(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】シャント抵抗器
(51)【国際特許分類】
H01C 1/148 20060101AFI20220331BHJP
G01R 15/00 20060101ALI20220331BHJP
H01C 13/00 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
H01C1/148
G01R15/00 500
H01C13/00 J
(21)【出願番号】P 2017220343
(22)【出願日】2017-11-15
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】村上 建二
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド デクスター
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-181056(JP,A)
【文献】特表2003-518763(JP,A)
【文献】実開昭51-837(JP,U)
【文献】特開2016-053521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/148
G01R 15/00
H01C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗体と、
前記抵抗体を挟んで当該抵抗体に一体的に形成された一対の母材と、
前記母材の所定箇所の一部を所定形状に切断加工し、その切断加工した所定形状部分を前記抵抗体側に折り曲げ形成することによって、当該母材に起立状に立設固定された測定端子と、を有
し、
前記測定端子は、前記母材の長手方向に沿う中心軸線上に位置する所定箇所の一部を所定形状に切断加工し、その切断加工した所定形状部分を前記抵抗体側に折り曲げ形成することによって、当該母材に起立状に立設固定され、
前記母材は、前記所定形状に切断加工されている側とは反対に位置する前記母材の一側端部側の幅方向の幅よりも、前記所定形状に切断加工されている側に位置する前記母材の他側端部側の幅方向の幅が幅広に形成されてなるシャント抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャント抵抗器に関し、特に、電気自動車(EV車)、ハイブリット車(HV車)、プラグインハイブリット車(PHV車)等で使用される高電圧用途のバッテリーからモータ回路へ大電流が流れる電流経路の電流値を計測する際に用いられるシャント抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシャント抵抗器として、特許文献1に記載のようなシャント抵抗器が知られている。このシャント抵抗器は、抵抗体を挟んで抵抗体に一体的に形成された二つの板状の母材それぞれに貫通孔を形成し、その貫通孔内に第1端子部が挿入され、第2端子部が貫通孔内より突出する電圧検出端子が設けられているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のシャント抵抗器は、母材と電圧検出端子を別々に製造した上で、母材に電圧検出端子を接合(貫通孔内に電圧検出端子を挿入、あるいは、溶接等)しているため、この接合部分の抵抗が大きくなり、もって、抵抗が大きくなると、大電流を流した際、その部分の発熱が大きくなり、正確に電流値を計測することができない可能性があるといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、発熱を抑えることができるシャント抵抗器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0007】
請求項1の発明によれば、抵抗体(10)と、
前記抵抗体(10)を挟んで当該抵抗体(10)に一体的に形成された一対の母材(11A)と、
前記母材(11A)の所定箇所の一部を所定形状に切断加工し、その切断加工した所定形状部分(逆コ字形状部分11e)を前記抵抗体(10)側に折り曲げ形成することによって、当該母材(11A)に起立状に立設固定された測定端子(12)と、を有し、
前記測定端子(12)は、前記母材(11A)の長手方向に沿う中心軸線(O)上に位置する所定箇所の一部を所定形状に切断加工し、その切断加工した所定形状部分(逆コ字形状部分11e)を前記抵抗体(10)側に折り曲げ形成することによって、当該母材(11A)に起立状に立設固定され、
前記母材(11A)は、前記所定形状に切断加工されている側とは反対に位置する前記母材(11A)の一側端部(11a)側の幅方向の幅(W1)よりも、前記所定形状に切断加工されている側に位置する前記母材(11A)の他側端部(11c)側の幅方向の幅(W2)が幅広に形成されてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
請求項1に係る発明によれば、母材(11A)の所定箇所の一部を所定形状に切断加工し、その切断加工した所定形状部分(逆コ字形状部分11e)を抵抗体(10)側に折り曲げ形成することによって、当該母材(11A)に測定端子(12)を起立状に立設固定するようにしているから、従来のように、母材(11A)に対し、溶接等によって測定端子(12)を接合する必要がなくなる。しかして、本発明によれば、従来のシャント抵抗器に存する接合部分がなくなるため、接合部分の抵抗が大きくなることがなく、もって、発熱を抑えることができる。
また、請求項1に係る発明によれば、測定端子(12)は、母材(11A)の長手方向に沿う中心軸線(O)上に位置する所定箇所の一部を所定形状に切断加工し、その切断加工した所定形状部分(逆コ字形状部分11e)を抵抗体(10)側に折り曲げ形成することによって、当該母材(11,11A)に起立状に立設固定されているから、抵抗体(10)の発熱を抑えつつ均一化することができる。
さらに、請求項1に係る発明によれば、母材(11A)は、所定形状に切断加工されている側とは反対に位置する母材(11A)の一側端部(11a)側の幅方向の幅(W1)よりも、所定形状に切断加工されている側に位置する母材(11A)の他側端部(11c)側の幅方向の幅(W2)が幅広に形成されているから、母材の断面積を従来のシャント抵抗器の母材の断面積と同一にすることができ、もって、大電流を流した際何らかの問題が発生する可能性を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係るシャント抵抗器の斜視図、(b)は、同実施形態に係るシャント抵抗器の正面図である。
【
図2】同実施形態に係るシャント抵抗器の製造工程を示し、(a)は、一対の母材のうち一方の母材を示し、特に、この母材を加工した状態を示す平面図、(b)は、(a)に示す母材の断面図を示し、特に、逆コ字形状部分を起立状に折り曲げ形成した際の断面図、(c)は、(b)に示す母材の他側端部に抵抗体を溶接した状態を示す断面図である。
【
図3】同実施形態に係るシャント抵抗器の抵抗体の発熱を計測するにあたっての実験方法を説明するための概略斜視図である。
【
図4】(a)は、同実施形態に係るシャント抵抗器の抵抗体の発熱を計測した結果を示し、(b)は、母材の長手方向に沿う中心軸線上の位置からずれた位置に貫通孔を上下方向に貫通して切断加工し、測定端子を形成した場合のシャント抵抗器の抵抗体の発熱を計測した結果を示し、(c)は、母材に測定端子を形成しない場合のシャント抵抗器の抵抗体の発熱を計測した結果を示す図である。
【
図5】他の実施形態に係るシャント抵抗器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るシャント抵抗器の一実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0014】
本実施形態に係るシャント抵抗器は、特に、電気自動車(EV車)、ハイブリット車(HV車)、プラグインハイブリット車(PHV車)等で使用される高電圧用途のバッテリーからモータ回路へ大電流が流れる電流経路の電流値を計測する際に用いられるもので、
図1(a),(b)に示すように、シャント抵抗器1は、抵抗体10と、抵抗体10を挟むように抵抗体10と一体的に形成された一対の母材11と、一対の母材11それぞれの所定箇所の一部を所定形状に切断加工し、その切断加工した所定形状部分を抵抗体10側に折り曲げ形成することによって当該母材11のそれぞれに起立状に立設固定されている測定端子12とで構成されている。抵抗体10は、
図1(a),(b)に示すように、例えば、厚み約3mm~5mmの厚板状で短尺の矩形状に形成されており、例えば、Cu-Mn系合金、Cu-Ni系合金、Ni-Cr系合金、等で形成されていることが好ましく、50μΩから200μΩ程度の抵抗体である。このように形成される抵抗体10の両側面10a,10bには、
図1(a),(b)に示すように、図示左に位置する母材11の他側端部11cが抵抗体10の一方の側面10aに溶接により接合され、図示右に位置する母材11の他側端部11cが抵抗体10の他方の側面10bに溶接により接合されている。これにより、一対の母材11が、抵抗体10を挟むように抵抗体10と一体的に形成されることとなる。
【0015】
一方、母材11は、所謂バスパーと呼ばれるもので、銅等の金属からなり、
図1(a)に示すように、例えば、厚み約3mm~5mmの厚板状で、長尺の矩形状に形成されている。そしてこの母材11の一側端部11a側(抵抗体10の接合部と反対側)には、図示しない絶縁ボルトの軸部を通過させるための円形状のボルト孔11bが上下方向に貫通して形成されている。
【0016】
一方、測定端子12は、電流検出用のプリント基板を実装可能なものであって、
図1(a)に示すように、母材11の長手方向に沿う中心軸線O上に位置する母材11の他側端部11c側(抵抗体10の接合部側)の一部に、長手方向に沿うように逆コ字形状の貫通孔11dを上下方向に貫通して切断加工し、その切断加工によって形成される逆コ字形状部分11eを、その逆コ字形状部分11eの基端部11e1を基点として、抵抗体10側に折り曲げ形成することによって、母材11のそれぞれに起立状に立設固定されるものである。
【0017】
ここで、上記のように構成されるシャント抵抗器1の製造方法を、
図2を参照して具体的に説明する。
【0018】
まず、
図2(a)に示すように、一対の母材11それぞれの一側端部11a側(図示では、左側)に、パンチプレス加工により、図示しない絶縁ボルトの軸部を通過させるための円形状のボルト孔11bを上下方向に貫通して形成する。そしてさらに、一対の母材11それぞれの他側端部11c側(図示では、右側)に、パンチプレス加工により、母材11の長手方向に沿う中心軸線O上に位置する箇所の一部に、長手方向に沿うように逆コ字形状の貫通孔11dを上下方向に貫通して形成する。しかして、このように、パンチプレス加工により、逆コ字形状の貫通孔11dを上下方向に貫通して形成することにより、
図2(a)に示すように、母材11には、基端部11e1が母材11から切り離されていない逆コ字形状部分11eが形成されることとなる。
【0019】
次いで、
図2(b)に示すように、基端部11e1が母材11から切り離されていな逆コ字形状部分11eを、その逆コ字形状部分11eの基端部11e1を基点として、矢印Y1方向に起立状に折り曲げ形成する。これにより、母材11の他側端部11c側(図示では、右側)に、逆コ字形状部分11eが起立状に立設固定され、もって、この逆コ字形状部分11eが測定端子12として機能することとなる。
【0020】
次いで、
図2(c)に示すように、一対の母材11のうち、一方の母材11の他側端部11cが抵抗体10の一方の側面10aに溶接により接合され、図示はしないが、同様に、一対の母材11のうち、他方の母材11の他側端部11cが抵抗体10の他方の側面10bに溶接により接合される。これにより、一対の母材11が、抵抗体10を挟むように抵抗体10と一体的に形成され、もって、
図1(a)に示すような、シャント抵抗器1が製造されることとなる。
【0021】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、母材11の長手方向に沿う中心軸線O上に位置する母材11の他側端部11c側(抵抗体10の接合部側)の一部に、長手方向に沿うように逆コ字形状の貫通孔11dを上下方向に貫通して切断加工し、その切断加工によって形成される逆コ字形状部分11eを、その逆コ字形状部分11eの基端部11e1を基点として、抵抗体10側に折り曲げ形成することによって、測定端子12を形成し、もって、この測定端子12を母材11のそれぞれに起立状に立設固定するようにしている。これにより、従来のシャント抵抗器のように、母材11と測定端子12とを別々に製造していないため、母材11に測定端子12を溶接等によって接合する必要がなくなる。それゆえ、本実施形態によれば、従来のシャント抵抗器のような接合部分がないため、接合部分の抵抗が大きくなることがなく、もって、発熱を抑えることができることとなる。
【0022】
さらに、本実施形態によれば、従来のシャント抵抗器のように、母材11に測定端子12を溶接等によって接合する必要がなくなるため、製造工程を削減することができ、もって、コストを削減することができることとなる。
【0023】
ところで、測定端子12は、
図1に示すように、抵抗体10の近傍に設ける必要がある。これは、抵抗体10の近傍に測定端子12を設けるようにすれば、電流測定時のノイズ等を軽減でき、もって、電流測定の検出精度を向上させることができるためである。それゆえ、測定端子12は、抵抗体10の近傍に設ける必要がある。この点、本実施形態によれば、母材11の長手方向に沿う中心軸線O上に位置する母材11の他側端部11c側(抵抗体10の接合部側)の一部に、長手方向に沿うように逆コ字形状の貫通孔11dを上下方向に貫通して切断加工することによって、測定端子12を形成するものであるから、抵抗体10の極めて近傍に測定端子12を精度よく設けることができる。それゆえ、本実施形態によれば、従来に比べ、電流測定の検出精度を向上させることができることとなる。
【0024】
なお、本実施形態において例示したシャント抵抗器1、抵抗体10、母材11、測定端子12の形状はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において種々の変形・変更が可能である。例えば、測定端子12を形成するにあたって、本実施形態においては、逆コ字形状の貫通孔11dを上下方向に貫通して切断加工して形成するようにしたが、それに限らず、逆U字形状の貫通孔11dを上下方向に貫通して切断加工して形成するようにしても良く、どのような形状にしても良い。
【0025】
また、本実施形態によれば、母材11にボルト孔11b、貫通孔11dを形成するにあたって、パンチプレス加工にて形成する例を示したが、それに限らず、ワイヤー放電加工等どのような加工でも良い。
【0026】
さらに、本実施形態によれば、母材11の長手方向に沿う中心軸線O上に位置する母材11の他側端部11c側(抵抗体10の接合部側)の一部に、長手方向に沿うように逆コ字形状の貫通孔11dを上下方向に貫通して切断加工し、測定端子12を形成するようにしたが、それに限らず、母材11の長手方向に沿う中心軸線O上の位置からずれた位置に貫通孔11dを上下方向に貫通して切断加工し、測定端子12を形成するようにしても良い。しかしながら、母材11の長手方向に沿う中心軸線O上の位置に貫通孔11dを上下方向に貫通して切断加工し、測定端子12を形成した方が好ましい。このようにすれば、抵抗体10の発熱を抑えつつ均一化することができるためである。しかるに、抵抗体10の発熱を抑えつつ均一化することができれば、発熱による抵抗体10の抵抗値の変化がなくなり、もって、正確に電流値を計測することができることとなる。
【0027】
ここで、母材11の長手方向に沿う中心軸線O上の位置に貫通孔11dを上下方向に貫通して切断加工し、測定端子12を形成した際、抵抗体10の発熱を抑えつつ均一化することができるか否かを検証するため、以下の実験を行った。
【0028】
<実験例>
すなわち、
図3に示すように、シャント抵抗器1の一対の母材11の一側端部11a側に、松定プレシジョン社製PRK15-800の電源を電気的に接続し、200Aの電流を矢印Y10方向に3600秒間、連続で流し続けた。そして、この時の抵抗体10の発熱を計測すべく、熱電対からなる温度センサSを抵抗体10に貼り付け計測を行った。その結果が、
図4(a)に示すものである。なお、抵抗体10の抵抗値は、0.1mΩに設定されている。
【0029】
図4(a)に示すように、シャント抵抗器1の抵抗体10の発熱は、最大値が127.142degで全体的に均一という結果となった。
【0030】
次に、母材11の長手方向に沿う中心軸線O上の位置からずれた位置に貫通孔11dを上下方向に貫通して切断加工し、測定端子12を形成した際、抵抗体10がどのように発熱するか検証すべく、
図4(b)に示すようなシャント抵抗器1Aを製造した。このシャント抵抗器1Aは、母材11の長手方向に沿う中心軸線O上の位置からずれた位置(図示では、上方向の位置)に測定端子12を形成している点が、
図3に示すシャント抵抗器1と相違するだけで、それ以外は同一である。そのため、
図4(b)では、
図3に示すシャント抵抗器1と同一構成については、同一の符号を付している。
【0031】
かくして、このようなシャント抵抗器1Aの一対の母材11の一側端部11a側に、
図3と同様に、松定プレシジョン社製PRK15-800の電源を電気的に接続し、200Aの電流を矢印Y10(
図3参照)方向に3600秒間、連続で流し続けた。そして、この時の抵抗体10の発熱を計測すべく、熱電対からなる温度センサS(
図3参照)を抵抗体10に貼り付け計測を行った。その結果が、
図4(b)に示すものである。
【0032】
図4(b)に示すように、抵抗体10の発熱は、最大値が127.557degで、長手方向に向うに従い(測定端子12から遠ざかるに従い)発熱温度が高くなるという結果となった。すなわち、抵抗体10の発熱にばらつきがあるという結果となった。
【0033】
次に、母材11に測定端子12を形成しない際、抵抗体10がどのように発熱するかを検証すべく、
図4(c)に示すようなシャント抵抗器1Bを製造した。このシャント抵抗器1Bは、母材11に測定端子12を形成していない点が、
図3に示すシャント抵抗器1と相違するだけで、それ以外は同一である。そのため、
図4(c)では、
図3に示すシャント抵抗器1と同一構成については、同一の符号を付している。
【0034】
かくして、このようなシャント抵抗器1Bの一対の母材11の一側端部11a側に、
図3と同様に、松定プレシジョン社製PRK15-800の電源を電気的に接続し、200Aの電流を矢印Y10(
図3参照)方向に3600秒間、連続で流し続けた。そして、この時の抵抗体10の発熱を計測すべく、熱電対からなる温度センサS(
図3参照)を抵抗体10に貼り付け計測を行った。その結果が、
図4(c)に示すものである。
【0035】
図4(c)に示すように、抵抗体10の発熱は、最大値が137.946degで、全体的に均一という結果となった。しかしながら、抵抗体10の発熱は、
図4(a)に示す抵抗体10の発熱に比べ、明らかに高い温度で発熱するという結果となった。
【0036】
以上の実験結果から、母材11の長手方向に沿う中心軸線O上の位置に貫通孔11dを上下方向に貫通して切断加工し、測定端子12を形成するようにすれば、抵抗体10の発熱を抑えつつ均一化することができることが証明された。しかるに、このように母材11の長手方向に沿う中心軸線O上の位置に貫通孔11dを上下方向に貫通して切断加工し、測定端子12を形成することにより、抵抗体10の発熱を抑えつつ均一化できるのは、母材11の長手方向に沿う中心軸線O上の位置に貫通孔11dを上下方向に貫通して切断加工し、測定端子12を形成することにより生じる空気の流れが抵抗体10全体に行き渡り、もって、抵抗体10全体の熱が放熱され、これによって、抵抗体10の発熱が抑えられ、均一化されたものと推測される。
【0037】
ところで、母材11の長手方向に沿う中心軸線O上の位置に貫通孔11dを上下方向に貫通して切断加工し、測定端子12を形成した際、貫通孔11dを形成することにより、母材11の断面積が従来のシャント抵抗器に比べ減少することとなる。一般的に、シャント抵抗器に1Aの電流を流す際、母材の断面積として0.1m
2が必要とされている。そのため、母材11の断面積が従来のシャント抵抗器に比べ減少すると、大電流を流した際何らかの問題が発生する可能性もある。そこで、そのような問題が発生する可能性がないようにするため、母材11の断面積を従来のシャント抵抗器の母材の断面積と同一にすべく、
図5に示すシャント抵抗器1Cのようにすることができる。
【0038】
このシャント抵抗器1Cは、
図5に示すように、一対の母材11Aの一側端部11a側の幅方向の形状より、他側端部11c側の幅方向の形状を膨出した形状にしたものである。すなわち、一対の母材11Aの形状を、ボルト孔11bが形成されている一側端部11a側の幅W1よりも、貫通孔11dが形成されている他側端部11c側の幅W2を幅広に形成したものである。これにより、貫通孔11dを形成した分減少した断面積を補填することができ、もって、従来のシャント抵抗器の母材の断面積と同一にすることができる。なお、
図5に示すシャント抵抗器1Cと
図1に示すシャント抵抗器1の相違は、
図5に示す母材11Aの形状と
図1に示す母材11の形状の相違だけであり、それ以外は同一である。そのため、
図5では、
図1に示すシャント抵抗器1と同一構成については、同一の符号を付している。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本実施形態において例示したシャント抵抗器1,1Cは、特に、電気自動車(EV車)、ハイブリット車(HV車)、プラグインハイブリット車(PHV車)等で使用される高電圧用途のバッテリーからモータ回路へ大電流が流れる電流経路の電流値を計測する際に用いるのが有用である。
【符号の説明】
【0040】
1,1C シャント抵抗器
10 抵抗体
11,11A 母材
11d 貫通孔
11e 逆コ字形状部分(切断加工した所定形状部分)
12 測定端子
O 中心軸線