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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】送信回路及び該送信回路の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/03 20060101AFI20220331BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20220331BHJP
   H04B 3/04 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
H04L25/03 C
H04L25/02 S
H04B3/04 C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2017247540
(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2019114943
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591128453
【氏名又は名称】株式会社メガチップス
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100109715
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 英明
(72)【発明者】
【氏名】安達 信吾
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-217999(JP,A)
【文献】特開2004-357004(JP,A)
【文献】特開2004-015621(JP,A)
【文献】特開2002-368600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0242171(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/03
H04L 25/02
H04B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
終端抵抗に並列に接続され、前記終端抵抗に流れる電流の大きさ及び方向を制御する電流出力回路と、
入力信号に基づいて、第1の制御信号対及び前記第1の制御信号対を論理反転かつ遅延させた第2の制御信号対を生成する制御回路と、を備え、
前記電流出力回路は、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対に従って制御され、前記電流出力回路の出力電流にインジェクション電流を重畳する電流重畳回路を含
前記電流出力回路は、
終端抵抗に並列に接続され、前記終端抵抗に所定の電流を流すとともに、前記第1の制御信号対に従って電流の方向を制御する第1のドライバ回路と、
前記終端抵抗に並列に接続され、前記終端抵抗に所定の電流を流すとともに、前記第2の制御信号対に従って電流の方向を制御する第2のドライバ回路と、を含み、
前記制御回路は、前記第1のドライバ回路から前記終端抵抗へ流れる電流の方向と前記第2のドライバ回路から前記終端抵抗へ流れる電流の方向が相反する方向から同じ方向へ切り替わるタイミングから所定時間、前記電流出力回路の出力電流に前記インジェクション電流が重畳されるように、前記電流重畳回路を制御する、
送信回路。
【請求項2】
請求項1に記載の送信回路であって、
記第1のドライバ回路は、
第1の差動回路と、
電源から前記第1の差動回路へ流れる電流を定電流制御する第1の定電流回路と、
前記第1の差動回路からグランドへ流れる電流を定電流制御する第2の定電流回路と、を含み、
前記電流重畳回路は、
前記第1の定電流回路に並列に電流経路を構成する第1のインジェクション回路と、
前記第2の定電流回路に並列に電流経路を構成する第2のインジェクション回路と、を含む、送信回路。
【請求項3】
請求項2に記載の送信回路であって、前記第2のドライバ回路は、
第2の差動回路と、
前記電源から前記第2の差動回路へ流れる電流を定電流制御する第3の定電流回路と、
前記第2の差動回路から前記グランドへ流れる電流を定電流制御する第4の定電流回路と、を含み、
前記電流重畳回路は、
前記第3の定電流回路に並列に電流経路を構成する第3のインジェクション回路と、
前記第4の定電流回路に並列に電流経路を構成する第4のインジェクション回路と、を含む、送信回路。
【請求項4】
請求項3に記載の送信回路であって、前記タイミングは、前記終端抵抗の電圧の振幅が第1の状態から前記第1の状態よりも大きい第2の状態に変化するタイミングである、送信回路。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の送信回路であって、前記制御回路は、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対に基づいて、前記第1~第4のインジェクション回路を制御する、送信回路。
【請求項6】
請求項5に記載の送信回路であって、前記制御回路は、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対に基づいて、前記第1及び第3のインジェクション回路を制御する第1のインジェクション制御回路と、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対に基づいて、前記第2及び第4のインジェクション回路を制御する第2のインジェクション制御回路と、を含む、送信回路。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか1項に記載の送信回路であって、前記第1~第4のインジェクション回路の各々は、電流値が異なる複数の電流経路を含む、送信回路。
【請求項8】
請求項に記載の送信回路であって、
前記第1のドライバ回路は、
第1の差動回路と、
電源から前記第1の差動回路へ流れる電流を定電流制御する第1の定電流回路と、
前記第1の差動回路からグランドへ流れる電流を定電流制御する第2の定電流回路と、を含み、
記電流重畳回路は、
前記第1の定電流回路に接続され前記グランドへの電流経路を構成する第5のインジェクション回路と、
前記第2の定電流回路に接続され前記電源への電流経路を構成する第6のインジェクション回路と、を含む、送信回路。
【請求項9】
請求項8に記載の送信回路であって、
前記第2のドライバ回路は、
第2の差動回路と、
前記電源から前記第2の差動回路へ流れる電流を定電流制御する第3の定電流回路と、
前記第2の差動回路から前記グランドへ流れる電流を定電流制御する第4の定電流回路と、を含み、
記電流重畳回路は、
記第3の定電流回路に接続され前記グランドへの電流経路を構成する第7のインジェクション回路と、
記第4の定電流回路に接続され前記電源への電流経路を構成する第8のインジェクション回路と、を含む、送信回路。
【請求項10】
請求項9に記載の送信回路であって、前記タイミングは、前記終端抵抗の電圧の振幅が第1の状態から前記第1の状態よりも小さい第2の状態に変化するタイミングである、送信回路。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の送信回路であって、前記制御回路は、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対に基づいて、前記第5~第8のインジェクション回路を制御する、送信回路。
【請求項12】
請求項11に記載の送信回路であって、前記制御回路は、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対に基づいて、前記第5及び第7のインジェクション回路を制御する第3のインジェクション制御回路と、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対に基づいて、前記第6及び第8のインジェクション回路を制御する第4のインジェクション制御回路と、を含む、送信回路。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか1項に記載の送信回路であって、前記第5~第8のインジェクション回路の各々は、電流値が異なる複数の電流経路を含む、送信回路。
【請求項14】
請求項3~13のいずれか1項に記載の送信回路であって、前記制御回路は、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対を前記第1のドライバ回路及び前記第2のドライバ回路へ出力するタイミングを遅延させる、送信回路。
【請求項15】
請求項3~14のいずれか1項に記載の送信回路であって、前記第1の差動回路及び前記第2の差動回路は、コンプリメンタリ出力の差動回路であり、
前記第1の制御信号対は、前記入力信号及び前記入力信号を論理反転させた信号を含み、前記第2の制御信号対は、前記入力信号を遅延させた信号及び前記入力信号を論理反転かつ遅延させた信号を含む、送信回路。
【請求項16】
終端抵抗に並列に接続され、前記終端抵抗に流れる電流の大きさ及び方向を制御する電流出力回路を備える送信回路の制御方法であって、
前記電流出力回路は、
終端抵抗に並列に接続され、前記終端抵抗に所定の電流を流すとともに、前記第1の制御信号対に従って電流の方向を制御する第1のドライバ回路と、
前記終端抵抗に並列に接続され、前記終端抵抗に所定の電流を流すとともに、前記第2の制御信号対に従って電流の方向を制御する第2のドライバ回路と、を含み、
前記方法は、
入力信号に基づいて、第1の制御信号対及び前記第1の制御信号対を論理反転かつ遅延させた第2の制御信号対を生成することと
前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対に従って、前記電流出力回路を制御するとともに、前記電流出力回路の出力電流にインジェクション電流を重畳することとを含み、
前記インジェクション電流を重畳することは、前記第1のドライバ回路から前記終端抵抗へ流れる電流の方向と前記第2のドライバ回路から前記終端抵抗へ流れる電流の方向が同じ方向から相反する方向へ切り替わるタイミングから所定時間、前記電流出力回路の出力電流に前記インジェクション電流が重畳することを含む、
送信回路の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信回路及び該送信回路の制御方法に関し、特に高速シリアル伝送に用いられる送信回路及び該送信回路の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速シリアル伝送に用いられる送受信技術において、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)やmini-LVDSといった規格が採用されている。LVDSは、米国規格協会(ANSI:American National Standards Institute)によって1994年に標準化された短距離用のデジタル有線伝送技術である。LVDSに従う送受信回路は、1対の伝送路を使用する差動信号システムであり、具体的には、送信装置が2つの異なる電位を有する差動信号を送信し、受信装置は、その2つの信号の電位差を比較することによって信号の論理状態を判断する。これにより、LVDSに従う送受信回路は、差動信号を小振幅・低消費電力で高速に伝送することができる。また、mini-LVDSは、LVDSから派生した規格であり、LVDSよりも電圧振幅を小さくし、消費電力を抑えている。
【0003】
LVDSに従う送受信に用いられる技術として、伝送路の高速化と長距離化のために、伝送路の減衰特性を補償するプリエンファシス又はディエンファシスと呼ばれる信号調整技術が知られている。プリエンファシス及びディエンファシスは、いずれも、ローパス・フィルタとして働く伝送路で減衰する高周波成分を補うためのものであり、送信側で行われる信号調整技術である。プリエンファシス及びディエンファシスは、いずれも相対的に信号の高周波成分の電圧が低周波成分の電圧よりも大きくなるように出力電圧を調整する点で共通するが、その手法は異なる。具体的には、プリエンファシスは、信号の高周波成分の電圧を増幅させて送信し、他方、ディエンファシスは、低周波成分の電圧を減衰させて送信する。
【0004】
下記の特許文献1~5は、プリエンファシスに関する技術を開示する。具体的には、特許文献1は、出力信号を遅延させた遅延信号、及びその遅延信号を反転させた信号を用いて、伝送用信号の立ち上がり及び立ち下がり時にプリエンファシスを行うプリエンファシス回路を開示する。
【0005】
また、特許文献2は、プリエンファシス用のバッファ回路を用いて、信号の立ち上がり及び立ち下がり時にプリエンファシスを行うプリエンファシス回路を開示する。
【0006】
また、特許文献3は、バンドパスフィルタ回路を介した差動入力信号を差動電流出力に変換する第2のトランスコンダクタンスアンプを備え、第1のトランスコンダクタンスアンプの差動電流出力に第2のトランスコンダクタンスアンプの差動電流出力を加算してプリエンファシスを行うプリエンファシス回路を開示する。
【0007】
また、特許文献4は、入力信号を遅延させるとともに振幅の調整を行うことによって得られるエンファシス成分信号を所定の比率で出力信号に加減算してプリエンファシスを行うエンファシス信号生成回路を開示する。
【0008】
また、特許文献5は、インバータ出力回路のPMOSトランジスタのプレチャージを行うブーストプルアップ回路と、インバータ出力回路のNMOSトランジスタのプレチャージを行うブーストプルダウン回路とを備えるプリエンファシス回路を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-312614号公報
【文献】特開2006-311446号公報
【文献】特開2009-147512号公報
【文献】特開2012-104953号公報
【文献】特表2014-526206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
プリエンファシスは、信号の高周波成分の電圧を増幅させて送信することから、出力信号の電圧振幅が大きくなり、その分だけ信号遷移に時間を要するため、より高速な伝送を実現する上では、低周波成分の電圧を減衰させて送信するディエンファシスの方が適している。
【0011】
しかしながら、より高速な信号伝送の要求が高まりつつある中で、ディエンファシスにおいても信号遷移の遅れが問題となりつつある。
【0012】
このような状況に鑑み本発明はなされたものであり、その目的は、より高速な信号伝送が可能な送信回路を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、より高精度なディエンファシスが可能な送信回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、以下に示す発明特定事項乃至は技術的特徴を含んで構成される。
【0015】
すなわち、ある観点に従う本発明は、終端抵抗に並列に接続され、前記終端抵抗に流れる電流の大きさ及び方向を制御する電流出力回路と、入力信号に基づいて、第1の制御信号対及び前記第1の制御信号対を論理反転かつ遅延させた第2の制御信号対を生成する制御回路と、を備える送信回路である。前記電流出力回路は、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対に従って制御され、前記電流出力回路の出力電流にインジェクション電流を重畳する電流重畳回路を含む。
【0016】
電流出力回路の出力電流は、インジェクション電流が重畳されることによって、信号遷移の応答性が向上する。したがって、ディエンファシスにおいて信号遷移の遅れが生じ得るタイミングで、電流出力回路の出力電流にインジェクション電流を重畳することで、信号遷移の遅れに起因する出力信号波形の劣化を低減することができる。それによって、より高速な信号伝送が可能になるとともに、より高精度なディエンファシスが可能になる。
【0017】
前記電流出力回路は、終端抵抗に並列に接続され、前記終端抵抗に所定の電流を流すとともに、前記第1の制御信号対に従って電流の方向を制御する第1のドライバ回路と、前記終端抵抗に並列に接続され、前記終端抵抗に所定の電流を流すとともに、前記第2の制御信号対に従って電流の方向を制御する第2のドライバ回路と、を含んでもよい。前記第1のドライバ回路は、第1の差動回路と、電源から前記第1の差動回路へ流れる電流を定電流制御する第1の定電流回路と、前記第1の差動回路からグランドへ流れる電流を定電流制御する第2の定電流回路と、を含んでもよい。前記電流重畳回路は、前記第1の定電流回路に並列に電流経路を構成する第1のインジェクション回路と、前記第2の定電流回路に並列に電流経路を構成する第2のインジェクション回路と、を含んでもよい。
【0018】
電源から第1の差動回路へ流れる電流は、第1のインジェクション回路の電流経路が構成される間、第1の定電流回路を通じて流れる定電流に第1のインジェクション回路の電流経路を流れる電流が加算されて増加する。同様に、第1の差動回路からグランドへ流れる電流は、第2のインジェクション回路の電流経路が構成される間、第2の定電流回路を通じて流れる定電流に第2のインジェクション回路の電流経路を流れる電流が加算されて増加する。つまり、第1及び第2のインジェクション回路によって定電流経路に並列に別の電流経路が構成されることにより、その間、第1の差動回路の出力電流が増加し、信号遷移の立ち上がり応答性が向上する。したがって、ディエンファシスにおいて信号遷移の立ち上がりの遅れが生じ得るタイミングで第1及び第2のインジェクション回路の電流経路を構成することで、信号遷移の立ち上がりの遅れに起因する出力信号波形の劣化を低減することができる。それによって、より高速な信号伝送が可能になるとともに、より高精度なディエンファシスが可能になる。
【0019】
前記第2のドライバ回路は、第2の差動回路と、前記電源から前記第2の差動回路へ流れる電流を定電流制御する第3の定電流回路と、前記第2の差動回路から前記グランドへ流れる電流を定電流制御する第4の定電流回路と、前記第3の定電流回路に並列に電流経路を構成する第3のインジェクション回路と、前記第4の定電流回路に並列に電流経路を構成する第4のインジェクション回路と、を含んでもよい。
【0020】
電源から第2の差動回路へ流れる電流は、第3のインジェクション回路の電流経路が構成される間、第3の定電流回路を通じて流れる定電流に第3のインジェクション回路の電流経路を流れる電流が加算されて増加する。同様に、第2の差動回路からグランドへ流れる電流は、第4のインジェクション回路の電流経路が構成される間、第4の定電流回路を通じて流れる定電流に第4のインジェクション回路の電流経路を流れる電流が加算されて増加する。つまり、第3及び第4のインジェクション回路によって定電流経路に並列に別の電流経路がさらに構成されることにより、その間、第2の差動回路の出力電流も増加し、信号遷移の立ち上がり応答性がさらに向上する。したがって、ディエンファシスにおいて信号遷移の立ち上がりの遅れが生じ得るタイミングで第3及び第4のインジェクション回路の電流経路をさらに構成することで、信号遷移の立ち上がりの遅れに起因する出力信号波形の劣化をさらに低減することができる。
【0021】
前記制御回路は、前記第1のドライバ回路から前記終端抵抗へ流れる電流の方向と前記第2のドライバ回路から前記終端抵抗へ流れる電流の方向が相反する方向から同じ方向へ切り替わるタイミングから所定時間、前記第1~第4のインジェクション回路の電流経路を構成してもよい。
【0022】
このタイミングは、出力電圧(終端抵抗の電圧)の振幅が相対的に小さい状態(ディエンファシスが行われている状態)から相対的に大きい状態(ディエンファシスが行われていない状態)に変化するタイミングであるため、信号遷移の立ち上がりの遅れが生じやすい。したがって、このタイミングから所定時間、第1~第4のインジェクション回路の電流経路を構成することによって、信号遷移の立ち上がりの遅れに起因する出力信号波形の劣化を的確に低減することができる。
【0023】
前記制御回路は、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対に基づいて、前記第1~第4のインジェクション回路を制御してもよい。
【0024】
それによって、的確なタイミングで第1~第4のインジェクション回路の電流経路を構成することが容易に可能になる。
【0025】
前記制御回路は、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対に基づいて、前記第1及び第3のインジェクション回路を制御する第1のインジェクション制御回路と、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対に基づいて、前記第2及び第4のインジェクション回路を制御する第2のインジェクション制御回路と、を含んでもよい。
【0026】
すなわち、電源側のインジェクション回路(第1及び第3のインジェクション回路)とグランド側のインジェクション回路(第2及び第4のインジェクション回路)を別々のインジェクション制御回路で制御する構成としてもよい。それによって、電源側のインジェクション回路とグランド側のインジェクション回路とを異なる回路構成としてもインジェクション制御のタイミングを一致させることが容易に可能になるので、回路構成の柔軟性をより向上させることができる。
【0027】
前記第1~第4のインジェクション回路の各々は、電流値が異なる複数の電流経路を含んでもよい。
【0028】
それによって、第1~第4のインジェクション回路で構成される電流経路の電流値を調整することができるので、より的確なインジェクション制御が可能になる。
【0029】
前記電流重畳回路は、前記第1の定電流回路の出力から前記グランドへの電流経路を構成する第5のインジェクション回路と、前記第2の定電流回路の出力から前記グランドへの電流経路を構成する第6のインジェクション回路と、を含んでもよい。
【0030】
電源から第1の差動回路へ流れる電流は、第5のインジェクション回路の電流経路が構成される間、第1の定電流回路を通じて流れる定電流から第5のインジェクション回路の電流経路を流れる電流が減算されて減少する。同様に、第1の差動回路からグランドへ流れる電流は、第6のインジェクション回路の電流経路が構成される間、第2の定電流回路を通じて流れる定電流から第6のインジェクション回路の電流経路を流れる電流が減算されて減少する。つまり、第5及び第6のインジェクション回路の電流経路が構成されることにより、その間、第1の差動回路の出力電流が減少し、信号遷移の立ち下がり応答性が向上する。したがって、ディエンファシスにおいて信号遷移の立ち下がりの遅れが生じ得るタイミングで第5及び第6のインジェクション回路の電流経路を構成することで、信号遷移の立ち下がりの遅れに起因する出力信号波形の劣化を低減することができる。それによって、より高速な信号伝送が可能になるとともに、より高精度なディエンファシスが可能になる。
【0031】
前記電流重畳回路は、前記電源から前記第3の定電流回路の入力への電流経路を構成する第7のインジェクション回路と、前記電源から前記第4の定電流回路の入力への電流経路を構成する第8のインジェクション回路と、を含んでもよい。
【0032】
電源から第2の差動回路へ流れる電流は、第7のインジェクション回路の電流経路が構成される間、第3の定電流回路を通じて流れる定電流から第7のインジェクション回路の電流経路を流れる電流が減算されて減少する。同様に、第2の差動回路からグランドへ流れる電流は、第8のインジェクション回路の電流経路が構成される間、第4の定電流回路を通じて流れる定電流から第8のインジェクション回路の電流経路を流れる電流が減算されて減少する。つまり、第7及び第8のインジェクション回路の電流経路がさらに構成されることにより、その間、第2の差動回路の出力電流も減少し、信号遷移の立ち下がり応答性がさらに向上する。したがって、ディエンファシスにおいて信号遷移の立ち下がりの遅れが生じ得るタイミングで第7及び第8のインジェクション回路の電流経路をさらに構成することで、信号遷移の立ち下がりの遅れに起因する出力信号波形の劣化をさらに低減することができる。
【0033】
前記制御回路は、前記第1のドライバ回路から前記終端抵抗へ流れる電流の方向と前記第2のドライバ回路から前記終端抵抗へ流れる電流の方向が同じ方向から相反する方向へ切り替わるタイミングから所定時間、前記第5~第8のインジェクション回路の電流経路を構成してもよい。
【0034】
このタイミングは、出力電圧(終端抵抗の電圧)の振幅が相対的に大きい状態(ディエンファシスが行われていない状態)から相対的に小さい状態(ディエンファシスが行われている状態)に変化するタイミングであるため、信号遷移の立ち下がりの遅れが生じやすい。したがって、このタイミングから所定時間、第5~第8のインジェクション回路の電流経路を構成することによって、信号遷移の立ち下がりの遅れに起因する出力信号波形の劣化を的確に低減することができる。
【0035】
前記制御回路は、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対に基づいて、前記第5~第8のインジェクション回路を制御するように構成されてもよい。
【0036】
それによって、的確なタイミングで第5~第8のインジェクション回路の電流経路を構成することが容易に可能になる。
【0037】
前記制御回路は、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対に基づいて、前記第5及び第7のインジェクション回路を制御する第3のインジェクション制御回路と、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対に基づいて、前記第6及び第8のインジェクション回路を制御する第4のインジェクション制御回路と、を含んでもよい。
【0038】
すなわち、電源側のインジェクション回路(第5及び第7のインジェクション回路)とグランド側のインジェクション回路(第6及び第8のインジェクション回路)を別々のインジェクション制御回路で制御する構成としてもよい。それによって、電源側のインジェクション回路とグランド側のインジェクション回路とを異なる回路構成としてもインジェクション制御のタイミングを一致させることが容易に可能になるので、回路構成の柔軟性をより向上させることができる。
【0039】
前記第5~第8のインジェクション回路の各々は、電流値が異なる複数の電流経路を含んでもよい。
【0040】
それによって、第5~第8のインジェクション回路で構成される電流経路の電流値を調整することができるので、より的確なインジェクション制御が可能になる。
【0041】
前記制御回路は、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対を前記第1のドライバ回路及び前記第2のドライバ回路へ出力するタイミングを遅延させてもよい。
【0042】
それによって、インジェクション制御信号対を生成する論理演算回路等で生ずる遅延時間に起因して第1~第4のインジェクション回路の電流経路が構成されるタイミングが的確なタイミングに間に合わないような場合、第1のドライバ回路及び第2のドライバ回路の動作タイミングを遅らせてタイミングを合わせることが可能になる。
【0043】
前記第1の差動回路及び前記第2の差動回路は、コンプリメンタリ出力の差動回路であってもよい。前記第1の制御信号対は、前記入力信号及び前記入力信号を論理反転させた信号を含み、前記第2の制御信号対は、前記入力信号を遅延させた信号及び前記入力信号を論理反転かつ遅延させた信号を含んでもよい。
【0044】
それによって、より高速な送信回路を提供することができる。
【0045】
さらに、別の観点に従う本発明は、終端抵抗に並列に接続され、前記終端抵抗に流れる電流の大きさ及び方向を制御する電流出力回路を備える送信回路の制御方法であって、入力信号に基づいて、第1の制御信号対及び前記第1の制御信号対を論理反転かつ遅延させた第2の制御信号対を生成し、前記第1の制御信号対及び前記第2の制御信号対に従って、前記電流出力回路を制御するとともに、前記電流出力回路の出力電流にインジェクション電流を重畳する、送信回路の制御方法である。
【0046】
電流出力回路の出力電流は、インジェクション電流が重畳されることによって、信号遷移の応答性が向上する。したがって、ディエンファシスにおいて信号遷移の遅れが生じ得るタイミングで、電流出力回路の出力電流にインジェクション電流を重畳することで、信号遷移の遅れに起因する出力信号波形の劣化を低減することができる。それによって、より高速な信号伝送が可能になるとともに、より高精度なディエンファシスが可能になる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、より高速な信号伝送が可能な送信回路を提供することができる。
【0048】
また、本発明によれば、より高精度なディエンファシスが可能な送信回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明に係る送受信システムの構成を示したブロック図である。
図2】本発明に係る送信機の回路構成を示した回路図である。
図3】本発明に係る送信機の動作状態の一例を示した回路図であり、制御信号INP及びINN_1UIの値が0、制御信号INN及びINP_1UIの値が1であるときの動作状態を示したものである。
図4】本発明に係る送信機の動作状態の一例を示した回路図であり、制御信号INP及びINP_1UIの値が0、制御信号INN及びINN_1UIの値が1であるときの動作状態を示したものである。
図5】本発明に係る送信機の動作状態の一例を示した回路図であり、制御信号INN及びINN_1UIの値が0、制御信号INP及びINP_1UIの値が1であるときの動作状態を図示したものである。
図6】本発明に係る送信機の動作状態の一例を示した回路図であり、制御信号INN及びINP_1UIの値が0、制御信号INP及びINN_1UIの値が1であるときの動作状態を示したものである。
図7】本発明に係る送信機の動作を示したタイミングチャートである。
図8】第1のインジェクション制御回路の構成を示した回路図である。
図9】第1のインジェクション制御回路の動作を示したタイミングチャートである。
図10】第2のインジェクション制御回路の構成を示した回路図である。
図11】第2のインジェクション制御回路の動作を示したタイミングチャートである。
図12】送信機の出力電圧を示したタイミングチャートであり、インジェクション制御を実行しない場合の出力電圧を示したものである。
図13】送信機の出力電圧を示したタイミングチャートであり、インジェクション制御を実行する場合の出力電圧を示したものである。
図14】送信機の出力電圧波形のシミュレーション結果を図示したものである。
図15】本発明に係る送信機の回路構成他の実施例を示した回路図である。
図16】第3のインジェクション制御回路の構成を示した回路図である。
図17】第3のインジェクション制御回路の動作を示したタイミングチャートである。
図18】第4のインジェクション制御回路の構成を示した回路図である。
図19】第4のインジェクション制御回路の動作を示したタイミングチャートであ
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施形態を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0051】
本発明に係る送受信回路の構成について、図1を参照しながら説明する。
【0052】
図1は、本発明に係る送受信システムの構成を示したブロック図である。本発明に係る送受信システムの一実施例は、LVDS規格に従う差動信号で信号を送受信する送受信システムであり、送信機100及び受信機200を備える。
【0053】
送信機100は、ドライバユニット10及び送信側終端抵抗RT1を備える。送信側終端抵抗RT1は、例えば100Ωの抵抗である。送信側終端抵抗RT1は、ラダー抵抗等を含む可変抵抗器であってもよい。送信側終端抵抗RT1は、一端が出力端子OUTPに接続され、他端が出力端子OUTNに接続されている。ドライバユニット10の一対の出力信号線は、送信側終端抵抗RT1の両端にそれぞれ接続されている。
【0054】
受信機200は、入力端子IN1及びIN2並びに入力端子IN1と入力端子IN2との間に接続されている受信側終端抵抗RT2を備える。受信側終端抵抗RT2は、例えば100Ωの抵抗である。受信側終端抵抗RT2は、可変抵抗器であってもよい。入力端子IN1及びIN2は、ケーブル等を通じて送信機100の出力端子OUTP及びOUTNにそれぞれ接続される。受信側終端抵抗RT2は、ドライバユニット10の送信側終端抵抗RT1との並列合成抵抗となる終端抵抗RTを構成する。受信機200は、既知のものを用いることができ、したがって、その具体的な回路構成についての図示及び説明は省略する。
【0055】
図2は、本発明に係る送信機100の回路構成を示した回路図である。
【0056】
本発明に係る「送信回路」としての送信機100は、ドライバユニット10、バイアス回路20及び制御回路30を備える。
【0057】
「電流出力回路」としてのドライバユニット10は、終端抵抗RTに流れる電流の大きさ及び方向を制御する回路であり、メインドライバユニット10m及びエンファシスドライバユニット10eを含む。
【0058】
「定電流制御回路」としてのバイアス回路20は、メインドライバユニット10m及びエンファシスドライバユニット10eの各々の出力電流の定電流制御を行う回路である。バイアス回路20は、メインドライバユニット10m及びエンファシスドライバユニット10eの各々の出力電流の変動を抑制することができるので、出力電流の変動に起因する出力信号の電圧振幅の変動を低減することができる。
【0059】
制御回路30は、例えば既知のマイコン制御回路であり、入力信号に基づいて、メインドライバユニット10m及びエンファシスドライバユニット10e並びにバイアス回路20を制御する。より具体的には、制御回路30は、入力信号に基づいて、「第1の制御信号対」としての制御信号INP及びINN、並びに「第1の制御信号対」を遅延させた「第2の制御信号対」としての制御信号INP_1UI及びINN_1UIを生成して出力する。制御信号INPは、入力信号であり、制御信号INNは、入力信号を論理反転させた信号である。制御信号INP_1UIは、入力信号を遅延させた信号であり、制御信号INN_1UIは、入力信号を遅延させた信号である。制御信号INP_1UI及びINN_1UIの遅延量は、当該実施例では1UI(Unit Interval)となっているが、特にこれに限定されるものではない。
【0060】
終端抵抗RTには、2つの抵抗R1及びR2が並列に接続される。より具体的には、抵抗R1の一端が終端抵抗RTの一端に接続され、抵抗R1の他端が抵抗R2の一端に接続され、抵抗R2の他端が終端抵抗RTの他端に接続される。抵抗R1及びR2の抵抗値は、いずれも例えば10kΩ等、送信側終端抵抗RT1及び受信側終端抵抗RT2の抵抗値より十分大きい抵抗値とするのが好ましい。また、抵抗R1及びR2の抵抗値は、同じ抵抗値であってもよく、異なる抵抗値であってもよい。
【0061】
「第1のドライバ回路」としてのメインドライバユニット10mは、終端抵抗RTに並列に接続され、終端抵抗RTに所定の電流を流すとともに、制御信号INP及びINNに従って電流の方向を制御する回路である。
【0062】
メインドライバユニット10mは、例えば、コンプリメンタリ出力の定電流差動回路であり、8つのトランジスタPm1~Pm4及びNm1~Nm4並びにコンパレータ11を含む。トランジスタPm1~Pm4は、P型MOS電界効果トランジスタである。トランジスタNm1~Nm4は、N型MOS電界効果トランジスタである。コンパレータ11は、例えば、OTA(オペレーショナル・トランスコンダクタ・アンプ)であり得る。
【0063】
トランジスタPm1は、ソースが電源に接続され、ドレインがノードPTAILに接続され、ゲートには、バイアス回路20が出力する定電流制御信号PBIASが入力される。
【0064】
トランジスタPm2は、ソースがノードPTAILに接続され、ドレインがトランジスタNm2のドレインに接続されている。トランジスタNm2のソースは、ノードNTAILに接続されている。トランジスタPm2のドレインとトランジスタNm2のドレインとの接続点は、終端抵抗RTの一端に接続される。トランジスタPm2及びNm2のゲートには、制御信号INPが入力される。
【0065】
トランジスタPm3は、ソースがノードPTAILに接続され、ドレインがトランジスタNm3のドレインに接続されている。トランジスタNm3のソースは、ノードNTAILに接続されている。トランジスタPm3のドレインとトランジスタNm3のドレインとの接続点は、終端抵抗RTの他端に接続される。トランジスタPm3及びNm3のゲートには、制御信号INNが入力される。
【0066】
トランジスタNm1は、ドレインがノードNTAILに接続され、ソースがグランドに接続され、ゲートには、コンパレータ11が出力する基準電位制御信号NBIASが入力される。コンパレータ11の非反転入力は、抵抗R1と抵抗R2との接続点に接続され、コンパレータ11の反転入力には、参照電圧VOCが入力される。コンパレータ11は、抵抗R1と抵抗R2との接続点の電圧と参照電圧VOCとを比較し、その差分に従う基準電位制御信号NBIASを出力する。
【0067】
トランジスタPm4は、ソースが電源に接続され、ドレインがノードPTAILに接続され、ゲートには、制御回路30が出力するインジェクション制御信号INJ_Pが入力される。トランジスタNm4は、ドレインがノードNTAILに接続され、ソースがグランドに接続され、ゲートには、制御回路30が出力するインジェクション制御信号INJ_Nが入力される。
【0068】
「第2のドライバ回路」としてのエンファシスドライバユニット10eは、終端抵抗RTに並列に接続され、終端抵抗RTに所定の電流を流すとともに、制御信号INP_1UI及びINN_1UIに従って電流の方向を制御する回路である。
【0069】
エンファシスドライバユニット10eは、例えば、コンプリメンタリ出力の定電流差動回路であり、8つのトランジスタPe1~Pe4及びNe1~Ne4並びにコンパレータ11を含む。トランジスタPe1~Pe4は、P型MOS電界効果トランジスタである。トランジスタNe1~Ne4は、N型MOS電界効果トランジスタである。
【0070】
トランジスタPe1は、ソースが電源に接続され、ドレインがノードPTAIL_1UIに接続され、ゲートには、バイアス回路20が出力する定電流制御信号PBIASが入力される。
【0071】
トランジスタPe2は、ソースがノードPTAIL_1UIに接続され、ドレインがトランジスタNe2のドレインに接続されている。トランジスタNe2のソースは、ノードNTAIL_1UIに接続されている。トランジスタPe2のドレインとトランジスタNe2のドレインとの接続点は、終端抵抗RTの一端に接続される。トランジスタPe2及びNe2のゲートには、制御信号INN_1UIが入力される。
【0072】
トランジスタPe3は、ソースがノードPTAIL_1UIに接続され、ドレインがトランジスタNe3のドレインに接続されている。トランジスタNe3のソースは、ノードNTAIL_1UIに接続されている。トランジスタPe3のドレインとトランジスタNe3のドレインとの接続点は、終端抵抗RTの他端に接続される。トランジスタPe3及びNe3のゲートには、制御信号INP_1UIが入力される。
【0073】
トランジスタNe1は、ドレインがノードNTAIL_1UIに接続され、ソースがグランドに接続され、ゲートには、コンパレータ11が出力する基準電位制御信号NBIASが入力される。コンパレータ11の非反転入力は、抵抗R1と抵抗R2との接続点に接続され、コンパレータ11の反転入力には、参照電圧VOCが入力される。コンパレータ11は、抵抗R1と抵抗R2との接続点の電圧と参照電圧VOCとを比較し、その差分に従う基準電位制御信号NBIASを出力する。
【0074】
トランジスタPe4は、ソースが電源に接続され、ドレインがノードPTAIL_1UIに接続され、ゲートには、制御回路30が出力するインジェクション制御信号INJ_Pが入力される。トランジスタNe4は、ドレインがノードNTAIL_1UIに接続され、ソースがグランドに接続され、ゲートには、制御回路30が出力するインジェクション制御信号INJ_Nが入力される。
【0075】
メインドライバユニット10mの出力電流は、定電流制御信号PBIASに従って動作するトランジスタPm1(第1の定電流回路)、及び基準電位制御信号NBIASに従って動作するトランジスタNm1(第2の定電流回路)による定電流制御によって所定電流となるように制御される。同様に、エンファシスドライバユニット10eの出力電流は、定電流制御信号PBIASに従って動作するトランジスタPe1(第3の定電流回路)、及び基準電位制御信号NBIASに従って動作するトランジスタNe1(第4の定電流回路)による定電流制御によって所定電流となるように制御される。
【0076】
「第1のインジェクション回路」としてのトランジスタPm4は、インジェクション制御信号INJ_Pに従ってトランジスタPm1に並列に電流経路を構成する。「第2のインジェクション回路」としてのトランジスタNm4は、インジェクション制御信号INJ_Nに従ってトランジスタNm1に並列に電流経路を構成する。「第3のインジェクション回路」としてのトランジスタPe4は、インジェクション制御信号INJ_Pに従ってトランジスタPe1に並列に電流経路を構成する。「第4のインジェクション回路」としてのトランジスタNe4は、インジェクション制御信号INJ_Nに従ってトランジスタNe1に並列に電流経路を構成する。
【0077】
図3図6は、本発明に係る送信機100の動作状態の一例を示した回路図である。
【0078】
図3は、制御信号INP及びINN_1UIの値が0(電圧がローレベル)、制御信号INN及びINP_1UIの値が1(電圧がハイレベル)であるときの動作状態を示したものである。
【0079】
この動作状態では、メインドライバユニット10mは、トランジスタPm2及びNm3がONし、トランジスタPm3及びNm2がOFFしている状態になる。それによって、メインドライバユニット10mの出力電流Imainは、トランジスタPm1からトランジスタPm2を通じて終端抵抗RTへ順方向に流れ、終端抵抗RTからトランジスタNm3を通じてトランジスタNm1へ流れる。また、エンファシスドライバユニット10eは、トランジスタPe2及びNe3がONし、トランジスタPe3及びNe2がOFFしている状態になる。それによって、エンファシスドライバユニット10eの出力電流Iempは、トランジスタPe1からトランジスタPe2を通じて終端抵抗RTへ順方向に流れ、終端抵抗RTからトランジスタNe3を通じてトランジスタNe1へ流れる。
【0080】
したがって、図3に示した動作状態では、出力電流Imainが終端抵抗RTに流れる方向と出力電流Iempが終端抵抗RTに流れる方向は、ともに順方向で同じ方向となり、終端抵抗RTには、出力電流Imainに出力電流Iempが加算された順方向電流が流れる。そのため、終端抵抗RTの電圧は、出力電流Imainに出力電流Iempを加算した電流値に終端抵抗RTの抵抗値を乗じた値の順方向電圧となる。
【0081】
図4は、制御信号INP及びINP_1UIの値が0、制御信号INN及びINN_1UIの値が1であるときの動作状態を示したものである。
【0082】
この動作状態では、メインドライバユニット10mは、トランジスタPm2及びNm3がONし、トランジスタPm3及びNm2がOFFしている状態になる。それによって、メインドライバユニット10mの出力電流Imainは、トランジスタPm1からトランジスタPm2を通じて終端抵抗RTへ順方向に流れ、終端抵抗RTからトランジスタNm3を通じてトランジスタNm1へ流れる。他方、エンファシスドライバユニット10eは、トランジスタPe3及びNe2がONし、トランジスタPe2及びNe3がOFFしている状態になる。それによって、エンファシスドライバユニット10eの出力電流Iempは、トランジスタPe1からトランジスタPe3を通じて終端抵抗RTへ逆方向に流れ、終端抵抗RTからトランジスタNe2を通じてトランジスタNe1へ流れる。
【0083】
したがって、図4に示した動作状態では、出力電流Imainが終端抵抗RTに流れる方向は順方向で、出力電流Iempが終端抵抗RTに流れる方向は逆方向で、相反する方向となり、終端抵抗RTには、出力電流Imainから出力電流Iempが減算された順方向電流が流れる。そのため、終端抵抗RTの電圧は、出力電流Imainから出力電流Iempを減算した電流値に終端抵抗RTの抵抗値を乗じた値の電圧となる。
【0084】
図5は、制御信号INN及びINN_1UIの値が0、制御信号INP及びINP_1UIの値が1であるときの動作状態を示したものである。
【0085】
この動作状態では、メインドライバユニット10mは、トランジスタPm3及びNm2がONし、トランジスタPm2及びNm3がOFFしている状態になる。それによって、メインドライバユニット10mの出力電流Imainは、トランジスタPm1からトランジスタPm3を通じて終端抵抗RTへ逆方向に流れ、終端抵抗RTからトランジスタNm2を通じてトランジスタNm1へ流れる。他方、エンファシスドライバユニット10eは、トランジスタPe2及びNe3がONし、トランジスタPe3及びNe2がOFFしている状態になる。それによって、エンファシスドライバユニット10eの出力電流Iempは、トランジスタPe1からトランジスタPe2を通じて終端抵抗RTへ順方向に流れ、終端抵抗RTからトランジスタNe3を通じてトランジスタNe1へ流れる。
【0086】
したがって、図5に示した動作状態では、出力電流Imainが終端抵抗RTに流れる方向は逆方向で、出力電流Iempが終端抵抗RTに流れる方向は順方向で、相反する方向となり、終端抵抗RTには、出力電流Imainから出力電流Iempが減算された逆方向電流が流れる。そのため、終端抵抗RTの電圧は、出力電流Imainから出力電流Iempを減算した電流値に終端抵抗RTの抵抗値を乗じた値の逆方向電圧となる。
【0087】
図6は、制御信号INN及びINP_1UIの値が0、制御信号INP及びINN_1UIの値が1であるときの動作状態を示したものである。
【0088】
この動作状態では、メインドライバユニット10mは、トランジスタPm3及びNm2がONし、トランジスタPm2及びNm3がOFFしている状態になる。それによって、メインドライバユニット10mの出力電流Imainは、トランジスタPm1からトランジスタPm3を通じて終端抵抗RTへ逆方向に流れ、終端抵抗RTからトランジスタNm2を通じてトランジスタNm1へ流れる。また、エンファシスドライバユニット10eは、トランジスタPe3及びNe2がONし、トランジスタPe2及びNe3がOFFしている状態になる。それによって、エンファシスドライバユニット10eの出力電流Iempは、トランジスタPe1からトランジスタPe3を通じて終端抵抗RTへ逆方向に流れ、終端抵抗RTからトランジスタNe2を通じてトランジスタNe1へ流れる。
【0089】
したがって、図6に示した動作状態では、出力電流Imainが終端抵抗RTに流れる方向と出力電流Iempが終端抵抗RTに流れる方向は、ともに逆方向で同じ方向となり、終端抵抗RTには、出力電流Imainに出力電流Iempが加算された逆方向電流が流れる。そのため、終端抵抗RTの電圧は、出力電流Imainに出力電流Iempを加算した電流値に終端抵抗RTの抵抗値を乗じた値の逆方向電圧となる。
【0090】
図7は、本発明に係る送信機100の動作を示したタイミングチャートである。
【0091】
入力信号が1UI毎に遷移するタイミング(1UI Transition)では、制御信号INPと制御信号INN_1UIとが同じ論理となるとともに、制御信号INNと制御信号INP_1UIとが同じ論理となる(タイミングT1~T2及びタイミングT4以降)。このタイミングでは、前述したように、メインドライバユニット10mの出力電流Imainとエンファシスドライバユニット10eの出力電流Iempの方向が同じ方向となるため、終端抵抗RTの電圧VOD(出力端子OUTPと出力端子OUTNとの間の電圧)は、相対的に高い電圧となる。
【0092】
他方、入力信号が連続した同じビットパターン(CID:Consecutive Identical Digits)となるタイミング(タイミングT2~T4)では、2ビット目以降(タイミングT3~T4)、制御信号INPと制御信号INN_1UIとが異なる論理となるとともに、制御信号INNと制御信号INP_1UIとが異なる論理となる。このタイミングでは、前述したように、メインドライバユニット10mの出力電流Imainとエンファシスドライバユニット10eの出力電流Iempの方向が相反する方向となるため、終端抵抗RTの電圧VODは、相対的に低い電圧となる。
【0093】
つまり、入力信号が連続した同じビットパターンのときは、2ビット目以降から終端抵抗RTの電圧VODが減衰するディエンファシス効果が得られることになる。
【0094】
また、終端抵抗RTの電圧VODの大きさは、メインドライバユニット10mの出力電流Imainに対してエンファシスドライバユニット10eの出力電流Iempが加算されるか減算されるかによって変化する。そのため、メインドライバユニット10mの出力電流Imain及びエンファシスドライバユニット10eの出力電流Iempは、制御信号INPと制御信号INN_1UIとが同じ論理となるタイミングであっても異なる論理となるタイミングであっても変わらないし、制御信号INNと制御信号INP_1UIとが同じ論理となるタイミングであっても異なる論理となるタイミングであっても変わらない。したがって、送信機100の消費電力は常に一定になるので、消費電力の変動が極めて少ないディエンファシス制御が可能になる。
【0095】
図8は、第1のインジェクション制御回路40の構成を示した回路図である。
【0096】
制御回路30は、制御信号INP及びINN_1UIに基づいて、インジェクション制御信号INJ_Pを生成し、トランジスタPm4(第1のインジェクション回路)及びトランジスタPe4(第3のインジェクション回路)を制御する第1のインジェクション制御回路40を含む。
【0097】
第1のインジェクション制御回路40は、エクスクルシブORゲート41、セレクタ42、5つのNOTゲート43~47及びNANDゲート48を含む。
【0098】
エクスクルシブORゲート41は、制御信号INP及びINN_1UIが入力され、出力がセレクタ42の選択信号入力Sに接続されている。セレクタ42は、ローレベル(グランド電位)の信号L及びハイレベル(電源電圧レベル)の信号Hが入力され、選択信号入力Sの電位に従って、信号L又はHのいずれかを選択的に出力する。より具体的には、セレクタ42の出力は、選択信号入力Sがローレベルのときはハイレベルとなり、選択信号入力がハイレベルのときはローレベルとなる。
【0099】
NOTゲート43は、入力がセレクタ42の出力に接続され、出力がNOTゲート44の入力に接続されている。NOTゲート44の出力は、NOTゲート45の入力に接続されている。NOTゲート43~45は、セレクタ42の出力信号を遅延させた信号を得るために設けられている遅延回路であり、その遅延時間は、NOTゲートの接続段数(奇数段)に応じて定まる。
【0100】
NANDゲート48は、セレクタ42の出力信号及びNOTゲート45の出力信号が入力され、出力がNOTゲート46の入力に接続されている。NOTゲート46の出力は、NOTゲート47の入力に接続されている。NOTゲート47の出力信号は、インジェクション制御信号INJ_Pとなる。NOTゲート46及び47は、主にバッファとして機能し、論理演算処理においては不要であるため、設けなくてもよい。
【0101】
図9は、第1のインジェクション制御回路40の動作を示したタイミングチャートである。
【0102】
エクスクルシブORゲート41の出力信号O_XORは、入力信号の排他的論理和となるから、制御信号INPの論理と制御信号INN_1UIの論理とが不一致のとき(タイミングT11以前及びタイミングT13~T14)は、ハイレベルであり、制御信号INPの論理と制御信号INN_1UIの論理とが一致するとき(タイミングT11~T13及びT14以降)は、ローレベルとなる。セレクタ42の出力信号O_MUXは、出力信号O_XORがローレベルのときはハイレベルとなり、出力信号O_XORがハイレベルのときはローレベルとなる。
【0103】
NOTゲート45の出力信号O_MUX_DELAYは、出力信号O_MUXを奇数回、論理反転させて遅延させた信号となる。したがって、出力信号O_MUX_DELAYは、出力信号O_MUXがローレベルからハイレベルになるタイミング(タイミングT11及びT14)から所定の遅延時間後のタイミング(タイミングT12及びT15)で、ハイレベルからローレベルになる。
【0104】
NANDゲート48の出力信号O_NANDは、入力信号の否定論理積となるから、出力信号O_MUX及び出力信号O_MUX_DELAYがいずれもハイレベルである間のみ、ローレベルとなる。したがって、インジェクション制御信号INJ_Pも同様に、出力信号O_MUX及び出力信号O_MUX_DELAYがいずれもハイレベルである間のみ、ローレベルとなる(タイミングT11~T12及びT14~T15)。
【0105】
このインジェクション制御信号INJ_Pがローレベルとなる時間は、NOTゲート43~45で構成されている遅延回路の遅延時間によって規定される。この時間は、インジェクション制御信号INJ_Pのインジェクションパルス幅IPWであり、トランジスタPm4及びトランジスタPe4がONする時間である。
【0106】
図10は、第2のインジェクション制御回路50の構成を示した回路図である。
【0107】
制御回路30は、制御信号INN及びINP_1UIに基づいて、インジェクション制御信号INJ_Nを生成し、トランジスタNm4(第2のインジェクション回路)及びトランジスタNe4(第4のインジェクション回路)を制御する第2のインジェクション制御回路50を含む。
【0108】
第2のインジェクション制御回路50は、エクスクルシブORゲート51、セレクタ52、5つのNOTゲート53~57及びNORゲート58を含む。
【0109】
エクスクルシブORゲート51は、制御信号INN及びINP_1UIが入力され、出力がセレクタ52の選択信号入力Sに接続されている。セレクタ52は、ハイレベルの信号H及びローレベルの信号Lが入力され、選択信号入力Sの電位に従って、信号H又はLのいずれかを選択的に出力する。より具体的には、セレクタ52の出力は、選択信号入力Sがローレベルのときはローレベルとなり、選択信号入力がハイレベルのときはハイレベルとなる。
【0110】
NOTゲート53は、入力がセレクタ52の出力に接続され、出力がNOTゲート54の入力に接続されている。NOTゲート54の出力は、NOTゲート55の入力に接続されている。NOTゲート53~55は、セレクタ52の出力信号を遅延させた信号を得るために設けられている遅延回路であり、その遅延時間は、NOTゲートの接続段数(奇数段)に応じて定まる。
【0111】
NORゲート58は、セレクタ52の出力信号及びNOTゲート55の出力信号が入力され、出力がNOTゲート56の入力に接続されている。NOTゲート56の出力は、NOTゲート57の入力に接続されている。NOTゲート57の出力信号は、インジェクション制御信号INJ_Nとなる。NOTゲート56及び57は、主にバッファとして機能し、論理演算処理においては不要であるため、設けなくてもよい。
【0112】
図11は、第2のインジェクション制御回路50の動作を示したタイミングチャートである。
【0113】
エクスクルシブORゲート51の出力信号O_XORは、入力信号の排他的論理和となるから、制御信号INNの論理と制御信号INP_1UIの論理とが不一致のとき(タイミングT21以前及びタイミングT23~T24)は、ハイレベルであり、制御信号INNの論理と制御信号INP_1UIの論理とが一致するとき(タイミングT21~T23及びT24以降)は、ローレベルとなる。セレクタ52の出力信号O_MUXは、出力信号O_XORがローレベルのときはローレベルとなり、出力信号O_XORがハイレベルのときはハイレベルとなる。
【0114】
NOTゲート55の出力信号O_MUX_DELAYは、出力信号O_MUXを奇数回、論理反転させて遅延させた信号となる。したがって、出力信号O_MUX_DELAYは、出力信号O_MUXがハイレベルからローレベルになるタイミング(タイミングT21及びT24)から所定の遅延時間後のタイミング(タイミングT22及びT25)で、ローレベルからハイレベルになる。
【0115】
NORゲート58の出力信号O_NORは、入力信号の否定論理和となるから、出力信号O_MUX及び出力信号O_MUX_DELAYがいずれもローレベルである間のみ、ハイレベルとなる。したがって、インジェクション制御信号INJ_Nも同様に、出力信号O_MUX及び出力信号O_MUX_DELAYがいずれもローレベルである間のみ、ハイレベルとなる(タイミングT21~T22及びT24~T25)。
【0116】
このインジェクション制御信号INJ_Nがハイレベルとなる時間は、NOTゲート53~55で構成されている遅延回路の遅延時間によって規定される。この時間は、インジェクション制御信号INJ_Nのインジェクションパルス幅IPWであり、トランジスタNm4及びトランジスタNe4がONする時間である。
【0117】
図12及び図13は、送信機100の出力電圧を示したタイミングチャートである。図12は、インジェクション制御を実行しない場合の出力電圧を示したものであり、図13は、インジェクション制御を実行する場合の出力電圧を示したものである。図14は、送信機100の出力電圧波形のシミュレーション結果(ニアエンド)を示したものであり、図14(A)は、インジェクション制御を実行しない場合、図14(B)は、インジェクション制御を実行する場合をそれぞれ示したものである。
【0118】
終端抵抗RTの電圧VODは、インジェクション制御を実行しない場合、ディエンファシス制御によって振幅が変化するタイミング、特に振幅が大きくなるタイミングで信号遷移の遅れが生じやすい(タイミングT31~T32及びT33~T34)。本発明に係る送信機100は、そのタイミングで出力電流にインジェクション電流を重畳するインジェクション制御を可能にするものである。本発明に係る送信機100は、ディエンファシス制御によって終端抵抗RTの電圧VODの振幅が変化するタイミングでインジェクション制御を実行することによって、出力電流にインジェクション電流が重畳されて増加するため、信号遷移の立ち上がり応答性が向上し、信号遷移の立ち上がりの遅れを低減することができる(タイミングT41~T42及びT45~T46)。それによって、信号遷移の立ち上がりの遅れに起因する出力信号波形の劣化を低減することができるので、より高速な信号伝送が可能になるとともに、より高精度なディエンファシスが可能になる。
【0119】
より具体的には、再び図2を参照しながら説明すると、電源からメインドライバユニット10mへ流れる電流は、トランジスタPm4がONして電源からノードPTAILへの電流経路が構成される間、その電流経路を流れるインジェクション電流I1がトランジスタPm1を通じて流れる定電流に加算されて増加する。同様に、メインドライバユニット10mからグランドへ流れる電流は、トランジスタNm4がONしてノードNTAILからグランドへの電流経路が構成される間、その電流経路を流れるインジェクション電流I2がトランジスタNm1を通じて流れる定電流に加算されて増加する。つまり、トランジスタPm4及びNm4がONして定電流経路に並列に別の電流経路が構成されることにより、その間、メインドライバユニット10mの出力電流が増加し、信号遷移の立ち上がり応答性が向上する。
【0120】
また、電源からエンファシスドライバユニット10eへ流れる電流は、トランジスタPe4がONして電源からノードPTAIL_1UIへの電流経路が構成される間、その電流経路を流れるインジェクション電流I3がトランジスタPe1を通じて流れる定電流に加算されて増加する。同様に、エンファシスドライバユニット10eからグランドへ流れる電流は、トランジスタNe4がONしてノードNTAIL_1UIからグランドへの電流経路が構成される間、その電流経路を流れるインジェクション電流I4がトランジスタNe1を通じて流れる定電流に加算されて増加する。トランジスタPe4及びNe4がONして定電流経路に並列に別の電流経路が構成されることにより、その間、エンファシスドライバユニット10eの出力電流も増加し、さらに信号遷移の立ち上がり応答性が向上する。
【0121】
制御回路30が上記のインジェクション制御を実行するタイミングは、例えば、終端抵抗RTへ流れる出力電流Imainの方向と出力電流Iempの方向が相反する方向から同じ方向へ切り替わるタイミングから所定時間である。このタイミングは、終端抵抗RTの電圧VODの振幅が相対的に小さい状態(ディエンファシスが行われている状態)から相対的に大きい状態(ディエンファシスが行われていない状態)に変化するタイミングであるため、前述したように、信号遷移の立ち上がりの遅れが生じやすい(タイミングT41~T42及びT45~T46)。したがって、このタイミングから所定時間、上記のインジェクション制御を実行することによって、信号遷移の立ち上がりの遅れに起因する出力信号波形の劣化を的確に低減することができる。
【0122】
図15は、本発明に係る送信機100の回路構成の他の実施例を示した回路図である。
【0123】
図15の送信機100の回路構成は、図2の送信機100のトランジスタPm4、Nm4、Pe4及びNe4に代えて、トランジスタPm5、Nm5、Pe5及びNe5が設けられている以外は、図2の送信機100の回路構成と同じである。あるいは、図2の送信機100に加えて、さらに、トランジスタPm5、Nm5、Pe5及びNe5を設けてもよい。
【0124】
トランジスタPm5及びPe5は、P型MOS電界効果トランジスタである。トランジスタNm5~Ne5は、N型MOS電界効果トランジスタである。
【0125】
トランジスタPm5は、ドレインがグランドに接続され、ソースがノードPTAILに接続され、ゲートには、制御回路30が出力するインジェクション制御信号INJ2_Pが入力される。トランジスタNm5は、ソースがノードNTAILに接続され、ドレインが電源に接続され、ゲートには、制御回路30が出力するインジェクション制御信号INJ2_Nが入力される。
【0126】
トランジスタPe5は、ドレインがグランドに接続され、ソースがノードPTAIL_1UIに接続され、ゲートには、制御回路30が出力するインジェクション制御信号INJ2_Pが入力される。トランジスタNe5は、ソースがノードNTAIL_1UIに接続され、ドレインが電源に接続され、ゲートには、制御回路30が出力するインジェクション制御信号INJ2_Nが入力される。
【0127】
「第5のインジェクション回路」としてのトランジスタPm5は、インジェクション制御信号INJ2_Pに従ってトランジスタPm1の出力(ドレイン)からグランドへの電流経路を構成する。「第6のインジェクション回路」としてのトランジスタNm5は、インジェクション制御信号INJ2_Nに従って電源からトランジスタNm1の入力(ドレイン)への電流経路を構成する。「第7のインジェクション回路」としてのトランジスタPe5は、インジェクション制御信号INJ2_Pに従ってトランジスタPe1の出力(ドレイン)からグランドへの電流経路を構成する。「第8のインジェクション回路」としてのトランジスタNe5は、インジェクション制御信号INJ2_Nに従って電源からトランジスタNe1の入力(ドレイン)への電流経路を構成する。
【0128】
図16は、第3のインジェクション制御回路60の構成を示した回路図である。
【0129】
制御回路30は、制御信号INP及びINN_1UIに基づいて、インジェクション制御信号INJ2_Pを生成し、トランジスタPm5(第5のインジェクション回路)及びトランジスタPe5(第7のインジェクション回路)を制御する第3のインジェクション制御回路60を含む。
【0130】
第3のインジェクション制御回路60は、エクスクルシブORゲート61、セレクタ62、5つのNOTゲート63~67及びNANDゲート68を含む。
【0131】
エクスクルシブORゲート61は、制御信号INP及びINN_1UIが入力され、出力がセレクタ62の選択信号入力Sに接続されている。セレクタ62は、ローレベル(グランド電位)の信号L及びハイレベル(電源電圧レベル)の信号Hが入力され、選択信号入力Sの電位に従って、信号L又はHのいずれかを選択的に出力する。より具体的には、セレクタ62の出力は、選択信号入力Sがローレベルのときはローレベルとなり、選択信号入力がハイレベルのときはハイレベルとなる。
【0132】
NOTゲート63は、入力がセレクタ62の出力に接続され、出力がNOTゲート64の入力に接続されている。NOTゲート64の出力は、NOTゲート65の入力に接続されている。NOTゲート63~65は、セレクタ62の出力信号を遅延させた信号を得るために設けられている遅延回路であり、その遅延時間は、NOTゲートの接続段数(奇数段)に応じて定まる。
【0133】
NANDゲート68は、セレクタ62の出力信号及びNOTゲート65の出力信号が入力され、出力がNOTゲート66の入力に接続されている。NOTゲート66の出力は、NOTゲート67の入力に接続されている。NOTゲート67の出力信号は、インジェクション制御信号INJ2_Pとなる。NOTゲート66及び67は、主にバッファとして機能し、論理演算処理においては不要であるため、省略し得る。
【0134】
図17は、第3のインジェクション制御回路60の動作を示したタイミングチャートである。
【0135】
エクスクルシブORゲート61の出力信号O_XORは、入力信号の排他的論理和となるから、制御信号INPの論理と制御信号INN_1UIの論理とが不一致のとき(タイミングT51以前及びタイミングT52~T54)は、ハイレベルであり、制御信号INPの論理と制御信号INN_1UIの論理とが一致するとき(タイミングT51~T52及びT54以降)は、ローレベルとなる。セレクタ62の出力信号O_MUXは、出力信号O_XORがローレベルのときはローレベルとなり、出力信号O_XORがハイレベルのときはハイレベルとなる。
【0136】
NOTゲート65の出力信号O_MUX_DELAYは、出力信号O_MUXを奇数回、論理反転させて遅延させた信号となる。したがって、出力信号O_MUX_DELAYは、出力信号O_MUXがローレベルからハイレベルになるタイミング(タイミングT52)から所定の遅延時間後のタイミング(タイミングT53)で、ハイレベルからローレベルになる。
【0137】
NANDゲート68の出力信号O_NANDは、入力信号の否定論理積となるから、出力信号O_MUX及び出力信号O_MUX_DELAYがいずれもハイレベルである間のみ、ローレベルとなる。したがって、インジェクション制御信号INJ2_Pも同様に、出力信号O_MUX及び出力信号O_MUX_DELAYがいずれもハイレベルである間のみ、ローレベルとなる(タイミングT52~T53)。
【0138】
このインジェクション制御信号INJ2_Pがローレベルとなる時間は、NOTゲート63~65で構成されている遅延回路の遅延時間によって規定される。この時間は、インジェクション制御信号INJ2_Pのインジェクションパルス幅IPWであり、トランジスタPm5及びトランジスタPe5がONする時間である。
【0139】
図18は、第4のインジェクション制御回路70の構成を示した回路図である。
【0140】
制御回路30は、制御信号INN及びINP_1UIに基づいて、インジェクション制御信号INJ2_Nを生成し、トランジスタNm5(第6のインジェクション回路)及びトランジスタNe5(第8のインジェクション回路)を制御する第4のインジェクション制御回路70を含む。
【0141】
第2のインジェクション制御回路70は、エクスクルシブORゲート71、セレクタ72、5つのNOTゲート73~77及びNORゲート78を含む。
【0142】
エクスクルシブORゲート71は、制御信号INN及びINP_1UIが入力され、出力がセレクタ72の選択信号入力Sに接続されている。セレクタ72は、ハイレベルの信号H及びローレベルの信号Lが入力され、選択信号入力Sの電位に従って、信号H又はLのいずれかを選択的に出力する。より具体的には、セレクタ72の出力は、選択信号入力Sがローレベルのときはハイレベルとなり、選択信号入力がハイレベルのときはローレベルとなる。
【0143】
NOTゲート73は、入力がセレクタ72の出力に接続され、出力がNOTゲート74の入力に接続されている。NOTゲート74の出力は、NOTゲート75の入力に接続されている。NOTゲート73~75は、セレクタ72の出力信号を遅延させた信号を得るために設けられている遅延回路であり、その遅延時間は、NOTゲートの接続段数(奇数段)に応じて定まる。
【0144】
NORゲート78は、セレクタ72の出力信号及びNOTゲート75の出力信号が入力され、出力がNOTゲート76の入力に接続されている。NOTゲート76の出力は、NOTゲート77の入力に接続されている。NOTゲート77の出力信号は、インジェクション制御信号INJ2_Nとなる。NOTゲート76及び77は、主にバッファとして機能し、論理演算処理においては不要であるため、設けなくてもよい。
【0145】
図19は、第4のインジェクション制御回路70の動作を示したタイミングチャートである。
【0146】
エクスクルシブORゲート71の出力信号O_XORは、入力信号の排他的論理和となるから、制御信号INNの論理と制御信号INP_1UIの論理とが不一致のとき(タイミングT61以前及びタイミングT62~T64)は、ハイレベルであり、制御信号INNの論理と制御信号INP_1UIの論理とが一致するとき(タイミングT61~T62及びT64以降)は、ローレベルとなる。セレクタ72の出力信号O_MUXは、出力信号O_XORがローレベルのときはハイレベルとなり、出力信号O_XORがハイレベルのときはローレベルとなる。
【0147】
NOTゲート75の出力信号O_MUX_DELAYは、出力信号O_MUXを奇数回、論理反転させて遅延させた信号となる。したがって、出力信号O_MUX_DELAYは、出力信号O_MUXがハイレベルからローレベルになるタイミング(タイミングT62)から所定の遅延時間後のタイミング(タイミングT63)で、ローレベルからハイレベルになる。
【0148】
NORゲート78の出力信号O_NORは、入力信号の否定論理和となるから、出力信号O_MUX及び出力信号O_MUX_DELAYがいずれもローレベルである間のみ、ハイレベルとなる。したがって、インジェクション制御信号INJ_Nも同様に、出力信号O_MUX及び出力信号O_MUX_DELAYがいずれもローレベルである間のみ、ハイレベルとなる(タイミングT62~T63)。
【0149】
このインジェクション制御信号INJ2_Nがハイレベルとなる時間は、NOTゲート73~75で構成されている遅延回路の遅延時間によって規定される。この時間は、インジェクション制御信号INJ2_Nのインジェクションパルス幅IPWであり、トランジスタNm5及びトランジスタNe5がONする時間である。
【0150】
このように、制御回路30が上記のインジェクション制御を実行するタイミングは、例えば、終端抵抗RTへ流れる出力電流Imainの方向と出力電流Iempの方向が同じ方向から相反する方向へ切り替わるタイミングから所定時間としてもよい。このタイミングは、終端抵抗RTの電圧VODの振幅が相対的に大きい状態(ディエンファシスが行われていない状態)から相対的に小さい状態(ディエンファシスが行われている状態)に変化するタイミングであるため、信号遷移の立ち下がりの遅れが生じやすい(タイミングT43~T44)。したがって、このタイミングから所定時間、上記のインジェクション制御を実行することによって、信号遷移の立ち下がりの遅れに起因する出力信号波形の劣化を的確に低減することができる。
【0151】
より具体的には、再び図15を参照しながら説明すると、電源からメインドライバユニット10mへ流れる電流は、トランジスタPm5がONしてノードPTAILからグランドへの電流経路が構成される間、その電流経路を流れるインジェクション電流I5がトランジスタPm1を通じて流れる定電流から減算されて減少する。同様に、メインドライバユニット10mからグランドへ流れる電流は、トランジスタNm5がONして電源からノードNTAILへの電流経路が構成される間、その電流経路を流れるインジェクション電流I6がトランジスタNm1を通じて流れる定電流から減算されて減少する。つまり、トランジスタPm5及びNm5がONして定電流経路とは逆方向の電流経路が構成されることにより、その間、メインドライバユニット10mの出力電流が減少し、信号遷移の立ち下がりの応答性が向上する。
【0152】
また、電源からエンファシスドライバユニット10eへ流れる電流は、トランジスタPe5がONしてノードPTAIL_1UIからグランドへの電流経路が構成される間、その電流経路を流れるインジェクション電流I7がトランジスタPe1を通じて流れる定電流から減算されて減少する。同様に、エンファシスドライバユニット10eからグランドへ流れる電流は、トランジスタNe5がONして電源からノードNTAIL_1UIへの電流経路が構成される間、その電流経路を流れるインジェクション電流I8がトランジスタNe1を通じて流れる定電流から減算されて減少する。トランジスタPe5及びNe5がONして定電流経路とは逆方向の電流経路が構成されることにより、その間、エンファシスドライバユニット10eの出力電流も減少し、さらに信号遷移の立ち下がり応答性が向上する。
【0153】
本発明に係る送信機100において、インジェクション電流I1~I8は、例えば、トランジスタPm4、Nm4、Pe4及びNe4並びにトランジスタPm5、Nm5、Pe5及びNe5の各々のサイズ(ゲート幅等)を調整することによって、適切な電流値に設定することができる。適切な電流値は、例えば回路シミュレーションの結果から決定することができる。また、インジェクション制御信号INJ_Pとインジェクション制御信号INJ_Nは、インジェクションパルスに起因する高周波ノイズを低減する上では、可能な限りタイミング及びインジェクションパルス幅IPWを高精度に一致させるのが好ましい。同様に、インジェクション制御信号INJ2_Pとインジェクション制御信号INJ2_Nは、インジェクションパルスに起因する高周波ノイズを低減する上では、可能な限りタイミング及びインジェクションパルス幅IPWを高精度に一致させるのが好ましい。また、インジェクションパルス幅IPWは、終端抵抗RTの電圧VODの振幅にオーバーシュートが生じないようにする上で、例えば、1UIの幅より十分小さいのが好ましく、1UIを超えないのが好ましい。
【0154】
また、本発明に係る送信機100において、制御回路30は、制御信号INP及びINNをメインドライバユニット10mへ出力するタイミング、並びに制御信号INP_1UI及びINN_1UIをエンファシスドライバユニット10eへ出力するタイミングを遅延させてもよい。それによって、第1のインジェクション制御回路40、第2のインジェクション制御回路50、第3のインジェクション制御回路60及び第4のインジェクション制御回路70で生ずる遅延時間に起因して、インジェクション制御信号INJ_P及びINJ_Nの出力タイミング並びにインジェクション制御信号INJ2_P及びINJ2_Nの出力タイミングが的確なタイミングに間に合わないような場合、メインドライバユニット10m及びエンファシスドライバユニット10eの動作タイミングを遅らせてタイミングを合わせることが可能になる。
【0155】
また、本発明に係る送信機100において、メインドライバユニット10mは、電源からノードPTAILへの電流経路を構成するインジェクション回路として、トランジスタPm4に加えて、さらに別のトランジスタ等を含んでもよい。さらに、ノードNTAILからグランドへの電流経路を構成するインジェクション回路として、トランジスタNm4に加えて、さらに別のトランジスタ等を含んでもよい。同様に、エンファシスドライバユニット10eは、電源からノードPTAIL_1UIへの電流経路を構成するインジェクション回路として、トランジスタPe4に加えて、さらに別のトランジスタ等を含んでもよい。さらに、ノードNTAIL_1UIからグランドへの電流経路を構成するインジェクション回路として、トランジスタNe4に加えて、さらに別のトランジスタ等を含んでもよい。それによって、インジェクション電流I1~I4の電流値を調整することができるので、より的確なインジェクション制御が可能になる。
【0156】
また、本発明に係る送信機100において、メインドライバユニット10mは、ノードPTAILからグランドへの電流経路を構成するインジェクション回路として、トランジスタPm5に加えて、さらに別のトランジスタ等を含んでもよい。さらに、電源からノードNTAILへの電流経路を構成するインジェクション回路として、トランジスタNm5に加えて、さらに別のトランジスタ等を含んでもよい。同様に、エンファシスドライバユニット10eは、ノードPTAIL_1UIからグランドへの電流経路を構成するインジェクション回路として、トランジスタPe5に加えて、さらに別のトランジスタ等を含んでもよい。さらに、電源からノードNTAIL_1UIへの電流経路を構成するインジェクション回路として、トランジスタNe5に加えて、さらに別のトランジスタ等を含んでもよい。それによって、インジェクション電流I5~I8の電流値を調整することができるので、より的確なインジェクション制御が可能になる。
【0157】
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0158】
例えば、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしてもよく、また、他のステップ、動作又は機能を追加してもよい。
【0159】
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本発明の要旨に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明は、送信回路の分野に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0161】
10 ドライバユニット
10e エンファシスドライバユニット
10m メインドライバユニット
20 バイアス回路
30 制御回路
40 第1のインジェクション制御回路
50 第2のインジェクション制御回路
60 第3のインジェクション制御回路
70 第4のインジェクション制御回路
100 送信機
200 受信機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19