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特許7049673資源化システム及び資源化システムにおける処理部の予熱方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】資源化システム及び資源化システムにおける処理部の予熱方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/40 20220101AFI20220331BHJP
   C10B 53/07 20060101ALI20220331BHJP
   C10B 53/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B09B3/00 303H
C10B53/07
C10B53/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019106140
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020199429
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】518440051
【氏名又は名称】株式会社プラスワン
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】松村 孝太
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-061412(JP,A)
【文献】特開2005-139303(JP,A)
【文献】特開2017-014492(JP,A)
【文献】特開2001-192670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
C10B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱水蒸気により廃棄物を炭化、気化する資源化システムであって、
蒸気を発生させるボイラと、該ボイラによる蒸気を加熱して過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生部と、前記ボイラと前記過熱水蒸気発生部とを直結する供給路と、前記過熱水蒸気発生部により発生する過熱水蒸気により前記廃棄物を炭化させる処理部とを有し、
前記処理部を通過した使用済蒸気を前記供給路に還流する蒸気還流部を備え、
前記蒸気還流部は、前記処理部に上流端が開口した還流路と、該還流路を介して前記処理部から使用済蒸気を吸込む負圧式のエジェクタとからなることを特徴とする資源化システム。
【請求項2】
使用済蒸気はボイラからの蒸気よりも高温であることを特徴とする請求項1に記載の資源化システム。
【請求項3】
処理部は還流路と異なる位置に開口し、独立して排ガスを排出する排気路を有し、前記排気路の下流端は前記排ガスを気体状態のまま濾過するガス濾過部に接続されることを特徴とする請求項1または2に記載の資源化システム。
【請求項4】
処理部は容器状の処理槽であって、過熱水蒸気発生部は前記処理槽の天井部に下向きの吐出孔を有するパイプヒータを配置し、前記吐出孔から過熱水蒸気を吐出するものであって、
前記処理槽は、一方の側方であって天井部から投入可能にする供給部を有し、前記一方の側方であって底部から排出可能にする固体排出部を有し、
還流路の上流端は、前記固体排出部の位置と異なる他方の側方であって、底部若しくは底部に近接する側面の壁部に形成したことを特徴とする請求項1、2または3のいずれかに記載の資源化システム。
【請求項5】
過熱水蒸気発生部であるパイプヒータは、インコネル合金により形成され、電気発熱式であることを特徴とする請求項4に記載の資源化システム。
【請求項6】
処理槽は、供給部から固体排出部に通じる搬送路を有するものであって、
前記搬送路は、一方の側方から他方に側方に至るコンベアを上下に複数形成し、廃棄物を継続供給して搬送しながら炭化・気化処理する連続処理が可能であることを特徴とする請求項4または5に記載の資源化システム。
【請求項7】
廃棄物は廃プラスチック、ゴミ屑、紙屑、木屑、繊維屑、植物性残渣、作物残渣、食品残渣、廃ゴムのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の資源化システム。
【請求項8】
過熱水蒸気により廃プラスチック、ゴミ屑、紙屑、木屑、繊維屑、植物性残渣、作物残渣、食品残渣、廃ゴムのいずれかの廃棄物を炭化、気化する資源化システムにおいて前記廃棄物を炭化する処理部の予熱方法であって、
ボイラにより発生させた蒸気を前記ボイラと過熱水蒸気発生部とを直結する供給路を通じて前記処理部の天井部に形成される前記過熱水蒸気発生部に送り、
前記過熱水蒸気発生部において電気発熱式のパイプヒータにより加熱して発生する過熱水蒸気を前記パイプヒータの下方に向けた吐出孔から噴出させて処理部を加熱し、
前記処理部の底部若しくは底部に近接する位置に形成された還流路の上流端から、負圧式のエジェクタを通じて、前記ボイラにより発生する蒸気より高温となる使用済蒸気を前記供給路に還流し、
予熱動作終了後であって処理動作前に逆止弁を閉じて蒸気の還流を遮断することを特徴とする資源化システムにおける処理部の予熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過熱水蒸気により廃棄物を炭化・気化させて再資源化する資源化システム及びそのシステムにおける処理部の予熱方法に関する発明であって、特に予熱動作に適したものを提供する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を過熱水蒸気により炭化させる処理装置は、投入口から処理槽内に廃棄物を入れた後、処理槽を密閉して過熱水蒸気を充填し、廃棄物を低酸素状態で炭化させている。このようなバッチ式の処理装置では、炭化後に冷却して炭化物を取り出した後、次の廃棄物を投入し、処理槽を低酸素状態にして炭化処理を繰り返している。バッチ式では廃棄物を投入する毎に処理槽を予熱することになり、効率が悪いという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1に示すような炭化処理装置では炭化処理炉内に移送コンベアを設け、この移送コンベアにより有機物を搬送しながら炭化させて、有機物を連続して供給・処理可能な連続式としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】再表2013/011555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように連続式とすることにより炭化させる処理動作における効率は良くなるが、搬送スペースによりバッチ式よりも処理槽(炭化処理炉)のサイズが大きくなる。このため、スタートアップ動作の一つである予熱動作は、処理槽の温度を廃棄物を処理可能な温度にまで予熱昇温させるために、半日以上を要していた。
【0006】
また、予熱動作の効率向上が望まれているところ、処理流路を利用して予熱動作の向上を図るものも存在するが、この場合廃気路を長い流路としたり濾過工程などが生じてロスが多くなり、予熱動作のみを捉えて効率化させるものではなかった。
【0007】
そこで、予熱動作に集中して効率化を図ることができる資源化システムが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の資源化システムは、過熱水蒸気により廃棄物を炭化、気化する資源化システムであって、蒸気を発生させるボイラと、該ボイラによる蒸気を加熱して過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生部と、前記ボイラと前記過熱水蒸気発生部とを直結する供給路と、前記過熱水蒸気発生部により発生する過熱水蒸気により前記廃棄物を炭化させる処理部とを有し、前記処理部を通過した使用済蒸気を前記供給路に還流する蒸気還流部を備え、前記蒸気還流部は、前記処理部に上流端が開口した還流路と、該還流路を介して前記処理部から使用済蒸気を吸込む負圧式のエジェクタとからなることを特徴とする。
【0009】
また、使用済蒸気はボイラからの蒸気よりも高温であることが好ましい。
【0010】
また、処理部は還流路と異なる位置に開口し、独立して排ガスを排出する排気路を有し、前記排気路の下流端は前記排ガスを気体状態のまま濾過するガス濾過部に接続されることが好ましい。
【0011】
また、処理部は容器状の処理槽であって、過熱水蒸気発生部は前記処理槽の天井部に下向きの吐出孔を有するパイプヒータを配置し、前記吐出孔から過熱水蒸気を吐出するものであって、前記処理槽は、一方の側方であって天井部から投入可能にする供給部を有し、前記一方の側方であって底部から排出可能にする固体排出部を有し、還流路の上流端は、前記固体排出部の位置と異なる他方の側方であって、底部若しくは底部に近接する側面の壁部に形成したことが好ましい。
【0012】
また、過熱水蒸気発生部であるパイプヒータは、インコネル合金により形成され、電気発熱式であることが好ましい。
【0013】
また、処理槽は、供給部から固体排出部に通じる搬送路を有するものであって、前記搬送路は、一方の側方から他方に側方に至るコンベアを上下に複数形成し、廃棄物を継続供給して搬送しながら炭化・気化処理する連続処理が可能であることが好ましい。
【0014】
また、廃棄物は廃プラスチック、ゴミ屑、紙屑、木屑、繊維屑、植物性残渣、作物残渣、食品残渣、廃ゴムのいずれかであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の予熱方法は、過熱水蒸気により廃プラスチック、ゴミ屑、紙屑、木屑、繊維屑、植物性残渣、作物残渣、食品残渣、廃ゴムのいずれかの廃棄物を炭化、気化する資源化システムにおいて前記廃棄物を炭化する処理部の予熱方法であって、ボイラにより発生させた蒸気を前記ボイラと過熱水蒸気発生部とを直結する供給路を通じて前記処理部の天井部に形成される前記過熱水蒸気発生部に送り、前記過熱水蒸気発生部において電気発熱式のパイプヒータにより加熱して発生する過熱水蒸気を前記パイプヒータの下方に向けた吐出孔から噴出させて処理部を加熱し、前記処理部の底部若しくは底部に近接する位置に形成された還流路の上流端から、負圧式のエジェクタを通じて、前記ボイラにより発生する蒸気より高温となる使用済蒸気を前記供給路に還流し、予熱動作終了後であって処理動作前に逆止弁を閉じて蒸気の還流を遮断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、処理部の処理槽を予熱して温度が低下した過熱水蒸気(使用済蒸気)をボイラからの蒸気によりエジェクタから吸込み、この蒸気と混ぜて過熱水蒸気の原料として再使用することができ、予熱動作の時間を大幅に短縮することができる。予熱動作時には処理槽に廃棄物を配置しないため、廃棄物由来の排ガスが発生せず、濾過手段を通さなくても使用済蒸気のみを処理部から取り出すことができる。新たな動力源の追加や冗長な流路や工程を介さずに効率よく予熱時間を短縮することができる。
【0017】
また、処理部の過熱水蒸気発生部を天井部に配置し、処理槽内にコンベアで複数搬送する部位を有して、固体排出部と異なる側方の底部に還流路を形成することにより、過熱水蒸気発生部や固体排出部から最も離れた位置に還流路が位置することになり、最も処理に影響が少ない位置に配置するだけでなく、最も温度が低下し易い位置から還流路で還流して効果的に予熱動作の効率を上げることができる。又、パイプヒータを用いて装置全体をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る資源化システムの概念図である。
図2】処理槽内部の正面視による概念図である。
図3図2に示す天井部の平面視による概念図である。
図4図2の側面図である。
図5】蒸気還流部の流路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態の資源化システムは廃棄物を過熱水蒸気により炭化、気化して炭化物や油分などを回収して再資源化している。廃棄物としては廃プラスチック、ゴミ屑、紙屑、木屑、繊維屑、植物性残渣、作物残渣、食品残渣、廃ゴムなどの上質な油分が得られる有機化合物を含む廃棄物(有機廃棄物)が好ましく、炭化と気化とは同時または並行に行われるものである。
【0020】
資源化システムは、図1に示すように、給水部1と、ボイラ2と、過熱水蒸気発生部3と、処理槽5からなる処理部4と、蒸気還流部8と、固体排出部9と、気体回収部10と、各部を接続する流路と、コンピュータ及びコントローラなどの制御部とからなる。図2の紙面手前を前方、紙面奥を後方、紙面上方を上方、紙面下方を下方として説明する。
【0021】
給水部1は水道水などの外部からの水をボイラ2や気体回収部10に供給している。給水部1はボイラ2との間に軟水化部1aを有し、水を軟水化してボイラ2に供給している。ボイラ2は給水部1からの水を加熱して蒸気(飽和水蒸気)を生成し、この蒸気を、供給路11を介して過熱水蒸気発生部3に供給している。ボイラ2は例えば電気ボイラからなる。なおボイラ2は蒸気を生成可能であれば燃焼式などであってもよい。
【0022】
過熱水蒸気発生部3は供給された蒸気から過熱水蒸気を発生させて、処理槽5内に供給している。過熱水蒸気発生部3は、図2乃至図4に示すように、処理槽5の天井部5aに設けたパイプヒータ3aからなり、通電により発熱したパイプヒータ3a内に蒸気を導入して、この蒸気から過熱水蒸気を発生させて処理槽5に供給している。
【0023】
パイプヒータ3aは例えば左右対称に2つ並び配置したインコネルパイプからなる。インコネルパイプはインコネル合金のパイプ材からなるもので、ニッケル、炭素、鉄、クロムを添加した合金であって、強い耐熱性をもち、長時間の使用に耐え得る。また、本実施形態の予熱時においても予熱段階で還流されて順次温度の異なる蒸気がエジェクタ13を介して送られてきても耐え得ることから本実施形態と相性がよい。
【0024】
パイプヒータ3aは下向きに複数の吐出口を等間隔に有して、天井部5aに敷設される。パイプヒータ3aは、天井部5aに折曲、湾曲して敷き詰めることが好ましく、本実施形態では天井部5aの中央奥側から挿入し、天井部5aの奥側縁付近を左右に分かれて分岐し、両側縁を湾曲して通った後にさらに逆側に湾曲して各々の中心部分を通過し、中央手前側を通り、中央奥側に通じる略R字型のような形態としている。この形態に限られず、略S字状としたり、ジグザグに天井部5aを敷き詰めるようにしてもよい。
【0025】
過熱水蒸気はパイプヒータ3aから処理槽5内の外周側及び中央に吐出され、処理槽5内を昇温して高温状態に維持するとともに、空気を追い出しつつ処理槽5内に充満して低酸素状態(無酸素状態を含む)にする。この空気は処理部4の排気路7から排出され、気体回収部10を介して外部に排出される。排気路7はダンパー(図示せず)を有し、このダンパーの開閉により処理槽5の内圧を一定の圧力条件(常圧)に保持している。
【0026】
処理部4は正面視において左右に長く、上下に短い長方形の処理槽5からなる。処理槽5の内部は、過熱水蒸気発生部3を配置する空間を有する天井部5aと、断熱材からなる壁部5bと、前後方向両側から中央に下向き傾斜した舟形の底部5cとからなる(図4参照)。処理部4は過熱水蒸気により処理槽5内を昇温させる予熱動作を行った後、廃棄物を処理槽5内に供給して充満した過熱水蒸気により炭化・気化させる処理動作を行っている。この処理動作を行われた廃棄物は炭化物(固体処理物)及び排ガス(気体処理物)に分解される。
【0027】
予熱動作は処理槽5内に過熱水蒸気発生部3からの過熱水蒸気を充満させて所定の温度以上まで予熱する動作とし、処理槽5内を低酸素状態でかつ400℃以上の高温状態にすることにより動作完了となり、処理動作に移行する。処理動作は予熱動作から継続して過熱水蒸気を処理槽5内に導入して、低酸素・高温状態を維持しつつ廃棄物を供給して炭化・気化させる動作としている。
【0028】
蒸気還流部8は予熱に用いて温度が低下した過熱水蒸気(使用済蒸気)を処理槽5から供給路11に還流する。予熱動作中にのみ蒸気還流部8は機能し、より詳しくは低酸素状態において機能する。具体的には、処理部4内が所定の温度に達し、低酸素状態になるまで逆止弁14により蒸気還流路8が閉鎖され、所定温度に達した後に逆止弁14を開放して使用済蒸気がエジェクタ13に還流される。この逆止弁14の動作により使用済蒸気をボイラ2より発生する蒸気よりも高温の状態で還流することになる。
【0029】
蒸気還流部8はポンプなどの動力源を必要とせず、ボイラ2の蒸気により使用済蒸気を流動させる。蒸気還流部8は、供給路11と処理槽5とを接続する還流路12と、供給路11の途中に設けたエジェクタ13とからなり、エジェクタ13により還流路12を負圧にして使用済蒸気を過熱水蒸気発生部3に還流・供給している。本実施形態においては、蒸気還流部8は途中に逆止弁14を配置してエジェクタ13に接続したパイプ状の環流路12のみからなり、濾過装置等の環流路12の内部を遮断する他の部材を配置していない。
【0030】
還流路12は途中に逆止弁14を有し、下流端がエジェクタ13の吸込部13cに連通している。還流路12は、図2乃至図4に示すように、上流端が処理槽5の排気路7と異なる位置に開口し、排気路7とは独立して設けている。還流路12の上流端は、例えば壁部5bの下左端の前後方向の中央に開口して、底部5cの傾斜により使用済蒸気を吸込み易くしている。しかも、最も下方に位置し、かつ、排気路7や固体排出部9とは箱体の対角線上若しくは相反する位置(他方の側方)に配置されており、処理部4内で最も低温となり得る位置であり、排気や排出に影響が出ない位置に開口されている。
【0031】
エジェクタ13は、図5に示すように、ボイラ2から蒸気(加熱蒸気)が流入される側をノズル側13aとし、この加熱蒸気を過熱水蒸気発生部3に吐出する側をスロート側13bとして、この間に還流路12を接続した吸込部13cを有している。エジェクタ13はノズル側13aからの加熱蒸気の流入により使用済蒸気を吸込部13cから吸込して、加熱蒸気と使用済蒸気とを混合した混合蒸気を供給路11の下流側(過熱水蒸気発生部3)に供給している。
【0032】
本実施形態では例えば蒸気の駆動流量及び使用済蒸気の吸込流量をそれぞれ50kg/hとし、加熱蒸気を130℃程度とし、予熱動作初期段階(還流開始初期)の使用済蒸気を150℃程度とし、混合蒸気を137℃程度としている。加熱蒸気の駆動圧力を0.196MPaとし、使用済蒸気の吸込圧力を-10kPaとし、混合蒸気の吐出圧力を10kPaとしている。なお使用済蒸気の温度は還流(予熱動作)を続けていけば徐々に高温になっていく。
【0033】
過熱水蒸気発生部3は加熱蒸気よりも高温の混合蒸気により過熱水蒸気を効率よく発生できて、処理部4の予熱時間を短縮することができる。例えば約7.6kLの処理槽5であれば従来半日要した予熱時間を2時間程度に短縮することができる。
【0034】
処理部4は処理動作用の設備として、処理槽5内に廃棄物を供給する供給部6と、炭化・気化が完了するまで廃棄物を処理槽5内で搬送する搬送部15と、処理槽5から排ガスを排出する排気路7とを備えている。
【0035】
供給部6は、処理槽5の天井部5aの一方の側方に位置するものであって、ホッパー6aからロータリバルブからなる投入機構6bを経由して投下口6cから廃棄物を処理槽5内に投下して、連続的(自動的)に供給可能としている。投下口6cは廃棄物の重さにより開く開閉弁6dを有し、廃棄物により自動開閉する。
【0036】
また、供給部6は投入機構6bよりも下流に導入口6eを有し、導入口6eにより投入機構6bを介さずに投下口6cに向けて廃棄物を導入可能としている。導入口6eは手動により開閉する蓋6fを有し、手動による供給用として投入機構6bを通れない大型の廃棄物などを処理槽5内に投下可能としている。この投入機構6bと導入口6eとは供給部6として同じ天井部5aの側方に位置し、1つの投下口6c(開閉弁6d)により処理槽5内に通じるようにしている。
【0037】
搬送部15は処理槽5内に上下に2段並べたベルトコンベア16a、16bからなり、処理槽5の左右長さ及びパイプヒータ3aの全長や設置数を抑えている。上下のベルトコンベア16a、16bは金属製のメッシュベルトにより形成され、上面に廃棄物を配置して搬送する。上下のベルトコンベア16a、16bは水平方向(左右方向)を搬送方向として平行に並び、互いの搬送方向(図2の矢印A、B)を逆向きとしている。
【0038】
上段のベルトコンベア16aはその上流端(右端)に供給部6から廃棄物が供給され、この廃棄物を右から左端(下流端)に搬送している。下流端に至った処理中の廃棄物はガイド板18aにより下段のベルトコンベア16bの上流端(左端)に落下する。また、ガイド板18aは還流路12の上流端(開口)よりも上方に配置されて、過熱水蒸気が迂回して還流路12に流れ込むように位置し、予熱動作の効率を向上させている。
【0039】
下段のベルトコンベア16bは還流路12の開口よりも上方に配置される。下段のベルトコンベア16bはその上流端に落下して供給された廃棄物を下流端(右端)に搬送して、十分に炭化・気化して残った炭化物をガイド部18bにより固体排出部9に投下して排出する。
【0040】
固体排出部9は処理槽5の底部5cの右端に連通している。固体排出部9はスクリューフィーダからなり、炭化物を搬送しながら外気に出しても発火しない程度まで冷却して、炭化物を外部に取り出し可能な状態にしている。
【0041】
気体回収部10は、処理槽5内の廃棄物から発生した気体と処理動作に用いた過熱水蒸気とからなる排ガスを回収して、油分、水分、残渣などに分離する。気体回収部10は、気体状態のまま排ガスを濾過するガス濾過部19と、濾過した排ガスを冷却して気液分離する熱交換部20と、分離した液体をさらに油分と水分に分離する油水分離部21と、分離した気体を脱臭する脱臭装置22と、排水濾過部23とからなる。
【0042】
ガス濾過部19はサイクロン式とし、遠心力及びフィルターにより排ガスを濾過して、濾過した排ガスを気体状態で熱交換部20に導入し、残渣を外部に排出している。フィルターは例えば活性炭、酸化鉄、ステンレスウール、消石灰などからなり、塩素、硫黄、タール分などの油における不純物を残渣不純物として除去している。
【0043】
熱交換部20は濾過した排ガス(気体状態)が導入され、この排ガスを熱交換により冷却して、油分と水分とからなる液体(油水混合液)と残渣気体(不凝縮ガス)とに分離している。熱交換部20は油水混合液を油水分離部21に供給して、不凝縮ガスを脱臭装置22に導入している。熱交換した水(温水)は冷却部20aにより冷却されて再利用される。
【0044】
油水分離部21は油水混合液を油分と水分とに分離している。分離した油分の一部は高純度の重油(所謂「A重油」)相当の有用物として再利用可能としている。また、分離した水分は排水濾過部23により濾過して外部に排水として排出している。
【0045】
脱臭装置22は水を用いて不凝縮ガスを脱臭して、外部に無害排ガスとして排出し、用いた水は排水濾過部23により濾過して排水としている。
【符号の説明】
【0046】
2…ボイラ、3…過熱水蒸気発生部、3a…パイプヒータ、4…処理部、5…処理槽、7…排気路、8…蒸気還流部、9…固体排出部、11…供給路、12…還流路、13…エジェクタ、15…搬送部、19…ガス濾過部。
図1
図2
図3
図4
図5