(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】信号のためのフィッティングモデルを決定し、信号を再構築するための方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
G06F 17/17 20060101AFI20220331BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20220331BHJP
G06F 17/10 20060101ALI20220331BHJP
G01T 1/18 20060101ALN20220331BHJP
G01T 1/20 20060101ALN20220331BHJP
【FI】
G06F17/17
G01T1/161 C
G06F17/10 D
G01T1/18 F
G01T1/20 F
(21)【出願番号】P 2020570150
(86)(22)【出願日】2019-05-09
(86)【国際出願番号】 CN2019086237
(87)【国際公開番号】W WO2020042663
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】201810983248.2
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520481367
【氏名又は名称】レイキャン テクノロジー シーオー., エルティーディー. (スーチョウ)
【氏名又は名称原語表記】RAYCAN TECHNOLOGY CO., LTD. (SUZHOU)
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(72)【発明者】
【氏名】ス ユミン
(72)【発明者】
【氏名】メイ ジュンフア
(72)【発明者】
【氏名】ジュ クジャン
(72)【発明者】
【氏名】シェ チングオ
(72)【発明者】
【氏名】ダイ ピンピン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ハオ
【審査官】坂庭 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-221388(JP,A)
【文献】国際公開第2010/131417(WO,A1)
【文献】特開2014-102779(JP,A)
【文献】特表2014-529723(JP,A)
【文献】国際公開第2016/111240(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0216246(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/17
G06F 17/10
G01T 1/161
G01T 1/18
G01T 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号のためのフィッティングモデルを決定するための方法であって、
サンプリングされた信号を前記信号の収集された特性情報に基づいてセグメント化して複数の信号セグメントを得るステップと、
複数のフィッティングモデルを用いることによって前記複数の信号セグメントにおいてサンプリングポイントをフィッティングするステップと、
フィッティング結果に基づいて前記信号セグメントのそれぞれにおいて対象パラメータについてのフィッティング値を取得するステップと、
前記対象パラメータについての前記フィッティング値のそれぞれを、前記フィッティングモデルのそれぞれの下で、前記対象パラメータについての取得された測定値と順次比較し、比較結果に基づいて、前記複数のフィッティングモデルの中で、前記信号を再構築するための最終フィッティングモデルを決定するステップと、
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記信号が、電気信号、光信号又は音声信号を含み、
前記電気信号が、放射線検出器からの電気パルス信号を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特性情報が、信号の振幅、立ち上がりスロープ、立ち上がり時間、立ち下がりスロープ及び/又は立ち下がり時間を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のフィッティングモデルが、線形及び指数フィッティングモデル、二重指数フィッティングモデル並びにグラフフィッティングモデルの少なくとも1つのタイプを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記グラフフィッティングモデルが、サンプリング閾値に対して上部で採用される三角フィッティングモデルと、前記サンプリング閾値に対して下部で採用される線形及び指数フィッティングモデル又は二重指数フィッティングモデルと、を含み、
前記線形及び指数フィッティングモデルが、N点線形及びN点指数フィッティングモデル
又はN点線形及びNプラスM点指数フィッティングモデルを含み、
前記二重指数フィッティングモデルが、2N点二重指数フィッティングモデル
又は2NプラスM点二重指数フィッティングモデルを含み、Nが1より大きい正の整数であり、Mが1以上の正の整数であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象パラメータが、信号のエネルギー、時間、エネルギー分解能及び/又は時間分解能を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記最終フィッティングモデルを決定するステップが、フィッティングモデルのそれぞれの下での信号セグメントのそれぞれにおける対象パラメータについてのフィッティング値のそれぞれと、前記対象パラメータについての測定値と、の間の差値を順次計算し、前記差値に基づいて、前記複数のフィッティングモデルの中で、前記信号セグメントのそれぞれを再構築するための最終フィッティングモデルを決定するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記最終フィッティングモデルを決定するステップが、
前記複数のフィッティングモデルの中で、信号セグメントのそれぞれにおける対象パラメータについての絶対差値が最小であるフィッティングモデルを、前記信号セグメントのそれぞれについての最終フィッティングモデルとして決定するステップ、又は
前記複数のフィッティングモデルの中で、前記信号セグメントのそれぞれにおける対象パラメータについての差分布が最小であるフィッティングモデルを、前記信号セグメントのそれぞれについての最終フィッティングモデルとして決定するステップ
を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記信号セグメントのそれぞれと最終フィッティングモデルとの間の対応関係に従って、決定された最終フィッティングモデルを記憶するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
信号を再構築するための方法であって、
請求項1~9のいずれかに記載の方法を利用することによって、実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルを決定するステップと、
決定された最終フィッティングモデルを利用することによって、前記実際にサンプリングされた信号を再構築するステップと
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項11】
信号を再構築するための方法であって、
請求項1~9のいずれかに記載の方法を利用することによって最終フィッティングモデルが決定される参照信号と、実際にサンプリングされた信号を比較して、前記実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルを決定するステップと、
決定された最終フィッティングモデルを利用することによって、前記実際にサンプリングされた信号を再構築するステップと
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項12】
前記参照信号と前記実際にサンプリングされた信号を比較するステップが、
前記実際にサンプリングされた信号の特性情報を利用することによって、前記実際にサンプリングされた信号と同一又は類似の特性情報を有する参照信号を検索するステップと、
前記参照信号が検索された後、前記参照信号と最終フィッティングモデルとの間の対応関係に従って前記参照信号のための最終フィッティングモデルを検索し、前記参照信号のための検索された最終フィッティングモデルを、前記実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルとして決定するステップと
を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
信号フィッティングモデルを決定するための装置であって、
サンプリングされた信号を前記サンプリングされた信号の特性情報に基づいてセグメント化して複数の信号セグメントを得るように構成されたセグメント化ユニットと、
複数のフィッティングモデルを用いて前記複数の信号セグメントにおいてサンプリングポイントをフィッティングするように構成されたフィッティングユニットと、
フィッティング結果に基づいて各信号セグメントにおいて対象パラメータについてのフィッティング値を取得するように構成された取得ユニットと、
前記対象パラメータについての前記フィッティング値のそれぞれを、前記フィッティングモデルのそれぞれの下で、前記対象パラメータについての取得された測定値と順次比較し、比較結果に基づいて、前記複数のフィッティングモデルの中で、前記信号の再構築のための最終フィッティングモデルを決定するように構成された比較及び決定ユニットと、
を含むことを特徴とする、前記装置。
【請求項14】
前記比較及び決定ユニットが、前記フィッティングモデルのそれぞれの下での信号セグメントのそれぞれにおける対象パラメータについてのフィッティング値のそれぞれと、前記対象パラメータについての取得された測定値と、の間の差値を順次計算し、前記差値に基づいて、前記複数のフィッティングモデルの中で、前記信号セグメントのそれぞれを再構築するための最終フィッティングモデルを決定するように具体的に構成されていることを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記信号セグメントのそれぞれと前記最終フィッティングモデルとの間の対応関係に従って、決定された最終フィッティングモデルを記憶するように構成された記憶ユニットをさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
信号を再構築するための装置であって、
請求項1~9のいずれかに記載の方法を利用することによって、実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルを決定するように構成された決定ユニットと、
決定された最終フィッティングモデルを利用することによって、前記実際にサンプリングされた信号を再構築するように構成された再構築ユニットと
を含むことを特徴とする、前記装置。
【請求項17】
信号を再構築するための装置であって、
請求項1~9のいずれかに記載の方法を利用することによって最終フィッティングモデルが決定される参照信号と、実際にサンプリングされた信号を比較して、前記実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルを決定するように構成された比較及び決定ユニットと、
決定された最終フィッティングモデルを利用することによって、前記実際にサンプリングされた信号を再構築するように構成された再構築ユニットと、
を含むことを特徴とする、前記装置。
【請求項18】
前記比較及び決定ユニットが、実際にサンプリングされた信号の特性情報を利用することによって、前記実際にサンプリングされた信号と同一又は類似の特性情報を有する参照信号を検索して、前記参照信号が検索された後、前記参照信号と最終フィッティングモデルとの間の対応関係に従って前記参照信号のための最終フィッティングモデルを検索し、前記参照信号のための検索された最終フィッティングモデルを、前記実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルとして決定するように具体的に構成されていることを特徴とする、請求項17に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号処理の技術分野、特に信号のためのフィッティングモデルを決定し、信号を再構築するための方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションにおける説明は、本開示に関する背景情報を提供するのみであり、先行技術を構成するものではない。
【0003】
陽電子放出断層撮影(Positron Emission Tomography、略称PET)は、臨床画像診断に放射性元素を用いる技術である。この技術のプロセスは、血流に添加される、又は生体組織の代謝プロセスに参加することができる化合物に陽電子放出放射性核種を標識すること、次いで放射性核種で標識された化合物を対象に注入することを含む。対象の体内で放射性核種によって放出された陽電子は約1mm移動し、次いで対象の体内にある負の電子と結合して電子対を消滅させ、このようにガンマ光子を生じさせるが、これをシンチレーション結晶によって受けて可視光に変換することができ、これが次に再構築のために光電変換器によって電気信号に変換され、これによって放射性核種の濃縮部位を決定し、活発な代謝の領域を特定して放射性核種の活性を評価する助けとなる。
【0004】
PET又は他の関連分野において、信号を再構築するため、サンプリング後に信号のサンプリングポイントに対してフィッティング処理を実行することが必要である。先行技術において、サンプリングポイントをフィッティングするためのフィッティングモデルは、主に経験又は散布図に基づいて選択される。具体的には、各サンプリングポイントについて、
図1(a)~
図1(c)に示すように、信号の対象パラメータの測定値を横座標値とし、様々なフィッティングモデルの下でサンプリングポイントをフィッティングすることによって得られた対象パラメータのフィッティング値を縦座標値とすることによって、すべてのサンプリングポイントの様々な散布図を様々なフィッティングモデルの下で描くことができる。フィッティングモデルは、散布図における散布点間の分散度及び線形性を観察することによって選択される。
【0005】
本開示を実現するプロセスにおいて、本発明者らは、先行技術において少なくとも以下の問題を発見した。
【0006】
先行技術において、信号パラメータ及びフィッティング曲線パラメータは散布図を通して直感的に観察することができるが、散布点の分散度を測定することは困難であり、しばしば観察方法だけによって直感的な結論が得られる。結果として、後続の再構築結果が十分に正確でない可能性があり、これが信号再構築の精度に影響することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、信号のためのフィッティングモデルを決定し、信号を再構築するための方法及びその装置を提供して、信号再構築結果の正確性及び信号再構築の精度を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上の目的を達成するため、本開示の実施形態において、以下の技術的解決策が提供される。
【0009】
信号のためのフィッティングモデルを決定するための方法が、サンプリングされた信号をこの信号の収集された特性情報に基づいてセグメント化して複数の信号セグメントを得るステップと、複数のフィッティングモデルを用いることによって複数の信号セグメントにおいてサンプリングポイントをフィッティングするステップと、フィッティング結果に基づいて信号セグメントのそれぞれにおいて対象パラメータについてのフィッティング値を取得するステップと、対象パラメータについてのフィッティング値のそれぞれを、フィッティングモデルのそれぞれの下で、対象パラメータについての取得された測定値と順次比較し、比較結果に基づいて、複数のフィッティングモデルの中で、信号を再構築するための最終フィッティングモデルを決定するステップとを含む。
【0010】
好ましくは、信号は、電気信号、光信号又は音声信号を含む。電気信号は、放射線検出器からの電気パルス信号を含む。
【0011】
好ましくは、特性情報は、信号の振幅、立ち上がりスロープ、立ち上がり時間、立ち下がりスロープ及び/又は立ち下がり時間を含む。
【0012】
好ましくは、複数のフィッティングモデルは、線形指数フィッティングモデル、二重指数フィッティングモデル及びグラフフィッティングモデルの少なくとも1つを含む。
【0013】
好ましくは、グラフフィッティングモデルは、サンプリング閾値に対して上部で採用される三角フィッティングモデルと、サンプリング閾値に対して下部で採用される線形指数フィッティングモデル又は二重指数フィッティングモデルと、を含む。線形指数フィッティングモデルは、N点線形N点指数フィッティングモデル又はN点線形NプラスM点指数フィッティングモデルを含む。二重指数フィッティングモデルは、2N点二重指数フィッティングモデル又は2NプラスM点二重指数フィッティングモデルを含み、Nは1より大きい正の整数であり、Mは1以上の正の整数である。
【0014】
好ましくは、対象パラメータは、信号のエネルギー、時間、エネルギー分解能及び/又は時間分解能を含む。
【0015】
好ましくは、最終フィッティングモデルを決定するステップは、フィッティングモデルのそれぞれの下での信号セグメントのそれぞれにおける対象パラメータのフィッティング値のそれぞれと、対象パラメータについての取得された測定値と、の間の差値を順次計算し、差値に基づいて、複数のフィッティングモデルの中で、信号セグメントのそれぞれを再構築するための最終フィッティングモデルを決定するステップを含む。
【0016】
好ましくは、最終フィッティングモデルを決定するステップは、複数のフィッティングモデルの中で、信号セグメントのそれぞれについての最終フィッティングモデルとして、信号セグメントのそれぞれにおける対象パラメータについての絶対差値が最小であるフィッティングモデルを決定するステップ、又は複数のフィッティングモデルの中で、信号セグメントのそれぞれについての最終フィッティングモデルとして、信号セグメントのそれぞれにおける対象パラメータについての差分布が最小であるフィッティングモデルを決定するステップを含む。
【0017】
好ましくは、この方法は、最終フィッティングモデルと信号セグメントのそれぞれとの間の対応関係に従って最終フィッティングモデルを記憶するステップをさらに含む。
【0018】
信号を再構築するための方法が次のステップ、すなわち、上の方法を利用することによって、実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルを決定するステップと、決定された最終フィッティングモデルを利用することによって、実際にサンプリングされた信号を再構築するステップとを含む。
【0019】
信号を再構築するための方法が次のステップ、すなわち、上の方法を利用することによって最終フィッティングモデルが決定される参照信号と、実際にサンプリングされた信号を比較して、実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルを決定するステップと、決定された最終フィッティングモデルを利用することによって、実際にサンプリングされた信号を再構築するステップとを含む。
【0020】
好ましくは、参照信号と実際にサンプリングされた信号を比較するステップは、実際にサンプリングされた信号の特性情報を利用することによって、実際にサンプリングされた信号と同一又は類似の特性情報を有する参照信号を検索するステップと、参照信号が検索された後、参照信号と最終フィッティングモデルとの間の対応関係に従って参照信号のための最終フィッティングモデルを検索し、参照信号のための検索された最終フィッティングモデルを、実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルとして決定するステップとを含む。
【0021】
信号フィッティングモデルを決定するための装置が、サンプリングされた信号をこの信号の収集された特性情報に基づいてセグメント化して複数の信号セグメントを得るように構成されたセグメント化ユニットと、複数のフィッティングモデルを用いることによって複数の信号セグメントにおいてサンプリングポイントをフィッティングするように構成されたフィッティングユニットと、フィッティング結果に基づいて信号セグメントのそれぞれにおいて対象パラメータについてのフィッティング値を取得するように構成された取得ユニットと、対象パラメータについてのフィッティング値のそれぞれを、フィッティングモデルのそれぞれの下で、対象パラメータについての取得された測定値と比較し、比較結果に基づいて、複数のフィッティングモデルの中で、信号を再構築するための最終フィッティングモデルを決定するように構成された比較及び決定ユニットとを含む。
【0022】
好ましくは、比較及び決定ユニットは、フィッティングモデルのそれぞれの下での信号セグメントのそれぞれにおける対象パラメータについてのフィッティング値のそれぞれと、対象パラメータについての取得された測定値と、の間の差値を順次計算し、差値に基づいて、複数のフィッティングモデルの中で、信号セグメントのそれぞれを再構築するための最終フィッティングモデルを決定するように具体的に構成することができる。
【0023】
好ましくは、この装置は、最終フィッティングモデルと信号セグメントのそれぞれとの間の対応関係に従って最終フィッティングモデルを記憶するように構成された記憶ユニットをさらに含む。
【0024】
信号を再構築するための装置が、上の方法を利用することによって、実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルを決定するように構成された決定ユニットと、決定された最終フィッティングモデルを利用することによって、実際にサンプリングされた信号を再構築するように構成された再構築ユニットとを含む。
【0025】
信号を再構築するための装置が、上の方法を利用することによって最終フィッティングモデルが決定される参照信号と、実際にサンプリングされた信号を比較して、実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルを決定するように構成された比較及び決定ユニットと、決定された最終フィッティングモデルを利用することによって、実際にサンプリングされた信号を再構築するように構成された再構築ユニットとを含む。
【0026】
好ましくは、比較及び決定ユニットは、実際にサンプリングされた信号の特性情報を利用することによって、実際にサンプリングされた信号と同一又は類似の特性情報を有する参照信号を検索して、参照信号が検索された後、参照信号と最終フィッティングモデルとの間の対応関係に従って参照信号のための最終フィッティングモデルを検索し、参照信号のための検索された最終フィッティングモデルを、実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルとして決定するように具体的に構成されている。
【0027】
本開示の上の実施形態によって提供される技術的解決策から、サンプリングされた信号が信号の特性情報に従ってセグメント化され、複数のフィッティングモデルを用いることによって得られる信号の対象パラメータのフィッティング値が測定値と比較されるため、最終フィッティングモデルが比較結果に従って決定されることが分かる。信号の異なる特性を考慮することによって異なるフィッティングモデルを採用することによって、信号の後続のフィッティング結果がより正確になる可能性があり、したがって信号再構築結果の正確性及び信号再構築の精度を改善するための目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本開示又は先行技術の実施形態における技術的解決策をより明確に説明するため、実施形態又は先行技術の説明に用いることが要求される添付の図面を以下に簡単に紹介する。示したような図面は、本開示に記載されたようないくつかの実施形態の単なる例示であるということが明らかである。創造的な作業を伴うことなく、示したような図面に対する様々な代替案を理解することができるということが当業者によって理解されるべきである。
【
図1(a)】先行技術において4点線形及び5点指数フィッティングモデルを用いてサンプリングポイントがフィッティングされた散布図である。
【
図1(b)】先行技術において8点二重指数フィッティングモデルを用いてサンプリングポイントがフィッティングされた散布図である。
【
図1(c)】先行技術においてグラフフィッティングモデルを用いてサンプリングポイントがフィッティングされた散布図である。
【
図2】本開示の一実施形態による信号のためのフィッティングモデルを決定するための方法の概略フローチャートである。
【
図3(a)】N点線形及びN点指数フィッティングモデルを用いてサンプリングポイントをフィッティングすることによって得られたフィッティング曲線である。
【
図3(b)】N点線形及びNプラスM点指数フィッティングモデルを用いてサンプリングポイントをフィッティングすることによって得られたフィッティング曲線である。
【
図3(c)】2N点二重指数フィッティングモデルを用いてサンプリングポイントをフィッティングすることによって得られたフィッティング曲線である。
【
図3(d)】2NプラスM点二重指数フィッティングモデルを用いてサンプリングポイントをフィッティングすることによって得られたフィッティング曲線である。
【
図3(e)】下方曲線がN点線形及びNプラスM点指数フィッティングモデルによってフィッティングされた、グラフフィッティングモデルを用いてサンプリングポイントをフィッティングすることによって得られたフィッティング曲線である。
【
図3(f)】下方曲線が2N点二重指数フィッティングモデルによってフィッティングされた、グラフフィッティングモデルを用いてサンプリングポイントをフィッティングすることによって得られたフィッティング曲線である。
【
図4(a)】4点線形及び5点指数フィッティングモデルの下での電気パルス信号a及びbのエネルギー差分布のヒストグラムである。
【
図4(b)】8点二重指数フィッティングモデルの下での電気パルス信号a及びbのエネルギー差分布のヒストグラムである。
【
図4(c)】グラフフィッティングモデルの下での電気パルス信号a及びbのエネルギー差分布のヒストグラムである。
【
図5(a)】4点線形及び5点指数フィッティングモデルの下での複数の電気パルス信号のエネルギー差分布の図である。
【
図5(b)】8点二重指数フィッティングモデルの下での複数の電気パルス信号のエネルギー差分布の図である。
【
図5(c)】グラフフィッティングモデルの下での複数の電気パルス信号のエネルギー差分布の図である。
【
図6(a)】60~130Vの振幅範囲内の4点線形及び4点指数フィッティングモデルの下での複数の電気パルス信号のエネルギー差分布の図を示す。
【
図6(b)】60~130Vの振幅範囲内の4点線形及び5点指数フィッティングモデルの下での複数の電気パルス信号のエネルギー差分布の図を示す。
【
図6(c)】60~130Vの振幅範囲内の、下方曲線が9点二重指数フィッティングモデルによってフィッティングされているグラフフィッティングモデルの下での複数の電気パルス信号のエネルギー差分布の図を示す。
【
図6(d)】60~130Vの振幅範囲内の、下方曲線が8点二重指数フィッティングモデルによってフィッティングされた、グラフフィッティングモデルの下での複数の電気パルス信号のエネルギー差分布の図を示す。
【
図7】本開示の一実施形態による信号を再構築するための方法の概略フローチャートである。
【
図8】本開示におけるグラフフィッティングモデルを用いて電気パルス信号をフィッティングすることによって得られたフィッティング曲線、及び電気パルス信号の実際の測定曲線を示す。
【
図9】既存の8点二重指数フィッティングモデルを用いて電気パルス信号をフィッティングすることによって得られたフィッティング曲線、及び電気パルス信号の実際の測定曲線を示す。
【
図10】
図7における信号を再構築するための方法を用いることによって得られたフィッティング曲線を示す。
【
図11】既存の多閾値サンプリング方法を用いることによって得られたフィッティング曲線を示す。
【
図12】本開示の一実施形態による信号を再構築するための他の方法の概略フローチャートである。
【
図13】本開示の一実施形態による信号のためのフィッティングモデルを決定するための装置を示す。
【
図14】本開示の一実施形態による信号を再構築するための装置を示す。
【
図15】本開示の一実施形態による信号を再構築するための他の装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示の実施形態における技術的解決策を、添付の図面を参照して以下の説明において明確且つ包括的に説明する。記載の実施形態は、これらのすべてを網羅的に詳述するのではなく、本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明するためにのみ提供され、これらは本開示又は特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきではないということが明らかである。本明細書に記載の実施形態に対する様々な代替案が、創造的な作業を伴うことなく、そして本開示の範囲から逸脱することなく、当業者によって使用され得るということが理解されるべきである。
【0030】
特に、ある要素が他の要素「に配置されて」いると言うとき、これは他の要素に直接配置されていても、又は中間要素があってもよい。ある要素が他の要素に「結合又は接続されて」いると言うとき、これは他の要素に直接結合又は接続されていてもよく、又は中間要素がある。本明細書で用いる「結合又は接続」という用語は、電気的結合又は接続及び/又は機械的又は物理的結合又は接続を含むことができる。本明細書で用いる「含む(comprise or include)」という用語は、特徴、ステップ又は要素の存在を指すが、1又は2以上の他の特徴、ステップ又は要素の存在又は追加を排除するものではない。本明細書で用いる「及び/又は」という用語は、関連する列挙した項目の1又は2以上のありとあらゆる組み合わせを含む。「a」、「an」、「one」、「the」及び同様の用語は、文中に明確に記載されていない限り、単数及び複数を含む。
【0031】
特に指定しない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本開示に関連する技術分野における当業者によって通常理解されるような一般的な意味を有する。本明細書で用いる用語は、具体的な実施形態を説明することを目的とするが、本開示を限定するように意図されるものではない。
【0032】
加えて、本明細書で用いる「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、説明を目的とし、類似の物を互いに区別するためだけのものであり、これらはその順序を表さず、相対的な重要性の指標又は暗示として理解することもできない。加えて、特に指示しない限り、本明細書で用いる「複数」は2又は3以上を意味する。
【0033】
以下、本開示の実施形態による、信号のためのフィッティングモデルを決定するための方法、信号を再構築するための方法、及びその装置を、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
図2に示すように、本開示の一実施形態において、信号のためのフィッティングモデルを決定するための方法が提供され、これは以下のステップを含む。
【0035】
ステップS1:サンプリングされた信号をこの信号の収集された特性情報に基づいてセグメント化して複数の信号セグメントを得る。
【0036】
信号をサンプリングした後、信号の収集された特性情報に基づいて信号をセグメント化することができる。具体的には、サンプリングされた信号は、信号の振幅(すなわち、振幅値)、立ち上がりスロープ、立ち上がり時間、立ち下がりスロープ、及び/又は立ち下がり時間などに基づいて、複数の信号セグメントにセグメント化することができる。例えば、信号は、振幅に基づいて、0~M1、M1~M2、M2~M3、…、Mk~Mn、及び>Mnなどのような、複数の信号セグメントにセグメント化することができる。他の一例では、信号は、時間に基づいて、0~T1、T1~T2、T2~T3、…、Ti~Tj、及び>Tjなどのような、複数の信号セグメントにセグメント化することができる。M1、M2、M3、Mk及びMnは、信号の異なる振幅(電圧又は電流などのような)を表し、T1、T2、T3、Ti及びTjは、信号の異なる時間値を表す。各信号セグメントの間隔は同じでも異なってもよいということが留意されるべきである。
【0037】
信号は、電気信号、光信号、音声信号などであり得る。信号は、同じ装置からの同じ1つの信号でも、異なる装置からの様々な信号であってもよい。電気信号は、シンチレーション結晶検出器又はガス電離検出器のような放射線検出器からの電気パルス信号を含むことができる。
【0038】
特性情報は、信号をサンプリングした結果から得られるデータとすることができる。特性情報は、信号の振幅、立ち上がりスロープ、立ち上がり時間、立ち下がりスロープ及び/又は立ち下がり時間などを含むことができる。
【0039】
S2:複数のフィッティングモデルを用いることによって複数の信号セグメントにおいてサンプリングポイントをフィッティングする。
【0040】
信号がセグメント化された後、複数のフィッティングモデルを用いて各信号セグメントにおいてサンプリングポイントをフィッティングして、複数のフィッティングモデルの下で完全な信号のフィッティング曲線を取得し、これによって信号の再構築波形を取得することができる。
【0041】
フィッティングモデルは、線形及び指数フィッティングモデル、二重指数フィッティングモデル及びグラフフィッティングモデルなどの少なくとも1つのタイプを含むことができるが、これらに限定されない。グラフフィッティングモデルは、サンプリング閾値に対して上部で採用される三角フィッティングモデル、及びサンプリング閾値に対して下部で採用される線形及び指数フィッティングモデル又は二重指数フィッティングモデルを含むことができるが、これらに限定されない。線形及び指数フィッティングモデルは、N点線形及びN点指数フィッティングモデル又はN点線形及びNプラスM点指数フィッティングモデルなどを含むことができるが、これらに限定されない。二重指数フィッティングモデルは、2N点二重指数フィッティングモデル又は2NプラスM点二重指数フィッティングモデルなどを含むことができるが、これらに限定されない。Nは、多閾値サンプリング方法によって信号をサンプリングすることによって得られる立ち上がりエッジ部分又は立ち下がりエッジ部分上のサンプリングポイントの数を表し、これは1より大きい正の整数であり、Mは、多閾値方法によって信号をサンプリングすることに基づいて、時間間隔に従って信号をサンプリングすることによってさらに得られるサンプリングポイントの数を表し、これは1以上の正の整数である。多閾値サンプリング方法及び時間間隔サンプリング方法の具体的なプロセスに関しては先行技術を参照することができ、これはここでは詳述しない。
【0042】
N点線形及びN点指数フィッティングモデル:最大振幅のサンプリングポイントを除いて、信号の立ち上がりエッジ部分上のN個のサンプリングポイントを基準点と見なし、これらをフィッティングして直線を生じさせ、信号の立ち下がりエッジ部分上のN個のサンプリングポイントを基準点と見なし、これらをフィッティングして指数曲線方程式に従って指数曲線を生じさせ、したがって生じさせられた直線及び指数曲線は、
図3(a)に示すように、信号の再構築波形を構成し、N=4である。
【0043】
N点線形及びNプラスM点指数フィッティングモデル:信号の立ち上がりエッジ部分上のN個のサンプリングポイントを基準点と見なし、これらをフィッティングして直線を生じさせ、信号の立ち下がりエッジ部分上のN個のサンプリングポイント及びM個のサンプリングポイントを基準点と見なし、これらをフィッティングして指数曲線方程式に従って指数曲線を生じさせ、したがって生じさせられた直線及び指数曲線は、
図3(b)に示すように、信号の再構築波形を構成し、N=4及びM=1である。
【0044】
2N点二重指数フィッティングモデル:信号に対して多閾値サンプリングを実行することによって得られた2N個のサンプリングポイントを基準点と見なし、これらをフィッティングして二重指数曲線方程式に従って二重指数曲線を生じさせ、したがって得られた二重指数曲線は、
図3(c)に示すように、信号の再構築波形を構成し、N=4である。
【0045】
2NプラスM点二重指数フィッティングモデル:信号に対して多閾値サンプリングを実行することによって得られた2N個のサンプリングポイント、及び時間間隔で信号をサンプリングすることによって得られたM個のサンプリングポイントを基準点と見なし、これらをフィッティングして二重指数曲線方程式に従って二重指数曲線を生じさせ、したがって得られた二重指数曲線は、
図3(d)に示すように、信号の再構築波形を構成し、N=4及びM=1である。
【0046】
グラフフィッティングモデル:サンプリングされた2N+M個のサンプリングポイントを基準点と見なし、信号の最大サンプリング閾値のような特定のサンプリング閾値に対して上部において、立ち上がりエッジ部分上の最後のサンプリングポイント、ピークでのサンプリングポイント、及び立ち下がりエッジ部分上の最初のサンプリングポイント(「最初」及び「最後」は時系列で示す)のような、3つのサンプリングポイントを直線で互いと結合して三角を形成し、信号のサンプリング閾値に対して下部において、サンプリングポイントを線形及び指数又は二重指数フィッティングモデルなどに従ってフィッティングして、
図3(e)及び3(f)に示すように、完全な信号再構築波形を得る。
図3(e)において、最大サンプリング閾値に対して下部における信号は、線形及び指数モードに従ってフィッティングされ、
図3(f)において、最大サンプリング閾値に対して下部における信号は、二重指数フィッティングモデルに従ってフィッティングされている。
【0047】
S3:フィッティング結果に基づいて信号セグメントのそれぞれにおいて対象パラメータについてのフィッティング値を取得する。
【0048】
様々なフィッティングモデルを用いてすべての信号セグメントにおいてすべてのサンプリングポイントをフィッティングした後、各信号セグメントにおける各サンプリングポイントでの対象パラメータについてのフィッティング値は、得られたフィッティング結果から直接得ることができ、又はフィッティング結果から得られたデータを計算することによって得ることもできる。
【0049】
フィッティング結果は、フィッティング曲線及び/又はフィッティングデータであり得る。
【0050】
対象パラメータは、実際の用途に従って考慮する必要があるパラメータを指すことができ、これは、信号のエネルギー、時間、及び/又はエネルギー分解能などを含むことができるが、これらに限定されない。エネルギー分解能は、信号エネルギースペクトルの全電力ピークのエネルギーの期待値に対する全電力ピークの半値幅の比率を指し、信号エネルギー間隔を互いに区別する能力を表すことができ、エネルギー分解能が低いほど、エネルギースペクトルにおけるエネルギー間隔を互いに区別する能力が強くなる。
【0051】
対象パラメータが時間であるとき、時間値、すなわち、フィッティング値は、得られたフィッティング曲線から直接抽出することができる。対象パラメータがエネルギーであるとき、フィッティング値は、電圧又は電流のような、抽出された振幅を処理することによって得ることができる。例えば、エネルギーは、電圧振幅を積分することによって得ることができ、その具体的な計算プロセスは先行技術を参照することができ、これはここでは詳述しない。
【0052】
同様に、対象パラメータがエネルギー分解能などであるとき、フィッティング値は、抽出された時間又は振幅を処理することによって得ることができ、その具体的なプロセスはここでは限定されない。
【0053】
S4:対象パラメータについてのフィッティング値のそれぞれを、フィッティングモデルのそれぞれの下で、対象パラメータについての取得された測定値と順次比較し、比較結果に従って、複数のフィッティングモデルの中で、信号を再構築するための最終フィッティングモデルを決定する。
【0054】
各フィッティングモデルの下ですべての信号セグメントにおいてすべてのサンプリングポイントで対象パラメータについてのフィッティング値を得た後、各フィッティングモデルの下での各信号セグメントにおける各サンプリングポイントでの対象パラメータについてのフィッティング値のそれぞれを、サンプリングポイントでの対象パラメータの測定値(すなわち、真の値)と順次比較することができる。次いで比較結果に従って、複数のフィッティングモデルの中で、信号を再構築するための最終フィッティングモデルを決定することができる。具体的には、各信号のため、各フィッティングモデルの下での各信号セグメントにおける各サンプリングポイントでの対象パラメータについてのフィッティング値の大きさを、対応する測定値の大きさと直接比較することができ、又は各フィッティングモデルの下での各信号セグメントにおける各サンプリングポイントでの対象パラメータについてのフィッティング値と、対応する測定値と、の間の差値を計算することができ、次いで差値に従って、複数のフィッティングモデルの中で、信号を再構築するための最終フィッティングモデルを決定することができる。
【0055】
具体的には、各信号のため、第1に各フィッティングモデルの下での各信号セグメントにおける各サンプリングポイントでの対象パラメータについてのフィッティング値と、対応する測定値と、の間の差値を、事前設定された順序で、例えば、サンプリングポイントの横座標又は縦座標の値の大きさの昇順で、順次計算することができる。例えば、対象パラメータがエネルギーである状況において、各フィッティングモデルの下での各信号セグメントにおける各サンプリングポイントでのエネルギーについてのフィッティング値と、対応する測定値と、の間の差値を順次計算することができる。第2に、対象パラメータについてのすべての差値を計算した後、差値に基づいて信号セグメントのそれぞれを再構築するための最終フィッティングモデルを決定することができる。具体的には、複数のフィッティングモデルの中で、各信号セグメントにおける対象パラメータについての絶対差値が最小となるフィッティングモデルを、それぞれの信号セグメントについての最終フィッティングモデルとして決定することができる。あるいは、複数のフィッティングモデルの中で、信号セグメントのそれぞれにおける対象パラメータについての差分布が最小となるフィッティングモデルを、次の方法に従ってそれぞれの信号セグメントについての最終フィッティングモデルとして決定して、すべての信号セグメントについてのすべての最終フィッティングモデルを決定することができる。
【0056】
各フィッティングモデル及び各信号のため、n行掛ける(×)2列の行列を確立することができ、行列の第1の列は、信号の各サンプリングポイントでの対象パラメータの特性値、すなわち、上の特性情報における各パラメータの値を記録することができ、行列の第2の列は、信号の各サンプリングポイントでの対象パラメータのフィッティング値と測定値との間の差値を記録することができ、又は2行×n列の行列を確立することができ、行列の第1の行は、信号の各サンプリングポイントでの対象パラメータの特性値を記録することができ、行列の第2の行は、信号の各サンプリングポイントでの対象パラメータのフィッティング値と測定値との間の差値を記録することができ、nは特性値の数を表し、次に、行列における特性値及び差値を、それぞれ、横座標及び縦座標として用いて、各フィッティングモデルの下での各信号セグメントにおける対象パラメータの差分布図を生じさせることができ、又は特性値をそれらの大きさに従ってまずランク付けすることができ、次いで各フィッティングモデルの下での各信号セグメントにおける対象パラメータの差分布図をランキング順序に基づいて生じさせることができ、最後に、差分布図における最小差分布に対応するフィッティングモデルを、それぞれの信号セグメントについての最終フィッティングモデルとして決定することができる。
【0057】
最終フィッティングモデルは、複数のフィッティングモデルの1又は2以上とすることができるということが留意されるべきである。それぞれの信号セグメントについての最終フィッティングモデルは、互いに同じでも異なってもよい。
【0058】
例えば、
図4(a)~4(c)は、3つの異なるフィッティングモデル、すなわち、それぞれ、4点線形及び5点指数フィッティングモデル、8点二重指数フィッティングモデル及びグラフフィッティングモデルの下での電気パルス信号a及びbのエネルギー差分布のヒストグラムを示す。E
a及びE
bはそれぞれ電気パルス信号a及びbのエネルギーの測定値を表し、
【0059】
【0060】
【0061】
及び
【0062】
【0063】
はそれぞれ上の3つのフィッティングモデルの下での電気パルス信号aのエネルギーのフィッティング値を表し、
【0064】
【0065】
【0066】
及び
【0067】
【0068】
はそれぞれ上の3つのフィッティングモデルの下での電気パルス信号bのエネルギーのフィッティング値を表し、Va及びVbはそれぞれフィッティング曲線から抽出された電気パルス信号a及びbの振幅(すなわち、電圧)を表す。3つの図に示すように、電気パルス信号aについて、8点二重指数フィッティングモデル及びグラフフィッティングモデルのいずれかの下でのエネルギー差値は比較的小さく、したがってこれら2つのフィッティングモデルのいずれかを選択することができるということが分かる。電気パルス信号bについて、グラフフィッティングモデルの下でエネルギー差が最小であり、したがってグラフフィッティングモデルが最適な選択である。
【0069】
例えば、
図5(a)~5(c)は、3つの異なるフィッティングモデル、すなわち、それぞれ、4点線形及び5点指数フィッティングモデル、8点二重指数フィッティングモデル、及び8点二重指数フィッティングモデルの下で下方曲線がフィッティングされたグラフフィッティングモデルの下での複数の電気パルス信号のエネルギー差分布の図を示す。3つの図から、電気パルス信号のため、62V~74Vの振幅範囲内ではグラフフィッティングモデルの下でエネルギー差が最小であり、したがってこの場合、フィッティングにグラフフィッティングモデルを選択することが好ましく、136Vより大きい(>)振幅範囲内では4点線形及び5点指数フィッティングモデルの下でエネルギー差が最小であり、したがってこの場合、フィッティングに4点線形及び5点指数フィッティングモデルを選択することが好ましいということが分かる。
【0070】
例えば、
図6(a)~6(d)は、4つの異なるフィッティングモデル、すなわち、それぞれ、4点線形及び4点指数フィッティングモデル、4点線形及び5点指数フィッティングモデル、9点二重指数フィッティングの下で下方曲線がフィッティングされたグラフフィッティングモデル、及び8点二重指数フィッティングの下で下方曲線がフィッティングされたグラフフィッティングモデルの下での60V~130Vの振幅範囲内の複数の電気パルス信号のエネルギー差分布の図を示し、横座標は電気パルス信号の振幅(V)を表し、縦座標はエネルギー差を表す。4つの図から、電気パルス信号のため、60V~80Vの振幅範囲内では8点二重指数フィッティングの下で下方曲線がフィッティングされたグラフフィッティングモデルの下でエネルギー差が最小であり、したがってこの場合、フィッティングにグラフフィッティングモデルを選択することが好ましく、80V~130Vの振幅範囲内では4点線形及び5点指数フィッティングモデルの下でエネルギー差が最小であり、したがってこの場合、フィッティングに4点線形及び5点指数フィッティングモデルを選択することが好ましいということが分かる。
【0071】
上記から、本開示の実施形態において、信号の特性情報に従って、サンプリングされた信号をセグメント化し、各信号セグメントにおける対象パラメータのフィッティング値を複数のフィッティングモデルの下で測定値と比較して、比較結果に基づいて各信号セグメントについての最終フィッティングモデルを決定することができ、これは、信号の異なる特性を考慮することによって異なるフィッティングモデルを採用することができるということを反映しているということが分かる。したがって、信号の後続のフィッティング結果がより正確になり、これによって信号再構築結果の正確性及び信号再構築の精度を改善することができる。また、ヒストグラムの形式を用いてフィッティングモデルを比較することによって様々なフィッティングモデルの中の比較可能性が向上し、より直感的にすることになる。
【0072】
本開示のさらなる一実施形態において、この方法は、S5:信号セグメントのそれぞれと最終フィッティングモデルとの間の対応関係に従って、決定された最終フィッティングモデルを記憶するステップをさらに含むことができる。
【0073】
すべての信号セグメントについての最終フィッティングモデルが決定された後、決定された最終フィッティングモデルは、信号セグメントと最終フィッティングモデルとの間の対応関係に従って記憶することができ、後の使用のためにこれらを直接検索することができるようになり、信号再構築の効率が改善される。
【0074】
本開示の実施形態において、信号を再構築するための方法が提供される。
図7に示すように、この方法は以下のステップを含むことができる。
【0075】
P1:上の決定方法を利用することによって、実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルを決定する。
【0076】
取得された信号をサンプリングした後、上の決定方法を利用して、実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルを決定することができる。具体的な決定プロセスに関しては
図2~
図6の説明を参照することができ、これはここでは詳述しない。
【0077】
最終フィッティングモデルは、線形及び指数フィッティングモデル、二重指数フィッティングモデル及びグラフフィッティングモデルの少なくとも1つを含むことができる。
【0078】
P2:決定された最終フィッティングモデルを利用することによって、実際にサンプリングされた信号を再構築する。
【0079】
実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルを決定した後、決定された最終フィッティングモデルを用いて各信号セグメントにおいてサンプリングポイントをフィッティングして、信号のフィッティング曲線を取得し、これによって信号再構築を実現する。
【0080】
例えば、各信号セグメントについての最終フィッティングモデルがN点線形及びNプラスM点指数フィッティングモデルであると決定した後、N点線形及びNプラスM点指数フィッティングモデルを用いて各信号セグメントにおいてサンプリングポイントをフィッティングして、信号のフィッティング曲線を得ることができる。例えば、信号のための最終フィッティングモデルが2NプラスM点二重指数フィッティングモデル及びグラフフィッティングモデルであると決定した後、2つのモデルをそれぞれ用いて、それぞれの信号セグメントにおいてサンプリングポイントをフィッティングすることができ、又はより速いフィッティング速度又はより低いエネルギー消費を伴う可能性がある2つのモデルの1つを用いてサンプリングポイントをフィッティングして、信号のフィッティング曲線を得ることができる。N点線形及びNプラスM点指数フィッティングモデル、2NプラスM点二重指数フィッティングモデル及びグラフフィッティングモデルの下で信号のサンプリングポイントをフィッティングするために、ステップS2におけるフィッティングモデルの説明を参照することができ、これはここでは説明しない。
【0081】
フィッティング曲線から抽出された、振幅及び時間のような、対応するデータを計算することによって、信号のエネルギー又はエネルギー分解能を得ることができる。計算方法に関しては先行技術を参照することができ、これはここでは詳述しない。
【0082】
本開示の実施形態による信号を再構築するための方法を用いることによって、信号再構築結果の正確性及び信号再構築の精度を改善することができる。
【0083】
上の実施形態の利点を説明する例を与える。
【0084】
図8は、8点二重指数フィッティングモデルによって下方曲線がフィッティングされた、本開示におけるグラフフィッティングモデルを用いて電気パルス信号をフィッティングすることによって得られたフィッティング曲線、及び電気パルス信号の実際の測定曲線を示す。
図9は、既存の8点二重指数フィッティングモデルを用いて電気パルス信号をフィッティングすることによって得られたフィッティング曲線、及び電気パルス信号の実際の測定曲線を示す。(T9、V9)は9番目のサンプリングポイントの座標を表し、実線は測定曲線を表し、破線はフィッティング曲線を表す。2つの図に示すように、8点二重指数フィッティングモデルによって下方曲線がフィッティングされた本開示におけるグラフフィッティングモデルを用いることによって得られたフィッティング曲線は実際の測定曲線に非常に近いが、既存の8点二重指数フィッティングモデルを用いることによってフィッティングされた曲線は実際の測定曲線から遠いということが分かる。本開示の信号再構築法を用いることによって、信号再構築結果の正確性を改善することができるということが分かる。
【0085】
図10及び
図11は、それぞれ、本開示の実施形態による信号を再構築するための方法を用いることによって得られたフィッティング曲線、及び既存の多閾値サンプリング方法を用いることによって得られたフィッティング曲線を示す。2つの図を互いに比較することによって、本開示の実施形態による信号を再構築するための方法によって得られたエネルギー分解能は、既存の多閾値サンプリング方法によって得られたエネルギー分解能よりも約1.6%低く、これはエネルギー精度の向上を示すということが分かる。また、本開示の実施形態による信号を再構築するための方法を用いることによって、1274Kev付近に現れる光電ピークを識別することができるが、これは既存の多閾値サンプリング方法を用いることによっては全く識別不可能である。光電ピークを識別する能力は、異なる核種を区別するために重要である。本開示の実施形態による信号を再構築するための方法を用いることによって、光電ピークを識別する能力を改善することができるということが分かり、これは異なる核種を区別する助けとなる。
【0086】
本開示の実施形態において、信号を再構築するための他の方法が提供される。
図12に示すように、この方法は以下のステップを含むことができる。
【0087】
P1':上の決定方法を利用することによって最終フィッティングモデルが決定される参照信号と、実際にサンプリングされた信号を比較して、実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルを決定する。
【0088】
取得された信号をサンプリングした後、上の決定方法を利用することによって最終フィッティングモデルが決定される参照信号と、実際にサンプリングされた信号を比較することができる。信号の特性情報、例えば、振幅、時間、立ち上がりエッジの立ち上がり時間、立ち上がりスロープなどを用いることによって、実際にサンプリングされた信号と同一又は類似の特性情報を有する参照信号を検索することができる。参照信号が検索された後、参照信号とその最終フィッティングモデルとの間の対応関係に従って参照信号のための最終フィッティングモデルを検索し、参照信号のための検索された最終フィッティングモデルを、実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルとして決定することができる。参照信号のための最終フィッティングモデルの具体的な決定プロセスに関しては
図2~
図6の説明を参照することができ、これはここでは詳述しない。
【0089】
最終フィッティングモデルは、線形及び指数フィッティングモデル、二重指数フィッティングモデル及びグラフフィッティングモデルの少なくとも1つを含むことができる。
【0090】
P2':決定された最終フィッティングモデルを利用することによって、実際にサンプリングされた信号を再構築する。
【0091】
このステップの詳細については、上のステップP2を参照することができ、これはここでは詳述しない。
【0092】
本開示の実施形態において、信号のためのフィッティングモデルを決定するための装置が提供される。
図13に示すように、この装置は、サンプリングされた信号をこの信号の収集された特性情報に基づいてセグメント化して複数の信号セグメントを得るように構成することができるセグメント化ユニット121と、複数のフィッティングモデルを用いて信号セグメントのそれぞれにおいてサンプリングポイントをフィッティングするように構成することができるフィッティングユニット122と、フィッティング結果に基づいて複数の信号セグメントにおいて対象パラメータについてのフィッティング値を取得するように構成することができる取得ユニット123と、対象パラメータについてのフィッティング値のそれぞれを、フィッティングモデルのそれぞれの下で、対象パラメータについての取得された測定値と順次比較し、比較結果に基づいて、複数のフィッティングモデルの中で、信号を再構築するための最終フィッティングモデルを決定するように構成することができる比較及び決定ユニット124とを含むことができる。
【0093】
上記のユニットの詳細について、
図2に示すような方法の実施形態を参照することができ、これはここでは詳述しない。
【0094】
本開示の実施形態による上記の装置を利用することによって、続いて信号を再構築する精度を改善するための目的を達成することができる。また、様々なフィッティングモデルの中の比較可能性が向上し、より直感的にすることができる。
【0095】
本開示の実施形態において、信号を再構築するための装置が提供される。
図14に示すように、この装置は、上の決定方法を利用することによって、実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルを決定するように構成することができる決定ユニット131と、決定された最終フィッティングモデルを利用することによって、実際にサンプリングされた信号を再構築するように構成することができる再構築ユニット132とを含むことができる。
【0096】
上記のユニットの詳細について、
図7に示すような方法の実施形態を参照することができ、これはここでは詳述しない。
【0097】
本開示の実施形態において、信号を再構築するための他の装置が提供される。
図15に示すように、この装置は、上の決定方法を利用することによって最終フィッティングモデルが決定される参照信号と、実際にサンプリングされた信号を比較して、実際にサンプリングされた信号のための最終フィッティングモデルを決定するように構成することができる比較及び決定ユニット141と、決定された最終フィッティングモデルを利用することによって、実際にサンプリングされた信号を再構築するように構成することができる再構築ユニット142とを含むことができる。
【0098】
上記のユニットの詳細について、
図12に示すような方法の実施形態を参照することができ、これはここでは詳述しない。
【0099】
本開示の実施形態による上記の装置を利用することによって、信号を再構築する精度を改善するための目的及びしたがって再構築結果の正確性を達成することができる。
【0100】
上記の装置におけるユニットによって実装される機能は、コンピュータにおけるプロセッサによってメモリに記憶された命令を実行することによって実装することもできるということが留意されるべきである。
【0101】
本開示の実施形態による上記の方法及び装置は、PET、多電圧閾値サンプリング(Multi-Voltage Threshold、略称MVT)などの分野に応用されるだけに限定されず、信号再構築が要求される任意の分野に応用することもできるということが留意されるべきである。
【0102】
上の実施形態に記載された装置、ユニットなどは、コンピュータチップ及び/又はエンティティによって具体的に実装、又は特定の機能を備えた製品によって実装することができる。便宜上、装置の異なる機能的ユニットをそれぞれ説明している。もちろん、本開示を実装するとき、個々のユニットの機能は、同じ1又は2以上のコンピュータチップに具現化することができる。
【0103】
上記の実施形態又はフローチャートに記載の方法ステップが本開示に提供されているが、より多くの又はより少ないステップを、従来の又は日常的な作業と共にこれらの方法に含むことができる。論理的に必要な因果関係がないステップの実行順序は、本開示における実施形態において提供されるものに限定されない。
【0104】
本明細書における様々な実施形態は、様々な実施形態にわたって参照されている同一又は類似の部分で漸進的な方法で説明されているが、各実施形態の説明は、他の実施形態との違いに焦点を合わせている。
【0105】
上記の実施形態は、当業者が本開示を理解及び実践することを容易にするように説明されている。これらの実施形態に様々な修正を加え、本明細書に記載の一般原理を創造的な作業なしに他の実施形態に応用することも当業者には明らかである。したがって、本開示は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲から逸脱することなく本開示に従って当業者によって行われる改善及び修正は、本開示の保護範囲に入るべきである。