(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】アスファルトプラント及びそのアスファルト混合物製造方法
(51)【国際特許分類】
E01C 19/10 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
E01C19/10 A
(21)【出願番号】P 2018162231
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神尾 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 健児
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-255748(JP,A)
【文献】特開2006-009328(JP,A)
【文献】国際公開第98/031519(WO,A1)
【文献】特開2006-118301(JP,A)
【文献】特開昭56-159405(JP,A)
【文献】特開2005-330713(JP,A)
【文献】特開昭62-017201(JP,A)
【文献】特開平02-144187(JP,A)
【文献】国際公開第2005/068080(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2003-0023248(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1129599(KR,B1)
【文献】特開昭57-096106(JP,A)
【文献】米国特許第4706893(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/10
J-STAGE
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材ドライヤにて加熱処理した骨材を受け入れる振動篩、骨材貯蔵ビン、骨材計量槽及びミキサを階層状に組み上げて成るプラント本体の側部地上に、溶融アスファルトを貯留するアスファルト油槽と、該アスファルト油槽内の溶融アスファルトを所定温度に加熱する加熱手段と、前記アスファルト油槽内に投入される廃材を連続的に掻き出す掻き出し手段と、掻き出した廃材から溶融アスファルトを油切りする油切り手段とを備えた溶融アスファルト加熱解砕設備を設置し、該該溶融アスファルト加熱解砕設備のアスファルト油槽内の溶融アスファルトに廃材塊を浸漬して加熱しながら廃材塊に付着するアスファルトの結合力を弱めて廃材塊を解砕し、この解砕した加熱廃材をアスファルト混合物の素材として使用する構成としたことを特徴とするアスファルトプラント。
【請求項2】
前記加熱手段として、バーナを備えた熱風発生炉と、該熱風発生炉の熱風と前記アスファルト油槽内の溶融アスファルトとを熱交換して溶融アスファルトを所定温度に加熱する熱交換器と、前記アスファルト油槽から前記熱交換器に溶融アスファルトを循環供給する循環回路とを備えたことを特徴とする請求項1記載のアスファルトプラント。
【請求項3】
前記アスファルト油槽は側壁面の一部を傾斜構造とした略舟形状とすると共に、前記掻き出し手段は前記アスファルト油槽の底面から傾斜構造とした前記側壁面に沿って配置したスクレーパコンベヤとしたことを特徴とする請求項1または2記載のアスファルトプラント。
【請求項4】
前記アスファルト油槽内にて発生する臭気性ガスを前記熱風発生炉に導出して燃焼分解させる臭気ガス導出管を備えたことを特徴とする請求項2または3記載のアスファルトプラント。
【請求項5】
道路工事によって掘り起こされる廃材塊を粗破砕し、粗破砕後の廃材塊を溶融アスファルトを貯留するアスファルト油槽内に投入し、溶融アスファルトに所定時間浸漬して加熱しながら廃材塊に付着するアスファルトの結合力を弱めて廃材塊を解砕し、この解砕した廃材をアスファルト油槽から連続的に掻き出し、廃材に付着する溶融アスファルトを油切りした後、アスファルト混合物の素材として使用することを特徴とするアスファルトプラントのアスファルト混合物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト混合物を製造するアスファルトプラントに関し、特に道路工事などによって掘り起こされる廃材塊を高温の溶融アスファルトを利用して加熱・解砕してアスファルト混合物の素材として使用するアスファルトプラント及びそのアスファルト混合物製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路工事等により掘り起こされたアスファルト舗装廃材(以下「廃材」という)の再利用を図るため、先ず、廃材塊をジョークラッシャ等の一次破砕機にて粗破砕し、次いでインパクトクラッシャ等の二次破砕機にて所定粒径、例えば約13mmアンダー程度に細破砕している。
【0003】
細破砕した廃材は、例えば、特許文献1に開示されるように、アスファルトプラントの廃材ドライヤにて約160℃程度に加熱処理して廃材貯蔵ビンに貯蔵する一方、骨材ドライヤにて同様に加熱処理した骨材をプラント本体の振動篩にて粒径別に篩い分けて下位の骨材貯蔵ビンに一時貯蔵する。
【0004】
そして、廃材を混入するアスファルト混合物を製造するときには、前記廃材貯蔵ビン及び骨材貯蔵ビンから払い出される廃材及び骨材を所定量ずつミキサ内に投入し、かつ所定量の溶融アスファルト、石粉を添加混合して所望配合のアスファルト混合物を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記のように、道路工事現場等から回収してきた廃材塊をドライヤでの加熱処理の前処理として各種破砕機にて所定粒径以下に破砕処理するにあたり、それを例えば都市部近郊のアスファルト混合物製造工場の敷地内で行う場合、特にインパクトクラッシャによる細破砕に伴って発生する騒音や粉塵は周辺環境上問題となる可能性がある。
【0007】
本発明は上記の点に鑑み、廃材塊を破砕処理する際の騒音や粉塵を軽減できるアスファルトプラント及びそのアスファルト混合物製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討を重ね、粗破砕した廃材塊を約160℃程度に加熱した溶融アスファルト中に浸漬させるテストを試行した結果、約5分程度で廃材塊中のアスファルト分の結合力を弱めてバラバラに解砕できることを確認した。そして、このテスト結果によれば、廃材を高温の溶融アスファルトに浸漬させることは、廃材の解砕処理手段として十分に有効であり、かつ従来の破砕機による破砕処理と比較して騒音や粉塵を軽減できると考えた。また、廃材の解砕処理と併せて加熱処理も同時に行える利点もあり、更に溶融アスファルトが廃材表面に付着残留していてもアスファルト混合物を製造する上では支障がないと考え、本発明に至ったものである。
【0009】
即ち、本発明に係る請求項1記載のアスファルトプラントでは、骨材ドライヤにて加熱処理した骨材を受け入れる振動篩、骨材貯蔵ビン、骨材計量槽及びミキサを階層状に組み上げて成るプラント本体の側部地上に、溶融アスファルトを貯留するアスファルト油槽と、該アスファルト油槽内の溶融アスファルトを所定温度に加熱する加熱手段と、前記アスファルト油槽内に投入される廃材を連続的に掻き出す掻き出し手段と、掻き出した廃材から溶融アスファルトを油切りする油切り手段とを備えた溶融アスファルト加熱解砕設備を設置し、該溶融アスファルト加熱解砕設備のアスファルト油槽内の溶融アスファルトに廃材塊を浸漬して加熱しながら廃材塊に付着するアスファルトの結合力を弱めて廃材塊を解砕し、この解砕した加熱廃材をアスファルト混合物の素材として使用する構成としたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る請求項2記載のアスファルトプラントでは、前記加熱手段として、バーナを備えた熱風発生炉と、該熱風発生炉の熱風と前記アスファルト油槽内の溶融アスファルトとを熱交換して溶融アスファルトを所定温度に加熱する熱交換器と、前記アスファルト油槽から前記熱交換器に溶融アスファルトを循環供給する循環回路とを備えたことを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る請求項3記載のアスファルトプラントでは、前記アスファルト油槽は側壁面の一部を傾斜構造とした略舟形状とすると共に、前記掻き出し手段は前記アスファルト油槽の底面から傾斜構造とした前記側壁面に沿って配置したスクレーパコンベヤとしたことを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る請求項4記載のアスファルトプラントでは、前記アスファルト油槽内にて発生する臭気性ガスを前記熱風発生炉に導出して燃焼分解させる臭気ガス導出管を備えたことを特徴としている。
【0013】
本発明に係る請求項5記載のアスファルトプラントのアスファルト混合物製造方法では、道路工事によって掘り起こされる廃材塊を粗破砕し、粗破砕後の廃材塊を溶融アスファルトを貯留するアスファルト油槽内に投入し、溶融アスファルトに所定時間浸漬して加熱しながら廃材塊に付着するアスファルトの結合力を弱めて廃材塊を解砕し、この解砕した廃材をアスファルト油槽から連続的に掻き出し、廃材に付着する溶融アスファルトを油切りした後、アスファルト混合物の素材として使用することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る請求項1記載のアスファルトプラントによれば、プラント本体の側部地上に、溶融アスファルトを所定温度に維持する加熱手段を有するアスファルト油槽、該アスファルト油槽内の廃材を掻き出す掻き出し手段、及び溶融アスファルトを油切りする油切り手段とを備えた溶融アスファルト加熱解砕設備を設置したので、該溶融アスファルト加熱解砕設備のアスファルト油槽内の溶融アスファルトに廃材塊を浸漬して加熱しながら廃材塊に付着するアスファルトの結合力を弱めて廃材塊を解砕することができ、この解砕した加熱廃材をプラント本体に搬送してアスファルト混合物の素材として使用すれば、騒音や粉塵をあまり発生させることはなく、また加熱処理も同時に行えて従来設置していた廃材ドライヤも不要とできる。
【0015】
また、本発明に係る請求項2記載のアスファルトプラントによれば、前記加熱手段として、バーナを備えた熱風発生炉と、該熱風発生炉の熱風と前記アスファルト油槽内の溶融アスファルトとを熱交換して溶融アスファルトを所定温度に加熱する熱交換器と、前記アスファルト油槽から前記熱交換器に溶融アスファルトを循環供給する循環回路とを備えたので、アスファルト油槽内の溶融アスファルトを所定温度に安定して維持制御できる。
【0016】
また、本発明に係る請求項3記載のアスファルトプラントによれば、前記アスファルト油槽は側壁面の一部を傾斜構造とした略舟形状とすると共に、前記掻き出し手段は前記アスファルト油槽の底面から傾斜構造とした前記側壁面に沿って配置したスクレーパコンベヤとしたので、アスファルト油槽内の廃材をスクレーパコンベヤにて加熱しながら連続的に搬送できると同時に、加熱によってアスファルトの結合力を弱めた廃材塊を掻き出すことで廃材塊を一層解砕できる。
【0017】
また、本発明に係る請求項4記載のアスファルトプラントによれば、前記アスファルト油槽内にて発生する臭気性ガスを前記熱風発生炉に導出して燃焼分解させる臭気ガス導出管を備えたので、臭気性ガスを熱風発生炉内にて燃焼分解できると共に、臭気性ガスの燃焼エネルギーも有効利用できる。
【0018】
また、本発明に係る請求項5記載のアスファルト混合物製造方法によれば、道路工事によって掘り起こされる廃材塊を粗破砕し、粗破砕後の廃材塊を溶融アスファルトを貯留するアスファルト油槽内に投入し、溶融アスファルトに所定時間浸漬して加熱しながら廃材塊に付着するアスファルトの結合力を弱めて廃材塊を解砕し、この解砕した廃材をアスファルト油槽から連続的に掻き出し、廃材に付着する溶融アスファルトを油切りした後、アスファルト混合物の素材として使用するので、廃材塊を粗破砕するジョークラッシャ等の一次破砕機の衝撃音も比較的小さく、また粗破砕後の細破砕は高温の溶融アスファルトに浸漬して加熱・解砕処理するので騒音や粉塵をあまり発生させることはない。また加熱処理も同時に行えて従来設置していた廃材ドライヤも不要とできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るアスファルトプラントの概略構成図である。
【
図2】溶融アスファルト加熱解砕設備の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るアスファルトプラントにあっては、骨材ドライヤにて加熱処理した骨材を受け入れる振動篩、骨材貯蔵ビン、骨材計量槽及びミキサを階層状に組み上げて成るプラント本体の側部地上に、廃材塊を高温の溶融アスファルトに浸漬して加熱・解砕処理する溶融アスファルト加熱解砕設備を設置する。前記溶融アスファルトの温度としては、廃材中のアスファルト分が軟化溶融する所定温度以上とし、好ましくはアスファルト混合物を製造する際の廃材の加熱処理温度程度、例えば約160℃程度とする。
【0021】
また、前記溶融アスファルト加熱解砕設備は、溶融アスファルトを貯留するアスファルト油槽と、該アスファルト油槽内の溶融アスファルトを所定温度に加熱する加熱手段と、前記アスファルト油槽内に投入される廃材を連続的に掻き出す掻き出し手段と、掻き出した廃材から溶融アスファルトを油切りする油切り手段とを備える。
【0022】
また、前記加熱手段として、バーナを備えた熱風発生炉と、該熱風発生炉の熱風と前記アスファルト油槽内の溶融アスファルトとを熱交換して溶融アスファルトを所定温度に加熱する熱交換器と、前記アスファルト油槽から前記熱交換器に溶融アスファルトを循環供給する循環回路とを備える。なお、前記加熱手段には、例えば温度調節の容易な電気ヒータ等も好適に採用できるが、バーナを採用すれば、高温の溶融アスファルト表面から揮発する臭気性ガスを前記熱風発生炉にて燃焼分解処理することができて好適である。
【0023】
更に、前記アスファルト油槽は側壁面の一部を傾斜構造とした略舟形状とすると共に、前記掻き出し手段は前記アスファルト油槽の底面から傾斜構造とした前記側壁面に沿って配置したスクレーパコンベヤとする。該スクレーパコンベヤは、前記アスファルト油槽内の廃材を連続的に搬送すると同時に、掻き出し時にアスファルトの結合力が弱まった廃材塊を解砕する。また、スクレーパにて掻き出した廃材から付着するアスファルトを油切りする、例えば振動篩、回転篩等の油切り手段を備える。
【0024】
更にまた、前記アスファルト油槽にて発生する臭気性ガスを前記熱風発生炉に導出して燃焼分解させる臭気ガス導出管を備える。前記アスファルト油槽内にて発生する臭気性ガスは前記臭気ガス導出管を通して熱風発生炉へと導かれ、高温に晒されて燃焼分解される。
【0025】
そして、上記構成のアスファルトプラントにて、廃材を混入したアスファルト混合物を製造するときには、先ず、前記溶融アスファルト加熱解砕設備の溶融アスファルトを少なくとも廃材中のアスファルト分が軟化溶融する所定温度以上に加熱し、次いでジョークラッシャ等の一次破砕機にて粗破砕した廃材塊を前記溶融アスファルト加熱解砕設備の溶融アスファルト中に投入し、所定時間浸漬させて廃材塊に付着するアスファルトの結合力を弱めて廃材塊を解砕する。そして、この解砕した廃材をアスファルト油槽から連続的に掻き出し、廃材に付着する溶融アスファルトを油切りした後、廃材貯蔵ビンに貯蔵してアスファルト混合物の素材として使用する。
【0026】
このように、溶融アスファルトに浸漬して加熱しながら廃材塊に付着するアスファルトの結合力を弱めて廃材塊を解砕してアスファルト混合物の素材として使用するので、騒音や粉塵をあまり発生させることはなく、加熱処理も同時に行えて従来設置していた廃材ドライヤも不要となる。また、加熱・解砕処理した廃材表面には油切り処理後も溶融アスファルトが幾らか付着残留するが、その付着量を考慮した上で配合に見合った新規の溶融アスファルトを所定量添加混合することで製品となるアスファルト混合物のアスファルト量に何ら支障はなく、また加熱新規骨材の温度や廃材混入量を調整することでアスファルト混合物の温度も所望の温度に調製できる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0028】
図中の1は、道路舗装材であるアスファルト混合物を製造するアスファルトプラントであって、骨材を加熱処理する骨材ドライヤ2と、該骨材ドライヤ2にて加熱処理した骨材を送り出す垂直搬送装置であるバケットエレベータ3と、該バケットエレベータ3にて送り出した骨材を篩い分けて貯蔵・計量し、溶融アスファルト等を添加混合するプラント本体4と、該プラント本体4の側部に備える廃材貯蔵ビン5及び廃材計量槽6等を備えている。
【0029】
前記骨材ドライヤ2は、内周部に多数の掻き上げ羽根(図示せず)を周設した円筒状のドラム7を基台8上に回転自在に傾斜支持し、駆動装置(図示せず)により所定の速度で回転させるようにしている。また、前記ドラム7一端部のホットホッパ9には熱風供給用のバーナ10を備える一方、ドラム7他端部のコールドホッパ11には各種粒径の骨材をドラム7内に供給する骨材投入コンベヤ12を備えている。
【0030】
また、前記骨材ドライヤ2によって所定温度に加熱処理後、前記バケットエレベータ3にて持ち上げた骨材を受け入れて篩い分ける振動篩13と、該振動篩13にて篩い分けた骨材を粒径別に貯蔵する骨材貯蔵ビン14と、該骨材貯蔵ビン14より払い出される各粒径の骨材を累積計量する骨材計量槽15と、アスファルトタンク16aより供給ポンプ17を具備したアスファルト供給配管18を介して供給される溶融アスファルトを計量するアスファルト計量槽19と、前記各計量槽にて所定量ずつ計量した各種材料を混合調整するミキサ20とを、高架台21上に階層状に組み上げてプラント本体4を構成している。
【0031】
前記プラント本体4の側部に備える前記廃材貯蔵ビン5及び廃材計量槽6は、前記同様に、高架台21上に階層状に組み上げており、下位側の廃材計量槽6は前記骨材計量槽15と並べて前記ミキサ20の直上に配置し、廃材を混入したアスファルト混合物を製造する際には、骨材の一部に代えて前記廃材貯蔵ビン5からも所定量の廃材を前記廃材計量槽6を経由して前記ミキサ20へ払い出して混合調整するようにしている。
【0032】
また、前記アスファルトプラント1の側部地上に、廃材塊を高温の溶融アスファルトに浸漬して加熱・解砕処理する溶融アスファルト加熱解砕設備22を設置し、該溶融アスファルト加熱解砕設備22にて加熱・解砕処理した廃材を廃材貯蔵ビン5に搬送する垂直搬送装置であるバケットエレベータ23を備えている。なお、前記垂直搬送装置として、バケットエレベータに代えてスキップエレベータ等も採用できるが、臭気性を有する溶融アスファルトが付着した廃材を搬送することを考慮すると、比較的密閉性の高いバケットエレベータを採用した方が周辺環境上好ましい。
【0033】
前記溶融アスファルト加熱解砕設備22は、溶融アスファルトを貯留するアスファルト油槽24と、該アスファルト油槽24内の溶融アスファルトを所定温度に加熱する加熱手段であるバーナ25と、前記アスファルト油槽24内の溶融アスファルトに浸漬して加熱・解砕処理した廃材をアスファルト油槽24内底部から連続的に掻き出すスクレーパコンベヤ26と、該スクレーパコンベヤ26にて掻き出した廃材からその表面に付着する溶融アスファルトを油切りする油切り手段である振動篩27とを主体に備えて成り、廃材を連続的に加熱・解砕処理可能な構成としている。
【0034】
前記アスファルト油槽24は、
図2に示すように、側壁面の一部を傾斜構造とした略舟形状に形成しており、その外周壁面を保温材(図示せず)で被覆していると共に、その上部開放部は溶融アスファルトから揮発する臭気性ガスの飛散を抑制し、かつ保温性を高めるために天板28で閉鎖している。また、前記アスファルト油槽24の上流側(廃材投入側)と下流側(廃材排出側)の天板28の一部を切り欠き、それぞれ廃材投入口29と、廃材排出口30とを設け、前記廃材投入口29の上位には粗破砕した廃材塊の投入ホッパ31と、該投入ホッパ31から切り出される廃材塊をアスファルト油槽24内に貯留した溶融アスファルトへ搬送・投入する投入コンベヤ32を備えている一方、前記廃材排出口30の下流側には油切り用の前記振動篩27を配置している。
【0035】
前記スクレーパコンベヤ26は、略舟形状の前記アスファルト油槽24内の底面から傾斜構造とした側壁面に沿わせて略ヘ字形状に折曲して配置していると共に、その搬送端部(
図2中の左端部)は前記廃材排出口30よりアスファルト油槽24の外部へと突出させており、前記アスファルト油槽24内の底部に沈降した廃材を前記スクレーパコンベヤ26の搬送面に突設した複数のスクレーパ部材26aにて引っ掛けながら所定時間を掛けて下流側(
図2中の左側)へと搬送し、前記廃材排出口30よりアスファルト油槽24外部へと連続的に掻き出し、その下位(廃材の落下位置)に配置した前記振動篩27の篩網(図示せず)上に落下投入させる構成としている。
【0036】
なお、前記スクレーパコンベヤ26の搬送速度は、廃材の処理量等に応じて適宜決定すれば良いが、少なくともアスファルト油槽24内に投入した廃材塊が溶融アスファルトにて十分に加熱・解砕されるのに要する時間以上をかけて外部へ掻き出されるように調整すると良い。廃材塊の加熱・解砕に要する時間は溶融アスファルトの温度等に応じて変動し、例えば、温度が高ければ比較的短時間にて廃材中のアスファルト分の結合力を弱めて解砕処理できるため、その場合には搬送速度を速めに調整すると良く、逆に温度が低ければ搬送速度を遅めに調整すると良い。
【0037】
図中の33は熱風発生炉であって、該熱風発生炉33の一端部には加熱手段である前記バーナ25を備えている一方、他端部には熱風導出用の熱風導出ダクト34を連結し、該熱風導出ダクト34の下流側には排風機35及び煙突36を備えている。また、図中の37は臭気性ガス導出管であって、該臭気性ガス導出管37の一端部は前記アスファルト油槽24の天板28を貫通させて溶融アスファルト上位の隙間空間に臨ませている一方、他端部は前記熱風発生炉33に連結し、アスファルト油槽24内の溶融アスファルトより揮発する臭気性ガスを前記臭気性ガス導出管37を介して前記バーナ25付近に導出し、高温の熱風に晒して燃焼分解可能な構成としている。
【0038】
図中の38は前記アスファルト油槽24内の溶融アスファルトを循環供給する循環配管であって、その途中には循環ポンプ39、及び熱交換器40を介在させている一方、前記熱風発生炉33の熱風導出ダクト34の途中を前記熱交換器40に連結しており、熱風発生炉33から導出される高温の熱風と、アスファルト油槽24から循環供給される溶融アスファルトとを、前記熱交換器40にて順次熱交換させ、アスファルト油槽24内の溶融アスファルトを所定温度に加熱・維持可能な構成としている。
【0039】
また、前記熱風発生炉33の熱風導出ダクト34の途中には、熱風を前記熱交換器40へ通過させずに下流の煙突36側に直接導出可能とするバイパスダクト41を連結していると共に、該バイパスダクト41には熱風通過量を調整する調整弁42を備えている。また、前記熱交換器40よりも下流側の循環配管38には、管内を流下する溶融アスファルトの温度を検出する温度センサ43を備え、該温度センサ43にて検出する溶融アスファルトの温度値に基づいて前記調整弁42の開度を調整し、熱交換器40に供給する熱風量を調整して溶融アスファルトの加熱温度を調整制御する溶融アスファルト温度制御器44を備えている。
【0040】
また、図中の45は、前記振動篩27にて廃材から油切りして回収される溶融アスファルトを前記アスファルト油槽24へと戻して再利用するための戻り配管であって、該戻り配管45の途中には供給ポンプ46を備えている。また、図中の47は、運転開始前に予めアスファルト油槽24へ溶融アスファルトを供給して貯留させたり、加熱・解砕処理した廃材と共にアスファルト油槽24から持ち去られる溶融アスファルト分を補充する供給配管であって、その一端部を前記アスファルトプラント1のアスファルトタンク16bに連結している一方、その途中に供給ポンプ48を備え、他端部を前記溶融アスファルト加熱解砕設備22のアスファルト油槽24の廃材投入口29に臨ませている。なお、前記アスファルトタンク16bは、溶融アスファルト加熱解砕設備22側に別途設置しても良いが、アスファルトプラント1に既設のものを利用するようにした方がコスト面で有利である。
【0041】
そして、上記構成の溶融アスファルト加熱解砕設備を併設したアスファルトプラントにて、廃材を混入したアスファルト混合物を製造するときには、先ず、前記アスファルトプラント1のアスファルトタンク16bより、供給配管47を介して所定量の溶融アスファルトを溶融アスファルト加熱解砕設備22のアスファルト油槽24に供給して貯留させる。そして、前記熱風発生炉33のバーナ25を着火・燃焼し、高温の熱風を熱風導出ダクト34を介して下流の熱交換器40へと供給すると共に、循環配管38の循環ポンプ39を駆動させてアスファルト油槽24内の溶融アスファルトを前記熱交換器40へと循環供給し、前記熱風と順次熱交換させて少なくとも廃材中のアスファルト分が軟化溶融する所定温度、例えば約160℃程度に加熱昇温させる。
【0042】
次いで、粗破砕した廃材塊を前記投入ホッパ31、投入コンベヤ32を介してアスファルト油槽24内の高温の溶融アスファルト中に投入する。アスファルト油槽24の底部に沈降した廃材塊は、スクレーパコンベヤ26のスクレーパ部材26aにて所定時間をかけて下流端の廃材排出口30へと掻き出していき、その間に廃材中のアスファルト分を昇温させて徐々に軟化溶融させてバラバラに解砕処理する。このとき、約160℃程度で加熱することによって廃材内部の残留水分も蒸発して完全に抜け切り、アスファルト混合物の材料として使用する上で適当な性状に調整される。
【0043】
そして、この加熱・解砕処理した廃材を廃材排出口30からアスファルト油槽24外へと連続的に排出し、廃材排出口30の下位に配置した振動篩27に落下投入する。前記振動篩27では廃材を篩ってその表面に付着残留する溶融アスファルトを油切りし、この油切りした廃材を前記バケットエレベータ23を介し、隣接するアスファルトプラント1の廃材貯蔵ビン5に搬送して貯蔵する一方、油切りによって分離回収した溶融アスファルトは戻り配管45を介してアスファルト油槽24へと戻して再利用する。
【0044】
そして、アスファルトプラント1では、前記骨材貯蔵ビン14及び廃材貯蔵ビン5から払い出される加熱骨材及び加熱廃材を骨材計量槽15及び廃材計量槽6にてそれぞれ計量しながら下位のミキサ20内に所定量ずつ投入し、かつ前記廃材の表面に付着残留する溶融アスファルト量に応じ、アスファルトタンク16aより供給する新規の溶融アスファルトを所定量添加混合し、所望配合のアスファルト混合物を製造する。
【0045】
なお、加熱・解砕処理した廃材表面に付着残留する溶融アスファルト量は、例えば、予めテスト運転を実施し、振動篩27通過後に採取した複数のサンプルから溶融アスファルトの実際の付着量を測定してその平均値をとるようにすると良い。そして、その付着量と、アスファルト混合物中の廃材の混入割合とを乗算し、その乗算結果と、製造するアスファルト混合物に配合するアスファルト量とを比較し、不足するようであればその不足分の溶融アスファルトを添加混合する。
【0046】
例えば、加熱・解砕処理した廃材表面に付着する溶融アスファルト量が4%、廃材の混入割合が5割であれば、それらを乗算すると2%となる。そして、製造するアスファルト混合物に配合するアスファルト量が5%であれば、前記乗算結果の2%と比較すると3%不足するため、その不足分である3%の溶融アスファルトを添加混合することにより、溶融アスファルトの付着残量にかかわらず、配合通りの(溶融アスファルトの過不足のない)アスファルト混合物を製造できる。
【0047】
なお、本実施例では、溶融アスファルト加熱解砕設備22のアスファルト油槽24内に貯留する溶融アスファルトの加熱温度を約160℃としたが、これにより、従来破砕処理後に行っていた廃材ドライヤでの加熱処理工程が不要となり、効率よくアスファルト混合物を製造できると共に、廃材ドライヤにてバーナからの高温の熱風に直接晒されることで生じる可能性のあったアスファルト分の熱劣化といった不具合を防止できる。
【0048】
ただし、何ら上記温度に限定するものではなく、例えばそれよりも低温の約100℃程度でも良く、要は少なくとも廃材中のアスファルト分が軟化溶融する温度以上であれば良い。その場合、アスファルト混合物を製造する際の廃材の加熱処理温度(約160℃)には満たないため、例えば、前記骨材ドライヤ2にて骨材を通常よりも高温に加熱しておき、この高温の骨材と前記廃材とを前記ミキサ20内に投入して混合した際に約160℃程度に調整されるようにしておくと良い。
【0049】
このように、廃材塊を高温の溶融アスファルトに浸漬させて廃材中のアスファルト分を軟化溶融させて加熱・解砕処理することにより、騒音や粉塵の発生を軽減でき、例え都市部近郊のアスファルト混合物製造工場の敷地内であってもさほど支障なく処理できる。また、従来のように、インパクトクラッシャ等の二次破砕機での細破砕処理が不要となるため、廃材を必要以上に破砕せずに粒径をある程度維持したまま回収でき、廃材を混入したアスファルト混合物を品質良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、廃材を混入したアスファルト混合物を製造するアスファルトプラントに対して広く利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1…アスファルトプラント 2…骨材ドライヤ
4…プラント本体 5…廃材貯蔵ビン
6…廃材計量槽 13…振動篩
14…骨材貯蔵ビン 15…骨材計量槽
16a、16b…アスファルトタンク 20…ミキサ
21…高架台 22…溶融アスファルト加熱解砕設備
23…バケットエレベータ(垂直搬送装置)
24…アスファルト油槽 25…バーナ(加熱手段)
26…スクレーパコンベヤ 27…振動篩(油切り手段)
33…熱風発生炉 34…熱風導出ダクト
37…臭気性ガス導出管 38…循環ダクト
40…熱交換器