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特許7049735スイッチング素子における動的なアバランシェを制御するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】スイッチング素子における動的なアバランシェを制御するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20220331BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/687 A
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019163289
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2020089252
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-01-08
(31)【優先権主張番号】16/193,926
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519123825
【氏名又は名称】トランスポーテーション アイピー ホールディングス,エルエルシー
(74)【復代理人】
【識別番号】100208292
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 直己
(74)【復代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ゾイル,トマス アロイス
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ヘンリー トッド
(72)【発明者】
【氏名】クッテンクラー,ジェイソン ダニエル
【審査官】須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-039457(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0182034(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00 - 1/44
H03K 17/00 - 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気システムであって、該電気システムは:
半導体スイッチング素子に電気接続されたゲートドライブユニットであって、前記半導体スイッチング素子のゲート端子に電圧を印加するように構成される、ゲートドライブユニットと;
コントローラを含み、
前記コントローラは、
前記半導体スイッチング素子にターンオフするように指示し;
前記半導体スイッチング素子へのターンオフの指示に応じてシステムパラメータを判定し;
前記システムパラメータに少なくとも部分的に基づいて中間ート電圧を判定するように構成され;
前記中間ゲート電圧は、ターンオフ閾値とターンオフ電圧との間にあり、
前記ゲート端子に前記中間ゲート電圧を印加するために前記ゲートドライブユニットを構成するように前記コントローラが構成され、
前記コントローラは、前記システムパラメータに基づいて、前記中間ゲート電圧を印加するか否かを判定するように構成され、
前記中間ゲート電圧を印加するか否かを判定するか否かを決定することが、
ターンオフに先立って、前記半導体スイッチング素子に印加される電圧、ターンオフに先立って、前記半導体スイッチング素子を伝播する電流、差次的なピーク電圧、又はそれらの組み合わせを判定すること、電圧、電流、差次的なピーク電圧、又はその組み合わせがそれぞれの閾値範囲内にあるかどうかを判定すること、を含み、
前記コントローラが、前記中間ゲート電圧の印加に続いてゲート端子にターンオフ電圧を印加するために前記ゲートドライブユニットを構成する
ように構成され、
ここで、前記ターンオフ電圧は、前記半導体スイッチング素子を介して伝播する電流の整流に応じて印加される、
ことを特徴とする電気システム。
【請求項2】
前記半導体スイッチング素子はトレンチゲート絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)である、ことを特徴とする請求項1に記載の電気システム。
【請求項3】
前記システムパラメータは、半導体スイッチング素子の接合温度、周囲温度、DC結合電圧、又はそれらの組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の電気システム。
【請求項4】
前記中間ゲート電圧を印加するべきかどうかを判定することは、
ターンオフ前に前記半導体スイッチング素子に印加される電圧、ターンオフ前に前記半導体スイッチング素子を介して伝播する電流、差次的なピーク電圧、又はそれらの組み合わせを判定すること;及び
電圧、電流、差次的なピーク電圧、又はその組み合わせがそれぞれの閾値範囲内にあるかどうかを判定すること
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の電気システム。
【請求項5】
前記ターンオフ電圧は前記中間ゲート電圧よりも実質的に負である、ことを特徴とする請求項1に記載の電気システム。
【請求項6】
前記ターンオフ電圧は-15ボルトである、ことを特徴とする請求項5に記載の電気システム。
【請求項7】
前記ターンオフ閾値は0-7ボルトである、ことを特徴とする請求項1に記載の電気システム。
【請求項8】
前記ゲートドライブユニットは、
1つ以上のパワーレールを駆動するように構成される1つ以上の電源であって、電圧源、電流源、又はそれらの組み合わせを含む、電源;及び
1つ以上の抵抗器ステージであって、その各々が前記ゲート端子及び1つ以上の前記パワーレールに結合され、各スイッチを使用して1つ以上の前記パワーレールに結合される正のバスゲート抵抗器及び負のバスゲート抵抗器を含む、抵抗器ステージ
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の電気システム。
【請求項9】
前記中間ゲート電圧を印加するために前記ゲートドライブユニットを構成することは、各スイッチを介して1つ以上の前記パワーレールに各正のバスゲート抵抗器及び各第2のバスゲート抵抗器を結合することを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の電気システム。
【請求項10】
半導体スイッチング素子における動的なアバランシェ事象の発生を緩和する方法であって、前記方法は、
前記半導体スイッチング素子へのターンオフモードに入るようにする指示に応じてシステムパラメータの1つ以上の値を判定する工程と;
前記半導体スイッチング素子に中間ゲート電圧を印加するべきかどうかを判定する工程を含み;
前記間ゲート電圧を印加するべきかどうかを判定する工程が、
ターンオフに先立って、前記半導体スイッチング素子に印加される電圧、ターンオフに先立って、前記半導体スイッチング素子を伝播する電流、差次的なピーク電圧、又はそれらの組み合わせを判定すること、
電圧、電流、差次的なピーク電圧、又はその組み合わせがそれぞれの閾値範囲内にあるかどうかを判定すること、を含み、
前記方法は、
前記中間ゲート電圧を印加することの判定に応じて、前記中間ゲート電圧を1つ以上の値に少なくとも部分的に基づいて判定する工程であって、前記中間ゲート電圧はターンオフ閾値とターンオフ電圧との間の電圧を含む、工程;
前記中間ゲート電圧を印加するために第1の構成へと前記半導体スイッチング素子に結合されたゲートドライブユニットを構成する工程;
前記第1の構成へのゲートドライブユニットの構成に応じて前記中間ゲート電圧を印加する工程;
前記ターンオフ電圧を印加するために第2の構成へと前記ゲートドライブユニットを構成する工程;及び
前記第2の構成への前記ゲートドライブユニットの構成に応じて前記ターンオフ電圧を印加する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記システムパラメータは、前記半導体スイッチング素子の接合温度、周囲温度、DC結合電圧、又はそれらの組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記中間ゲート電圧を印加するべきかどうかを判定する工程は、
ターンオフ前に前記半導体スイッチング素子に印加される電圧、ターンオフ前に前記半導体スイッチング素子を介して伝播する電流、差次的なピーク電圧、又はそれらの組み合わせを判定すること;及び
電圧、電流、差次的なピーク電圧、又はその組み合わせがそれぞれの閾値範囲内にあるかどうかを判定すること
を含む、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の構成へと前記ゲートドライブユニットを構成する工程は、前記ゲートドライブユニットの1つ以上のパワーレールに前記ゲートドライブユニットの1つ以上の抵抗器ステージの少なくとも一部を結合することを含む、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の構成へと前記ゲートドライブユニットを構成する工程は、前記中間ゲート電圧によって前記半導体スイッチング素子を通じて伝播する電流の整流に応じて行われる、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の構成へと前記ゲートドライブユニットを構成する工程は、前記中間ゲート電圧を印加するための判定に応じて前記半導体スイッチング素子に前記中間ゲート電圧を印加することに続いて行われる、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記中間ゲート電圧は所定期間にわたり前記半導体スイッチング素子に印加され、前記所定期間はシステム操作パラメータに基づいて決定される、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
半導体スイッチング素子に電気的に結合されたゲートドライブユニットであって、前記ゲートドライブユニットは、前記半導体スイッチング素子のゲート端子に電圧を印加するように構成され、
前記ゲートドライブユニットは、
1つ以上のパワーレールを駆動するように構成された1つ以上の電源であって、前記1つ以上の電源は、電圧源、電流源又はそれらの組み合わせを含んでなる、1つ以上の電源と、
1つ以上の抵抗器ステージであって、前記1つ以上の抵抗器ステージの各々が、前記ゲート端子と、前記1つ以上のパワーレールとに結合され、前記1つ以上の抵抗器ステージの各々が、正のバスゲート抵抗器と、それぞれのスイッチを用いて前記1つ以上のパワーレールに結合された負のバスゲート抵抗器を含んでなる、ゲートドライブユニットと、
前記半導体スイッチング素子にターンオフするように指示し;
前記半導体スイッチング素子へのターンオフの指示に応じてシステムパラメータを判定し;
前記システムパラメータに少なくとも部分的に基づいて中間ート電圧を判定するように構成するコントローラを含み、前記中間ゲート電圧は、ターンオフ閾値とターンオフ電圧との間にあり、
前記ゲートドライブユニットは、
前記ゲート端子に前記中間ゲート電圧を印加するために前記ゲートドライブユニットを構成し、
前記中間ゲート電圧の印加に続いてゲート端子にターンオフ電圧を印加するために前記ゲートドライブユニットを構成し、
ように構成され、ここで、前記ターンオフ電圧は、前記半導体スイッチング素子を介して伝播する電流の整流に応じて印加される、
ことを特徴とするゲートドライブユニット。
【請求項18】
1つ以上の前記電源は、可変電圧源、可変電流源、固定電圧源、固定電流源、又はそれらの組み合わせであり、且つ、前記抵抗器ステージに、前記中間ゲート電圧、前記ターンオフ電圧、又はそれらの組み合わせを送達するように構成される、ことを特徴とする請求項17に記載のゲートドライブユニット。
【請求項19】
前記抵抗器ステージと並行して結合される追加の抵抗器ステージを含み、前記追加の抵抗器ステージは:
追加の正のバスゲート抵抗器;
追加の負のバスゲート抵抗器;及び
追加の複数のスイッチであって、各々が、前記ゲートドライブユニットが前記半導体スイッチング素子に中間ゲート電圧を印加する又は前記半導体スイッチング素子にターンオフ電圧を印加するかに少なくとも部分的に基づいて、前記追加の正のバスゲート抵抗器、前記追加の負のバスゲート抵抗器、又はそれらの組み合わせを、1つ以上の前記パワーレールの少なくとも1つに結合するように構成される、追加の複数のスイッチ
を含む、ことを特徴とする請求項17に記載のゲートドライブユニット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本明細書に開示される主題は、半導体スイッチング素子、より具体的には、動的なアバランシェ事象によるスイッチング素子の性能劣化を減少するためのシステム及び方法に関する。
【0002】
このセクションは、以下に記載及び/又は主張される本開示の態様に関連し得る技術の特定の態様を読者に紹介するように意図されている。この議論は、本開示の様々な態様のより優れた理解を促すために読者に背景情報を提供することに役立つものと考えられる。従って、これらの陳述は、これに照らして読み取られるべきであり、先行技術の容認として読み取られるものではないことを理解されたい。
【0003】
電気システムは、パワーエレクトロニクスコンバータ(例えば運送設備、採鉱設備、オイル及びガス設備などに対する)、コンピューティングデバイス、冷却システムなどを含む、広範囲の用途で使用される場合がある。これら電気システムは頻繁に、電気システムの回路を介して電流の流れを制御するために半導体スイッチング素子(例えばトランジスタ)を利用し得る。例えば、スイッチング素子は、電気システムの構成部品の電力の流れを選択的に制御するために回路のパスを開く及び/又は閉じる場合がある。スイッチング素子操作を制御するために、電圧(VGE)が、スイッチング素子をターンオンする(例えば、電流の伝播を可能にする)又はターンオフする(例えば、電流の伝播を不能にする)ようにスイッチング素子の端子に印加され得る。しかし、ターンオフの間、スイッチング素子は、結果として付加的な望ましくない電荷担体の急速な生成をもたらす電流密度及び電圧規模にさらされる場合がある。そのような場合、スイッチング素子内のこれらの電荷担体の運動エネルギーは、許容閾値を越えて急速に増大し、スイッチング素子材料を摩耗し、並びに、パフォーマンス及び信頼性の劣化をさせる場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本来請求された発明の範囲に相当する特定の実施形態が、下記に要約される。これら実施形態は、請求された発明の範囲を限定するようには意図されず、単に本発明の可能な形態の概要を提供するように意図されるものである。実際に、本発明は、後述の実施形態と同様又は異なる様々な形態を含み得る。
【0005】
一実施形態において、ゲートドライブ回路を持つ電気システムが記載される。ゲートドライブユニットは、半導体スイッチング素子に電気結合される場合があり、且つ、半導体スイッチング素子のゲート端子に電圧を印加することにより半導体スイッチング素子を駆動し得る。電気システムはまた、半導体スイッチング素子にターンオフするように指示するコントローラを含み得る。コントローラは、半導体スイッチング素子へのターンオフの指示に応じてシステムパラメータを判定し得る。コントローラは更に、システムパラメータに少なくとも部分的に基づいて中間ゲート電圧を判定し得る。また、コントローラは、ゲート端子に中間ゲート電圧を印加するためにゲートドライブユニット構成を調整し得る。加えて、コントローラは、半導体スイッチング素子を介して伝播する電流の整流に応じた中間ゲート電圧の印加に続いて、ゲート端子にターンオフ電圧を印加するためのゲートドライブユニット構成を調整し得る。
【0006】
一実施形態において、半導体スイッチング素子における動的なアバランシェ事象の発生を緩和する方法が記載される。前記方法は、半導体スイッチング素子へのターンオフモードに入るようにする指示に応じてシステムパラメータの1つ以上の値を判定する工程を含み得る。前記方法はまた、半導体スイッチング素子に中間ゲート電圧を印加するべきかどうかを判定する工程を含み得る。前記方法は更に、中間ゲート電圧を印加することの判定に応じて、中間ゲート電圧を1つ以上の値に少なくとも部分的に基づいて判定する工程であって、前記中間ゲート電圧はターンオフ閾値とターンオフ電圧との間の電圧を含む、工程を含み得る。また、前記方法は、中間ゲート電圧を印加するために半導体スイッチング素子に結合されたゲートドライブユニットの構成を第1の構成へと調整する工程、及び、第1の構成へのゲートドライブユニットの構成に応じて中間ゲート電圧を印加する工程を含み得る。加えて、前記方法は、ターンオフ電圧を印加するためにゲートドライブユニットの構成を第2の構成へと調整する工程、及び、第2の構成へのゲートドライブユニットの構成に応じてターンオフ電圧を印加する工程を含み得る。
【0007】
本開示における更なる実施形態は、ゲートドライブユニットに結合された半導体スイッチング素子を駆動するために使用されるゲートドライブユニットを含む。ゲートドライブユニットは1つ以上のパワーレールを含み得る。ゲートドライブユニットはまた、各々が1つ以上のパワーレールの少なくとも1つを駆動する1つ以上の電源を含み得る。更に、ゲートドライブユニットはまた抵抗器ステージであり得る。抵抗器ステージは、正のバスゲート抵抗器及び負のバスゲート抵抗器を含み得る。加えて、抵抗器ステージは、複数のスイッチであって、各々が、前記ゲートドライブユニットが前記半導体スイッチング素子に中間ゲート電圧を印加する又は前記半導体スイッチング素子にターンオフ電圧を印加するかに少なくとも部分的に基づいて、前記正のバスゲート抵抗器、前記負のバスゲート抵抗器、又はそれらの組み合わせを、1つ以上の前記パワーレールの少なくとも1つに結合するように構成される、複数のスイッチを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の詳細な説明が添付の図面を参照して読まれる場合により良く理解されるようになり、図面中で同様の文字は、図面全体にわたって同様の部分を表している。
図1】本開示の態様に係る、半導体スイッチング素子及びゲートドライブユニットを含む電気システムの実施形態を例示する概略図である。
図2】本開示の態様に係る、動的なアバランシェ事象がない状態の図1の半導体スイッチング素子の電気的挙動を例示するグラフである。
図3】本開示の態様に係る、動的なアバランシェ事象が存在する状態の図1の半導体スイッチング素子の電気的挙動を例示するグラフである。
図4】本開示の態様に係る、多抵抗(multi-resistive)駆動ステージを含む図1のゲートドライブユニットの実装を例示する概略図である。
図5】本開示の態様に係る、多抵抗駆動ステージ及び可変パワーレールを含む図1のゲートドライブユニットの他の実装を例示する概略図である。
図6】本開示の態様に係る、負の可変パワーレールによって駆動される図1のゲートドライブユニットの他の実装を例示する概略図である。
図7】本開示の態様に係る、ゲートドライブユニットを使用して図1の半導体スイッチング素子を駆動する方法の一例のフローチャートを表す。
図8】半導体スイッチング素子を駆動するために異なる技術を使用したときの図1の半導体スイッチング素子の電気的挙動を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本主題の1つ以上の特異的な実施形態が後述される。これら実施形態の簡潔な記載を提供するための労力において、実際の実装の特定の特徴は、本明細書において記載されないこともある。工学又は設計の計画など、そのような実際の実装の発達において、多くの実装に特異的な決定が、実装間で変動し得る、システム関連及びビジネス関連の制約への遵守などの開発者の特定の目標を達成するためになされなければならないことを、認識されたい。更に、そのような発達の労力は複雑で時間を浪費するものであるが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者にとって慣例的な設計、製作、及び製造の仕事であることを、認識されたい。
【0010】
本発明の様々な実施形態の要素を導入するとき、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「said」は、要素の1つ以上が存在することを意味するように意図されている。用語「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、及び「有すること(having)」は、列挙した要素とは別の追加の要素が存在しうることを包含し且つ意味するように意図されている。加えて、本開示の「1つの実施形態」又は「一実施形態」への言及は、列挙された特徴を更に組み込む追加の実施形態の存在を除いて解釈されるように意図されていないことを、理解されたい。更に、本出願は特定の電気計測メトリックを指す場合がある。そのため、「A」はアンペアを指す、「V」はボルトを指す場合があることを理解されたい。
【0011】
半導体スイッチング素子(例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、酸化金属半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、バイポーラスイッチング素子など)は、それらの作動状態(例えば、オン又は閉鎖、オフ又は開放)に基づいてシステムの電気的挙動を制御するために使用され得る。例えば、システムの構成部品間の電流の流れ(例えば電気的負荷)を制御するために、スイッチング素子は、ターンオンし、1つ以上の構成部品への電気パスを閉じ、電流が構成部品へと流れるのを可能にし得る。
【0012】
スイッチング素子の動作状態を制御するために、電圧又は電流は、スイッチング素子を介して電流チャネル(例えば、導電性金属酸化膜半導体(MOS)チャネル)を開く又は閉じるために素子端子に印加される場合がある。一例として、ゲートドライブユニットは、IGBT(例えばトレンチゲートIGBT)をターンオン又はターンオフするためにIGBTのゲート端子に印加される電圧を変動させる場合がある。IGBTスイッチング素子のターンオンは、少なくともゲート電圧が他の素子端子(例えばエミッター)に対してターンオン電圧閾値に到達するまでに正のゲート電圧を印加することを伴う場合がある。一旦、ゲート電圧がターンオン電圧閾値に到達する及び/又はそれを越えると、IGBTは、自由電荷担体が非ゲート端子(例えば、コレクタ及びエミッター電力端子)間を流れることを可能にし、これにより、スイッチング素子を通る電流の伝播を可能にし得る。
【0013】
一方、IGBTスイッチング素子のターンオフは、ゲート電圧をターンオン閾値電圧未満に下げることを含み得る。ゲート電圧の減少は、自由電荷担体の流れを減少させる又は止める場合がある。特に、ターンオフは2段階へと分割されてもよい。第1段階において、導電性MOSチャネルは閉じて、スイッチング素子を通る負の電荷担体(例えば電子)の流れを急激に止める場合がある。しかし、ドリフト領域にとどまる正の電荷担体(例えば穴)の流れは継続し得る。ターンオフの第2段階中、穴は、消失する電場及び組み換え事象(例えば、伝導帯から価電子帯への電子移動)を介して徐々に除去される。
【0014】
IGBTは、MOSFET及びバイポーラ接合トランジスタ(BJT)の技術の利点を組み合わせているので、スイッチング素子に対して電流、電圧、及びスイッチング速度負荷を配する電力電子用途(例えば、インバーター、コンバータ、電源)に適しているかもしれない。例えば、パルス幅変調(PWM)可変駆動コンバータにおけるスイッチング素子は、MOSFET及びBJTによって満たすことが可能なものよりも高い電流、高い電圧、及び比較的速いスイッチング速度負荷にさらされ得る。しかし、IGBTスイッチング素子がターンオフ中に高電流(例えば高負荷電流)、高電圧(例えば高直流(DC)結合電圧)、及び速いスイッチング速度にさらされると、電子流は消滅し、一方でかなりの正孔電流がとどまる。この結果、電界強度を少なくともIGBTスイッチング素子によって耐えることが可能な最大強度に増大する、大規模な電界勾配が生じ得る。
【0015】
このような強度において、穴は、素子材料の原子と衝突すると、素子材料に結合される自由電荷担体に対して十分な速度にまで、電界によって加速され得る。追加の自由電荷担体の生成は、拘束電荷担体の更なる解放、及びスイッチング素子における電流ターンオフの減速をもたらす場合がある。この事象は、動的なアバランシェとして知られており、且つ、結果として、スイッチング素子の実行可能な操作範囲の制限、経時的なスイッチング素子材料の摩耗、及び、スイッチング素子のパフォーマンスの最終的な劣化をもたらしかねない。更に、スイッチング素子がターンオフするのに要する時間(例えばスイッチング時間)は、追加の電流が再結合電流に添加され、それによってターンオフを遅くすることから、更に長くなる場合がある。そのため、多数の動的なアバランシェの発生は最終的に、スイッチング素子、及びスイッチング素子を利用する構成部品(例えばパワーコンバータ)の故障をもたらしかねない。
【0016】
この点を考慮して、ゲート駆動技術は、スイッチング素子を効率的に制御するために実装され得る。例えば、ゲート駆動技術は、ターンオフの一部の間に開いたMOSチャネルを維持し、それにより長期間の電子流が残存する正孔電流及び電界勾配を迅速に取り除くのを可能にし得る。しかし、標準ゲート駆動技術は、電界勾配を十分に取り除くことができず、故に、動的なアバランシェ事象を減らす又は抑えることができない。簡潔に、標準ゲート駆動技術は、ターンオン中にゲート端子に結合されたゲート抵抗器(RgON)、及びターンオフ中にゲート端子に結合された別のゲート抵抗器(RgOFF)を使用して実施され得る。これらゲート抵抗器は寄生振動(例えば、共鳴)を減らすことができる。ターンオフ中に、標準ゲート駆動技術は、スイッチング素子の入力容量を放出し、それにより正孔電流を補償するために、RgOFFに負の電圧(例えば-15V)を印加する場合がある。しかし、標準ゲート駆動技術は、相当なターンオフの欠損なしに動的なアバランシェ事象を抑えるのに十分な制御を可能にすることができない。
【0017】
従って、本開示の実施形態は、進歩したゲート駆動技術の使用により動的なアバランシェ事象の発生を制御するためのシステム及び方法に関連する。幾つかの実施形態において、ターンオフ中に、ゲートドライブユニットは最初に、正孔電流が実質的に整流されるまでゲート端子に中間ゲート電圧レベルを印加することができる。その後、ゲートドライブユニットは、スイッチング素子をターンオフ状態に維持するために負のターンオフ電圧(例えば-15V)を印加することができる。中間ゲート電圧レベルは、幾つかの実施形態において、接合温度及びDC結合電圧などの、ターンオフ時にスイッチング素子及び/又はシステムのパラメータに基づいて調整することができ、及び、ターンオフ閾値(0-7V)とターンオフ電圧(-15V)との間の値であってもよい。更に、幾つかの実施形態において、中間ゲート電圧レベル及び/又は負の電圧レベルが生成され、且つ、ゲート端子に結合される複数の抵抗ステージを改変することによりゲート端子に印加され、及び/又は電圧/電流が抵抗ステージに結合されたパワーレールにより供給される。
【0018】
ここで図面を参照すると、図1は、パワーエレクトロニクス用途及び他のスイッチング素子に適した用途で使用され得る、電気システム(10)の例である。電気システム(10)は、電気システム(10)の操作を調和する制御ユニット(12)を含み得る。調和を促進するために、制御ユニット(12)は、電気システム(10)の構成部品を制御するための命令を記憶するコントローラメモリ(20)を含み得る。例えば、コントローラメモリ(20)は、ゲートドライブユニット(14)の抵抗器ステージの構成を改変するための命令を記憶することができる。幾つかの実施形態において、コントローラメモリ(20)は、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、ディスケット、フラッシュドライブ、コンパクトディスク、ディジタルビデオディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ファームウェア、リードオンリーメモリ(ROM、消去可能プログラム可能リードオンリーメモリ(EPROM)、フラッシュメモリなど)、及び/又は、プロセッサが命令(例えばコード)及び/又はデータを記憶、検索、及び/又は実行するのを可能にする適切なストレージデバイスなどの、コンピュータ可読媒体であり得る。コントローラメモリ(20)はまた、1つ以上のローカル及び/又はリモートストレージデバイスを含み得る。更に、コントローラユニット(12)は、コントローラメモリ(20)に記憶された命令を実行するプロセッサ(18)を含み得る。そのため、プロセッサ(18)は、1つ以上の多目的マイクロプロセッサ、1つ以上のアプリケーション特異的プロセッサ(ASIC)、1つ以上のフィールドプログラマブルロジックアレイ(FPGA)、システム-オン-チップ(SoC)デバイス、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0019】
コントローラユニット(12)は、ゲートドライブユニット(14)に通信可能に結合され得る。ゲートドライブユニット(14)は、1つ以上のスイッチング素子(24)の状態(例えば、ターンオン、ターンオフ)を制御するために様々な回路を含み得る。例えば、ゲートドライブユニット(14)は、レベルシフター、増幅器、及び1つ以上の抵抗器ステージを含み、それらの構成はターンオフ中にゲート端子(22)に適切な電圧を送達するために改変され得る。加えて、ゲートドライブユニット(14)は、1つ以上の抵抗器ステージを駆動するために使用される電源(16)を含み得る。電源(16)は、制御ユニット(12)による命令に基づいて電圧又は電流レベルを出力する、固定電源及び/又は可変電源であり得る。幾つかの実施形態において、ゲートドライブユニット(14)は制御ユニット(12)を含み得る。何れの場合にも、ゲートドライブユニット(14)は、制御ユニット(12)からコマンドを受け取り、及び/又はシステム(10)の操作の情報をフィードバックし得る。例えば、ゲートドライブユニット(14)は、スイッチング素子(24)の接合温度、周囲温度、ターンオフ中にスイッチング素子(24)を通る電流の規模などに関する情報を送信し得る。
【0020】
ゲートドライブユニット(14)は、IGBTなどの半導体スイッチング素子(24)に結合され得る。スイッチング素子(24)は、ゲート端子(22)、コレクタ端子(26)、及びエミッタ端子(28)を含み得る。簡潔に、ゲート端子(22)に印加された電圧は、印加電圧がスイッチング素子(24)に対してターンオン電圧閾値を超えるかどうかに応じて、スイッチング素子(24)をターンオンする(例えば、電流の伝播を可能にする)又はターンオフする(例えば、電流の伝播を不能にする)ことができる。スイッチング素子(24)の作動状態を制御するために、ゲート端子(22)は、コレクタ端子(26)とエミッタ端子(28)との間の導電性MOSチャネルを開く又は閉じるために適切な電圧を印加するゲートドライブユニット(14)に結合され得る。コレクタ端子(26)は、ターンオン中に電荷担体(例えば、電子、穴)を「収集し」、及びMOSチャネルを介してエミッタ端子(28)にそれらを伝達することができる。コレクタ端子及びエミッタ端子が、スイッチング素子(24)を介する電荷担体の流れを可能にするMOSチャネルにより結合され得るので、これら端子(26)(28)は電力端子と呼ばれる場合がある。
【0021】
幾つかの実施形態において、ダイオード(30)(例えばボディダイオード)及び電気負荷部(32)は、端子(26)及び(28)にてスイッチング素子(24)に電気結合され得る。電気負荷部(32)は、負荷燃焼マシン、又は電力を消費する他の電気部品でもよい。幾つかの実施形態において、電気負荷部(32)は誘導性であり(例えば、電流の変化に耐える)、スイッチング素子(24)の電流の方向とは反対の方向に負荷電流を流すことができる。そのため、ダイオード(30)は、スイッチング素子(24)の電流の方向とは反対の方向での負荷電流の代替的な流路を設けることができる。更に、ダイオード(30)は、スイッチング素子(24)に損傷を与え、及び負荷電流に対する補償経路がないときに生じ得る、高電圧ピークを妨げることができる。電気システム(10)は、追加のスイッチング素子(24)などの追加の構成部品を含み得ることを、理解されたい。更に、ゲートドライブユニット(14)は追加のスイッチング素子(24)の操作を制御するために使用することができ、及び/又は追加のゲートドライブユニット(14)が追加のスイッチング素子(24)の操作を独立して制御するために含まれ得ることを、理解されたい。
【0022】
標準条件下で、スイッチング素子(24)の電気的挙動は、通常予測可能な様式で生じ得る。図2のグラフ(40)は、ターンオフ中、及び動的なアバランシェ事象のない状態での、半導体素子(24)の挙動の例を示す。この例では、ゲートドライブユニット(14)は、ゲート端子(22)に印加された電圧(42)の減少によりスイッチング素子(24)をターンオフし始めることができる。示されるように、ゲート電圧(42)は、ターンオフ前に15Vに維持され、且つ、ターンオフの第1段階(例えば0-1μs)中に徐々に減少し得る。第1段階中に、コレクタ‐エミッタ電圧(44)は0Vにとどまり、そのため、MOSチャネルを通って流れる(例えば電子の)電流(46)は、スイッチング素子(24)のターンオフ前の規模としてほぼ一定の規模に維持され得る。電流(46)の値は、電気負荷部(32)、及びゲートドライブユニット(14)によって実装された対照方法によって引っ張られた(drawn)電流に基づく場合がある。
【0023】
ターンオフの第2段階(例えば1-3μs)中に、ミラー効果、即ちスイッチング素子(24)の入力容量の増加が生じ得る。ミラー効果は、ゲート電圧(42)の減少を遅くし、且つ、ゲート電圧(42)をほぼ一定の値(例えば4-5Vの間)にとどまらせることができる。コレクタ-エミッタ電圧(44)は、スイッチング素子(24)に結合された回路における寄生インダクタンスのため、最高ピーク電圧値に増大し得る。ターンオフのフェーズ3(例えば3-3.5μs)において、ミラー効果は、スイッチング素子(24)の挙動に対する有力な効果をこれ以上持たない場合がある。そのため、コレクタ-エミッタ電流(46)、コレクタ-エミッタ電圧(44)、及びゲート電圧(42)は、急速に低下し得る。
【0024】
ターンオフのフェーズ4(例えば3.5-10μs)中に、ゲート電圧(42)は最後に、スイッチング素子(24)に対するターンオン電圧閾値(例えば3V)に到達する、及び/又はそれ未満に低下し得る。この時点で、コレクタ端子(26)とエミッタ端子(28)との間の導電性MOSチャネルは閉じて、コレクタ-エミッタ電流(46)の流れを実質的に止め、スイッチング素子(24)をターンオフすることができる。幾つかの実施形態において、一旦ゲート電圧(42)がスイッチング素子(24)のドリフト領域にとどまる少数の電荷担体(例えば穴)の組み換えによりターンオン電圧閾値に到達すると、電流(46)は直ちに止まらない場合がある。これは、相当なターンオフ欠損(例えばスイッチング欠損)を引き起こしかねない。
【0025】
幾つかの実施形態において、パワーエレクトロニクス用途は時折、比較的高い電圧、高電流、及びスイッチング素子(24)に対するスイッチング速度負荷を配する場合があり、結果として、スイッチング素子(24)の操作挙動に影響を与える動的なアバランシェ事象の出現をもたらす。図3のグラフ(50)に示されるように、動的なアバランシェは、ターンオフ時点で差次的なゲート電圧(44)(dVce/dt)を下げる場合がある。言い換えれば、差次的なゲート電圧(44)は、コレクタ-エミッタ電流(46)値が低下するときにほぼ一定ではなく、湾曲したように見える(52)。
【0026】
前述のように、動的なアバランシェ事象の発生は、スイッチング素子(24)上に配された電流及び電圧の負荷によって判定され得る。例えば、電気負荷部(32)による電流負荷は結果として、グラフ(40)におけるコレクタ-エミッタ電流(46)値(例えば500A)と比較して、より高い値(例えば、2500A)を持つコレクタ-エミッタ電流(46)をもたらし得る。動的なアバランシェ事象の存在は結果として、スイッチング素子材料の劣化及び超過時間、スイッチング素子(24)のパフォーマンス及び信頼性の低下をもたらしかねない。スイッチング素子(24)の実装は、スイッチング素子(24)がアバランシェ降伏領域を超えて(例えば、推奨よりも高い電圧及び/又は電流レベルで)作動するように意図したものではないが、電気システム(10)は時折、動的なアバランシェ事象を誘導する条件下でスイッチング素子(24)が作動するのを強いることもある。
【0027】
そのため、図4は、ターンオフ中の動的なアバランシェ事象の発生を減らす又は排除し得るゲートドライブユニット(14)の実装(60)である。特に、ゲートドライブユニット(14)は、多数の抵抗器ステージ(62)、(64)、(66)、(68)を使用して実装され得る。動的なアバランシェ事象の発生を減らす又は排除するために、制御ユニット(12)は、コレクタ-エミッタ電流が切り替えられるまで、ゲート抵抗器(70)-(84)の組み合わせを介してゲート端子(22)に中間電圧を印加するようゲートドライブユニット(14)に命じることができる。即ち、ゲート電圧は、正の電力バスと負の電力バスとの間の分圧器の使用により変動され得る。一例として、制御ユニット(12)は、電圧源又は電流源などの正の電源(86)によって駆動された正の電力バスにゲート抵抗器(70)を結合するためにスイッチ(90)を閉じる場合がある。分圧器を完了されるために、制御ユニット(12)はまた、電圧源又は電流源などの負の電源(88)によって駆動された負の電力バスにゲート抵抗器(84)を結合するためにスイッチ(90)を制御する場合がある。各々が異なる抵抗器の値を持つ選択されたゲート抵抗器(70)-(84)に基づいて、ゲート端子(22)に印加された中間電圧は、電源(86)及び(88)によってもたらされる電圧範囲間で変動し得る。更に、効果的なゲート抵抗は、ゲート端子(22)にて寄生振動を適切に減らすために変動され得る。
【0028】
幾つかの実施形態において、中間電圧レベルは、システム操作パラメータに基づいて選択され得る。例えば、抵抗器ステージ(62)、(64)、(66)、(68)の構成は、スイッチング素子(24)のターンオン電圧閾値以下である中間電圧をもたらすために改変され得る。付加的又は代替的に、中間電圧レベルは、スイッチング素子(24)の接合温度の推定値に基づき得る。スイッチング素子(24)のターンオン閾値電圧が接合温度に依存し得るので、制御ユニット(12)は、ターンオン閾値電圧以下のままとなるように中間電圧レベルを適切に下げることができる。接合温度は、サーミスターを介して、及び/又は、スイッチング素子(24)による操作の一定の期間の後に接合温度を予測することができるモデルに基づいて、判定され得る。幾つかの実施形態において、動的なアバランシェ事象がこれらパラメータに依存し得るので、中間電圧レベルはスイッチング素子(24)の電流及び/又は電圧に応じて変動し得る。例えば、所定電圧において、電流がある値のレベルに達する前に、動的なアバランシェ事象が生じることもある。電圧が増大すると、電流が低い値のレベルに達する前に、動的なアバランシェ事象が生じることもある。
【0029】
更に、幾つかの実施形態において、中間電圧は、特定の動作電圧閾値より上で印加され得る。例えば、直流結合電圧がターンオフ欠損を減らすために動作電圧閾値より上であると、中間電圧はゲート端子(22)に印加され得る。付加的又は代替的に、制御ユニット(12)は、システム信頼性に関する電圧動作範囲の間に中間電圧を印加するようゲートドライブユニット(14)に命じることができる。一例として、電圧動作範囲(例えばVce)が、この低電圧帯での動作中に動的なアバランシェ事象の電力欠損及び/又は欠乏のために動作電圧閾値よりも低いと、中間電圧はゲート端子(22)に印加されない場合がある。中位電圧範囲(例えば1000V-1500V)において、動的なアバランシェ事象が生じる可能性は更に高くなる場合があり、そのため、制御ユニット(12)は、中間電圧を印加するようゲートドライブユニット(14)に命じることができる。高電圧範囲(例えば、>1500V)で、中間電圧は、スイッチング素子(24)の耐用限界より上であり且つ動的なアバランシェ事象の発生を上回ってスイッチング素子(24)を劣化させかねない、電圧ピークを引き起こし得るので、印加されない場合がある。別の例として、中間電圧は、結果として余分な欠損をもたらす特定のシステム及び/又は周囲温度では印加されない場合がある。
【0030】
幾つかの実施形態において、制御ユニット(12)は、動的なアバランシェが生じているかどうかを判定するためにスイッチング素子(24)の差動電圧を測定することができる。動的なアバランシェ事象が生じる例において、これは、ゲート駆動技術を、標準のターンオフ技術から、中間電圧を印加する進歩したゲート駆動技術へと変更するために使用され得る。追加の実施形態において、中間電圧の値は、直流結合電圧が変動するにつれ調整され得る。直流結合電圧に基づき中間電圧を調整することによって、動的なアバランシェの遮断時点は、ターンオフ欠損を更に減らすために調整され得る。そのため、中間電圧の値、及び中間電圧がゲート端子(22)に印加される期間は、動的なアバランシェ事象を制御し且つターンオフ欠損及びシステムの非効率性を減らすために改変され得る。
【0031】
一旦、コレクタ-エミッタ電流が切り替えられると、より大きな負の電圧供給(例えば~-15V)が、スイッチング素子(24)に以前に印加された高電圧及び高電流による大きな電磁妨害の存在下でさえスイッチング素子(24)が確実にターンオフでとどまるように、ゲート端子(22)に印加され得る。中間電圧の印加、及びその後の負の電圧供給によって、動的なアバランシェ事象は、ターンオフ欠損の軽微な増加により抑えることができ、寿命を伸ばし、且つスイッチング素子(24)の信頼性を維持する。4つの抵抗分岐(62)、(64)、(66)、(68)が示されているが、より多くの又は少数の抵抗分岐が実装中に含まれてもよい。
【0032】
図5は、ゲートドライブユニット(14)の代替的な実装(100)を表しており、多抵抗駆動ステージ、及び可変電圧源又は可変電流源などの可変電源(102)によって駆動される第3のパワーレール(106)を含み得る。ゲートドライブユニット(14)の実装(60)と同様、実装(100)は、多抵抗駆動ステージの構成の改変によりゲート端子(22)に中間電圧を印加することができる。幾つかの実施形態において、可変電源(102)はまた、専用のゲート抵抗器(104)、及び、専用のゲート抵抗器(104)に可変電源(102)を結合する専用のゲート抵抗器スイッチを介して、ゲート端子(22)に中間電圧を印加することができる。更に、可変電源(102)及び第3のパワーレール(102)は、大きな電磁妨害の存在下でさえスイッチング素子(24)が確実にターンオフでとどまるようにコレクタ-エミッタ電流が切り替えられた後、ゲート端子(22)に負の電源を印加するために使用され得る。幾つかの実施形態において、固定電源が、第3のパワーレール(102)を駆動するために使用され得る。
【0033】
付加的又は代替的な実施形態において、ゲートドライブユニット(14)は、図6に示されるように、可変電源(124)(例えば、可変電流源、可変電圧源)によって駆動される負のパワーレールを使用して実装され得る(120)。可変電源(124)による出力は、相当なターンオフ欠損のない動的なアバランシェ事象の発生を制御するゲート端子(22)に中間電圧をもたらすために、動的に調整され得る。実装(120)において、可変電源(124)は、実装(60)及び(100)の追加の抵抗器ステージ(62)-(68)並びにパワーレール(104)、(106)、(110)の調節機能を提供し得る。そのため、追加の抵抗器ステージ(62)-(68)、並びにパワーレール(104)、(106)、(110)の使用は回避され得る。
【0034】
図7は、ゲートドライブユニット(14)の実装(60)、(100)、及び(120)を使用してスイッチング素子(24)を駆動するための方法(130)の実施形態を例示する。特定の順序の工程を使用して方法(130)が記載されているが、本開示は、記載された工程が、例示された順序とは異なっている順序で実行され、且つ特定の記載された工程が飛ばされる又は全体的に実行されない場合があることを企図していることを、理解されたい。幾つかの実施形態において、方法(130)の工程の少なくとも幾つかは、具体的な、コントローラメモリ(20)などの有形で非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶された命令を実行する制御ユニット(12)によって、少なくとも部分的に実施され得る。代替的又は付加的な実施形態において、方法(130)の少なくとも幾つかの工程は、システム(10)の他の適切な処理又は制御回路によって実施され得る。
【0035】
例示された方法(130)は、制御ユニット(12)が、例えば電気負荷部(32)の電力送達を止めるように、スイッチング素子(24)がターンオフするべきゲートドライブユニット(14)に指示することから始まる(処理ブロック(132))。制御ユニット(12)から指示を受ける際、ゲートドライブユニット(14)は、スイッチング素子(24)の動作時間に基づいてパラメータを測定する及び/又はパラメータ値を推定することによって様々なシステム操作パラメータを判定することができる(処理ブロック(134))。例えば、システム操作パラメータは、スイッチング素子(24)の端子(22)、(26)、(28)に印加された電圧及び電流、接合温度、システム温度、直流結合電圧、差動電圧などを含み得る。
【0036】
システム操作パラメータに基づいて、制御ユニット(12)は、ゲート端子(22)に中間ゲート電圧を印加するかどうかを判定することができる(決定ブロック(136))。幾つかの実施形態において、端子に印加された電圧(例えばDC結合電圧)は、動的なアバランシェ効果の抑制が結果として、動的なアバランシェ事象が抑えられないときよりも高い電圧ピークによるスイッチング素子(24)材料の更なる劣化をもたらすほど十分に高い場合がある。別の例として、電圧ピークの差動電圧が比較的一貫したままであると、制御ユニット(12)は、動的なアバランシェ事象は現われておらず、故に中間電圧は印加されるべきでないと決定することができる。中間ゲート電圧は印加されるべきでないと制御ユニット(12)が決定すると、代わりに負の電圧が、電磁妨害にかかわらずスイッチング素子(24)が確実にターンオフでとどまるようにゲート端子(22)に印加され得る(処理ブロック(144))。
【0037】
中間ゲート電圧は印加されるべきであると制御ユニット(12)が決定すると、制御ユニット(12)は、相当なターンオフ欠損のない動的なアバランシェ事象を抑えるために適切な中間ゲート電圧を決定し得る(処理ブロック(138))。中間ゲート電圧は、ゲートドライブユニット(14)によって測定された及び/又はモデルに基づいて推定されたシステム操作パラメータに基づいて決定され得る。その後、制御ユニット(12)は、スイッチング素子(24)に中間ゲート電圧を印加するようゲートドライブユニット(14)に命令することができる(処理ブロック(140))。例えば、多数の抵抗器ステージ(62)-(68)のゲート抵抗器(70)-(76)を結合するスイッチの一部は、レール電源(86)と(88)との間に分圧器を作成するように閉じる場合がある。別の例として、可変電源(124)の出力は、適切な中間ゲート電圧を送達するために調整され得る。
【0038】
制御ユニット(12)は、スイッチング素子(24)のオフ電流(例えばコレクタ-エミッタ電流)が実質的に整流されたかどうかを定期的に判定し得る(決定ブロック(142))。オフ電流が実質的に整流されていない場合、制御ユニット(12)はゲート端子(22)に中間ゲート電圧を印加し続けてもよい(処理ブロック(142))。幾つかの実施形態において、制御ユニット(12)は、安定した電圧進行のために印加される中間ゲート電圧のレベルを上げることができる。オフ電流が実質的に整流されると、制御ユニット(12)は、例えば、第3のパワーレール(106)を使用して、スイッチング素子(24)をターンオフ状態に維持する負の電圧(例えばターンオフ電圧)を印加するようゲートドライブユニット(14)に命じることができる(処理ブロック(144))。付加的又は代替的に、幾つかの実施形態において、制御ユニット(12)は、開回路の様式でゲート端子(22)に中間ゲート電圧を印加し得る。即ち、制御ユニット(12)は、システム操作パラメータに基づいて決定された所定期間にわたり中間ゲート電圧を印加し得る。
【0039】
方法(130)を使用してスイッチング素子を駆動させた結果、相当なターンオフ欠損のない動的なアバランシェ事象の抑制がもたらされ得る。示されるように、図8のグラフ(150)は動的なアバランシェ制御技術間の比較を例示する。標準ゲートドライブ技術において、ゲートドライブユニットは、コレクタ-エミッタ電流が切り替えられていない場合でさえスイッチング素子(24)をターンオフ状態に維持する負の電圧(例えば-15V)を印加し得る。標準ゲートドライブ技術は、差次的なピーク電圧(52)の湾曲によって示されるように、電圧(152)の上昇時間及び/又は動的なアバランシェ事象の独立制御を可能にしない。
【0040】
標準ゲートドライブ技術は、標準ゲートドライブ技術により推奨されたものの3倍の耐性を持つターンオフゲート抵抗器の利用によって改変され得る。しかし、そのような場合、差次的なピーク電圧(158)の湾曲によって示されるように、動的なアバランシェ事象が今なお生じる場合がある。更に、ゲート抵抗器のより高い耐性値は、標準ゲートドライブ技術を使用したときに見られるものの最大45%にまでターンオフ欠損を増大させる場合がある(例えばVce 154 x Ice 160)。これに対して、方法(130)により詳述される進歩した動的なアバランシェ制御技術の使用は、差次的なピーク電圧(156)の湾曲の欠如によって示されるように、動的なアバランシェ事象の適切な抑制を可能にし得る。更に、進歩した動的なアバランシェ制御技術を使用する全体的なターンオフ欠損は、標準ゲートドライブ技術と比較して、わずか10%しか増大しない場合がある。
【0041】
動的なアバランシェ抑制に関する以前の議論は、中間ゲート電圧及び/又はターンオフ電圧を印加するために電圧源としてゲートドライブユニット(14)を使用することを含むが、電流源としてゲートドライブユニット(14)を実装する技術も企図される。特に、パワーレール(例えば、(106)、(108)、(110))は、ゲート端子(22)の電流入力を制御する、1つ以上の電流源を使用して駆動され得る。例えば、電流源及びゲート抵抗器(例えば(70))は、ゲート端子(22)に結合され得る。別の例として、1つ以上の電源によって駆動される電流ミラーは、ゲート端子(22)の電流入力を制御するために使用され得る。電圧源のゲートドライブユニット(14)の実装と同様、スイッチング素子(24)の電流が切り替えられるまで、中間電流入力がゲート端子(22)に印加され得る。中間電流入力は、動的なアバランシェ条件が存在すると判定することに応じて印加され得る。例えば、中間電流入力は、システム温度、接合温度、差次的なピーク電圧などが許容域外にあるときに印加され得る。より大きな負の規模の電流がその後、スイッチング素子(24)をターンオフ状態に維持するためにゲート端子(22)に印加され得る。
【0042】
本明細書に提供される実施形態の技術効果は、スイッチング素子(24)の寿命及び動作の信頼性を改善するために、高電力のスイッチング素子(24)(例えば、トレンチゲートIGBT)における動的なアバランシェ事象を抑えることを含む。本明細書で議論されるように、進歩した動的なアバランシェ制御技術の使用は、ターンオフスイッチング欠損の相当な増加なしに動的なアバランシェ事象を適切に減らす又は排除することができる。これにより、動的なアバランシェの劣化効果による寿命制限のために通常は不適格となる電気システム(10)のスイッチング素子(24)の実装が可能となる場合がある。更に、進歩した動的なアバランシェ制御技術の実装は、巨大で費用のかかる場合がある特別な追加のハードウェアを使用することなく行われてもよい。加えて、本実施形態は、スイッチング素子(24)挙動のチューニングが、使用可能な電圧範囲、動的なアバランシェ事象、ターンオフ欠損、及び電圧ピーク変動の間でのトレードオフの主要因となることを可能にし得る。
【0043】
この記載は、最良の形態を含む本発明を開示するための、及び、任意のデバイス又はシステムを製造及び使用する、並びに組み込まれた方法を実行することを含んで当業者が本発明を実施することを可能にするための例を使用する。本発明の特許を受けることができる範囲は請求項によって定められ、且つ当業者により想到される他の例を含み得る。他のそのような例は、請求項の文字言語とは異ならない構造要素を有する場合、或いは、請求項の文字言語との差異が不十分である同等の構造要素を含む場合に、請求の範囲内にあるように意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8