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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】複合燃焼炉及び複合燃焼ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F23C 1/12 20060101AFI20220331BHJP
   F23D 17/00 20060101ALI20220331BHJP
   F23D 23/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
F23C1/12
F23D17/00 103
F23D23/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017069542
(22)【出願日】2017-03-31
(65)【公開番号】P2018173177
(43)【公開日】2018-11-08
【審査請求日】2019-11-08
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆政
【合議体】
【審判長】林 茂樹
【審判官】田村 佳孝
【審判官】松下 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-77092(JP,A)
【文献】特開2002-243108(JP,A)
【文献】特開2016-41990(JP,A)
【文献】特開2013-194993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 1/00 - 9/08
F23N 1/00
F23D17/00
F23D23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炉と、
炭素燃料を前記火炉に噴射して燃焼させる第1のバーナと、
前記炭素燃料よりも炭素濃度が低く、燃焼性が低い低炭素燃料を前記火炉に噴射して燃焼させる第2のバーナとを備え、
前記第1のバーナは、前記炭素燃料の噴射速度を前記第2のバーナにおける前記低炭素燃料の噴射速度よりも小さく設定することにより、前記炭素燃料の燃焼による炭素燃料火炎よりも前記火炉の中心側の近くに低炭素燃料火炎が形成されるように前記炭素燃料を噴射することを特徴とする複合燃焼炉。
【請求項2】
前記第1のバーナは、前記第2のバーナの周囲に複数配置されることを特徴とする請求項1に記載の複合燃焼炉。
【請求項3】
前記第1のバーナ及び前記第2のバーナは、内側から前記低炭素燃料を噴射すると共に外側から前記炭素燃料を噴射する複合バーナであることを特徴とする請求項1に記載の複合燃焼炉。
【請求項4】
前記炭素燃料は微粉炭であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の複合燃焼炉。
【請求項5】
前記低炭素燃料はアンモニアであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の複合燃焼炉。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の複合燃焼炉を備えることを特徴とするボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合燃焼炉及び複合燃焼ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1、2には、微粉炭とアンモニアとを複合燃焼させるボイラが開示されている。これらボイラでは、二酸化炭素(CO)の排出量を低減するため、従来から燃料として用いていた微粉炭に加え、水素キャリアであるアンモニアを燃料として燃焼させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-041990号公報
【文献】特開2016-183640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、周知のように、ボイラは火炉で発生した熱を主に水に伝熱させて水蒸気を発生させる伝熱装置である。炉壁の水管に流れる水に輻射伝熱により入熱する熱量Qは、火炉の燃焼ガス温度Tgas、炉壁温度Twall、火炎の放射率ε、またステファンボルツマン定数σに関して下式(1)で表される。この式(1)が示すように、ボイラの性能つまりボイラの収熱性能は、火炎の放射率εに比例する。
Q=σε(Tgas -Twall ) (1)
【0005】
一方、上記火炎の放射率εは燃料に含まれる炭素濃度に依存することが知られている。したがって、炭素を構成元素として含まないアンモニアのような低炭素燃料を微粉炭や石炭のような炭素燃料に混合させて火炉で燃焼させた場合、炭素燃料を単独燃料として燃焼させた場合に比較して火炎の放射率εが低下し、この結果としてボイラの収熱性能が低下することが懸念される。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、炭素燃料と低炭素燃料と同時に燃焼させる場合における火炎の放射率の低下抑制を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、複合燃焼炉に係る第1の解決手段として、火炉と、炭素燃料を前記火炉に噴射して燃焼させる第1のバーナと、前記炭素燃料よりも炭素濃度が低い低炭素燃料を前記火炉に噴射して燃焼させる第2のバーナとを備え、前記第1のバーナは、前記低炭素燃料の燃焼による低炭素燃料火炎よりも前記火炉の炉壁の近くに炭素燃料火炎が形成されるように前記炭素燃料を噴射する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、複合燃焼炉に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記第1のバーナは、前記第2のバーナの周囲に複数配置される、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、複合燃焼炉に係る第3の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記第1のバーナ及び前記第2のバーナは、内側から前記低炭素燃料を噴射すると共に外側から前記炭素燃料を噴射する複合バーナである、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、複合燃焼炉に係る第4の解決手段として、上記第1~第3のいずれかの解決手段において、前記炭素燃料は微粉炭である、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、複合燃焼炉に係る第5の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段において、前記低炭素燃料はアンモニアである、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、ボイラに係る解決手段として、上記第1~第5のいずれかの解決手段に係る複合燃焼炉を備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低炭素燃料の燃焼による火炎よりも火炉の炉壁の近くに火炎が生成されるように炭素燃料を噴射するので、炭素燃料と低炭素燃料と同時に燃焼させる場合における火炎の放射率の低下を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る複合燃焼炉A及び当該複合燃焼炉Aを備えるボイラの要部構成を示す正面図である。
図2図1のX-X線における矢視図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る複合燃焼炉B及び当該複合燃焼炉Bを備えるボイラの要部構成を示す第1の断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る複合燃焼炉B及び当該複合燃焼炉Bを備えるボイラの要部構成を示す第2の断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る複合燃焼炉B及び当該複合燃焼炉Bを備えるボイラの要部構成を示す第3の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
最初に、本発明の第1実施形態に係る複合燃焼炉A及び当該複合燃焼炉Aを備えるボイラについて、図1及び図2を参照して説明する。
【0016】
この第1実施形態に係るボイラは、火炉1、熱交換機器2、複数のバーナM11~M33、N11~N33(第1のバーナ兼第2のバーナ)、アンモニア供給装置3及び微粉炭供給装置4を要部として備えている。なお、これら複数の構成要素のうち、火炉1の一部(下部)及び複数のバーナM11~M33、N11~N33は、第1実施形態に係る複合燃焼炉Aを構成している。
【0017】
火炉1は、垂直かつ筒状に設けられた炉壁によって構成され、燃料を燃焼させて燃焼熱を発生させる炉体である。この火炉1では、燃料が燃焼することによって高温の燃焼ガスが発生する。このような火炉1の後段には、図示しない煙道が設けられている。上記燃焼ガスは、上記煙道を介して大気中に放出されるが、煙道を通過する間に窒素酸化物(NOx)や硫化物(SOx)が除去される。なお、このような火炉1の底部には、燃料の燃焼によって発生する灰分を外部に排出する排出口1aが設けられている。
【0018】
熱交換機器2は、上記火炉1の上部や炉壁に設けられた複数の伝熱管から構成されており、内部に水が流通している。この熱交換機器2は、過熱器や再熱器等、ボイラに設けられる熱交換機器を総称するものであり、燃焼ガスが有する燃焼熱を伝熱管内の水と熱交換させることにより水蒸気を発生させる。
【0019】
複数のバーナM11~M33、N11~N33は、火炉1の下部に二次元状かつ対向配置されており、火炉1内に燃料を噴射して燃焼させる。これら複数のバーナM11~M33、N11~N33は、何れもアンモニア(低炭素燃料)及び微粉炭(炭素燃料)を燃料として火炉1内に噴射する複合バーナであり、本発明における第1のバーナ兼第2のバーナである。
【0020】
なお、図示しないが、火炉1には複数のバーナM11~M33、N11~N33から噴射された燃料(アンモニア及び微粉炭)を着火させる着火装置が設けられている。各バーナM11~M33、N11~N33から火炉1内に噴射された燃料(アンモニア及び微粉炭)は、上記着火装置の働きによって着火して燃焼する。
【0021】
アンモニア供給装置3は、上記複数のバーナM11~M33、N11~N33にアンモニアを低炭素燃料として供給する一方の燃料供給装置である。微粉炭供給装置4は、上記複数のバーナM11~M33、N11~N33に微粉炭を炭素燃料として供給する他方の燃料供給装置である。
【0022】
ここで、上記アンモニアは、分子式(NH)によって示されるように水素(H)と窒素(N)との化合物であり、構成原子として炭素(C)を含まない。また、このアンモニア(低炭素燃料)は、難燃性の物質として知られるものの、メタン(CH)と同様に3つの水素原子を有する水素キャリア物質である。一方、微粉炭は、化石燃料である石炭を数マイクロメートル程度の大きさまで粉砕処理したものであり、ボイラ用の燃料として一般的に使用されている。すなわち、アンモニアは、微粉炭(炭素燃料)よりも炭素濃度が低い低炭素燃料である。
【0023】
上記複数のバーナM11~M33、N11~N33についてさらに詳しく説明すると、本第1実施形態に係る複合燃焼炉Aでは、火炉1の下部において垂直姿勢で平行に対向する一対の炉壁のうち、一方の炉壁に9個のバーナM11~M33が設けられ、他方の炉壁に同じく9個のバーナN11~N33が設けられている。各々9個のバーナM11~M33、N11~N33は、何れも上下方向に三段、左右方向に三列、つまり二次元状に設けられている。
【0024】
すなわち、各々9個のバーナM11~M33、N11~N33のうち、各々3個のバーナM11~M13、N11~N13は上段に設けられ、各々3個のバーナM21~M23、N21~N23は中段に設けられ、各々3個のバーナM31~M33、N31~N33は下段に設けられている。また、これら9個のバーナM11~M33、N11~N33のうち、各々3個のバーナM11~M31、N11~N31は、火炉1の外側から見た場合に右側に位置し、各々3個のバーナM12~M32、N12~N32は中央に位置し、各々3個のバーナM13~M33、N13~N33は左側に位置する。
【0025】
上段に位置する各々3個の各バーナM11~M13、N11~N13は何れも同一高さに設けられ、中段に位置する各々3個の各バーナM21~M23、N21~N23は何れも同一高さに設けられ、下段に位置する各々3個の各バーナM31~M33、N31~N33は何れも同一高さに設けられている。また、右側に位置する各々3個のバーナM11~M31、N11~N31は上下方向に一列に設けられ、中央に位置する各々3個のバーナM12~M32、N12~N32は上下方向に一列に設けられ、左側に位置する各々3個のバーナM13~M33、N13~N33は上下方向に一列に設けられている。すなわち、各々9個のバーナM11~M33、N11~N33は、火炉1の鉛直面に直交配置されている。
【0026】
また、各々9個のバーナM11~M33、N11~N33のうち、符号の数字が同一のもの同士は、互いに対向する位置関係になっている。すなわち、バーナM11とバーナN11とは同一水平面内において対向し、バーナM12とバーナN12とは同一水平面内において対向し、バーナM13とバーナN13とは同一水平面内において対向し、バーナM21とバーナN21とは同一水平面内において対向し、バーナM22とバーナN22とは同一水平面内において対向し、バーナM23とバーナN23とは同一水平面内において対向し、またバーナM31とバーナN31とは同一水平面内において対向し、バーナM32とバーナN32とは同一水平面内において対向し、バーナM33とバーナN33とは同一水平面内において対向している。
【0027】
このように火炉1の各炉壁に配置された9個のバーナM11~M33、N11~N33には、アンモニア供給装置3からアンモニア(低炭素燃料)が供給され、また微粉炭供給装置4から微粉炭(炭素燃料)が供給される。個々のバーナM11~M33、N11~N33は、内側(中心側)からアンモニアを噴射し、また外側(外周側)から微粉炭を噴射する複合バーナ(第1のバーナ兼第2のバーナ)である。
【0028】
例えば、個々のバーナM11~M33、N11~N33は三重管状に形成されており、内側管にアンモニアが供給され、中央管に微粉炭が供給され、外側管に燃焼用空気が供給される。したがって、火炉1内には、図示するように各々のバーナM11~M33、N11~N33について、アンモニアの燃焼によって形成されるアンモニア火炎Sa(低炭素燃料火炎)の周囲に微粉炭の燃焼によって形成される微粉炭火炎Sb(炭素燃料火炎)が形成される。
【0029】
すなわち、火炉1において対向する2つの炉壁に設けられた各バーナM11~M33、N11~N33は、アンモニアの燃焼によるアンモニア火炎Saよりも火炉1の炉壁の近くに微粉炭火炎Sbが生成されるように微粉炭を噴射する。換言すると、各バーナM11~M33、N11~N33は、アンモニア火炎Saが微粉炭火炎Sbよりも火炉1の炉壁から遠ざかるようにアンモニアを噴射する。
【0030】
続いて、本第1実施形態に係る複合燃焼炉A及びボイラの動作について詳しく説明する。
この複合燃焼炉A及びボイラでは、各々のバーナM11~M33、N11~N33にアンモニア供給装置3からアンモニアが供給され、また微粉炭供給装置4から微粉炭が供給される。
【0031】
そして、各々のバーナM11~M33、N11~N33から火炉1内にアンモニア及び微粉炭が噴射されて燃焼することにより、火炉1内に燃焼熱を伴った燃焼ガスが発生する。そして、この燃焼ガスが火炉1内を上昇して熱交換機器2に作用することにより、燃焼ガスの燃焼熱によって水が気化して水蒸気が発生する。ボイラは、このようにして発生させた水蒸気を発電機等の外部機器に供給する。なお、熱交換機器2と熱交換された後の燃焼ガスは、火炉1から煙道を経由して外気に放出される。
【0032】
ここで、本第1実施形態に係る複合燃焼炉A及びボイラでは、各々のバーナM11~M33、N11~N33は、アンモニア火炎Saの周りに微粉炭火炎Sbが形成されるようにアンモニア及び微粉炭を火炉1内に噴射する。周知のようにアンモニアは、微粉炭よりも燃焼性が低く、一般に燃え難いが、燃焼性に優れた微粉炭がアンモニアより先行して燃焼することにより、火炉1内に噴射されたアンモニアの周囲には、微粉炭の燃焼によって微粉炭火炎Sbが形成される。
【0033】
この微粉炭火炎Sbは、アンモニアよりも炭素濃度が高い微粉炭の燃焼によって形成されたものであり、よって輝度がアンモニア火炎Saの輝度よりも高い。また、このような微粉炭火炎Sbは、各々のバーナM11~M33、N11~N33について、輝度が比較的低いアンモニア火炎Saを取り囲むように形成されるので、火炉1の炉壁には輝度が比較的高い微粉炭火炎Sbによる輻射熱が主に照射される。
【0034】
すなわち、第1実施形態によれば、アンモニアと微粉炭とを同時に燃焼させるに際して、微粉炭のみを燃料として燃焼させる場合に比較して、火炉1の炉壁における火炎の放射率の低下を抑制することが可能である。したがって、この第1実施形態によれば、微粉炭のみを燃料として燃焼させる場合に対してボイラの収熱性能の低下を抑制することが可能である。
【0035】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る複合燃焼炉B及び当該複合燃焼炉Bを備えるボイラについて、図3図5を参照して説明する。なお、図3図5では、上述した図1及び図2に示した構成要素と同一の構成要素には同一符号を付している。
【0036】
本第2実施形態に係る複合燃焼炉Bは、第1実施形態に係る複合燃焼炉Aと同一の構成要素を備えているが、各々のバーナM11~M33、N11~N33に対するアンモニア(低炭素燃料)及び微粉炭(炭素燃料)の供給が第1実施形態に係る複合燃焼炉Aとは異なっている。この複合燃焼炉Bは、第1実施形態に係る複合燃焼炉Aと同様にアンモニア供給装置3及び微粉炭供給装置4を備えているが、図3図5では、アンモニア供給装置3及び微粉炭供給装置4を便宜上省略している。
【0037】
図3図5を対比すると分かるように、本第2実施形態に係る複合燃焼炉Bは、一方側の炉壁において、アンモニアを噴射する1つのバーナM22の周囲に微粉炭を噴射する8つ(複数)のバーナM11~M21、M23~M33が配置されている。また、他方側の炉壁においては、アンモニアを噴射する1つのバーナN22の周囲に微粉炭を噴射する8つ(複数)のバーナN11~N21、N23~N33が配置されている。
【0038】
すなわち、この複合燃焼炉Bでは、バーナM22,N22が本発明における第1のバーナであり、またバーナM11~M21、M23~M33,N11~N21、N23~N33が本発明における第2のバーナである。
【0039】
このような複合燃焼炉Bでは、図4に示すように、2つのバーナM22、N22からアンモニアが噴射されることによって、火炉1内のバーナM22、N22に対応する位置にアンモニア火炎Saが形成される。また、図3図5に示すように、他のバーナM11~M13、M21、M23、M31~M33、N11~N13、N21、N23、N31~N33から微粉炭(炭素燃料)が噴射されることによって、火炉1内のバーナM11~M13、M21、M23、M31~M33、N11~N13、N21、N23、N31~N33に対応する位置に微粉炭火炎Sbが形成される。
【0040】
すなわち、この第2実施形態では、対向する両方の炉壁において、輝度が比較的低いアンモニア火炎Saを取り囲むように輝度が比較的高い微粉炭火炎Sbが形成されるので、火炉1の炉壁には微粉炭火炎Sbによる輻射熱が主に照射される。したがって、このような第2実施形態によれば、上述した第1実施形態に係る複合燃焼炉Aと同様に、アンモニアと微粉炭とを同時に燃焼させるに際して、火炉1の炉壁における火炎の放射率の低下を抑制することが可能である。
【0041】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記各実施形態では、炭素燃料として微粉炭を採用し、低炭素燃料としてアンモニアを採用したが、本発明はこれに限定されない。炭素燃料と比べて低炭素燃料の炭素濃度が低ければよく、低炭素燃料として微粉炭以外の燃料を採用してもよいし、低炭素燃料としてアンモニア以外の燃料を採用してもよい。例えば、炭素燃料として微粉炭を採用した場合に、低炭素燃料としてバイオマスやメタンや水素を採用してもよい。また、例えば炭素燃料としてバイオマスを採用し、低炭素燃料としてアンモニアや水素を採用してもよい。
【0042】
(2)上記各実施形態では、ボイラの複合燃焼炉A、Bに本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、二次元状に配置される複数のバーナを備える複合燃焼炉であれば、ボイラ以外にも適用可能である。
【0043】
(3)上記各実施形態では、火炉1の下部において平行に対向する炉壁に各々9個のバーナM11~M33、N11~N33を設けたが、本発明はこれに限定されない。本発明における複数のバーナの個数は9個以外でもよく、また配置は二次元状に配置されていれば直交配置でなくてもよい。例えば同心円状に設けてもよい。
【0044】
(4)上記各実施形態では、バーナM11~M33、N11~N33から噴射する微粉炭あるいは/及びアンモニアの噴射速度について言及しなかったが、例えばアンモニアの噴射速度を微粉炭の噴射速度よりも大きく設定することにより、アンモニア火炎Saを微粉炭火炎Sbよりも火炉1の奥側(中心側)に形成させても良い。
【0045】
(5)上記各実施形態では、火炉1の対向する二壁面に微粉炭あるいは/及びアンモニアを噴射するバーナM11~M33、N11~N33を設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、火炉の角部(4ヶ所)に上下方向に延在すると共に所定間隔の燃料噴射孔を設け、これら燃料噴射孔から炉壁に対して所定の噴射角度で燃料を噴射することにより火炉内に旋回流を形成する燃料噴射形態を採用し、この燃料噴射形態においてアンモニアの噴射角度を微粉炭の噴射角度よりも大きく設定することによりアンモニア火炎を微粉炭火炎の内側(火炉の中心側)に形成させるようにしてもよい。
【0046】
(6)上記各実施形態では、火炉1の対向する二壁面に微粉炭あるいは/及びアンモニアを噴射するバーナM11~M33、N11~N33を設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、アンモニアを噴射するバーナのみを上記二壁面に直交する壁面に配置してもよい。また、火炉においてバーナの上方(ガス流れの下流側)に二段燃焼用の空気供給ポートを備える形態のボイラでは、この空気供給ポートからアンモニアを噴射してもよい
【0047】
(7)上記第1実施形態では個々のバーナM11~M33、N11~N33を三重管状 に形成したが、本発明はこれに限定されない。バーナM11~M33、N11~N33の構造としては二重状の管状であれば十分である。
【符号の説明】
【0048】
A、B 複合燃焼炉
M11~M33、N11~N33 バーナ
Sa アンモニア火炎
Sb 微粉炭火炎
1 火炉
2 熱交換機器
3 アンモニア供給装置
4 微粉炭供給装置
図1
図2
図3
図4
図5