(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】可変誘電率ベースド装置
(51)【国際特許分類】
H01P 5/12 20060101AFI20220331BHJP
H01P 1/203 20060101ALI20220331BHJP
H01P 5/18 20060101ALI20220331BHJP
H01P 5/22 20060101ALI20220331BHJP
H01P 1/22 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
H01P5/12 A
H01P1/203
H01P5/18 J
H01P5/22 B
H01P1/22
(21)【出願番号】P 2019511935
(86)(22)【出願日】2017-07-17
(86)【国際出願番号】 US2017042450
(87)【国際公開番号】W WO2018044404
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-06-25
(32)【優先日】2016-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518321174
【氏名又は名称】ウェハー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】WAFER LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】デディ デビッド ハジーザ
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-538565(JP,A)
【文献】特開2002-124807(JP,A)
【文献】特開2003-017912(JP,A)
【文献】特開平06-268409(JP,A)
【文献】特開2005-236391(JP,A)
【文献】特開2002-217615(JP,A)
【文献】特開昭60-070802(JP,A)
【文献】特開2010-098500(JP,A)
【文献】特開平11-097952(JP,A)
【文献】特開平03-219714(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0022029(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0091500(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0001548(US,A1)
【文献】米国特許第05117202(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/12
H01P 1/203
H01P 5/18
H01P 5/22
H01P 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変特性を有する
可変パワースプリッタであって、
電気的な絶縁性を有する誘電体パネルと、
バックパネルと、
電導性共通プレートと、
前記誘電体パネル上に設けられた
電導性入力線と、
前記
電導性入力線の下の定義されたエリアに設けられた可変誘電体ゾーンであって、前記バックパネルと前記誘電体パネルとの間に挟まれておりかつ電源に接続された電極を有する可変誘電率(VDC、variable dielectric constant)物質を備える可変誘電体ゾーンと、
前記電導性入力線と2つの出力線に接触する拡張結合器であって、それぞれの出力線は、前記拡張結合器を介して前記入力線に結合する、拡張結合器と、
を備える、
可変パワースプリッタ。
【請求項2】
請求項1に記載の前記可変パワースプリッタであって、前記2つの出力線の一方の下に設けられた第2の可変誘電体ゾーンと、前記2つの出力線の他方の下に設けられた第3の可変誘電体ゾーンとをさらに備える、可変パワースプリッタ。
【請求項3】
可変特性を有する
可変フィルタであって、
電気的な絶縁性を有する誘電体パネルと、
バックパネルと、
電導性共通プレートと、
前記誘電体パネル上に設けられた
電導性入力線と、
前記
電導性入力線の下の定義されたエリアに設けられた可変誘電体ゾーンであって、前記バックパネルと前記誘電体パネルとの間に挟まれておりかつ電源に接続された電極を有する可変誘電率(VDC、variable dielectric constant)物質を備える可変誘電体ゾーンと
、
前記誘電体パネルの上に設けられた
複数の出力線
であって、前記
複数の出力線は前記入力線への抵抗接点を有しておらず、
それぞれが前記
複数の出力線の間のエリアに設けられた
複数の可変誘導体ゾーンをさらに含
み、前記出力線のそれぞれはさらにタップを含む、
複数の出力線と、
を備える、可変フィルタ。
【請求項4】
請求項
3に記載の前記可変フィルタであって、第2の複数の可変誘電体ゾーンをさらに備え、前記第2の複数の可変誘電体ゾーンの各々は前記複数の出力線のうちの1つの下に設けられている、可変フィルタ。
【請求項5】
可変減衰器
であって、
電気的な絶縁性を有する誘電体パネルと、
バックパネルと、
電導性共通プレートと、
前記誘電体パネル上に設けられた導線と、
定義されたエリアに設けられた可変誘電体ゾーンであって、前記バックパネルと前記誘電体パネルとの間に挟まれた可変誘電率(VDC、variable dielectric constant)物質を備える可変誘電体ゾーンと、
前記導線と抵抗接点を有している
2つの減衰パッチ
と、
を備え、
前記定義されたエリアは前記
2つの減衰パッチの下にある、
可変減衰器。
【請求項6】
単一ポート可変負荷
であって、
電気的な絶縁性を有する誘電体パネルと、
バックパネルと、
電導性共通プレートと、
前記誘電体パネル上に設けられた導線と、
定義されたエリアに設けられた可変誘電体ゾーンであって、前記バックパネルと前記誘電体パネルとの間に挟まれておりかつ電源に接続された電極を有する可変誘電率(VDC、variable dielectric constant)物質を備える可変誘電体ゾーンと、
前記導線と抵抗接点を有する蓄電器プレート
と、
を備え、
前記定義されたエリアは前記蓄電器プレートの下にある、
単一ポート可変負荷。
【請求項7】
スプリッタであって、
電気的な絶縁性を有する誘電体パネルと、
バックパネルと、
電導性共通プレートと、
前記誘電体パネルの上に設けられており第1の入力ポートと第1の出力ポートとを有する本線と、
前記誘電体パネルの上に設けられており第2の出力ポートを有する結合線であって、前記本線と離されておりかつ前記本線と平行な配向に位置付けられている、結合線と
前記本線と前記結合線との間の定義されたエリアに設けられた可変誘電体ゾーンであって、前記バックパネルと前記誘電体パネルとの間に挟まれておりかつ電源に接続された電極を有する可変誘電率(VDC、variable dielectric constant)物質を備える可変誘電体ゾーンと、を備える、スプリッタ。
【請求項8】
請求項
7に記載のスプリッタにおいて、前記結合線は第2の入力ポートをさらに備える、スプリッタ。
【請求項9】
請求項
8に記載のスプリッタにおいて、前記本線及び前記結合線のうちの1つの下の定義されたエリア内に設けられ
かつ前記電源に接続された電極を有する第2の可変誘電体ゾーンをさらに備える、スプリッタ。
【請求項10】
請求項
8に記載のスプリッタにおいて、前記本線の下の定義されたエリア内に設けられ
かつ前記電源に接続された電極を有する第2の可変誘電体ゾーンと、前記結合線の下の定義されたエリア内に設けられ
かつ前記電源に接続された電極を有する第3の可変誘電体ゾーンとをさらに備える、スプリッタ。
【請求項11】
請求項
8に記載のスプリッタにおいて、一方の端において前記本線との抵抗接点を有しておりかつ別の端において前記結合線との抵抗接点を有しているブリッジ線をさらに備える、スプリッタ。
【請求項12】
請求項
11に記載のスプリッタにおいて、前記ブリッジ線の下の定義されたエリア内に設けられた第4の可変誘電体ゾーンをさらに備える、スプリッタ。
【請求項13】
可変フィルタであって、
電気的な絶縁性を有する誘電体パネルと、
バックパネルと、
電導性共通プレートと、
前記誘電体パネルの上に設けられた入力線と、
前記誘電体パネルの上に設けられており、
前記入力線への抵抗接点を有しておらず、前記入力線と離されておりかつ前記入力線と平行な配向に位置付けられている少なくとも1つの結合線であって、該結合線は出力タップを有する、結合線と、
前記入力線と前記結合線との間の定義されたエリアに設けられた可変誘電体ゾーンであって、前記バックパネルと前記誘電体パネルとの間に挟まれておりかつ電源に接続された電極を有する可変誘電率(VDC、variable dielectric constant)物質を備える可変誘電体ゾーンと、を備える、可変フィルタ。
【請求項14】
請求項
13に記載の可変フィルタにおいて、前記入力線の下の定義されたエリアに設けられ
かつ前記電源に接続された電極を有する第2の可変誘電体ゾーンをさらに備える、可変フィルタ。
【請求項15】
請求項
13に記載の可変フィルタにおいて、前記結合線の下の定義されたエリアに設けられ
かつ前記電源に接続された電極を有する第2の可変誘電体ゾーンをさらに備える、可変フィルタ。
【請求項16】
4ポートハイブリッドカプラであって、
電気的な絶縁性を有する誘電体パネルと、
バックパネルと、
電導性共通プレートと、
前記誘電体パネルの上に設けられた入力線と、
前記誘電体パネルの上に設けられており第1の入力ポートと第1の出力ポートとを有する本線と、
前記誘電体パネルの上に設けられており第2の出力ポートを有する結合線であって、前記本線と離されておりかつ前記本線と平行な配向に位置付けられている、結合線と
一方の端において前記本線との抵抗接点を有しておりかつ別の端において前記結合線との抵抗接点を有している第1のブリッジ線と、
一方の端において前記本線との抵抗接点を有しておりかつ別の端において前記結合線との抵抗接点を有している第2のブリッジ線と、
前記本線及び前記結合線の下の定義されたエリアに各々設けられた複数の可変誘電体ゾーンであって、前記バックパネルと前記誘電体パネルとの間に挟まれておりかつ電源に接続された電極を有する可変誘電率(VDC、variable dielectric constant)物質を備える可変誘電体ゾーンと、を備える、
4ポートハイブリッドカプラ。
【請求項17】
請求項
16に記載の
4ポートハイブリッドカプラにおいて、
前記第1のブリッジ線及び前記第2のブリッジ線の下の定義されたエリアに各々設けられた第2の複数の可変誘電体ゾーンをさらに備える、
4ポートハイブリッドカプラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 技術分野
本発明は一般的には、電気的特性が可変とされるユニークな電磁的コンポーネントに関する。コンポーネントは、放射型及び非放射型の電磁的装置のために用いられ得る。また、本発明の実施形態は、液晶ディスプレイ(LCD)上に設けられた素子を有する電気的装置(electrical device)にも関するのであり、LCDの動作が電気的装置の特性に変化をもたらすものとされる。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本願は、米国仮特許出願第62/382,506号(出願日:2016年9月1日)及び米国特許出願第15/421,388号(出願日:2017年1月31日)の優先権の利益を主張するのであり、それらの開示内容の全体が参照によって取り込まれる。
【0003】
2. 関連技術
電気的信号及び電磁放射を受信・送信・操作するための装置/コンポーネントは幾つもあり、技術分野において知られている。フィード又は伝送線路又はネットワークは、信号を放射アンテナとトランシーバとの間で搬送する。もっとも、フィードネットワークは異なるタイプの伝送線路、ベンヅ(bends)、パワースプリッタ、フィルタ、ポート、位相シフタ、周波数シフタ、減衰器、結合器、蓄電器、誘導子、ダイプレクサ、ビームフォーミングネットワークのハイブリッド等を備え得るのであり、また、放射素子をも含み得る。同様の構成は、無線的に送信をなさない例えばテレビ番組の場合の同軸送信等においても用いられていることができる。これらの素子は、静的なもの又は可変なものとされ得る。例えば、蓄電器は、所与の即ち静的な容量を設定されていることができるか、又は、例えば蓄電器のプレート間離隔を機械的に変化させることによって可変とされていることができる。他の装置、例えば伝送線路等については、それらの電気的特性(例えば、抵抗値やインピーダンス等)が不変とされるという意味で静的なものとされる。
【0004】
開示の装置は汎用的であり、幾つもの用途に供され得るものであるも、次の特定の用途に関して該装置は多大な利益をもたらし得る:即ち、複数の周波数において稼働するモバイル機器における信号の送信用途。このような機器では、スイッチやフィルタを含む精緻なネットワークを用いて、幾つかのトランシーバ(transceiver)のうちの1つをアンテナに結合する。このようなネットワークは機器のコスト増大をもたらし、信号減衰をもたらす損失に繋がり、その結果、送信機(transmitter)の出力増加を要することとなり、電池電力がより多く消費されることとなる。
【0005】
マイクロストリップアンテナ(プリントアンテナともいう。)には数種類あり、最もありふれたものがマイクロストリップパッチアンテナ(単にパッチアンテナともいう。)である。パッチアンテナとは、狭帯域ワイドビームアンテナであり、アンテナ素子パターンを金属トレースにエッチングして絶縁性基板にボンディングすることによって製造される。一部のパッチアンテナでは基板を省いて、誘電体スペーサを用いて接地板(GP)上空に金属パッチを懸架するのであり、その結果得られる構造の堅牢性は減じられているもより良好な帯域がもたらされる。このようなアンテナは極低プロファイルであり、機械的に頑丈であり、可撓性を有するため、航空機や宇宙船の外部に搭載されることも多く、又は、モバイル無線通信機器に組み込まれたりもする。
【0006】
パッチアンテナに固有な利点としては、偏波ダイバーシティをもたらし得ることが挙げられる。複数のフィードポイントを用いて又は非対称パッチ構造を伴う単一フィードポイントを用いることによって、次の偏波を扱えるようにパッチアンテナを設計することが容易にできる:垂直偏波、水平偏波、右旋円偏波(RHCP、Right Hand Circular)、左旋円偏波(LHCP、Left Hand Circular)。当該特性故に、様々な要求を伴う色々な種類の通信リンクにおいて、パッチアンテナを用いることできる。
【0007】
図1は、先行技術に関連するマイクロストリップアンテナについての例を示す。
図1に図示のように、4つの導体パッチ105~120が、絶縁基板130上に配されている。ベースの“共通的”接地導体が、誘電体130の下に配されているもこれは
図1においては不図示である。導線105’~120’は本線140への電気的接続をもたらしそれは中央フィード線145へと接続されている。
【0008】
液晶ディスプレイ(一般的にはLCDという。)は、薄型でありフラットな表示装置であり、任意の個数のカラー型かモノクローム型画素を備えており、これらは光源又はリフレクタの前に配列されている。LCDの各画素は、2つの透明電極と2つの偏光フィルタとの間にアラインされた垂直分子のレイヤを、有しており、その偏光軸は互いに直交している。液晶材料は、液晶分子が特定の方向に整列するように処理されている。典型的には、この処理は、布を用いて単一方向に薄型ポリマー層を擦ることを伴う(液晶の整列方向は、擦る動作の方向によって規定される。)。
【0009】
電場を印加する前に、液晶分子の配向は、諸々の表面におけるアラインメントによって決せられる。(最もありふれた液晶装置たる)捻りネマチック(TN、twisted nematic)型装置では、2つの電極における表面アラインメント方向は直交であり、故に分子は自らを螺旋状構造或いはツイスト構造へと配列する。液晶材料が複屈折性を有する故に、片方の偏光フィルタを通過していく光は、液晶レイヤを通っていくに際して液晶螺旋によって回転されるのであり、第2の偏光フィルタを通過することが許される。第1の偏光フィルタによって光の半分が吸収されるも、それ以外の点においてはアセンブリ全体としては透明である。
【0010】
電極間で電圧が印加されると、液晶分子を電場と平行にさせようとするトルクが作用するのであり、螺旋構造が歪曲される(なお、分子は表面においては拘束されている故に、該事象は弾性力の抵抗を受ける。)。これによって入射光の偏光回転度合いは減じられ、装置は見かけ上の暗さを増す。印加された電圧が十分に大きい場合、液晶分子の捻りは完全に解かれ、液晶レイヤを通過していく際に入射光の偏光が全く回転されていないものとなる。この光は第2のフィルタに対して直角に偏光されていることになり、故に完全に遮蔽されることになり、画素は見かけ上ブラックとなる。各画素の液晶レイヤにわたって印加される電圧を制御することによって異なる量の光を透過させることができ、それに対応して画素が灯る。
【0011】
図2は先行技術に関連するLCDの断面図を示す。
図2に示すように、LCD200は次のものを含む:ガラスで構成され得るバックパネル205、これまたガラスで構成され得るフロントパネル210、両パネル間に配置された液晶部215、インジウム/チタニウム/酸化物(ITO、indium/titanium/oxide)やアルミニウム等で構成され得る背後電極220、電位源230に結合されており一般的にITOで構成された前面電極225。電位源230は、各電極225に個別的に印加されていることができる。電極225に電位が印加されると、その下にある液晶が配向を変えるのであり、それによって、印加中の電極と前面電極の領域に対応する背後電極の部分との間の局所的誘電率が変わる。
【発明の概要】
【0012】
以下の発明の概要に関する記載は、本発明の幾つかの側面及び特徴について基礎的理解をもたらすために提供される。この概要は本発明についての広範な概論ではなく、故に、本発明の主要な又は枢要な要素を具体的に特定することを意図しているわけではなく、また、本発明の範疇を確定することを意図しているわけでもない。該部分の専らの目的は、本発明の一部の概念を簡略化した形態で提示することであり、後述のより詳細な説明に対しての序論として提示することである。
【0013】
発明の幾つかの側面によれば、電子機器又はコンポーネントが提供されるのであり、それらは、機器に関連付けられている可変誘電率セクタに印加される電位に基づいて可変とされる電気的特性又は稼働態様を有するものである。
【0014】
発明の幾つか側面によれば、電子機器又はコンポーネントはベンヅ(bends)、パワースプリッタ、フィルタ、ポート、位相シフタ、周波数シフタ、減衰器、結合器、蓄電器、誘導子、ダイプレクサ、ビームフォーミングネットワークのハイブリッド等を含み得るのであり、また、放射素子をも含み得る。
【0015】
発明の幾つかの側面によれば、電子機器又は装置のキャパシタンス、アドミッタンス、及び/又はインピーダンスは、可変とされる。
【0016】
発明の幾つかの側面によれば、可変電気的特性は機器/コンポーネントに関して可変稼働態様を可能とするのであり、例えば次のことが可能となる:可変位相シフティング、可変パワー配分、可変フィルタ操作、可変周波数、可変マッチ、可変結合パワー、可変振幅、可変減衰等。
【0017】
発明の幾つかの側面によれば、ソフトウェア定義型の電気的コンポーネントが提供されるのであり、それらの電気的特性は可変とされ、ソフトウェアプログラムを用いて変更可能とされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付の図面は、本明細書と統合されまた本明細書の一部を構成するのであり、本発明の実施形態を例示するのであり、詳細な説明と共に本発明の原理を説明及び例示する。図面は、例示的実施形態の主要な特徴を図式的に例示することを意図している。図面は実際の実施形態の全要素を描写しようとしてはおらず、また、図示の要素の相対的寸法は縮尺通りに描写されているとは限らない。
【0019】
【
図1】先行技術に関連するマイクロストリップアンテナの例について示す概略図である。
【
図2】先行技術に関連するLCDの断面図を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施形態によるパワースプリッタを示す概略図である。
【
図4】1つの実施形態による可変フィルタの構築例について示す概略図である。
【
図5】本発明の1つの実施形態によるハイブリッドスプリッタについて示す概略図である。
【
図6】本発明の1つの実施形態による3ポート可変結合器について示す概略図である。
【
図7】本発明の1つの実施形態による4ポートハイブリッドスプリッタについて示す概略図である。
【
図8】本発明の1つの実施形態による位相シフタ素子について示す概略図である。
【
図9】本発明の1つの実施形態による減衰器素子について示す概略図である。
【
図10】本発明の1つの実施形態による非共鳴キャパシティブ負荷(non-resonant capacitive load)素子について示す概略図である。
【
図11】
図11Aは、先行技術に関連する複数固定フィルタ構成について示す概略図である。
図11Bは、
図11Aの構成を代替するものとしての、本発明の1つの実施形態による単一可変フィルタについて示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に関する様々な実施形態は一般に次の事項を対象としている:可変誘電体構造上に設けられた電子機器(electronic device)又はコンポーネントの構造に関する事項、並びに、コンポーネントの稼働特性に関して可変的制御を及ぼすことに関する事項。様々な実施形態についての説明の文脈においては、LCDが可変誘電体構造となっておりそれによって説明の簡略化が図られているが、他の可変誘電体素子を用いても良い。例えば、LCDを、発明に係る電子機器又はコンポーネントのために用いることができるも、画像投影のために要する場合を除いてLCDに照明光源を含めることを要さない。本明細書中にて説明する様々な実施形態は、例えば、静止型の及び/又はモバイル型のプラットフォームとの関連で用いられ得る。勿論のことではあるが、本明細書中にて説明する様々な電子機器又はコンポーネントは、本明細書にて具体的に述べられていない他の用途を有していることもできる。発明に係る電子機器又はコンポーネントが特に有用たり得る様々な用途としては次のものが挙げられる:スマートフォン、パッド類、ラップトップ機等。様々な手法は、双方向通信及び/又は受信専用用途にも使用され得る。
【0021】
本発明の様々な側面に関する説明は、異なる実施形態を参照しつつなされる。特定の実施形態についての各説明は、特定の特徴を強調するものたり得る。もっとも、説明される特徴が他の実施形態にも統合されることもあり得ることに留意されたいのであり、これらの特徴に関しての異なる組み合わせを組み立てて更なる実施形態を形成することも可能であることに留意されたい。
【0022】
図3は、発明の実施形態によるパワースプリッタ300についての例を示す。パワースプリッタ300は、入力ポート310を有する電導性入力線305と、随意的な拡張結合器315と、第1の出力ポート325及び第2の出力ポート335を有するスプリッタ電導性ライン320とを含むのであり、全ては絶縁基板350上に設けられている。電導性入力線305、拡張結合器315、及びスプリッタ電導性ライン320は全て電導性材料(例えば、銅やアルミニウム等)のストリップとされ得る。1つの実施形態で基板350はLCDとされ、他の実施形態でそれは絶縁基板であって可変誘電率領域317,323,327を有しアドレス可能電極を有する絶縁基板とされる。
【0023】
この構成を用いて、入力ポート310でのパワー入力はスプレッダ線320内へと分割され、幾らかのパワーが第1の出力ポート325にて出力され、残余のパワーは第2の出力ポート335にて出力される。該構成の通常の非励起状態では、(対称的物理構造を想定すれば)パワー分割は50:50であり、パワーの半分は第1の出力ポート325にて出力され、パワーの半分は第2の出力ポート335にて出力されるのであり、第1及び第2の出力ポートにおけるパワー出力は同相である。もっとも、可変誘電体素子317,323及び/又は327に電位が印加されると、パワー出力及びパワー分割を変化させることができる。即ち、材料317,323及び/又は327の誘電率を個別に変化させることによって、対応する素子のインピーダンスを変化させることができる。
【0024】
より具体的には、位相Φは、
Φ=2πd/λg
と表すことができ、ここで、λgは当該物質即ち電導性ライン(conductive line)における波長であり、dは伝播ライン(propagation line)の長さである。他方で、λgは、
λg=λo/√εeff
と表すことができ、ここで、λoは空中における波長であり、εeffはεr、ライン幅、及びマイクロストリップラインの他の物理的パラメータの関数としての実効誘電率であり、εrは伝播路物質の誘電率である。その場合、位相は、
Φ=2πd√εeff/λo
として表すことができる。
したがって、対応する各々の電導性ライン315及び320下の可変誘電体物質317,323及び/又は327のある区間の誘電率を個別に制御することによって、ライン内における信号伝播を変化させることができる。また、制御される可変誘電体物質の区間の長さdを用いて、位相を制御することもできる。即ち、可変誘電体物質317,323及び/又は327の各々は単一のアドレス可能な電極を有することができ、可変誘電体物質317,323及び/又は327の全領域が同じ印加電位差に服することとなる。反対に、可変誘電体物質317,323及び/又は327の各々は画素として配列された複数の電極を有することができ、各々は別個にアドレシングされ、どの画素がアドレシングされているかによって可変誘電体物質のある区間だけが印加電位差に服することとなる。このような態様にて装置はソフトウェア制御されているといえる。なぜならば、ソフトウェアを用いて異なる画素をアドレシングすることができるのであり、それによって電気的コンポーネントの挙動を変更することができる。
【0025】
例えば、素子315は、アテニュエータとしての役割を果たすことができる。可変誘電体セクション317に何ら電位が印加されていない場合、供給されたパワーの全ては導体320内へと伝播していく。他方で、可変誘電体317に電位が印加されている場合、素子315の実効インダクタンスが変化し、減衰器315がパワーの幾分かを反射することができ、パワーの全てが導体320に届けられないようなるのであり、即ち合計出力パワー(total output power)が減衰される。同様に、可変誘電体セクション323に電位が印加された場合、幾分かのパワーがそれによって反射されることができ、第1の出力ポート325からの出力が減るのであり、第1及び第2の出力ポート間でのパワー分割が可変となるのであり、一方の出力ポートが他方の出力ポートよりも多くのパワーをもらうことになる。これらの場合の各々において、反射されるパワー量は、可変誘電体の電極に印加される電圧及び可変誘電体の実効サイズに依存する。可変誘電体の実効サイズは、可変誘電体を制御する画素をより多くアドレシングするかより少なくアドレシングすることによって、変化させることができる。
【0026】
図3Aは、
図3の実施形態のスプレッダ線320の断面図を示す。この実施形態では、LCD、又は、信号線を用いて制御できる可変誘電率を有する任意の他の物質を用いて、誘電率を制御する。
図3Aでは、スプレッダ線320が絶縁層330上に設けられており、該層はガラスパネル、レジン、空気等とすることができる。可変誘電体素子323、327は絶縁層330内に設けられており、それぞれはスプレッダ線320の各々のセクション上に設けられている。液晶は、スプレッダ線320の各セクション上の1つ以上のゾーン内に設けられることできる。可変誘電体素子323,327の各々は、それぞれのアクティベーション信号線306,308に結合されている。信号線306,308のどれかの電位が変化すると、対応する可変誘電体素子323,327の誘電率が変化するのであり、それによってスプレッダ線320の対応するセクション内における位相変化が惹起される。位相変化を律することは、透明電極信号線306,308に印加される電圧の量を選択すること即ちε
rを制御することによってでき、また、電圧が印加される誘電体素子の個数を制御すること即ちdの実効長を制御することによってできる。
【0027】
本発明は、LCDを使用する場合に限定されないことに留意されたい。即ち、制御可能な可変誘電率をもたらす任意の物質を用い得る。例えば、液晶の代わりに任意の強誘電体物質を用い得る。本稿における実施形態はLCDを用いている。なぜならば、LCD技術は成熟しており、容易に利用可能となっており、本発明の実施がそれだけ魅力的且つ容易なものとなる。
【0028】
図4は、1つの実施形態による可変フィルタの構造について示す。この特定の例では4素子フィルタが示されており、これは4レベルフィルタと称する場合もある。勿論のことではあるが、素子の個数又はレベル数を変更して所望の実装例に合致させることができる。
図4では、4つの導線405,410,415,420が誘電体プレート450上に形成されている。入力402が導線405の一方の側に接続され、また、出力422が電導線420の一方の側に接続される。入力402及び出力422は、例えば同軸コネクタやSMA(サブミニチュアバージョンA)コネクタ等の標準的なコネクタたり得る。また、各線405,410,415の末端においてタップTを設けることもでき、また、各タップは入力及び出力402,422と同じコネクタを有していることができる。このような構成では、フィルタは本質的には1つの入力と4つの出力を有しているのであり、各出力は異なる周波数及び/又は位相にチューニングされることができる。
【0029】
一般に、各導線405,410,415,420のインダクタンスは、付記事項401,411,416,421で各々示されているように、キャパシタ及び誘導子の直列接続としてモデリングされることができる。制御可能な可変誘電率(VDC、variable dielectric constant)を有する領域又はゾーンを各導線下に設けるのであり、VDC403がライン405下に設けられ、VDC406が導線410下に設けられ、VDC413が導線415下に設けられ、VDC423が導線420下に設けられる。各VDCは、単一の電極を有するか集団的に若しくは個別的にアドレシングされる複数の電極を有することができ、それによって電位差を印加でき、VDCの実効誘電率を変化させることができる。1つの導線下に設けられているVDCの実効誘電率を変化させることによって、ラインの実効インダクタンスが変わる。ラインのインダクタンス変化は、ライン上を伝播する信号の帯域に変化をもたらす。この実施形態では各導線はその下にVDCゾーンを有している故に各ラインの帯域は可変であり、したがって、このフィルタは可変帯域フィルタということになる。また、全てのライン下のVDCがバイアスされている場合、フィルタの周波数中心が変わることになる。ソフトウェアを用いて電圧を印加してVDCの様々な電極をアドレシングできる故に、フィルタはソフトウェア制御型である。即ち、VDCに様々な電位を印加するためにソフトウェアを用いて帯域及び周波数中心を制御できる。
【0030】
図4のフィルタにおいては、信号は、一方のラインから次のラインへと伝播するのであり、該伝播はライン間の容量結合を介して生じる。例えば、ライン405のセクションは、ライン410のセクションと平行に配置され、それによって両者間でキャパシタが構成される。信号がライン405上を伝播するに際して、それは容量的態様でライン410に結合し、ライン410上で伝播し始める。同様のことは他のラインにも妥当する。結合の効率は、重複しているラインセクションの量及びこれらの重複ラインの実効間隔に依存する。実効間隔は、ライン間の距離及びライン間の誘電率に関連する。この実施形態では、ライン間の誘電率はVDCのゾーンによって制御されるのであり、VDC404はライン405及び410間の結合を制御し、VDC414はライン410及び415間の結合を制御し、VDC424はライン415及び420間の結合を制御するのであり、これらは付記事項407,417,427で各々例示されている。VDC404,414,424の任意のものに対して印加される電位を変化させることによって、フィルタのバンドパス及び拒絶勾配を変えること及び制御することができる。したがって、フィルタ400のフィルタリング特性をソフトウェア制御に服させることができる。即ち、種々のVDCに印加される電位を制御するソフトウェアを用いることによって、フィルタ400の動作を制御できる。
【0031】
フィルタ400のまた別の動作特性としては、その中心周波数が挙げられる。静的なフィルタでは、中心周波数は一定である。もっとも、
図4の構成では、ラインの下及びライン間のVDC全てに電位を一斉に印加することによって、中心周波数を変えることができる。したがって、フィルタ400のVDC上での電位を適切に制御することによって、その中心周波数、その帯域、そのバンドパス、及びその拒絶勾配を制御できる。
【0032】
パワー分割器(パワースプリッタともいう。逆方向に用いられる場合にはパワーコンバイナという。)及び方向性結合器はパッシブな装置であり、主に無線技術の分野において用いられる。これらのものは伝送線内の電磁力の規定量をポートへと結合するのであり、別の回路にて信号を使用できるようにする。2つのポート間でパワーを等分に分割するように設計された方向性結合器は、ハイブリッドカプラと称される。最もありふれた形式の方向性結合器は、結合された伝送線の組である。これは、同軸及びプラナー技術(ストリップライン及びマイクロストリップ)等を含む幾つかの技術を用いて実現することができる。ストリップラインとしての実装例が
図5に示されており、四分の一波長(λ/4)方向性結合器の場合である。結合されたラインの電力は本線の電力とは逆の方向に流れるのであり、それ故にこの結合器は時には逆向きカプラとも称される。本線はポート1及び2の間の区間であり、結合線はポート3及び4の間の区間である。
【0033】
図5の実施形態では、本線505及び結合線520は、誘電体プレート550上に形成されている。本線505及び結合線520は、例えば誘電体プレート上のマイクロストリップであったりRogers(FR-4型プリント基板)上のプリント導体等であったりすることができる。
図5の実施形態ではポートに関して次のとおりである:ポート1は本線の入力であり、ポート2は本線の出力であり、ポート3及び4はそれぞれ結合線の入力及び出力である。通常であれば、ポート2における出力はポート1における入力と同相であり、他方でポート4における出力はポート1における入力から位相が90°ずれている。
【0034】
図5の結合器を可変とするために、誘電体プレート550の下にVDCゾーン515を設けるのであり、また、これを本線505と結合線520との間に配置する。VDCゾーン515の電極に電位を印加することによって、結合線上の位相シフトを制御できる。また、随的には、本線及び結合線の下に追加的VDCゾーン503,507,523,527を設けて各ポートにおける位相シフトをさらに制御することができる。例えば、VDCゾーン507における電位を変更することによって、ポート2のインダクタンスが変化し、本線と結合線との間の出力比を変えられるようになる。
【0035】
図5の付記事項に示されているように、本線及び結合線を誘電体プレート550の上に配置することができる。反対に、本線及び結合線を重ねて形成することができ、その間に誘電体プレート550とVDCゾーン515とボトム誘電体プレート555が配されることができる。
【0036】
図6は、可変3ポートカプラについての実施形態について例示する。先述と同様、全ての金属ラインは誘電体プレートの上に形成されており、VDCは誘電体プレートの下に設けられている。もっとも、明確性及び簡潔性のために、種々の実施形態についての説明は以後誘電体プレートについて図示も参照もせずになされることに留意されたい。本線605は入力ポート1及び出力ポート2を有しており位相変化を伴わない。結合線620は出力ポート3を有しており、本線605上を伝播している信号との関係では可変位相がもたらされる。結合線620上の信号の位相は、VDCゾーン615に印加される電位によって制御される。
【0037】
図7は4ポートハイブリッドカプラについての別の実施形態について例示する。VDCを何ら伴わないのに合わせてポート1における信号入力は、位相変化なくしてのポート2への出力と、90°の位相変化を伴ってのポート3への出力とに分割される。同様に、ポート4への信号入力は、位相変化なくしてのポート3への出力と、90°の位相変化を伴ってのポート2への出力とに分割される。これが
図7に示されている表によって示されている。もっとも、
図7の実施形態では、VDCについての幾つかの随意的配置が示されており、ハイブリッドカプラ700の動作態様について望まれる制御性に応じて、それら配置の全部又は一部を実施できる。
【0038】
例えば、VDC703が入力ポート1のライン下において設けられている。VDC703の電極に電位を印加することによって、入力信号の位相を制御することができる。その結果、出力ポート2及び3における位相は一緒に変わることになるのであり、VDC703における電位に基づいて当該変化が生じる。即ち、出力2における位相が、入力ポート1における入力信号の位相と異なり得るのである。他方で、出力2における位相は、VDC707での電位によって独立的に変更することができる。したがって、出力ポート3における位相は入力ポート1における入力との関係では90°となっているが、出力ポート2における位相はゼロとは異なるものとなっているのであり、これはVDC707に印加される電位に依存する。追加的には、VDC727の電極に電位を印加して、ポート2とは独立的に出力ポート3の位相を変えることができる。したがって、ポート2における出力はポート1における入力と同相であり続けることができるが、ポート3における出力を、ポート1における入力との関係で90°ずらし得る。VDC723,707,727に電位を印加することによって、同じ効果を入力ポート4の入力に及ぼすことができる。また、通常であれば、ポート1における入力信号は、出力ポート2及び3の間で等しいエネルギーに分割されよう。もっとも、VDC708,728,715A,715Bにおける電位を制御することによって、各出力ポートに分配されるエネルギー量を変えることができるのであり、したがって、各ポートにおける出力の振幅を制御できる。
【0039】
本発明に関して2ポート装置に関する実施形態も開示される。例えば、
図8では、本発明の実施形態による位相シフタ素子800が例示されている。ポート1において信号が入力され、導線805上を伝播していく。通常であれば、ポート2における出力信号は入力信号との関係で一定の振幅且つ同相となっている。もっとも、
図8の表で示されているように、VDC803の電極に電位を印加していくことによって、ポート1における入力との関係でポート2における出力の位相を変えていくことができる。
【0040】
2ポート素子についての別の例が
図9に示されている。
図9は、本発明の実施形態によるアテニュエータを例示する。ポート1における入力信号が本線905上を伝播し、同相でポート2に出力がもたらされるのであるが、振幅は制御されている。具体的には、本線上に2つのアテニュエータが設けられている。アテニュエータは電導性減衰パッチ930,937で構成されており、VDC903,907上に設けられている。VDC903,907の電極に印加される電位に応じて、ポート2における信号出力の振幅を制御即ち減衰することができる。
【0041】
本発明の実施形態によれば、単一ポート装置も提供される。例えば、
図10は、本発明の実施形態による単一ポート負荷素子1000について例示する。
図10の例では、負荷は可変キャパシタの形態で与えられており、導線1005の末端にある。具体的には、本線の末端1005においてキャパシタプレートが形成され、これが本線の末端1005と電気的接触を有している。VDC1003の接地電極は補完的キャパシタプレートを形成し得るのであり、又は、VDC1003下に補完的キャパシタプレートが形成され得る。この負荷のキャパシタンスは、VDC1003の電極に電位を印加することによって変えることができる。
【0042】
図11A及び11Bは、例えば携帯電話で実装されたりするスイッチングアレイの構成を簡略化するために如何にして開示された実施形態を活用できるかを例示する。
図11Aは、先行技術によるスイッチング構成を示す。図示のように、この例では両方の構成は4つのアンテナ2を含み、Tx/Rx1~Tx/Rx4との識別子が与えられている。各アンテナは、異なる周波数で運用されるように設計されている。
図7Aに示す先行技術においては、各アンテナは専属の固定フィルタF1~F4に接続されており、各スイッチは専属のスイッチS1~S4に接続されている。そして、各々のスイッチ2つ組は単一の中間スイッチに接続されているのであり、即ち、スイッチS1及びS2を選択するには中間スイッチS5を用いることができ、また、スイッチS3及びS4を選択するには中間スイッチS6を用いることができる。スイッチS5及びS6はマスタースイッチS7に接続されている。したがって、例えば、仮にアンテナTx/Rx1が選択されるべきであるならば、スイッチS7,S5,S1が閉じられ、他のスイッチは解放状態にスイッチングされる。反対に、仮にTx/Rx3が選択されるべきであるならば、スイッチS7,S6,S3が閉じられ、他の全部のスイッチは解放状態にスイッチングされる。したがって、この構成では、4つの固定フィルタと7つのスイッチが必要となる。反対に、
図11Bの実施形態では、単一の可変フィルタが全てのアンテナTx/Rx1~Tx/Rx4に接続されている。どのアンテナが選択されているのかに応じて、可変フィルタ1140のVDCの電極に異なる電位を与えていく。可変フィルタ1140は、本明細書中に開示した教示事項、例えば
図4の実施形態、に従って構築できる。
【0043】
最後に述べるに、本明細書に開示の処理及び手法は、特定の装置に本質的に関連しているわけではなく、任意の適切なコンポーネントの組み合わせによって実装され得ることに留意されたい。また、本開示の教示事項に即して様々な種類の汎用装置を用いることができる。また、本開示にて説明した方法のステップを行うための専用装置を構築することが有利な場合もある。本発明は特定の例との関連で説明されており、あらゆる側面において限定的ではなく例示的な意図で説明がもたらされている。当業者であれば、ハードウェア、ソフトウェア及びファームウェアの様々な異なる組み合わせを用いて本発明の実施を適切になし得るということに気付くであろう。
【0044】
本発明は特定の例との関連で説明されており、あらゆる側面において限定的ではなく例示的な意図で説明がもたらされている。当業者であれば、ハードウェア、ソフトウェア及びファームウェアの様々な異なる組み合わせを用いて本発明の実施を適切になし得るということに気付くであろう。さらに、当業者が本開示の発明についての詳細な説明及び実施態様について検討することによって、本発明の別の実施態様も明らかなものとなるであろう。詳細な説明及び例は例示的なものとしてのみ考慮されることが意図されており、本発明の真の範囲及び精神は添付の特許請求の範囲によって示される。