(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】電気駆動される設備をフェールセーフに停止させる安全回路構成
(51)【国際特許分類】
H01H 47/22 20060101AFI20220331BHJP
H01H 47/00 20060101ALI20220331BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20220331BHJP
G05B 9/02 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
H01H47/22 A
H01H47/00 A
H01H9/54 J
G05B9/02 E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017240724
(22)【出願日】2017-12-15
【審査請求日】2020-11-18
(31)【優先権主張番号】10 2016 125 031.7
(32)【優先日】2016-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501493037
【氏名又は名称】ピルツ ゲーエムベーハー アンド コー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン プルマン
【審査官】北岡 信恭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0266890(US,A1)
【文献】特表2013-529832(JP,A)
【文献】特開昭56-084835(JP,A)
【文献】国際公開第2016/150859(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/54- 9/56
H01H 47/00-47/04
H01H 47/22
G05B 9/00- 9/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気駆動される設備(16)をフェールセーフに停止させる安全回路構成(10)であって、
規定の作動力を備える安全切換リレー(48)を有し、前記設備(16)への電力供給路(52)をフェールセーフな仕方で閉じる、または切断するよう構成された安全切換装置(14)と、
アクチュエータ(26)および信号発生器(30)を有し、第1の回線(20)
および第2の回線(22)により前記安全切換装置(14)へと接続された信号装置(12)とを備え、
前記信号装置(12)は、電源電圧(32)を受信するために第1の端子(34)および第2の端子(36)を有し、かつ、第1のクロック信号(24)を供給するために第3の端子(40)を有しており、共通の電位(38)および前記第1のクロック信号(24)を前記安全切換装置(14)に供給するために、前記第2の端子(36)は前記第2の回線(22)に接続され、かつ、前記第3の端子(40)は前記第1の回線(20)に接続され、
前記アクチュエータ(26)は第1および第2の作動接点(28a、28b)を有しており、前記第1の作動接点(28a)は前記第1の端子(34)および前記信号発生器(30)に接続されており、前記第2の作動接点(28b)は前記信号発生器(30)および前記第3の端子(40)に接続されており、
前記アクチュエータ(26)は、第1の規定の状態と第2の規定の状態との間で切り換え可能であり、前記信号発生器(30)は、前記アクチュエータ(26)が前記第1の規定の状態にあるときにのみ、前記第1の回線(20)上で
前記第1のクロック信号(24)を生成するよう構成されており、
前記安全切換装置(14)は、前記第1のクロック信号(24)から、前記安全切換リレー(48)の作動力よりも大きい、または前記安全切換リレー(48)の作動力に等しい電力を取り出し、かつ、前記安全切換リレー(48)を作動させるために、前記電力を直流に変換するよう構成されている、安全回路構成。
【請求項2】
前記安全切換装置(14)は、前記安全切換リレー(48)に通電するために、前記第1のクロック信号(24)から取り出す電力を排他的に使用するよう構成されている、請求項1に記載の安全回路構成。
【請求項3】
前記信号発生器(30)は、当該信号発生器の入力が前記第1の端子(34)および前記第2の端子(36)に接続され、かつ、当該信号発生器の出力が前記第3の端子(40)に接続されるよう構成されている、
請求項1に記載の安全回路構成。
【請求項4】
前記信号発生器(30)は発振器、特に正弦波発振器である、請求項1~
請求項3のいずれか1項に記載の安全回路構成。
【請求項5】
前記安全切換装置(14)は、前記電力を取り出し変換するために、変圧器(58)および整流器(60)を有しており、前記変圧器(58)の第1の側は前記第1の回線(20)に接続され、前記変圧器の第2の側は前記整流器(60)に接続されており、その結果、前記第1のクロック信号(24)のAC成分のみが、前記第2の側(64)で電力に変換される、請求項1~
請求項4のいずれか1項に記載の安全回路構成。
【請求項6】
前記信号装置(12)と前記安全切換装置(14)とを接続する前記第1および第2の回線(20、22)は、二線式回線(18)のそれぞれのコアである、請求項1~
請求項5のいずれか1項に記載の安全回路構成。
【請求項7】
電気駆動される設備(16)をフェールセーフに停止させる安全回路構成(10)であって、
規定の作動力を備える安全切換リレー(48)を有し、前記設備(16)への電力供給路(52)をフェールセーフな仕方で閉じる、または切断するよう構成された安全切換装置(14)と、
アクチュエータ(26)および信号発生器(30)を有し、第1の回線(20)により前記安全切換装置(14)へと接続された信号装置(12)とを備え、
前記アクチュエータ(26)は、第1の規定の状態と第2の規定の状態との間で切り換え可能であり、前記信号発生器(30)は、前記アクチュエータ(26)が前記第1の規定の状態にあるときにのみ、前記第1の回線(20)上で第1のクロック信号(24)を生成するよう構成されており、
前記安全切換リレー(48)は、前記作動力よりも低い保持力を有しており、
前記信号発生器(30)は第2のクロック信号(24)を供給するよう構成されており、
前記安全切換装置(14)は、前記第1のクロック信号(24)から、前記安全切換リレー(48)の作動力よりも大きい、または前記安全切換リレー(48)の作動力に等しい電力を取り出し、かつ、前記安全切換リレー(48)を作動させるために、前記電力を第1の直流に変換するよう構成されており、
前記安全切換装置(14)は、前記第2のクロック信号(24)から、前記安全切換リレー(48)の前記保持力よりも大きい、または前記安全切換リレー(48)の前記保持力に等しいが、前記安全切換リレー(48)の前記作動力よりも低い電力を取り出し、前記安全切換リレー(48)を保持するために、前記電力を
第2の直流に変換するよう構成されている
、安全回路構成。
【請求項8】
前記信号発生器(30)は、前記アクチュエータ(26)が前記第2
の規定の状態から前記第1の
規定の状態に変化したときに、規定の期間、特に20~200ミリ秒間、前記第1のクロック信号(24)を、次いで、前記アクチュエータ(26)が前記第1の
規定の状態にある限り、前記第2のクロック信号を供給するよう構成されている、
請求項7に記載の安全回路構成。
【請求項9】
電気駆動される設備(16)をフェールセーフに停止させる安全回路構成(10)であって、
規定の作動力を備える安全切換リレー(48)を有し、前記設備(16)への電力供給路(52)をフェールセーフな仕方で閉じる、または切断するよう構成された安全切換装置(14)と、
アクチュエータ(26)および信号発生器(30)を有し、第1の回線(20)により前記安全切換装置(14)へと接続された信号装置(12)とを備え、
前記アクチュエータ(26)は、第1の規定の状態と第2の規定の状態との間で切り換え可能であり、前記信号発生器(30)は、前記アクチュエータ(26)が前記第1の規定の状態にあるときにのみ、前記第1の回線(20)上で第1のクロック信号(24)を生成するよう構成されており、
前記安全切換
リレー(48)は、前記作動力よりも低い保持力を有しており、
前記安全切換装置(14)は、前記第1のクロック信号(24)から、前記安全切換リレー(48)の作動力よりも大きい、または前記安全切換リレー(48)の作動力に等しい電力を取り出し、かつ、前記安全切換リレー(48)を作動させるために、前記電力を第1の直流に変換するよう構成されており、
前記安全切換装置(14)は、前記安全切換リレー(48)を作動させたのち、当該安全切換装置(14)が、前記第1のクロック信号(24)から、前記安全切換リレー(48)の前記保持力よりも大きい、または前記安全切換リレー(48)の前記保持力に等しいが、前記作動力よりも低い電力を取り出すことができ、かつ、前記安全切換リレー(48)を保持するために、前記電力を
第2の直流に変換できるように、前記第1のクロック信号(24)のエネルギーを低減するよう構成されている
、安全回路構成。
【請求項10】
前記安全切換リレー(48)は、2つの別体の接点セット(80a、80b)を有するが、ただ1つのコイル(76)を有する二重の電機子リレーである、請求項1~
請求項9のいずれか1項に記載の安全回路構成。
【請求項11】
電気的な設備(16)のフェールセーフな停止用の安全回路構成(10)用の安全切換装置(14)であって、
規定の
作動力を有し、フェールセーフな仕方で前記設備(16)への電力供給路(52)を閉じる、または切断する安全切換リレー(48)と、
当該安全切換装置(14)を信号装置(12)に接続でき第1のクロック信号(24)を受信できる第1および第2の回線(20、22)を接続するための第1および第2の入力(66、68)とを備え、
前記安全切換リレー(48)は、前記作動力よりも低い保持力を有しており、
当該安全切換装置(14)は、前記信号装置(30)から第2のクロック信号を受信できるよう構成されており、
当該安全切換装置(14)は、前記第1のクロック信号(24)から、前記安全切換リレー(48)の作動力よりも大きい、または前記安全切換リレー(48)の前記作動力に等しい電力を取り出し、前記安全切換リレー(48)を駆動するために、前記電力を
第1の直流に変換するよう構成されて
おり、
前記安全切換装置(14)は、前記第2のクロック信号(24)から、前記安全切換リレー(48)の前記保持力よりも大きい、または前記安全切換リレー(48)の前記保持力に等しいが、前記安全切換リレー(48)の前記作動力よりも低い電力を取り出し、前記安全切換リレー(48)を保持するために、前記電力を第2の直流に変換するよう構成されている、安全切換装置。
【請求項12】
電気駆動される設備(16)のフェールセーフな停止用の安全回路構成(10)用の信号装置(12)であって、
アクチュエータ(26)と、信号発生器(30)と、当該信号装置(12)を安全切換装置(14)に接続でき第1のクロック信号(24)を供給できる第1および第2の回線(20、22)を接続するための第1および第2の端子(34、36)とを備え、
前記信号装置(12)は、電源電圧(32)を受信するために第1の端子(34)および第2の端子(36)を有し、かつ、前記第1のクロック信号(24)を供給するために第3の端子(40)を有しており、
共通の電位(38)および前記第1のクロック信号(24)を前記安全切換装置(14)に供給するために、前記第2の端子(36)は前記第2の回線(22)に接続され、かつ、前記第3の端子(40)は前記第1の回線(20)に接続され、
前記アクチュエータ(26)は第1および第2の作動接点(28a、28b)を有しており、前記第1の作動接点(28a)は前記第1の端子(34)および前記信号発生器(30)に接続されており、前記第2の作動接点(28b)は前記信号発生器(30)および前記第3の端子(40)に接続されており、
前記アクチュエータ(26)は、第1の規定の状態と第2の規定の状態との間で切り換え可能であり、前記信号発生器(30)は、前記アクチュエータ(26)が前記第1の規定の状態にあるときにのみ、前記第1の回線(20)上で第1のクロック信号(24)を生成するよう構成されており、
前記第1のクロック信号(24)は、前記安全切換装置(14)が、前記第1のクロック信号(24)から、前記安全切換装置(14)の安全切換リレー(48)の作動力よりも大きい、または前記安全切換リレー(48)の作動力に等しい電力を取り出すことができるよう構成されている、信号装置。
【請求項13】
電気的な設備(16)のフェールセーフな停止用の安全回路構成(10)用の安全切換装置(14)であって、
規定の作動力を有し、フェールセーフな仕方で前記設備(16)への電力供給路(52)を閉じる、または切断する安全切換リレー(48)と、
当該安全切換装置(14)を信号装置(12)に接続でき第1のクロック信号(24)を受信できる第1および第2の回線(20、22)を接続するための第1および第2の入力(66、68)とを備え、
当該安全切換装置(14)は、前記第1のクロック信号(24)から、前記安全切換リレー(48)の作動力よりも大きい、または前記安全切換リレー(48)の前記作動力に等しい電力を取り出し、前記安全切換リレー(48)を駆動するために、前記電力を第1の直流に変換するよう構成されており、
前記安全切換リレー(48)は、前記作動力よりも低い保持力を有しており、
前記安全切換装置(14)は、前記安全切換リレー(48)を作動させたのち、当該安全切換装置(14)が、前記第1のクロック信号(24)から、前記安全切換リレー(48)の前記保持力よりも大きい、または前記安全切換リレー(48)の前記保持力に等しいが、前記作動力よりも低い電力を取り出すことができ、かつ、前記安全切換リレー(48)を保持するために、前記電力を第2の直流に変換できるように、前記第1のクロック信号(24)のエネルギーを低減するよう構成されている、安全切換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全切換装置および信号装置を備える、電気駆動される設備をフェールセーフに停止させる安全回路構成に関する。本発明は同様に、対応する安全切換装置および対応する信号装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に開示する安全回路構成は、技術設備の危険な運転から保護するよう、すなわち、設備の領域内にいる人間の健康または生命を危険にする事故を防止するよう、相互作用する少なくとも2つの機能判定部品を有する回路構成である。1つの部品は安全切換装置であり、設備を安全な無電流の状態にするために、設備への電力供給路をフェールセーフな仕方で遮断するよう、特に構成されている。
【0003】
例えば、電気部品が故障する、接続線が損傷を受ける、または、別の不具合事例が発生する、などの不具合が発生した場合でも、安全切換装置自体が、安全な運転状態を保証することが重要である。したがって、安全切換装置一般に、マルチチャネルの冗長性を有するよう設計されている。より複雑な安全装置も、早い段階で個々の不具合を検知し、エラーの蓄積を防ぐよう、内部の監視機能を有していてもよい。
【0004】
第2の部品は信号装置またはセンサであり、安全切換装置に結合されている。信号装置またはセンサは、入力信号を供給し、入力信号は、電気駆動装置または電磁弁などの設備のアクチュエータを、当該入力信号に応じてオンにする、または停止するために、安全切換装置により評価され、かつ、互いに選択的に連結することができる。多くの場合、信号装置は、例えば、機械的な安全ドアが閉まっているかどうか、緊急停止スイッチが作動するかどうか、光バリアが遮断されるかどうかといった、単純なバイナリ情報を伝達する。そのうえ、信号装置/センサは、例えば、ボイラの温度または駆動装置の回転速度といったアナログ値を伝達することもできる。通常、安全回路構成の安全切換装置は、信号装置/センサからの信号に基づいて安全な運転が見込める場合にのみ、設備の運転を可能にする。
【0005】
本明細書にいう安全回路構成に課される要求は、多くの国で規定されており、国内および国際基準において分類および特定されている。ヨーロッパでは、関連する規準および指令は、例えば、機械指令2006/42/EC、または、EN 954-1に代わるものとしての機械の制御システムの安全関連の部品の設計に関する中心的な安全基準EN ISO 13849-1である。安全回路構成はこの場合、国際規格IEC 61508のSIL-2の意味において本来的にフェールセーフであり、EN ISO 13849-1の意味においてd以上の性能水準を有している。
【0006】
大きな設備では、広い区域にわたって分散した1つまたはそれ以上の安全切換装置に安全関連の入力信号手法を供給する、多数の信号装置/センサがある。その場合、信号装置およびセンサは、いわゆるフィールドにおいて、設備上および設備周辺に分散しているが、安全切換装置は通常、閉じられたスイッチギアキャビネットの中央に収納されている。スイッチギアキャビネットを介して、設備は系統的に制御され、電力を供給されてもいる。
【0007】
中央評価および制御システムにより、設備の簡単な運転および管理が可能になるが、設置および配線の手間も大きくなる。これは、セーフティークリティカルな(安全にとって重要な)入力信号がすべて、信号装置およびセンサから中心箇所へと、安全かつ確実に送られねばならないからである。
【0008】
大きめのシステムに関し、このような集中化は効果がある。なぜなら、防滴のハウジングなどの個々の部品の安全側面は、例えば、一般の閉じた防滴のスイッチキャビネット内に部品を配置することにより、たくさんの装置用に組み合わせることができるからである。このようにして、単一の部品への要求を減らし、その製造費用を下げることができる。
【0009】
反対に、平均的な、小さな、もしくは携帯式の設備では、この種の集中化はそれほど価値がない。信号装置が1つまたは2つだけで、それぞれがただ1つの安全切換装置により監視されている装置では特に、別体のスイッチギア(開閉器)キャビネットにおける設備から離して後者を再配置することは、適切でない。この種の集中化は、最終顧客部門での産業分野外の安全に関して使用および監視する必要があるが、産業生産現場で普及しているものなどのインフラ条件が存在しない設備でも、適切でない。この種の設備の例としては、例えば、ディスカウントショップの売り場で設営され最終顧客自身により主に運転される、パン切り機械などの小さな機械および設備がある。
【0010】
安全技術の集中化が適切でない場合、信号装置および安全切換装置を有する安全回路構成は、設備に直接配置される。設備に直置きの安全回路構成の両方の部品の配置により、現場での複雑な配線は必要でなくなるが、この構成であっても、信号装置および安全スイッチギアはしばしば、1つのユニットとして設計されておらず、短いものであったとしてもケーブルを介して互いに接続する必要のある2つの個別の部品のままである。個々の部品に対する、特にそれらの互いに対する相互接続に対する、安全関連の要求は、現場で信号装置と通信する制御キャビネット内で中央に配置された安全切換装置を有するシステムに対するものと同じである。
【0011】
ゆえに、原則として、個々のシステムで産業分野からの公知の安全システムを同様に使用することが可能であろう。しかし、これらのシステムはしばしば、この種の用途のために設計されておらず、個々のシステムのコストを不必要に増加させるであろう余分な機能を有している。同様に、スイッチギアキャビネットで使用される安全切換装置に関する形状因子は、個々のシステムで一体化されることになる安全切換装置におけるものと異なっている。特に、既存のシステムに容易に一体化するために、個々のシステム用の安全回路構成が可能な限り小型化されているのが望ましい。
【0012】
しかし、同時に、個々のシステムは、産業分野からの中央評価および制御システムを有する類似のシステムとして、関連する基準の高い安全要求に適合できることも必要である。これは特に、これらのシステムがしばしば、訓練を受けた職員ではなく、エンドユーザによって運転されるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
こうした背景のもとで、本発明の目的は、信号装置と安全切換装置とが互いに物理的に分離されているが依然として互いに接近している場合に特に、費用効果の高い仕方で実施することができ、かつ、依然としてフェールセーフな停止が可能な安全回路構成を提供することである。同様に本発明は、可能な限り場所を取らず、かつ小型の安全回路構成、ならびに、対応する信号装置および安全切換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1つの局面によれば、上記目的は、電気駆動される設備をフェールセーフに停止させる安全回路構成により達成される。該安全回路構成は、規定の作動力を備える安全切換リレーを有し、前記設備への電力供給路をフェールセーフな仕方で閉じる、または切断するよう構成された安全切換装置と、アクチュエータおよび信号発生器を有し、第1の回線により前記安全切換装置へと接続された信号装置とを備える。前記アクチュエータは、第1の規定の状態と第2の規定の状態との間で切り換え可能であり、前記信号発生器は、前記アクチュエータが前記第1の規定の状態にあるときにのみ、前記第1の回線上で第1のクロック信号を生成するよう構成されている。前記安全切換装置は、前記第1のクロック信号から、前記安全切換リレーの前記作動力よりも大きい、または前記安全切換リレーの前記作動力に等しい電力を取り出し、かつ、前記安全切換リレーを作動させるために、前記電力を直流に変換するよう構成されている。
【0015】
ゆえに、以上の安全回路構成の場合、信号装置の通知信号から、安全切換装置を通じて、電流路を切り換えるのに必要なエネルギーを取るという着想となる。信号は、信号装置により、安全切換装置から独立して生成されて、安全装置に送信される。ここにおいて、独立とは、新規な信号装置がその独自のエネルギー源を有しており、または、それに直接接続されており、かつ、アクチュエータの状態に応じて、このエネルギー源から規定の電力を有するクロック信号を生成し、それを出力で利用可能にすることを意味している。
【0016】
クロック信号は、規定のRMS値を有する、AC電圧を有する交流変数(alternating variable)である。安全切換装置は、上記AC電圧を、規定の電力を有する直流に変換する。変換された電力が、少なくとも安全切換リレーの作動力に対応する場合、上記安全切換リレーはオンに切り換えられて、技術設備への電力供給路は閉じられる。それに対し、DC電圧、もしくは、より低いRMS値を有するAC電圧が回線間に印加される場合、または、信号が回線間にまったく印加されない場合、安全切換リレーは停止し、または、そもそもオンに切り換わることすらない。ゆえに、信号装置の状態に関する情報が、ステータス信号のAC電圧電力において暗号化され、その際、電力は、安全切換装置(特に安全切換リレー)を運転するために、同時に使用される。
【0017】
ゆえに、公知の安全回路構成に対して、これは、エネルギー源として機能する安全切換装置ではなく、信号装置である。これには、電流路を切り換えるための安全切換装置で必要とされる部品を最小に低減できるという利点がある。ゆえに、安全切換装置を、特に簡単、小型かつ費用効果の高い仕方で設計することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、安全切換装置は、安全切換リレーおよび電気部品を排他的に備えており、これらは、クロック信号のAC電圧を直流に変換し、安全切換リレーの励起コイルを介して、上記直流を通過させる。
【0019】
安全切換装置の最小の設計にもかかわらず、特許請求している安全回路構成は、冒頭で言及した基準の、高い安全カテゴリーを満たすことができる。これは、とりわけ、信号装置がステータス信号自体を生成し、それゆえに制御装置から信号装置に進み、そこから戻る従来の信号ループなしで済ませられるからである。ゆえに、この種の信号ループの引き出し線(outgoing line)および戻り線(returning line)の間の短絡による信号装置の迂回を回避することができる。接地電位に対する、または供給電位に対する短絡も、安全切換リレーの停止につながる。これは、安全切換リレーをオンに切り換え、かつ保持するために、AC電圧電力のみが考慮されているからである。公知の安全回路構成の考え得る不具合源を、このようにして効果的に防止することができる。
【0020】
全体として、本発明の安全回路構成はこのように、必要な部品が最小限に低減されており、かつ、同時に高い安全要求を満たすシステムを説明している。この安全回路構成は、排他的に1つの信号装置が安全切換装置に連結されるよう意図されている場合に特に、公知の安全回路構成に対する簡単かつ費用効果の高い代替物を提供する。ゆえに、上述した目的は十分に達成される。
【0021】
さらなる改良形態では、前記安全切換装置は、前記安全切換リレーに通電するために、前記第1のクロック信号から取り出す電力を排他的に使用するよう構成されている。安全切換装置は、排他的なエネルギー源として、信号装置のクロック信号を使用した安全切換装置により、特に簡単な仕方で設計することができる。特に、作動電圧を受けるための追加の端子と、対応する電気構成要素部品とを省くことができる。同時に、信号装置が異なる状態を通知しているにもかかわらず、上記安全切換リレーの作動電圧および駆動回路の間の短絡により、安全切換リレーが誤ってオンにされることを防止することができる。このように、別体の電圧源を削除することは、危険のさらなる考え得る源を排除できることに好適に寄与する。
【0022】
さらなる改良形態では、信号装置は、追加の第2の回線により、安全切換リレーに接続されており、前記信号装置および前記安全切換装置は、第2の回線により追加的に接続されており、前記信号装置は、電源電圧を受信するために第1および第2の端子を、かつ、前記クロック信号を供給するために第3の端子を有しており、共通の電位、特に共通の接地電位と、前記第1のクロック信号とを、前記安全切換装置に供給するために、前記第1の端子は前記第2の回線に接続され、かつ、前記第3の端子は前記第1の回線に接続されている。
【0023】
この改良形態では、信号装置は、エネルギー源としての供給電圧(特に、自動化技術において従来からある24ボルトのDC電圧)に結合されている。DC電圧の極(特に設置電位)は、クロック信号とともに安全切換装置に送られる。クロック信号に加えて供給される共通の設置電位のおかげで、安全切換装置が必要とするのは、第1および第2の回線用の端子のみである。さらなる端子は必要ではない。これは、安全回路構成の簡略化された小型の設計に寄与する。
【0024】
さらなる改良形態では、前記信号発生器は、当該信号発生器の入力が前記第1の端子および前記第2の端子に接続され、かつ、当該信号発生器の出力が前記第3の端子に接続されるよう構成されている。この改良形態は、信号装置の特に簡単な設計に寄与する。信号発生器は、新規な機能を提供するために当該信号発生器が簡単で好ましくは一体化された回路として構成されている場合に特に、既存の信号装置に容易に一体化することができる。
【0025】
さらなる改良形態では、前記アクチュエータは第1および第2の作動接点を有しており、前記第1の作動接点は前記第1の端子および前記信号発生器に接続されており、前記第2の作動接点は前記信号発生器および前記第3の端子に接続されている。この改良形態により、信号装置におけるさらなる考え得る不具合源を回避することが可能となる。供給電圧がブレーク接点を介して信号発生器に案内されること、および、生成されたクロック信号が第2のブレーク接点を介して信号装置の出力に案内されることにより、アクチュエータの接点セットにおける不具合を排除することができる。これは、アクチュエータのスイッチセットでの短絡が、出力でのクロック信号の遮断に、いずれの場合でもつながることがあるためである。加えて監視する必要のある可能性があるのは、部分的な作動のみである。
【0026】
さらなる改良形態では、前記信号発生器は発振器、特に正弦波発振器である。発振器を、特に簡単で費用効果の高い仕方で実現することができる。発振器は、DC成分なしに正弦波AC電圧を生成するのが好ましい。上記発振器は、安全回路構成の特に効率的な改善に適している。
【0027】
さらなる改良形態では、前記安全切換装置は、前記電力を取り出し変換するために、変圧器および整流器を有しており、前記変圧器の第1の側は前記第1および第2の回線に接続され、前記変圧器の第2の側は前記整流器に接続されており、その結果、前記第1のクロック信号のAC成分のみが、電力に変換される。この改良形態は、安全回路構成の費用効果の高い実現にさらに寄与する。これは、技術設備のフェールセーフな停止を保証するために、変圧器、整流器および安全切換リレーに加えて、さらなる電気部品が必要とされないためである。変圧器はAC成分のみを送信することができるので、安全切換装置の入力に印加されるDC成分または一定の電圧は、安全切換リレーに影響を及ぼさない。
【0028】
さらなる改良形態では、前記第1および第2の回線は、二線式回線のそれぞれのコアである。この構成では、信号装置と安全切換装置とが、簡単な二線式回線により接続されており、それにより、安全回路構成を、特に費用効果の高い仕方で実現することができる。本発明の設計によれば、安全回路構成の2つの部品の間の二線式回線は、安全回路構成による技術設備の安全な停止を保証するのに十分である。
【0029】
さらなる改良形態では、前記安全切換リレーは、前記作動力よりも低い保持力を有しており、前記信号発生器は第2のクロック信号を供給するよう構成されており、前記安全切換装置は、前記第2のクロック信号から、前記安全切換リレーの前記保持力よりも大きい、または前記安全切換リレーの前記保持力に等しいが、前記作動力よりも低い電力を取り出し、前記安全切換リレーを保持するために、前記電力を直流に変換するよう構成されている。この改良形態では、リレーが、リレー電機子を駆動するよりも保持するために、より高い電力を通常必要とするという事実が考慮されている。このようにして、安全回路構成を、特にエネルギー効率の良い仕方で設計することができる。
【0030】
前記信号発生器は、前記アクチュエータが前記第2から前記第1の状態に変化したときに、規定の期間、特に20~200msの間、前記第1のクロック信号を、次いで、前記アクチュエータが前記第1の状態にある限り、前記第2のクロック信号を供給するよう構成されているのが好ましい。リレーを作動するためにのみ、より高い電力を有するクロック信号と、継続的な運転用に、より低い電力を有する第2のクロック信号とを供給する信号発生器のおかげで、新規な安全回路構成を特にエネルギー効率の良い仕方で実施することができる。くわえて、停止後に安全切換リレーが意図せずに通電されることを確実に防止することができる。これは、第2のクロック信号のみが利用可能であり、上記第2のクロック信号は、安全切換リレーをオンにするのに必要な電力を有していないからである。
【0031】
さらなる改良形態では、前記安全切換装置は、前記安全切換リレーの駆動後、当該安全切換装置が、前記第1のクロック信号から、前記安全切換装置の前記保持力よりも大きい、または前記安全切換装置の前記保持力に等しいが、前記作動力よりも低い電力を取り出すことができ、かつ、前記安全切換リレーを保持するために、前記電力を直流に変換できるように、前記第1のクロック信号のエネルギーを低減するよう構成されている。ゆえに、この改良形態では、安全切換装置は、オンにされたのち、例えば安全切換リレーのラッチ回路内に配置されている抵抗器により、クロック信号の電力を低減するよう構成されている。抵抗器により、リレーで利用可能な電力が低減され、それゆえに、リレーにより熱に変換される電力損失も低減される。
【0032】
さらなる改良形態では、前記リレーは、2つの別体の接点セットを有するが、ただ1つのコイルを有する二重の電機子リレーである。この改良形態は、安全回路構成のコストのさらなる低減に寄与する。2つの別体の接点セットを有する二重の電機子リレーを使用することで、1つの単一の安全切換リレーによってさえ、冗長な停止を保証することができる。このような構成は、必要な冗長性を保証するために、並列に接続された2つの安全切換リレーを使用するよりも、良好である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】安全回路構成の好ましい適用分野を示す図である。
【
図2】第1の実施形態にかかる安全回路構成を示す模式図である。
【
図3】信号装置の好ましい実施形態を示す図である。
【
図4】安全切換装置の好ましい実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
上述した特徴および以下に説明する特徴を、本発明の範囲を逸脱することなく、各場合に特定した組み合わせにおいてだけでなく、他の組み合わせでも、または単独でも使用できることは言うまでもない。
【0035】
本発明の実施形態を図面に示し、より詳細に以下の記載において説明する。
【0036】
図1は、安全回路構成の好ましい適用分野を示している。図中、パン切り機械を、参照番号100により、例えばディスカウントショップの売り場で設営できるものとして示す。この例では、パン切り機械は、キャスター102の上に配置されており、そのため、空間的に移動することができる。この機械は、例えば220ボルト家庭用電源といった、従来の電源に接続されて、プラグ104により電力を供給される。そのうえ、パン切り機械100は、それぞれが信号装置12a、12bおよび安全切換装置14a、14bを有する、新規な安全回路構成10の第1および第2の実施形態を表している。
【0037】
この機械では、カバー106の後ろに、駆動装置16により駆動される切断機器108がある。切断処理を開始するために、ユーザはカバー106を開き、パンの塊を置き、カバー106を閉めたのち、スタートボタン110を作動させる。切断処理ののち、ユーザはカバー106を開き、切断されたパンを取り除く。運転中にユーザが切断機器108内へと手を伸ばした場合、切断機器108が切断処理中にユーザを危険にさらすことは言うまでもない。
【0038】
ゆえに、ユーザを保護するために、切断処理はカバー106が閉じているときにのみ進行する。この場合に、第1の安全回路構成10aは、カバー106が閉じているかを監視する。この目的のために、ここで、信号装置12aは、本明細書の開示では、接触スイッチまたは磁気スイッチとして構成されており、カバー106に結合されている。信号装置12aは安全切換装置14aに、カバー106が閉じている場合に第1の状態を、カバー106が開いている、または開かれつつある場合に第2の状態を通知する。カバー106が閉じており、かつ、安全切換装置14aが、信号装置12aから対応する信号を受信している場合にのみ、安全切換装置14aは駆動装置16の起動を許可する。対応する信号が供給されていない場合、安全切換装置14aは駆動装置を停止し、または、そもそもオンにしない。
【0039】
本発明の第2の実施形態は、緊急停止スイッチ12bを備えており、緊急停止スイッチ12bは機械100上に配置されており、緊急停止スイッチ12bによりユーザは手動で切断処理を中断することができる。ここで、駆動装置16のフェールセーフな停止は、同じ仕方で、しかし安全切換装置14bにより行われる。
【0040】
安全切換装置14a、14bとの信号装置12a、12bの相互作用を、
図2を参照しながら、より詳細に以下に説明する。
【0041】
ここに示す機械が、本発明の安全回路構成を適用できる多くのものの一例に過ぎないことは言うまでもない。安全回路構成は、運転中にユーザを危険にさらし、それゆえに、1つまたは2つの安全部品を使用して固定する必要のある個々のシステムで使用するのが好ましい。このように、好ましい機械は、最終顧客部門において産業分野外で使用される、平均的な、または小さな、特に携帯式の設備である。しかし、そのような個々のシステムの固定に関する要求は、例えばCNCフライス盤といった産業分野での設備におけるのと同じである。
【0042】
安全回路構成の実施形態を、
図2を参照しながら詳細に説明する。ここで、安全回路構成全体を、参照番号10により示す。安全回路構成10は、信号装置12および安全切換装置14を含んでいる。2つの部品は、ここでモータ16により示す技術設備をフェールセーフな仕方で停止することができるように、相互作用する。この実施形態では、信号装置12および安全切換装置14は、第1のコア20および第2のコア22を有する二線式回線18により接続されている。そのようにして、第1および第2のコア20、22は、本明細書で、第1および第2の回線とされている。
【0043】
二線式回線が、ここに示すように、信号装置12と安全切換装置14とを互いに接続するための1つの選択肢を示しているに過ぎないことは、言うまでもない。しかし、二線式回線には、特に適切な仕方で設計できるという利点がある。好ましい実施形態では、二線式回線18は、監視されることになる機械内で、非常に短い回線とされている。
【0044】
信号装置12は、第1のクロック信号24をステータス信号として、安全切換装置14に送信するよう構成されている。信号装置12はアクチュエータ26を有しており、ここでアクチュエータ26は手動のボタンである。アクチュエータ26は、電気接点28が開いている第1の作動位置で、バネ(ここに図示せず)により前負荷されている。本実施形態では、これはアクチュエータ26の非作動の休止状態(第2の状態)である。アクチュエータ26を、バネ力に逆らって、常時開接点(normally open contact)28が閉じられた第2の作動位置に移動することができる。作動接点28が閉じられると、信号発生器30が作動電圧32に接続される。次いで、信号発生器30はクロック信号24を生成する。クロック信号24はこの場合、正弦波信号として示されている。このようにして、この状態が本明細書で、第1の状態と定義される。
【0045】
ここに示す実施形態では、信号発生器30は、アクチュエータ26が作動中のときにのみ、クロック信号を生成するのに必要な作動電圧を受信する。そうでない場合、上記信号発生器は通電されない。このように、信号発生器30は、アクチュエータ26が規定の第1の状態にある場合にのみ、クロック信号24を生成する。図示した実施形態では、アクチュエータは、1つまたはそれ以上の作動接点28を有する、簡単な手動のスイッチとされている。他の実施形態では、アクチュエータは特に、1つのブレーク接点またはブレーク接点およびメーク接点の組み合わせを有していてもよい。さらに、アクチュエータは、中継器、光バリア、または、温度、圧力もしくは電圧用の測定変換器であってもよい。
【0046】
信号装置12は、安全切換装置14と関連した別体のユニットを形成しているが、信号装置12と安全切換装置14との間の接続が好ましくは機械内で、短い回線により可能となるよう、安全切換装置14および駆動装置16の近傍に配置されているのが好ましい。他の実施形態では、信号装置12を、緊急停止スイッチ、保護ドアスイッチ、近接スイッチ、光バリア、温度モニタなどとして構成することができる。
【0047】
作動接点28に加えて、信号発生器30は信号装置12の中心的な要素である。1つの好ましい実施形態では、信号発生器30は、例えば、10kHzの正弦波AC電圧を生成するよう構成された発振器である。正弦波AC電圧を生成する信号発生器30は、例えば、簡単なウィーン・ロビンソン発振器(Wien-Robinson oscillator)であってもよい。ここで、発振器は、第1および第2の端子34、36を使用して、作動電位32および接地電位38に接続されており、その結果、作動電圧が第1および第2の端子の間で降下する。信号発生器30は、第3の端子40を介してクロック信号24を供給する。第1、第2および第3の端子34、36、40は、信号装置12のハウジング42上の接続端子として実現されているのが好ましい。
【0048】
この実施形態では、第1のクロック信号24は正弦波AC電圧である。しかし、他の実施形態では、クロック信号は異なるAC変数(AC variable)(例えば、多種多様な個別のパルスを有する規定のパルス信号)でもあってもよい。しかし、クロック信号24が規定の電力を信号装置12から安全切換装置14へと送信するよう構成されていることは、安全切換装置14を参照して、より詳細に以下に説明するように、安全回路構成の概念にとって本質的である。
【0049】
安全切換装置14は、2つの回線20、22により、信号装置12に接続されている。回線20は信号装置の第3の端子に接続されており、回線22は信号装置の第2の端子に接続されている。すなわち、クロック信号24が、回線20を介して、信号装置12から安全切換装置14へと送信されているのに対し、信号装置12および安全切換装置14用の共通の接地電位38は、回線22を介して供給されている。第1および第2の回線20、22は、信号装置12におけるように、安全切換装置14のハウジング44上の接続端子により接続されている。
【0050】
安全切換装置14は、信号装置12の運転状態を監視しており、回路構成および少なくとも1つの安全切換リレー48を含んでいる。回路構成はコンバータ46として構成されており、コンバータ46の入力側は、クロック信号および接地電位を受信するための端子に接続されており、コンバータ46の出力側は、安全切換リレー48を駆動するためのDC電圧を供給する。
【0051】
コンバータ46は、別個の電気構成要素部品で構成されて、第1のクロック信号24から電気エネルギーを取り出し、かつ、上記電気エネルギーを、規定の電力を有する直流に変換するよう構成されているのが好ましい。特に、コンバータ46は、クロック信号24のAC成分から電気エネルギーを取り出すよう構成されているが、定数成分はコンバータ46によって考慮されないままである。結果として、信号が安全切換装置14の入力に供給されない場合、一定信号または低いRMS値を有するAC信号が安全切換装置14の入力に供給される場合、コンバータ46により供給される直流の電力が、安全切換リレー48を駆動するために十分でない。
【0052】
安全切換リレー48は1つまたはそれ以上の作動接点50を有しており、作動接点50は、技術設備16への電力供給路52内に配置されている。十分な電力を有する直流が、安全切換リレー48を駆動するためにコンバータ46により供給されている場合、安全切換リレー48の作動接点50が閉じられて、技術設備16が電圧源に接続される。他の実施形態で、接触器または電磁弁などの他のアクチュエータを同様に駆動することができることは言うまでもない。そのうえ、安全切換装置14は、第1のリレー48と平行に接続されたさらなる安全切換リレー48’を有していてもよく、上記さらなる安全切換リレーの作動接点50’は安全切換リレー48の作動接点50に直列とされている。
【0053】
この安全回路構成10の特徴は、ステータス信号だけでなく、信号装置12から安全切換装置14へのエネルギーをも送信する能力であり、結果として、上記安全切換装置は好ましくは、その固有の電圧源なしで間に合わせることができる。ゆえに、信号装置12は、まず「その固有の」クロック信号を生成し、この目的のために、対応する電圧源に接続されることを特徴としている。他方、クロック信号24は、信号装置12の現在の状況に関する情報を備えるだけでなく、安全切換装置14により安全切換リレー48を駆動するために使用される電力を送信することもできるように構成されている。
【0054】
公知の安全回路構成と異なり、信号装置12は、安全切換装置14から解除信号または要求信号を受信しないため、信号装置12および安全切換装置14は好ましくは、簡単な二線式接続により接続することができ、その際、例えば二線式回線のコア間の短絡などの、接続に関連して生じるすべての不具合を、安全切換装置14により扱うことができる。そのうえ、信号発生器とアクチュエータ26の作動接点28とを適切に相互接続することにより、信号装置12内の考え得る不具合源を排除することができる。これは、上記信号装置がステータス信号事態を生成するためである。ゆえに、この安全回路構成の特徴は、最小の数の、好ましくは別個の、電気構成要素部品内で、安全切換装置14が作動でき、かつ、高い安全カテゴリーの要求を依然として満たすことである。
【0055】
ゆえに、安全回路構成10は、信号装置12と安全切換装置14との組み合わせが費用効果の高い仕方で実現でき、かつ、産業分野で公知の安全インフラが利用できない既存のシステムに容易に一体化できるという事実により区別される。むしろ、安全回路構成は好ましくは、自己完結的で、費用効果の高い仕方で個々のシステム内で実現できる。そのうえ、簡単な設計により、特に安全切換装置14の非常に小型の構成が可能になる。これにより、安全切換装置14について、新たな形状因子が可能となり、そのため、産業安全技術に関する新規な応用可能性が通常のユーザのエンドデバイス(end device)に導入される。
【0056】
信号装置12の好ましい実施形態および安全切換装置14の好ましい実施形態を、
図3および
図4を参照して、詳細に以下に説明する。
【0057】
図3は、信号装置12の好ましい実施形態を示している。信号装置12は、アクチュエータ26および信号発生器30を有している。信号発生器30とアクチュエータの作動接点28とは、ハウジング42内に配置されている。ハウジング42の外側に、3つの接続端子がこの実施形態において配置されており、ハウジング42内の信号発生器30は、上記接続端子により接点接続する(contact-connected)ことができる。第1の端子34が、例えば24ボルトDCの作動電位に接続されており、第2の端子36が接地電位に接続されている。信号装置12により生成できる第1のクロック信号24は、第3の端子40を介して、外部に導かれる。信号装置12は、さらなる端子を有していないのが好ましい。
【0058】
この実施形態では、前のように、アクチュエータ26が、第1の作動位置および第2の作動位置(ここで破線により示す)を有する、手動のボタンである。この実施形態では、アクチュエータ26は、第1の作動接点28aおよび第2の作動接点28bを有している。作動接点28a、28bは、アクチュエータ26により共同でのみ移動できる仕方で設営されている。第1の作動接点28aは第1の端子と信号発生器30との間に配置されており、第2の作動接点28bは信号発生器30と第3の端子40との間に配置されている。すなわち、アクチュエータ26は、作動接点28aにより、一方で、第1の端子34で供給される作動電位から信号発生器30を切断することができ、他方で、信号発生器30により生成されるクロック信号が第3の端子40で発信されるのを防止することができる。ゆえに、すべての好ましい実施形態において、信号装置12は、アクチュエータが第2の作動位置56にあるときにのみクロック信号24が第3の端子40で生成されるように設営されている。
【0059】
さらなる実施形態では、信号装置12は、作動接点28と信号発生器30との間に安全状態部品を選択的に有していてもよく、上記安全状態部品は、両方の作動接点28が再始動の前にオフにされていると分かっているときにのみ上記信号発生器が信号を発するよう、信号発生器30に影響を与えるように構成されている。その結果、機器の安全性を好適にさらに高めることができる。
【0060】
作動電圧が端子34、36に印加されたときに信号発生器30により自動で生成されるクロック信号24は、DC成分のない正弦波AC電圧であるのが好ましい。ゆえに、信号装置12の特徴は、一方で、信号装置12が、関連付けられた安全切換装置から独立してクロック信号24自体を生成すること、および、クロック信号24が、特定の量の電気エネルギーを取り出すことのできるAC変数を含んでいることである。他の実施形態で、クロック信号24は、直流成分をも含んでいてもよいが、その際、切換に必要なエネルギーは、信号の動的な部分からのみ引き出されるということは言うまでもない。ゆえに、信号装置12の一特徴は、信号発生器30により生成されるクロック信号24の規定のRMS値である。
【0061】
図4は、本発明の安全切換装置の好ましい実施形態を示している。この場合、安全切換装置は同様にハウジング44を有しており、ハウジング44は、安全切換装置14の電気部品を収容している。安全切換装置14を電気的に接点接続できる接続端子が、ハウジング44上に配置されている。
【0062】
安全切換装置14の本質的な構成部分は、コンバータ46および安全切換リレー48である。この好ましい実施形態では、コンバータ46は排他的に、変圧器58および整流器60を備えている。変圧器58は、第1の側62に印加されるAC電圧をAC出力電圧に変換し、AC出力電圧は、第2の側64で取り出すことができる。AC電圧は第1の側から第2の側に変換されないのが好ましい。すなわち、コンバータ46の伝達率(transmission factor)は1に等しい。このように、変圧器58は、交流成分だけを第1の側62から第2の側64に送信するために排他的に機能するが、DC成分は変圧器58によって考慮されないままである。すなわち、入力66および68に印加されるクロック信号のDC成分は、第2の側64に移送されない。ゆえに、第2の側64に接続される電気部品は、クロック信号24のAC電圧成分の影響のみを受ける。
【0063】
好ましい実施形態では、整流器60は、変圧器58の第2の側64に直接配置されている。整流器60は、4つのダイオードを有する簡単なブリッジ整流器であってもよい。整流器60は、第2の側64で取り出すことのできるAC出力電圧を、接続70、72に印加されるDC電圧に変圧する。接続70、72の間に配置されたコンデンサ74が、接続70、72で、整流された電圧を均等化し安定化する。安全切換リレー48の励起コイル(exciter coil)76が同様に、接続70、72の間に配置されている。変圧器58が送信する電力が十分に高い場合、安全切換リレー48の励起コイル76は、接続70、72に印加される電圧により通電される。
【0064】
ここに示す好ましい実施形態では、安全切換リレー48は、ただ1つの励起コイル76を有している。単一の励起コイル76は、電機子78を使用して、互いに分離された2つの接点セット80a、80bを切り換えることができる。作動接点80a、80bはこの場合、電力供給路52内に直列に配置されており、好ましくは、メーク接点およびブレーク接点を有している。2つの別体の接点セットを切り換えるのに、ただ1つの励起コイル76だけが必要であるという事実により、安全切換装置14を特に小型で、かつ、特に、費用効果の高い仕方で実現することができる。これは、安全切換装置におけるリレーがしばしば、安全切換装置の全体的な経費において高い比率を占めるためである。
【0065】
安全切換装置14は、入力66、68を介して、信号装置12からステータス信号を受信する。入力66はこの場合、信号装置12の第3の端子40に接続されており、入力68は信号装置12の第2の端子36に接続されている。このようにして、安全切換装置は、入力66を介し、信号装置12により供給されるステータス信号として、クロック信号24を受信し、信号装置12に共通の接地電位が、入力68で受信される。入力66におけるステータス信号は、上述した仕方で変圧器58により変圧され、生じたAC出力電圧は、整流器60およびコンデンサ74により、一定のDC電圧に変換される。DC電圧はコイル76を励起し、その結果、作動接点80a、80bは二重の電機子78により作動され、電力路52は閉じられる。
【0066】
しかし、DC電圧が、例えば信号装置12と安全切換装置14との間の接続線(ここに図示せず)内の短絡のために、入力66、68に印加された場合、AC出力電圧は、変圧器58の第2の側64で誘導されず、その結果、コイル76は励起されず、作動接点80a、80bのメーク接点は開かれる。
【0067】
この好ましい実施形態では、入力66、68に加えて、安全切換装置14は、スタートボタン82を安全切換装置14へと接続できるようにするために、さらなる端子を備えている。スタートボタン82は、一方で入力66に接続されており、他方で、作動接点80a、80bのブレーク接点により、変圧器58に接続されている。そのうえ、この実施形態では、入力66は、作動接点80a、80bのメーク接点により、変圧器58に接続されている。この種の自動施錠式の(self-latching)相互接続により、守られることになる技術設備16が勝手に起動することを、不具合の発生時に防止することができる。むしろ、起動は、スタートボタン82が作動し、対応するクロック信号24が入力66に印加され、作動接点80a、80bのブレーク接点(常時閉接点)が閉じているときにのみ可能である。励起コイル76が通電され作動接点80a、80bが接続されるとすぐに、リレー48が作動接点80a、80bのメーク接点により閉に自動施錠し、入力66におけるクロック信号はメーク接点を介して、変圧器58に導かれる。
【0068】
特に好ましい実施形態では、励起コイル76は、作動力から外れた保持力を有している。作動力(例えば、約0.7ワット)は、二重の電機子78を通電するのに必要な電力であり、保持力(例えば、約0.21ワット)は、二重の電機子を通電位置に保持するのに必要な電力である。好ましい実施形態では、信号装置12または安全切換装置14自体が、リレー48が通電されたのち、クロック信号24の電力を低減できる。この目的のために、安全切換装置14は、保持回路内に抵抗器84を選択的に設けてもよい。
【0069】
信号装置が低減処理(reduction operation)を行う場合、信号装置12の信号発生器30はまず、第1のRMS値を有する第1のクロック信号を供給し、次いで、二重の電機子78が通電されたのち、第2のRMS値を有する第2のクロック信号を供給し、その際、第2のRMS値は第1のRMS値よりも低くされている。エネルギー節約、および、コイル76により熱に変換される電力損失の低減に加えて、そのうえ安全性も追加的に増し加えることができる。これは、コイル76を作動させるのに必要なエネルギーが、規定の期間(例えば設備の始動後20~200ミリ秒の期間)のみ供給されるためである。ゆえに、機械の偶発的な起動を効果的に防止することができる。
【0070】
ここに示す実施形態では、安全切換装置14は、供給電圧を受け取るために、さらなる端子を必要としない。これは、切り換えのために必要なエネルギーが、信号装置12のクロック信号24から排他的に取り出されるからである。そのうえ、安全切換装置14は、電力供給路52のフェールセーフな切り離し用に、さらなる電子部品を必要としない。ゆえに、安全切換装置14全体を、非常に小型に実現することができる。一実施形態では、電気回路構成全体を、二重電機子リレーの後側のプリント回路基板上に配置することができる。次いで、安全切換装置14全体は、1cm×3cm×6cmよりも小さい寸法を有する矩形の外径を有していてもよい。
【0071】
費用効果の高い仕方での実現だけでなく、必要な部品を最小限に低減することにより、非常に小型の設計を、かつ、ひいては安全技術で珍しい新規な構造設計を可能にしている。例えば、最小主義の安全切換装置14を、ハウジングなしに、収縮チューブ内に配置することもできるであろう。収縮チューブでは、信号装置12への二線式回線が入力側で突出しており、電力供給路52用の2つの接続が、出力側に設けられている。絶縁用埋め込み樹脂(insulating potting compound)による簡単な鋳造が同様に考え得る。このようにして、安全回路構成を特に良好に、小さな個々のシステムに組み込むことができるであろう。