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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】椅子用クッション
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/15 20060101AFI20220331BHJP
   A61G 5/12 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A47C27/15 B
A47C27/15 A
A61G5/12 707
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021087856
(22)【出願日】2021-05-25
【審査請求日】2021-05-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598093691
【氏名又は名称】株式会社オムニ商会
(74)【代理人】
【識別番号】100145078
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】播磨 孝司
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 利享
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-217867(JP,A)
【文献】特開2015-181912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00-22
A61G 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子の座面に載置するクッション体と、該クッション体より硬い素材で成形し、クッション体の下面に設けられて前記座面に圧接するアンカーとから構成してなるクッションであって、
前記アンカーは上面と下面が平面視で台形状をなし、該上面に対して下面を小さく設定することにより、前後及び左右の4面の側面を下向きの傾斜面にした立体からなり、前記クッション体の横幅方向中央に位置して幅広の前側面を該クッション体の前側に、幅狭の後側面をクッション体の後側に向けて配置してある椅子用クッション。
【請求項2】
前記クッション体は、柔らかい上側層と、該上側層より硬い中間層と、該中間層より硬い下側層の三層で成形してあることを特徴とする請求項1記載の椅子用クッション。
【請求項3】
前記クッション体及びアンカーは、カバーで一体に覆ってある請求項1記載の椅子用クッション。
【請求項4】
前記カバーは、防水性を有するインナーカバー体と、該インナーカバー体を覆うアウターカバー体とから構成してある請求項3記載の椅子用クッション。
【請求項5】
前記アウターカバー体は、前記座面に接する下面を滑り止め面に加工してある請求項4記載の椅子用クッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子、車椅子等の座面に配置することで着座者の坐骨を正しい位置と状態に保持し、長い間着座していても疲れることなく正しい姿勢を維持することができる椅子用クッションに関する。
【背景技術】
【0002】
車椅子を含む椅子に着座した場合、着座者の坐骨と大腿部の位置が座面に正しい状態に保持されることが姿勢を正しく保つために必要である。より詳しくは、図10に示すように、着座者Pの坐骨と大腿部が椅子Cの座面Cに対して正しく保持されることで、腰椎、脊髄、頚椎が緩やかなS字で積み上がり、その上に頭部が位置して正しい姿勢が形成される。
しかし、加齢や運動不足等の理由により背筋や腹筋の筋力が弱くなると坐骨は後方に傾き易くなり、後ろに傾くと脊椎の機能的なS字カーブはC字カーブに変化し、図11に示すような所謂円背(不良姿勢)になってしまう。この不良姿勢は、尾骨の褥瘡発症の危険性を高め、また下肢や脊柱の変形を助長することになり、特に高齢者や障害者には重大な健康被害を及ぼす結果になる。
【0003】
そこで、坐骨と大腿部が前方に次第にずれて姿勢が猫背状態になり腰椎や脊椎を痛めるのを防止し、正しい姿勢を保持するために坐骨を正しい位置に支えることが必要であるとする近年の人間工学の視点から、坐骨を正しい姿勢に支えるために仙骨及び坐骨を正しい位置に支える考え方が研究されている。
【0004】
具体的には、クッション材3の下面に平板5を配し、大腿部座面の方が臀部座面に比べて2cm以上厚くすることで、椅子や車椅子に座っていると臀部が前方にずれるのを防止する座布団が提案されている(特許文献1)。また、プラスチック発泡体からなるアンカー材1の上に緩衝材2を一体化し、大腿部下に位置するアンカー材よりも座骨下に位置するアンカー材の厚みを薄くすることで、着座時に後傾姿勢になるようにした着座姿勢保持用クッションが提案されている。このクッションは、アンカー材に坐骨下に位置する部分に開口部を設けることで尾骨や坐骨が座面からの反発をなくするようにもしてある(特許文献2)。
【0005】
更に、矩形状のウレタンフォームAと、該ウレタンフォームAの1.3~1.5倍の厚さを有するウレタンフォームBと、該ウレタンフォームBより薄く形成したウレタンフォームCとを備え、ウレタンフォームB及びCをウレタンフォームAの下面に併設貼着して構成し、ウレタンフォームの硬度はC>B>Aとすることで、車椅子の着座者が前方にずり落ちにくくしたクッションが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-85207号公報
【文献】特開2012-29998号公報
【文献】実用新案登録第3106227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1~3の先行技術は、椅子や車椅子の着座者の臀部が前方にずれるのを防止して姿勢の安定化を図ることを目的としている。しかし、いずれの先行技術も、大腿部より臀部を下方に位置させる、即ち臀部を大腿部より落とした状態にするもので、反って腰椎がくの字状に屈曲する状態になり、着座時間が長いと屈曲の状態が長く続いて腰を痛めるという問題がある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みなされたもので、椅子の座面に載置するクッションの下面にアンカーを突設した構成にすることで、背筋や腹筋の筋力が低下している高齢者や身体障碍者の臀部が前方にずれるのを防止し、しかもクッションの上面は平坦面で臀部の沈み込みがなく腰椎が屈曲することもないので負担を掛けずに着座時の姿勢を適正に保持することができる椅子用クッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上述した課題を解決するために構成した請求項1に係る本発明の手段は、椅子の座面に載置するクッション体と、該クッション体より硬い素材で成形し、クッション体の下面に設けられて前記座面に圧接するアンカーとから構成してなるクッションであって、前記アンカーは上面と下面が平面視で台形状をなし、該上面に対して下面を小さく設定することにより、前後及び左右の4面の側面を下向きの傾斜面にした立体からなり、前記クッション体の横幅方向中央に位置して幅広の前側面を該クッション体の前側に、幅狭の後側面をクッション体の後側に向けて配置した構成からなる。
(2)また、前記クッション体は、柔らかい上側層と、該上側層より硬い中間層と、該中間層より硬い下側層の三層で成形するとよい。
(3)前記クッション体及びアンカーは、カバーで一体に覆うとよい。
(4)また、前記カバーは、防水性を有するインナーカバー体と、該インナーカバー体を覆うアウターカバー体とから構成するとよい。
(5)更に、前記アウターカバー体は、前記座面に接する下面を滑り止め面に加工するとよい。
【発明の効果】
【0010】
(1)椅子の座面に載置した椅子用クッションは、着座者の臀部と大腿部を適切な位置に支持するので坐骨が後傾することがなく、猫背にならない正しい姿勢を保つことができる。
(2)アンカーは幅広の前側面を座面の前側に、幅狭の後側面を座面の後側に向けて配置した構成にしたから、着座者の臀部と大腿部が前方向にずれるのを防止できる。
(3)アンカーは、上面に対して下面を小さく設定して4面の側面が下向きの傾斜面に形成したから、着座することで着座面側が広がる大腿部を圧迫することがない。
(4)クッション体は、着座者への当りが柔らかい上側層と、上側層より硬くすることで上側層を支える中間層と、座面の撓みの影響を少なくし、またアンカーの押上げ力を上方に伝える硬さの下側層の三層で成形したから、着座者に対してアンカーの機能を違和感なく、かつ確実に発揮することができる。
(5)クッション体及びアンカーは、カバーで一体に覆ったから、クッション体とアンカーを摩擦による損傷と汚れから保護する。
(6)アウターカバー体は、下面に滑り止め面を加工したから、着座者の動きが多い車椅子であっても椅子用クッションが座面から前後方向にずれるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本発明の実施の形態に係る椅子用クッションの正面図である。
図2】椅子用クッションの背面図である。
図3】椅子用クッションの側面図である。
図4】アンカーの底面図である。
図5】アンカーの側面図である。
図6】クッション体とアンカーの配設位置を示す底面図である。
図7】椅子用クッションの一部を破断して示す正面側斜視図である。
図8】椅子用クッションの側面図である。
図9】着座者とクッション体及びアンカーの位置関係を示す模式図である。
図10】椅子に正しく着座した姿勢の状態図である。
図11】坐骨を後傾して着座した時の不良姿勢の状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。図1乃至図3において、1は椅子用クッション、2は該椅子用クッション1を構成するウレタン製のクッション体を示す。該クッション体2は、前面2A、後面2B及び左右の側面2C、2Cの長さLを例えば約40cm、厚さTを約6cmの四角形の立方体からなっている。そして、クッション体2は各々の厚さTが約2cmの上側層3、中間層4、下側層5の3層の積層体からなり、柔らかい上側部3に対して中間層4は幾分硬い素材を用い、下側層5はウレタンチップで成形することで、硬さは上側層3<中間層4<下側層5という関係に設定してある。
【0013】
このように、上側層3を柔らかく設定したのは着座者の臀部(坐骨)と大腿部への当りを柔らかくするためであり、中間層4は上側層3を支えるために硬くしてある。下側層5は中間層4より硬くすることで、椅子Cの座面の撓み(船底状になる状態)に影響されるのを可及的に小さくし、また後述するアンカー6の押上げ力を吸収することなく上に伝えるためである。
【0014】
6はウレタンチップで成形し、前記クッション体2の下面2Dに着設したアンカーを示す。該アンカー6は台形状の上面6Aと、該上面6Aより小さい台形状の下面6Bと、横幅の広い前傾斜面6Cと、該前傾斜面6Cより横幅の狭い後傾斜面6Dと、左右の横傾斜面6E、6Eとから台形体に成形してある。
【0015】
上述したアンカー6の寸法は、一例として、台形状の上面6Aは前横幅Wを約9cm、後横幅Wを約5cm、長さLを約13,5cmにしてある。他方、台形状の下面6Bは前横幅Wを約6cm、後横幅Wを約3cm、長さLを約9,5cmにしてある。そして、アンカー6の厚さTは約2cmにしてあり、上面6Aと下面6Bの間の前側面6C、後側面6D、両側面6E、6Eは斜め下向きの傾斜面になっている。
図6はクッション体2に対するアンカー6の配置位置を示し、クッション体2の前後方向長さの中心線C-Cから前側に位置させてある。この位置関係は、股間と左右の大腿部の間にアンカー6を位置させるためである。
【0016】
7は前記クッション体2とアンカー6を一体に覆うカバーを示す。該カバー7は、防水性を有するインナーカバー体8と、該インナーカバー体8を覆うアウターカバー体9とから構成してある。そして、インナーカバー体8は防水性の生地で成形してあり、失禁等によってクション体2が汚れるのを防止している。
【0017】
このインナーカバー体8を覆って保護するアウターカバー体9は、上カバー部9Aと下カバー部9Bからなり、両側面に上から斜め下方にジッパー10を設けて開閉可能な袋状に構成することで、インナーカバー体8の出し入れを容易にしてある。
また、下カバー部9Bの下面にはシリコンを点在して滑り止め面に加工を施してある。
なお、滑り止め面は、シリコンを複数本の線状或いは帯状に施す加工をしてもよいものである。
【0018】
次に、椅子用クッション1の使用方法及び作用について説明する。椅子用クッション1は、車椅子を含む椅子Cの座面にアンカー6を下側にして載置する。アンカー6は図6に示すようにクッション体2の前側に位置させてあり、着座者は図9に示すように、股間と左右の大腿部の間にアンカー6が位置するように着座する。
そして、着座者は座面の奥に深く座ることにより、椅子の背もたれと背中が接し、背もたれが仙骨をサポートする状態になる。加えて、アンカー6が坐骨を支えることで、図11に示すような滑り座りになるのを防ぐ。体の力が多少抜けて良い姿勢を保てない状態でも、仙骨と坐骨をサポートすることによって前ずり状態になるのを防止する。
このように着座者の臀部は椅子用クッション1の後ろ半分の適正な位置に置かれるので、坐骨が後傾する姿勢になることがないし、臀部が前方にずれることもない。
骨格で説明すると、椅子用クッション1は、左右坐骨のやや前方の内側から坐骨を支えることで坐骨が安定する形態にしてあり、また左右の大腿骨を前方に真直ぐに保持する機能を発揮する形態にしてある。
【0019】
なお、本実施の形態で示したクッション体2,アンカー6の長さ、幅等の寸法は例示であり、本願発明はこの数値に限定されるものではない。
【0020】
また、本実施の形態ではクッション体2を構成する上側層3及び中間層4はウレタンで成形し、下側層5はウレタンチップで形成したが、その他に例えばエアセル、発泡ゲルを用いて形成してもよいものである。
【符号の説明】
【0021】
1 椅子用クッション
2 クッション体
3 上側層
4 中間層
5 下側層
6 アンカー
7 カバー
8 インナーカバー体
9 アウターカバー体


【要約】      (修正有)
【課題】椅子の座面に載置するクッションの下面にアンカーを突設した構成にし、背筋や腹筋の筋力が低下している高齢者や身体障碍者の臀部が前方にずれるのを防止し、またクッションの上面は平坦面で臀部の沈み込みがなく腰椎が屈曲しないので腰に負担を掛けずに着座時の姿勢を適正に保持することができる椅子用クッションを提供する。
【解決手段】椅子の座面に載置するクッション体2の下面2Dには、座面に圧接するアンカー6が設けてある。アンカー6は上面と下面6Bが平面視で台形状をなし、前後及び左右の4面の側面6C、6D、6Eを有する立体からなる。クッション体2の横幅方向中央に位置して幅広の前側面6Cをクッション体2の前側に、幅狭の後側面6Dをクッション体2の後側に向けて配置してある。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11