(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】全ネジカッタ
(51)【国際特許分類】
B23D 29/00 20060101AFI20220331BHJP
B23D 33/02 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B23D29/00 A
B23D33/02 C
(21)【出願番号】P 2017153546
(22)【出願日】2017-08-08
【審査請求日】2020-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】高萩 耕司
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-202418(JP,A)
【文献】特開平05-318328(JP,A)
【文献】実開昭59-116160(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 29/00-29/02
B23B 13/00-13/12
B23D 33/02
B23Q 3/00- 3/08
B25B 5/00- 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動機構を収容するハウジングの上側に、前記作動機構によって前後方向の作動軸を中心に剪断動作する一対の切断刃が上方へ突出して設けられ、前記ハウジングの上面で前後方向に位置決めされる
全ネジボルトを、前記一対の切断刃によって剪断加工可能とした
全ネジカッタであって、
前記切断刃による切断位置の後方延長線上に、径が異なる少なくとも2種類の前記
全ネジボルトに対応して位置決め可能な少なくとも2つのガイド面を備えたガイド部材が設けられ、
前記ガイド部材は、前後方向の軸によって回転可能に支持され、
前記2つのガイド面は、前記軸周りで前記ガイド部材の外面へ一体に形成されると共に、
前記ガイド部材は、前記2つのガイド面のうちの一方のガイド面と直交するガイド片が形成される横断面L字状を有し、
前記軸の径方向で前記軸の中心から
前記一方のガイド面までの距離は、前記径方向で前記軸の中心から
前記2つのガイド面のうちの他方のガイド面までの距離よりも大きく設定されて、
前記ガイド部材は、前記軸を中心に回転させることで、前記一方のガイド面が上面となって第1の径の前記
全ネジボルトが前記一方のガイド面に当接可能な第1のガイド姿勢と、前記他方のガイド面が上面となって前記第1の径よりも大きい第2の径の前記
全ネジボルトが前記他方のガイド面に当接可能な第2のガイド姿勢とが少なくとも選択可能であることを特徴とする
全ネジカッタ。
【請求項2】
前記
ガイド片は、前記第1のガイド姿勢で上方へ突出し、前記第1の径の前記
全ネジボルトの側面
に当接することを特徴とする請求項1に記載の
全ネジカッタ。
【請求項3】
前記ハウジングに、前記ガイド部材の前記第2のガイド姿勢で前記第2の径の前記
全ネジボルトの側面が当接可能な固定ガイド板が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の
全ネジカッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全ネジボルトを切断するための全ネジカッタに関する。
【背景技術】
【0002】
棒材切断機は、特許文献1乃至3に例示されるように、例えば固定刃と可動刃とからなる一対の切断刃を備えてハウジングから先端を露出させ、ハウジング内に設けたモータ及びカムを介して切断刃を剪断動作させて全ネジボルト等の棒材を切断可能としている。
このような棒材切断機においては、切断刃に対して棒材を固定(位置決め)するガイド部材が設けられる。特に、特許文献1では、径が異なる棒材を切断刃の間で位置決めできるように、切断刃の後方に、ツマミネジ(ガイド部材)を直交方向にねじ込むことでハウジングとの間で全ネジボルトを固定する構造(
図3)が開示されている。また、特許文献2には、切断刃の側方に、固定ボルトによってスライド位置を調整可能なスライド板(ガイド部材)を設けて、ハウジング側の案内リブとスライド板の端部に立ち上げ形成した保持片との間で全ネジボルトを挟持して固定する構造が開示されている。さらに、特許文献3には、ハウジングに、全ネジボルトの異なる径に対応する複数の切断支持部を備えた支持具(ガイド部材)を着脱可能に設けて、角度を変えて装着することで、使用する切断支持部を選択できるようにした発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-299641号公報
【文献】特開平10-202418号公報
【文献】特開2004-291134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2の構造では、全ネジボルトの径に合わせて調整するために、ツマミネジを回転させたり固定ボルトを回転させたりする操作が必要となるため、位置決めに手間や時間がかかる。特許文献3では、支持具を一旦取り外して装着し直す必要が生じ、これも手間や時間がかかって調整が面倒となっている。
【0005】
そこで、本発明は、全ネジボルトの径に合わせたガイド部材の調整をワンタッチで簡単に行うことができ、操作性に優れる全ネジカッタを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、作動機構を収容するハウジングの上側に、作動機構によって前後方向の作動軸を中心に剪断動作する一対の切断刃が上方へ突出して設けられ、ハウジングの上面で前後方向に位置決めされる全ネジボルトを、一対の切断刃によって剪断加工可能とした全ネジカッタであって、
切断刃による切断位置の後方延長線上に、径が異なる少なくとも2種類の全ネジボルトに対応して位置決め可能な少なくとも2つのガイド面を備えたガイド部材が設けられ、
ガイド部材は、前後方向の軸によって回転可能に支持され、
2つのガイド面は、軸周りで前記ガイド部材の外面へ一体に形成されると共に、ガイド部材は、2つのガイド面のうちの一方のガイド面と直交するガイド片が形成される横断面L字状を有し、
軸の径方向で軸の中心から一方のガイド面までの距離は、径方向で軸の中心から2つのガイド面のうちの他方のガイド面までの距離よりも大きく設定されて、
ガイド部材は、軸を中心に回転させることで、一方のガイド面が上面となって第1の径の全ネジボルトが一方のガイド面に当接可能な第1のガイド姿勢と、他方のガイド面が上面となって第1の径よりも大きい第2の径の全ネジボルトが他方のガイド面に当接可能な第2のガイド姿勢とが少なくとも選択可能であることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、ガイド片は、第1のガイド姿勢で上方へ突出し、第1の径の全ネジボルトの側面に当接することを特徴とする。
請求項3に記載の構成は、請求項1又は2の構成において、ハウジングに、ガイド部材の第2のガイド姿勢で第2の径の全ネジボルトの側面が当接可能な固定ガイド板が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、ガイド部材のガイド姿勢を選択するだけで、全ネジボルトの径に合わせたガイド部材の調整をワンタッチで簡単に行うことができる。よって、操作性に優れたものとなる。
また、ガイド部材は、前後方向を軸として回転させることでガイド姿勢が選択可能であるので、回転操作によってガイド姿勢の選択が容易に行え、少なくとも2種類の径の全ネジボルトに対して簡単に位置決めが可能となる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加えて、ハウジングに、ガイド部材の第2のガイド姿勢で第2の径の全ネジボルトの側面が当接可能な固定ガイド板が設けられているので、当該全ネジボルトを確実に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】ゲージを装着した全ネジカッタの側面図である。
【
図6】前カバーを省略した状態の全ネジカッタの正面図である。
【
図7】LEDホルダの説明図で、(A)は後方からの斜視、(B)は前方からの斜視をそれぞれ示す。
【
図8】LEDホルダの説明図で、(A)は正面、(B)は平面、(C)は左側面、(D)は右側面をそれぞれ示す。
【
図9】前カバー及び作動機構を省略してLEDホルダの組み付け状態を示す説明図で、(A)は正面、(B)は側面をそれぞれ示す。
【
図10】LEDホルダによる透明部分を示す説明図で、(A)は平面、(B)は側面をそれぞれ示す。
【
図11】作動機構の閉動作を示す説明図で、(A)は中央縦断面、(B)はA-A線断面をそれぞれ示す。
【
図12】ガイド部材の前端部分での断面説明図で、(A)は第1のガイド姿勢、(B)は第2のガイド姿勢をそれぞれ示す。
【
図13】大径の全ネジボルトをセットした状態の説明図で、(A)は側面、(B)は背面をそれぞれ示す。
【
図14】小径の全ネジボルトをセットした状態の説明図で、(A)は側面、(B)は背面をそれぞれ示す。
【
図15】カバーを装着した全ネジカッタの側面図である。
【
図17】カバーの説明図で、(A)は正面、(B)は平面、(C)は底面、(D)は右側面をそれぞれ示す。
【
図18】大径の全ネジボルトの定置切断状態を示す側面図である。
【
図19】大径の全ネジボルトの定置切断状態を示す全ネジボルト部分での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~4に、棒材切断機の一例である全ネジカッタを示す。
図1は側面、
図2は正面、
図3は背面、
図4は中央縦断面をそれぞれ示している。
この全ネジカッタ1は、前後方向の本体部2と、本体部2から斜め後ろへ下向きに延びるハンドル部3と、ハンドル部3の下端に設けられるバッテリー装着部4とを備える。ハンドル部3の前方で本体部2の前部とバッテリー装着部4の前部との間には、支持バー5が架設されている。全ネジカッタ1のハウジング6は、本体部2とハンドル部3とバッテリー装着部4と支持バー5とを連接した左右一対の半割ハウジング6a,6bを左右からネジ止めし、本体部2を形成する左右の半割ハウジング6a,6bの前方から、別体の前カバー7をネジ止めすることで形成される。本体部2の後部左側面には、吊り下げ用のフック8の一端が回転可能に連結されている。このフック8は、本体部2の外面に沿って前方へ引き回されて右側面に設けた係止部9に係止させる収納位置から、係止部9から外して後方へ突出させる使用位置へ回転可能となっている。
【0010】
本体部2の前部上面には、切断刃としての後述する固定刃60と可動刃61とにより、棒材としての全ネジボルトを切断する切断部10が設けられている。切断部10の左右には、半割ハウジング6a,6bと前カバー7とにより、正面視が台形状で上方に突出する右側ガード部11と、正面視が三角形状で右側ガード部11よりも低い高さで上方に突出する左側ガード部12とが形成されて、固定刃60と可動刃61とを外側から覆っている。
右側ガード部11の上部には、六角孔13が前後方向に貫通形成されて、この六角孔13に、
図5に示すように、全ネジボルトの長さ方向での切断位置を決めるための横断面六角形状の棒状のゲージ14を遊挿可能となっている。右側ガード部11のハウジング6b側の右側面には、六角孔13を貫通させたゲージ14を外側から押圧して固定するツマミネジ15がねじ込み可能となっている。このゲージ14により、前端を壁に当接させて全ネジボルトを定寸切断したり、ゲージ14上に記された目盛りに合わせて切断したりすることができる。
また、右側ガード部11内には、
図6にも示すように、六角孔13内に外周面の一部が突出する円柱状のラバーピン16が設けられている。よって、六角孔13に遊挿されたゲージ14は、ツマミネジ15で固定しない状態でもラバーピン16に押圧されて仮止めされ、不意に六角孔13から抜け落ちることが防止される。
【0011】
左側ガード部12の後側の一部は、前カバー7と左側の半割ハウジング6aとの間に配置されるLEDホルダ17により形成されている。このLEDホルダ17は、透明な樹脂で一体形成され、
図7,8に示すように、半割ハウジング6aと前カバー7との間に挟持されて上面が三角形状となり、可動刃61の後方に位置する後方部分としての左右方向の後壁部18と、後壁部18の上部で三角形状に沿って形成され、後壁部18から前側へ突出して可動刃61の上方に位置する上方部分としての上壁部19と、後壁部18の右側で内側に突出する水平な仕切部20とを備えてなる。後壁部18の下部には、前カバー7を半割ハウジング6aにネジ止めするために半割ハウジング6aに設けられたネジボス22(
図9)が貫通する透孔21が形成されると共に、後面には、保持片23,23・・が突設されている。この保持片23,23・・で囲まれる空間で半割ハウジング6aとの間に、光源としてのLED25を内側に向けたLED基板24(
図6,9)が保持されている。
【0012】
このLEDホルダ17は、
図9に示すように、半割ハウジング6aの前側で後壁部18を、透孔21にネジボス22を貫通させて、半割ハウジング6aに設けた横向きのリブ26に載置させた状態で、前カバー7を組み付けることで、半割ハウジング6aと前カバー7との間で挟持固定される。この状態で、
図10に示すように、上壁部19が、前カバー7の上部に設けた前側切欠き27に嵌合して前カバー7の一部を形成すると共に、仕切部20が、半割ハウジング6aの上面において切断部10に設けた内側切欠き28に嵌合して半割ハウジング6aの一部を形成する。
こうしてLEDホルダ17を組み付けた状態では、
図10に斜線で示すように、透明な後壁部18と上壁部19、仕切部20とが本体部2の外部に表れ、これらの透明部分を介して切断部10、特に可動刃61の動きを外から容易に視認できる。また、LED25の発光により、切断部10を照明することができるため、暗所の作業でも視認性は確保できる。
【0013】
一方、ハンドル部3内の上側には、
図4に示すように、トリガ30を突出させたスイッチ29が収容され、スイッチ29の上側には、正逆切替ボタン31が設けられている。
また、バッテリー装着部4の内部には、回路基板からなるコントローラ32が収容されて、その下方に設けた端子台33に、電源となるバッテリーパック34が前方からスライド装着可能となっている。コントローラ32の回路基板には、ブラシレスモータ40の端部に設けられたセンサ回路基板で検知されたロータ44の回転位置情報に基づいて制御信号を送信する制御回路、この制御回路から受信した制御信号に基づいてブラシレスモータ40の電流をスイッチングする駆動回路、及びバッテリーパック34の状態の検出結果に応じて過放電又は過電流状態とならないようにブラシレスモータ40への電力供給を遮断するオートストップ回路等が搭載されている。
【0014】
そして、
図4及び
図11に示すように、本体部2には、後方から、ブラシレスモータ40、減速機構41、作動機構42が順番に収容されている。
ブラシレスモータ40は、ステータ43と、ステータ43を貫通するロータ44とを有し、ロータ44の中心に設けた回転軸45を前向きにした姿勢で本体部2内に保持されている。ステータ43の後側で回転軸45には、遠心ファン46が設けられ、本体部2の左右の側面でステータ43の前側には、吸気口47,47・・(
図1,5等)が、遠心ファン46の外側には、排気口48,48・・(
図1,5等)がそれぞれ形成されている。回転軸45の前端には、ピニオン49が固定されている。
【0015】
減速機構41は、本体部2内に保持されるギヤハウジング50内において、遊星歯車52,52を保持するキャリア51,51・・を軸方向に三段配置してなる遊星歯車式で、一段目のキャリア51の遊星歯車52を、回転軸45のピニオン49に噛合させている。三段目のキャリア51の軸心には、出力ギヤ53が一体に連結されている。出力ギヤ53は、後端がギヤハウジング50に、前端が、ギヤハウジング50に前方から固定される支持板54に、それぞれ軸受55,55を介して支持されている。
【0016】
作動機構42は、
図6,11にも示すように、固定刃60と、可動刃61と、可動刃61が固定される揺動体62と、揺動体62を支持する揺動軸63と、揺動体62及び揺動軸63に支持されるリターンプレート64と、可動刃61を開閉動作させるカム65とを備えている。
固定刃60は、切断部10において、本体部2の上面よりも上側で右側ガード部11の下部に、半円状の刃部60aを内側へ向けた姿勢で固定されている。
可動刃61は、固定刃60よりも前側で揺動体62の上部後面に、半円状の刃部61aを内側へ向けて固定されている。
揺動体62は、出力ギヤ53の上側でギヤハウジング50及び支持板54により前後方向に支持される揺動軸63によって回転可能に支持され、揺動軸63の左側で下端には、カムローラ66が、連結軸67を介して回転可能に固定されている。
【0017】
リターンプレート64は、揺動体62の前側に位置して上部が揺動軸63によって回転可能に支持され、左側が連結軸67によって揺動体62と一体に固定されている。また、リターンプレート64の下部には、半月状のカム孔68が形成されている。
カム65は、出力ギヤ53の下方でギヤハウジング50及び支持板54によって前後方向に支持されて回転可能なカムシャフト69を有し、カムシャフト69に結合された大径の減速ギヤ70が、出力ギヤ53と噛合している。カム65は、支持板54の前方でカムシャフト69の前端に、偏心位置で一体に形成され、周面にカム面71を有する正面視半月状で、カム面71の円弧部分寄りの前面には、リターンプレート64のカム孔68の内面に当接するガイドローラ72が設けられている。
【0018】
この作動機構42において、
図6のように、可動刃61が固定刃60から離れる開状態では、カム65は右側の回転位置にあってガイドローラ72をカム孔68の直線部分に当接させることで、リターンプレート64を介して揺動体62を開放位置に保持している。ここからカム65が正面視で正回転(
図6で見て左回転)すると、カムローラ66がカム65のカム面71に乗り上がってカム面71の円弧部分を相対的に転動することで、揺動体62が揺動軸63を中心に左回転し、可動刃61を固定刃60へ近づける閉動作を行う。そして、カムローラ66がカム面71の円弧部分の反対側に達すると、
図11に示すように、可動刃61は固定刃60に前側で重なって刃部60a,61a同士を交差させる。ここからカム65が回転を続けると、ガイドローラ72がリターンプレート64のカム孔68内を転動してリターンプレート64を介して揺動体62を右回転させ、可動刃61を固定刃60から離間させる開動作を行わせる。
【0019】
そして、本体部2の上面で切断部10の後方には、全ネジボルトの位置決め用のガイド部75が設けられている。このガイド部75は、
図1,3~4,10等に示すように、固定刃60の後方で本体部2の半割ハウジング6bに立設された固定ガイド板76と、固定ガイド板76の内側に設けられたガイド部材77とを備えている。
固定ガイド板76は、前後方向に立設された壁体で、前後の内面は、
図13に示すように、大径の全ネジボルトB1を固定刃60の刃部60aにセットした状態で、当該全ネジボルトB1の側面が当接するように、刃部60aの右側内面の後方延長上に位置する外ガイド面78,78となっている。外ガイド面78,78の間は、右側へ凹む嵌合部79となっている。
【0020】
ガイド部材77は、
図4に示すように、固定ガイド板76の内側で本体部2の上面に凹設された収容部80内で、前後方向の軸81によって回転可能に支持されている。ガイド部材77における回転中心との偏心位置には、固定ガイド板76の嵌合部79に前後位置を合わせたガイド片82が突設されて、ガイド部材77は横断面L字形状を有している。このガイド片82により、ガイド部材77の外面には、ガイド片82の内面に位置する第1のガイド面83と、その第1のガイド面83と直交する第2のガイド面84と、ガイド片82の外面に位置する第3のガイド面85とが形成されている。
このガイド部材77は、
図12(A)に示すように、ガイド片82が収容部80から上方へ突出して固定ガイド板76の嵌合部79に嵌合し、第1のガイド面83が上下方向に、第2のガイド面84が左右方向にそれぞれ露出する第1のガイド姿勢と、
図12(B)に示すように、ガイド片82が収容部80内に退避して両ガイド面83,84が露出しない第2のガイド姿勢との間で回転操作可能となっている。
【0021】
第1のガイド姿勢では、嵌合部79に嵌合するガイド片82は、固定ガイド板76よりも上方に突出し、第1のガイド面83と第2のガイド面84とは、
図14に示すように、小径の全ネジボルトB2を固定刃60の刃部60aにセットした状態で、当該全ネジボルトB2の側面と下面とにそれぞれ当接するようにその後方延長上に位置する。第1のガイド面83と第2のガイド面84との間は、全ネジボルトB2の外形に合わせたR形状となっている。
一方、第2のガイド姿勢では、第1のガイド面83の裏側に形成される第3のガイド面85が本体部2の上面と連続して、
図13に示すように、大径の全ネジボルトB1をセットした状態で、第3のガイド面85はハウジング6と同一面となり、ハウジング6と共に、全ネジボルトB1の下面が当接するようにその後方延長上に位置している。
なお、
図12に示すように、ガイド部材77の前端面には、位置決め凹部86,86が形成されて、本体部2における収容部80の前部内面には、ガイド部材77の第1、第2のガイド姿勢で位置決め凹部86,86にそれぞれ嵌合してガイド部材77を位置決めする位置決め凸部87が突設されている。
【0022】
以上の如く構成された全ネジカッタ1においては、まず、大径の全ネジボルトB1を切断する場合、ガイド部75のガイド部材77を第2のガイド姿勢に回転させる。すると、前述のように、固定刃60の刃部60aの後方延長上に、固定ガイド板76の外ガイド面78,78とガイド部材77の第3のガイド面85(及びハウジング6の上面)とが位置する。よって、
図13に示すように大径の全ネジボルトB1を固定刃60と固定ガイド板76及びガイド部材77とにあてがって位置決めすることができる。
この状態でトリガ30を押し操作すると、スイッチ29がONしてブラシレスモータ40が駆動し、回転軸45が回転して減速機構41を介して出力ギヤ53を回転させる。これにより、減速ギヤ70を介してカムシャフト69が回転し、カム65が正回転することで、前述のように揺動体62を揺動させて可動刃61を閉動作させる。よって、固定刃60との間で全ネジボルトB1を切断することができる。その後、カム65が正回転を続けることで可動刃61は開動作する。
【0023】
一方、小径の全ネジボルトB2を切断する場合、ガイド片82を引き出してガイド部材77を第1のガイド姿勢に回転させる。すると、固定刃60の刃部60aの後方延長上に、ガイド部材77の第1のガイド面83と第2のガイド面84とが露出する。よって、
図14に示すように小径の全ネジボルトB2を固定刃60とガイド部材77のガイド片82とにあてがって位置決めすることができる。
この状態でトリガ30を押し操作すると、同様に揺動体62が揺動して可動刃61が閉動作し、固定刃60との間で全ネジボルトB2を切断することができる。その後、カム65が正回転を続けることで可動刃61は開動作する。
こうして全ネジボルトB1,B2の切断作業を続けている間は、透明なLEDホルダ17によって左側ガード部12の外側から切断部10が視認できる。LED25はスイッチ29のONと同時に点灯するため、暗所でも容易に視認できる。また、回転軸45の回転によって遠心ファン46が回転し、吸気口47から外気を吸い込んでブラシレスモータ40を通過させ、排気口48から排出される。これにより、ブラシレスモータ40を冷却することができる。
【0024】
なお、
図15に示すように、本体部2の前側上部には、右側ガード部11と左側ガード部12とに上方から嵌合されて切断部10を覆うカバー90が装着可能となっている。このカバー90は、
図16,17に示すように、上面が左右のガード部11,12の上部に合わせて形成され、前後面が平坦面となって下面が開口するキャップ状で、前後面には、大径の全ネジボルトB1に対応する深溝部91と、小径の全ネジボルトB2に対応する浅溝部92とが、上下方向に凹設されている。
ここでは、全ネジカッタ1を、右側を下にして平坦面に横置きして定置切断する際、本体部2から取り外したカバー90を全ネジカッタ1の後方に横置きすれば、ガイド部75の後方で全ネジボルトB1,B2を水平に支持できるようになっている。
【0025】
例えば、大径の全ネジボルトB1を定置切断する場合は、
図18,19に示すように、ガイド部材77を第2のガイド姿勢とした状態で、カバー90を、深溝部91を上にして固定ガイド板76の後方延長上に位置するように平坦面Sに横置きすれば、外ガイド面78,78と深溝部91との間に全ネジボルトB1を架け渡して水平に支持することができ、安定して切断作業が行える。小径の全ネジボルトB2を定置切断する場合は、ガイド部材77を第1のガイド姿勢とした状態で、カバー90をひっくり返し、浅溝部92を上にして平坦面Sに横置きすれば、ガイド片82と浅溝部92との間に全ネジボルトB2を架け渡して水平に支持することができる。但し、深溝部91と浅溝部92とはカバー90の前後面以外の面に設けてもよいし、互いに異なる面ではなく同じ面に並べて設けてもよい。
【0026】
このように、上記形態の全ネジカッタ1によれば、固定刃60と可動刃61とによる切断位置の延長線上に、径が異なる複数の全ネジボルトB1,B2に対応して位置決め可能な第1~第3のガイド面83~85を備えたガイド部材77が、各ガイド面83~85の位置がそれぞれ異なる第1、第2のガイド姿勢を選択可能に設けられていることで、ガイド部材77のガイド姿勢を選択するだけで、全ネジボルトB1,B2の径に合わせたガイド部材77の調整をワンタッチで簡単に行うことができる。よって、操作性に優れたものとなる。
特にここでは、固定刃60及び可動刃61は、作動機構42を収容するハウジング6から上方へ突出し、ガイド部材77は、全ネジボルトB2の側面に当接する上下方向の第1のガイド面83と、全ネジボルトB2の下面に当接する左右方向の第2のガイド面84とをそれぞれ備えて、第1、第2のガイド姿勢の選択により第1、第2のガイド面83,84の位置を変更可能であるので、小径の全ネジボルトB2であってもガイド部材77で簡単に位置決めすることができる。
【0027】
また、ガイド部材77は、第1、第2のガイド姿勢の選択により、第1、第2のガイド面83,84の位置を同時に変更可能であるので、全ネジボルトB1,B2の径に合わせたガイド姿勢の変更を容易に行うことができる。
さらに、第1のガイド面83と第2のガイド面84とは一体に形成されていることで、2つのガイド面83,84を備えたガイド部材77を簡単に形成可能となる。
加えて、ガイド部材77は、第1のガイド面83と第2のガイド面84とが直交して形成される横断面L字形状を有し、前後方向を軸として回転させることで第1、第2のガイド姿勢が選択可能であるので、回転操作によってガイド姿勢の選択が容易に行える。
【0028】
そして、ガイド部材77は、第1のガイド面83と第2のガイド面84とが露出して第1の径の全ネジボルトB2が当接可能な第1のガイド姿勢と、第1のガイド面83と第2のガイド面84とがハウジング6内に退避して、新たに露出する第3のガイド面85に第1の径よりも大きい第2の径の全ネジボルトB1が当接可能な第2のガイド姿勢と、に選択可能であることで、2種類の径の全ネジボルトB1,B2に対して簡単に位置決めが可能となる。
特に、ハウジング6に、ガイド部材77の第2のガイド姿勢で全ネジボルトB1の側面が当接可能な固定ガイド板76が設けられているので、全ネジボルトB1を確実に位置決めすることができる。
【0029】
なお、ガイド部材に係る発明において、上記形態では、ガイド部材の第1のガイド面と第2のガイド面とを直交状に形成しているが、ガイド面はこの形状に限らず、例えば全ネジボルトの外形に沿ったU字状や半円状としてもよい。ガイド面の数も、例えばガイド片を位相を変えて増やすことで、各ガイド片の間にそれぞれガイド面を形成して、ガイド部材の回転操作で3種以上の全ネジボルトの径に合わせてガイド姿勢を選択することも可能である。
また、ガイド部材は回転操作に限らず、複数のガイド面を直線上或いは曲線上に並設した棒状のガイド部材を左右方向にスライド操作することで、全ネジボルトの径に合わせてガイド姿勢を選択可能とすることも可能である。
さらに、ガイド部の位置も、ハウジングの上面に限らず、側面や前面にあっても本発明は適用可能であるし、固定ガイド板は省略することもできる。
【0030】
一方、上記形態の全ネジカッタ1によれば、ハウジング6に、可動刃61の外側を部分的に覆う左側ガード部12が形成されて、左側ガード部12における可動刃61の上方部分(LEDホルダ17の上壁部19)が透明であることで、切断部10が視認しやすくなって可動刃61の位置が分かりやすくなる。
特にここでは、左側ガード部12における可動刃61の後方部分(後壁部18)も透明であるので、可動刃61の位置が上方から一層分かりやすくなる。
また、左側ガード部12における透明な上壁部19と後壁部18とは連続しているので、透明部分が一体に表れてより視認性が高くなる。
【0031】
さらに、左側ガード部12における透明な上壁部19と後壁部18とは一体に形成されているので、透明部分の形成が容易となる。
加えて、可動刃61の近傍に、可動刃61の作動時に発光するLED25が設けられて、LED25の発光により、左側ガード部12におけるLEDホルダ17が発光することで、暗所でも切断部10及び可動刃61の視認性が確保できる。
そして、LED25は可動刃61に向けて発光し、左側ガード部12に、LED25と可動刃61との間に延びる仕切部20が設けられることで、ハウジング6内への異物の混入が防止される。
【0032】
なお、ガード部の透明に係る発明において、上記形態では、LEDホルダの全体を透明としているが、後壁部と上壁部とにおける一部のみを透明としてもよいし、上壁部のみを透明としてもよい。この場合、一体成形でなく、後壁部と上壁部、仕切部の透明部分をそれぞれ別体に形成して非透明部分に結合しても差し支えない。
また、LED等の光源は異なる場所に設けてもよいし、光源は省略してもよい。
さらに、上記形態では左側ガード部に透明部分を形成しているが、右側ガード部にも透明部分を形成してもよい。
【0033】
その他、各発明に共通して、モータはブラシレスモータに限らず、整流子モータやアウタロータ型であってもよいし、バッテリーパックを電源とするDC切断機に限らず、電源コードを備えるAC切断機であってもよい。切断対象も全ネジボルトに限らず、鉄筋や針金等の棒材も含まれる。切断刃の構成も、固定刃と可動刃とが左右逆であったり、両刃とも可動刃であったりしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1・・全ネジカッタ、2・・本体部、3・・ハンドル部、6・・ハウジング、6a,6b・・半割ハウジング、7・・前カバー、10・・切断部、11・・右側ガード部、12・・左側ガード部、17・・LEDホルダ、18・・後壁部、19・・上壁部、20・・仕切部、25・・LED、29・・スイッチ、32・・コントローラ、34・・バッテリーパック、40・・ブラシレスモータ、41・・減速機構、42・・作動機構、45・・回転軸、53・・出力ギヤ、60・・固定刃、60a・・刃部、61・・可動刃、61a・・刃部、62・・揺動体、63・・揺動軸、64・・リターンプレート、65・・カム、68・・カム孔、71・・カム面、75・・ガイド部、76・・固定ガイド板、77・・ガイド部材、78・・外ガイド面、80・・収容部、81・・軸、82・・ガイド片、83・・第1のガイド面、84・・第2のガイド面、85・・第3のガイド面、90・・カバー。