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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】作業用手袋
(51)【国際特許分類】
   A41D 19/015 20060101AFI20220331BHJP
   A41D 19/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A41D19/015 130A
A41D19/00 P
A41D19/015 140
A41D19/015 610Z
A41D19/00 N
A41D19/015 130Z
A41D19/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018176011
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020045594
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2020-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】517312135
【氏名又は名称】株式会社リブレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀井 邦彦
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3035715(JP,U)
【文献】特開平11-335909(JP,A)
【文献】特開2010-121243(JP,A)
【文献】登録実用新案第3046058(JP,U)
【文献】登録実用新案第3018843(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 19/015
A41D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消防活動に使用される作業用手袋において、
手に接触する側から順に、耐熱性を有するインナー層と、防水性を有する防水層と、消火活動中の火や熱水に対する耐熱性を有するアウター層を積層した手袋本体と、
充電式の電池と、
前記インナー層と前記防水層との間にて、第1指と第2指と第3指と第4指と第5指との各指の掌側と手の甲側との間の周縁部と、手の甲とに沿って配設され、電力によって発熱する線状発熱体であって、前記手の甲に沿って配設される部分が波形状に設けられ、前記手の甲に沿って配設される部分の波形状の山部が前記第2指から前記第5指までの前記周縁部に沿って配設される部分に近づくように設けられている前記線状発熱体と、
前記電池と前記線状発熱体とに接続され、前記電池から前記線状発熱体に供給する電力を調整することによって前記線状発熱体の発熱量を制御する制御装置と、
消火活動中の火や熱水に対する耐熱性を有しており、前記手袋本体に一体に設けられて前記電池と前記制御装置を収容する収容部と、
を有すること、
を特徴とする作業用手袋。
【請求項2】
請求項1に記載する作業用手袋において、
前記収容部は、
耐熱性を有しており、前記手袋本体に一体に設けられて前記制御装置を収容する第1収容部と、
耐熱性を有しており、前記手袋本体に一体に設けられて前記電池を収容する第2収容部と、
を有すること、
前記アウター層の内側に設けられ、前記第1収容部の内部で前記制御装置に接続され、前記第2収容部の内部で前記電池に着脱自在に接続される耐熱ケーブルを有すること、
を特徴とする作業用手袋。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する作業用手袋において、
前記手袋本体は、掌側に位置する掌側部と、手の甲側に位置する甲側部とを、手の側面に沿って縫合したものであること、
前記掌側部は、掌に接触する側から順に、前記インナー層と、前記防水層と、耐熱性と滑り止め性を有する前記アウター層とを積層したものであること、
前記甲側部は、手の甲に接触する側から順に、前記インナー層と、前記防水層と、保温性を有する保温層と、耐熱性を有する耐熱層と、耐熱性と耐切創性を有する前記アウター層とを積層したものであること、
前記線状発熱体は、前記甲側部にて、前記インナー層と前記防水層との間に配設されていること、
を特徴とする作業用手袋。
【請求項4】
請求項3に記載する作業用手袋において、
前記甲側部は、前記アウター層のうち、指関節に対応する部分に、シャーリングが設けられていること、
を特徴とする作業用手袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防活動に使用される作業用手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
手袋は、寒さや火傷、切り傷などから手を保護する目的で使用される。
【0003】
例えば、特許文献1には、防寒用の手袋が開示されている。当該手袋は、指装着部の側周部及び上周部に沿って順次、連続的に装着される電熱線と、当該電線に接続するコネクタとを備え、コネクタを携帯電源に接続すると、電熱線が発熱して手を温める。
【0004】
例えば、特許文献2には、消防隊員の手を火傷や切り傷から保護する手袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-94246号公報
【文献】特開2018-35462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術には以下の問題があった。すなわち、特許文献1に記載されるような保温機能を有する手袋は、オートバイ、自転車、登山、アウトドアスポーツなど、火を用いない場所で使用されていた。一方、消防隊員が使用する手袋は、耐熱性・防水性については考慮されていても、保温性を有するものはなかった。消防隊員が使用する手袋は、火災現場など、火を扱う場所で使用されるため、保温する必要はないと考えられていたためである。
【0007】
ところが、消防隊員からは、手の保温が求められていた。冬の火事現場で手袋に水が浸みると、手が冷やされて、指先の感覚が麻痺し、消火設備を誤操作したり、消火活動後の報告書に記入し難かったりするなど、消防活動に支障をきたすことがあったからである。従って、消防活動に使用される作業用手袋には、改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、耐熱性・防水性・保温性を有する作業用手袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、次のような構成を有している。(1)消防活動に使用される作業用手袋において、手に接触する側から順に、耐熱性を有するインナー層と、防水性を有する防水層と、耐熱性を有するアウター層を積層した手袋本体と、充電式の電池と、前記インナー層と前記防水層との間にて、指の側面に沿って配設され、電力によって発熱する発熱体と、前記電池と前記発熱体とに接続され、前記電池から前記発熱体に供給する電力を調整することによって前記発熱体の発熱量を制御する制御装置と、耐熱性を有しており、前記手袋本体に一体に設けられて前記電池と前記制御装置を収容する収容部と、を有すること、を特徴とする。
【0010】
上記構成の作業用手袋は、アウター層により耐熱性が確保され、防水層により防水性が確保されているので、手が火や熱水により火傷することが防止される。作業用手袋は、水に濡れても、発熱体が電池から電力を供給されて発熱し、手を温めて保温する。そのため、作業者は、指先の感覚が麻痺し難く、消火設備の操作や消火活動後の報告書の記入などの消防活動を円滑に行うことができる。また、上記構成の作業用手袋は、インナー層と防水層との間に発熱体を配設している。そのため、発熱体は、水濡れによって損傷せず、水を用いた消防活動中でも発熱できる。更に、作業用手袋に一体に設けられた耐熱性を有する収容部に制御装置と電池を収容しているので、発熱体が電池の電力で長時間発熱でき、また、制御装置と電池が火や熱水の熱で損傷することを防止できる。
【0011】
(2)(1)に記載する作業用手袋において、前記収容部は、耐熱性を有しており、前記手袋本体に一体に設けられて前記制御装置を収容する第1収容部と、耐熱性を有しており、前記手袋本体に一体に設けられて前記電池を収容する第2収容部と、を有すること、前記アウター層の内側に設けられ、前記第1収容部の内部で前記制御装置に接続され、前記第2収容部の内部で前記電池に着脱自在に接続される耐熱ケーブルを有すること、が好ましい。
【0012】
上記構成の作業用手袋は、第1収容部と第2収容部をそれぞれ制御装置と電池の大きさに適した設けることができるので、第1収容部と第2収容部に制御装置と電池をそれぞれ安定して保持させることができる。また、第1収容部と第2収容部に別々に収容される制御装置と電池を接続する耐熱ケーブルが外部に露出せず、消火活動中に、耐熱ケーブルが熱などで損傷することを回避できる。
【0013】
(3)(1)又は(2)に記載する作業用手袋において、前記手袋本体は、掌側に位置する掌側部と、手の甲側に位置する甲側部とを、手の側面に沿って縫合したものであること、前記掌側部は、掌に接触する側から順に、前記インナー層と、前記防水層と、耐熱性と滑り止め性を有する前記アウター層とを積層したものであること、前記甲側部は、手の甲に接触する側から順に、前記インナー層と、前記防水層と、保温性を有する保温層と、耐熱性を有する耐熱層と、耐熱性と耐切創性を有する前記アウター層とを積層したものであること、前記発熱体は、前記甲側部にて、前記インナー層と前記防水層との間に配設されていること、が好ましい。
【0014】
上記構成の作業用手袋は、掌側部の層の数が甲側部の層の数より少なく、甲側部に発熱体を配設しているため、手や指を動かしやすい。また、発熱体は、保温層より手の甲に近い側に設けられているので、発熱体が発生した熱が作業用手袋の外に逃げにくく、保温効果が高い。更に、甲側部は、保温層の外側に、耐熱性を有する耐熱層と、耐熱性と耐切創性を有するアウター層を設けているので、消防活動中の火傷や受傷を防止できる。一方、作業用手袋は、掌側部は、アウター層が耐熱性と滑り止め性を有するので、綱やはしご、ホースなどを使用する際に手が滑りにくい。
【0015】
(4)(3)に記載する作業用手袋において、前記甲側部は、前記アウター層のうち、指関節に対応する部分に、シャーリングが設けられていること、が好ましい。
【0016】
上記構成の作業用手袋においては、甲側部は、層の数が掌側部より多く、発熱体が配設されているため、掌側部より厚く、変形しにくい。しかし、上記構成の作業用手袋は、甲側部のアウター層のうち指関節に対応する部分にシャーリングを設けているので、手や指を動かしやすく、作業を行いやすい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐熱性・防水性・保温性を有する作業用手袋を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る作業用手袋の概念図である。
図2】作業用手袋を甲側部から見た図である。
図3】作業用手袋を掌側部から見た図である。
図4図2に示す作業用手袋を図中右方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る作業用手袋の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る作業用手袋10の概念図である。図1には、左手用の作業用手袋10を記載しているが、右手用の作業用手袋も同様に構成される。作業用手袋10は、手の形をした袋状の手袋本体1を備える。手袋本体1は、手の甲に沿って第1発熱体13が敷設され、手と指の側面に沿って第2発熱体14が配設されている。第2発熱体14は、「発熱体」の一例である。
【0021】
第1発熱体13と第2発熱体14は、電力によって発熱するものである。第1発熱体13と第2発熱体14は、制御装置11に接続されている。制御装置11は、耐熱ケーブル15を介して電池9に接続されている。制御装置11は、電池9から第1発熱体13と第2発熱体14に供給する電力を調整することによって第1発熱体13と第2発熱体14の発熱量を制御する。電池9は、充電式の電池であって、耐熱ケーブル15のコネクタ12と着脱自在に接続されている。
【0022】
制御装置11は、手袋本体1に一体に設けられた第1収容部6に収容されている。電池9は、手袋本体1に一体に設けられた第2収容部5に収容されている。第1収容部6と第2収容部5は、耐熱性を有し、制御装置11と電池9を熱から保護する。
【0023】
図4に示すように、手袋本体1は、手の甲側に位置する甲側部2と、掌側に位置する掌側部3とを備える。甲側部2と掌側部3は、それぞれ、手の形に形成されている。手袋本体1は、甲側部2の周縁部の一部と掌側部3の周縁部の一部を、耐火性を有する縫合糸で縫い合わせることにより、袋状にされている。
【0024】
図2に示すように、甲側部2は、手の甲側(内側)から順に、インナー層21と、防水層22と、保温層23と、耐熱層24と、アウター層25が積層されている。
【0025】
インナー層21は、熱によって損傷しない耐熱性を有する層である。インナー層21は、例えば、ケブラーなど耐熱性を有する薄手の布地により構成されている。防水層22は、水を通さない防水性を有する層である。防水層22は、例えば、塩化ビニールなど,防水性を有する材料で形成されている。保温層23は、保温性を有する層である。保温層23は、例えば、布にアルミを蒸着した材料のように、保温性と防水性を有する材料で形成されている。耐熱層24は、熱によって損傷しない耐熱性を有する層である。耐熱層24は、例えば、フェルトや耐熱繊維のわたなど、耐熱性を有する材料で形成されている。アウター層25は、耐熱性と耐切創性を有する層である。アウター層25は、例えば、ケブラーなど耐熱性・耐切削性を有する厚手の布地により構成されている。アウター層25は、インナー層21より厚手であり、手の受傷を防止する。
【0026】
甲側部2は、インナー層21と防水層22の間に、第1発熱体13と第2発熱体14が配設され、アウター層25と耐熱層24に浸みた水から第1発熱体13と第2発熱体14を保護している。
【0027】
甲側部2には、第1収容部6と第2収容部5が一体に設けられている。
【0028】
第1収容部6は、開閉片61と面ファスナ62により構成されている。開閉片61は、例えば、アウター層25と同じように耐熱性を有する布地を矩形状に形成したものであり、耐熱性を有する縫合糸を用いて一辺がアウター層25に縫い付けられている。面ファスナ62は、ループ部62aが開閉片61に縫い付けられ、フック部62bがアウター層25に縫い付けられ、開閉片61をアウター層25に密着させる。
【0029】
制御装置11は、耐熱材料で被覆されている。制御装置11は、フック部62bの中央部に開設された穴部62bxから露出している。よって、第1収容部6は、制御装置11の周縁部においてループ部62aとフック部62bが張り合わされ、制御装置11を開閉片61によって覆い、熱から保護している。
【0030】
制御装置11は、表示部111と、スイッチ112と、制御回路113とを備える。スイッチ112は、押下式の操作ボタンである。制御回路113は、スイッチ112の操作を受け付け、スイッチ112の操作に応じて電池9から第1発熱体13と第2発熱体14に供給する電力を調整することによって第1発熱体13と第2発熱体14の発熱量(温度)を制御する。また、制御回路113は、スイッチ112の操作に応じて表示部111の点灯状態を変化させる。
【0031】
第2収容部5は、袋体51と、蓋体52と、面ファスナ53により構成されている。袋体51は、コネクタ12に接続された電池9が、あまりすき間を設けずにすっぽり入る大きさで設けられている。袋体51は、例えば、アウター層25と同じように耐熱性を有する布地により形成され、一方に開口するように、耐熱性を有する縫合糸を用いてアウター層25に縫い付けられている。袋体51の開口部は、指側と反対向きに開口し、消火活動時に火の粉や水が入りにくくしている。
【0032】
蓋体52は、例えば、アウター層25と同じように耐熱性を有する布地を矩形状に形成したものであり、袋体51に重ね合せて袋体51の開口部を塞ぐように、耐熱性を有する縫合糸を用いて一辺がアウター層25に縫い付けられている。面ファスナ53は、袋体51に縫い付けられたループ部53aと、蓋体52に縫い付けられたフック部53bをはり合わせることにより、蓋体52と袋体51を結合させる。このような第2収容部5は、電池9とコネクタ12を外部に露出させないように覆うので、消火活動時に電池9とコネクタ12を熱から保護できる。
【0033】
耐熱ケーブル15は、アウター層25の内側(裏側、手に近い側)に敷設されている。耐熱ケーブル15の一端は、第1収容部6の内部にて、制御装置11に接続されている。また、耐熱ケーブル15の他端は、袋体51の内部にてアウター層25の外側(表側)に引き出され、電池9に着脱可能に接続されるコネクタ12が一体に設けられている。よって、耐熱ケーブル15は、アウター層25と第1収容部6と第2収容部5に覆われて外部に露出せず、熱から保護されている。
【0034】
甲側部2は、アウター層25のうち、指関節に対応する部分2Aに、シャーリングが設けられている。そして、指関節と手首との間の部分2Bにおいて、第1発熱体13は、インナー層21と防水層22の間に敷設されている。第2発熱体14は、インナー層21と防水層22との間にて、甲側部2の周縁部に沿って敷設されている。よって、第1発熱体13と第2発熱体14は、手を開いたり閉じたりする際に、比較的邪魔にならない部分に配設され、断線や損傷が防止されている。
【0035】
第1発熱体13と第2発熱体14には、断線しにくく、遠赤外線効果のあるカーボンファイバーを用いることが好ましい。第1発熱体13と第2発熱体14が、消防活動中に断線し、作業用手袋10の発熱性・暖房機能を損なうことを回避できるからである。
【0036】
図3に示すように、掌側部3は、掌に接触する側から順に、インナー層31と、防水層32と、アウター層33が積層されている。インナー層31と防水層32は、甲側部2のインナー層21と防水層22と同様に設けられている。アウター層33は、耐熱性・滑り止め性を有する層である。アウター層33は、例えば、牛革を加工したスエードなどで形成されている。アウター層33は、滑り止め性を強化する強化部3Aが、小指の下側に設けられ、ホースなどを扱いやすくしている。
【0037】
手袋本体1は、熱水などがインナー層21,31と手の間に入ることを防止するために、手首の開口部分を調整する調整部4を備える。調整部4は、ベルト部41と、面ファスナ42により構成されている。ベルト部41は、耐熱性を有する布で形成され、一端が手袋本体1に縫い付けられている。面ファスナ42は、ループ部42aが掌側部3に縫い付けられ、フック部42bがベルト部41に縫い付けられ、ループ部42aとフック部42bをはり合わせる位置を調整することにより、手袋本体1を手首に密着させることができる。
【0038】
本形態の作業用手袋10の使用例を説明する。作業用手袋10は、左手用も右手用も同様に構成されている。例えば、火事現場での消火や消火訓練などを行う場合、消防隊員は、作業用手袋10を両手に着用する。各作業用手袋10は、同様に操作されて動作するので、ここでは、左右を区別せず、作業用手袋10と総称して説明する。
【0039】
例えば夏場には、作業用手袋10は、保温に使用される電池9がコネクタ12から取り外され、第2収容部5に収容されていない。第2収容部5は、袋体51にコネクタ12を収容した状態で、面ファスナ53を用いて袋体51の開口部を蓋体52で塞いでいる。そのため、コネクタ12は、消防活動中に第2収容部5の外に露出せず、熱で損傷したり、消防活動の邪魔をしたりすることがない。
【0040】
一方、冬場には、作業用手袋10は、電池9がコネクタ12に接続され、第2収容部5に収容されている。消防隊員が制御装置11のスイッチ112を長押しすると、制御装置11が起動する。すると、表示部111が点灯し、保温が開始されたことを消防隊員に知らせる。
【0041】
消防隊員が制御装置11を短く押下すると、制御装置11は、スイッチ112の押下回数に従って、設定温度を順次切り替える。設定温度の切り替えに応じて表示部111の点灯色が変わる。スイッチ112を押下して制御装置11の起動や温度設定を行えるので、消防隊員は、作業用手袋10を両手にはめたままスイッチ112を簡単に操作し、任意の保温温度に調整できる。温度設定が終了したら、消防隊員は、開閉片61のループ部62aをフック部62bに結合させ、制御装置11を開閉片61で覆う。面ファスナ62を用いているので、緊急の場合でも、消防隊員は、簡単に、制御装置11を開閉片61で覆うことができる。
【0042】
制御装置11は、設定温度が確定すると、設定温度に応じて電池9の電力を調整して第1発熱体13と第2発熱体14に供給し、第1発熱体13と第2発熱体14を発熱させる。第1発熱体13と第2発熱体14から発生した熱は、保温層23より外側に逃げず、インナー層21の内側の空気を温める。よって、消防隊員は、手の甲と指先が効率良く温められる。
【0043】
消防隊員は、作業用手袋10を着用したまま消火設備を操作する。このとき、作業用手袋10に水がかかっていても、消防隊員の手は、作業用手袋10により保温されている。そのため、消防隊員は、消防活動中に指先の感覚が麻痺しておらず、指を細かく動かして消火設備を操作できる。第1発熱体13と第2発熱体14は、防水層22より内側(手の甲側)に設けられているため、作業用手袋10が熱水や消火水で濡れても、漏電の発生や損傷が防止される。
【0044】
作業中に、消防隊員は、熱い鉄部材やガラスの破片をつかんだり、握ったりすることがある。この場合でも、作業用手袋10は、耐熱性・耐切創性を有する耐熱層24やアウター層25,33で覆われているため、火傷したり、受傷したりしにくい。また、掌側部3のアウター層33が滑り止め性を有するため、消防隊員は作業しやすい。
【0045】
作業用手袋10は、電池9と制御装置11が、耐熱性を有する第2収容部5と第1収容部6に収容され、外部に露出していない。また、耐熱ケーブル15が、アウター層25の内側に設けられ、外部に露出していない。そのため、作業用手袋10は、作業中に電池9や制御装置11や耐熱ケーブル15が熱で損傷し、保温できなくなることを回避できる。
【0046】
消防隊員は、消火活動後、作業用手袋10を外して報告書を記入する。作業中に手を温められているので、消防隊員は、スムーズに報告書に記入できる。
【0047】
作業が終了すると、消防隊員は、開閉片61を捲って、制御装置11を長押しし、制御装置11を停止させる。これにより、表示部111が消灯するので、消防隊員は保温していないことを確認できる。そして、消防隊員は、作業用手袋10を手から外し、蓋体52を捲って電池9を袋体51から取り出し、電池9からコネクタ12を抜く。そして、消防隊員は、電池9を図示しない充電器にセットし、充電する。充電が完了したら、消防隊員は、電池9を図示しない充電器から取り外し、電池9をコネクタ12に接続して第2収容部5に収容する。面ファスナ53を用いて第2収容部5を開閉できるので、消防隊員は、電池9の取り出しや収納を簡単に行える。
【0048】
以上説明した作業用手袋10は、(1)消防活動に使用される作業用手袋10において、手に接触する側から順に、耐熱性を有するインナー層21,31と、防水性を有する防水層22,32と、耐熱性を有するアウター層25,33を積層した手袋本体1と、充電式の電池9と、インナー層21と防水層22との間にて、指の側面に沿って配設され、電力によって発熱する第2発熱体14と、電池9と第2発熱体14とに接続され、電池9から第2発熱体14に供給する電力を調整することによって第2発熱体14の発熱量を制御する制御装置11と、耐熱性を有しており、手袋本体1に一体に設けられて電池9と制御装置11を収容する第1及び第2収容部6,5と、を有すること、を特徴とする。
【0049】
このような作業用手袋10は、アウター層25,33により耐熱性が確保され、防水層22,32により防水性が確保されているので、手が火や熱水により火傷することが防止される。作業用手袋10は、水に濡れても、第1発熱体13と第2発熱体14が電池9から電力を供給されて発熱し、手を温めて保温する。そのため、消防隊員は、指先の感覚が麻痺し難く、消火設備の操作や消火活動後の報告書の記入などの消防活動を円滑に行うことができる。また、本形態の作業用手袋10は、インナー層21と防水層22との間に第1発熱体13と第2発熱体14を配設している。そのため、第1発熱体13と第2発熱体14は、水濡れによって損傷せず、水を用いた消防活動中でも発熱できる。更に、作業用手袋10に一体に設けられた耐熱性を有する第1及び第2収容部6,5に制御装置11と電池9を収容しているので、第1発熱体13と第2発熱体14が電池9の電力で長時間発熱でき、また、制御装置11と電池9が火や熱水の熱で損傷することを防止できる。
【0050】
(2)(1)に記載する作業用手袋10において、収容部は、耐熱性を有しており、手袋本体1に一体に設けられて制御装置11を収容する第1収容部6と、耐熱性を有しており、手袋本体1に一体に設けられて電池9を収容する第2収容部5と、を有すること、アウター層25の内側に設けられ、第1収容部6の内部で制御装置11に接続され、第2収容部5の内部で電池9に着脱自在に接続される耐熱ケーブル15を有すること、が好ましい。
【0051】
上記構成の作業用手袋10は、第1収容部6と第2収容部5をそれぞれ制御装置11と電池9の大きさに適した設けることができるので、第1収容部6と第2収容部5に制御装置11と電池9をそれぞれ安定して保持させることができる。また、第1収容部6と第2収容部5に別々に収容される制御装置11と電池9を接続する耐熱ケーブル15が外部に露出せず、消火活動中に、耐熱ケーブル15が熱などで損傷することを回避できる。
【0052】
(3)(1)又は(2)に記載する作業用手袋10において、手袋本体1は、掌側に位置する掌側部3と、手の甲側に位置する甲側部2とを、手の側面に沿って縫合したものであること、掌側部3は、掌に接触する側から順に、インナー層31と、防水層32と、耐熱性と滑り止め性を有するアウター層33とを積層したものであること、甲側部2は、手の甲に接触する側から順に、インナー層21と、防水層22と、保温性を有する保温層23と、耐熱性を有する耐熱層24と、耐熱性と耐切創性を有するアウター層25とを積層したものであること、第1発熱体13と第2発熱体14は、甲側部2にて、インナー層21と防水層22との間に配設されていること、が好ましい。
【0053】
このような作業用手袋10は、掌側部3の層の数が甲側部2の層の数より少なく、甲側部2に第1発熱体13と第2発熱体14を配設しているため、手や指を動かしやすい。また、第1発熱体13と第2発熱体14は、保温層23より手の甲に近い側に設けられているので、第1発熱体13と第2発熱体14が発生した熱が作業用手袋10の外に逃げにくく、保温効果が高い。更に、甲側部2は、保温層23の外側に、耐熱性を有する耐熱層24と、耐熱性と耐切創性を有するアウター層25を設けているので、消防活動中の火傷や受傷を防止できる。一方、作業用手袋10は、掌側部3は、アウター層33が耐熱性と滑り止め性を有するので、綱やはしご、ホースなどを使用する際に手が滑りにくい。
【0054】
(4)(3)に記載する作業用手袋10において、甲側部2は、アウター層25のうち、指関節に対応する部分2Aに、シャーリングが設けられていること、が好ましい。
【0055】
このような作業用手袋10においては、甲側部2は、層の数が掌側部3より多く、第1発熱体13と第2発熱体14が配設されているため、掌側部3より厚く、変形しにくい。しかし、本形態の作業用手袋10は、甲側部2のアウター層25のうち指関節に対応する部分2Aにシャーリングを設けているので、手や指を動かしやすく、作業を行いやすい。
【0056】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態では、甲側部2に保温層23と耐熱層24を設け、甲側部2の層数を掌側部3の層数より多くしている。これに対して、甲側部2と掌側部3とで層数を同じにしても良い。また、層の種類は、消防隊員用個人防火装備に係るガイドラインを満たすものであれば、これに限定されない。
【0058】
例えば、第1発熱体13を省略し、第2発熱体14のみを設けても良い。
【0059】
例えば、第1収容部6と第2収容部5の構成は上記に限定されない。例えば、開閉片61と蓋体52は面ファスナ62、53と異なる方法で固定しても良い。
【0060】
例えば、シャーリングは無くても良い。
【0061】
例えば、1つの収容部に制御装置11と電池9を収容しても良い。この場合、耐熱ケーブル15は、アウター層25の外側と収容部との間に設け、収容部によって熱から保護されるようにしても良い。但し、上記形態のように、第1収容部6と第2収容部5にそれぞれ制御装置11と電池9を収容することにより、第1収容部6と第2収容部5をそれぞれ制御装置11と電池9に適した大きさにすることができるので、第1収容部6と第2収容部5に制御装置11と電池9をそれぞれ安定して保持させることができる。また、制御装置11と電池9を接続する耐熱ケーブル15をアウター層25の内側に設け、第1収容部6の内部で制御装置11に接続し、第2収容部5の内部で電池9に接続することにより、第1収容部6と第2収容部5に別々に収容される制御装置11と電池9を接続する耐熱ケーブル15が外部に露出せず、消火活動中に、耐熱ケーブル15が熱などで損傷することを回避できる。
【符号の説明】
【0062】
1 手袋本体
2 甲側部
3 掌側部
6 第1収容部
5 第2収容部
9 電池
11 制御装置
15 耐熱ケーブル
21,31 インナー層
22,32 防水層
25,33 アウター層
図1
図2
図3
図4