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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】滑走補助具及びそれを用いた滑走板
(51)【国際特許分類】
   A63C 5/07 20060101AFI20220331BHJP
   A63C 5/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A63C5/07
A63C5/00 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021011212
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2021-03-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日:2020年2月18日 刊行物:自社パンフレット
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503465524
【氏名又は名称】有限会社岡田樹脂工業
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】岡田 幸義
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-276471(JP,A)
【文献】「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」,2020年02月23日,URL,https://web.archive.org/web/20200223153503/http://sbn.japaho.com:80/プロ・デモンストレーター自らが開発した樹脂成/,令和3年6月11日検索
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63C 5/00-11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その天面が湾曲形状となる滑走板と前記滑走板に取り付けられるビンディング装置との間に配置される滑走補助具であって、
前記滑走補助具は、
前記滑走板に対して固定され、前記天面との間に複数の収納空間を形成するケース体と、
前記ケース体の前記収納空間の内部に収納され、前記ケース体よりも高い剛性を有する棒状体と、を備え、
前記ケース体は、
前記収納空間を区画し、前記滑走板の長手方向に延在する複数の壁部と、
前記壁部の周囲を囲む外周壁部と、を有することを特徴とする滑走補助具。
【請求項2】
前記外周壁部及び少なくとも前記壁部の一部では、前記長手方向の両端部及びその周辺領域が、前記長手方向の中央領域よりも厚く形成されることを特徴とする請求項1に記載の滑走補助具。
【請求項3】
前記ケース体は、前記ビンディング装置の取付孔を介して前記滑走板に固定され、
少なくとも前記棒状体が収納された前記収納空間を囲む前記外周壁部の底面及び前記壁部の底面は、前記滑走板の前記天面と接触することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の滑走補助具。
【請求項4】
前記ケース体は、前記滑走板に固定される取付孔を有し、
前記棒状体は、前記滑走板の短手方向において、前記ケース体の前記取付孔を挟むように前記ケース体の両端部側にそれぞれ配設されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の滑走補助具。
【請求項5】
前記棒状体は、前記滑走板のエッジと略平行となるように、前記滑走板の前記短手方向に複数配列されることを特徴とする請求項4に記載の滑走補助具。
【請求項6】
前記棒状体の両端部及びその周辺領域は、前記滑走板の前記天面から離間する方向にその中央領域よりも薄く形成され、
前記ケース体が前記滑走板に固定された状態において、
前記棒状体の前記中央領域は、常時、前記滑走板の前記天面と接触していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の滑走補助具。
【請求項7】
前記棒状体の両端部及びその周辺領域は、前記滑走板の湾曲量に応じて、前記滑走板の前記天面と接触しあるいは非接触となることを特徴とする請求項6に記載の滑走補助具。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の前記滑走補助具が、その天面とビンディング装置との間に固定されていることを特徴とする滑走板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑走補助具及びそれを用いた滑走板に関し、特に、滑走板の天面にケース体と、ケース体の内部にケース体よりも剛性を有する棒状体を配設し、滑走板の操縦性を向上させる滑走補助具及びそれを用いた滑走板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスキー板の剛性調整機構100として、図7に示す構造が知られている。図7は、従来のスキー板の剛性調整機構100を説明する側面図である。
【0003】
図7に示す如く、剛性調整機構100は、主に、板状の剛性付与部材101と、係止部102と、を有し、剛性付与部材101は、例えば、スキー板103の締具取付領域104にてビス止め等の係止部102を介してスキー板103に直接固定される。
【0004】
剛性付与部材101は、係止部102からその前端部または後端部に掛けてテーパー部101Aを有し、スキー板103との間に隙間105を有する。そして、スキー板103は、例えば、滑走時にターンする際に、スキー板103の長手方向に屈曲するが、その屈曲した際に、剛性付与部材101は、上記隙間105を埋めることで、スキー板103と接触し、スキー板103に剛性を付与する。
【0005】
この構造により、剛性調整機構100は、スキー板103の長手方向の剛性を変化させて、スキー板103の曲げ応力を抑制することで、スキー板103の操縦性を向上させることが出来る(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-276471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1には、以下のスキー板103の特性が開示されている。スキー板103での滑走時において、ターン前半では、スキーヤーの荷重量が小さいことから、スキー板103はあまり湾曲しない傾向にある。そのため、ターン前半では、エッジ曲線がターン回転半径よりも直線に近くなり易く、荷重と変位が緩やかであるスキー板103としては剛性が小さいものが要求される。
【0008】
一方、ターン後半では、スキーヤーの荷重量が大きいことから、スキー板103はよく湾曲する傾向を示し、エッジ曲線がターン回転半径よりもきつくなり易く、スキーヤーはスキー板103への荷重量を減らす必要がある。以上より、スキー板103の小さい湾曲量の時にはスキー板103の剛性は小さく、一方、スキー板103の大きい湾曲量の時にはスキー板103の剛性は大きくなるように、剛性調整機構100が、設計されることが知られている。
【0009】
しかしながら、図7に示す如く、剛性調整機構100の剛性付与部材101は、スキー板103の長手方向に延在してスキー板103に固定されると共に、スキー板103の短手方向(上記長手方向と直交方向)の略全面に渡り固定される。そして、剛性付与部材101は、スキー板103とビンディング装置(図示せず)との間に配設される。
【0010】
この構造により、スキーヤーの荷重量がスキー板103に加わるだけで、スキー板103の剛性が高くなる。そして、スキー板103が固くなることで、一般のスキーヤーには、滑走中にターンし難くなったり、雪面の凹凸形状を滑走する際にスキー板103が跳ねたりと、その操縦性が悪化するという課題がある。
【0011】
特に、スキー板103の湾曲量は、スキー板103の長手方向への曲げ応力だけでなく、スキー板103の短手方向への捻じれ応力も影響する。上述したように、剛性付与部材101が、締具取付領域104であるスキー板103の長手方向の略中央領域に固定されると共に、スキー板103の短手方向の略全面に渡り配設される。
【0012】
この構造により、スキー板103の捻じれ応力が、常時、剛性付与部材101により規制を受けることで、スキー板103の湾曲量のバランスが崩れ易くなる。そして、滑走面の凹凸形状に対してスキー板103の細かいコントロールが難しくなり、特に、初心者等の滑走技術の未熟な一般のスキーヤーには、スキー板103の操縦性が悪化するという課題がある。
【0013】
また、剛性付与部材101は、スキー板103の上面に露出した状態にて固定されるため、滑走中にスキー板103と剛性付与部材101との隙間105に雪が入り込み、埋設してしまう場合がある。この場合には、剛性付与部材101が、埋設した雪を介して常時スキー板103と接触した状態となり、スキー板103の湾曲量が大幅に低減され、必要以上のスキー板103の剛性を高めてしまう。その結果、スキーヤーは、滑走中にターンし難くなったり、雪面の凹凸形状を滑走する際にスキー板103が跳ねたりと、スキー板103の操縦性が悪化するという課題がある。
【0014】
また、剛性付与部材101が、スキー板103の短手方向の略全面に渡り固定される構造では、スキー板103の重量に剛性付与部材101の重量も加わるため、スキー板103の総重量が重くなり、スキー板103の操縦性が悪化するという課題がある。
【0015】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、滑走板の天面にケース体と、ケース体の内部にケース体よりも剛性を有する棒状体を配設し、滑走板の操縦性を向上させる滑走補助具及びそれを用いた滑走板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の滑走補助具では、その天面が湾曲形状となる滑走板と前記滑走板に取り付けられるビンディング装置との間に配置される滑走補助具であって、前記滑走補助具は、前記滑走板に対して固定され、前記天面との間に複数の収納空間を形成するケース体と、前記ケース体の前記収納空間の内部に収納され、前記ケース体よりも高い剛性を有する棒状体と、を備え、前記ケース体は、前記収納空間を区画し、前記滑走板の長手方向に延在する複数の壁部と、前記壁部の周囲を囲む外周壁部と、を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の滑走補助具では、前記外周壁部及び少なくとも前記壁部の一部では、前記長手方向の両端部及びその周辺領域が、前記長手方向の中央領域よりも厚く形成されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の滑走補助具では、前記ケース体は、前記ビンディング装置の取付孔を介して前記滑走板に固定され、少なくとも前記棒状体が収納された前記収納空間を囲む前記外周壁部の底面及び前記壁部の底面は、前記滑走板の前記天面と接触することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の滑走補助具では、前記ケース体は、前記滑走板に固定される取付孔を有し、前記棒状体は、前記滑走板の短手方向において、前記ケース体の前記取付孔を挟むように前記ケース体の両端部側にそれぞれ配設されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の滑走補助具では、前記棒状体は、前記滑走板のエッジと略平行となるように、前記滑走板の前記短手方向に複数配列されることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の滑走補助具では、前記棒状体の両端部及びその周辺領域は、前記滑走板の前記天面から離間する方向にその中央領域よりも薄く形成され、前記ケース体が前記滑走板に固定された状態において、前記棒状体の前記中央領域は、常時、前記滑走板の前記天面と接触していることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の滑走補助具では、前記棒状体の両端部及びその周辺領域は、前記滑走板の湾曲量に応じて、前記滑走板の前記天面と接触しあるいは非接触となることを特徴とする。
【0023】
本発明の滑走板では、前記滑走補助具が、その天面とビンディング装置との間に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の滑走補助具は、滑走板の天面とビンディング装置との間に配設され、天面と接触するケース体と、ケース体の収納空間に配設される棒状体と、を備える。そして、棒状体は、ケース体よりも剛性の高い材料から形成される。この構造により、滑走板の滑走状態に応じて、ケース体及び棒状体が滑走板へ付与する剛性が変化することで、ユーザの滑走板の操縦性が向上される。
【0025】
また、本発明の滑走補助具では、少なくともケース体の外周壁部及びその周辺の壁部において、滑走板の長手方向の両端部及びその周辺領域が、その中央領域よりも厚く形成される。この構造により、ケース体が滑走板に固定された状態において、ケース体は、湾曲形状に形成される滑走板の天面に対して接触した状態を維持すると共に、棒状体も適宜上記天面に対して接触させることが出来る。
【0026】
また、本発明の滑走補助具では、少なくとも棒状体が収納される収納空間を構成するケース体の外周壁部及び壁部が、滑走板の天面と接触する。この構造により、滑走板の滑走状態において、収納空間内に雪が入り難くなり、棒状体と滑走板との間が維持されることで、棒状体と滑走板との接触状態及び非接触状態が実現され、滑走板に適切な剛性が付与される。
【0027】
また、本発明の滑走補助具では、棒状体は、滑走板の短手方向において、ケース体の両端部側にそれぞれ配設される。この構造により、棒状体が、必要な箇所に適切に配設されることで、滑走板の総重量が重くなり過ぎることが防止され、ユーザの滑走板の操縦性が向上される。
【0028】
また、本発明の滑走補助具では、棒状体は、滑走板のエッジと略平行となるように、滑走板の短手方向に複数配列される。この構造により、ユーザの技量や目的に応じて、棒状体が、エッジ周辺に適切な本数配設されることで、個々のユーザに適したオリジナルのカスタマイズが簡単に実現される。
【0029】
また、本発明の滑走補助具では、棒状体の両端部及びその周辺領域は、滑走板の天面から離間する方向にその中央領域よりも薄く形成される。そして、ケース体が滑走板に固定された状態において、棒状体の中央領域は、常時、滑走板の前記天面と接触する。この構造により、ユーザの足元は棒状体により、常時、支持されることで、転倒防止等の安定した滑走が実現される。
【0030】
また、本発明の滑走補助具では、棒状体の両端部及びその周辺領域は、滑走板の湾曲量に応じて、滑走板の天面と接触しあるいは非接触となる。この構造により、棒状体により必要以上の剛性が滑走板に付与されることを防止すると共に、ターン動作時には滑走板の剛性を高めることで、ユーザの滑走板の操縦性が向上される。
【0031】
本発明の滑走板では、滑走板の滑走状態に応じて、滑走板への剛性付与が変化可能な滑走補助具が、ビンディング装置の下面に配設されることで、ユーザの滑走板の操縦性が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態である滑走補助具及びそれを用いた滑走板説明する(A)斜視図、(B)側面図である。
図2】本発明の一実施形態である滑走補助具を説明する分解斜視図である。
図3】本発明の一実施形態である滑走補助具のケース体を説明する(A)斜視図、(B)上面図、(C)下面図である。
図4】本発明の一実施形態である滑走補助具のケース体を説明する(A)側面図、(B)断面図である。
図5】本発明の一実施形態である滑走補助具の棒状体を説明する(A)側面図、(B)上面図、(C)断面図である。
図6】本発明の一実施形態である滑走補助具の使用状態を説明する(A)側面図、(B)断面図、(C)断面図である。
図7】従来のスキー板の剛性調整機構を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態に係る滑走補助具10及びそれを用いた滑走板11に関して図面に基づき詳細に説明する。尚、以下の本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、上下方向は滑走補助具10及び滑走板11の高さ方向を示し、左右方向は滑走補助具10及び滑走板11の長手方向の幅を示し、前後方向は滑走補助具10及び滑走板11の短手方向の幅を示す。
【0034】
最初に、図1(A)は、本実施形態の滑走補助具10及びそれを用いた滑走板11を説明する斜視図である。図1(B)は、図1(A)に示す滑走板11を説明する側面図である。図2は、本実施形態の滑走補助具10を説明する分解斜視図である。尚、図1(B)では、説明の都合上、滑走補助具10及びビンディング装置12を省略して図示する。
【0035】
図1(A)に示す如く、滑走板11としては、例えば、スノーボード板が用いられ、滑走補助具10は、滑走板11に対して固定され、滑走時にその一部が天面11Aと接触し、天面11Aを上方から押圧することで、滑走板11の長手方向の剛性を変化させる。そして、滑走板11では、滑走時における湾曲量に応じて、その曲げ応力が調整されることで、ユーザによる滑走板11の操縦性が向上される。尚、以下の説明では、滑走板11としてスノーボード板を用いて説明するが、滑走板11としては、スキー板の場合でも良い。
【0036】
図示したように、滑走補助具10は、滑走板11とビンディング装置12との間に配設され、ビンディング装置12の滑走板11への取付孔(図示せず)を利用して滑走板11に固定具23(図2参照)を用いて固定される。尚、図2に示すように、ビンディング装置12は、ケース体21の天面21Aに設けられた取付孔21Cを介して滑走板11へと固定される。
【0037】
ここで、ユーザは、ビンディング装置12を介して左右両脚のスノーブーツ64(図6(B)参照)を滑走板11上に固定した後、雪上を滑走する。そして、滑走時には、ユーザは、滑走板11に対する荷重位置やターン時の遠心力等の滑走板11に加わる外力を利用して、滑走板11の滑走ラインを調整する。詳細は後述するが、本実施形態の滑走補助具10では、滑走板11の湾曲量に応じて、滑走板11の長手方向の剛性を変化させることで、ユーザによる滑走板11の操作性を高めることが出来る。
【0038】
図1(B)に示す如く、滑走板11の天面11Aは、その長手方向(紙面左右方向)に一定の曲率に湾曲した湾曲面として形成される。そして、詳細は後述するが、滑走補助具10のケース体21が、滑走板11の天面11Aに対して確実に接触した状態にて固定されるため、ケース体21の底面21D(図4(A)参照)の少なくとも一部も、滑走板11の天面11Aの湾曲面に沿って、湾曲面として形成される。
【0039】
図2に示す如く、滑走補助具10は、主に、ケース体21と、ケース体21の内部に収納される複数の棒状体22と、ケース体21を滑走板11に固定する固定具23と、を備える。尚、図2では、滑走板11の紙面左側の滑走補助具10を用いて説明するが、滑走板11の紙面右側の滑走補助具10も同じ構造であり、同様な効果が得られる。
【0040】
図示したように、ケース体21は、滑走板11の天面11Aに対して少なくともその一部が接触した状態にて固定される。そして、ケース体21は、ポリエチレン、ABS樹脂等の樹脂材料を射出成形して形成された部材である。また、ケース体21は、樹脂材料からなることで可撓性を有し、滑走板11の滑走状態に応じて、一定程度まで滑走板11に追従して撓むことが出来る。ケース体21は、ロックウェル硬さ(JIS K 7202-2)でRスケールの硬度を有することが好ましく、特にR100~R120の範囲であることが好ましい。
【0041】
ケース体21の形状は図3及び図4を用いて後述するが、ケース体21は、薄型の箱状体であり、ケース体21の天面21Aの下方には、滑走板11の長手方向(紙面左右方向)に延在する複数の壁部21Bが、略一定間隔にて滑走板11の短手方向(紙面前後方向)に配列される。
【0042】
棒状体22は、滑走時に滑走板11と接触することで、滑走板11に剛性を付与する部材である。本発明において、棒状体22は、ケース体21より高い剛性を有する素材からなり、具体的には、ケース体21より25℃でのヤング率が大きい素材を用いる。棒状体22のヤング率は、好ましくは40GPa以上であり、より好ましくは60GPa以上である。また、ケース体21のヤング率は好ましくは20GPa以下であり、より好ましくは0.1GPa~5.0GPa、特に好ましくは1.0GPa~3.0GPaである。また、JIS K 7171により測定したケース体21の曲げ弾性率は、1000MPa~5000MPaの範囲であることが好ましく、特に2000MPa~3000MPaの範囲であることが好ましい。
【0043】
そして、棒状体22は、例えば、アルミニウム製部材、スチール製部材またはステンレス製部材等の金属部材を切削加工して形成されることで、樹脂材料から形成されるケース体21よりも高い剛性を有する。そして、棒状体22は、直接、滑走板11に対してビス等により固定されることなく、ケース体21内に収納される。棒状体22は、ユーザが滑走板11上に乗り、その荷重によりケース体21が撓み、ケース体21により滑走板11へと押圧されることで、滑走板11に対して固定される。
【0044】
尚、棒状体22は、ケース体21の内部に収納された状態にて使用されるが、雪上にて使用されることで湿気に晒される。そのため、棒状体22の表面に塗装処理やメッキ処理が施される場合でも良く、その場合には、棒状体22の防食性が向上される。
【0045】
固定具23は、ケース体21を滑走板11に固定するための部材であり、例えば、ビスであり、ビンディング装置12の滑走板11への取付孔(図示せず)に対して締結される。図示したように、ケース体21には、4つの取付孔21Cが設けられ、取付孔21Cの内側面にはネジ切り加工が施されている。尚、ビンディング装置12は、固定具23より上方の取付孔21Cに対してビス固定されることで、滑走板11に対して固定される。
【0046】
次に、図3(A)は、本実施形態の滑走補助具10のケース体21を説明する斜視図である。図3(B)は、本実施形態の滑走補助具10のケース体21を説明する上面図である。図3(C)は、本実施形態の滑走補助具10のケース体21を説明する下面図である。図4(A)は、本実施形態の滑走補助具10のケース体21を説明する側面図である。図4(B)は、本実施形態の滑走補助具10のケース体21を説明する断面図である。
【0047】
図3(A)及び図3(B)に示す如く、ケース体21は、平面視略H字形状の薄型の箱状体である。ケース体21には、その厚み方向(紙面上下方向)に貫通する4つの取付孔21Cが形成される。上述したように、取付孔21Cは、ケース体21を滑走板11(図1参照)へ固定する際に用いられ、滑走板11のビンディング装置12の取付孔(図示せず)の位置に対応して、ケース体21の中央領域に形成される。また、取付孔21Cは、ビンディング装置12を滑走板11へ固定する際にも用いられる。
【0048】
ケース体21は、滑走板11の長手方向(紙面左右方向)に長辺を有し、滑走板11の短手方向(紙面前後方向)に短辺を有する。そして、ケース体21の長手方向の両端部には、それぞれ窪み領域33,34が形成される。ケース体21の窪み領域33側が滑走板11の長手方向の端部側に位置するように、ケース体21は滑走板11に固定される。
【0049】
図3(C)に示す如く、ケース体21には、天面21Aの外縁端部に沿って外周壁部32が形成され、外周壁部32の内側には、滑走板11の長手方向(紙面左右方向)に延在する複数の壁部21Bが、略一定間隔にて滑走板11の短手方向(紙面前後方向)に形成される。そして、壁部21Bは、ケース体21の天面21A及び外周壁部32と連続して形成される。
【0050】
図示したように、ケース体21の底面21Dでは、主に、外周壁部32及び壁部21Bの形成領域以外は、開口した状態となる。外周壁部32と壁部21Bとの間及び壁部21B同士の間は、棒状体22の収納空間31として用いられる。そして、収納空間31は、壁部21Bに沿って滑走板11の長手方向に延在すると共に、ケース体21が滑走板11に固定されることで、滑走板11の天面11Aにて塞がれ、棒状体22がケース体21の外部へと抜け落ち難くなる。
【0051】
尚、詳細は後述するが、本実施形態では、ケース体21の両サイドの長辺を有する領域が、棒状体22の配設領域35として用いられ、棒状体22は、それぞれ2本ずつ収納空間31へと配設される。
【0052】
図4(A)では、図3(A)に示すケース体21を前方側から見た側面図である。図示したように、ケース体21の外周壁部32は、滑走板11の長手方向に延在する。また、ケース体21の天面21Aは略平面状に形成され、ケース体21の外周壁部32の底面21Dは、その中央領域L1が直線形状に形成され、その両側領域L2が湾曲形状に形成される。
【0053】
また、外周壁部32では、その両端部の厚みT2,T3が、その中央領域の厚みT1よりも厚くなる。また、外周壁部32の両端部では、滑走板11の長手方向の端部側に位置する厚みT2の方が、滑走板11の中央領域側に位置する厚みT3よりも厚くなる。尚、図4(A)及び図4(B)に示すように、壁部21Bの滑走板11の長手方向の構造も、上述した外周壁部32と同様に、T2>T3>T1の関係を満たすように形成される。
【0054】
図1(B)を用いて説明したように、滑走板11がスノーボード板の場合には、その板構造として、その天面11Aは、一定の曲率にて湾曲した湾曲面として形成される。そのため、上述したように、ケース体21の厚みがT2>T3>T1の関係を満たすことで、ケース体21の滑走板11への固定状態において、少なくともケース体21の長手方向の両端部が、滑走板11を上方から押圧した状態にて天面11Aと接触する構造が実現される。尚、ケース体21は、樹脂部材となることで、少なくとも滑走時には、ユーザの荷重も加わることで、その底面21Dの略全面が滑走板11の天面11Aに対して接触した状態となる。
【0055】
図4(B)では、図3(C)に示すケース体21のA-A線方向の断面を示す。図示したように、外周壁部32及び複数の壁部21Bは、天面21Aと連続して形成されると共に、滑走板11の短手方向に略一定間隔に配列される。また、ケース体21の両サイドの棒状体22の配設領域35が、その他の中央領域よりも長く形成され、その収納空間31に棒状体22が収納される。尚、取付孔21Cは、壁部21Bの一部を利用して形成される。
【0056】
この構造により、ケース体21が滑走板11に固定された状態では、ケース体21が撓むことで、少なくともケース体21の外周壁部32及び棒状体22の配設領域35の壁部21Bが、滑走板11の天面11Aと接触した状態となる。そして、ケース体21は、滑走板11の湾曲動作に連動して上方へと湾曲することで、反力が発生し、滑走板11を下方へと押圧する。その結果、棒状体22よりは小さいが、ケース体21も滑走板11に対して剛性を付与する部材として用いられ、ユーザによる滑走板11の操作性を高めることができる。
【0057】
次に、図5(A)は、本実施形態の滑走補助具10の棒状体22を説明する側面図である。図5(B)は、図5(A)に示す棒状体22をケース体21へ収納する際の一例を説明する上面図である。図5(C)は、図5(A)に示す棒状体22をケース体21に収納する際の変形例を説明する断面図である。尚、図5(B)では、説明の都合上、棒状体22及び壁部21Bも実線にて示す。
【0058】
図5(A)に示す如く、棒状体22は、断面視略四方形形状のアルミニウム製の細長い柱状体であり、その両端部側には、その底面22B側から切削された窪み領域22Aが形成される。この構造により、棒状体22の窪み領域22Aの厚みT4は、切削されていない棒状体22の中央領域R1の厚みT5よりも薄くなる。尚、上記棒状体22の厚みT4は、滑走板11と接触した際に上方へと折り曲げられない程度の強度を有すると共に、滑走板11の所望の湾曲量を実現するように設計される。
【0059】
この構造により、滑走板11の湾曲量が少ない場合には、棒状体22は、その中央領域R1にて滑走板11の天面11Aと接触し、上記窪み領域22Aでは滑走板11と非接触の状態となり、滑走板11への剛性の付与は小さくなる。そして、棒状体22の上記接触状態は、主に、ユーザが雪上を真っ直ぐ滑走し、滑走板11に対して遠心力等の外力が加わり難い場合の滑走状態である。
【0060】
一方、滑走板11の湾曲量が多い場合には、棒状体22は、その中央領域R1及びその両端部またはその近傍領域にて滑走板11の天面11Aと接触した状態となり、滑走板11の剛性を高める。そして、棒状体22の上記接触状態は、主に、ユーザが滑走時にターンを行っている状態であり、滑走板11に対して遠心力等の大きい外力が加わっている場合の滑走状態である。
【0061】
図5(B)に示す如く、ケース体21は、滑走板11の天面11Aに対して、短手方向の両側端部近傍まで配設される。そして、本実施形態では、全部で4本の棒状体22が、ケース体21の収納空間31内へと配設され、各2本の棒状体22が、それぞれ滑走板11の両側端部に沿って配設される。つまり、棒状体22よりも弾性力に富んだ樹脂製のケース体21が滑走板11の短手方向における略全面に渡り配設されると共に、高い剛性を有する棒状体22は、滑走板11のエッジ周辺に配設される。
【0062】
ユーザは、例えば、滑走時のターン動作では、荷重移動や遠心力を利用して、滑走板11を湾曲させると共に滑走板11のエッジを用いて滑走板11の滑走ラインを調整する。そのため、棒状体22が、滑走板11のエッジ周辺に配設されることで、雪面と接触しているエッジ及びその周辺領域に適切な剛性を付与することができる。その一方、上記ターン動作の際に雪面から離間する等、その操作性に影響の少ない滑走板11の中央領域には、棒状体22の配設を不要とすることも出来る。
【0063】
この構造により、スノーブーツ64(図6(B)参照)の下方に棒状体22が配設されることで、ユーザは、滑走板11上での足元が固くなることで、滑走板11上での安定性が良くなり、滑走時にバランスを崩し難くなることで転倒を回避し易くなる。また、ユーザは、滑走板11上での足元が広くなることで、滑走板11へと力の伝達出来る範囲が広くなる。そして、ユーザは、滑走板11への力の伝達効率が良くなると共に、滑走板11の捻じれ強度も増すことで、棒状体22との非接触領域の滑走板11を効率良く曲げることで、滑走板11の操縦性が向上される。
【0064】
また、ユーザの技量や目的に応じて、棒状体22の本数を調整することで滑走板11へ付与する剛性を適宜調整することが可能となると共に、必要以上の棒状体22を滑走板11上に配設することが防止され、滑走板11の総重量を軽くすることが出来る。また、滑走板11の両エッジ側において、棒状体22の本数を変える調整や棒状体22の配設位置を変える調整も可能となり、上記ユーザの技量等に合わせた、オリジナルのカスタマイズも簡単に行うことが出来る。
【0065】
更には、棒状体22は細長い柱状体であり、ケース体21の収納空間31に合わせて一定間隔離間して配設される。そして、滑走板11の湾曲量は、滑走板11の長手方向での曲げ応力と滑走板11の短手方向での捩じれ応力との合成により成される。
【0066】
上述したように、棒状体22が、滑走板11の中央領域に配設されず、また、上記エッジ周辺領域でも、プレート状でなく、個々に独立して配設される。この構造により、特に、滑走板11の短手方向での捩じれ応力を必要以上に規制することを防止する。そして、滑走板11に滑走補助具10を配設した場合でも、滑走板11本来の湾曲特性を維持しつつも、滑走板11の長手方向の剛性を調整することで、ユーザによる滑走板11の操作性が向上される。
【0067】
尚、図示したように、ケース体21には、その長手方向(紙面左右方向)の両端部にそれぞれ窪み領域33,34が形成され、その中央領域での滑走板11の接触領域が低減される。この構造により、ケース体21においても、滑走板11の短手方向での捩じれ応力を必要以上に規制することが防止される。
【0068】
図5(C)に示す如く、棒状体22は、その長手方向(紙面左右方向)の両端部に、ゴム等の弾性部材から成るスペーサ41を配置して、ケース体21の収納空間31へと配設される場合でも良い。上述したように、棒状体22は、滑走板11にビス等により固定されることなく、滑走板11の天面11A上に配設される。そして、ユーザがビンディング装置12を介して滑走板11上に乗り、ケース体21が撓むことで、棒状体22を滑走板11に対して固定状態とする。
【0069】
そこで、図示したように、棒状体22は、予め、スペーサ41を利用してケース体21の収納空間31内に位置固定される場合でも良い。この場合には、ユーザが、ゲレンデ等にて滑走板11を手で持って移動する際に、棒状体22が、ケース体21の収納空間31内を移動し、滑走板11の天面11Aと擦れることで、滑走板11を傷つけることが防止される。
【0070】
次に、図6(A)は、本実施形態の滑走補助具10のケース体21を説明する側面図である。図6(B)及び図6(C)は、本実施形態の滑走補助具10の使用状態を説明する断面図である。尚、図6(A)から図6(C)では、説明の都合上、それぞれの構成部材を概略的に示す。
【0071】
図6(A)に示す如く、ケース体21の外周壁部32の底面21D及び少なくとも棒状体22の配設領域35(図4(B)参照)の壁部21Bの底面21Dでは、滑走板11の天面11Aの湾曲形状に対応して、中央領域L1と両側領域L2にてその厚みT1,T2,T3を変えて形成される。例えば、ケース体21が滑走板11の上面に固定される前の単に載置された状態では、ケース体21の底面21Dでは、その長手方向の両端部が滑走板11の天面11Aと接触するが、少なくともその中央領域L1が天面11Aから10mm程度浮いた状態となる。尚、好ましくは、ケース体21の底面21Dの中央領域L1が、3mmから5mm程度浮いた状態となるか、あるいは、ケース体21の底面21Dの略全面が天面11Aと接触した状態となる。
【0072】
図示したように、ケース体21の底面21Dでは、滑走板11の長手方向の端部側に位置する厚みT2の方が、滑走板11の中央部側に位置する厚みT3よりも厚くなる。また、ケース体21の厚みT2,T3は、その中央領域の厚みT1よりも厚くなる。
【0073】
この構造により、ケース体21を滑走板11に固定する際に、ケース体21が上方側へと若干撓むように固定具23(図2参照)を締め込むことで、少なくともケース体21の外周壁部32及びその周辺領域の壁部21Bが滑走板11の天面11Aと接触する。そして、図6(B)及び図6(C)に示すように、ユーザが滑走板11上に乗った状態では、ケース体21はその上面側から押圧されることで、ケース体21の外周壁部32及びその周辺領域の壁部21Bは、滑走板11の天面11Aを上方から押圧するように更に密接に接触する。
【0074】
その結果、滑走板11及び滑走補助具10は雪上を滑走するが、雪がケース体21内部の収納空間31内に侵入し難くなり、棒状体22が雪に晒されることが防止される。そして、棒状体22と天面11Aとの隙間が雪により埋設され、滑走板11の剛性が高くなり過ぎることが防止される。また、棒状体22が、滑走中にケース体21の外部へと抜け落ちることが防止される。
【0075】
図6(B)では、ユーザが滑走板11を装着し、例えば、雪上を真っ直ぐ滑走している際の滑走補助具10の使用状態を示す。この滑走状態では、滑走板11に遠心力等の大きな外力が加わることがなく、滑走板11は、ほとんど湾曲していない状態である。
【0076】
図示したように、切削加工が施されていない棒状体22の中央領域R1は、ユーザの荷重を利用して滑走板11の天面11Aに対して固定され、棒状体22が、滑走板11を上面から押圧した状態となる。一方、窪み領域22Aが形成された棒状体22の両端部では、棒状体22が天面11Aから離間した状態となる。
【0077】
この構造により、棒状体22は、天面11Aと接触する中央領域R1にて滑走板11へ剛性を付与するが、滑走板11は、天面11Aとの離間距離L1を利用して湾曲することが可能となる。そして、滑走板11の棒状体22と非接触の領域では、その剛性が小さいことで湾曲させ易くなる。その結果、上記離間距離L1により滑走板11が湾曲することで、ユーザが、雪面の凹凸形状を滑走する際に、滑走板11が跳ね上げられ難くなる等、滑走板11の操縦性が向上される。また、ユーザのスノーブーツ64の下が、常時、棒状体22の中央領域R1に支えられることで、上述したように、安定した滑走が実現される。
【0078】
図6(C)では、ユーザが滑走板11を装着し、例えば、雪上をターンしている際の滑走補助具10の使用状態を示す。この滑走状態では、ターン時の速度やユーザからの荷重量等にも影響するが、図6(B)の滑走状態よりも大きな遠心力等の外力が滑走板11に加わることで、滑走板11は、大きく湾曲している状態である。
【0079】
図示したように、棒状体22は、その中央領域R1にて滑走板11と接触し、滑走板11を上面から押圧した状態となる。一方、棒状体22は、丸印61,62にて示す両端部及びその近傍領域にて、滑走板11と接触し、滑走板11がそれ以上湾曲することを規制する。特に、丸印61にて示す領域では、滑走板11の長手方向の端部側に位置することで、滑走板11が湾曲することを規制する。
【0080】
この構造により、棒状体22は、その中央領域R1及び丸印61,62にて示す両端部及びその近傍領域にて、滑走板11へと大きな剛性を付与する。そして、ユーザは、ターン動作時に、滑走板11が湾曲し過ぎて滑走ラインから外れて回転し過ぎてしまうことや滑走時のスピードが減速し過ぎることが防止される。
【0081】
更には、ケース体21は、樹脂部材から成ることで、ある程度の可撓性を有するが、図6(C)に示す状態では、滑走板11により大きく上方へと湾曲させられることで、矢印63にて示すように、滑走板11に対して大きな反力を発生させる。そして、ターン動作時の後半では、遠心力等の外力が弱まると共に、ユーザの荷重位置の移動により滑走板11の湾曲量は低減していく。
【0082】
このとき、滑走板11では、滑走板11の元の形状に戻ろうとする弾性力に加えて、矢印63にて示すケース体21が元の形状に戻ろうとする反力(ケース体21の弾性力)を用いることが出来る。その結果、ユーザは、ターン動作時の後半に滑走板11を所望の滑走ラインへと導き易くなり、滑走板11の操作性が向上すると共に、ターン後の加速力を高めることが出来る。
【0083】
上述したように、滑走補助具10では、樹脂製のケース体21と金属製の棒状体22のように、剛性の異なる部材を用いて滑走板11の剛性を変化させる。この構造により、直線状に滑走する等、遠心力があまり加わらない通常の滑走時には、棒状体22と天面11Aとの接触領域を制限し、必要以上に滑走板11へ剛性を付与することを防止することで、滑走板11の有する特性を優先し、ユーザは滑走板11の本来の特性による滑走を楽しむことが出来る。一方、滑走時のターンの際等、滑走板11の剛性が必要な滑走状態では、棒状体22により滑走板11に剛性を付与することで、滑走板11が必要以上に湾曲し難くなる。そして、雪面の凹凸形状や雪質の変化による滑走板11の湾曲量の変化が低減され、ユーザによる滑走板11の操縦性が向上される。
【0084】
尚、本実施形態では、棒状体22は、その中央領域R1よりも両端部側の窪み領域22Aの方が薄く形成される場合について説明したが、この場合に限定するものではない。棒状体22は、その長手方向の両端部及びその周辺領域において、滑走板11の天面11Aとの間に隙間を有した状態にて配設されることで上述した効果と同様な効果を得られ、棒状体22の形状は任意の設計変更が可能である。
【0085】
また、棒状体22が、ケース体21の収納空間31に対して複数本、上記本実施形態では4本配設される場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、棒状体22の中央領域R1にて複数の棒状体22が、滑走板11の短手方向に連結した櫛歯形状となり、一体に取り扱い出来る場合でも良い。この場合でも、窪み領域22Aでは、棒状体22は、それぞれ独立した状態となり、滑走板11の滑走状態に応じて、個々に滑走板11へ剛性を付与することとなり、滑走板11へ必要以上の剛性を付与し、ユーザの滑走板11の操縦性を悪化させることを防止できる。
【0086】
また、ケース体21の底面21Dにおいて、その中央領域L1が直線形状に形成され、その両側領域L2が湾曲形状に形成される場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、ケース体21の両側領域L2も直線形状に形成される場合でも良い。あるいは、ケース体21の底面21Dが、滑走板11の天面11Aの湾曲形状に沿って湾曲形状に形成され、底面21Dの曲率が、天面11Aの曲率と略同一または大きく形成される場合でも良い。つまり、上述したように、ケース体21の上記配設領域35の底面21Dの略全面、好ましくは、ケース体21の底面21Dの略全面が、少なくとも滑走板11の滑走時において、滑走板11の天面11Aに対して接触することで、上述した効果と同様な効果が得られる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
10 滑走補助具
11 滑走板
11A 天面
12 ビンディング装置
21 ケース体
21A 天面
21B 壁部
21C 取付孔
21D 底面
22 棒状体
22A 窪み領域
22B 底面
23 固定具
31 収納空間
32 外周壁部
33,34 窪み領域
35 配設領域
41 スペーサ
【要約】
【課題】従来のスキー板の剛性調整機構では、滑走状態に応じてスキー板への剛性を調整し難く、また、スキー板の総重量が重くなり、その操縦性が悪いという課題がある。
【解決手段】
本発明の滑走補助具10は、主に、ケース体21と、ケース体21の内部に収納される複数の棒状体22と、ケース体21を滑走板11に固定する固定具23と、を備える。そして、ケース体21は、滑走板11の天面11Aと接触した状態にて滑走板11に固定される。また、棒状体22は、ケース体21よりも剛性が高い部材である。この構造により、滑走板11の滑走状態に応じて、棒状体22と滑走板11の天面11Aとの接触状態が変化し、滑走板11へ付与する剛性を変化させることで、ユーザの滑走板11の操縦性が向上される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7