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特許7049633冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造とその施工方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造とその施工方法
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/06 20060101AFI20220331BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
F25D23/06 303W
F25D23/06 303N
F25D23/06 303P
F25D23/06 303X
E04B1/76 500F
E04B1/76 400A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019039110
(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公開番号】P2020143807
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】516043317
【氏名又は名称】株式会社青和
(73)【特許権者】
【識別番号】513002441
【氏名又は名称】株式会社サドル
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】奥山 誠司
【審査官】飯星 潤耶
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-142047(JP,A)
【文献】特開昭62-037670(JP,A)
【文献】特開昭56-068775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02-23/08
E04B 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱層を有する内壁と、前記内壁の屋外側に配置された外装材と、を有する、冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造であって、
前記外壁構造の少なくとも一部において、
前記冷凍・冷蔵倉庫の屋内構成部材に一端を取り付けられたブラケットと、
前記ブラケットの他端に取り付けられた縦胴縁と、
前記縦胴縁に取り付けられた横胴縁と、を有し、
前記外装材が、前記横胴縁に取り付けられ、
前記内壁が、前記断熱層を有する壁パネルを複数枚有し、
前記壁パネルは、前記縦胴縁及び前記横胴縁よりも屋内側であって、前記屋内構成部材よりも屋外側において、垂直方向に複数枚連結されて配置され、且つ、前記横胴縁に連結固定され
垂直方向に隣り合う2枚の壁パネルの連結箇所において、上方の壁パネルの下端と下方の壁パネルの上端とが間隙を有し、
前記ブラケットは前記間隙を通り、その一端が前記屋内構成部材に、他端が前記縦胴縁にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造。
【請求項2】
前記間隙にはポリウレタンフォームからなる断熱材が充填されていることを特徴とする請求項に記載の冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造。
【請求項3】
前記壁パネルが、2枚の金属板と前記2枚の金属板に挟持された断熱層とを有する断熱パネルと、前記断熱パネルの一方の前記金属板の表面を覆うロックウール層と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造。
【請求項4】
前記壁パネルが、2枚の金属板と、前記2枚の金属板に挟持されたロックウール層又はイソシアヌレートフォーム層と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造。
【請求項5】
前記壁パネルが、2枚の金属板と、前記2枚の金属板の内側に配置された2層のロックウール層と、前記2層のロックウール層に挟持されたポリウレタンフォーム、フェノールフォーム、イソシアヌレートフォームのいずれかからなる断熱層と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造の施工方法であって、
前記屋内構成部材にブラケットの一端を取り付ける第1の工程と、
少なくとも、前記縦胴縁と、前記横胴縁と、少なくとも1枚の前記壁パネルと、を一体とした取り付けセットを作製する第2の工程と、
前記ブラケットの他端を前記縦胴縁に取り付ける第3の工程と、
を有することを特徴とする冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造の施工方法。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造の施工方法であって、
少なくとも、前記縦胴縁と、前記ブラケットと、前記横胴縁と、少なくとも1枚の前記壁パネルと、を一体とした取り付けセットを作製する第1の工程と、
前記ブラケットの一端を前記屋内構成部材に取り付ける第2の工程と、
を有することを特徴とする冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造の施工方法。
【請求項8】
請求項に記載の冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造の施工方法であって、
前記屋内構成部材にブラケットの一端を取り付ける第1の工程と、
少なくとも、前記縦胴縁と、前記横胴縁と、少なくとも1枚の前記断熱パネルと、を一体とした取り付けセットを作製する第2の工程と、
前記ブラケットの他端を前記縦胴縁に取り付ける第3の工程と、
前記断熱パネルの一方の表面にロックウール層を吹き付ける第4の工程と、
を有することを特徴とする冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造の施工方法。
【請求項9】
請求項に記載の冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造の施工方法であって、
少なくとも、前記縦胴縁と、前記ブラケットと、前記横胴縁と、少なくとも1枚の前記断熱パネルと、を一体とした取り付けセットを作製する第1の工程と、
前記ブラケットの一端を前記屋内構成部材に取り付ける第2の工程と、
前記断熱パネルの一方の表面にロックウール層を吹き付ける第3の工程と、
を有することを特徴とする冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐火性を備えた冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造の一つとして、特許文献1に開示されているように、コンクリート製の耐火外壁の屋外側に断熱材と外装材とを配置した構造が知られている。しかしながら、コンクリート製の耐火外壁を備えた外壁構造は、建物全体が重くなるという問題が有った。そこで、特許文献2に開示されているように、2枚の金属板間に断熱層を挟持し、一方の金属板の外側或いは断熱層と金属板との間に、耐火層としてロックウール層を備えた軽量のパネルを用いた外壁構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-4141号公報
【文献】特開2017-142047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
倉庫の外壁としては、2500N/m2以上の荷重に耐えられる強度を有していることが法令によって定められている。特許文献1に開示されているような、コンクリート製の耐火外壁の屋外側に断熱材を配置した構造では、コンクリート製の耐火外壁によって、上記強度が容易に得られるが、特許文献2に開示されているような、耐火性を備えた軽量のパネルを用いた構造では、上記強度を得るためには、パネルの厚さをある程度厚くする必要がある。
一方、冷凍・冷蔵倉庫においては、パネルの断熱層の厚さに比例して断熱性が高くなるため、要求される倉庫内温度によって、必要な断熱層の厚さが異なる。しかしながら、2500N/m2以上の荷重に耐えられる強度を得るためには、必要な断熱性が得られる厚さ以上に断熱層を厚くしなければならない場合があった。断熱層がより厚いパネルは、より薄いパネルよりも高価格になり、また、重くなるために外壁施工時の作業性も低下する。よって、より薄い断熱層のパネルを用いて、より高い強度を有する冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造が望まれていた。
また、特許文献2に開示されているようなパネルを用いた外壁構造は、施工現場において、上下のスラブ間にパネルを1枚ずつ嵌め込んだ後、該パネルの屋外側に縦胴縁や横胴縁を取り付け、さらに、これら胴縁に外装材を取り付けて施工される。そのため、施工作業は天候の影響を受けやすく、作業効率が悪いという問題があった。
本発明の課題は、断熱層を有するパネルを用いて構成した、冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造において、より高い強度が得られる外壁構造、及び、施工現場での作業を効率化し、作業期間を短縮して、天候の影響を軽減した外壁構造、さらにはこれらの施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一は、断熱層を有する内壁と、前記内壁の屋外側に配置された外装材と、を有する、冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造であって、
前記外壁構造の少なくとも一部において、
前記冷凍・冷蔵倉庫の屋内構成部材に一端を取り付けられたブラケットと、
前記ブラケットの他端に取り付けられた縦胴縁と、
前記縦胴縁に取り付けられた横胴縁と、を有し、
前記外装材が、前記横胴縁に取り付けられ、
前記内壁が、前記断熱層を有する壁パネルを複数枚有し、
前記壁パネルは、前記縦胴縁及び前記横胴縁よりも屋内側であって、前記屋内構成部材よりも屋外側において、垂直方向に複数枚連結されて配置され、且つ、前記横胴縁に連結固定され
垂直方向に隣り合う2枚の壁パネルの連結箇所において、上方の壁パネルの下端と下方の壁パネルの上端とが間隙を有し、
前記ブラケットは前記間隙を通り、その一端が前記屋内構成部材に、他端が前記縦胴縁にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする。
上記本発明の冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造においては、以下の構成を好ましい態様として含む。
1)前記間隙にはポリウレタンフォームからなる断熱材が充填されている
(2)前記壁パネルが、2枚の金属板と前記2枚の金属板に挟持された断熱層とを有する断熱パネルと、前記断熱パネルの一方の前記金属板の表面を覆うロックウール層と、を有する。
)前記壁パネルが、2枚の金属板と、前記2枚の金属板に挟持されたロックウール層又はイソシアヌレートフォーム層と、を有する。
)前記壁パネルが、2枚の金属板と、前記2枚の金属板の内側に配置された2層のロックウール層と、前記2層のロックウール層に挟持されたポリウレタンフォーム、フェノールフォーム、イソシアヌレートフォームのいずれかからなる断熱層と、を有する。
本発明の第二は、上記本発明の第一の冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造の施工方法であって、
前記屋内構成部材にブラケットの一端を取り付ける第1の工程と、
少なくとも、前記縦胴縁と、前記横胴縁と、少なくとも1枚の前記壁パネルと、を一体とした取り付けセットを作製する第2の工程と、
前記ブラケットの他端を前記縦胴縁に取り付ける第3の工程と、
を有することを特徴とする。
本発明の第三は、上記本発明の第一の冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造の施工方法であって、
少なくとも、前記縦胴縁と、前記ブラケットと、前記横胴縁と、少なくとも1枚の前記壁パネルと、を一体とした取り付けセットを作製する第1の工程と、
前記ブラケットの一端を前記屋内構成部材に取り付ける第2の工程と、
を有することを特徴とする。
本発明の第四は、上記本発明の第一の()の冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造の施工方法であって、
前記屋内構成部材にブラケットの一端を取り付ける第1の工程と、
少なくとも、前記縦胴縁と、前記横胴縁と、少なくとも1枚の前記断熱パネルと、を一体とした取り付けセットを作製する第2の工程と、
前記ブラケットの他端を前記縦胴縁に取り付ける第3の工程と、
前記断熱パネルの一方の表面にロックウール層を吹き付ける第4の工程と、
を有することを特徴とする。
本発明の第五は、上記本発明の第一の()の冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造の施工方法であって、
少なくとも、前記縦胴縁と、前記ブラケットと、前記横胴縁と、少なくとも1枚の前記断熱パネルと、を一体とした取り付けセットを作製する第1の工程と、
前記ブラケットの一端を前記屋内構成部材に取り付ける第2の工程と、
前記断熱パネルの一方の表面にロックウール層を吹き付ける第3の工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、スラブや梁といった屋内構成部材よりも屋外側に壁パネルを配置し、横胴縁、縦胴縁、ブラケットを介して上記屋内構成部材に連結することにより、従来よりも断熱層を薄くしても、法令で定められた強度の冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造を提供することができる。よって、従来よりも安価に且つ高い作業効率で冷凍・冷蔵倉庫の外壁構造を施工することができる。
【0007】
また、本発明によれば、壁パネルを縦胴縁や横胴縁と一体とした取り付けセットを作製して施工することにより、施工現場での作業が簡素化されて作業期間が大幅に短縮され、従来よりも天候の影響を受けずに施工することができる。施工現場での作業箇所が従来よりも大幅に少ないため、高所作業車による施工が可能となり、施工現場全体に足場を組む必要がなくなり、施工費用が大幅に削減される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の外壁構造の一実施形態の垂直方向及び厚さ方向の部分断面模式図である。
図2図1中のA-A’部位の部分断面模式図である。
図3図1中のB-B’部位の部分断面模式図である。
図4図1中の領域Cの拡大図である。
図5図2中の領域Eの拡大図である。
図6図3中の領域Fの拡大図である。
図7図1の実施形態の部分斜視図である。
図8図1の実施形態の部分斜視図である。
図9】本発明の第1の外壁構造の他の実施形態の垂直方向及び厚さ方向の部分断面模式図である。
図10図9中のG-G’部位の断面模式図である。
図11】本発明に用いられる壁パネルの構成例の断面模式図である。
図12図1図8に示す外壁構造の施工方法の一実施形態の工程を示す垂直方向及び厚さ方向の部分断面模式図である。
図13図12中のI-I’部位の部分断面模式図である。
図14図1図8に示す外壁構造の施工方法の一実施形態の工程を示す垂直方向及び厚さ方向の部分断面模式図である。
図15図14中のK-K’部位の部分断面模式図である。
図16】本発明の第2の外壁構造の一実施形態の垂直方向及び厚さ方向の部分断面模式図である。
図17図16中のA-A’部位の部分断面模式図である。
図18図16中の領域Bの拡大図である。
図19図17中の領域Dの拡大図である。
図20図16の実施形態の部分斜視図である。
図21図16の実施形態の部分斜視図である。
図22図16の実施形態の部分斜視図である。
図23図16図22に示す外壁構造の施工方法の一実施形態の工程を示す部分断面模式図である。
図24図23中のE-E’部位の部分断面模式図である。
図25図16図22に示す外壁構造の施工方法の一実施形態の工程を示す部分断面模式図である。
図26図25中のG-G’部位の部分断面模式図である。
図27図16図22に示す外壁構造の施工方法の一実施形態の工程を示す部分断面模式図である。
図28図25中のI-I’部位の部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、冷凍・冷蔵倉庫(以下、「倉庫」と記す)の外壁構造及びその施工方法であって、係る倉庫は、好ましくはPC(プレキャスト鉄筋コンクリート)造、RC(鉄筋コンクリート)造、S造(鉄骨造)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)などである。また、冷凍・冷蔵倉庫とは、冷凍倉庫、冷蔵倉庫、或いは、温度調整により冷凍にも冷蔵にも使用できる倉庫、を意味する。
【0010】
本発明の外壁構造は、内壁と外装材とを備え、内壁は複数枚の壁パネルを備えている。壁パネルと外装材との間には、互いに固定された縦胴縁と横胴縁とが配置され、外装材と壁パネルはそれぞれ横胴縁に取り付けられている。また、縦胴縁はブラケットを介して、屋内構成部材に連結固定されている。壁パネルは縦胴縁及び横胴縁よりも屋内側であって、屋内構成部材よりも屋外側に配置されている。
【0011】
従来の壁パネルを用いた外壁構造においては、壁パネルは上下のスラブ間に嵌め込まれていた。そのため、必要な強度は壁パネルの厚さを厚くすることで得ていたが、本発明においては、壁パネルはスラブなどの屋内構成部材よりも屋外側に配置され、横胴縁、縦胴縁、ブラケットを介して屋内構成部材に連結されることから、ブラケットの取り付け位置や取り付け数、縦胴縁や横胴縁への取り付け箇所や取り付け数を調整することによって、厚さがより薄い壁パネルを用いても法令で規定された強度を得ることができる。よって、本発明の外壁構造では、要求される倉庫内温度に必要な断熱性が得られる範囲で断熱層の厚さが従来よりも薄い壁パネルを用いることができ、経済的であり、且つ、壁パネル自体も軽くなるため、施工がより容易になる。
【0012】
また、従来の壁パネルを用いた外壁構造においては、壁パネルは上下のスラブ間に嵌め込まれていたため、壁パネルの高さは上下のスラブ間の高さ以下に制限されていたが、本発明においては、壁パネルはスラブの外周よりも屋外側に配置されるため、スラブ間の高さによる制限を受けず、必要な強度が得られ、且つ、ブラケットの一端を取り付ける屋内構成部材が配置されていれば、スラブ間の高さよりも高い壁パネルを用いることも可能である。
【0013】
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対して適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に含まれる。また、本明細書に添付の図面においては、本発明にかかる主要な構成部材のみを示し、他の構成部材については便宜上図示を省略する。
【0014】
〔第1の外壁構造〕
本発明の第1の外壁構造について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の外壁構造の好ましい一実施形態の垂直方向及び厚さ方向の部分断面模式図であり、図2図3は、該実施形態の水平方向の部分断面模式図であり、図2図1中のA-A’部位の断面模式図、図3図1中のB-B’部位の断面模式図である。尚、図1図2図3中のD-D’部位の部分断面模式図である。また、図1中の破線で囲まれた領域Cの拡大図を図4に、図2中の破線で囲まれた領域Eの拡大図を図5に、図3中の破線で囲まれた領域Fの拡大図を図6に、それぞれ示す。また、図7図8は、本発明の構成の理解のため、図1の外壁構造の一部を屋外側から見た部分斜視図であり、図7は、外装材50の一部、縦胴縁30の一部、断熱材14を除いた状態を、図8図7からさらに、2階側の壁パネル11、ハット型部材13a,13bを除いた状態を示す。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る倉庫は、コンクリート製の基礎1上に床断熱材2、さらにコンクリート製の床スラブ3が載置され、床スラブ3の外周を囲んで、内壁として壁パネル11が配置される。壁パネル11の屋外側には縦胴縁30及び横胴縁40が配置され、外装材50は横胴縁40に取り付けられている。壁パネル11の紙面右側が屋内、外装材50の紙面左側が屋外である。また、本実施形態は、2階以上の複数階建ての倉庫であり、図1は1階及び2階下方部分を示す。
【0016】
図1図8に示すように、本発明において、横胴縁40は縦胴縁30に取り付けて固定されている。本実施形態においては、横胴縁40は断面がL字型の固定部材41とボルト43によって縦胴縁30に取り付けられているが、溶接など他の固定方法で取り付けられていてもよい。
【0017】
本発明において、壁パネル11は少なくとも水平方向に複数枚が隣接配置され、横胴縁40に連結固定されて内壁を構成している。本実施形態において、壁パネル11は、断面がL字型の固定部材42とボルト44によって横胴縁40に連結固定されているが、本発明において係る連結固定方法は限定されない。また、本実施形態において、壁パネル11は横胴縁40と直接接しておらず、壁パネル11と横胴縁40との間に所定の間隙が形成されている。これによって、壁パネル11の屋外側表面や縦胴縁30、横胴縁40の不陸が吸収される。
【0018】
本発明において、縦胴縁30は、ブラケット20を介して、倉庫の屋内構成部材に連結固定されている。また、壁パネル11の上端が、ブラケット20を取り付ける屋内構成部材よりも低い位置にあり、係る上端の上方をブラケット20が通って一端が屋内構成部材に、他端が壁パネル11の屋外側に配置された縦胴縁30に取り付けられる。また、垂直方向に複数枚の壁パネル11が配置する場合には、図1図4に示すように、垂直方向に隣り合う2枚の壁パネル11,11の連結箇所において、上方の壁パネル11の下端と下方の壁パネル11の上端との間に設けた間隙を通って、その一端が壁パネル11よりも屋内側に突出して屋内構成部材(図1図4においては床スラブ4)に取り付けられ、他端は壁パネル11よりも屋外側に突出して縦胴縁30に取り付けられる。
【0019】
本実施形態においては、図4、図に示すように、垂直方向に隣り合う2枚の壁パネル11,11間の間隙に、ハット型部材13a,13bを嵌合させることによって壁パネル11,11を連結している。また、一方のハット型部材13aは水平方向に長尺のものを、他方のハット型部材13bは短尺のものを用い、短尺のハット型部材13bは水平方向に所定のピッチで配置されている。また、短尺のハット型部材13b側から断熱材14としてポリウレタンフォームを充填して係る間隙の断熱性を確保している。屋内側の長尺のハット型部材13aは、図5に示すように、ブラケット20を通す箇所において、水平方向に間隙を設けて取り付けられている。尚、本発明においては、短尺のハット型部材13bを屋内側、屋外側いずれに配置してもよく、また、屋内側、屋外側の両方に用いても構わない。断熱材14としてポリウレタンフォームを充填する際の作業を考慮して、位置を決めればよい。
【0020】
本発明において、「屋内構成部材」とは、基礎1以外の、躯体や該躯体に取り付けられた部材であり、好ましくは、柱、梁、スラブ(床スラブ、天井スラブ等)、及びこれらに取り付けられた部材である。本実施形態においては、ブラケット20の一端を2階の床スラブ4に取り付けた形態を示すが、床スラブ3と4とをつなぐ柱状の部材や、本来の梁とは別に、ブラケット20の取り付け用に、2本の柱(不図示)を水平方向につなぐ部材や、スラブ同士やスラブと梁(不図示)とを垂直方向につなぐ部材を設け、これら部材にブラケット20を取り付けてもよい。
【0021】
また、本実施形態においては、ブラケット20の一端は断熱パッキン21を介して床スラブ4に取り付けられており、係る構成により、床スラブ4からブラケット20への伝熱経路が遮断されるため、特にブラケット20が金属製の場合に好ましい。断熱パッキン21としては、ウレタン繊維断熱材の加工品が好ましく用いられる。また、本実施形態ではブラケット20はボルト23によって、床スラブ4及び縦胴縁30に取り付けられているが、本発明において、取り付け方法はこれに限定されるものではない。壁パネル11は、下端において、基礎1や床断熱材2、床スラブ3にアングルなどの金物などによって固定されていてもよい。
【0022】
図1図8に示した実施形態では、隣り合う2本の縦胴縁30の間に横胴縁40が配置されて格子を形成しているが、本発明においては、係る形態に限定されず、図9図10に示すように、縦胴縁30の屋外側に横胴縁40を取り付ける形態であってもよい。尚、図9図10はそれぞれ、図4図6と同じ領域に相当する部分断面模式図であり、図10図9中のG-G’部位の断面模式図であり、図9図10中のH-H’部位の断面模式図である。本発明においては、図9図10のように、横胴縁40を縦胴縁30の屋外側に取り付けた構成よりも、図1図8に示すように、隣り合う2本の縦胴縁30の間に横胴縁40を配置した構成とする方が、外壁構造全体の厚さをより薄くできるため、好ましい。
【0023】
本発明においては、横胴縁40を水平方向において隣り合う2本の縦胴縁30にわたって取り付けることで、横胴縁40のねじれが防止されるため、好ましい。また、1枚の壁パネル11を水平方向において複数個所で横胴縁40に連結固定することで、壁パネル11の変形も防止される。
【0024】
本発明に用いられる壁パネル11は、少なくも断熱層を有しており、好ましくは耐火層を備えている。また、図3図6に示すように、水平方向の一端が凸形状、他方が該凸形状に対応する凹形状に構成し、水平方向において2枚の壁パネル11が互いに端部を嵌合する構成とすることで、内壁の強度が向上し、ゆがみが防止されるため、好ましい。
【0025】
本発明に用いられる壁パネル11の好ましい構成例を図11に示す。図11は、内壁を構成した場合と同様に立てた状態での水平方向の断面模式図である。
図11(a)の壁パネル11は、2枚の金属板61a,61bの間に断熱層62を備えた断熱パネル60と、金属板61aの外側に配置されたロックウール層63と、を備えている。ロックウール層63は、壁パネル11の屋内側、屋外側のいずれの側に形成されていてもよい。本実施形態の断熱層62としては、高い断熱性と難燃性を有するイソシアヌレートフォームが好ましく用いられる。金属板61a,61bは、厚さが好ましくは0.5mm~4.0mmであり、鋼板やステンレス、ガリバリウム鋼板、さらには、これらに合成樹脂塗装やメッキを施したものが好ましく用いられる。また、断熱層62は、好ましくは、厚さが49mm~299mmであり、断熱パネル60として厚さが50mm~300mmとなることが好ましい。断熱パネル60として好ましくは、断熱層62がイソシアヌレートフォームで、金属板61a,61bが合成樹脂塗装鋼板或いは合成樹脂塗装めっき鋼板である、国土交通大臣認定番号NM-3065或いはNM-3699の建築用不燃ボードが用いられる。
【0026】
ロックウール層63は断熱性を有すると共に高い耐火性を備えており、本実施形態においては耐火層として機能する。ロックウール層63は、フェルト状に成形されたロックウールシートであってもよいが、施工が容易であることから吹き付けロックウールが好ましい。吹き付けロックウールは、ロックウール粒状綿を結合材としてのセメントと共に、専用の吹付け機を用いて吹き付けてなる。いずれも、内部に連続空間を有し、軽量で耐火性に優れている。ロックウール層63の厚さは、好ましくは10mm~50mmである。本発明においては、断熱パネル60として上記国土交通大臣認定番号NM-3065或いはNM-3699の建築用不燃ボードを用い、吹き付けロックウールでロックウール層63を形成することで、国土交通大臣認定番号FP060NE-9305の1時間耐火の吹き付けロックウール被覆外壁を構成することができ、建築基準法第2条第七号並びに同法施行令第107条第二号及び第三号(外壁(非耐力壁):各1時間)の規定に適合して、本発明の内壁として好ましく用いることができる。
【0027】
図11(b)の壁パネル11は、2枚の金属板61a,61bでロックウール層63を挟持した構成であり、ロックウール層63が断熱層と耐火層とを兼ねている。さらに、図11(c)の壁パネル11は、2枚の金属板61a,61bの内側に耐火層としてのロックウール層63a,63bを備え、さらに、ロックウール層63aと63bとの間に断熱層62を備えている。断熱層62は、ポリウレタンフォーム、フェノールフォーム、イソシアヌレートフォームのいずれかからなる。図11(b)、(c)の壁パネル11は、いずれも耐火材であるロックウール層63又は63aと63bを有しており、優れた耐火性及び断熱性が得られるが、断熱性能が同じレベルであれば、図11(c)の方が、より薄い構成とすることができる。図11(d)の壁パネル11は、2枚の金属板61a,61bで断熱層としてイソシアヌレートフォーム層64を挟持した構成である。イソシアヌレートフォーム層の厚さを50mm以上、好ましくは100mm以上とすることにより、耐火性も備えた壁パネル11とすることができる。
【0028】
図11(b)~(d)において用いられる金属板61a,6bは、図11(a)と同様である。また、ロックウール層63,63a,63bは、ロックウールを主材料とし、パネル形状を維持しうる形態であれば、好ましく用いられる。例えば、樹脂バインダーを用いてロックウールを板状に成形した成形板が好ましく用いられる。図11(b),(c)の壁パネル11のロックウール層63,63a,63bの厚さは、求められる断熱性能、耐火性能に応じて適宜選択される。また、図11(c)のロックウール層63a,63bの厚さは、一方が25~80mm程度であれば、良好な耐火性が得られた上で、壁パネル11を薄くすることができ、好ましい。また、断熱層62としてのポリウレタンフォーム、フェノールフォーム、イソシアヌレートフォームについては、従来、壁材や壁材の構成部材として用いられている発泡板が好ましく用いられ、必要な断熱性に応じて厚さが選択される。また、図11(d)のイソシアヌレートフォーム層64についても、従来の発泡板が好ましく用いられ、必要な断熱性、耐火性に応じて厚さが選択される。
【0029】
図11(b)、(c)に示した壁パネル11としても、建築基準法第2条第七号並びに同法施行令第107条第二号及び第三号(外壁(非耐力壁):各1時間)の規定に適合する、外壁の非耐力壁の1時間耐火基準を満たすものが好ましく用いられる。
【0030】
本発明に用いられる外装材50は、市販の建築外装用の金属板、金属波板、或いはこれらに樹脂塗装を施したものが好ましく用いられる。また、外装材50の下端には、必要に応じて水切り金具(不図示)が取り付けられる。
【0031】
本発明においては、外壁構造を全て上記の第1の外壁構造とする必要はなく、必要な箇所のみ上記外壁構造を適用すればよい。
【0032】
〔第1の外壁構造の施工方法〕
本発明の第1の外壁構造の施工方法について、図1図8の外壁構造を施工する場合を例に挙げて説明する。
【0033】
(第1の施工方法)
従来の壁パネルを用いた外壁構造の施工方法と同様に、施工現場において、各部材を組み上げる方法である。
先ず、床スラブ4にブラケット20の一端を取り付けて固定し、係るブラケット20の他端に縦胴縁30を取り付け、さらに該縦胴縁30に横胴縁40を取り付ける。次いで、壁パネル11を横胴縁40の屋内側に配置して、該横胴縁40に取り付ける。係る工程を水平方向に繰り返して最下段の壁パネル11を全て取り付けたら、壁パネル11の上端にハット型部材13a,13bを取り付け、2段目の壁パネル11の下端を該ハット型部材13a,13bに嵌合させて、横胴縁40に取り付け、1段目の壁パネル11との間の間隙に断熱材14としてポリウレタンフォームを充填する。
上記工程を最上段まで繰り返したら、外装材50を横胴縁40に取り付ける。
【0034】
尚、第1の施工方法では、上記の過程に限定されるものではなく、壁パネル11を先に床スラブ4の屋外側に立ててから、縦胴縁30や横胴縁40を配置して、互いに取り付けても構わない。
【0035】
尚、壁パネル11として図11(a)に示す構成を用い、ロックウール層63を吹き付け形成する場合には、上記壁パネル11の代わりに断熱パネル60を横胴縁40に取り付ければよく、ロックウール層63の吹き付け作業は、断熱パネル60の屋外側に吹き付ける場合には外装材50を取り付ける前に行い、屋内側の場合には外装材50の取り付け前、取り付け後のいずれでも行うことができる。
【0036】
(第2の施工方法)
本発明の第1の外壁構造の第2の施工方法は、外壁構造の一部を予め取り付けセットとして組み上げておき、該取り付けセットを施工現場において屋内構成部材に取り付ける方法である。
【0037】
第2の施工方法としては、ブラケット20の一端を屋内構成部材に取り付けてから、該ブラケット20の他端を取り付けセットに取り付ける場合と、ブラケット20の他端を先に取り付けセットに取り付けておいて、該ブラケット20の一端を屋内構成部材に取り付ける場合とがある。また、図11(a)の断熱パネル60を取り付けセット70に取り付けておいて、該取り付けセットを屋内構成部材に取り付けた後からロックウール層63を吹き付け形成する場合がある。
【0038】
図1図8に示す外壁構造を施工する本例の工程を図12図15に示す。図12図14図4と同じ位置の部分断面模式図であり、図13図15図5と同じ位置の部分断面模式図である。図12図13中のJ-J’部位の部分断面模式図であり、図13図12中のI-I’部位の部分断面模式図であり、図14図15中のL-L’部位の部分断面模式図であり、図15図14中のK-K’部位の部分断面模式図である。
【0039】
第1の工程:屋内構成部材にブラケット20の一端を取り付ける。本例では、ブラケット20は2階の床スラブ4にボルト23を用いて取り付け、床スラブ4とブラケット20の間に断熱パッキン21を介在させている(図12図13)。
【0040】
第2の工程:縦胴縁30に横胴縁40を取り付け、壁パネル11を横胴縁40に連結固定し、取り付けセット70を作製する(図12図13)。図11(a)の壁パネル11を用いる場合、ロックウール層63は、断熱パネル60を横胴縁40に連結固定した後に吹き付け形成してもよく、その場合には、横胴縁40に断熱パネル60を取り付ける。第2の工程は天候に左右されない作業場で行うことができる。
【0041】
第3の工程:第2の工程で作製した取り付けセット70を、壁パネル11が屋内側に向くように配置し(図12図13)、第1の工程で床スラブ4に一端を取り付けたブラケット20の他端を壁パネル11の屋外側に突出させ、該他端を縦胴縁30に取り付ける。
本施工方法では、予め第1の工程でブラケット20の一端を床スラブ4に取り付けているため、床スラブ4と壁パネル11との間隙を狭くすることができる。
【0042】
上記第1の工程~第3の工程を水平方向に繰り返して、最下段の取り付けセット70を全て取り付けたら、壁パネル11の上端にハット型部材13a,13bを取り付け、2段目の取り付けセット70の壁パネル11の下端が係るハット型部材13a,13bに嵌合するように配置して、上記第1の工程~第3の工程を行う。その後、上段の壁パネル11の下端と下段の壁パネル11の上端との間隙に断熱材14としてポリウレタンフォームを充填する。
すべての取り付けセット70の取り付けが完了したら、外装材50を取り付けて外壁構造が完成する。
【0043】
尚、壁パネル11として図11(a)に示す構成を用い、ロックウール層63を取り付けセット70の取り付け後に吹き付け形成する場合であって、ロックウール層63を断熱パネル60の屋内側に吹き付ける場合、ロックウール層63の吹き付け作業は外装材50の取り付け前、取り付け後のいずれでも行うことができ、ロックウール層63を断熱パネル60の屋外側に吹き付ける場合には、ロックウール層63の吹き付け作業は外装材50を取り付ける前に行えばよい。
【0044】
また、下段の取り付けセット70の縦胴縁30と上段の取り付けセット70の縦胴縁30とは連結金具(不図示)等を用いるか、溶接することによって互いに連結固定すればよい。
【0045】
上記の実施形態では、ブラケット20の一端を床スラブ4に取り付け、取り付けセット70は壁パネル11と縦胴縁30と横胴縁40とで構成したが、ブラケット20の他端を先に縦胴縁30に取り付けて取り付けセット70にブラケット20を含めておき、係る取り付けセット70のブラケット20の一端を床スラブ4に取り付けることで取り付けセット70の取り付けとしても構わない。
【0046】
さらに、取り付けセット70は、取り扱うことができる範囲内で複数枚の壁パネル11を一体とすることができ、好ましくは、水平方向に複数の壁パネル11を一つの取り付けセット70とする。また、縦胴縁30及び横胴縁40も可能な範囲で複数本を一つの取り付けセット70に組み込むことができる。
【0047】
またさらに、外装材50を予め取り付けセット70に取り付けておくことも可能であるが、その場合、壁パネル11として図11(a)に示す構成を用いる場合には、ロックウール層63は屋内側に吹き付け形成するか、或いは、取り付けセット70に外装材50を取り付ける前に断熱パネル60の屋外側表面に形成しておけばよい。
【0048】
また、取り付けセット70は、作業場などで運搬可能な範囲の大きさで作製してから施工現場に搬送し、施工現場において複数の取り付けセット70を一体化してから、屋内構成部材へのブラケット20の取り付けを行ってもよい。
【0049】
第2の施工方法では、取り付けセットの作製を作業場など施工現場以外の屋内環境で行うことができるため、施工現場での作業が大幅に削減され、天候の影響を受けにくくなる。また、施工現場での作業は、ブラケット20の一端の構成部材への取り付け、或いは、ブラケット20の他端への縦胴縁30への取り付けが主であるため、作業箇所が少なく、施工現場全体に足場を組む必要がなく、高所作業車等により施工することが可能となる。
【0050】
また、本発明においては、第1の施工方法と第2の施工方法とを組み合わせて施工を行ってもかまわない。
【0051】
〔第2の外壁構造(参考)
上記した第1の外壁構造では、壁パネル11の上端の上方に、屋内構成部材に一端を取り付けたブラケット20を通す空間が存在するが、ブラケット20の取り付け位置が必ずしも係る空間と一致するとは限らない。
【0052】
本発明の第2の外壁構造は、屋内構成部材の位置に関わらず、ブラケット20を取り付けられるように、ブラケット20を通すための貫通孔を有する壁パネルを用いたことに特徴を有する。本発明において、上記貫通孔内には、ポリウレタンフォームからなる充填材が充填されている。
【0053】
図16は、本発明の第2の外壁構造の好ましい一実施形態の垂直方向及び厚さ方向の部分断面模式図であり、図17は、該実施形態の水平方向の部分断面模式図である。図17図16中のA-A’部位の部分断面模式図であり、図16図17中のC-C’部位の部分断面模式図である。さらに、図16中の破線で囲まれた領域Bの拡大図を図18に、図17中の破線で囲まれた領域Dの拡大図を図19に、それぞれ示す。また、図20図22は、本発明の構成の理解のため、図16の外壁構造の一部を屋外側から見た部分斜視図であり、図20は外装材50の一部、断熱材14、充填材12、2階側の縦胴縁30を除いた状態を、図21図20からさらに、2階側の壁パネル11、ハット型部材13a,13b、縦胴縁30の一部を除いた状態を、図22図21からさらに壁パネル11を除いた状態を示す。
【0054】
基本的に、第2の外壁構造は、壁パネル11に貫通孔11aを設け、該貫通孔11aにブラケット20を通し、貫通孔11aの余分な空間に充填材12としてポリウレタンフォームを充填して内壁10とした以外、前記した第1の外壁構造と同じであり、説明を省略する。
【0055】
尚、本発明においては、外壁構造を全て第2の外壁構造とする必要はなく、必要な箇所のみ上記外壁構造を適用すればよい。
【0056】
〔第2の外壁構造の施工方法〕
本発明の第2の外壁構造の施工方法については、ブラケット20を壁パネル11に設けた貫通孔11aを通す以外、基本的に第1の外壁構造の施工方法と同じである。図16図22の外壁構造を施工する場合を例に挙げて説明する。
【0057】
(第1の施工方法)
従来の壁パネルを用いた外壁構造の施工方法と同様に、施工現場において、各部材を組み上げる方法である。
【0058】
先ず、床スラブ4にブラケット20の一端を取り付けて固定し、係るブラケット20の他端側を貫通孔11aに通して壁パネル11を配置し、該他端を該壁パネル11の屋外側に配置した縦胴縁30に取り付ける。さらに、該縦胴縁30に横胴縁40を取り付け、次いで、該横胴縁40に上記壁パネル11を取り付ける。係る工程を水平方向に繰り返して最下段の壁パネル11を全て取り付けたら、壁パネル11の上端にハット型部材13a,13bを取り付け、2段目の壁パネル11の下端を該ハット型部材13a,13bに嵌合させて、横胴縁40に取り付け、1段目の壁パネル11との間の間隙に断熱材14としてポリウレタンフォームを充填する。
上記工程を最上段まで繰り返したら、外装材50を横胴縁40に取り付ける。
【0059】
尚、第1の施工方法では、上記の過程に限定されるものではなく、壁パネル11を先に床スラブ4の屋外側に立ててから、縦胴縁30や横胴縁40を配置して、互いに取り付けても構わない。
【0060】
尚、壁パネル11として図11(a)に示す構成を用い、ロックウール層63を吹き付け形成する場合には、上記壁パネル11の代わりに断熱パネル60を横胴縁40に取り付ければよく、ロックウール層63の吹き付け作業は、断熱パネル60の屋外側に吹き付ける場合には外装材50を取り付ける前に行い、屋内側の場合には外装材50の取り付け前、取り付け後のいずれでも行うことができる。
【0061】
(第2の施工方法)
第1の外壁構造と同様に、本発明の第2の外壁構造は、作業場において外壁構造の一部を予め取り付けセットとして組み上げてから施工現場に搬送することで、施工現場での作業が大幅に削減され、天候の影響を受けにくくなる。
【0062】
図16図22に示す外壁構造を施工する本例の工程を図23図28に示す。図23図25図27図18と同じ位置の部分断面模式図であり、図24図26図28図19と同じ位置の部分断面模式図である。図23図24中のF-F’部位の部分断面模式図であり、図24図23中のE-E’部位の部分断面模式図であり、図25図26中のH-H’部位の部分断面模式図であり、図26図25中の部位のG-G’部分断面模式図であり、図27図28中のJ-J’部分断面模式図であり、図28図27中のI-I’部分断面模式図である。
【0063】
第1の工程:屋内構成部材にブラケット20の一端を取り付ける。本例では、ブラケット20は2階の床スラブ4にボルト23を用いて取り付け、床スラブ4とブラケット20の間に断熱パッキン21を介在させている(図23図24)。
【0064】
第2の工程:縦胴縁30に横胴縁40を取り付け、壁パネル11又は図11(a)の断熱パネル60を横胴縁40に連結固定し、取り付けセット70を作製する(図23図24)。
【0065】
第3の工程:第2の工程で作製した取り付けセット70を、壁パネル11が屋内側に向くように配置し(図23図24)、第1の工程で床スラブ4に一端を取り付けたブラケット20の他端を壁パネル11の貫通孔11aを通して屋外側に突出させ、該他端を縦胴縁30に取り付ける(図25図26)。
【0066】
次いで、貫通孔11aに充填材12としてポリウレタンフォームを充填する(図27図28)。
【0067】
上記第1の工程~第3の工程を水平方向に繰り返して、最下段の取り付けセット70を全て取り付けたら、壁パネル11の上端にハット型部材13a,13bを取り付け、2段目の取り付けセット70の壁パネル11の下端が係るハット型部材13a,13bに嵌合するように配置して、上記第1の工程~第3の工程を行う。その後、上段の壁パネル11の下端と下段の壁パネル11の上端との間隙に断熱材14としてポリウレタンフォームを充填する。
【0068】
すべての取り付けセット70の取り付けが完了したら、外装材50を取り付けて外壁構造が完成する。
【0069】
尚、取り付けセット70に図11(a)の断熱パネル60を取り付けた場合には、外装材50の取り付け前に屋外側からロックウール層63を吹き付けるか、或いは、外装材50の取り付け前、取り付け後のいずれかでロックウール層63を吹き付ける。
【0070】
また、下段の取り付けセット70の縦胴縁30と上段の取り付けセット70の縦胴縁30とは連結金具(不図示)等を用いるか、溶接することによって互いに連結固定すればよい。
【0071】
第1の外壁構造の第2の施工方法と同様に、第2の外壁構造の第2の施工方法においても、ブラケット20の他端を先に縦胴縁30に取り付けて取り付けセット70にブラケット20を含めておくことや、外装材50を取り付けセット70に取り付けておくこと、複数枚の壁パネル11や複数本の縦胴縁30、横胴縁40を一つの取り付けセット70に取り付けること、施工現場において、複数の取り付けセット70を一体化して取り付けることも可能であり、天候の影響を受けにくくなり、作業箇所が少なく、施工現場全体に足場を組む必要がなく、高所作業車等により施工することが可能となる点においても同様である。
【0072】
第2の外壁構造の第2の外壁構造においては、ブラケット20を通す位置の壁パネル11にのみ貫通孔11aを設ければよく、貫通孔11aを持たない壁パネル11と適宜組み合わせて構成することができる。
【0073】
さらに、第2の外壁構造において、第1の施工方法と第2の施工方法とを組み合わせて施工を行ってもかまわない。
【0074】
さらにまた、本発明の外壁構造においては、ブラケット20を取り付けたい位置に応じて、第1の外壁構造と第2の外壁構造とを組み合わせて一つの倉庫を構成してもよく、それぞれの第1の施工方法、第2の施工方法を適宜組み合わせて施工することができる。
【符号の説明】
【0075】
1:基礎、2:床断熱材、3,4:床スラブ、10:内壁、11:壁パネル、11a:貫通孔、12:充填材、13a,13b:ハット型部材、14:断熱材、20:ブラケット、21:断熱パッキン、23:ボルト、30:縦胴縁、40:横胴縁、41,42:固定部材、43,44:ボルト、50:外装材、60:断熱パネル、61a,61b:金属板、62:断熱層、63,63a,63b:ロックウール層、64:イソシアヌレートフォーム層、70:取り付けセット
図1
図2
図3
図4
図5
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