(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】手洗器
(51)【国際特許分類】
A47K 1/02 20060101AFI20220331BHJP
E03D 9/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A47K1/02 G
E03D9/00 D
(21)【出願番号】P 2020098429
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2022-02-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】396001614
【氏名又は名称】山本 修一
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】特許業務法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 修一
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-237248(JP,A)
【文献】特開2004-229895(JP,A)
【文献】特開平10-071188(JP,A)
【文献】米国特許第6161228(US,A)
【文献】中国実用新案第211099684(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 1/02
A47K 1/00
E03D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇口を備えた流し台に取り付け可能な手洗器であって、
手洗い用の水を貯留した受水槽と、前記受水槽から水を汲み上げる足踏み式ポンプと、汲み上げた水を貯留する貯水槽と、前記足踏み式ポンプから汲み上げた水を分水するヘッダーと、を備え、
前記足踏み式ポンプには、逆流防止弁を設けてあり、
前記貯水槽は、上部に空気孔を有しており、蛇口よりも上方に取り付けられることを特徴とする手洗器。
【請求項2】
前記貯水槽は、蛇口に対向して2箇所設けることを特徴とする、請求項1に記載の手洗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時などライフラインが止まった場合であっても使用することができる手洗器に関する。
【背景技術】
【0002】
災害時、断水によって水道の使用ができなくなることが多々ある。水道の使用ができなくなることで手の洗浄が行き届かなくなり、感染症が蔓延する虞があった。このような状況の際、水の供給は水道ではなく給水タンク車から水を汲み上げたり、注いだりするため、平時のように手を洗うにはやや不便である。
そこで文献1や2のように、足踏み式ポンプを作動させて内部に設置した給水タンクから水を吐水できるような構成を有した手洗器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-013178号
【文献】公開実用昭63-151566号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら文献1や2の発明において、手を十分に洗い流すには複数回足踏み式ポンプを作動させながら、断続的に水を吐出させなければならなかった。
【0005】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、一旦貯水槽に水を貯めることで手洗いと同時に足踏み式ポンプを作動させること無く、必要時に蛇口を開けるだけで水を使うことが出来る手洗器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
蛇口を備えた流し台に取り付け可能な手洗器であって、手洗い用の水を貯留した受水槽と、前記受水槽から水を汲み上げる足踏み式ポンプと、汲み上げた水を貯留する貯水槽と、前記足踏み式ポンプから汲み上げた水を分水するヘッダーとを備え、前記足踏み式ポンプには、逆流防止弁を設けてあり、前記貯水槽は、上部に空気孔を有しており、蛇口よりも上方に取り付けられることを特徴とする。
【0007】
前記貯水槽は、蛇口に対向して2箇所設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、予め足踏み式ポンプで汲み上げ、貯水槽に溜めた水を手の洗浄水として使用するため、手洗い時に足踏み式ポンプを作動しなくとも水を蛇口から吐出させることが出来る。また、貯水槽は蛇口よりも上方に備えられているため、蛇口の開栓時に貯水槽内の水が落水する勢いで蛇口から吐水させることができ、ある程度の水圧で手の洗浄を行える。加えて、足踏み式ポンプに逆流防止弁を設けることで、ポンプ側に水が逆流し蛇口側の水圧が減少することと、蛇口からの吐水量が減少してしまうのを防ぐことができ、手の洗浄に十分な水量を確保することが可能となる。さらに、貯水槽に空気孔を設けることにより、水の流入時には空気を吐き出し、流出時には空気を取り込み、貯水槽内の空気の出入りが容易になり、水の流入をスムーズに行うことが出来る。
【0009】
請求項2の発明によれば、貯水槽を蛇口に対向して2箇所とすることにより、貯水槽が手洗器全体のバランスを保つ重石になるため、屋外での使用でも風にあおられて転倒する等の危険性を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の手洗器において、水を汲み上げる前の状態を示した概略図である。
【
図2】本発明の手洗器において、貯水槽へ水を汲み上げた状態を示した概略図である。
【
図3】本発明の手洗器において、貯水槽に貯めた水を蛇口から吐出させた状態を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下より、本発明における実施の形態について詳説する。
本発明の手洗器は、
図1に示すように、手洗いに使用する水を貯めた受水槽40と、前記受水槽40から水を汲み上げる足踏み式ポンプ20と、前記足踏み式ポンプ20から汲み上げた水を貯留する透明な容器で構成された貯水槽30とを有している。
前記貯水槽30は、流し台10に備え付けられている蛇口11よりも高くなるように枠体50へと取り付けられている。なお、本実施の形態において、貯水槽30は2Lペットボトル、枠体50はワイヤーネットを組み合わせて利用している。
【0012】
受水槽40から伸びたホース70は、足踏み式ポンプ20の吸引口22に取り付けられ、ペダル21を踏み込むことにより受水槽40内に貯留された水を汲み上げ、汲み上げられた水は、足踏み式ポンプ20の吐出口23からホース70を通じてヘッダー60へと運ばれる。この時、足踏み式ポンプ20とホース70との接続部には、ヘッダー60まで運ばれた水が足踏み式ポンプ20の方向に逆流しないよう逆流防止弁91が設けられている。
【0013】
前記ヘッダー60は、運ばれた水が3方向に分岐する構成を有している。
図2に示すように、足踏み式ポンプ20によって揚げられた水は、蛇口11のレバー12を閉栓することで蛇口11から吐水することなく、ヘッダー60内部の分岐路によって分水され蛇口11よりも高所に設けられた左右の貯水槽30、30へ、ホース70にて運ばれる。
貯水槽30には、その内部に水が流入した際、内部の空気が抜けるように貯水槽30の最上部には空気孔31が設けられており、貯水槽30内に溜まった空気によって水が流入しにくくなるのを防ぐことが出来る。また、空気孔31を貯水槽30の最上部付近に設けることにより、空気孔31の高さぎりぎりまで水を貯めることが出来る上に、空気孔31から水が漏れることで水を最大量まで貯めたことを分かりやすくすることも可能である。
【0014】
貯水槽30内に水を貯めた後、蛇口11のレバー12を回して開栓すると、貯水槽30と蛇口11の高低差によって貯水槽30内の水が落水しようとするため、ホース70とヘッダー60内に充満した水を押し出すようにして蛇口11から吐水する。(
図3参照)
この時、上述したように足踏み式ポンプ20とヘッダー60とを連結しているホース70は、足踏み式ポンプ20との接続部に逆流防止弁91を備えているため、水が足踏み式ポンプ20側へ逆流することが無い。
【0015】
本実施の形態において、貯水槽30は2Lペットボトルを2つ用いており、この大きさの貯水槽30であれば、足踏み式ポンプ20のペダル21をおおよそ30回/30秒間、上下に踏むことで、2Lペットボトル約2本分の水量を貯留することが可能である。
また、貯水槽30内に貯留した2Lペットボトル2本分の水は、蛇口11の開栓によって吐水され、その吐出能力は最大連続吐出の時間でおおよそ100秒、吐水量は3.95Lである。
【0016】
以上のように構成した手洗器であれば、予め貯水槽30に溜めた水を落水させる勢いで蛇口11から吐水させるため、従来のように手の洗浄の度にポンプを作動させる必要が無く、ポンプの作動に気を回さずとも手を十分に洗浄することができる。加えて、吐水の勢いは、蛇口11のレバー12によって通常の水道と同様に調節することが出来るため、手の洗浄に必要な分だけ吐水させることが可能となる。
また、貯水槽30は、本実施の形態のように透明な容器を使用することにより、内部に溜めた水の残量が把握し易いため、自分が使用する水量を気にすることで節水の意識を高めることが出来る。
したがって、上記のように使用する水の量を自由に、細かく調整出来て、且つ、使用した水量を分かりやすくした本発明の手洗器であれば、より水の使用を節約することができ、災害時の断水によって使用できる水の量が限られた場合であっても、効率よく計画的に水を使用することが可能となる。
【0017】
また、本発明の手洗器は、受水槽40と、足踏み式ポンプ20と、ヘッダー60と、貯水槽30、30とがそれぞれ迅速継手80およびホース70で接続され、組立および分解が容易にできるため、分解した手洗器をコンテナ等に収納することで簡単に持ち運ぶことができ、運搬先で組み立てる際も時間を取らずに設置することができる。
加えて、水道の復旧時には、ヘッダー60を取り外し、水道パイプと水栓とを直結することもできる。
【0018】
本発明の手洗器における貯水槽30は、蛇口11に対向して2箇所設けられており、貯水槽30、30の自重で手洗器全体のバランスが取れるため、屋外で使用する際であっても風にあおられて転倒する危険性が低く安全である。
【0019】
本発明の手洗器は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で適宜変更できる。例えば、貯水槽は2Lペットボトルを使用しているが、ポリ袋などの袋を用いても良い。なお、ポリ袋を使用するのであれば、空気孔を必要とせずとも内部に水を引き入れることが可能である。
また、足踏み式ポンプを揚程能力の高いものにすることにより、貯水槽の位置を高くすることでシャワーとしての使用も可能である。
【符号の説明】
【0020】
10 流し台
11 蛇口
20 足踏み式ポンプ
30 貯水槽
31 空気孔
40 受水槽
60 ヘッダー
91 逆流防止弁