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  • 特許-衣類 図1
  • 特許-衣類 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】衣類
(51)【国際特許分類】
   A41D 31/00 20190101AFI20220331BHJP
   A41D 31/12 20190101ALI20220331BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20220331BHJP
   A41B 9/12 20060101ALN20220331BHJP
【FI】
A41D31/00 502W
A41D31/00 502Q
A41D31/00 502S
A41D31/12
A41D27/00 Z
A41B9/12 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021200629
(22)【出願日】2021-12-10
【審査請求日】2021-12-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000138554
【氏名又は名称】株式会社ユタックス
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 元幸
(72)【発明者】
【氏名】石井 保成
(72)【発明者】
【氏名】畑中 祐香
(72)【発明者】
【氏名】狩田 達也
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-017244(JP,A)
【文献】登録実用新案第3207935(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 31/00
A41D 31/12
A41D 27/00
A41B 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類を構成する生地の表面に樹脂が塗布された樹脂塗布部と、樹脂が塗布されていない樹脂非塗布部とが交互に連続的に配列されており、
前記樹脂塗布部は、樹脂塗布部と樹脂非塗布部とにおける色差が、樹脂非塗布部において水が染み込んでいない通常の状態時と生地表面に水が染み込んだ状態時との色差と同程度となるように、樹脂が塗布されており
一の樹脂塗布部と、他の樹脂塗布部との間の樹脂非塗布部の幅が3mm以下である
ことを特徴とする衣類。
【請求項2】
前記樹脂塗布部は、その表面が生地を構成する繊維の凹凸に沿って樹脂が塗布されている
ことを特徴とする請求項1に記載の衣類。
【請求項3】
前記樹脂塗布部は、その表面が光を乱反射するように樹脂が塗布されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の衣類。
【請求項4】
前記生地に塗布される樹脂は、生地よりも親水性を有する樹脂である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類に関するものであり、染みが目立ちにくい衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
水分を含む汗や尿等で衣類に染みが発生することがある。衣類への染みが外から視認できる状態になると、着用者はある種の恥ずかしさを感じることになる。そのため、これまでに染み対策を施した衣類について種々の提案がなされている。例えば、特許文献1では、汗による汗ジミを可及的に視認しにくくすることができる衣服として、疎水層と吸水層の二層構造とし、疎水層の編組織をメッシュ状とした汗ジミ防止パッドを、脇ぐり部の内側に突出して装着者の脇の下に挟まれるようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3207935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のような汗取りパッドや尿取りパッドを取り付けたり、水分を吸収する生地を肌側に別途設けたりすると、染みの発生を防ぎたい箇所、例えば脇下や股間などの部分が分厚くなり、着用感を悪くするという問題がある。また、当該箇所が他の箇所よりも分厚くなるために、外観も悪くなってしまうこともある。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、着用感や外観を悪くすることなく、染みが発生しても染みを目立たなくすることができる衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係る衣類は、衣類を構成する生地の表面に樹脂が塗布された樹脂塗布部と、樹脂が塗布されていない樹脂非塗布部とが交互に連続的に配列されており、前記樹脂塗布部は、樹脂塗布部と樹脂非塗布部とにおける色差が、樹脂非塗布部において水が染み込んでいない通常の状態時と生地表面に水が染み込んだ状態時との色差と同程度となるように、樹脂が塗布されていることを特徴とする。
【0007】
ここで、前記樹脂塗布部は、その表面が生地を構成する繊維の凹凸に沿って樹脂が塗布されているのが好ましい。
【0008】
また、前記樹脂塗布部は、その表面が光を乱反射するように樹脂が塗布されているのも好ましい。
【0009】
さらに、前記生地に塗布される樹脂は、生地よりも親水性を有する樹脂であるのが好ましく、一の樹脂塗布部と、他の樹脂塗布部との間の樹脂非塗布部の幅が3mm以下であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る衣類によれば、衣類を構成する生地に樹脂を塗布する際に、樹脂を塗布する箇所と塗布しない箇所との色差を、樹脂を塗布しない箇所の通常時と水分を染み込ませた時の色差と同程度となるようにし、樹脂を塗布した生地を衣類の表面において染み出しが発生する箇所として使用するので、着用感や外観を悪化させることなく、衣類の表面側に染み出しが発生しても染みが目立たちにくい衣類が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る衣類を構成する生地の一部を示す図である。
図2】生地に水分が染み込んだ状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る衣類について、実施の形態に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る衣類を構成する生地の一部を示す図である。
【0014】
本実施形態の衣類を構成する生地は、生地表面に樹脂が塗布された樹脂塗布部1と、樹脂が塗布されていない樹脂非塗布部2が交互に連続的に配列されて構成されている。一定の間隔を空けて生地表面に樹脂を塗布して樹脂塗布部1を形成することにより、樹脂が塗布されていない樹脂非塗布部2が形成されることになる。
【0015】
ここでは、樹脂が塗布される樹脂塗布部1の形状が四角形とし、この四角形が並ぶパターン(ダイヤ柄)を示しているが、塗布パターンはこれに限られるものではない。樹脂塗布部1の形状を適宜変更して、塗布パターンによってデザイン性をもたせるようにしてもよい。
【0016】
樹脂塗布部1に塗布される樹脂は、例えば、水系ウレタン樹脂であり、親水基(アニオン性、カチオン性、ノニオン性)または親水性セグメントを付与した樹脂である。親水基または親水性セグメントがある水系ウレタン樹脂を塗布して樹脂塗布部1を形成することにより、樹脂塗布部1には、水を引き寄せる効果を発揮することになる。
【0017】
樹脂塗布部1を形成するために樹脂を塗布する際には、樹脂塗布部1と樹脂非塗布部2との間に色差が生じるようにする。この樹脂塗布部1と樹脂非塗布部2との間の色差は、樹脂非塗布部2において水が染み込んでいない通常の状態時と生地表面に水が染み込んだ状態時との間の色差と同程度となるように調整されている。樹脂塗布部1と樹脂非塗布部2との間の色差が樹脂非塗布部2の通常時と水染み込み時の色差と同程度というのは、堅牢度用の変退色用グレースケール、又は、汚染用グレースケールを基準としてこれらの基準で等級が同じであるか、または、半級差以内であることをいう。
【0018】
このように樹脂塗布部1と樹脂非塗布部2との間の色差を樹脂非塗布部2の通常時と水染み込み時の色差と同程度となるように樹脂塗布をした生地を、衣類の表面において染み出しが発生する箇所として使用することにより、表面側に染み出しが発生しても染みを目立たなくすることができる。
【0019】
図2は生地に水分が染み込んだ状態を示す図である。
【0020】
樹脂が塗布されている箇所である樹脂塗布部1では染み込んだ水分の染み出しは生じず、樹脂が塗られていない箇所である樹脂非塗布部2では染み出し3が生じる。このとき、染み出し3により樹脂非塗布部2で発生する生地の色の変化を、樹脂塗布部1の色に対して色差を同程度に抑えることで、樹脂塗布部1と同一化し、染みを遠目には分かりにくくすることができる。
【0021】
ここで、樹脂塗布部1と、樹脂非塗布部2における染み出し3との色差を小さくするために、樹脂を塗布し乾燥させた後の樹脂塗布部1の表面を平らにするのではなく、生地の繊維の凹凸に沿うように凹凸を持たせるのが好ましい。汗や尿による染み出しは、生地表面に膜を張るようなことはないので、樹脂塗布部1の表面を平らにしていると、色差が変らなくても光の反射で大きく変わってしまうことがある。その結果、樹脂塗布部1と染み出し3とが同一化しにくくなり、染みの有無を識別可能になってしまうからである。従って、樹脂を塗布し乾燥させた後の樹脂塗布部1は、鏡面反射でなく、光を乱反射するように仕上げるのが好ましい。
【0022】
樹脂の塗布表面の凹凸は、スクリーンのメッシュの密度により調整される。メッシュ密度が高いほど、塗布表面を均一に(平らに)塗布することができるので、比較的粗いメッシュのスクリーンを使用するのがよいといえる。1インチ当たり30本の糸がある30メッシュから380メッシュ程度のスクリーンがあり、このうち60~90メッシュのものが適当である。また、メッシュの紗の素材としては、樹脂製またはステンレス製のものがあるが、樹脂製が生地の凹凸になじむので好ましい。
【0023】
さらには、樹脂の塗布表面を、生地の繊維の凹凸とは異なる細かな凹凸にして、光を乱反射するように仕上げるとなおよい。この場合、塗布した樹脂が一様に溶けることで塗布表面が滑らかな平滑面とならないように、塗布した樹脂の乾燥温度を調節することにより、樹脂の塗布表面を細かな凹凸に仕上げるのが好ましい。樹脂の塗布表面を細かな凹凸に仕上げると、光がさらに乱反射し、樹脂の塗布表面も斑があるように見える。樹脂非塗布部2に水が染み込んだときには、水が染み込んだ部分と、水が染み込んでいない部分とができ、これらによって斑が生じる。この樹脂非塗布部2に生じた斑が、樹脂の塗布表面の斑があることにより、さらに目立ちにくくなる。
【0024】
また、樹脂塗布部1に塗布される樹脂が親水性を有する場合、汗や尿などの水分が生地の肌側から生地の外側(表面側)へ染み込んでいくとき、樹脂の付近を通ると水分は樹脂の方向へ引き寄せられ、樹脂が塗布されている箇所の生地内側に溜まることになる。染み込もうとする水分の量が少ない場合、樹脂塗布部1における樹脂と生地との間に水分は留まり、生地の外側へ染み出すことがなく、また、留まった水分は、樹脂によって阻害されて視認することはできないので、他人に気づかれることもない。
【0025】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0026】
本発明の効果を確認するために、樹脂塗布部の単位柄の大きさと、柄間の間隔を変更したものを用意した。
【0027】
(実施例1)
ナイロンとポリウレタンを経編した2ウェイの生地に樹脂を塗布し、樹脂塗布部と樹脂非塗布部とを形成した。
【0028】
塗布する樹脂は、ポリウレタン樹脂エマルジョンとエチレングリコールと界面活性剤とを適量で混ぜたもの(樹脂1)と、ウレタン系樹脂とブチルセロソルブと界面活性剤とを適量で混ぜたもの(樹脂2)の2種類とした。
【0029】
塗布方法は、スクリーンプリントによるものとし、塗布厚みは200ミクロン程度とした。樹脂の塗布面は、均一な面ではなく、生地の繊維に沿って凹凸をつけ、光を乱反射するようにした。
【0030】
樹脂塗布部の単位柄は図1に示すダイヤ柄で、樹脂塗布部の1辺の長さを5mmとした。
【0031】
樹脂塗布部の柄の間隔、すなわち、樹脂非塗布部が形成する樹脂塗布部同士の間隔を2mm、3mm、5mm、8mmとして、水滴下した状態を視認して比較を行った。その結果を表1に示す。評価の○は「染みが目立ちにくい」、△は「やや目立つ」、×は「目立つ」である。
【0032】
【表1】
【0033】
次に、樹脂塗布部の1辺の長さを7mmとして、同様の比較を行った。その結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
さらに、樹脂塗布部の1辺の長さを10mmとして、同様の比較を行った。その結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
(実施例2)
実施例2では、ナイロンとポリウレタンを丸編みしたダブルニットの2ウェイ生地に樹脂を塗布し、樹脂塗布部と樹脂非塗布部とを形成した。
【0038】
樹脂塗布部の1辺の長さを5mmとして上記実施例1と同様の比較を行った結果を表4、樹脂塗布部の1辺の長さを7mmとした結果を表5、樹脂塗布部の1辺の長さを10mmとした結果を表6に示す。
【0039】
【表4】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】
これらの試験結果から、染み出しの目立ち難さは、樹脂塗布部の単位柄の大きさには影響されず、樹脂非塗布部が形成する柄間の間隔で決まることが分かる。柄間を2mmまたは3mmと小さくすると効果を発揮し、間隔が大きくなると、染み出した部分が明らかに違うパターンとして視認されるために目立つことになる。なお、樹脂1と樹脂2とでは、樹脂1の方が樹脂2よりもツヤ感が少ないため、染みが目立ちにくい結果となった。
【0042】
このように、本実施の形態の衣類によれば、樹脂を塗布した生地を衣類の表面において染み出しが発生する箇所として使用する際に、樹脂を塗布する箇所と塗布しない箇所との色差を、樹脂を塗布しない箇所の通常時と水分を染み込ませた時の色差と同程度となるようにすることで、衣類の表面側に染み出しが生じても染みを目立ちにくくすることができる。つまり、染みの発生を防止するのではなく、発生した染みを目立たなくして、他人に気づかれないようにすることができる。このため、水分を吸収する生地を肌側、特に染みの発生が生じやすい脇下や股間などの部分に設けて分厚くする必要がなくなるので、着用感や外観を悪くすることなく、染みが発生しても外から見て染みが目立ちにくい衣類が実現されることとなる。
【0043】
以上、本発明に係る衣類について実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る衣類は、汗等による染みが生じやすい下着等に適しており、下腹部や脇下等に着用する下着に好適である。
【符号の説明】
【0045】
1 樹脂塗布部
2 樹脂非塗布部
3 染み出し
【要約】
【課題】 着用感や外観を悪くすることなく、染みが発生しても染みを目立たなくすることができる衣類を提供する。
【解決手段】 衣類を構成する生地の表面に樹脂が塗布された樹脂塗布部1と、樹脂が塗布されていない樹脂非塗布部2とが交互に連続的に配列されており、樹脂塗布部1は、樹脂塗布部1と樹脂非塗布部2とにおける色差が、樹脂非塗布部2において水が染み込んでいない通常の状態時と生地表面に水が染み込んだ状態時との色差と同程度となるように、樹脂が塗布されていることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2