(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】感熱記録材料
(51)【国際特許分類】
B41M 5/337 20060101AFI20220331BHJP
B41M 5/333 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B41M5/337 212
B41M5/333 220
(21)【出願番号】P 2021552095
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2020023046
(87)【国際公開番号】W WO2021075084
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2019191109
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391052574
【氏名又は名称】三光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【氏名又は名称】西下 正石
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】石橋 良三
(72)【発明者】
【氏名】大石 高路
(72)【発明者】
【氏名】藤野 能隆
(72)【発明者】
【氏名】木西 良一
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-61612(JP,A)
【文献】特開平10-197362(JP,A)
【文献】特開2017-177627(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109957129(CN,A)
【文献】特開2001-348568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/28-5/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で無色ないし淡色の塩基性染料、加熱により前記塩基性染料と反応して呈色し得る顕色剤、増感剤、および増感助剤を含有する感熱記録層を支持体上に設けた感熱記録材料であって、前記顕色剤が4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンであり、前記増感剤が、1,2-ビス(フェノキシ)エタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、ベンジルオキシナフタレンおよびシュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステルから選ばれる少なくとも1種であり、前記増感助剤がベンゾインであることを特徴とする感熱記録材料。
【請求項2】
前記増感剤と増感助剤との配合比が98:2~40:60である、請求項1記載の感熱記録材料。
【請求項3】
前記増感剤と増感助剤の配合比が90:10~60:40である、請求項1記載の感熱記録材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感熱記録材料に関し、詳しくは、顕色剤として4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンを用いる感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
紙やプラスチックフィルムなどの支持体上に、常温で無色ないし淡色の塩基性染料(ロイコ染料)と、加熱により前記塩基性染料と反応して呈色し得る顕色剤とを含有する感熱記録層が形成された感熱記録材料は、インクやトナーが不要で印字することが可能であり、レシート、FAX用紙、切符などへの印字に、すでに広く実用化されている。感熱性発色剤には、さらに増感剤などの添加剤を添加することができる。
【0003】
前記感熱記録層中、常温で無色ないし淡色の塩基性染料(ロイコ染料)および顕色剤は、それぞれ、固体の状態で分散しているため両者が接触するだけでは反応しないが、感熱記録層に感熱ヘッド、熱ペン等の熱エネルギー(ジュール熱)を加えることにより両者が溶融して反応した結果、加熱部分が発色し、印字することができる。
【0004】
そのような感熱記録材料に求められる性能として、低い熱エネルギーで発色することが求められている。印字前の地肌の白色度、印字のために熱エネルギーを印可した後の地肌部の白色度および印字部の発色濃度、ならびに、その印字部の保存安定性などが挙げられる。感熱記録材料は、通常、室温で光暴露などの外部エネルギーが負荷されない状態で保存するが、ロイコ染料と顕色剤とが反応して、わずかながら発色してしまう可能性がある。「印字部の保存安定性」とは、印字部が高湿度等の環境下に置かれた場合、印字部に、水、油類又は可塑剤が付着した場合等でも消失しない性能を意味する。
【0005】
感熱記録材料によって形成される印字部の前記要求性能は、感熱性発色剤の主成分である塩基性染料、顕色剤、増感剤に拠るところが大きく、とりわけ、顕色剤の影響が大きい。このため、上記の要求性能を満足する顕色剤として、フェノール系化合物、スルホニル尿素化合物など石油化学由来の合成化合物が提案されてきた。その中でもフェノール系化合物が数多く開発され、実用化されている。
【0006】
特に4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンは、安価であり、さらに水や油に対する印字部の保存性に優れているため、広く一般に使用され、特に、レシート関連で最も多く使用されている顕色剤である。
【0007】
しかし、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンは、融点が248℃と高いため発色感度が出にくく、さらに、他のフェノール系顕色剤と異なり、各種増感剤との相溶性が低いことから、感度向上が難しい顕色剤である。感熱記録材料の感度を向上させるために各種増感剤の提案がなされているが、現在、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンに対して相溶性があるジフェニルスルホンのみが、実用的に使用されている増感剤である。
特許文献1には、増感剤として、ジフェニルスルホン以外にもベンゾインが併記されている。このベンゾインを特定顕色剤の増感剤として使用した感熱記録材料が特許文献2および3に開示されている。しかし、増感剤としてベンゾインを単独で使用すると印字部にベンゾインの結晶が急速に成長し、いわゆる粉吹きの現象が見られ、見かけ上の濃度が低下するといった問題がある。特に、高印字エネルギー下での印字の際に、粉吹き現象は顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公昭59-25673号明細書
【文献】国際公開第2016/125460A1号
【文献】特開2019-136983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、顕色剤として4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンを使用した系で発色感度を高めた感熱記録材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、安価な顕色剤である4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンの感度向上を目的として、増感剤および増感助剤について鋭意研究を行い、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、常温で無色ないし淡色の塩基性染料と、加熱により前記塩基性染料と反応して呈色し得る顕色剤4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンとを含有する感熱記録材料において、増感剤として、1,2-ビス(フェノキシ)エタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、ベンジルオキシナフタレンおよびシュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステルから選ばれる少なくとも1種を使用し、さらに、増感助剤として、ベンゾインを添加する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、顕色剤4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンの感度向上のため、増感剤として1,2-ビス(フェノキシ)エタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、ベンジルオキシナフタレンおよびシュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステルから選ばれる少なくとも1種を使用し、かつ、増感助剤としてベンゾインを使用することにより、高感度の感熱記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の感熱記録材料は、常温で無色ないし淡色の塩基性染料、加熱により前記塩基性染料と反応して呈色し得る顕色剤、増感剤、および増感助剤を含有する感熱記録層を支持体上に設けた感熱記録材料であって、前記顕色剤が4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンであり、前記増感剤が、1,2-ビス(フェノキシ)エタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、ベンジルオキシナフタレンおよびシュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステルから選ばれる少なくとも1種であり、前記増感助剤がベンゾインであることを特徴とする。
【0014】
本発明の感熱記録材料において、常温で無色ないし淡色の塩基性染料(ロイコ染料)としてトリフェニルメタン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、スピロ系、フルオレン系、チアジン系化合物が挙げられ、従来公知のロイコ染料から選ぶことができる。
【0015】
本発明に用いることができるロイコ染料として、限定されないが、例えば、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドル-3-イル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(p-メチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-ジエチルアミノ-7-ジベンジルアミノベンゾ[α]フルオラン、3-(1-エチル-2-メチルインドル-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノ-2-n-ヘキシルオキシフェニル-4-アザフタリド、3-(1-エチル-2-メチルインドル-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル-4-アザフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドル-3-イル)フタリド、3-(2-メチル-1-n-オクチルインドル-3-イル)-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-4-アザフタリド、3-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o,p-ジメチルアニリノ)フルオラン、
【0016】
3-(N-エチル-N-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフロロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジ(n-ペンチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-[N-(3-エトキシプロピル)-N-エチルアミノ]-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-n-ヘキシル-N-エチルアミノ)-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-2-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2,2-ビス{4-[6’-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-3’-メチルスピロ[フタリド-3,9’-キサンテン]-2’-イルアミノ]フェニル}プロパン、3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、
【0017】
3,6-ジメトキシフルオラン、3-ピロリジノ-6-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7,8-ジベンゾフルオラン、3-ジエチルアミノ-6,7-ジメチルフルオラン、3-(N-メチル-p-トルイジノ)-7-メチルフルオラン、3-(N-メチル-N-イソアミルアミノ)-7,8-ベンゾフルオラン、3,3’-ビス(1-n-アミル-2-メチルインドル-3-イル)フタリド、3-(N-メチル-N-イソアミルアミノ)-7-フェノキシフルオラン、3,3’-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドル-3-イル)フタリド、3,3’-ビス(1-エチル-2-メチルインドル-3-イル)フタリド、3,3’-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリド、3-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)-7-(N-フェニル-N-メチルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ベンジルアミノフルオラン、3-ピロリジノ-7-ジベンジルアミノフルオラン
などからも選ぶことができ、本発明はこれらに限定されるものではなく、又2種類以上を併用してもよい。
【0018】
本発明の感熱記録材料は、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンを顕色剤とし、当該顕色剤の感度向上のため、増感剤として1,2-ビス(フェノキシ)エタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、ベンジルオキシナフタレンおよびシュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステルから選ばれる少なくとも1種を使用する。さらに増感助剤としてベンゾインを使用することにより高感度の感熱記録材料を提供することができる。
【0019】
従来、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンに対する増感剤としてベンゾインを使用すると、粉吹き現象が生じ、印字後の発色濃度が低下していたが、本発明者らは、驚くべきことに、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンとは相溶性が低い1,2-ビス(フェノキシ)エタンや1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、ベンジルオキシナフタレンおよびシュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステルから選ばれる少なくとも1種を増感剤として用い、増感助剤としてベンゾインと併用すると、相溶性が改善されて発色性が向上し、かつ、粉吹き現象も発生しないことを発見した。
【0020】
本発明の感熱記録材料には、従来公知の保存安定剤を併用することができる。本発明に用いることができる保存安定剤として、限定されないが、例えば、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4’-ビス[(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、トリス(2,6-ジメチル-4-tert-ブチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-チオビス(3-メチルフェノール)、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラブロモジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラメチルジフェニルスルホン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、1,4-ジグリシジルオキシベンゼン、4,4’-ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4-ベンジルオキシ-4’-(2-メチルグリシルオキシ)ジフェニルスルホン、テレフタル酸グリシジル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂型、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェイトのナトリウム塩または多価金属塩、ビス(4-エチレンイミンカルボニルアミノフェニル)メタン、4,4’-ビス[(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホンおよび、下記一般式(1):
【0021】
【化1】
(式中、nは1~7の整数を表す。)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物等が挙げられる。これらの保存安定剤は、感熱記録材料の印字部の保存安定性に寄与する。
【0022】
これらの保存安定剤のうち、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4’-ビス[(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホンおよび、上記一般式(1)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物から選ばれる少なくとも1種以上を含有することが好適であり、これらの保存安定剤を含有することにより、感熱記録材料における印字部の耐水性、耐油性、耐可塑剤性が更に向上する。
【0023】
さらに、感度を向上させるためにステアリン酸アミド、ビスステアリン酸アミド、パルミチン酸アミドなどの脂肪酸アミド類を添加することもできる。
【0024】
また、助剤としては、限定されないが、例えば、ジオクチオルコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、脂肪酸金属塩等の分散剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等のワックス類;アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物;グリオキザール、ホウ酸、ジアルデヒドスターチ、メチロール尿素、グリオキシル酸塩、エポキシ系化合物等の耐水化剤;消泡剤;着色染料;蛍光染料;および顔料等が挙げられる。
【0025】
本発明で感熱記録層に使用されるバインダーとしては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、アミド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコールなどの重合度200~1900のポリビニルアルコール類;ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体およびエチルセルロース、アセチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラールポリスチロールおよびそれらの共重合体;ポリアミド樹脂;シリコーン樹脂;石油樹脂;テルペン樹脂;ケトン樹脂;クロマン樹脂などが挙げられる。これらのバインダーは単独または2種以上を併用してもよく、溶剤に溶解して使用するほか、水または他の媒体中に乳化あるいはペースト状に分散した状態で使用することもできる。
【0026】
感熱記録層に配合される顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ポリスチレン樹脂、尿素-ホルマリン樹脂、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体や中空プラスチックピグメント等の無機あるいは有機顔料等が挙げられる。
【0027】
本発明による感熱記録層において、顕色剤4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンの含有量は、発色濃度の観点から、感熱記録層の塩基性染料1質量部に対して、0.3~5質量部が好ましく、さらには0.4~3質量部がより好ましい。
【0028】
さらに、ロイコ染料を使用した場合は、ロイコ染料1質量部に対し、増感剤は0.2~4質量部、バインダーは全固形分中5~50質量%が適当である。
【0029】
増感剤と増感助剤との配合比は98:2~40:60の範囲が好ましく、特に90:10~60:40が好ましい。
【0030】
前記保存安定剤の含有量は、全顕色剤100質量部に対して2.5~100質量部が好ましく、5~50質量部がより好ましい。
【0031】
本発明において感熱記録層に使用される塩基性染料、顕色剤、増感剤、助剤、バインダー、顔料およびその他の添加剤の種類や使用量は、感熱記録層に要求される品質性能に応じて適宜決定される。
【0032】
本発明において感熱記録層に使用されるロイコ染料、顕色剤、増感剤、増感助剤および必要により保存安定剤等は、例えば、水を分散媒体として、ボールミル、アトライター、サンドミル等の攪拌粉砕機によって平均粒子径が2μm以下、好ましくは1μm以下になるように微分散され使用される。
【0033】
このように微分散されたロイコ染料、顕色剤、増感剤、増感助剤および、必要により保存安定剤等の混合物を含む混合物分散液に、必要により顔料、バインダー、助剤等を混合撹拌することで感熱記録用塗料を調製する。
【0034】
このようにして調製された感熱記録用塗料を、乾燥後の塗布量が1.5~12g/m2程度、より好ましくは3~7g/m2程度になるように、支持体上に塗布し、乾燥することで感熱記録層が形成される。
【0035】
支持体としては、紙、再生紙、合成紙、プラスチックフィルム、不織布、金属箔等が使用可能である。また、これらを組み合せた複合シートも使用可能である。
【0036】
このようにして調製された感熱記録層用塗料を支持体上に直接塗布することにより、支持体上に感熱記録層を積層してもよいし、支持体上にまず下塗り層を形成し、形成された下塗り層上に感熱記録層を形成してもよい。下塗り層を設けることにより、サーマルヘッドヘの粕付着を防止し、印字画質および感度を向上することができる。下塗り層の組成は、目的により適宜選択すればよいが、一般に、バインダー、有機顔料、無機顔料、中空微粒子および発泡粒子などが含まれる。下塗り層には、より感度の向上を図るため、発泡系樹脂を使用することもできる。
【0037】
下塗り層に用いられるバインダーは感熱記録層で使用するような樹脂を用いることができる。すなわち、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類、メチルセルロース、カルボキシセルロース、メトキシセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース樹脂、カゼイン、ゼラチン、完全(または部分)ケン化ポリビニアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アミド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、スチレン-無水マレイン酸共重合体系ラテックス、スチレンーブタジエン共重合体系ラテックス、酢酸ビニル樹脂系ラテックス、ウレタン樹脂系ラテックス及びアクリル樹脂系ラテックス等を用いることができる。
【0038】
下塗り層に含有される無機顔料としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム等の金属酸化物、金属水酸化物、硫酸塩、炭酸塩などの金属化合物、無定形シリカ、焼成カオリン、タルク等の無機白色顔料などが挙げられる。これらのうち、特に焼成カオリンは発色感度と感度および粕吸収性に優れていることから、好ましく用いられる。なお、無機顔料の粒子径としては0.5~3.0μm程度のものが好ましい。
【0039】
また、下塗り層に含有される有機顔料としては、球状樹脂粒子(所謂、密実型樹脂粒子)、中空粒子、貫通孔を有する樹脂粒子、中空樹脂粒子の一部を変面で裁断して得られるような開口部を有する樹脂等が挙げられる。記録濃度を高めるには中空樹脂が好ましく使用される。
【0040】
感度と粕付着性を両立させるため、無機顔料系と有機樹脂系を併用することが一般的に行われ、無機顔料と有機顔料の使用比率が、質量比で90:10~30:70程度が好ましく、さらには70:30~50:50がより好ましい。
【0041】
下塗り層は、一般に水を分散媒体とし、無機顔料、有機顔料から選ばれる少なくとも1種とバインダーを混合攪拌して得られる下塗り層塗料を、支持体上に乾燥後の塗布量が1~20g/m2、好ましくは5~15g/m2程度となるように塗布乾燥して形成される。前記バインダー及び顔料の使用量としては、下塗り層全固形分に対してバインダーが5~40質量%程度、顔料が10~95質量%程度が好ましい。さらに下塗り層用塗料には、必要に応じて、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス等の滑剤、蛍光染料、着色染料、界面活性剤、架橋剤等の各種助剤を添加することもできる。
下塗り層は1層でもよく、場合によっては2層以上設けてもよい。
【0042】
感熱層を形成するための塗工方法は特に限定されるものではなく、例えば、エアーナイフコーティング、バリバーコーティング、ピュアーブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、スライドビロードコーティング、オフセットグラビアコーティング、5本ロールコーティング等の適当な塗工方式により塗工することができる。
【0043】
また、感熱記録層上に、保存安定性を高める目的で、成膜性を有する高分子物質からなるバインダーを主成分とする保護層を設けてもよい。保護層用塗料は、例えば水を媒体とし、バインダー成分、有機顔料または無機顔料、及び、さらに必要により助剤とを混合攪拌して調製される。保護層に用いられるバインダー、顔料、助剤は、上記の感熱記録層で用いられるものを使用できる。
【0044】
さらにまた、保護層上に光沢層を設けてもよい。光沢層としては、例えば電子線または紫外線硬化性化合物を主成分とする塗液を塗布後、電子線や紫外線を照射して硬化させる方法や超微粒子のコアシェル型アクリル樹脂を使用する方法等が挙げられる。
さらに、支持体の裏面側に帯電防止層を設けてもよい。
【0045】
下塗り層、保護層、光沢層等を形成するための塗料は、感熱記録層と同様に、ピュアーブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、カーテンコーティング、オフセットグラビアコーティング等の適当な塗工方式により塗工することができ、乾燥により各層が形成される。
【0046】
各層を形成した後、スーパーキャレンダー処理する等の感熱記録材料製造分野における各種の公知処理技術を適宜付加してもよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を表わす。
【0048】
(実施例1)
下記操作により感熱記録材料を作製した。
[下塗り層用塗料の作成]
プラスチック中空粒子(商品名:ローペイクSN-1055:中空率:55% 固形分26.5%)100部、焼成カオリンの50%分散液100部、スチレン-ブタジエン系ラテックス(商品名:L-1571 固形分48%)25部、酸化澱粉の10%水溶液50部および水20部を混合して、下塗り層用塗料を作成した。
【0049】
[感熱記録用塗料の作成]
まず、表1に示す配合で、ロイコ染料4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンおよび増感剤1,2-ビス(フェノキシ)エタンのそれぞれに、分散バインダーとして10%ポリビニルアルコール水溶液を混合して、A液(ロイコ染料分散液)、B液(顕色剤分散液)、C液(増感剤分散液)およびD液(増感助剤分散液)を調製した。
【0050】
【0051】
上記A液、B液、C液およびD液の分散液のそれぞれをサンドグラインダーで平均粒子径が1μm以下になるまで粉砕し、得られた分散液を表2に示す割合で混合して混合物分散液とした。
【0052】
【0053】
得られた混合物分散液183.3部に、水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH-42 20部、無定形シリカ(商品名:ミズカシルp-605)10部、酸化澱粉の10%溶解物20部、ステアリン酸亜鉛分散液(商品名:ハイドリンZ-8-36)15部および水20部からなる組成分を混合して感熱記録用塗料を作製した。
この実施例による感熱記録材料の試験結果は、表3に記載の通りであった。
【0054】
[感熱記録材料の作成]
支持体として坪量が53gの上質紙(酸性紙)に下塗り層用塗料を乾燥後の面積当たりの質量が8g/m2となるように塗布および乾燥し、その後、感熱記録用塗料が乾燥後の面積当たりの質量が3.8g/m2になるように塗布乾燥した。得られたシートをス-パーカレンダーで平滑度(JISP8155:2010)が1000~1500sになるように処理して感熱記録材料を作成し、各種試験を行った。
【0055】
[各種試験]
1.感熱記録性試験(発色試験)
本発明に従って作成した感熱記録材料について、感熱記録紙印字試験機(大倉電気社製TH-PMD)を用い、印加エネルギー0.24mJ/dotおよび0.38mJ/dotで印字した。印字前の地肌の白色度、ならびに印加エネルギー負荷後の地肌部の白色度および印字部の発色濃度はマクベス反射濃度計RD-914で測定する。
地肌部と印字部とのコントラストを考慮して、印加エネルギー0.24mJ/dotでの印字部の発色濃度が0.6以上であれば実用上の使用に適合する。
【0056】
2.粉吹き確認試験
発色試験で得られた印加エネルギー0.38mJ/dotの印字部を1時間放置し、その後、指で擦ることで粉拭きの程度を目視観察する。
評価の基準
粉吹きが見られる ×
極僅かに粉吹きが見られる △
粉吹きが見られない 〇
【0057】
(実施例2)
実施例1のC液の1,2-ビス(フェノキシ)エタンを1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタンに代える以外は実施例1と同様の操作を行った。
この実施例による感熱記録材料の試験結果は、表3に記載の通りであった。
【0058】
(実施例3)
実施例1のC液を69.7部、D液を3.6部に代える以外は実施例1と同様の操作を行った。
この実施例による感熱記録材料の試験結果は、表3に記載の通りであった。
【0059】
(実施例4)
実施例1のC液を29.3部、D液を44.0部に代える以外は実施例1と同様の操作を行った。
この実施例による感熱記録材料の試験結果は、表3に記載の通りであった。
【0060】
(実施例5)
実施例3のC液の1,2-ビス(フェノキシ)エタンを1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタンに代える以外は実施例3と同様の操作を行った。
この実施例による感熱記録材料の試験結果は、表3に記載の通りであった。
【0061】
(実施例6)
実施例4のC液の1,2-ビス(フェノキシ)エタンを1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタンに代える以外は実施例4と同様の操作を行った。
この実施例による感熱記録材料の試験結果は、表3に記載の通りであった
【0062】
(実施例7)
実施例1のC液の1,2-ビス(フェノキシ)エタンをベンジルオキシナフタレンに代える以外は実施例1と同様の操作を行った。
この実施例による感熱記録材料の試験結果は、表4に記載の通りであった。
【0063】
(実施例8)
実施例1のC液の1,2-ビス(フェノキシ)エタンをシュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステルに代える以外は実施例1と同様の操作を行った。
この実施例による感熱記録材料の試験結果は、表4に記載の通りであった。
【0064】
(実施例9)
実施例7のC液を69.7部、D液を3.6部に代える以外は実施例7と同様の操作を行った。
この実施例による感熱記録材料の試験結果は、表4に記載の通りであった。
【0065】
(実施例10)
実施例7のC液を29.3部、D液を44.0部に代える以外は実施例7と同様の操作を行った。
この実施例による感熱記録材料の試験結果は、表4に記載の通りであった。
【0066】
(実施例11)
実施例9のC液のベンジルオキシナフタレンをシュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステルに代える以外は実施例9と同様の操作を行った。
この実施例による感熱記録材料の試験結果は、表4に記載の通りであった。
【0067】
(実施例12)
実施例10のC液のベンジルオキシナフタレンをシュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステルに代える以外は実施例1と同様の操作を行った。
この実施例による感熱記録材料の試験結果は、表4に記載の通りであった。
【0068】
(比較例1)
実施例1のD液を73.3部、C液を使用しない以外は実施例1と同様の操作を行った。
この感熱記録材料の試験結果は、表5に記載の通りであった。
【0069】
(比較例2)
実施例1のC液を73.3部、D液を使用しない以外は実施例1と同様の操作を行った。
この実施例による感熱記録材料の試験結果は、表5に記載の通りであった。
【0070】
(比較例3)
実施例2のC液を73.3部、D液を使用しない以外は実施例2と同様の操作を行った。
この実施例による感熱記録材料の試験結果は、表5に記載の通りであった。
【0071】
(比較例4)
実施例7のC液を73.3部、D液を使用しない以外は実施例7と同様の操作を行った。
この感熱記録材料の試験結果は、表5に記載の通りであった。
【0072】
(比較例5)
実施例8のC液を73.3部、D液を使用しない以外は実施例8と同様の操作を行った。
この感熱記録材料の試験結果は、表5に記載の通りであった。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
表3、4および5より明らかなように、顕色剤として4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンを使用した感熱記録材料において、増感剤として1,2-ビス(フェノキシ)エタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、ベンジルオキシナフタレンおよびシュウ酸ジ-p-メチルベンジルエステルから選ばれる少なくとも1種を使用し、増感助剤としてベンゾインを添加することで、感度の向上(印加エネルギー0.24mJ/dotでの印字部の発色濃度が0.6以上)を達成し、かつ、印字部に粉吹きがほとんど無い感熱記録材料を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の感熱記録材料は、安価な顕色剤である4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンを使用し、増感助剤としてベンゾインを使用することにより、発色濃度に優れ、しかも粉吹き現象がない感熱記録材料を提供するものとして産業上の利用可能性は極めて有望である。