(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】β-プロピオラクトン処理による低レベルの残存細胞DNAを含む細胞由来のウイルスワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/145 20060101AFI20220331BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220331BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20220331BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A61K39/145
A61K39/00 D
A61K39/39
A61P31/16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016145286
(22)【出願日】2016-07-25
(62)【分割の表示】P 2014149517の分割
【原出願日】2006-11-01
【審査請求日】2016-07-25
【審判番号】
【審判請求日】2019-05-07
(32)【優先日】2005-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェンス-ペーター グレゲルセン
(72)【発明者】
【氏名】ホルゲル コスト
【合議体】
【審判長】森井 隆信
【審判官】大久保 元浩
【審判官】岡崎 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-21253(JP,A)
【文献】国際公開第2004/112831(WO,A2)
【文献】特表2005-523698(JP,A)
【文献】特開昭50-100224(JP,A)
【文献】特開平3-108480(JP,A)
【文献】特開2005-170945(JP,A)
【文献】特開2000-230931(JP,A)
【文献】国際公開第2005/055957(WO,A2)
【文献】VACCINE,(1993)11 P.82-90
【文献】VIRAL IMMUNOL.,(2002)15(1) P.165-176
【文献】PROC.NATL.ACAD.SCI.USA,(1983)80 P.6105-6109
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
CAPlus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物、鳥類または昆虫の細胞培養物において発現された組換えHAタンパク質である細胞培養プロダクトを調製する方法であって、該方法は、
(i)β-プロピオラクトン(BPL)で残存機能性細胞培養物DNAを分解する工程と;
(ii)
該組換えHAタンパク質を可溶化するために、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)で処理する工程と;
(iii)該組換え
HAタンパク質を単離する工程と
を包含する、方法。
【請求項2】
工程(i)の前記β-プロピオラクトン(BPL)が、0.1%未満のβ-プロピオラクトン(BPL)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞培養物が、MDCK細胞、Vero細胞、PER.C6細胞、および、昆虫細胞からなる群より選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
インフルエンザウイルスから誘導された免疫原性HAタンパク質を含むワクチン、または、組換えHAタンパク質を含む製剤であって、該ワクチンまたは製剤は、(a)10ng/0.5mL未満の残存機能性細胞培養物DNAを含み、該残存細胞培養物DNAの長さの平均が200塩基対未満であり、かつ、(b)オボアルブミンもオボムコイドも含まない、ワクチンまたは製剤。
【請求項5】
あらゆる残存細胞培養物DNAのサイズが、キャピラリーゲル電気泳動によって測定される、請求項
4に記載のワクチンまたは製剤。
【請求項6】
水中油型エマルジョンアジュバントをさらに含む、請求項
4~
5のいずれか一項に記載のワクチンまたは製剤。
【請求項7】
前記水中油型エマルジョンアジュバントが、サブミクロン直径の油滴を有する、請求項
6に記載のワクチンまたは製剤。
【請求項8】
前記水中油型エマルジョンアジュバントが、スクアレンおよびポリソルベート80を含む、請求項
6または
7に記載のワクチンまたは製剤。
【請求項9】
前記水中油型エマルジョンアジュバントが、スクアレン、トコフェロールおよびポリソルベート80を含む、請求項
6~
8のいずれか一項に記載のワクチンまたは製剤。
【請求項10】
前記ワクチンが、分割されたビリオンまたは精製された表面抗原を含む、請求項
4~
9のいずれか一項に記載のワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に引用される全ての文献およびオンライン情報は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、減少された不純物を伴う、改善された細胞培養プロダクトおよびプロセスを提供する。具体的には、本発明は、細胞培養で作製されたプロダクトと関連する残存しているいかなる残存機能性細胞培養物DNAをも分解する改善された方法を提供する。本発明によれば、残存機能性細胞培養物DNAは、DNAアルキル化剤、例えばβ-プロピオラクトン(BPL)での処理によって分解される。このプロセスは、ワクチンおよび組換えタンパク質を含む一連の細胞培養プロダクトを処理するために使用され得る。
【背景技術】
【0003】
ウイルスワクチンの商業的生産は、典型的に、抗原供給源として大量のウイルスを必要とする。ワクチン生産のための商業的量のウイルスは、細胞培養系における種ウイルスの培養および複製によって達成され得る。ウイルス複製に好適な細胞培養系としては、哺乳動物、鳥類または昆虫細胞が挙げられるが、哺乳動物細胞培養系が、ウイルスの抗原タンパク質の適切なグリコシル化および折り畳みを確実にするために、ウイルスワクチンについて特に好ましい。同様の理由のために、哺乳動物細胞培養系はまた、組換えタンパク質発現について好ましい。
【0004】
それらの天然状態から未修飾である場合、細胞培養物は、制限された複製能力を有し、そしてその後、商業的ワクチンまたは組換えタンパク質に必要な量の材料を生産することについて実用的ではなくかつ不十分となる。したがって、製造目的のために、それらが分割し得る回数を増加するために、細胞を「持続的」または「不死化」細胞株となるように修飾することが好ましい。これらの修飾の多くは、発癌性細胞に関係するものと類似する機構を使用する。したがって、細胞培養プロセス由来のいかなる残存材料(例えば、宿主細胞DNA)をも、これらのシステムにおいて製造されたワクチンまたは組換えタンパク質プロダクトの最終製剤から除去されるという関心事が存在する。
【0005】
残存宿主細胞DNAを除去する標準的な方法は、DNアーゼ処理による。このタイプの簡便な方法は、特許文献1および特許文献2に開示されており、最初にDNアーゼ(例えば、ベンゾナーゼ(Benzonase))そして次いでカチオン性洗剤(例えば、CTAB)を使用する、2工程処理を含む。
この危険性を低下させるための現在の努力は、残存宿主細胞DNAの総濃度を低下させることに注目してきた。本発明の目的は、いかなる残存宿主細胞DNAの機能性をも排除することによって、さらに危険性を低下させることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許第0870508号明細書
【文献】米国特許第5948410号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、減少された不純物を伴う、改善された細胞培養プロダクトおよびプロセスを提供する。具体的には、本発明は、細胞培養で作製されたプロダクトと関連する残存しているいかなる残存機能性細胞培養物DNAをも分解する改善された方法を提供する。本発明によれば、残存機能性細胞培養物DNAは、DNAアルキル化剤、例えばβ-プロピオラクトン(BPL)での処理によって分解される。このプロセスは、ワクチンおよび組換えタンパク質を含む一連の細胞培養プロダクトを処理するために使用され得る。
【0008】
本発明は、細胞培養物において増殖されたウイルスから誘導された免疫原性タンパク質を含むワクチンであって、該ワクチンが残存機能性細胞培養物DNAを実質的に含まないワクチンを含む。さらに、本発明は、細胞培養物中において発現された組換えタンパク質であって、最終組換えタンパク質製剤が残存機能性細胞培養物DNAを実質的に含まない組換えタンパク質に関する。
【0009】
いかなる残存宿主細胞DNAの機能性をも、DNAを十分に小さな部分へ切断するアルキル化剤でのDNAの処理によって排除され得、その結果、機能性タンパク質をコードすること、ヒトレシピエントの染色体中へ導入されること、またはそうでなければレシピエントDNA複製機構によって認識されることが不可能となる。好ましくは、分解された残存細胞培養物DNAの長さは、500塩基対未満である。より好ましくは、分解された残存細胞培養物DNAの長さは、200塩基対未満である。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
細胞培養物において増殖されたウイルスから誘導された免疫原性タンパク質を含むワクチンであって、該ワクチンが残存機能性細胞培養物DNAを実質的に含まない、ワクチン。
(項目2)
あらゆる残存細胞培養物DNAがアルキル化剤での処理によって分解される、項目1に記載のワクチン。
(項目3)
前記アルキル化剤がβ-プロピオラクトン(BPL)である、項目2に記載のワクチン。
(項目4)
前記分解された残存細胞培養物DNAの長さが500塩基対未満である、項目1に記載のワクチン。
(項目5)
前記分解された残存細胞培養物DNAの長さが200塩基対未満である、項目1に記載のワクチン。
(項目6)
前記残存細胞培養物DNAが0.1%未満のβ-プロピオラクトン(BPL)での処理によって分解される、項目3に記載のワクチン。
(項目7)
前記ワクチンが低下したレベルの凝集を示す、項目1に記載のワクチン。
(項目8)
細胞培養物において増殖されたウイルスから誘導された免疫原性タンパク質を含むワクチンであって、残存細胞培養物DNAの長さが500塩基対未満である、ワクチン。
(項目9)
前記残存細胞培養物DNAがアルキル化剤での処理によって分解される、項目8に記載のワクチン。
(項目10)
前記アルキル化剤がβ-プロピオラクトン(BPL)である、項目9に記載のワクチン。
(項目11)
前記残存細胞培養物DNAの長さが300塩基対未満である、項目8に記載のワクチン。
(項目12)
前記残存細胞培養物DNAの長さが200塩基対未満である、項目8に記載のワクチン。
(項目13)
前記残存細胞培養物DNAが0.1%未満のβ-プロピオラクトン(BPL)での処理によって分解される、項目8に記載のワクチン。
(項目14)
前記ワクチンが低下したレベルの凝集を示す、項目8に記載のワクチン。
(項目15)
組み合わされた0.01%未満の遊離プロピオン酸およびβ-プロピオラクトン(BPL)を含有する、項目10に記載のワクチン。
(項目16)
細胞培養物において増殖されたウイルスから誘導された免疫原性タンパク質を含むワクチンを調製する方法であって、以下:
(i)残存機能性細胞培養物DNAを分解する工程;および
(ii)該免疫原性タンパク質を単離する工程
を包含する、方法。
(項目17)
前記残存機能性細胞培養物DNAを分解する工程が、アルキル化剤での機能性細胞培養物DNAの処理を含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記アルキル化剤がβ-プロピオラクトン(BPL)である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記細胞培養物DNAが0.1%未満のβ-プロピオラクトン(BPL)での処理によって分解される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記ワクチンが低下したレベルの凝集を示す、項目16に記載の方法。
(項目21)
工程(ii)が、ビリオンからDNAを分離することを含む、項目16~20のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
前記ウイルスがインフルエンザウイルスである、項目1または8に記載のワクチン。
(項目23)
前記細胞培養物が、MDCK細胞、Vero細胞、およびPER.C.6細胞からなる群より選択される、項目1または8に記載のワクチン。
(項目24)
細胞培養物中において発現された組換えタンパク質を含む製剤であって、該製剤が残存機能性細胞培養物DNAを実質的に含まない、製剤。
(項目25)
あらゆる残存細胞培養物DNAがアルキル化剤での処理によって分解されている、項目24に記載の製剤。
(項目26)
前記アルキル化剤がβ-プロピオラクトン(BPL)である、項目25に記載の製剤。
(項目27)
前記分解された残存細胞培養物DNAの長さが500塩基対未満である、項目24に記載の製剤。
(項目28)
前記分解された残存細胞培養物DNAの長さが200塩基対未満である、項目24に記載の製剤。
(項目29)
前記残存細胞培養物DNAが0.1%未満のβ-プロピオラクトン(BPL)での処理によって分解される、項目26に記載の製剤。
(項目30)
前記製剤が低下したレベルの凝集を示す、項目24に記載の製剤。
(項目31)
細胞培養物中において発現された組換えタンパク質を含む製剤であって、残存機能性細胞培養物DNAの長さが500塩基対未満である、製剤。
(項目32)
前記細胞培養物が、MDCK細胞、Vero細胞、およびPER.C6細胞からなる群より選択される、項目24または31に記載の製剤。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、MDCKゲノム中の6個の名前が付けられた標的のPCR増幅の結果を示す。あるサンプルを、PCR前に、1:10000まで、記載されるように希釈した。
【
図2】
図2は、MDCKゲノム中の6個の名前が付けられた標的のPCR増幅の結果を示す。あるサンプルを、PCR前に、1:10000まで、記載されるように希釈した。
【
図3】
図3は、MDCKゲノム中のSINE配列のPCR増幅の結果を示す。
図1および2におけるように、DNAを、時折、PCR前に希釈した。下のパネルにおいて、図は、PCRにおけるDNAの出発量である(fg)。
【
図4】
図4は、MDCK DNAのサイズに対するBPL処理の効果を示す。ゲノムDNAを、異なる温度で、そして異なる長さの時間の間、BPLと共にインキュベートした。
【
図5】
図5は類似の結果を示す。アガロースゲルをSYBRGoldで染色した。
【
図6】
図6は、記載のサイズを有するマーカー(下の線)に対する残存DNA(上の線)のキャピラリー電気泳動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本発明は、減少された不純物を伴う、改善された細胞培養プロダクトおよびプロセスを提供する。具体的には、本発明は、細胞培養で作製されたプロダクトと関連する残存しているいかなる残存機能性細胞培養物DNAをも分解する改善された方法を提供する。本発明によれば、残存機能性細胞培養物DNAは、DNAアルキル化剤、例えばβ-プロピオラクトン(BPL)での処理によって分解される。このプロセスは、ワクチンおよび組換えタンパク質を含む一連の細胞培養プロダクトを処理するために使用され得る。
本発明は、細胞培養物において増殖されたウイルスから誘導された免疫原性タンパク質を含むワクチンであって、該ワクチンが残存機能性細胞培養物DNAを実質的に含まないワクチンを含む。さらに、本発明は、細胞培養物中において発現された組換えタンパク質であって、最終組換えタンパク質製剤が残存機能性細胞培養物DNAを実質的に含まない組換えタンパク質に関する。
【0012】
いかなる残存宿主細胞DNAの機能性をも、DNAを十分に小さな部分へ切断するアルキル化剤でのDNAの処理によって排除され得、その結果、機能性タンパク質をコードすること、ヒトレシピエントの染色体中へ導入されること、またはそうでなければレシピエントDNA複製機構によって認識されることが不可能となる。分解された(非機能性)残存細胞培養物DNAの長さは、好ましくは、1000塩基対未満である(例えば、1000、800、700、600、500、400、300、200、150、100、75、または50塩基対未満)。好ましくは、分解された残存細胞培養物DNAの長さは、500塩基対未満である。より好ましくは、分解された残存細胞培養物DNAの長さは、200塩基対未満である。
【0013】
本明細書中において使用される場合、「機能性DNA」または「機能性RNA」への言及は、機能性タンパク質へ翻訳され得るかまたは哺乳動物染色体中へ導入され得るヌクレオチド配列を示す。一般的に、機能性タンパク質へ翻訳され得るヌクレオチド配列は、プロモーター領域、開始コドン、停止コドン、および機能性タンパク質についての内部コード配列を必要とする。アルキル化剤の添加により、DNA損傷が生じる場合、これらの領域の多くが変更または破壊され、その結果、翻訳は、より長く前進し得る(can longer proceed)か、または意図されるタンパク質のオリゴペプチドサブユニットを形成するように前進するのみである。
【0014】
「分解された残存機能性細胞培養物DNA」は、機能性タンパク質へ翻訳され得ないかまたは哺乳動物染色体中へ導入され得ない機能性DNAを指す。好ましくは、「分解された残存機能性DNA」は、1000塩基対未満、より好ましくは500塩基対未満、なおより好ましくは250塩基対未満、そして最も好ましくは100塩基対未満の長さを有する。分解された残存機能性DNAの長さは、ゲル電気泳動を含む、標準的な技術によって測定され得る。
【0015】
本発明は、残存機能性細胞培養物DNAを実質的に含まない、ワクチン組成物および組換えタンパク質製剤を提供する。本明細書中において使用される場合、残存機能性細胞培養物DNAを実質的に含まないは、200塩基対未満の残存DNAフラグメントが0.5ml当たり10ng未満で検出可能である組成物または製剤を指す。いかなる残存細胞培養物DNAのサイズもが、キャピラリーゲル電気泳動および核酸増幅技術を含む、標準的な技術によって測定され得る。
【0016】
本発明におけるBPL等のアルキル化剤の使用は、凝集および汚染物質を減少させるというさらなる利点を提供する。減少された凝集物を含むワクチン製剤もまた、改善された免疫原性を有し得る。ワクチンの免疫原性は、特定のウイルスエピトープについての抗体の特異性に依拠する。タンパク質の表面が、望まれない分子によって結合されるかまたはマスクされるか、あるいは大きな高分子中における凝集によって隠される場合、前記エピトープは、あまり認識可能ではなくなり得、そしてしたがってワクチン中においてあまり有効ではなくなり得る。さらに、減少された凝集物を含むワクチン製剤は、さらなるプロセッシング利点を有し得る。精製プロセスは、予期されるタンパク質、例えば、インフルエンザワクチン中の血球凝集素およびノイラミニダーゼの単離に依拠する。タンパク質が凝集物または架橋の存在によって構造的に修飾される場合、それは、認識され得ず、そしてその後、カラムクロマトグラフィー、濾過、または遠心分離によって除去され得る。
【0017】
アルキル化剤
本発明における使用のためのアルキル化剤としては、アルキル基を化合物中に導入する物質が挙げられる。好ましくは、アルキル化剤は、モノアルキル化剤、例えばBPLである。BPLは、多くのワクチンの調製においてウイルス不活性化のために広く使用されるモノアルキル化剤である。BPLは、核酸を含む種々の生物学的分子と反応し、ここで、それは、アルキル化および脱プリン反応によって構造的修飾を引き起こす。BPLは、一般的に、下記の構造によって表される:
【0018】
【化1】
インビトロにおいて、BPLは、一般的に、求核置換反応に有利な条件下で(例えば、高熱、高BPL濃度、および非プロトン性極性溶媒において)、高濃度で存在する求核試薬と反応し、官能化プロピオン酸、例えば、7-(2-カルボキシエチル)グアニンまたは1-(2-カルボキシエチル)デオキシアデノシンが形成される(スキーム1)。Boutwellら,Annals New York Academy of Sciences,751-764;Perrinら,Biologicals,23(1995)207-211;Chenら,Carcinogenesis,2(2)(1981)73-80。
【0019】
スキーム1(Chenらより):
【0020】
【化2】
DNA塩基のこのような結合またはアルキル化は、塩基対置換、特に脱プリン反応、欠失、およびヌクレオシドの架橋を含む、多数の機構によって突然変異原性(mutagenicity)を誘発する。BPLの高度の突然変異原性および反応性は、迅速なウイルスの死滅、および非発癌性副生成物への引き続いてのDNA分解に対応する。
【0021】
いかなる残存機能性細胞培養物DNAをも、1%未満のBPL(例えば、1%、0.75%、0.5%、0.25%、0.2%、0.1%、0.075%、0.05%、0.025%、0.01%、または0.005%未満)での処理によって分解される。好ましくは、残存機能性細胞培養物DNAは、0.1%~0.01%BPLでの処理によって分解される。
【0022】
アルキル化剤は、好ましくは、緩衝化溶液へ添加され、そして該溶液のpHは、好ましくは5~10に維持される。より好ましくは、前記溶液のpHは6~9に維持される。なおより好ましくは、前記溶液のpHは7~8に維持される。
【0023】
ある方法において、アルキル化剤は、2回以上添加される。例えば、1回目のBPL処理が行われ得、そして次いで2回目のBPL処理が行われ得る。1回目および2回目の処理の間に、アルキル化剤除去工程が存在し得るが、1回目の処理から残存するアルキル化剤を除去することなく、2回目の処理について、アルキル化剤が添加されてもよい。
【0024】
好ましくは、アルキル化剤はまた、ワクチン中において使用されるウイルスについての不活性化剤として使用される。本発明のアルキル化剤は、タンパク質を他の材料(宿主細胞DNAを含む)へ架橋し得るホルムアルデヒド等の伝統的な不活性化剤と比べて好ましい。このような架橋は、凝集物(例えば、タンパク質-タンパク質集合体、ヌクレオチドコンビネーション、およびタンパク質-ヌクレオチドコンビネーション)の形成へ導き得る。アルキル化剤(例えば、BPL)はウイルス不活性化についてこのような架橋機構に依拠しないので、ウイルス不活性化についてのこのようなアルキル化剤の使用は、ワクチン製品中における凝集物および他の不純物の形成を最小化する。このような凝集物は、他のタンパク質へイオン結合または共有結合されたタンパク質、他のヌクレオチドへイオン結合または共有結合されたタンパク質、および/または他のヌクレオチドへイオン結合または共有結合されたヌクレオチドを含み得る。
【0025】
本明細書中において使用される場合、「凝集」または「凝集物」への参照は、一緒に結合されてより大きな群または粒子を作製する個々の単位または粒子の塊または集まりを示す。凝集は、可能性のある凝集段階の前および後に、または凝集物破壊法(aggregate-disrupting method)(例えば、洗剤処理による)の適用の前および後に、ゲル電気泳動(例えば、ラエムリシステム(Laemmli’s system))、クロマトグラフィー、溶液濁度、もしくは沈殿研究および当該分野において周知の他の方法によって、所望の成分の定量測定により、一般的に測定され得る。
【0026】
アルキル化剤、特にBPLでの処理は、種々の温度を有する相を含み得る。例えば、低温(例えば、2~8℃の間、例えば約4℃)での第1相、およびより高い温度、典型的に第1相よりも少なくとも10℃より高い温度(例えば、25~50℃、例えば約37℃)での第2相が存在し得る。この2相プロセスは、アルキル化剤が不活性化およびDNA分解の両方のために使用される場合、特に有用である。典型的なスキームにおいて、ウイルス不活性化は、低温相の間に生じ、そしてDNA分解は、高温相の間に生じる。下記により詳細に記載されるように、上昇された温度はまた、感熱性アルキル化剤の除去を促進し得る。
【0027】
免疫原性タンパク質
本発明における使用に好適な免疫原性タンパク質は、ワクチンの標的である任意のウイルスから誘導され得る。免疫原性タンパク質は、不活性化(または死滅)ウイルス、弱毒化ウイルス、分割された(split)ウイルス製剤、精製されたサブユニット製剤、ウイルスから単離、精製または誘導されるウイルスタンパク質、およびウイルス様粒子(VLP)として製剤化され得る。
【0028】
本発明の免疫原性タンパク質は、そのライフサイクルの少なくとも1段階の間にウイルスの表面上に露出されるエピトープを好ましくは含むウイルス抗原である。ウイルス抗原は、好ましくは、複数の血清型または分離株にわたって保存される。ウイルス抗原としては、下記に記載の1以上のウイルスから誘導される抗原ならびに下記に同定される特定の抗原例が挙げられる。ウイルスは、非エンベロープ型であり得、または好ましくはエンベロープ型であり得る。ウイルスは、好ましくはRNAウイルスであり、そしてより好ましくはssRNAウイルスである。それらは、センス、または、好ましくはアンチセンスゲノムを有し得る。それらのゲノムは、非セグメント化であり得、または、好ましくはセグメント化であり得る。
【0029】
オルトミクソウイルス:ウイルス抗原は、インフルエンザA、BおよびC等の、オルトミクソウイルスから誘導され得る。オルトミクソウイルス抗原は、血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、核タンパク質(NP)、基質タンパク質(M1)、膜タンパク質(M2)、1以上の転写酵素成分(PBl、PB2およびPA)を含む、1以上のウイルスタンパク質より選択され得る。好ましい抗原としては、HAおよびNAが挙げられる。
【0030】
インフルエンザ抗原は、インターパンデミック(アヌアル)インフルエンザ株(interpandemic (annual) flu strains)から誘導され得る。あるいは、インフルエンザ抗原は、パンデミック パンデミック発生を引き起こす可能性を有する株から誘導され得る(即ち、現在広がっている株中の血球凝集素と比較して新しい血球凝集素を有するインフルエンザ株、またはトリ被験体において病原性でありかつヒトの集団において水平に感染する可能性を有するインフルエンザ株、またはヒトに対して病原性であるインフルエンザ株)。特定の季節およびワクチン中に含まれる抗原の性質に依存して、インフルエンザ抗原は、下記の1以上の血球凝集素サブタイプから誘導され得る:H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15またはH16。
【0031】
本発明のインフルエンザ抗原は、トリインフルエンザ株、特に、高病原性トリインフルエンザ株(HPAI)から誘導され得る。Alexander,Avian Dis(2003)47(3 Suppl):976-81)。
【0032】
インフルエンザウイルス抗原のさらなる詳細を、以下に与える。
【0033】
パラミクソウイルス科ウイルス:ウイルス抗原は、パラミクソウイルス科ウイルス、例えば、肺炎ウイルス属(RSV)、パラミクソウイルス属(PIV)および麻疹ウイルス属(麻疹)から誘導され得る。
【0034】
肺炎ウイルス属:ウイルス抗原は、肺炎ウイルス属、例えば、呼吸器性シンシチウムウイルス(RSV)、ウシ呼吸器性シンシチウムウイルス、マウス肺炎ウイルス、およびシチメンチョウ鼻気管炎ウイルスから誘導され得る。好ましくは、肺炎ウイルス属はRSVである。肺炎ウイルス属抗原は、下記を含む、1以上の下記のタンパク質から選択され得る:表面タンパク質融合(Fusion)(F)、糖タンパク質(G)および小疎水性タンパク質(Small Hydrophobic protein)(SH)、基質タンパク質MおよびM2、ヌクレオカプシドタンパク質N、PおよびL、ならびに非構造タンパク質NS1およびNS2。好ましい肺炎ウイルス属抗原としては、F、GおよびMが挙げられる。例えば、J Gen Virol.2004 Nov;85(Pt 11):3229)を参照のこと。肺炎ウイルス属抗原はまた、キメラウイルスにおいて製剤化され得るかまたはキメラウイルスから誘導され得る。例えば、キメラRSV/PIVウイルスは、RSVおよびPIVの両方の成分を含み得る。
【0035】
パラミクソウイルス属:ウイルス抗原は、パラミクソウイルス、例えば、パラインフルエンザウイルス1~4型(PIV)、ムンプス、センダイウイルス、シミアンウイルス5、ウシパラインフルエンザウイルスおよびニューカッスル病ウイルスから誘導され得る。好ましくは、パラミクソウイルスはPIVまたはムンプスである。パラミクソウイルス抗原は、1以上の下記のタンパク質から選択され得る:血球凝集素-ノイラミニダーゼ(HN)、融合タンパク質F1およびF2、核タンパク質(NP)、リンタンパク質(P)、ラージタンパク質(Large protein)(L)、および基質タンパク質(M)。好ましいパラミクソウイルスタンパク質としては、HN、F1およびF2が挙げられる。パラミクソウイルス抗原はまた、キメラウイルスにおいて製剤化され得るかまたはキメラウイルスから誘導され得る。例えば、キメラRSV/PIVウイルスは、RSVおよびPIVの両方の成分を含み得る。市販のムンプスワクチンとしては、一価形態であるかまたは麻疹および風疹ワクチンと組み合わされた、生弱毒化ムンプスウイルス(MMR)が挙げられる。
【0036】
麻疹ウイルス属:ウイルス抗原は、麻疹ウイルス属、例えば、麻疹から誘導され得る。麻疹ウイルス属抗原は、1以上の下記のタンパク質から選択され得る:血球凝集素(H)、糖タンパク質(G)、融合因子(F)ラージタンパク質(L)、核タンパク質(NP)、ポリメラーゼリンタンパク質(P)、および基質(M)。市販の麻疹ワクチンとしては、典型的にムンプスおよび風疹と組み合わされた、生弱毒化麻疹ウイルス(MMR)が挙げられる。
【0037】
ピコルナウイルス科のウイルス:ウイルス抗原は、ピコルナウイルス科のウイルス、例えば、エンテロウイルス属、ライノウイルス属、ヘパルナウイルス(Heparnavirus)、カルジオウイルスおよびアフトウイルス属から誘導され得る。エンテロウイルス属、例えば、ポリオウイルスから誘導される抗原が好ましい。
【0038】
エンテロウイルス属:ウイルス抗原は、エンテロウイルス属、例えば、ポリオウイルス1、2または3型、コクサッキーAウイルス1~22および24型、コクサッキーBウイルス1~6型、エコーウイルス(ECHO)ウイルス)1~9、11~27および29~34型、ならびにエンテロウイルス68~71から誘導され得る。好ましくは、エンテロウイルス属はポリオウイルスである。エンテロウイルス属抗原は、好ましくは、1以上の下記のカプシドタンパク質VP1、VP2、VP3およびVP4から選択される。市販のポリオワクチンとしては、不活性化ポリオワクチン(IPV)および経口ポリオウイルスワクチン(OPV)が挙げられる。
【0039】
ヘパルナウイルス(Heparnavirus):ウイルス抗原は、ヘパルナウイルス、例えば、A型肝炎ウイルス(HAV)から誘導され得る。市販のHAVワクチンとしては、不活性化HAVワクチンが挙げられる。
【0040】
トガウイルス科:ウイルス抗原は、トガウイルス科、例えば、ルビウイルス属、アルファウイルス属、またはアルテリウイルス属(Arterivirus)から誘導され得る。ルビウイルス属、例えば風疹ウイルスから誘導される抗原が好ましい。トガウイルス抗原は、E1、E2、E3、C、NSP-1、NSPO-2、NSP-3またはNSP-4から選択され得る。トガウイルス抗原は、好ましくは、E1、E2またはE3から選択される。市販の風疹ワクチンとしては、典型的にムンプスおよび麻疹ワクチンと組み合わされた、生きている低温適応された(cold-adapted)ウイルス(MMR)が挙げられる。
【0041】
フラビウイルス属:ウイルス抗原は、フラビウイルス属、例えば、ダニ媒介脳炎(TBE)、デング熱(1、2、3または4型)、黄熱、日本脳炎、西ナイル脳炎、セントルイス脳炎、ロシア春夏脳炎、ポーワッサン脳炎から誘導され得る。フラビウイルス属抗原は、PrM、M、C、E、NS-1、NS-2a、NS2b、NS3、NS4a、NS4b、およびNS5から選択され得る。フラビウイルス属抗原は、好ましくはPrM、MおよびEから選択される。市販のTBEワクチンとしては、不活性化ウイルスワクチンが挙げられる。
【0042】
ペスチウイルス属:抗原は、ペスチウイルス属、例えば、ウシウイルス性下痢(BVDV)、豚コレラ(Classical swine fever)(CSFV)またはボーダー病(Border disease)(BDV)から誘導され得る。
【0043】
ヘパドナウイルス:ウイルス抗原は、ヘパドナウイルス、例えばB型肝炎ウイルスから誘導され得る。ヘパドナウイルス抗原は、表面抗原(L、MおよびS)、コア抗原(HBc、HBe)から選択され得る。市販のHBVワクチンとしては、表面抗原Sタンパク質を含むサブユニットワクチンが挙げられる。
【0044】
C型肝炎ウイルス:ウイルス抗原は、C型肝炎ウイルス(HCV)から誘導され得る。HCV抗原は、1以上のE1、E2、E1/E2、NS345ポリプロテイン、NS 345-コアポリプロテイン、コア、および/または非構造領域由来のペプチド(Houghtonら,Hepatology(1991)14:381)から選択され得る。
【0045】
ラブドウイルス科のウイルス:ウイルス抗原は、ラブドウイルス科のウイルス、例えば、リッサウイルス属(狂犬病ウイルス)およびベシクロウイルス属(VSV)から誘導され得る。ラブドウイルス抗原は、糖タンパク質(G)、核タンパク質(N)、ラージタンパク質(L)、非構造タンパク質(NS)から選択され得る。市販の狂犬病ウイルスワクチンは、ヒト二倍体細胞または胎仔アカゲザル肺細胞において増殖された死滅ウイルスを含む。
【0046】
カリシウイルス科:ウイルス抗原は、カリシウイルス科、例えば、ノーウォークウイルス、ならびにノーウォーク様ウイルス、例えば、ハワイウイルスおよびスノーマウンテンウイルス(Snow Mountain Virus)から誘導され得る。
【0047】
コロナウイルス属:ウイルス抗原は、コロナウイルス、SARS、ヒト呼吸器コロナウイルス、鳥類伝染性気管支炎(IBV)、マウス肝炎ウイルス(MHV)、およびブタ伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)から誘導され得る。コロナウイルス抗原は、スパイク(spike)(S)、エンベロープ(E)、基質(M)、ヌクレオカプシド(N)、および血球凝集素-エステラーゼ糖タンパク質(HE)から選択され得る。好ましくは、コロナウイルス抗原は、SARSウイルスから誘導される。SARSウイルス抗原は、WO 04/92360に記載されている。
【0048】
レトロウイルス:ウイルス抗原は、レトロウイルス、例えば、オンコウイルス、レンチウイルスまたはスプマウイルスから誘導され得る。オンコウイルス抗原は、HTLV-1、HTLV-2またはHTLV-5から誘導され得る。レンチウイルス抗原は、HIV-1またはHIV-2から誘導され得る。レトロウイルス抗原は、gag、pol、env、tax、tat、rex、rev、nef、vif、vpu、およびvprから選択され得る。HIV抗原は、gag(p24gagおよびp55gag)、env(gp160およびgp41)、pol、tat、nef、rev vpu、ミニタンパク質、(好ましくは、p55gagおよびgp140v欠失型(delete))から選択され得る。HIV抗原は、1以上の下記の株から誘導され得る:HIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMN、HIV-1CM235、HIV-1US4。
【0049】
レオウイルス属:ウイルス抗原は、レオウイルス属、例えば、オルトレオウイルス、ロタウイルス、オルビウイルス、またはコルチウイルスから誘導され得る。レオウイルス属抗原は、構造タンパク質 λ1、λ2、λ3、μ1、μ2、σ1、σ2、またはσ3、あるいは非構造タンパク質 σNS、μNS、またはσ1sから選択され得る。好ましいレオウイルス属抗原は、ロタウイルスから誘導され得る。ロタウイルス抗原は、VP1、VP2、VP3、VP4(または切断産物VP5およびVP8)、NSP1、VP6、NSP3、NSP2、VP7、NSP4,またはNSP5から選択され得る。好ましいロタウイルス抗原としては、VP4(または切断産物VP5およびVP8)、およびVP7が挙げられる。
【0050】
パルボウイルス属:ウイルス抗原は、パルボウイルス属、例えば、パルボウイルスB19から誘導され得る。パルボウイルス属抗原は、VP1、VP-2、VP-3、NS-1およびNS-2から選択され得る。好ましくは、パルボウイルス属抗原は、カプシドタンパク質VP-2である。
【0051】
デルタ型肝炎ウイルス(HDV):ウイルス抗原は、HDV、特にHDVからのδ-抗原から誘導され得る(例えば、米国特許第5378814号を参照のこと)。
【0052】
E型肝炎ウイルス(HEV):ウイルス抗原は、HEVから誘導され得る。
【0053】
G型肝炎ウイルス(HGV):ウイルス抗原は、HGVから誘導され得る。
【0054】
ヒトヘルペスウイルス:ウイルス抗原は、ヒトヘルペスウイルス、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV7)、およびヒトヘルペスウイルス8(HHV8)から誘導され得る。ヒトヘルペスウイルス抗原は、前初期(immediate early)タンパク質(α)、初期タンパク質(β)、および後期タンパク質(γ)から選択され得る。HSV抗原は、HSV-1またはHSV-2株から誘導され得る。HSV抗原は、糖タンパク質gB、gC、gDおよびgH、融合タンパク質(gB)、または免疫回避タンパク質(immune escape proteins)(gC、gE、またはgI)から選択され得る。VZV抗原は、コア、ヌクレオカプシド、テグメント(tegument)、またはエンベロープタンパク質から選択され得る。生弱毒化VZVワクチンは、市販されている。EBV抗原は、初期抗原(EA)タンパク質、ウイルスカプシド抗原(VCA)、および膜抗原(MA)の糖タンパク質から選択され得る。CMV抗原は、カプシドタンパク質、エンベロープ糖タンパク質(例えば、gBおよびgH)、およびテグメントタンパク質から選択され得る。
【0055】
パポバウイルス:抗原は、パポバウイルス、例えば、パピローマウイルスおよびポリオーマウイルス属から誘導され得る。パピローマウイルスとしては、HPV血清型1、2、4、5、6、8、11、13、16、18、31、33、35、39、41、42、47、51、57、58、63および65が挙げられる。好ましくは、HPV抗原は、血清型6、11、16または18から誘導される。HPV抗原は、カプシドタンパク質(L1)および(L2)、またはE1-E7、またはそれらの融合物から選択され得る。HPV抗原は、好ましくは、ウイルス様粒子(VLP)へ製剤化される。ポリオーマウイルス属ウイルスとしては、BKウイルスおよびJKウイルスが挙げられる。ポリオーマウイルス属抗原は、VP1、VP2またはVP3から選択され得る。
【0056】
Vaccines,第4版(PlotkinおよびOrenstein編 2004);Medical Microbiology 第4版(Murrayら編 2002);Virology,第3版(W.K.Joklik編 1988);Fundamental Virology,第2版(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編
1991)に記載されるウイルス抗原がさらに提供され、これらは、本発明の組成物と共に考慮される。
【0057】
本発明における使用に好適な免疫原性タンパク質は、呼吸器疾患を引き起こすウイルスから誘導され得る。このような呼吸器抗原の例としては、オルトミクソウイルス(インフルエンザ)、肺炎ウイルス属(RSV)、パラミクソウイルス属(PIV)、麻疹ウイルス属(麻疹)、トガウイルス(風疹)、VZV、およびコロナウイルス属(SARS)等の呼吸器系ウイルスから誘導されるタンパク質が挙げられる。インフルエンザウイルスから誘導される免疫原性タンパク質が、特に好ましい。
【0058】
本発明の組成物は、小児被験者における使用に好適な1以上の免疫原性タンパク質を含み得る。小児被験者は、典型的に、約3歳未満、または約2歳未満、または約1歳未満である。小児抗原は、6ヶ月、1、2または3年にわたって複数回投与され得る。小児抗原は、小児集団を標的化し得るウイルスおよび/または小児集団が感染しやすいウイルスから誘導され得る。小児ウイルス抗原としては、オルトミクソウイルス(インフルエンザ)、肺炎ウイルス属(RSV)、パラミクソウイルス属(PIVおよびムンプス)、麻疹ウイルス属(麻疹)、トガウイルス(風疹)、エンテロウイルス属(ポリオ)、HBV、コロナウイルス属(SARS)、および水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)の1以上から誘導される抗原が挙げられる。
【0059】
本発明の組成物は、高齢のまたは免疫無防備状態の個人における使用に好適な1以上の免疫原性タンパク質を含み得る。このような個人は、標的化抗原に対するそれらの免疫応答を改善するために、より高用量でまたはアジュバント化(adjuvanted)製剤で、より頻繁にワクチン接種される必要があり得る。高齢のまたは免疫無防備状態の個人における使用について標的化され得る抗原としては、下記のウイルスの1以上から誘導された抗原が挙げられる:オルトミクソウイルス(インフルエンザ)、肺炎ウイルス属(RSV)、パラミクソウイルス属(PIVおよびムンプス)、麻疹ウイルス属(麻疹)、トガウイルス(風疹)、エンテロウイルス属(ポリオ)、HBV、コロナウイルス属(SARS)、水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、およびサイトメガロウイルス(CMV)。
【0060】
ウイルスを増殖した後、アルキル化剤が、精製されたビリオンに対して、例えば、浄化された(clarified)細胞培養物中に存在するビリオンに対して、またはこのような浄化された細胞培養物から精製されたビリオンに対して、使用され得る。本発明の方法は、浄化、次いで該浄化された細胞培養物からのビリオンの精製(例えば、クロマトグラフィーによる)によって、細胞性材料を除去することを含み得る。アルキル化剤は、この様式で精製されたビリオンに対して、または限外濾過/ダイアフィルトレーションのさらなる任意の工程後に、使用され得る。好ましい方法は、感染された細胞培養物の浄化された上澄みに対してではなく、このような浄化された上澄みから精製されたビリオンに対して、アルキル化剤を使用する(Morgeauxら(1993)Vaccine 11:82-90を参照のこと)。
【0061】
アルキル化剤は、好ましくは、内毒素除去工程が行われた後に使用される。
【0062】
方法工程
本発明のワクチン組成物は、免疫原性タンパク質の単離および残存機能性宿主細胞DNAの分解によって調製され得る。同様に、組換えタンパク質製剤は、組換えタンパク質の単離または精製および残存機能性宿主細胞DNAの分解によって調製され得る。これらの工程は、連続的にまたは同時に行われ得る。残存機能性細胞培養物DNAを分解する工程は、アルキル化剤(例えば、BPL)の添加によって行われる。
【0063】
アルキル化剤およびあらゆる残存副生成物は、ワクチンまたは組換えタンパク質の最終製剤の前に、好ましくは除去される。好ましくは、ワクチン組成物または組換えタンパク質製剤は、組み合わされた0.1%未満の遊離プロピオン酸およびBPLを含有する(例えば、0.1%、0.05%、0.025%、0.01%、0.005%、0.001%、または0.01%未満)。好ましくは、最終ワクチン組成物または組換えタンパク質製剤は、0.01%未満のBPLを含有する。
【0064】
BPLは、好都合なことに、加熱し、非毒性β-ヒドロキシプロピオン酸への加水分解を引き起こすことによって除去され得る。加水分解のために必要とされる時間の長さは、BPLの総量および温度に依存する。温度が高いほどより迅速な加水分解が提供されるが、温度は、活性タンパク質様成分に損傷を与えるほど高く上昇されるべきではない。下記に記載されるように、2~2.5時間約37℃への加熱が、BPLを除去するために好適である。
【0065】
DNAの処理後、残存DNAプロダクトは、最終免疫原性または組換え組成物中に保持され得る。しかし、より好ましくは、それらは、所望の成分から分離され、例えば、ビリオン/タンパク質から分離される。この様式での分離は、DNA分解産物を部分的または全体的に除去し得、そして好ましくは、>200bpであるいかなる分解されたDNAをも除去する。したがって、本発明の方法は、ビリオンからDNAを分離する工程を含み得る。この分離工程は、例えば、1以上の限外濾過、超遠心分離(勾配超遠心分離を含む)、ウイスルコアペレット化および上澄み分別、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、例えばアニオン交換)、吸着等を含み得る。
【0066】
全体的に、したがって、方法は、残存DNAの長さを分解するためのアルキル化剤での処理、および残存DNAを除去するための後の精製(分解されたDNAの除去を含む)を含み得る。
【0067】
細胞培養物
本発明のワクチンは、細胞培養物において増殖されるウイルスから調製される。さらに、本発明は、細胞培養物中において発現された組換えタンパク質の製剤を含む。哺乳動物細胞培養物が、ウイルス複製および組換えタンパク質発現の両方について好ましい。
【0068】
多数の哺乳動物細胞株が、当該分野において公知であり、そして以下から誘導される細胞株を含む:ヒトまたは非ヒト霊長類(例えば、サル)細胞(例えば、例えばWO01/38362、WO01/41814、WO02/40665、WO2004/056979、およびWO2005/080556(参照によりそれらの全体が本明細書中において組み込まれる)に記載され、ならびにECACC寄託番号96022940で寄託される、PER.C6細胞)、MRC-5(ATCC CCL-171)、WI-38(ATCC CCL-75)、HEK細胞、HeLa細胞、胎仔アカゲザル肺細胞(ATCC CL-160)、ヒト胚腎臓細胞(せん断された(sheared)アデノウイルスタイプ5DNAによって典型的に形質転換された、293細胞)、Vero細胞(サル腎臓由来)、ウマ、ウシ(例えば、MDBK細胞)、ヒツジ、イヌ(例えば、イヌ腎臓由来のMDCK細胞、ATCC CCL34 MDCK(NBL2)またはMDCK 33016、寄託番号DSM ACC 2219(WO 97/37000およびWO 97/37001に記載される))、ネコ、およびげっ歯類(例えば、ハムスター細胞、例えばBHK21-F、HKCC細胞、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞);そして、例えば成体、新生児、胎児、胚を含む、広範囲の発達段階から得られ得る。
【0069】
好適なサル細胞は、例えば、アフリカミドリザル細胞、例えば、Vero細胞株におけるような腎細胞である。好適なイヌ細胞は、例えば、MDCK細胞株におけるような腎細胞である。したがって、好適な細胞株としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:MDCK;CHO;293T;BHK;Vero;MRC-5;PER.C6;WI-38等。哺乳動物細胞の使用は、ワクチンにニワトリDNA、卵タンパク質(例えば、オボアルブミンおよびオボムコイド)等の物質が含まれ得ず、それによってアレルゲン性を減少させることを意味する。
【0070】
特定の実施形態において、細胞は、不死化される(例えば、PER.C6細胞;ECACC 96022940)。好ましい実施形態において、哺乳動物細胞が使用され、そして以下の非限定的な細胞タイプの1以上から選択および/または誘導され得る:線維芽細胞(例えば、皮膚、肺)、内皮細胞(例えば、大動脈、冠動脈、肺動脈、脈管、皮膚微小血管、臍帯)、肝細胞、ケラチノサイト、免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、マクロファージ、NK、樹状細胞)、乳房細胞(例えば、上皮)、平滑筋細胞(例えば、脈管、大動脈、冠動脈、動脈、子宮、気管支、頚部、網膜周皮細胞)、メラノサイト、神経細胞(例えば、星状細胞)、前立腺細胞(例えば、上皮、平滑筋)、腎臓または腎細胞(例えば、上皮、メサンギウム、近位尿細管)、骨細胞(例えば、軟骨細胞、破骨細胞、骨芽細胞)、筋細胞(例えば、筋芽細胞、骨格筋、平滑筋、気管支)、肝細胞、網膜細胞または網膜芽細胞、肺細胞、および間質細胞。
【0071】
WO97/37000およびWO97/37001は、懸濁液および無血清培地において増殖し得かつウイルス(特に、インフルエンザウイルス)の産生および複製に有用である、動物細胞および細胞株の産生を記載している。さらなる詳細は、WO03/023021およびWO03/023025に与えられる。
【0072】
インフルエンザウイルスを増殖するための好ましい哺乳動物細胞株としては、以下が挙げられる:Madin Darbyイヌ腎臓由来の、MDCK細胞;アフリカミドリザル(Cercopithecus aethiops)腎臓由来の、Vero細胞;またはヒト胚網膜芽細胞由来の、PER.C6細胞。これらの細胞株は、例えば、American Type Cell Culture(ATCC)コレクションから、Coriell Cell Repositoriesから、またはEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)から、広く入手可能である。例えば、ATCCは、カタログ番号CCL-81、CCL-81.2、CRL-1586およびCRL-1587で種々の異なるVero細胞を供給し、そしてそれは、カタログ番号CCL-34でMDCK細胞を供給する。PER.C6は、寄託番号96022940でECACCから入手可能である。
【0073】
インフルエンザウイルスを増殖するために最も好ましい細胞株は、MDCK細胞株である。オリジナルのMDCK細胞株は、CCL-34としてATCCから入手可能であるが、この細胞株の誘導体もまた使用され得る。例えば、WO97/37000は、懸濁培養における増殖に適応されたMDCK細胞株を開示している(DSM ACC 2219として寄託された、「MDCK 33016」)。同様に、EP-A-1260581(WO 01/64846)は、無血清培養における懸濁液において増殖するMDCK由来細胞株を開示している(FERM BP-7449として寄託された、「B-702」)。WO2006/071563は、「MDCK-S」(ATCC PTA-6500)、「MDCK-SF101」(ATCC PTA-6501)、「MDCK-SF102」(ATCC PTA-6502)および「MDCK-SF103」(PTA-6503)を含む、非腫瘍形成性MDCK細胞を開示している。WO2005/113758は、「MDCK.5F1」細胞(ATCC CRL-12042)を含む、感染に対して高感受性を有するMDCK細胞株を開示している。これらのMDCK細胞株のいずれもが使用され得る。
【0074】
懸濁液中のMDCK細胞培養物および付着培養物(adherent cultures)の操作は、WO97/37000、WO97/37001、WO03/023021、およびWO03/023025に記載されている。特に、WO 03/023021およびWO 03/023025は、無血清培地、化学的に規定された培地(chemically defined media)、および無タンパク質培地における実験および商業規模細胞培養容量のMDCK懸濁細胞を記載している。各参考文献は、その全体が本明細書中に組み込まれる。
【0075】
哺乳動物供給源の代替物として、本発明における使用のための細胞株は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラまたはキジ等の鳥類供給源から誘導され得る。鳥類細胞株は、胚、幼鳥および成体を含む種々の発達段階から誘導され得る。好ましくは、細胞株は、胚細胞、例えば胚線維芽細胞、生殖細胞、または個々の器官(ニューロン、脳、網膜、腎臓、肝臓、心臓、筋肉を含む)、または胚を保護する胚外組織および膜から誘導される。鳥類細胞株の例としては、鳥類胚幹細胞(WO01/85938およびWO03/076601)およびアヒル網膜細胞(WO2005/042728)が挙げられる。好適な鳥類胚幹細胞としては、ニワトリ胚幹細胞から誘導されたEBx細胞株、EB45、EB14、およびEB14-074が挙げられる(WO2006/108846)。ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)もまた使用され得る。これらの鳥類細胞は、インフルエンザウイルスを増殖するために特に好適である。
【0076】
昆虫細胞発現系、例えば、バキュロウイルス組換え発現系は、当業者に公知であり、そして、例えば、SummersおよびSmith, Texas Agricultural Experiment Station Bulletin No.1555(1987)に記載されている。バキュロウイルス/挿入細胞発現系についての材料および方法は、特にInvitrogen, San Diego CA製の、キット形態で市販されている。バキュロウイルス発現ベクターと共の使用のための昆虫細胞としては、特に、Aedes aegypti、Autographa californica、Bombyx mori、Drosophila melanogaster、Spodoptera frugiperda、およびTrichoplusia niが挙げられる。
【0077】
タンパク質の組換え発現もまた、大腸菌、枯草菌、および連鎖球菌種等の細菌宿主中において行われ得る。タンパク質の組換え発現に好適な酵母宿主としては、Saccharomyces cerevisiae、Candida albicans、Candida maltosa、Hansenual polymorpha、Kluyveromyces fragilis、Kluyveromyces lactis、Pichia guillerimondii、Pichia pastoris、Schizosaccharomyces pombe、およびYarrowia lipolyticaが挙げられる。
【0078】
上記細胞タイプについての培養条件は、種々の刊行物に十分に記載されており、あるいは、培養培地、補充物および条件は、例えば、Cambrex Bioproducts(East Rutherford,NJ)のカタログおよびさらなる文献に記載されるように、商業的に購入され得る。
【0079】
ある実施形態において、本明細書中に記載される本方法において使用される宿主細胞は、無血清および/または無タンパク質培地中において培養される。培地は、ヒトまたは動物起源の血清由来の添加物が存在しない本明細書の文脈において、無血清培地と呼ばれる。無タンパク質は、細胞の増殖(multiplication)が、タンパク質、増殖因子、他のタンパク質添加物および非血清タンパク質の排除を伴って生じるが、トリプシンまたはウイルス増殖に必要であり得る他のプロテアーゼ等のタンパク質を必要に応じて含み得る、培養物を意味すると理解される。このような培養物中において増殖する細胞は、それら自体、タンパク質を天然に含有し得る。
【0080】
公知の無血清培地としては、Iscove培地、Ultra-CHO培地(BioWhittaker)またはEX-CELL(JRH Bioscience)が挙げられる。通常の血清含有培地としては、イーグル基本培地(BME)または最小必須培地(MEM)(Eagle,Science,130,432(1959))またはダルベッコ改変イーグル培地(DMEMもしくはEDM)が挙げられ、これらは、通常、10%までのウシ胎仔血清または類似の添加物と共に使用される。必要に応じて、最小必須培地(MEM)(Eagle,Science,130,432(1959))またはダルベッコ改変イーグル培地(DMEMもしくはEDM)は、血清含有補充物なしで使用され得る。PF-CHO(JHR Bioscience)のような無タンパク質培地、ProCHO 4CDM(BioWhittaker)またはSMIF 7(Gibco/BRL Life Technologies)のような化学的に規定される培地、およびPrimactone、PepticaseもしくはHyPepTM(全てQuest International製)マイトジェンペプチドまたはラクトアルブミン加水分解物(Gibcoおよび他の製造業者)もまた、当該分野において十分に公知である。植物加水分解物に基づく培地添加物は、ウイルス、マイコプラズマまたは未知の感染性因子での汚染が排除され得るという特別な利点を有する。
【0081】
細胞培養条件(温度、細胞密度、pH値等)は、本発明に従って使用される細胞株の適合性に起因して非常に広範囲にわたって可変であり、そして特定のウイルス増殖条件または組換え発現詳細の要件に適応され得る。
【0082】
細胞は、種々の様式で、例えば、懸濁液中、付着培養物(adherent culture)中、マイクロキャリア上において、増殖され得る。
【0083】
細胞は、ウイルス複製の間37℃未満で(例えば、30~36℃)増殖され得る(WO97/37001)。
【0084】
培養細胞物中においてウイルスを増殖させるための方法は、一般的に、培養される株を培養された細胞に接種する工程、例えばウイルス力価または抗原発現によって測定されるような、ウイルス増殖について望まれる時間の間(例えば、接種後24~168時間)、感染された細胞を培養する工程、および増殖されたウイルスを回収する工程を含む。前記培養された細胞は、1:500~1:1、好ましくは1:100~1:5、より好ましくは1:50~1:10のウイルス(PFUもしくはTCID50によって測定される)対細胞比で接種され得る。ウイルスは、細胞の懸濁液へ添加されるかまたは細胞の単層へ適用され得、そしてウイルスは、少なくとも60分しかし通常は300分未満の間、好ましくは90~240分間、25℃~40℃で、好ましくは28℃~37℃で、細胞上に吸着される。
【0085】
前記感染された細胞培養物(例えば、単層)は、収穫される培養上澄みのウイルス含有量を増加するために、凍結-解凍によってまたは酵素作用によって除去され得る。次いで、収穫された流体は、不活性化されるかまたは凍結保存される。培養細胞は、約0.0001~10、好ましくは0.002~5、より好ましくは0.001~2の感染の多重度(「m.o.i.」)で、感染され得る。なおより好ましくは、細胞は、約0.01のm.o.i.で感染される。感染された細胞は、感染後30~60時間で収穫され得る。好ましくは、細胞は、感染後34~48時間で収穫される。なおより好ましくは、細胞は、感染後38~40時間で収穫される。プロテアーゼ(典型的に、トリプシン)は、一般的に、細胞培養の間に添加され、ウイルス放出を可能にし、そして該プロテアーゼは、培養の間の任意の好適な段階で添加され得る。
【0086】
本発明のワクチン組成物は、一般的に、サブ-ビリオン形態、例えば分割されたウイルス(split virus)の形態(ここで、ウイルス脂質エンベロープが溶解または破壊されている)で、または1以上の精製されたウイルスタンパク質の形態で、製剤化される。ワクチン組成物は、患者において免疫学的応答を生じさせるに十分な量の抗原を含有する。
【0087】
インフルエンザウイルス等のウイルスを分割する(splitting)方法は、当該分野において周知であり、例えば、WO02/28422、WO02/067983、WO02/074336、WO01/21151等を参照のこと。ウイルスの分割は、破壊濃度の分割剤(splitting agent)で、感染性(野生型または弱毒化)または非感染性(例えば、不活性化)に関わらず、全ウイルスを破壊またはフラグメント化することによって行われる。分割剤としては、典型的に親水性頭部へ結合された疎水性尾部を有する、脂質膜を破壊しそして溶解し得る薬剤が一般的に挙げられる。最も好ましい分割剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)である。分割のさらなる詳細は、インフルエンザウイルスの文脈において下記に与えられる。
【0088】
破壊は、ウイルスタンパク質の完全または部分的な可溶化を生じさせ、ウイルスの完全性を変化させる。好ましい分割剤は、非イオン性およびイオン性(例えば、カチオン性)界面活性剤、例えば、アルキルグリコシド、アルキルチオグリコシド、アシル糖(acyl sugars)、スルホベタイン、ベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、N,N-ジアルキル-グルカミド、Hecameg、アルキルフェノキシ-ポリエトキシエタノール、第4級アンモニウム化合物、サルコシル、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、トリ-N-ブチルホスフェート、Cetavlon、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、リポフェクチン、リポフェクタミン、およびDOT-MA、オクチルもしくはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton界面活性剤、例えばTriton X-100もしくはTriton N101)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween界面活性剤)、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステル等である。
【0089】
ウイルスから個々のタンパク質を精製する方法は、周知であり、そして、例えば、濾過、クロマトグラフィー、遠心分離工程および中空糸溶出を含む。1実施形態において、タンパク質は、イオン交換樹脂によって精製される。
【0090】
さらなる代替物として、ワクチンは、全ウイルス、例えば、生弱毒化全ウイルス、または好ましくは、不活性化全ウイルスを含み得る。哺乳動物細胞に感染するそれらの能力を破壊するためにウイルスを不活性化または死滅する方法は、当該分野において公知である。このような方法は、化学的および物理的手段の両方を含む。ウイルスを不活性化するための化学的手段としては、有効量の1以上の下記の薬剤での処理が挙げられる:洗剤、ホルムアルデヒド、ホルマリン、BPL、またはUV光。不活性化のためのさらなる化学的手段としては、メチレンブルー、ソラレン、カルボキシフラーレン(C60)またはそれらの任意の組み合わせでの処理が挙げられる。例えばバイナリーエチルアミン(binary ethylamine)、アセチルエチレンイミン、またはガンマ線照射等の、ウイルス不活性化の他の方法が、当該分野において公知である。好ましくは、ウイルスは、BPLで不活性化される。
【0091】
薬学的組成物
本発明の組成物は、薬学的に許容される。それらは、通常、抗原に加えて、成分を含み、例えば、それらは、典型的に、1以上の薬学的担体および/または賦形剤を含む。このような成分の完全な議論は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro,2000;第20版,ISBN:0683306472)において入手可能である。
【0092】
組成物は、一般的に、水性形態である。
【0093】
組成物は、1以上の保存剤、例えば、チオメルサールまたは2-フェノキシエタノールを含み得る。しかし、ワクチンは、水銀材料を実質的に含むべきでなく(即ち、5μg/ml未満)、例えばチオメサール-フリーであることが好ましい(Banzhoff(2000) Immunology Letters 71:91-96;WO02/097072)。水銀を含有しないワクチンがより好ましい。保存剤を含まないワクチンが特に好ましい。
【0094】
例えば張度を制御するために、生理学的塩(例えば、ナトリウム塩)を含むことが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、これは、1~20mg/mlで存在し得る。存在し得る他の塩としては、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二ナトリウム(無水)(disodium phosphate dehydrate)、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等が挙げられる。
【0095】
組成物は、一般的に、200mOsm/kg~400mOsm/kg、好ましくは240~360mOsm/kgの重量オスモル濃度を有し、そしてより好ましくは、290~310mOsm/kgの範囲内に入る。
【0096】
組成物は、1以上の緩衝液を含み得る。典型的な緩衝液としては、以下が挙げられる:
リン酸緩衝液;トリス緩衝液;ホウ酸緩衝液;コハク酸緩衝液;ヒスチジン緩衝液(特に、水酸化アルミニウムアジュバントを含有する);またはクエン酸緩衝液。緩衝液は、典型的に、5~20mM範囲で含まれる。
【0097】
組成物のpHは、一般的に5.0~8.1、そしてより典型的には6.0~8.0、例えば6.5~7.5である。したがって、本発明の方法は、包装前に、バルクワクチン(bulk vaccine)のpHを調節する工程を含み得る。
【0098】
組成物は、好ましくは、無菌性である。組成物は、好ましくは、非発熱性であり、例えば、1用量当たり<1 EU(内毒素単位、標準測定値)、そして好ましくは1用量当たり<0.1 EUを含有する。組成物は、好ましくは、グルテンを含有しない。
【0099】
本発明の組成物は、洗剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(「Tweens」として公知)、オクトキシノール(例えば、オクトキシノール-9(Triton X-100)もしくはt-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(「CTAB」)、またはデオキシコール酸ナトリウムを含み得る。洗剤は、微量でのみ存在し得る。
【0100】
組成物は、単回免疫のための材料を含んでもよく、または複数回免疫のための材料(即ち、「多用量」キット)を含んでもよい。保存剤を含めることは、多用量アレンジメントにおいて有用である。多用量組成物中に保存剤を含めることの代替として(または含めることに加えて)、組成物は、材料の除去のための無菌アダプター(aseptic adaptor)を有する容器中に含められ得る。
【0101】
ワクチンは、典型的に、約0.5mlの投薬容量で投与されるが、半分の用量(即ち、約0.25ml)が小児へ投与され得る。
【0102】
組成物およびキットは、好ましくは、2℃~8℃で保存される。それらは、凍結されるべきでない。それらは、理想的には、直射日光外に維持されるべきである。
【0103】
治療方法、およびワクチンの投与
本発明の組成物は、動物(および、特に、ヒト)患者への投与に好適であり、そして本発明は、本発明の組成物を患者へ投与する工程を含む、患者における免疫応答を引き起こす方法を提供する。
【0104】
本発明はまた、医薬としての使用のための本発明のキットまたは組成物を提供する。
【0105】
本発明はまた、患者における免疫応答を引き起こすための医薬の製造における、細胞培養物において増殖されたウイルスから誘導された免疫原性タンパク質の使用を提供し、ここで、該ワクチンは、残存機能性細胞培養物DNAを実質的に含まない。
【0106】
これらの方法および使用によって引き起こされる免疫応答は、一般的に、抗体応答、好ましくは保護的抗体応答を含む。ウイルスワクチン接種後の、抗体応答、中和能力および保護を評価するための方法は、当該分野において周知である。例えば、インフルエンザウイルスについて、ヒト研究は、HAに対する抗体力価は保護と関連することを示した(約30~40の血清サンプル血球凝集阻害力価は、同種ウイルスによる感染からの約50%保護を提供する)[Potter & Oxford(1979)Br Med Bull 35:69-75]。
【0107】
本発明の組成物は、種々の様式で投与され得る。最も好ましい免疫化経路は、(例えば、腕または脚中への)筋内注射によるが、他の利用可能な経路としては、皮下注射、鼻内、経口、皮内、経皮(transcutaneous)、経皮(transdermal)等が挙げられる。
【0108】
本発明に従って調製されたワクチンは、小児および成人の両方を治療するために使用され得る。患者は、1歳未満、1~5歳、5~15歳、15~55歳、または少なくとも55歳であり得る。患者は、高齢者(例えば、≧50歳、≧60歳、および好ましくは≧65歳)、若者(例えば、≦5歳)、入院患者、医療従事者、軍部および軍関係者、妊婦、慢性的な病人、免疫不全の患者、ワクチンを受容する前の7日間において抗ウイルス性化合物(例えば、インフルエンザについてオセルタミビルまたはザナミビル化合物;下記を参照のこと)を摂取した患者、卵アレルギーを有する人、海外へ旅行する人であってもよい。しかし、ワクチンは、これらの群についてのみに好適ではなく、そして集団においてより一般的に使用され得る。
【0109】
治療は、単回用量スケジュールまたは複数回用量スケジュールによってであり得る。複数回用量は、プライマリー(primary)免疫スケジュールおよび/またはブースター(booster)免疫スケジュールにおいて使用され得る。複数回用量スケジュールにおいて、種々の用量が、同一または異なる経路、例えば、非経口プライムおよび経粘膜ブースト、経粘膜プライムおよび非経口ブースト等によって与えられ得る。2回以上の用量(典型的に2回用量)の投与が、免疫学的にナイーブな(naive)患者において特に有用である。複数回用量は、典型的に、少なくとも1週間間隔で(例えば、約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約10週間、約12週間、約16週間等)投与される。
【0110】
本発明によって作製されたワクチンは、他のワクチンと実質的に同時に(例えば、医療専門家またはワクチン接種センターへの同一の医療相談または訪問の間に)、例えば、細菌ワクチン、例えばジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、百日咳ワクチン、DTPワクチン、結合(conjugated)インフルエンザ菌b型ワクチン、髄膜炎菌結合型ワクチン(meningococcal conjugate vaccine)(例えば、四価A-C-W135-Yワクチン)、肺炎球菌結合型ワクチン(pneumococcal conjugate vaccine)等と実質的に同時に、患者に投与され得る。
【0111】
同様に、本発明のワクチンは、ワクチンのウイルスに対して有効な抗ウイルス化合物と実質的に同時に(例えば、医療専門家への同一の医療相談または訪問の間に)、患者へ投与され得る。例えば、ワクチンがインフルエンザワクチンである場合、前記化合物は、ノイラミニダーゼ阻害剤(例えば、オセルタミビルおよび/またはザナミビル)であり得る。これらの抗ウイルス剤としては、それらのエステル(例えば、エチルエステル)およびそれらの塩(例えば、リン酸塩)を含む、(3R,4R,5S)-4-アセチルアミノ-5-アミノ-3(1-エチルプロポキシ)-1-シクロヘキサン-1-カルボン酸、または5-(アセチルアミノ)-4-[(アミノイミノメチル)-アミノ]-2,6-アンヒドロ-3,4,5-トリデオキシ-D-グリセロ-D-ガラクトノン(galactonon)-2-エノニックアシッド(enonic acid)が挙げられる。インフルエンザに対して有効な好ましい抗ウイルス剤は、リン酸オセルタミビル(TAMIFLUTM)としても公知の、(3R,4R,5S)-4-アセチルアミノ-5-アミノ-3(1-エチルプロポキシ)-1-シクロヘキセン-1-カルボン酸,エチルエステル,ホスフェート(1:1)である。
【0112】
宿主細胞DNA
残存宿主細胞DNAの測定は、当業者の通常の能力内である。本発明の組成物中の残存DNAの総量は、好ましくは、20ng/ml未満、例えば、≦10ng/ml、≦5ng/ml、≦1ng/ml、≦100pg/ml、≦10pg/ml等である。上述されるように、このDNAの実質的に全てが、好ましくは、500塩基対未満の長さである。
【0113】
DNAを測定するために使用されるアッセイは、典型的に、公認されたアッセイである(Guidance for Industry: Bioanalytical Method Validation. U.S. Department of Health and Human Services Food and Drug Administration Center for Drug Evaluation and Research (CDER) Center for Veterinary Medicine (CVM). May 2001; Lundblad (2001) Biotechnology and Applied Biochemistry
34:195-197)。公認されたアッセイの性能特徴は、数学的および定量化可能な用語で記載され得、そしてエラーのその可能性のある供給源が同定された。アッセイは、一般的に、精度、正確さ、特異性等の特徴について試験された。アッセイが(例えば、既知の標準量の宿主細胞DNAに対して)較正されそして試験されると、定量DNA測定が規定通りに行われ得る。DNA定量についての3つの原理技術が使用され得る:ハイブリダイゼーション法、例えば、サザンブロットまたはスロットブロット(slot blots)(Jiら(2002)Biotechniques.32:1162-7);免疫学的決定法、例えば、ThresholdTMシステム(Briggs(1991)J Parenter Sci Technol.45:7-12.;および定量PCR(Lahijaniら(1998)Hum Gene Ther.9:1173-80)。これらの方法は全て当業者によく知られているが、各方法の正確な特徴は、問題の宿主細胞、例えば、ハイブリダイゼーションについてのプローブの選択、増幅についてのプライマーおよび/またはプローブの選択等に依存し得る。Molecular Devices製のThresholdTMシステムは、ピコグラムレベルのトータルDNAについての定量アッセイであり、そして生物薬剤中のコンタミDNAのレベルをモニタリングするために使用されてきた(Briggs(1991)、上記参照)。典型的なアッセイは、ビオチン化ssDNA結合タンパク質と、ウレアーゼ結合体化抗ssDNA抗体と、DNAとの間の反応複合体の非配列特異的形成を含む。全てのアッセイ成分は、前記製造業者から入手可能な完全なトータルDNAアッセイキット中に含まれる。種々の商業製造業者が、残存宿主細胞DNAを検出するための定量PCRアッセイ、例えば、AppTecTM Laboratory Services、BioRelianceTM、Althea Technologies等を提供している。ヒトウイルスワクチンの宿主細胞DNA汚染を測定することについてのトータルDNA ThresholdTMシステムおよび化学発光ハイブリダイゼーションアッセイの比較が、Lokteffら(2001)
Biologicals.29:123-32に見られ得る。
【0114】
これら種々の分析方法はまた、残存宿主細胞DNAの長さを測定するために使用され得る。上述されるように、残存宿主細胞DNAの平均の長さは、アルキル化剤での処理後、好ましくは500塩基対未満であり、または200塩基対未満でさえある。
【0115】
イヌ細胞(特に、例えば、MDCK細胞)に関して、ゲノムの分析は、<500bp長の13個のコード配列、<200bpの3個の配列、および<100bpの1個の配列を明らかとする。したがって、<200bpへのDNAのフラグメント化は、実質的に全てのコード配列を除去し、そしていかなるフラグメントもがその長さぐらいの3つの遺伝子(即ち:81bpのセクレチン;108bpのPYY;および135bpのオステオカルシン)の1つに実際に対応するということは全くありそうにない。
【0116】
アジュバント
本発明の組成物は、該組成物を受容する患者において誘発される免疫応答(液性および/または細胞性)を増強するように機能し得る、アジュバントを含み得る。ウイルスワクチンと共のアジュバントの使用は、例えば、肝炎ワクチン、ポリオワクチン等において、周知である。FLUADTMインフルエンザワクチンは、水中油型エマルジョンアジュバントを含む。
【0117】
本発明と共に使用され得るアジュバントとしては、アルミニウム塩、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、サポニン、リピドAアナログ(例えば、3dMPL)、および水中油型エマルジョンが挙げられるが、これらに限定されない。これらおよび他のアジュバントは、Powell & Newman(Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach,Plenum Press 1995,ISBN 0-306-44867-X)およびO’Hagan(Vaccine
Adjuvants:Preparation Methods and Research Protocols,volume 42 of Methods in Molecular Medicine series,ISBN:1-59259-083-7)において、より詳細に開示されている。
【0118】
水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムとして公知のアジュバントが使用され得る。これらの名称は慣習的であり、しかし、どちらも存在する実際の化合物の正確な記載でないので、便宜上にのみ使用される(例えば、Powell & Newmanの第9章を参照のこと)。本発明は、アジュバントとして一般的に使用される「水酸化物」または「リン酸塩」アジュバントのいずれも使用し得る。これらの塩への吸着が好ましい。
【0119】
アジュバント活性を有する免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、周知である。それらは、CpGモチーフ(グアノシンへリン酸結合によって結合された非メチル化シトシンを含有するジヌクレオチド配列)、TpGモチーフ、オリゴ-dT配列、オリゴ-dC配列、二本鎖RNA、パリンドローム配列、ポリ(dG)配列等を含有し得る。免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、典型的に、少なくとも20個のヌクレオチドを含み、そして100個未満のヌクレオチドを含み得る。
【0120】
サポニン(Powell & Newmanの第22章)は、広範囲の植物種の樹皮、葉、茎、根においてそして花においてさえ見られる、ステロール配糖体およびトリテルペノイド配糖体の異種グループである。Quillaia saponariaモリナツリー(Molina tree)の樹皮由来のサポニンが、アジュバントとして広く研究されてきた。サポニンアジュバント製剤としては、精製された製剤、例えばQS21、ならびに液体製剤、例えばISCOMが挙げられる。サポニン組成物は、HPLCおよびRP-HPLCを使用して精製されており、そしてこれらの技術を使用して特定の精製された分画(QS7、QS17、QS18、QS21、QH-A、QH-BおよびQH-Cを含む)が同定された。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の製造方法は、米国特許第5057540号に開示されている。サポニン製剤はまた、ステロール、例えばコレステロールを含み得る(WO96/33739)。サポニンおよびコレステロールの組み合わせは、免疫刺激性複合体(ISCOM)、ISCOM、と呼ばれる独特な粒子を形成するために使用され得、これはまた、典型的にリン脂質を含む。
【0121】
3dMPL(3デ-O-アシル化モノホスホリルリピドAまたは3-O-デスアシル-4’-モノホスホリルリピドAとしても公知)は、モノホスホリルリピドA中の還元末端グルコサミンの3位が脱アシル化されたアジュバントである。3dMPLは、Salmonella minnesotaのヘプトースレス(heptoseless)突然変異体から調製され、そしてリピドAと化学的に類似しているが、酸不安定性ホスホリル基および塩基不安定性アシル基を欠いている。3dMPLは、それらのアシル化によって異なる(例えば、異なる長さのものであり得る、3、4、5または6個のアシル鎖を有する)、関連する分子の混合物の形態をとり得る。
【0122】
アジュバント活性を有する種々の水中油型エマルジョンが公知である。それらは、典型的に、少なくとも1つのオイルおよび少なくとも1つの界面活性剤を含み、オイルおよび界面活性剤は生分解性(代謝性)かつ生体適合性である。前記エマルジョン中の油滴は、一般的に、サブミクロン直径を有し、これらの小さなサイズはマイクロフルイダイザーで達成され、安定なエマルジョンを提供する。濾過滅菌へ供され得るので、220nm未満のサイズを有する液滴が好ましい。
【0123】
本発明で有用な特定の水中油型エマルジョンアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
●スクアレン、Tween 80、およびSpan 85のサブミクロンエマルジョン。体積での前記エマルジョンの組成は、約5%スクアレン、約0.5%ポリソルベート80、および約0.5% Span 85であり得る。重量表現では、これらの比は、4.3%スクアレン、0.5%ポリソルベート80、および0.48% Span 85となる。このアジュバントは、Powell & Newmanの第10章およびO’Haganの第12章により詳細に記載されるように、「MF59」として公知である。MF59エマルジョンは、有利には、クエン酸イオン、例えば10mMクエン酸ナトリウム緩衝液を含む。
【0124】
●スクアレン、トコフェロール、およびTween 80のエマルジョン。前記エマルジョンは、リン酸緩衝生理食塩水を含み得る。それはまた、Span 85(例えば1%で)および/またはレシチンを含み得る。これらのエマルジョンは、2~10%スクアレン、2~10%トコフェロール、および0.3~3%Tween 80を有し得、そしてスクアレン:トコフェロールの重量比は、好ましくは≦1であり、何故ならば、これがより安定なエマルジョンを提供するためである。スクアレンおよびTween 80は、約5:2の体積比で存在し得る。1つのこのようなエマルジョンは、PBS中にTween
80を溶解して2%溶液を提供し、次いでこの溶液90mlを(5gのDL-α-トコフェロールおよび5mlスクアレン)の混合物と混合し、次いで該混合物をマイクロフルイダイズすることによって、作製され得る。得られるエマルジョンは、例えば100~250nm、好ましくは約180nmの平均直径を有する、サブミクロン油滴を有し得る。
【0125】
●スクアレン、トコフェロール、およびTriton洗剤(例えば、Triton X-100)のエマルジョン。前記エマルジョンはまた、3d-MPLを含み得る。前記エマルジョンは、リン酸緩衝液を含有し得る。
【0126】
●ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、Triton洗剤(例えば、Triton X-100)およびトコフェロール(例えば、コハク酸α-トコフェロール)を含むエマルジョン。前記エマルジョンは、約75:11:10(例えば、750μg/mlポリソルベート80、110μg/ml Triton X-100、および100μg/ml コハク酸α-トコフェロール)の質量比で、これら3成分を含み得、そしてこれらの濃度は、抗原からのこれらの成分のいかなる寄与をも含むべきである。前記エマルジョンはまた、スクアレンを含み得る。前記エマルジョンはまた、3d-MPLを含み得る。水相はリン酸緩衝液を含有し得る。
【0127】
インフルエンザワクチン
本発明は、インフルエンザウイルスワクチンを調製するために特に好適である。種々の形態のインフルエンザウイルスワクチンが、現在入手可能である;例えば、Plotkin & Orenstein(Vaccines,第4版,2004,ISBN:0-7216-9688-0)の第17および18章を参照のこと。それらは、一般的に、生ウイルスまたは不活性化ウイルスのいずれかに基づく。不活性化ワクチンは、全ビリオン、「分割された」ビリオン、または精製された表面抗原(血球凝集素を含む)に基づき得る。インフルエンザ抗原はまた、ビロソーム(virosome)(核酸フリーのウイルス様リポソーム粒子)の形態で提示され得る。組換え宿主(例えば、バキュロウイルスベクターを使用して昆虫細胞株中)から精製された抗原もまた使用され得る。
【0128】
ウイルスを不活性化するための化学的手段としては、有効量の1以上の下記の薬剤での処理が挙げられる:洗剤、ホルムアルデヒド、β-プロピオラクトン、メチレンブルー、ソラレン、カルボキシフラーレン(C60)、バイナリーエチルアミン、アセチルエチレンイミン、またはそれらの組み合わせ。例えばUV光またはガンマ線照射等の、ウイルス不活性化の非化学的方法が、当該分野において公知である。
【0129】
ビリオンは、種々の方法によって、ウイルス含有流体から収穫され得る。例えば、精製プロセスは、ビリオンを破壊する洗剤を含む線形スクロース勾配溶液を使用するゾーン遠心分離を含み得る。次いで、抗原は、任意の希釈後、ダイアフィルトレーションによって、精製され得る。
【0130】
分割されたビリオンは、「Tween-エーテル」分割プロセスを含む、精製されたビリオンを洗剤(例えば、エチルエーテル、ポリソルベート80、デオキシコレート、トリ-N-ブチルホスフェート、Triton X-100、Triton N101、臭化セチルトリメチルアンモニウム等)で処理しサブビリオン調製物を作製することによって得られる。インフルエンザウイルスを分割する(splitting)方法は、当該分野、例えば、WO02/28422、WO02/067983、WO02/074336、WO01/21151、WO02/097072、WO2005/113756等において、周知である。ウイルスを分割することは、典型的に、破壊濃度の分割剤で、感染性または非感染性に関わらず、全ウイルスを破壊またはフラグメント化することによって行われる。破壊は、ウイルスタンパク質の完全または部分的な可溶化を生じさせ、ウイルスの完全性を変化させる。好ましい分割剤は、非イオン性およびイオン性(例えば、カチオン性)界面活性剤、例えば、アルキルグリコシド、アルキルチオグリコシド、アシル糖、スルホベタイン、ベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、N,N-ジアルキル-グルカミド、Hecameg、アルキルフェノキシ-ポリエトキシエタノール、第4級アンモニウム化合物、サルコシル、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、トリ-N-ブチルホスフェート、Cetavlon、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、リポフェクチン、リポフェクタミン、およびDOT-MA、オクチルもしくはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton界面活性剤、例えばTriton X-100もしくはTriton N101)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween界面活性剤)、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステル等である。1つの有用な分割手順は、デオキシコール酸ナトリウムおよびホルムアルデヒドの連続的効果を使用し、そして分割は、初期ビリオン精製の間に(例えば、スクロース密度勾配溶液中において)生じ得る。したがって、分割プロセスは、ビリオン含有材料の浄化(非ビリオン材料を除去するため)、収穫されたビリオンの濃縮(例えば、CaHPO4吸着等の吸着方法を使用する)、非ビリオン材料からの全ビリオンの分離、密度勾配遠心分離工程における分割剤を使用してのビリオンの分割(例えば、デオキシコール酸ナトリウム等の分割剤を含有するスクロース勾配を使用する)、ならびに次いで望まれない材料を除去するための濾過(例えば、限外濾過)を含み得る。分割されたビリオンは、有用には(usefully)、リン酸ナトリウム緩衝化された等張の塩化ナトリウム溶液中に再懸濁され得る。
【0131】
精製された表面抗原ワクチンは、インフルエンザ表面抗原血球凝集素を、および、典型的にはノイラミニダーゼも含む。精製された形態のこれらのタンパク質を調製するためのプロセスは、当該分野において周知である。
【0132】
ワクチン中における使用のためのインフルエンザウイルス株は、季節ごとに変化する。現在のインターパンデミック(inter-pandemic)期間において、ワクチンは、典型的に、2つのインフルエンザA株(H1N1およびH3N2)ならびに1つのインフルエンザB株を含み、そして三価ワクチンが典型的である。本発明はまた、H2、H5、H7またはH9サブタイプ株(特に、インフルエンザAウイルスのもの)等の、パンデミック株(即ち、ワクチン受容者および一般的なヒト集団が免疫学的にナイーブである株)由来のHAを使用し得、そしてパンデミック株についてのインフルエンザワクチンは、一価であってもよく、またはパンデミック株によって補充された通常の三価ワクチンに基づいてもよい。しかし、季節およびワクチン中に含まれる抗原の性質に依存して、本発明は、1以上のインフルエンザAウイルス血球凝集素サブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15またはH16から保護し得る。
【0133】
インターパンデミック株に対して免疫化するために好適であるように、本発明の組成物は、特に、パンデミック株に対して免疫化するために有用である。パンデミック発生を引き起こす可能性をそれに与えるインフルエンザ株の特徴は、以下である:(a)それは、現在広まっているヒト株中の血球凝集素と比較して新しい血球凝集素、即ち、10年間にわたってヒト集団において明白でなかったか(例えば、H2)、またはヒト集団において以前には全く見られず(例えば、トリ集団においてのみ一般的に見出されていた、H5、H6またはH9)、その結果、ヒト集団が該株の血球凝集素に対して免疫学的にナイーブであるものを含有する;(b)それは、ヒト集団において水平に感染され得る;そして(c)それは、ヒトに対して病原性である。H5血球凝集素タイプを有するウイルスが、H5N1株等のパンデミックインフルエンザに対して免疫化するために好ましい。他の可能性のある株としては、H5N3、H9N2、H2N2、H7N1およびH7N7、ならびに任意の他の新たな潜在的にパンデミックな株が挙げられる。H5サブタイプ内で、ウイルスは、HAクレード1、HAクレード1’、HAクレード2またはHAクレード3に入り得(World Health Organization(2005) Emerging Infectious Diseases 11(10):1515-21)、クレード1および3が特に関連する。抗原が有用に組成物中に含まれ得る他の株は、耐性パンデミック株を含む、抗ウイルス療法に対して耐性である(例えば、オセルタミビルおよび/またはザナミビルに対して耐性である)株である。
【0134】
本発明の組成物は、インフルエンザAウイルスおよび/またはインフルエンザBウイルスを含む、1以上(例えば、1、2、3、4またはそれを超えて)のインフルエンザウイルス株由来の抗原を含み得る。2つのインフルエンザAウイルス株および1つのインフルエンザBウイルス株由来の抗原を含む、三価ワクチンが好ましい。
【0135】
インフルエンザウイルスは、再集合体株(reassortant strain)であり得、そして逆遺伝学技術によって得られたかもしれない。したがって、インフルエンザAウイルスは、A/PR/8/34ウイルス由来の1以上のRNAセグメントを含み得る(典型的に、A/PR/8/34由来の6つのセグメント、HAおよびNセグメントはワクチン株由来であり、即ち、6:2再集合体)。それはまた、A/WSN/33ウイルス由来の、またはワクチン調製についての再集合体ウイルスを作製するために有用な任意の他のウイルス株由来の、1以上のRNAセグメントを含み得る。典型的に、本発明は、ヒト-ヒト感染し得る株から保護し、そしてしたがって、該株のゲノムは、通常、哺乳動物(例えば、ヒト)インフルエンザウイルスに由来した少なくとも1つのRNAセグメントを含む。それは、トリインフルエンザウイルスに由来したNSセグメントを含み得る。
【0136】
HAは、現在の不活性化インフルエンザワクチン中の主な免疫原であり、そしてワクチン用量は、典型的にSRIDによって測定される、HAレベルを参照することによって、標準化される。存在するワクチンは、典型的に、1株当たり約15μgのHAを含有するが、より低い用量が、例えば、小児について、またはパンデミック状況において、またはアジュバントを使用する場合、使用され得る。より高い用量(例えば、3×または9×用量)と同様に、1/2(即ち、1株当たり7.5μgのHA)、1/4および1/8等の分割用量が使用されてきた。しかし、ワクチンは、1インフルエンザ株当たり0.1~150μgのHA、好ましくは、0.1~50μg、例えば0.1~20μg、0.1~15μg、0.1~10μg、0.1~7.5μg、0.5~5μg等を含み得る。特定の用量としては、例えば、1株当たり、約15、約10、約7.5、約5、約3.8、約1.9、約1.5等が挙げられる。
【0137】
生ワクチンについて、投薬は、HA含有量よりはむしろメジアン組織培養感染量(median tissue culture infectious dose)(TCID50)によって測定され、そして1株当たり106~108(好ましくは、106.5~107.5)のTCID50が典型的である。
【0138】
本発明で使用されるHAは、ウイルス中において見られる天然HAであってもよく、または修飾されていてもよい。例えば、トリ種においてウイルスを非常に病原性にする決定基(例えば、HA1とHA2との間の切断部位の周りのハイパーベーシック(hyper-basic)領域)を除去するために、HAを修飾することが公知である。
【0139】
ビリオン含有組成物を処理し(例えば、BPLで)宿主細胞DNAを分解した後、分解産物は、好ましくは、例えばアニオン交換クロマトグラフィーによって、ビリオンから除去される。インフルエンザウイルスが特定の株について精製されると、それは、例えば上述の三価ワクチンを作製するために、他の株由来のウイルスと混合され得る。ウイルスを混合しそして多価混合物由来のDNAを分解することよりはむしろ、各株を別個に処理しそして一価のバルクを混合して最終の多価混合物を得ることが好ましい。
【0140】
一般
用語「含む(comprising)」は「包含する(including)」および「からなる(consisting)」を含み、例えば、Xを「含む」組成物は、Xのみからなってもよく、または追加のもの、例えばX+Yを含んでもよい。
【0141】
用語「実質的に」は「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてもよい。必要に応じて、用語「実質的に」は、本発明の定義から省略され得る。
【0142】
数値xに関連して用語「約」は、例えば、x+10%を意味する。
【0143】
用語「単離された」および「精製された」によって、少なくとも50%純粋、より好ましくは60%純粋(大抵の分割されたワクチンと同様に(as with))、より好ましくは70%純粋、または80%純粋、または90%純粋、または95%純粋、または99%を超える純粋が意味される。
【0144】
特に記載されない限り、2つ以上の成分を混合する工程を含むプロセスは、いかなる特定の混合順序を必要としない。したがって、成分は、任意の順序で混合され得る。3つの成分が存在する場合、2つの成分が互いに混合され得、そして次いで該混合物が、第3の成分等と混合され得る。
【0145】
動物(および特にウシ)材料が細胞の培養において使用される場合、それらは、感染性海綿状脳症(TSE)を含まない、そして特にウシ海綿状脳症(BSE)を含まない、供給源から得られるべきである。全体的に、動物由来の材料の完全な非存在下で細胞を培養することが好ましい。
【0146】
化合物が組成物の一部として身体へ投与される場合、その化合物は、代わりに好適なプロドラッグによって置き換えられ得る。
【0147】
細胞基質が再集合または逆遺伝子学手順について使用される場合、それは、例えばPh
Eur 一般章5.2.3におけるように、好ましくは、ヒトワクチン製造における使用について認可されたものである。
【実施例】
【0148】
発明を実施するための形態
インフルエンザウイルス(A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)、A/パナマ/2007/99(H3N2);B/江蘇(Jiangsu)/10/2003;A/ワイオミング/3/2003(H3N2))を、WO97/37000、WO03/23025およびWO04/92360の教示に従って、懸濁培養中においてMDCK細胞において増殖した。最終培養培地を浄化し、ビリオンが得られ、次いでこれをクロマトグラフィーおよび限外濾過/ダイアフィルトレーションに供した。得られた材料中のビリオンを、β-プロピオラクトンを使用して不活性化した(最終濃度0.05% v/v;2~8℃で16~20時間インキュベートし、そして次いで37℃で2~2.5時間インキュベートすることによって加水分解した)。次いで、CTABを使用してビリオンを分割し、そして種々のさらなる処理工程によって、精製された表面抗原を含有する最終一価バルクワクチンが得られた。
【0149】
製造プロセスの3段階で、MDCK DNAをキャラクタライズし、その量、サイズ、および完全性を評価した:(A)限外濾過/ダイフィルトレーション工程後;(B)β-プロピオラクトン処理後;および(C)最終一価バルク中。キャピラリーゲル電気泳動および核酸増幅を使用して、あらゆる残存ゲノムDNAのサイズ、完全性および生物学的活性を研究した。
【0150】
サイズ測定
上述されるように、残存宿主細胞DNAのサイズを、段階(A)、(B)および(C)において、キャピラリーゲル電気泳動によって分析した。分析を5つの別個のウイルス培養物について行った。
【0151】
500μlのサンプルを、これらの3つの時点で除去し、そして56℃で16~22時間10μlのプロテイナーゼKで処理し、続いて、製造業者の指示書に従ってDNA抽出キット(Wako Chemicals)でトータルDNA抽出を行った。DNAを、20℃の一定温度で、P/ACE MDQ 分子キャラクタライゼーションシステム(Beckman Coulter)における電気泳動のために500μlの超純水中に再懸濁した。72~1353bpの、11個の分子サイズマーカーを使用した。この方法について核酸検出限界(DL)は、0.7pg/mlであった。
【0152】
サイズマーカーおよびDNAバンドの相対密度に基づいて、DNAフラグメントの分布およびサイズを測定し、そして<200bpから>1000bpまでの範囲の4つの異なるサイズカテゴリーへ帰属した。
図6は、段階(C)サンプルのキャピラリー電気泳動を示す。分析は、このサンプル中の全ての検出可能な残存DNAが、実質的に200bp未満の長さであることを示している。
【0153】
前記5つの培養物からの平均結果を、下記の表に示す:
【0154】
【化3】
したがって、BPL処理は、DNA量の約10倍減少を引き起こすだけでなく、長い配列から<200bpの小さいフラグメントへ分布をシフトする。クロマトグラフィーおよび限外濾過工程を含む、工程(B)と(C)との間の、さらなる処理は、トータルDNAレベルをさらに約70倍低下させ、そして≧200bpの全ての検出可能なDNAを除去した。
【0155】
DNA増幅
新生物性細胞形質転換は、しばしば修飾されたプロトオンコジーンおよび/または修飾された腫瘍抑制遺伝子と関連する現象である。いくつかのこのようなイヌ遺伝子由来の配列を、BPL処理前および後に、即ち、時点(A)および(B)において、PCRによって分析した。さらに、非感染MDCK細胞由来のDNAを処理し、そして試験した。試験したプロトオンコジーンは、以下であった:H-rasおよびc-myc。試験した腫瘍抑制遺伝子は、以下であった:p53;p21/waf-l;およびPTEN。さらに、反復SINE配列をPCRによって分析した。SINEについての高コピー数は、高感度な検出を促進する。
【0156】
全てのサンプルに、サンプル調製およびPCRの品質をモニタリングするために、外部コントロールDNA(pUC19フラグメント)をスパイクした。全ての実験において、スパイクコントロール(spike control)の一定の増幅が観察され、このことは、PCR混合物中に存在する残存加水分解BPLおよび副産物がアッセイに対する阻害効果を有さず、かつ、サンプル調製およびPCRの十分な品質を確実にしたことを示している。PCR産物が検出され得なくなるまで、サンプルを増幅前に10倍段階希釈し、それによってDNAレベルのログ減少(log reduction)を示す。PCRアッセイについての検出限界は、55pgである。
【0157】
PCR産物を、アガロースゲル電気泳動によって分析した。
図1は、非感染MDCK細胞において得られた結果を示し、そして
図2は、ウイルス培養の間に得られた結果を示す。6つの分析した遺伝子は全て、BPL処理前に強い増幅シグナルを示したが、BPLへの暴露後にシグナル強度が減少した。全ての試験した製造ロットにおいて、残存MDCKゲノムDNAは、BPL暴露後に少なくとも2ログ値(log value)低下した。
【0158】
図2は、さらなる精製前の、段階(B)での結果を示しているので、結果は、最終バルクワクチン中に存在するDNAを過剰提示している(over-represent)。しかし、SINE配列を使用する場合の感度に起因して、PCRはまた、段階(C)で、最終一価バルク中において、可能性があった。この分析の結果は
図3に示される。(A)および(B)におけるDNA増幅は、SINE領域について比較的類似し、このことは、BPLはより小さなDNA配列に対してあまり活性ではないことを示している。しかし、これらの小さな配列についてさえ、分析したサンプルの全てについて、増幅シグナルの顕著な減少が存在した。サンプル回収時点(B)および(C)のPCRシグナル強度の比較は、中間精製工程に起因する残存DNAの減少を反映する。
【0159】
遺伝子に基づく分析から推定して、そしてSINEに基づく分析に直接基づいて、1用量当たり<1ngの、そしてしばしば1用量当たり<100pgの、トータルDNAレベルが、最終ワクチン中において予想される。
【0160】
温度
ウイルス不活性化の間のBPL処理は、2つの独立した工程を有した:(1)2~8℃でビリオン含有混合物へBPLを添加し;次いで(2)温度を37℃へ上げ、BPLを加水分解する。MDCK DNA不活性化およびフラグメント化に対する前記2つのBPL工程の効果を研究した。
【0161】
非感染MDCK細胞由来の精製されたゲノムDNAを、2~8℃で16時間、または37℃もしくは50℃で6.5時間まで、最終濃度の0.05%(v/v)BPLで処理した。DNAのフラグメント化を後でチェックし、そして結果を
図4に示す。これらの実験は、細胞DNAに対するBPLの活性を明らかにするが、非感染細胞は、ウイルス増殖後のMDCKの状態を反映せず、何故ならば、細胞DNAは、アポトーシスに起因して既に高度にフラグメント化されているためである。
【0162】
2~8℃で、アガロースゲル上の未処理DNAおよび処理済みDNAの差異は、無視可能であり、このことは、BPLによるDNAフラグメント化は、これらの条件下での間、実質的に生じ得ないことを示している。対照的に、DNAは、37℃および50℃の両方で非常に修飾され、より高い温度は促進された反応速度論へ導く。未処理細胞由来のDNAは、分解産物の薄い汚れを伴って、アガロースゲルにおいて比較的明確なバンドを示した(
図5、レーン3)。しかし、37℃での短時間のBPLインキュベーション後、MDCK DNAはゲルスロットから下へ汚れ(smeared down)、そしてバンドシグナル強度は減少した(
図5、レーン2)。より長いインキュベーション期間は、大きなゲノムDNA分子の消滅およびMDCK DNAの増強されたフラグメント化を生じさせた。
さらなる実験において、BPLを、先ず、4℃で16時間細胞と共にインキュベートした。第1集団において、温度を2時間37℃へ上昇させ;第2集団において、BPLを遠心濾過機によって除去し、そして次いで温度を上昇させた。遥かに低い(>2ログより低い)残存DNAレベルが、第1集団において見られた。
したがって、BPL処理の間に観察されるDNAフラグメント化は、2~8℃でのウイルス不活性化工程の間よりはむしろ、37℃でのBPL加水分解工程の間に主に生じるようである。
【0163】
本発明は一例としてのみ記載されており、そして本発明の範囲および精神内に留まりながら修飾が成され得ることが、理解される。