そのため、
図8~
図10においては、相違点について説明をし前述の撮影システム10と実質的に同一の構成部分については説明を省略する。
【0114】
なお、
図8(A)には、カメラウォール20a~20dに設けられるカメラケース33、カメラ30や電動雲台50の構成例を示す説明図が図示されている。
図8(B)には、電動雲台50と電動雲台50に取り付けられたカメラ30の構成例や可動例を示す説明図が図示されている。
図8(C)には、カメラ30a等の上方から見た場合におけるカメラ30と電動雲台50の構成例や可動例を示す説明図が図示されている。また
図9には、本実施形態の改変例に係る撮影システム10’の電気的な構成例を示すブロック図が図示されている。さらに
図10(A)には、各カメラウォール20a~20dに電動雲台50を搭載した場合におけるカメラ30a等の撮影方向の調整に用いる基準被写体9の位置関係等を示す説明図が図示されている。
図10(B)には、基準被写体9の構成例を示す説明図が図示されている。なお、便宜的に
図8(A)においては、透明パネル39の部分を薄い灰色に、ドームカバー38の部分を濃い灰色に、それぞれ着色している。また、
図10(A)および
図10(B)においても、便宜的に基準被写体9の球体9aを濃い灰色に着色している。
【0115】
図8(A)~
図8(C)に示すように、電動雲台50は、可動台座51に取り付けられたカメラ30の撮影方向を上下可動ユニット52および左右可動ユニット54によって電気的に遠隔制御可能に構成するものである。
【0116】
上下可動ユニット52は、電動雲台50をカメラウォール20に取り付けた状態において、チルトモータ53のモータ出力を駆動力源にしてカメラ30の撮影方向を車両8(所定位置7)の高さ方向(チルト)に変更可能に構成されている。また、左右可動ユニット54は、パンモータ55のモータ出力を駆動力源にしてカメラ30の撮影方向を車両8(所定位置7)の前後方向(パン)に変更可能に構成されている。
【0117】
制御ユニット56は、RS-485インタフェースを備えており、外部入力される制御コマンドに従って、上下可動ユニット52や左右可動ユニット54が可動台座51を目標角度まで可動するように、チルトモータ53およびパンモータ55を駆動制御する。上下可動ユニット52の仰角および左右可動ユニット54の回転角は、いずれもセンサにより検出可能に構成されており、それぞれのセンサから出力される両角度データは制御ユニット56に入力されて、例えば、チルトモータ53およびパンモータ55のフィードバック制御に用いられる。
【0118】
これにより、可動台座51に取り付けられたカメラ30は、任意の角度だけ上方向や下方向(
図1に示すY軸方向)に回転したり(
図8(B)に示す符号30YU,30YD)、また左方向や右方向(
図1に示すX軸方向)に回転したりすることが可能になる(
図8(C)に示す符号30XL,30XR)。
【0119】
なお、上下可動ユニット52は、チルトモータ53を駆動力源として可動台座51を上下方向に回動させ得る機構であれば、どのような機械的な構成であってもよい。また、左右可動ユニット54についても、パンモータ55を駆動力源として可動台座51を左右方向に回動させ得る機構であれば、どのような機械的な構成であってもよい。
【0120】
このように構成される電動雲台50は、RS-485ケーブル19を介してコンピュータ11に接続されている。RS-485インタフェースはマルチドロップ接続が可能であることから、カメラ30a等のそれぞれに設けられている電動雲台50の各制御ユニット56は、デイジーチェーン状に接続されている。コンピュータ11からID付きの制御コマンドを受信すると、当該IDの電動雲台50の制御ユニット56がその制御コマンドに従った制御を行う。
【0121】
改変例の撮影システム10’では、カメラウォール20a~20dのカメラ30a等がいずれもこのような電動雲台50を備えていることから、これらのカメラ30a等のそれぞれの撮影方向を遠隔制御することが可能になる。そのため、例えば、これらのカメラ30a等に接続されるコンピュータ11で撮影画像を目視確認しながら、カメラ30a等の撮影方向を遠隔操作で調整することが可能になる。
【0122】
また、例えば、
図10(B)に示すような基準被写体9を、撮影スタジオ2内の所定位置7の中心に置くことにより、さらに調整がし易くなる。所定位置7の中心は、例えば、X軸方向に長い矩形の所定位置7の対角線の交点として定められる。本実施形態では、所定位置7の中心は、カメラ#1(カメラ30a)とカメラ#7(カメラ30g)を結ぶ仮想線αと、カメラ#6(カメラ30f)とカメラ#12(カメラ30m)を結ぶ仮想線βとの交点に一致している。
【0123】
基準被写体9は、例えば、直径が約30センチメートに設定された球体9aと、一端側がこの球体9aに接続されているポール9bと、ポール9bの他端側に接続されているベース9cと、により構成されている。ベース9cは、例えば、直径が約50センチメートルの円形状に形成された鉄製の基台である。これにより、一端側に球体9aを有するポール9bを安定的に支持することを可能にしている。ポール9bの長さhは、例えば、中型車両の全高(1.5メートル)の約1/2~約2/3の高さに設定されている。本実施形態では1メートルに設定されている。
【0124】
≪コンピュータ11によるカメラ方向等自動調整処理≫
本実施形態の改変例では、所定位置7の中心に基準被写体9を配置した状態において、例えば、
図11に示すようなカメラ方向等自動調整処理をコンピュータ11により実行することにより、カメラ30a等の撮影方向を自動的に調整することが可能になる。ここからは、
図10に加えて
図11~
図13も参照しながら、コンピュータ11によるカメラ方向等自動調整処理について説明する。
【0125】
図11には、
図9に示すコンピュータにより実行されるカメラ方向等自動調整処理の流れを示すフローチャートが図示されている。また、
図12には、
図11に示すサブルーチン「カメラ設定データ調整処理」の流れを表したフローチャートが図示されている。さらに、
図13には、
図11に示すサブルーチン「カメラ設定データ反映処理」の流れを表したフローチャートが図示されている。なお、当該コンピュータ11が実行する、カメラ方向等自動調整処理、カメラ設定データ調整処理およびカメラ設定データ反映処理の各プログラムは、ストレージデバイスに予め格納されている。
【0126】
図11に示すように、カメラ方向等自動調整処理では、まずステップS201により所定の初期化処理が行われる。この処理では、例えば、カメラ方向等自動調整処理に関わるワークファイルやフラグ等をクリアする。続くステップS203では、カメラ#nのカメラ設定データ調整処理が行われる。カメラ#nは、
図10に表されている#1~#3のカメラ30a~30cのことである。即ち、カメラ30aがカメラ#1、カメラ30bがカメラ#2、カメラ30cが#3にそれぞれ対応する。このカメラ設定データ調整処理のフローチャートは、カメラ方向等自動調整処理のサブルーチンとして
図12に図示されているので、ここからは
図12も参照しながら説明する。
【0127】
≪コンピュータ11によるカメラ設定データ調整処理≫
図12に示すように、カメラ設定データ調整処理では、ステップS301により、XY方向初期値読出処理が行われる。XY方向は、X軸方向(前後方向)、つまりパンと、Y軸方向(上下方向)、つまりチルトの両方のことである。パンおよびチルトの初期値は、例えば、基準被写体9に対してカメラ#1~カメラ#3の撮影方向が本来向くべき角度として予め設定されたパンおよびチルトのデフォルト角度であり、例えば、カメラ方向等自動調整処理のプログラムのインストール時にストレージデバイスに記憶されている。そのため、この処理では、まずカメラ#1のカメラ30aに対応するパンおよびチルトの初期値をストレージデバイスから読み出す。
【0128】
次のステップS303では、パン・チルト制御処理が行われる。この時点ではステップS301により読み出されたパンおよびチルトの初期値に従ってカメラ#1、つまりカメラ30aの電動雲台50を駆動する制御を行う。即ち、カメラウォール20aのカメラ30aの撮影方向を制御する電動雲台50に対して、左右可動ユニット54がパンのデフォルト角度、上下可動ユニット52がチルトのデフォルト角度になるように所定の制御コマンドとそれぞれの初期値データを送信する。これにより、カメラ30aの電動雲台50は、カメラ30aのパンおよびチルトがそれぞれ当該デフォルト角度になるように、つまりカメラ30aがデフォルトの撮影方向に向くように制御する。
【0129】
続くステップS305では、撮影処理が行われる。即ち、カメラ30aの電動雲台50は、当該カメラ30aがデフォルトの撮影方向に向くように制御したので、その方向で基準被写体9を撮影する。基準被写体9は、前述したように所定位置7の中心に配置されている。そのため、このステップS305により撮影した基準被写体9の動画像データをカメラ30aからビデオハブ12を介して取得してキャプチャーし静止画データを切り出した後、次のステップS307により当該静止画データに対して画像認識処理を行う。
【0130】
なお、動画データにおいて画像認識処理が可能である場合には、ビデオハブ12から送られてくる動画データについてキャプチャーすることなくそのまま次のステップS307により当該静止画データに対して画像認識処理を行ってもよい。
【0131】
ステップS307の画像認識処理では、静止画データにおいて基準被写体9の球体9aの位置を画像認識により把握するものである。そして、続くステップS309のXY方向ズレ量算出処理によって、本来存在すべき位置(基準位置)として、例えば、撮影された画像内の中心位置(画像内中心位置)から、球体9aの画像位置(被写体の位置)がどれだけズレているのかを算出する。このズレ量は、X軸方向(パン)とY軸方向(チルト)のそれぞれの平面座標上の誤差として得られる。
【0132】
次のステップS311のズレ量許容誤差以内判定処理によりX軸方向とY軸方向のそれぞれの平面座標上の誤差が所定の許容範囲内にあるか否かを判定する。そして、画像内中心位置と被写体の位置とがほぼ同一(または同一)であり許容誤差以内にあると判定された場合には(S311;Yes)、次のステップS313に処理を移行してZ方向初期値読出処理が行われる。これに対して、許容誤差以内にないと判定された場合には(S311;No)、ステップS312に処理を移行する。
【0133】
ステップS312のXY方向補正値算出処理では、X軸方向とY軸方向のそれぞれの平面座標上の誤差をパンおよびチルトの角度に変換して現在の角度から過不足の角度を補正値(相対角度)として算出する。また、補正値として絶対角度を算出してもよい。
【0134】
これにより算出されたパンおよびチルトの補正値に基づいて、再度、ステップS303によりパン・チルト制御処理が行われる。2回目のこの処理においては、ステップS312により算出されたパンおよびチルトの補正値に従ってカメラ#1(カメラ30a)の電動雲台50を駆動する制御が行われる。S311のズレ量許容誤差以内判定処理によってX軸方向とY軸方向のそれぞれの平面座標上の誤差が所定の許容範囲内にあると判定されるまでステップS303,S305,S307,S309の各処理が繰り返し行われる。
【0135】
ステップS313では、Z方向初期値読出処理が行われる。Z方向は、Z軸方向(左右方向)、つまりズームのことである。ズーム(倍率)の初期値は、例えば、基準被写体9に対する本来の倍率として予め設定された値であり、例えば、カメラ方向等自動調整処理のプログラムのインストール時にストレージデバイスに記憶されている。そのため、この処理では、まずカメラ#1のカメラ30aに対応する倍率の初期値をストレージデバイスから読み出す。
【0136】
次のステップS315では、ズーム制御処理が行われる。この時点ではステップS313により読み出されたズーム(倍率)の初期値に従ってカメラ#1、つまりカメラ30aの電動ズームの制御を行う。即ち、カメラウォール20aのカメラ30aの電動ズームレンズ機構を制御するズーム制御ユニットに対して、電動ズームの倍率がデフォルト値になるように所定の制御コマンドと初期値データを送信する。これにより、カメラ30aのズーム制御ユニットは、カメラ30aの電動ズームの倍率が当該デフォルト値になるように電動ズームレンズ機構を制御する。
【0137】
続くステップS317では、撮影処理が行われる。即ち、カメラ30aの電動ズームは、倍率がデフォルト値になるように制御したので、デフォルトの倍率で基準被写体9を撮影する。このステップS317により撮影した基準被写体9の動画像データをカメラ30aからビデオハブ12を介して取得してキャプチャーし静止画データを切り出した後、次のステップS319により当該静止画データに対して画像認識処理を行う。
【0138】
ステップS319の画像認識処理では、静止画データにおいて基準被写体9の球体9aの大きさを画像認識により把握するものである。そして、続くステップS321のZ方向ズレ量算出処理によって、本来の大きさ(基準倍率)として、例えば、撮影された画像内の球体9aの大きさ(被写体の基準サイズ)から、球体9aの画像の大きさ(被写体の画像サイズ)がどれだけズレているのかを算出する。このズレ量は、Z軸方向(ズーム)の平面座標上の誤差として得られる。
【0139】
次のステップS323のズレ量許容誤差以内判定処理によりZ軸方向の平面座標上の誤差が所定の許容範囲内にあるか否かを判定する。そして、被写体の基準サイズと被写体の画像サイズとがほぼ同一(または同一)であり許容誤差以内にあると判定された場合には(S323;Yes)、カメラ#1のカメラ設定データの調整が終了したことになるので、本カメラ設定データ調整処理を終了して
図11に示すカメラ方向等自動調整処理に処理を戻す。これに対して、許容誤差以内にないと判定された場合には(S323;No)、カメラ#1のカメラ設定データの調整はまだ終わっていないため、ステップS322に処理を移行する。
【0140】
ステップS322のZ方向補正値算出処理では、Z軸方向の平面座標上の誤差を電動ズームの倍率に変換して過不足の倍率で修正した補正後の倍率を算出する。
【0141】
これにより算出されて補正された電動ズームの倍率に基づいて、再度、ステップS315によりズーム制御処理が行われる。2回目のこの処理においては、ステップS322により算出された補正後の倍率に従ってカメラ#1(カメラ30a)の電動ズームレンズ機構の制御が行われる。S321のズレ量許容誤差以内判定処理によってZ軸方向の平面座標上の誤差が所定の許容範囲内にあると判定されるまでステップS315,S317,S319,S321の各処理が繰り返し行われる。
【0142】
図11に示すカメラ方向等自動調整処理に戻ると、ステップS205によりカメラ#1~カメラ#3の調整が終了したか否かを判定する処理が行われる。そして、カメラ#3までの調整がまだ終了していない場合には(S205;No)、調整が終わっていないカメラ#2やカメラ#3について、ステップS203によるカメラ設定データ調整処理を行う。これに対して、カメラ#1~カメラ#3のカメラ設定データの調整が終了した場合には(S205;Yes)、続くステップS207のカメラ#mのカメラ設定データ反映処理が行われる。
【0143】
即ち、
図12に示すカメラ設定データ調整処理は、カメラ30a等の状態によっては、処理に時間を要する場合がある。即ち、カメラ30a等の撮影方向がそれぞれバラバラに向いていたり、電動ズームの倍率の初期設定値のバラツキが大きかったりすると、前述したカメラ設定データ調整処理が終了するまでに相当の時間がかかってしまう場合がある。そのため、時間がかかり得るカメラ設定データ調整処理の実行は最小限に抑える手段として、ステップS207のカメラ設定データ反映処理(
図13参照)をコンピュータ11に行わせることにした。
【0144】
なお、上述したカメラ設定データ調整処理では、S301によりXY方向初期値読出処理を行ったうえで、ステップS303によりパン・チルト制御処理を行うように処理の流れを構成したが、例えば、予めカメラ30a,30b,30cの撮影方向が基準被写体9の球体9aに向くように(カメラ30a,30b,30cの画角内に基準被写体9の球体9aが収まるように)作業員等が手動で電動雲台50をある程度調整した後、ステップS305の撮影処理から、カメラ設定データ調整処理を行うように構成してもよい。
【0145】
また、上述したカメラ設定データ調整処理では、S313によりZ方向初期値読出処理を行ったうえで、ステップS315によりズーム制御処理を行うように処理の流れを構成したが、例えば、予めカメラ30a,30b,30c等の電動ズームの倍率を(カメラ30a,30b,30cの画角内に入る基準被写体9の球体9aの大きさを)作業員等が手動である程度調整した後、ステップS317の撮影処理から、カメラ設定データ調整処理を行うように構成してもよい。
【0146】
これにより、予め、一律に設定されたデフォルト値を読み込むことなく、カメラウォール20a~20dが設置される撮影スタジオごとの現地の環境や特性に即した設定内容で作業が進むため、カメラ設定データ調整処理に要する時間が短縮され得る。
【0147】
≪コンピュータ11によるカメラ設定データ反映処理≫
図13に示すカメラ設定データ反映処理では、ステップS203のカメラ設定データ調整処理により得られたカメラ#1~カメラ#3のカメラ設定データを有効に活用する。即ち、カメラウォール20a~20dは、
図1を参照して説明したように、楕円Oの周上に位置するようにカメラ30a等が配置されている。そして、カメラ30a等は、前述したように所定位置7の中心Pに対して点対称に位置している。例えば、
図10に示すように、カメラ#1(30a)と#7(30g)、カメラ#2(30b)とカメラ#8(30h)、カメラ#3(30c)とカメラ#9(30i)、カメラ#4(30d)とカメラ#10(30j)、カメラ#5(30e)とカメラ#11(30k)、カメラ#6(30f)とカメラ#12(30m)、はそれぞれ所定位置7の中心Pに対して点対称に位置している。
【0148】
また、カメラ30a等は、所定位置7の中心PをX軸方向に通る線γγ’に対して線対称に位置している。例えば、カメラ#1(30a)とカメラ#12(30m)、カメラ#2(30b)とカメラ#11(30k)、カメラ#3(30c)とカメラ#10(30j)、カメラ#4(30d)とカメラ#9(30i)、カメラ#5(30e)とカメラ#8(30h)、カメラ#6(30f)とカメラ#7(30g)、はそれぞれ所定位置7の中心Pを通る線γγ’に対して線対称に位置している。またこれらは、線γγ’を通るXY平面に対して鏡映対称にも位置している。
【0149】
このため、カメラ設定データ反映処理では、カメラ#1(30a)のカメラ設定データを点対称に位置するカメラ#7(30g)にそのままコピーして渡す(S401)。なお、「カメラ設定データ」とは、
図12を参照して説明したXY方向とZ方向のデータのことであり、より具体的には、カメラ30a(またはカメラ30b,30c)の電動雲台50についてのX軸方向(パン)およびY軸方向(チルト)の各角度データと、カメラ30aの電動ズームレンズ(ズーム)の倍率データのことである。また「コピーして渡す」とは、このような電動雲台50のX軸方向(パン)およびY軸方向(チルト)の各角度データや、カメラ30aの電動ズームレンズ(ズーム)の倍率データを、渡す相手方のカメラ#に関連付けて、XY方向初期値やZ方向初期値として電動雲台50のデータや当該カメラのデータをストレージデバイスに記憶させることである。
【0150】
また、線対称(鏡映対称)に位置するカメラ#12(30m)に対しては反転コピーして渡す(S403)。なお、「反転コピー」とは、X軸方向について車両8の前後方向に関するデータを逆転させて写すということであり、より具体的には、電動雲台50の左右可動ユニット54を制御する前後方向(パン)に関するデータについては前後を逆にして複製することである(以下同じ)。また、「反転コピーして渡す」とは、このような電動雲台50の、X軸方向(パン)については前後反転させた角度データ、Y軸方向(チルト)の角度データや、カメラ30aの電動ズームレンズ(ズーム)の倍率データを、渡す相手方のカメラ#番号等に関連付けて、XY方向初期値やZ方向初期値として電動雲台50のデータや当該カメラのデータをストレージデバイスに記憶させることである。
【0151】
カメラ#2(30b)のカメラ設定データについても、同様に、カメラ#2(30b)のカメラ設定データを点対称に位置するカメラ#8(30h)にそのままコピーして渡す(S407)。また、線対称(鏡映対称)に位置するカメラ#11(30k)に対しては反転コピーして渡す(S409)。
【0152】
カメラ#3(30c)のカメラ設定データについても、同様に、カメラ#3(30c)のカメラ設定データを点対称に位置するカメラ#9(30i)にそのままコピーして渡す(S413)。また、線対称(鏡映対称)に位置するカメラ#10(30j)に対しては反転コピーして渡す(S415)。
【0153】
しかしこれだけでは、カメラ#4(30d)~カメラ#6(30f)のカメラ設定データを渡すことができない。そのため、カメラ#7(30g)~カメラ#9(30i)に反転コピーしたカメラ設定データを、カメラ#7(30g)~カメラ#9(30i)からさらにカメラ#4(30d)~カメラ#6(30f)に反転コピーして渡す(S405,S411,S417)。
【0154】
なお、カメラ#4(30d)~カメラ#6(30f)とカメラ#10(30j)~カメラ#12(30m)とは点対称の関係にあるため、カメラ#10(30j)~カメラ#12(30m)のカメラ設定データをそのままカメラ#4(30d)~カメラ#6(30f)にコピーして渡してもよい。
【0155】
ステップS417による反転コピー処理が終わると、本カメラ設定データ反映処理を終了して
図11に示すカメラ方向等自動調整処理に処理を戻す。
【0156】
図11に示すカメラ方向等自動調整処理に戻ると、ステップS209によりカメラ#4~カメラ#12の反映が終了したか否かを判定する処理が行われる。そして、カメラ#12までの反映がまだ終了していない場合には(S209;No)、反映が終わっていないカメラ#5等について、ステップS207によるカメラ設定データ反映処理を行う。これに対して、カメラ#4~カメラ#12のカメラ設定データの反映が終了した場合には(S209;Yes)、続くステップS211のカメラ#mのカメラ設定データ調整処理が行われる。
【0157】
前述したステップS203と同様に、
図12に示すカメラ設定データ調整処理をカメラ#4~カメラ#12について実行する。但し、ステップS301のXY方向初期値読出処理によりストレージデバイスから読み出されるXY方向初期値は、
図13に示すカメラ設定データ反映処理によりカメラ#1~#3のカメラ設定データをコピーしたり反転コピーしたりしてストレージデバイスに記憶されているものであるから、概ね設定されている。そのため、カメラ#4~カメラ#12(9台)の場合には、カメラの台数がカメラ#1~カメラ#3(3台)の3倍ではあるものの、カメラ#1~カメラ#3の場合に要した時間の3倍よりも短い時間でカメラ#4~カメラ#12についてカメラ設定データ調整処理を完了することが可能になる。つまり時間的な短縮が可能になる。
【0158】
図11に示すカメラ方向等自動調整処理に戻ると、ステップS213によりカメラ#4~カメラ#12の調整が終了したか否かを判定する処理が行われる。そして、カメラ#12までの調整がまだ終了していない場合には(S213;No)、調整が終わっていないカメラ#5等について、ステップS211によるカメラ設定データ調整処理を行う。これに対して、カメラ#4~カメラ#12のカメラ設定データの調整が終了した場合には(S213;Yes)、本カメラ方向等自動調整処理を終了する。
【0159】
以上説明したように、本実施形態の改変例の撮影システム10’では、所定位置7に停車した車両8をカメラ30a等が撮影する際に撮影範囲の中心になるべき空間位置に基準被写体9を配置した場合においては、コンピュータ11は、12台のカメラ30a等のそれぞれについて、カメラ30a等が撮影した基準被写体9の動画データまたは当該動画データから切り出した静止画データに基づいて基準被写体9の球体9aを画像認識するとともに動画データまたは静止画データの画像範囲内における画像内中心位置と球体9aの位置とがほぼ同一になるように、当該カメラ30a等が固定されている可動台座51を上下方向または左右方向に可動させる制御コマンドを制御ユニット56に対して出力する。これにより、4つのカメラウォール20a~20dのそれぞれに設けられている12台のカメラ30a等について、それぞれの撮影方向のパン(左右方向)やチルト(上下方向)を自動的に調整することが可能になる。したがって、カメラ30a等の設置や調整作業において時間や手間がかかりにくいため、作業効率を格段に向上させることができる。
【0160】
また、本実施形態の改変例の撮影システム10’では、12台のカメラ30a等が有するレンズユニット32のレンズは、標準ズームレンズ32aや広角ズームレンズ32bであり、ズームインおよびズームアウトを行い得る電動ズーム機構と、外部から入力される制御コマンドに従って電動ズーム機構を駆動制御するズーム制御ユニットと、を備えている場合においては、コンピュータ11は、12台のカメラ30a等が有するレンズのそれぞれについて、カメラ30a等が撮影した基準被写体9の球体9aの動画データまたは当該動画データから切り出した静止画データに基づいて球体9aを画像認識するとともに動画データまたは静止画データの画像範囲内において予め定められている球体9aの基準サイズと球体9aの画像サイズとがほぼ同一になるように、当該レンズの電動ズーム機構を駆動させる制御コマンドをズーム制御ユニットに対して出力する。これにより、4つのカメラウォール20a~20dに設けられている12台のカメラにおいて、レンズによるズームイン(拡大)やズームアウト(縮小)を自動的に調整することが可能になる。したがって、カメラ30a等の設置や調整作業において時間や手間がかかりにくいため、作業効率を格段に向上させることができる。
【0161】
上述した実施形態では、カメラウォール20に3台のカメラ30を設ける構成例について説明したが、カメラウォール20に設けられるカメラ30は、複数台であればよく、例えば、2台や4台以上でもよい。カメラウォール20に設けられるカメラ30の台数が4台以上の場合には、例えば、前面パネル26が取り付けられている部分に、前面パネル26に代えて、前面パネル25(幕板壁25a、ブランク板壁25b、腰板壁25c)等が取り付けられる。また、上述の実施形態では、3台のカメラ30を車両8の周囲方向に並ぶように設ける構成を例示して説明したが、複数のカメラ30を車両8の高さ方向に並ぶように設けてもよい。この場合にはブランク板壁25bが取り付けられている部分に、カメラ30、カメラケース33やカメラボックス37等が取り付けられる。
【0162】
即ち、上段のラック空間27、中段のラック空間28および下段のラック空間29にそれぞれカメラ30を取り付けるように構成してもよいし(合計3台のカメラ30)、これらのラック空間27,28,29のいずれか2箇所に2台のカメラ30を取り付けるように構成してもよい。これにより、カメラ30をマトリクス状に配置することができる。
【0163】
また、上述した実施形態では、撮影スタジオ2のほぼ中央に設けられている所定位置7の四隅(左前角部7a、左後角部7b、右後角部7c、右前角部7d)に、4つのカメラウォール20a~20dを設けたが、所定位置7の周囲に配置するスペースが存在する場合には、カメラウォール20は、例えば5つでも6つでもよい。また、カメラ支持構造体は、作業員が退避する退避スペース4を設ける必要がない場合には、カメラ30a等を支持や保持すること可能な構成であれば、カメラウォール20a~20dから前面パネル25,26等の壁体を除いた構成(縦枠21および横枠22からなる構成)にしてもよい。
【0164】
さらに、上述した実施形態では、上面パネル23、側面パネル24、前面パネル25,26の塗装色を灰色にしたが、これに限られることはなく、撮影スタジオ2内の照明光が不必要に反射したり撮影した映像や画像の色合いに大きな影響を与えたりする等、車両8の撮影の障害になるような塗装色でなければ、例えば、白色や黒色等の無彩色でもよい。また有彩色でもよい。
【0165】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、上述した具体例を様々に変形または変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。さらに、本明細書または図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つ。なお、[符号の説明]の欄における括弧内の記載は、上述した各実施形態で用いた用語と、特許請求の範囲に記載の用語との対応関係を明示し得るものである。
【符号の説明】
【0166】
2…撮影スタジオ
4…退避スペース
5…入口
6…出口
7…所定位置
7a…左前角部(車両の四隅)
7b…左後角部(車両の四隅)
7c…右後角部(車両の四隅)
7d…右前角部(車両の四隅)
8…車両
9…基準被写体(位置基準の被写体)
10,10’…撮影システム(車両画像撮影システム)
11…コンピュータ(画像処理装置)
20,20a~20d…カメラウォール(カメラ支持構造体)
30,30a~30k,30m…カメラ
31…カメラ本体
32…レンズユニット
32a…標準ズームレンズ
32b…広角ズームレンズ
40…雲台
41…パン・チルトユニット
45…スライドユニット
50…電動雲台
51…可動台座(台座)
52…上下可動ユニット(上下可動機構)
53…チルトモータ(電動チルトモータ)
54…左右可動ユニット(左右可動機構)
55…パンモータ(電動パンモータ)
56…制御ユニット(パン・チルト制御ユニット)
70…ディスプレィ画面