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  • 特許-合成材料の薄膜切断ユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】合成材料の薄膜切断ユニット
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/20 20060101AFI20220331BHJP
   B26D 5/00 20060101ALI20220331BHJP
   B26D 7/02 20060101ALI20220331BHJP
   B26D 7/08 20060101ALI20220331BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B26D7/20
B26D5/00 F
B26D7/02 D
B26D7/08 A
B26D3/00 601B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017564607
(86)(22)【出願日】2016-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-02
(86)【国際出願番号】 FR2016051426
(87)【国際公開番号】W WO2016198810
(87)【国際公開日】2016-12-15
【審査請求日】2019-04-12
(31)【優先権主張番号】1555400
(32)【優先日】2015-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517093647
【氏名又は名称】セントレ テクニーク デ インダストリーズ メカニークス
【氏名又は名称原語表記】CENTRE TECHNIQUE DES INDUSTRIES MECANIQUES
【住所又は居所原語表記】52, Avenue Felix Louat F-60300 Senlis France
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】カレンズ クレメント
(72)【発明者】
【氏名】ブルテル フランク
(72)【発明者】
【氏名】ドリアノ エリス
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-143384(JP,U)
【文献】特開昭61-270100(JP,A)
【文献】特開2012-040649(JP,A)
【文献】特開2007-075901(JP,A)
【文献】特開2012-143864(JP,A)
【文献】米国特許第03495492(US,A)
【文献】特公昭51-045113(JP,B1)
【文献】実公昭52-047185(JP,Y1)
【文献】特表昭63-502257(JP,A)
【文献】特開平06-190788(JP,A)
【文献】特開平11-019896(JP,A)
【文献】特開昭60-131195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/20
B26D 5/00
B26D 7/02
B26D 7/08
B26D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成材料の薄膜切断ユニットであって、前記ユニットは、一方に合成材料の薄膜(30)を受ける同薄膜の位置固定のための吸引孔を有しない水平な作業テーブル(28)と、他方に円滑支持面(20)と円滑支持面(20)から突出可能な切断部材(22)とを有するシュー(16)を含む切断ヘッド(12)を備え、前記円滑支持面は、前記合成材料の薄膜(30)を切断できるように前記シュー(16)が事前定義された軌道に沿って前記作業テーブル(28)と実質的に平行に移動している間に、前記合成材料の薄膜(30)に対して適用されることを意図しており、
前記切断部材は、超音波振動子(22)とトランスデューサ(24)を備え、
前記水平な作業テーブル(28)は、水平サポート(10)の上面を前記合成材料と関連して静的摩擦係数を有するエラストマーから形成された滑り止めコーテイング(26)で被覆してなり、
前記円滑支持面(20)は、前記合成材料に関連して動的摩擦係数を有し、
前記シュー(16)が前記薄膜(30)に渡ってスライドされる際に、前記水平な作業テーブル(28)に対して固定された位置に合成材料の薄膜(30)を保持できるように、前記動的摩擦係数は前記静的摩擦係数よりも低い、
ことを特徴とする合成材料の薄膜切断ユニット。
【請求項2】
前記円滑支持面(20)は、前記合成材料の薄膜(30)に対して、7000Paと18000Paとの間の圧力で押圧されるように設計されていることを特徴とする請求項1に記載の切断ユニット。
【請求項3】
前記合成材料の薄膜(30)は、複合材料の膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の切断ユニット。
【請求項4】
前記シュー(16)は、金属材料から形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の切断ユニット。
【請求項5】
前記切断ヘッド(12)の移動を制御する制御装置を更に備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の切断ユニット。
【請求項6】
前記制御装置は、前記切断ヘッド(12)を支持する遠隔アーム(18)を有するロボット(14)を備えたことを特徴とする請求項5に記載の切断ユニット。
【請求項7】
前記円滑支持面(20)は円対称であり、前記切断部材(22)は前記円滑支持面(20)の中心から突出していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の切断ユニット。
【請求項8】
前記トランスデューサ(24)は、前記超音波振動子(22)を20kHzと40kHz間の周波数で振動させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の切断ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成材料の薄膜切断ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
本願が指向する1つの分野は、特定のものではあるが排他的ではなく、ポリマー材料、特に、繊維材料の層を切断する分野である。
【0003】
公知の切断ユニットは、高率で布を生成する目的で、多数の繊維材料の層を切断するのに役に立つものである。
【0004】
これらのユニットは、吸引口が形成された水平の作業テーブルを備えている。また、これらのユニットは、作業テーブル上を第1方向に移行可能なように設けられた梁(ビーム)と、第1方向と実質的に垂直な方向に梁上で移行可能なようにそれ自身設けられた切断ヘッドとを備えている。切断ヘッドは、支持面を有するシュー(shoe)と、支持面から突出しながら振動するように設計された切断刃とを備えている。
【0005】
従って、繊維材料の複数層は、作業テーブル上に積層され、また、作業テーブルの吸引口を介して空気を吸引することにより、気密性プラスチックフィルムが、これらの全ての層を圧縮できるように、全体に適用される。そして、その全体は、作業テーブルと一体となったマットを1つのブロックに形成し、容易に切断できるようになる。
【0006】
ユニットは、又、事前定義された切断プログラムを使用し、切断刃の振動を制御可能とするだけでなく、マット状に圧縮された層の集合から所定形状に切断可能とするために梁と切断ヘッドとを同時に移行可能な制御装置を備えている。従って、繊維材料の複数の同一ピースが切断される。
【0007】
現在までに、可撓性ポリマー材料の層から複数のピースを切断するような技術を使用することが想像されてきた。米国特許公開公報文書2008/0273951を特に参照することができる。この文書は、作業テーブル上の固定位置に可撓性層が保を持され得る穿孔された作業テーブルを記載しており、また、シューが移動される方向に関して、シューの正面にて折目を除去することが可能なシューを備えた切断ヘッドを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許公開公報2008/0273951
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらのユニットは、実現するには相対的に複雑であり、それ故に、更に高価である。
【0010】
加えて、本発明が解決しようとする1つの発生する問題は、高い生産性をもって合成材料の薄膜から多数のピースを切断することが可能である簡単な切断ユニットを提供することである。
【0011】
その目的のために、合成材料の薄膜を切断するユニットであって、一方に合成材料の薄膜を受ける作業テーブルと、他方に平滑支持面を有するシュー(shoe)と、平滑支持面から突出可能な切断部材とを含む切断ヘッドを備え、前記合成材料の薄膜を切断できるように前記シューが事前定義された軌道に沿って前記シューが実質的に前記作業テーブルと平行に移動している間に、前記平滑支持面が前記合成材料の薄膜に適用される。前記作業テーブルは、前記合成材料との関係で静的摩擦係数を有する滑り止めコーティングを備え、一方、前記平滑支持面は、前記合成材料との関係で動的摩擦係数を有し、前記動的摩擦係数は、前記シューが合成材料の薄膜に渡ってスライドされる際に、作業テーブルに対して固定位置に合成材料の薄膜を保持可能なように、前記静的摩擦係数よりも低い。
【0012】
従って、本発明の1つの特徴は、作業テーブル上の滑り止めコーティングと平滑支持面を有するシューとを同時に実装することに見出され、これによりシューは、後者(合成材料の薄膜)を作業テーブル上の固定位置に保持しつつ、合成材料の薄膜に対して移動可能となる。シューは、後者が滑り止めコーティングをグリップし、固定位置に保持されるように、十分な圧力を合成材料の薄膜に及ぼすことが理解される。しかしながら、この圧力は、前記平滑支持面と合成材料の薄膜との間の摩擦力が増加する限界値を超えない。この圧力は、例えば、7000Paと18000Paとの間にある。
【0013】
従って、シューの平滑支持面と合成材料間の動的摩擦係数よりも大きい、合成材料との関係において静的摩擦係数を有する滑り止めコーティングを簡単に実装することにより、シューは後者(合成材料の薄膜)を切断する目的で、合成材料の層表面に渡って移動される。これにより相対的に複雑で高価な吸引手段を実装する必要がなくなる。加えて、静的摩擦係数と動的摩擦係数とが可能な限りそれぞれ互いに遠い滑り止めコーティングとシューとが選択される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の1つの特有の有利な特徴に従えば、合成材料の前記薄膜は複合材料の層である。複合材料は、補強材料の繊維が埋め込まれたポリマー材料のマトリックスから形成されている。マトリックスは、例えば、熱可塑性材料、ポリアミド又はポリエチレンから形成されており、また、例えば、長いガラス繊維やンカーボン繊維を含有している。
【0015】
本発明の他の特有の有利な特徴に従えば、前記滑り止めコーティングは、エラストマーから形成されている。静的摩擦係数は、本質的に滑り止めコーティングとその表面状態に依存する。例えば、エラストマータイプの材料として、シリコンやポリウレタン材料は、優れた滑り止め品質を有する。
【0016】
更に、前記シューは、好ましくは金属材料から形成されている。従って、シューは、更に剛性のある材料から形成され、また、支持面は、合成材料との関係で動的摩擦係数を可能な限り低くするため、平滑で凹凸が無くなるように表面処理される。
【0017】
1つの変形実施例では、剛性ポリマー材料から形成されて低い摩擦係数を有するシューが実装される。剛性ポリマー材料の一例は、ポリエーテルエーテルケトン又はPEEKである。
【0018】
更にまた、ユニットは、有利には更に前記切断ヘッドの移動を制御する制御装置を備えている。好ましくは、前記制御装置は、前記切断ヘッドを支える遠隔アームを有するロボットを備える。従って、ロボットの力により、その遠隔アームは作業スペースの外側から容易に制御することができ、これより作業テーブルへのアクセスを容易に得ることができ、合成材料の薄膜への適用を容易に行ったり、また、剛性材料から切断されたピースを取り除くことができる。
【0019】
加えて、前記切断部材は、超音波振動子(ソノトロード:sonotrode)とトランスデューサ(transducer)を備えている。従って、超音波(ultrasonic mechanical wave)が合成材料を切断するのに使用される。これにより、綺麗なエッジを生成することができる。実際、複合材料が切断される際には、複合材料に含まれる繊維がエッジから突出する傾向がある。超音波切断により、これらのエッジは本質的に溶融され、それ故に規則的になる。
【0020】
有利には、前記平滑支持面は円対称であり、前記切断部材は平滑支持面の中心から突出する。従って、切断部材を切断方向に配向させるために、合成材料の層に対して切断ヘッドが面内で回転されると、合成材料に作用する接線力の分布は、折目や不規則性の原因とはならない。
【0021】
平滑支持面は、他の形状であってもよいことは理解される。
【0022】
加えて、本発明に従う切断ユニットは、異なる厚さのゾーンを有する合成材料の薄膜を切断することができる。
【0023】
好ましくは、前記トランスデューサは、20kHzと40kHzの間の周波数で前記ソノトロードを振動させる。これにより、合成材料の最適な切断品質が生成される。
【0024】
本発明の他の特徴及び利点は、限定的ではない例として挙げられた本発明の特有の実施形態の下記説明を、添付図面を参照して読むことにより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による切断ユニットを示す模式的部分正面図である。
図2】操作の1つのモードにおける図1に示すユニットの模式的詳細図である。
図3図1に示すユニットの要素における矢印IIIに沿った下側からの模式的図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、その正面図において、水平サポート10と、水平サポート10に渡って移動するように設計されたロボット14に支えられた切断ヘッド12を示している。切断ヘッド12は、ロボット14の最終アーム又は遠隔アーム18に搭載されたシュー16(shoe)を備える。シュー16は、金属材料、更に特に鋼から形成されており、平滑水平支持面20と平滑水平支持面20から突出する超音波振動子上に搭載されたブレード22とを有している。支持面20は、表面処理により特に平滑にされている。これは、表面を硬くし、表面から凹凸を除去する目的の処理である。例えば、鋼はZ160CDV12タイプであり、急冷され、鏡面研磨され、その後、ロンボンド(lonbond)90処理が行われる。
【0027】
図1に戻る前に、シュー16の支持面20を示す図3を参照する。支持面20は円対称であり、ブレード22は中心から突出している。
【0028】
ブレード22は、遠隔アーム18の方向に切断ヘッド20の上方に取り付けられたトランスデューサ24に連続して延びている。それからトランスデューサ24は、ブレード22を30kHzの周波数で振動させる。
【0029】
ロボット14は、下記にて詳細に説明するように、垂直構成要素だけでなく水平構成要素に従って切断ヘッド12を移動することができる。
【0030】
水平サポート10は、シリコンエラストマー材料から形成された滑り止めコーティング26により被覆されており、それ故、これらは作業テーブル28を形成する。典型的な実装では、厚さ5mmのポリウレタンコーティングと硬度90のショアA(ShoreA)を使用する。滑り止めコーティング26は、例えば、接着剤により水平サポート10に固定され、これらは自由受け面29を有する。
【0031】
作業テーブル10と滑り止めコーティング26に関して、切断ヘッド12の動作を更に詳細に説明するため図2を参照する。
【0032】
図2は、作業テーブル28と切断ヘッド12を示す。また、図は、一緒に作業テーブル28を形成する滑り止めコーティング26と水平サポート10をも示す。
【0033】
複合材料の薄膜30は、切断ヘッド12と作業テーブル28との間に水平に置かれている。この薄膜30は、シュー16の支持面20と滑り止めコーティング26の自由受け面29との間に保持されている。薄膜30が形成される複合材料は、例えば、長いガラス繊維により補強されたポリアミド、ポリイミド6,6のマトリックスから構成されている。そのような複合材料の優位性は、熱可塑性マトリックスを使用することにある。
【0034】
従って、薄膜30上への切断ヘッド12の圧力により、後者(薄膜)が滑り止めコーティング26を把持できるようになる。実際、摩擦力が薄膜30と滑り止めコーティング26との間に作用し、この力は、滑り止めコーティング26に対して薄膜30を押圧するインターフェースに直角な成分と、相対的に相互にスライドする2つのものに対向する接線方向成分とに分解される。ところで、薄膜30と滑り止めコーティング26との間の相対的に高い静的摩擦係数により、摩擦力の接線方向成分は、超えると複合材料の薄膜30が滑り止めコーティング26上でスライドされる閾値に到達しない。与えられた複合材料に対する、薄膜30と滑り止めコーティング26との間のこの静的摩擦係数は、滑り止めコーティングの性質とその表面状態に依存する。エラストマー材料を選択することにより、相対的に高い静的摩擦係数が提供される。
【0035】
薄膜30上の切断ヘッド12の圧力は、有利には、200Nから500Nの間である。この圧力は、例えば、シュー16の支持面20の面積28340mmに渡って400Nである。即ち、約14.1kPaである。
【0036】
摩擦力の接線方向成分は、超えると複合材料の薄膜30が滑り止めコーティング26上でスライドされる閾値に到達しない。その理由は、シュー16の支持面20と複合材料の薄膜30との間のインターフェースでは、動的摩擦係数は相対的に低く、前記した静的摩擦係数よりも小さくなるからである。更にまた、シュー16の支持面20の状態は、支持面20と薄膜30との間の摩擦力の接線方向成分に対して、閾値を大きく減少させ、またその時に、接線方向成分は、シュー16と薄膜30との間の摩擦力が相対的に小さくなるように、かなり大きくなる。
【0037】
従って、複合材料の薄膜30を切り通すブレード22は、複合材料の薄膜30を作業テーブル28に関して固定位置に保持したまま、水平サポート10と平行な面内で切断ヘッド12を移動しながら、事前定義された軌道に沿って移動することができる。同様に、振動されるブレート22は、複合材料の薄膜30を切断する。
【0038】
また更に、切断ブレードと超音波とを関連させることは、切断力を最小化することを可能とし、従って、切断されるべき製品のスライドリスクを低減することができる。
【0039】
ロボット14は、複数の軌道に従って切断ヘッド12を制御可能とする制御プログラム(図示せず)によって制御され、従って、事前定義された形状に従って複合材料の複数のピースを切断することが可能となる。
【0040】
そのような複合材料のピースは、その後の熱成形のために組み立てることができる。
【符号の説明】
【0041】
10 水平サポート
12 切断ヘッド
16 シュー
20 円滑支持面
22 ブレード
24 トランスデューサ
26 滑り止めコーティング
28 作業テーブル
30 薄膜
図1
図2
図3