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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】内視鏡補助具
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20220331BHJP
   A61B 1/06 20060101ALI20220331BHJP
   A61B 1/313 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A61B1/00 650
A61B1/00 C
A61B1/06 530
A61B1/00 654
A61B1/313
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017177392
(22)【出願日】2017-09-15
(65)【公開番号】P2019051064
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】特許業務法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】米田 隆志
(72)【発明者】
【氏名】李 虎奎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 健太
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-307226(JP,A)
【文献】特開2010-035825(JP,A)
【文献】特開2007-020806(JP,A)
【文献】特開2012-239519(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0010065(US,A1)
【文献】国際公開第2010/041548(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/078003(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/073061(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の先端部に着脱自在に装着されるキャップと、
装着された前記内視鏡の管壁に沿ってスライド可能なスライダと、
前記キャップと前記スライダとの間に設けられて、前記スライダが前記キャップに近づくと先端が前記内視鏡の管から遠ざかる第1位置を取り、前記スライダが前記キャップから遠ざかると前記先端が前記内視鏡の管に近づく第2位置を取る複数のアームと、
前記先端が前記第1位置を取るときに前記内視鏡による処置領域を撮影するように、前記複数のアームの前記先端に取り付けられる複数の撮像部と、
前記処置領域に向かって光を照射する光源と、
前記内視鏡補助具を患者の腹壁上の所望位置に係脱自在に固定する固定部と、
を備えることを特徴とする内視鏡補助具。
【請求項2】
前記固定部は、前記キャップに取り付けられた磁性体と、前記永久磁石を前記腹壁の外側から吸引する永久磁石又は電磁石と、を含むこと、
を特徴とする請求項1に記載の内視鏡補助具。
【請求項3】
前記複数のアームが前記第1位置と前記第2位置との間を移動するように前記複数のアームを操作する操作部
を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡補助具。
【請求項4】
前記操作部は、
前記スライダを前記キャップに近づけるように駆動される第1ワイヤと、
前記スライダを前記キャップから遠ざけるように駆動される第2ワイヤと、
を含むことを特徴とする請求項3に記載の内視鏡補助具。
【請求項5】
前記アームを前記第1位置に維持する保持機構
を更に備えることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の内視鏡補助具。
【請求項6】
前記キャップに前記内視鏡の先端部が挿入されると、前記アームが前記第1位置を取る状態を解除する解除機構
を更に備えることを特徴とする請求項に記載の内視鏡補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡補助具に関し、特に、内視鏡の施術者に俯瞰的な視野を提供する内視鏡補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡による処置に際して体腔内の視野を広げるために、体腔内おいて撮像を行うカメラと、カメラに接続されるとともに腹壁の異なる面によって腹壁を挟持してカメラを体腔内に固定するカメラ側磁石及び固定用磁石と、カメラの制御を行うコントロールユニットと、を備える内視鏡システムが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-307226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の内視鏡システムは、例えば着脱鉗子のような着脱用の器具を別途必要とする。また、1台の内視鏡システムに1個の撮像素子の搭載が予定されていることから、十分に広い範囲にわたる視野を得るためには、複数台の内視鏡システムを個別に体腔内に配置する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、簡易な作業で着脱することができ、内視鏡の施術者に対して処置領域を俯瞰する視野を付与することができる内視鏡補助具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決すべく、本発明は、内視鏡の先端部に着脱自在に装着されるキャップと、装着された前記内視鏡の管壁に沿ってスライド可能なスライダと、前記キャップと前記スライダとの間に設けられて、前記スライダが前記キャップに近づくと先端が前記内視鏡の管から遠ざかる第1位置を取り、前記スライダが前記キャップから遠ざかると前記先端が前記内視鏡の管に近づく第2位置を取る複数のアームと、前記先端が前記第1位置を取るときに前記内視鏡による処置領域を撮影するように、前記複数のアームの前記先端に取り付けられる複数の撮像部と、前記処置領域に向かって光を照射する光源と、を備えることを特徴とする内視鏡補助具を提供する。
【0007】
上記の本発明においては、内視鏡補助具が、前記内視鏡補助具を患者の腹壁上の所望位置に係脱自在に固定する固定部を更に有すること、が好ましい。
【0008】
また、上記の本発明の内視鏡補助具においては、前記固定部が、前記キャップに取り付けられた磁性体と、前記永久磁石を前記腹壁の外側から吸引する永久磁石又は電磁石と、を含むこと、が好ましい。
【0009】
また、上記の本発明においては、内視鏡補助具が、前記複数のアームが前記第1位置と前記第2位置との間を移動するように前記複数のアームを操作する操作部を更に有すること、が好ましい。
【0010】
上記の本発明の内視鏡補助具においては、前記操作部が、前記スライダを前記キャップに近づけるように駆動される第1ワイヤと、前記スライダを前記キャップから遠ざけるように駆動される第2ワイヤと、を含むこと、が好ましい。
【0011】
上記の本発明においては、内視鏡補助具が、前記アームを前記第1位置に維持する保持機構を更に有すること、が好ましい。
【0012】
上記の本発明においては、内視鏡補助具が、前記キャップに前記内視鏡の先端部が挿入されると、前記アームが前記第1位置を取る状態を解除する解除機構を更に備えること、が好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な作業で着脱することができ、内視鏡の施術者に対して処置領域を俯瞰する視野を付与することができる内視鏡補助具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】内視鏡補助具の使用例を示す概略図である。
図2図1の内視鏡補助具が体腔内に導入される様子を示す概略図である。
図3】本発明の代表的な実施形態に係る内視鏡補助具が内視鏡の先端部に装着された状態を示す斜視図である。
図4図3の内視鏡補助具の断面斜視図である。
図5】閉じた状態の内視鏡補助具を示す上面図及び側面図である。
図6】半ば開いた状態の内視鏡補助具を示す上面図及び側面図である。
図7】開いた状態の内視鏡補助具を示す上面図及び側面図である。
図8図6のA-A線部分断面図である。
図9】変形例1に係る内視鏡補助具を示す側面図である。
図10】変形例2に係る内視鏡補助具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の代表的な実施形態に係る内視鏡補助具について、図面を参照しつつ詳細に説明する。ここでは、内視鏡補助具がNOTES(Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery)と呼ばれる内視鏡手術に適用される場面を想定して本発明を説明するが、本発明は他のタイプの内視鏡ないし内視鏡手術にも適用可能である。
なお、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0016】
[内視鏡補助具の適用場面]
図1及び図2を参照して、内視鏡補助具1が適用される典型的な場面を説明する。ただし、内視鏡補助具の適用場面は、以下の場面に限られるものではない。ここに、NOTESとは、人体に存在する自然開口部(例えば口や肛門)から軟性内視鏡を体内へ挿入し、管腔壁を切開後、体腔内へ侵入して幹部の治療を行う方法である。低侵襲がNOTESの大きな魅力の1つであるが、一方で、施術者は体腔内の限られた空間内で、内視鏡のカメラから得られる狭い視野の下で処置を行う必要があり、施術者の負担が大きい。
【0017】
内視鏡補助具1は、軟性内視鏡の先端部に装着された状態で内視鏡とともに体内に挿入され、施術者に処置領域の俯瞰的な視野を提供するものである。具体的には、内視鏡補助具1は、図2に示すように、軟性内視鏡101の先端部に装着された状態で、例えば胃104に形成された開口105から患者の体腔102内に侵入する。この状態では、内視鏡補助具1のアーム4は閉じている。
【0018】
そして、図1に示すように、内視鏡101による処置を施す範囲(処置領域)を十分に撮影できる腹壁103上の位置に、内視鏡補助具1を固定部7で固定し、アーム4を開くアーム4の先端に搭載されている光源6で処置領域を照射しながら、他のアーム4の先端に設けられた撮像部5で撮影を行う。あるいは、施術者は、アーム4を開いて処置領域を撮影し、映像を確認しながら内視鏡補助具1の固定位置を決定してもよい。
これにより、施術者は、内視鏡101の内蔵カメラからの映像に加えて、内視鏡補助具1からの映像を見ながら、内視鏡101による処置を行うことができる。つまり、施術者は、広範囲の視野を得ることができる。
【0019】
内視鏡補助具1を患者の体内から回収する際には、内視鏡101の先端に、アーム4を閉じた状態の内視鏡補助具1を装着し、この状態で内視鏡101を患者の体内から取り出せばよい。なお、撮像範囲の変更を行う場合には、例えば、内視鏡101の先端に内視鏡補助具1を装着し、固定具7による固定を解除したうえで、別の位置に内視鏡補助具1を移動させればよい。
【0020】
[内視鏡補助具の構成]
図3図8を参照して、内視鏡補助具1を具体的に説明する。なお、図3図8では、説明の便宜上、固定部7の図示は省略されている。また、図3及び図4では、複数の撮像部5及び複数の光源6のうち、全部又は一部の撮像部及び光源の図示が省略されている。更に、図4図8では、操作部8の図示は省略されている。
【0021】
まず内視鏡補助具1の全般的な設計思想について述べると、内視鏡補助具1は、軟性内視鏡の先端部に取り付けられた状態で体腔内に運ばれるのに好適に設計されている。内視鏡補助具1は、NOTESによる内視鏡手術に特に好適に使用できるように、20mm以下の最大全長及び最大径を持つことが好ましい。更に、内視鏡補助具1は、患者の体内へ挿入されるものであるため、滅菌可能な材料で作製されることが好ましい。また、内視鏡補助具1は、体内を傷つけない形状・機構であることが好ましい。
【0022】
具体的には、内視鏡補助具1は、キャップ2と、スライダ3と、アーム4と、撮像部5と、光源6と、固定部7と、操作部8と、を含んで構成されている。ここに、アーム4、撮像部5、及び光源6については、同様の部材が複数設けられることがある。
したがって、個々のアームを説明する場合にはアーム41~44と記載し、アームを総称するときにはアーム4と記載するものとする。同様に、撮像部51,52は個別の撮像部について使用し、撮像部5はこれらを総称するものとして使用する。また、光源61,62は個別の光源を指し、光源6はこれらを総称するものである。
【0023】
キャップ2は、内視鏡101の先端部に着脱自在に装着される樹脂部材である。キャップ2は、例えばアクリル系硬化樹脂で作製されてもよく、より好ましくは、生体適合性を有し滅菌可能な材料で作製されるのがよい。本実施形態では、キャップ2は、中央が開口する円盤状の部材であり、図3及び図4に示すように、外縁から内視鏡101の管壁に沿って延びる側壁21,22及び爪部23、24を有する。
【0024】
側壁21,22は、互いに向かい合うように離れた位置に配置され、それぞれに、操作部8(ワイヤ81,82)を挿通するための孔21A,22Aが形成されている。これら孔21A,22Aについては、追ってスライダ3の孔31,32との関係で述べる。
【0025】
爪部23,24もまた、互いに向かい合うように離れた位置に設けられ、先端において内側に突出している(図8参照)。爪部23,24は、スライダ3の受け部33,34とともに、スナップフィット機構を構成するが、この点については後述する。
【0026】
次いで、スライダ3は、装着された内視鏡101の管壁に沿ってスライド可能な樹脂部材である。スライダ3は、キャップ2と同様にアクリル系硬化樹脂で作製されてもよく、より好ましくは、生体適合性を有し滅菌可能な材料で作製されるのがよい。本実施形態では、スライダ3は、図4に示すように、中央が開口する円盤状の部材であり、キャップ2の外径とほぼ同じか、やや小さい外径を有する。また、スライダ3の内径は、内視鏡101の挿通を可能とするように、内視鏡101の外径とほぼ同じか、やや大きい。
【0027】
スライダ3は、例えば図8に示すように、外縁からキャップ2側に延びる受け部33,34を有する。例えば図6(b)のようにスライダ3がキャップ2に接近すると、スライダ3の受け部33,34とキャップ2の爪部23,24とが部分的に接触し、弾性変形する。その際に生じた受け部33,34及び爪部23,24の弾性力に抗して、スライダ3が更にキャップ2の内側に押し込まれると、図7(b)受け部33,34及び爪部23,24は互いに嵌り合う。この状態では、受け部33,34及び爪部23,24は互いの移動を規制することになり、スライダ3はキャップ2に押し込まれた状態(これはアーム4が開いた状態に相当する)を保持することになる。
【0028】
したがって、スライダ3の受け部33,34及びキャップ2の爪部23,24は、アーム4の保持機構を構成することになる。かかる保持機構により、操作部8(ワイヤ81)の牽引を継続することなく、アーム4が開いた状態を維持することができ、内視鏡補助具1の操作性が向上する。
【0029】
アーム4の説明に移ると、複数のアーム4(41~44)は、図5図7に示すように、キャップ2とスライダ3との間に設けられる樹脂部材であり、開いた状態(第1位置)と閉じた状態(第2位置)との間を回動することができる。ここに、開いた状態とは、スライダ3がキャップ2に近づく場合におけるアーム4の状態であり、このときアーム4の先端は内視鏡101の管壁から遠ざかることになる。また、閉じた状態とは、スライダ3がキャップ2から遠ざかる場合におけるアーム4の状態であり、このときアーム4の先端は内視鏡101の管壁に近づくことになる。
【0030】
アーム4は、例えばアクリル系硬化樹脂で作製されてもよく、より好ましくは、生体適合性を有し滅菌可能な材料で作製されるのがよい。
アーム4の長さは、例えば、内視鏡補助具1の許容寸法や必要な視野範囲を考慮して決定されるとよい。
【0031】
本実施形態では、例えば図3に示すように、4本のアーム41~44が設けられ、アーム41,42とアーム43,44は、それぞれ互いに向き合うように離れた位置に配置されている。アーム41,42は撮像部51,52用であり、アーム43,44は光源61,62用である。ただし、アーム4は撮像部5のために少なくとも2本あればよい。
【0032】
アーム41~44は、例えば図4に示すように、一端(下端)において、スライダ3に軸41A~44Aを介して回動自在に取り付けられている。また、アーム41~44の他端(先端)には、撮像部5(51,52)又は光源6(61,62)が取り付けられている。
【0033】
そして、アーム41~44とキャップ2とは、図8に示すように、連結片91~94を介してキャップ2に連結され、リンク機構を形成している。具体的には、例えば連結片93を例に挙げると、この連結片の一端は、軸43Bを介して、アーム43の長手方向の中間位置に取り付けられ、連結片93の他端は、軸43Cを介して、キャップ2に取り付けられている。したがって、スライダ3の上下運動に連動して、連結片93が軸43Cを中心に回動し、これによりアーム43が開閉動作することとなる。なお、連結片91~94としては、例えばステンレス鋼材のように、一定の強度を有し、かつ、生体に影響を及ぼさない金属材料が用いられる。
【0034】
次いで操作部8に言及する。操作部8は、複数のアーム4が開いた状態(第1位置)と閉じた状態(第2位置)との間を移動するように複数のアーム4を操作する部材である。ここでは、操作部8は、金属製のワイヤであり、図3に示すように、スライダ3をキャップ2に近づけるように駆動されるワイヤ81(第1ワイヤ)と、スライダ3をキャップ2から遠ざけるように駆動されるワイヤ82(第2ワイヤ)と、を含む。ワイヤ81,82は1本のワイヤでもよいし、複数のワイヤを繋ぎ合わせたものでもよい。
【0035】
操作部8によるアーム4の開閉操作を可能にするために、本実施形態では、操作部8をキャップ2の孔21A及びスライダ3の孔31に挿通するとともに、操作部8を例えば棒などでスライダ3に固着させる。これによりスライダ3が操作部8と連動することになる。具体的には、ワイヤ81を図3のX方向に引くことで、スライダ3がキャップ2に近付き、ワイヤ82を図3のY方向に引くことで、スライダ3がキャップ2から遠ざかる。これにより、操作部8によるアーム4の開閉操作が可能となる。ただし、操作部8としては、ワイヤ以外の手法が使用されてもよい。
【0036】
操作部8は、操作性を向上させるとともに生体を傷付けないように、例えばステンレス製のシース(図示せず)に挿通されることが好ましい。
また、図4に示すキャップ2の孔22A及びスライダ3の孔32にも操作部8を挿通し、複数の操作部8でアーム4の開閉操作を行ってもよい。複数の操作部8による開閉操作は、作業の安定性を向上させる。
【0037】
次に撮像部5を説明する。撮像部5は、アーム4の先端に取り付けられ、内視鏡101による処置領域を撮影する。本実施形態では、例えば図5に示すように、2個の撮像部51,52が設けられているが、3個以上の撮像部5が備えられてもよい。また、撮像部5により撮影可能な画像は、動画像でも静止画像でもよく、撮影された画像は、有線又は無線により外部ディスプレイや記憶装置に出力される。
【0038】
ここで、複数の撮像部5は、施術者の視野の範囲を広げるという観点から、互いに離れた位置に配置されることが好ましい。そのため、撮像部51,52は、互いに反対側に位置するアーム41,42の先端に取り付けられている。
【0039】
撮像部5は、例えばCCDやCMOSセンサのような撮像素子であり、小型で、焦点距離が短く広角であることが好ましい。撮像部5として、例えばセンササイズ1/18インチ、幅3.0mm×高さ3.0mm×奥行4.0mm、焦点距離0.96mm、画角55度、フレームレート30fpsを有する撮像素子を採用することで、内視鏡補助具1全体の寸法を抑制しつつ、内視鏡101の処置領域の様子を十分に観察することが可能と考えられる。
【0040】
光源6の説明に移ると、光源6は、内視鏡101の処置領域に向かって光を照射する。光源6は、例えばLED(発光ダイオード)であり、本実施形態では、図6に示すように、2個の光源61,62が採用されている。ただし光源6は、施術者が内視鏡101の処置領域を十分に観察できる限り、少なくとも1個で足りる。
【0041】
光源61,62は、それぞれアーム43,44の先端に取り付けられている。内視鏡補助具1全体の寸法を抑制する観点からは、光源61,62は小さいことが好ましく、例えば幅3.0mm×高さ2.0mm×奥行1.5mmほどである。また、明瞭な視野を確保する観点からは、光源61,62のそれぞれにつき例えば2200mcd~2700mcdほどの光度を確保できればよいと考えられる。
【0042】
固定部7は、図1に示すように、内視鏡補助具1を患者の腹壁103上の所望位置に係脱自在に固定する部材である。固定部7は、キャップ2に取り付けられた金属(磁性体)72と、磁石72を腹壁103の外側から吸引する磁石71(永久磁石又は電磁石)と、を含んでいてよい。ただし、固定部7としては、金属(磁性体)71、磁石72に限るものではなく、磁石と金属(磁性体)と電磁石との間の任意の組合せでよい。
【0043】
[本実施形態の効果]
以上のとおり、内視鏡補助具1は、運搬時(アームを閉じた時)には、最大全長および直径を20mmとすることができるほど小型化することができる。つまり、運搬時には、視野確保時(アームを開いた時)に比べて全長を半分以下に削減することができる。
したがって、内視鏡補助具1は、例えばNOTESのような術式に利用される場合には、内視鏡101の先端に取り付けて患者の口腔から挿入し、咽頭部や食道を通過することを容易に行うことができるため、体壁の切開をせずに利用可能である。更には、内視鏡補助具1の利用により、作業空間の限られた腹腔内で、内視鏡が移動可能な範囲を確保することができる。
【0044】
また、内視鏡補助具1は、滅菌可能な材料で作製された場合には、体内へ挿入する際の安全性を確保することができる。
【0045】
特にNOTESでは、内視鏡の作業空間が限定されるため、施術者には繊細で複雑な操作が要求されるところ、内視鏡補助具1の簡便な操作により視野の拡大が可能であるため、医師の負担軽減および手術時間の短縮を期待することができる。
【0046】
内視鏡補助具1は、内視鏡に取り付けられた状態で作業空間(体腔)に到達し、所望の腹壁上の位置への設置が可能である。また、術後には、内視鏡の先端への装着だけで足り、速やかな回収が可能である。
【0047】
内視鏡補助具1は、例えばNOTESに利用される場合には、体内への挿入時及び体外への回収時、内視鏡の先端に取り付けられた状態で、例えば口と体腔内との間を移動する。内視鏡補助具1はその際、内視鏡の動作や操作へ影響を与えないから、高い利便性を有する。
【0048】
内視鏡補助具1は、全体として丸みを帯び角張った部分がないため、内視鏡に取り付けた状態で体内へ挿入されても、患者の体内を傷つけない。
【0049】
[変形例1]
図9を参照して、本実施形態の変形例1を説明する。
変形例1は、連結片の形状を除き、本実施形態に係る内視鏡補助具1と同様である。したがって、連結片について詳しく説明し、他の構成要素の説明は省略する。
【0050】
連結片95は、図9に示すように、略L字形状の金属部材である。連結片95は、一端において、軸43Bを介してアーム41に連結されるとともに、屈曲部において、軸43Cを介してキャップ2と連結されている。したがって、連結片95は、上述した実施形態における連結片91~94と同様に、リンク機構としての機能を果たす。
【0051】
加えて、連結片95は、図9(a)に示すように、アーム4(41)が開いた状態において、連結片95の他端95Aが内視鏡補助具1の内側に向かって延びるように形成されている。したがって、アーム4が開いた状態の内視鏡補助具1に内視鏡101が挿入されると、内視鏡101の先端部が連結片95の他端95Aに接触する。内視鏡101の先端部が更に奥に押し込まれると、連結片95の他端95Aもキャップ2側に回動することになる。
【0052】
かかる動作により、連結片95の一端(アーム4側の端部)は、内視鏡101に近付く方向に回動する。その結果、アーム41の先端がキャップ2に近付くように移動すると同時に、スライダ4が下方に押し下げられる。これにより、図9(b)に示すように、アーム41が開いた状態が解除され、アーム41が閉じる方向に向かう。すなわち、連結片95は、解除機構に相当する。
【0053】
このように、変形例1では、アーム4が開いた状態の内視鏡補助具1に内視鏡101が挿入されると、アーム4が自動的に閉じる方向に向かう。これにより、内視鏡補助具1の操作が簡便になり、利便性の向上が期待される。
【0054】
かかる効果は、複数のアーム4のいずれかに連結片95が導入されれば期待できるが、すべてのアーム4に連結片95が導入されることで、よりスムーズなアーム4の閉じ動作を得ることができる。
【0055】
[変形例2]
図10を参照して、本実施形態の変形例2を説明する。
変形例2は、アームに追加されたトーションバネを除き、本実施形態に係る内視鏡補助具1と同様である。したがって、トーションバネについて詳しく説明し、他の構成要素の説明は省略する。
【0056】
トーションバネ97は、アーム42が閉じる方向に付勢するものであり、図10(a)に示すように、軸42A~42Cを介してアーム42に取り付けられている。したがって、アーム42が閉じた状態では、アーム4が意図せず開くことを抑制することができる。また、図10(b)のようにアーム42が中途半端に開いた状態では、トーションバネ97の復元力によりアーム42は閉じた状態に戻ろうとする。
【0057】
したがって、変形例2では、アーム4が意図せず開くことを抑制することができるとともに、開いた状態のアーム4を閉じる際には、保持機構の解除後にアーム4の閉じ動作がサポートされる。これにより、内視鏡補助具1の操作性が向上する。
【0058】
かかる効果は、複数のアーム4のいずれかにトーションバネ97が導入されれば期待できるが、すべてのアーム4にトーションバネ97が導入されることで、操作性の更なる向上が期待できる。
なお、変形例1,2の組合せを行うことも可能である。
【0059】
以上、本発明の代表的な実施形態について図面を参照しながら説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の精神及び教示を逸脱しない範囲でその他の改良例や変形例が存在する。そして、かかる改良例や変形例は全て本発明の技術的範囲に含まれることは、当業者にとっては容易に理解されるところである。
【符号の説明】
【0060】
1・・・内視鏡補助具、
2・・・キャップ、
3・・・スライダ、
4,41~44・・・アーム、
5,51,52・・・撮像部、
6,61,62・・・光源、
7・・・固定部、
8・・・操作部。
図1
図2
図3
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図8
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図10