(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】ネット状資材
(51)【国際特許分類】
A01G 13/02 20060101AFI20220331BHJP
A01G 9/14 20060101ALI20220331BHJP
A01G 22/60 20180101ALI20220331BHJP
【FI】
A01G13/02 E
A01G9/14 S
A01G22/60
(21)【出願番号】P 2016134410
(22)【出願日】2016-07-06
【審査請求日】2019-06-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】514215457
【氏名又は名称】株式会社イノベックス
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英司
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 晶子
(72)【発明者】
【氏名】内田 剛人
(72)【発明者】
【氏名】石井 真吏
【合議体】
【審判長】森次 顕
【審判官】有家 秀郎
【審判官】西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-85649(JP,A)
【文献】特開2010-115193(JP,A)
【文献】特開2005-168507(JP,A)
【文献】国際公開第2008/126766(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G9/14
A01G13/02
A01G22/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光または太陽光と同等の波長分布を有する光源の光を照射した場合において、400~700nmの波長の光量子束透過量を100μmolm
-2s
-1としたときの、600~700nmの波長の赤色光の光量子束透過量が45~65μmolm
-2s
-1であるネット状資材を、外張り被覆材の上に被せ、該外張り被覆材の内部でトルコギキョウを栽培する際に、前記ネット状資材が、定植後から1~3ケ月の栄養成長期間のみ利用され、その後の花芽分化期には利用されないことを特徴とする、トルコギキョウの栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネット状資材および該ネット状資材を用いたトルコギキョウの栽培方法に関し、より詳細には、トルコギキョウの切り花長を長くすることができる、トルコギキョウ栽培用のネット状資材および該ネット状資材を用いたトルコギキョウの栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トルコギキョウは、花色や花型が豊富で、生産量が多く、作付面積も広い。そのため、花卉産業にとって重要な植物であり、栽培技術の向上が試みられてきた。特に、ビニールハウス等の外張り被覆材を用いた抑制栽培は、出荷時期を調整したり、良品を多く栽培できることから注目され、いろいろな試みがなされてきた。
【0003】
例えば特許文献1には、近赤外線吸収剤を配合した被覆材料を用いてトルコギキョウを栽培する方法が開示されている。トルコギキョウをビニールハウス内で栽培する場合、過度の高温により徒長等の生育不良が起きやすいところ、特許文献1の方法によれば、昇温原因である近赤外線を被覆材が吸収し、且つ、生長・成長に必要な可視光は十分量ビニールハウス内に透過するので、生育不良の発生を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トルコギキョウは、一般に切り花の状態で市場に流通する。トルコギキョウの切り花の階級は切り花長で決まる。よって、他の商品(同品種のトルコギキョウ)と差別化して商品価値を高めるために、切り花長を長くする方法を確立したいという要求が生産者にはある。しかし、特許文献1の方法は、この要求を満たすことができていなかった。
【0006】
従って、本発明の目的は、切り花長が長いトルコギキョウの収穫を可能にする、トルコギキョウ栽培用のネット状資材および該ネット状資材を用いたトルコギキョウの栽培方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
トルコギキョウの切り花長は、品種ごとに決められている数の花が開花した状態(例えば、ロジーナピンクであれば、1本あたり3輪開花した状態)における、茎の根本から先端(根本から最も遠い位置にある花の先端)までの長さを意味している。切り花長は、節数を増加させたり節間距離を延ばすことで長くすることができる。そこで、本発明者等は、茎の節数を増加させたり節間距離を伸ばす方法について鋭意研究を行った。その結果、驚くべきことに、トルコギキョウの抑制栽培において、600~700nmの波長の赤色光を選択的にトルコギキョウに照射することにより、節数の増加および節間距離の伸長を実現できることがわかった。
【0008】
即ち、本発明によれば、外張り被覆材を使用してトルコギキョウを栽培する際に利用されるネット状資材であって、600~700nmの波長の赤色光を選択的に透過することを特徴とするネット状資材が提供される。
【0009】
本発明のネット状資材においては、
(1)経糸と緯糸を編織することにより得られる編織体、もしくは割繊維ウェブを積層させて得られる割繊維ウェブ積層体により形成されていること、
(2)カラミ織により形成されていること、
(3)ラッセル編により形成されていること、
(4)400~700nmの波長の光量子束透過量を100μmolm-2s-1としたときの、前記赤色光の光量子束透過量が30μmolm-2s-1以上であること、が好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、600~700nmの波長の赤色光を選択的に透過するネット状資材を、外張り被覆材の上に被せ、該外張り被覆材の内部でトルコギキョウを栽培することを特徴とする、トルコギキョウの栽培方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のネット状資材によれば、切り花長の長いトルコギキョウを栽培・収穫することができる。その理由は定かではないが、本発明者等は以下のように推察している。即ち、赤色光には、トルコギキョウの花芽分化を抑制することで栄養成長期間を長くする効果がある。よって、特に定植から本発明のネット状資材を使って赤色光を選択的に照射し、栄養成長期間を長くすると、節数の多いトルコギキョウを得ることができる。そして、花芽分化期に入った後は本発明のネット状資材を使用しないことで、節間が延び、結果として切り花長の長いトルコギキョウを得ることができると考えられる。
【0012】
しかも、本発明のネット状資材は、赤色光以外の光のハウス内への透過量を減少させるので、ハウス内の過度の昇温も防止され、徒長等の生育不良が起こる可能性を低減させている。更に、後述の実施例に示されているように、切り花長だけでなく、総蕾数や有効蕾数も増やすことができる。
【0013】
更にまた、本発明のネット状資材を使用する際には、大型設備を用意する必要もなく、電気代もかからないので、生産コストが安く、環境にもやさしいという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図5】実験例1~4で用いたネット状資材の透過光の波長特性を示すグラフであ る。
【
図6】実験例1~4で栽培したトルコギキョウの規格割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<ネット状資材>
本発明は、トルコギキョウの抑制栽培に利用されるネット状資材に関するものである。本発明において、「ネット状資材」とは、表面から裏面まで貫通した空隙を複数有する資材を意味する。かかる「ネット状資材」としては、編物や織物のように経糸と緯糸を編織したもの(編織体)や、樹脂フィルムにスリットを入れて割繊して得られる割繊維ウェブ(
図2参照)、かかる割繊維ウェブを積層させて得られる割繊維ウェブ積層体(
図3参照)を挙げることができる。編物としては、例えばラッセル編を挙げることができ(
図1参照)、織物としては、例えば平織やカラミ織(
図4)を挙げることができる。
【0016】
図1に示されているように、ラッセル編1とは、モノフィラメントを鎖編み等により編み上げた鎖状フィラメント3の列の間に、テープヤーン5が緯糸として挿入された構造を有するものである。
【0017】
図2に示されているように、割繊維ウェブ10は、幹繊維13と、幹繊維13より細い枝繊維15とからなり、具体的には、割繊維ウェブ10は、互いに平行に延びた複数の幹繊維13と、幹繊維13に対して交差して延び、隣接する幹繊維13同士をつなぐ枝繊維15とで構成されている。
【0018】
図4に示されているように、カラミ織20とは、互いに平行に伸びた複数のフラットヤーン21を緯糸とし、複数のモノフィラメント23を経糸として縫うように走らせた構造をしている。モノフィラメント23は、通常、1~6本を一組25とし、各組の間は0.5~5.0cmほど離れている。
【0019】
本発明のネット状資材は、従来公知の熱可塑性樹脂を用いて形成される。従来公知の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等を挙げることができ、高密度ポリエチレンが好ましい。
【0020】
本発明のネット状資材は、ビニールハウス等の外張り被覆材を用いてトルコギキョウを抑制栽培する際に利用され、具体的には、外張り被覆材の上に展張されたり、あるいは、外張り被覆材内部にある内張りカーテン装置またはパイプに設置して利用される。
【0021】
本発明のネット状資材はトルコギキョウが十分に生育する程度の光線透過率を有する必要があり、具体的には、30%以上の光線透過率を有することが好ましく、40~90%の光線透過率を有することが特に好ましい。
尚、光線透過率は、公知の方法によって測定すればよく、例えば、PPFセンサー(Li-Cor, Inc.製LI-190)を用いて、快晴日の昼14:00~16:30に測定を行うことにより確認できる。
【0022】
本発明は、波長600~700nmの赤色光を選択的に透過する赤色光選択性を有する点に重要な特徴を有する。「赤色光を選択的に透過する」とは、具体的には、光合成に利用される波長である400~700nmの波長の光量子束透過量を100μmolm-2s-1としたときの、赤色光(600~700nm)の光量子束透過量が30μmolm-2s-1以上、好ましくは35~90μmolm-2s-1、より好ましくは45~65μmolm-2s-1であることを意味する。赤色光が弱すぎると、品種によっては本発明の効果が十分に発揮されない虞がある。一方、赤色光が強すぎる場合は、必然的に他の波長の光が少なくなり、光合成や代謝がうまく行われず、その結果、赤色光照射による効果よりも、他の波長の光が弱いことによる悪影響の方がトルコギキョウに強く表れる虞がある。
【0023】
各波長の光量子束透過量は、公知の方法に従って測定することができる。例えば、ネット状資材の下に波長別光エネルギー分析装置(MS-720、英弘精機(株))を設置し、快晴日の14:00~16:30に透過光を測定することにより確認できる。
【0024】
本発明に赤色光選択性を付与するには、上記熱可塑性樹脂とともに公知の赤色着色剤を使用してネット状資材を製造すればよい。公知の赤色着色剤としては、例えば、モノアゾ系、ジスアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などの顔料が挙げられる。更に、本発明の効果を損なわない限りにおいては、赤色以外の色の顔料を併用しても構わない。
【0025】
本発明のネット状資材の目付量は、光線透過率および赤色光の光量子束透過量が前記範囲を満たすように決定されるが、一般的には20~90g/m2であり、好適には40~80g/m2である。
【0026】
<製造方法>
本発明のネット状資材は、公知の方法に従って製造される。例えば、本発明のネット状資材が平織やカラミ織等の織物からなる場合は、上述の熱可塑性樹脂および赤色着色剤を含む所望の組成のフィルムを準備し、かかるフィルムを長さ方向に適宜の幅で裁断又は溶断してフラットヤーンとし、このフラットヤーンを用いて製織すればよい。あるいは、かかるフラットヤーンを緯糸にし、強度の強いモノフィラメント等を経糸にして製織すればよい。モノフィラメントは、上述の熱可塑性樹脂に必要に応じて適宜赤色着色剤を配合して形成すればよい。
【0027】
モノフィラメント23の太さは、強度と可撓性のバランスの観点から、300~600デニールが好ましい。モノフィラメントは、1~6本が一組25となっていることが好ましく、各組25,25の間は0.5~5.0cmの距離であることが好ましい。日射量と赤色光選択性のバランスの観点から、フラットヤーン21の幅は2.2~5mmとし、厚みは22~56μmとすることが好ましい。
【0028】
また、本発明のネット状資材が割繊維ウェブからなる場合は、上述の熱可塑性樹脂および赤色着色剤を含む所定の組成のフィルムを準備し、かかるフィルムを一軸延伸しながら割繊(スプリット)し、その後、高温熱処理により寸法固定化を行えばよい。この場合、幹繊維13の太さを0.7~0.9mmとし、枝繊維15の太さを0.1~0.3mmとすることが好ましい。更に、必要に応じて、得られた割繊維ウェブを複数枚、公知の方法に従って積層してもよい(
図3参照)。
【0029】
さらにまた、本発明のネット状資材がラッセル編等の編物からなる場合は、織物の場合と同様にしてテープヤーンを作製し、ラッセル編機などを用いて、
図1に示すように、モノフィラメントを鎖編み等により編み上げた鎖状フィラメント3の列の間に、かかるテープヤーン5を緯糸として挿入すればよい。モノフィラメントは、上述の熱可塑性樹脂に必要に応じて適宜赤色着色剤を配合して形成すればよい。
【0030】
鎖状フィラメント3の太さは300~600デニールとし、テープヤーン5の幅は2.2~5mmとし、テープヤーン5の厚みは22~56μmとすることが好ましい。鎖状フィラメント3が細すぎると、ネット状資材の強度が弱くなる虞がある。鎖状フィラメント3が太すぎると、ネット状資材が過度に重くなったり、ネット状資材の可撓性が失われる虞がある。テープヤーン5が太すぎるか、或いは厚すぎると、光合成に必要な日射量が確保できない虞がある。テープヤーン5が細すぎるか、或いは薄すぎると、赤色光選択性を十分に発揮できない虞がある。
【0031】
上記のうち、栽培状況等に合わせネット状資材の仕様を容易に変更出来るという観点から、本発明のネット状資材は、織物または編物から成ることが好ましい。
【0032】
更に、本発明のネット状資材は、フィラメントが丸く、べたつきが抑制されるという観点から、ラッセル編またはカラミ織により形成されることがより好ましい。ビニールハウスの形状等に沿って展張しやすいという観点からは、ラッセル編みにより形成されることが特に好ましい。ラッセル編みは、織物と比較して柔軟性が高く、しなやかだからである。あるいは、強度や寸法安定性を重視する場合には、カラミ織により形成されることが特に好ましい。カラミ織は、ある程度の力を掛けても裂けず、また、組織が変形し難いからである。
【0033】
また、本発明のネット状資材の強度を特に高めたい場合には、割繊維ウェブや割繊維ウェブ積層体により形成することが好ましい。割繊維ウェブは、釘のような鋭利なものや展張時の固定具が引っかかる等して孔が形成されても、かかる孔を起点にしての伝播が起こりにくく、伝線切れ防止性に優れているからである。更に、割繊維ウェブは、経糸と緯糸とから構成される編物や織物に比べて軽量であり、また、柔軟性の点でも優れている。
【0034】
本発明のネット状資材をいずれの方法により製造する場合においても、赤色着色剤の添加量は、最終的に得られるネット状資材において赤色光(600~700nm)の光量子束透過量が、光合成に利用される波長である400~700nmの波長の光量子束透過量を100μmolm-2s-1としたときに、30μmolm-2s-1以上、好ましくは35~90μmolm-2s-1、より好ましくは45~65μmolm-2s-1の範囲となるように決定される。一般に、ネット状資材を構成する樹脂組成物100質量部あたり0.9~25質量部が配合される。
【0035】
更に、本発明のネット状資材を製造するにあたっては、必要に応じて公知の添加剤を使用してもよい。公知の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、抗菌剤、防黴剤、帯電防止剤、無機充填剤、繊維強化材などを挙げることができる。
【0036】
<栽培方法>
上記のようにして製造された本発明のネット状資材は、必要な大きさに裁断・縫製されてトルコギキョウ栽培に利用される。具体的には、本発明のネット状資材は、トルコギキョウを外界から遮断して保護・育成する外張り被覆材の上に展張され、あるいは、内張りカーテン装置やパイプ等を用いて外張り被覆材の内側で展張され、かかる外張り被覆材内でトルコギキョウが栽培される。外張り被覆材としては、例えば、ビニール・POハウス、雨除け施設、トンネル、促成フレーム、育苗用フレームが挙げられる。
【0037】
本発明のネット状資材は、必要に応じて適宜の時期に展張すればよいが、本発明の効果が最大限に発揮されるという観点から、定植後から1~3ケ月展張することが好ましく、定植後から1~3ケ月展張し、それ以外の期間は使用しないことがより好ましい。本発明のネット状資材の使用をやめた後は、栽培時期や品種等によっては、公知の遮光ネットを展張してもよい。
【0038】
本発明は、トルコギキョウであればあらゆる品種に適用することができ、具体的には、ロベラピンク、ロベラグリーン、ロジーナピンクピコティ、ボレロマリン、サルサマリン、ボヤージュピンク、レイナホワイト、ピッコローサスノー、セレブピンク、ボレロホワイト、コレゾライトピンク、ミンク、雪てまり、マリアホワイト、エンゲージイエロー、マイテレディ、ポーラスホワイト等を挙げることができる。
【実施例】
【0039】
本発明を以下の実験例により更に説明するが、本発明は、これらの実験例によってなんら限定されるものではない。
【0040】
(実験例1)
ネット状資材として、赤色のポリエチレン製ラッセル編ネット(以下、赤色ネットと呼ぶことがある。)を用意した。かかるネット状資材は、
図1に示されている構造を有しており、赤色のテープヤーンと黒色モノフィラメントにより形成されていた。
【0041】
この赤色ネットを千葉大学松戸キャンパス内に設置し、PPFセンサー(Li-Cor, Inc.製LI-190)を用いて、2013年6月4日快晴日の14:00~16:30に赤色ネットの光線透過率を測定した。光線透過率は42.8%であった。
【0042】
波長別光エネルギー分析装置(MS-720、英弘精機(株))を用いて、2013年6月快晴日の14:00~16:30に赤色ネット透過光を測定した(
図5R50参照)。400~700nmの波長の光量子束透過量を100μmolm
-2s
-1としたときの赤色光(600~700nm)の光量子束透過量は48.6μmolm
-2s
-1であった。
【0043】
2014年4月28日に、ロベラピンクという品種のトルコギキョウを播種し、播種後35日間冷蔵(10℃、全暗)し、その後育苗した。福島県農業総合センター浜地域研究所内のパイプハウスの外側から上記ネット状資材を展張した。過度の温度上昇を回避するために、パイプハウスの側面は開放した。2014年7月16日に、このパイプハウス内において、12cm×12cmの栽植密度で、幅70cmの畝に4条並木植えで定植を行い(n=24)、その後、栽培をした。栽培期間中のハウス内の平均気温は26.5℃、最低気温は17.4℃、最高気温は44.4℃であった。2014年8月31日に、ネット状資材をパイプハウスから外した。
【0044】
(実験例2)
ネット状資材として、銀色のフラットヤーンにより形成された銀色のポリエチレン製平織ネット(以下、銀色ネットと呼ぶことがある。)を用いた点以外は、実験例1と同様にしてトルコギキョウを栽培した。尚、実験例2で用いられた銀色ネットの透過光の波長特性は、太陽光の波長特性とよく似ていた(
図5D50参照)。赤色ネットの場合と同様にして測定した光線透過率は47.7%であり、400~700nmの波長の光量子束透過量を100μmolm
-2s
-1としたときの赤色光(600~700nm)の光量子束透過量は31.6μmolm
-2s
-1であった。栽培期間中のハウス内の平均気温は26.1℃、最低気温は17.4℃、最高気温は42.3℃であった。
【0045】
(実験例3、4)
実験例3、4では、栽培品種をロベラグリーンにした点以外は、それぞれ実験例1、2と同様にしてトルコギキョウを栽培した。
【0046】
(切り花長、切り花重、節数)
3輪開花状態になったときに、茎の根本からトルコギキョウを切り取って切り花とし、その重さを測定した(切り花重)。茎の根本から地上部上端、即ち、根本から最も遠い位置にある花の先端までの長さを測定し、切り花長とした。切り花の茎に存在する節数を数えた。
【0047】
(茎径)
主茎における上から3節目の節間の直径を測定し、茎径とした。
【0048】
(総花蕾数、有効蕾数)
切り花1本あたりに存在する花および蕾を数え、その合計を総蕾数とした。また、未開花で長さが2cm以上の蕾の数を有効蕾数とした。
【0049】
実験例1~4で得られたトルコギキョウの切り花長、切り花重、節数、茎径、総花蕾数および有効蕾数の平均値を以下の表1に示した。
【表1】
【0050】
切り花長に関しては、各実験例で得られた全ての切り花において以下の規格が占める割合を算出し、
図6に示した。
L:切り花長70cm以上、M:切り花長60cm以上70c未満、
S:切り花長50cm以上60cm未満、規格外:切り花長50cm未満
【0051】
(採花時期に及ぼす影響)
各実験例における採花時期を以下の表2に示した。初期は、全収穫本数の10%が収穫された日を表す。盛期は、全収穫本数の50%が収穫された日を表す。終期は、収穫本数が全収穫本数の90%を超えた日を表す。表2の結果から、本発明のネット状資材を使用した場合、一般的な遮光ネットを使用する場合とほぼ同時期に採花を行うことができることがわかった。
【表2】
【符号の説明】
【0052】
1 ラッセル編、3 鎖状フィラメント、5 テープヤーン、
10 割繊維ウェブ、13 幹繊維、15 枝繊維、
20 カラミ織、21 フラットヤーン、23 モノフィラメント