(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】粉末茶混合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23F 3/12 20060101AFI20220331BHJP
A23F 3/06 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A23F3/12 Z
A23F3/06 Z
(21)【出願番号】P 2018012498
(22)【出願日】2018-01-29
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇紀
(72)【発明者】
【氏名】玉木 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】尾上 康介
(72)【発明者】
【氏名】大滝 幹
(72)【発明者】
【氏名】副島 健太
(72)【発明者】
【氏名】上保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寿紀
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/083813(WO,A1)
【文献】日本食品科学工学会誌, 2003年,Vol.50, No.10,p.468-473
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00-5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が20.0~100.0μmであると粉末茶(粉末茶A)と、平均粒子径が7.0~15.0μmである粉末茶(粉末茶B)とを、
粉末茶A:粉末茶B=1:9~9:1の
重量比で混合することを特徴とする、粉末茶混合物の製造方法。
【請求項2】
粉末茶A:粉末茶B=4:6~6:4の
重量比で混合することを特徴とする、請求項1に記載の粉末茶混合物の製造方法。
【請求項3】
前記粉末茶Aを混合機に投入した後、前記粉末茶Bを混合機に投入し、混合機で混合することを特徴とする、請求項1又は2に記載の粉末茶混合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末茶混合物及びその製造方法、並びに粉末茶混合物の分散性向上方法及び香味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
茶は、古来より世界中で親しまれている飲料であって、我国においても、最もポピュラーな嗜好性飲料の一つである。
茶は、その製法によって、発酵茶、半発酵茶、及び不発酵茶等に分類される。茶葉には、例えば、団茶や餅茶といった茶葉を固めた緊圧茶、ばらばらの状態の所謂散茶、及び、更にこれを粉末にしたもの等の形態が存在する。
【0003】
茶葉から茶を抽出する方法も様々に変遷してきた。例えば、昔の中国や日本では抹茶(粉末茶)を茶碗で立てる「抹茶」が一般的であって、この形態は現在も茶道として残っている。現在の急須を使用する形態は古くから広まっているが、更に昨今ではペットボトル緑茶飲料が広く流通し、緑茶飲料の飲用人口は大幅に増大した。
【0004】
近年、抹茶を初めとする粉末茶の風味や健康性が注目され、訪日外国人観光客数の増加も相まって、抹茶を含有させた食品が数多く上市されている。上記ペットボトル緑茶飲料についても、抹茶を初めとする粉末茶を含有させたものが広く流通している。
抹茶を初めとする粉末茶は、原料となる被覆栽培された茶葉をその酸化酵素の働きを失活させた碾茶荒茶へと加工する工程と、碾茶荒茶を整形・分別・乾燥に供して、碾茶に加工する工程と、更には、碾茶を石臼等で粉砕する工程とを含む複雑な方法などにより製造される。
【0005】
前述した時代背景から、近年では抹茶を初めとする粉末茶は茶碗で立てる茶道用の消費量よりも、食品に添加・配合する消費量の方がはるかに多く、今後は和食の無形文化財登録と相まって、国内における消費量だけでなく、海外での消費量の増加も見込まれる。
よって抹茶を初めとする粉末茶に求められる品質は、従来の「茶道」に好適なものから、食品に添加・配合した場合に、容易に加工でき、且つ抹茶を初めとする粉末茶の味わいを食品に付与するという工業用粉末茶としてのニーズへと変化しつつある。
【0006】
抹茶の色調及び分散性向上について、特許文献1には、湯水に分散させて飲用可能な粉末茶の製造方法であって、碾茶を焙煎して細粉砕する工程を有することを特徴とする粉末茶の製造方法が開示されている。しかし、原料となる碾茶を焙煎することが記載されていることからも本来の味わいとは異なるものであり、特に食品添加用としての粉末茶の分散性向上について開示されているものではない。
また、特許文献2には、2番茶以降の茶葉を、乾式・常温で順次小さくなるように段階的に粉砕し、最大粒子径1~30μmに超微粉砕する抹茶が開示されているが、食品添加用の粉末茶の分散性向上については検討されていない。
【0007】
このように、食品添加用の粉末茶には、粉末茶の分散性向上及び香味の保持という明確な課題があるにも関わらず、その技術的ハードルは高く、実現には至っていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-207915号公報
【文献】特開2002-281900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、香味に優れており、且つ溶媒中での分散性にも優れた粉末茶及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、粉末茶混合物を調製するにあたって、平均粒子径が異なる複数種の粉末茶を併用し、且つ平均粒子径が異なる複数種の粉末茶の比率を調整することにより、課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 平均粒子径が20.0~100.0μmである粉末茶(粉末茶A)と、
平均粒子径が7.0~15.0μmである粉末茶(粉末茶B)を含有し、
粉末茶Aと粉末茶Bの重量比が1:9~9:1であることを特徴とする、粉末茶混合物。
[2] 粉末茶Aと粉末茶Bの重量比が4:6~6:4であることを特徴とする、上記[1]に記載の粉末茶混合物。
[3] 平均粒子径が20.0~100.0μmである粉末茶(粉末茶A)を含有することを特徴とする、平均粒子径が7.0~15.0μmである粉末茶(粉末茶B)の分散性向上剤であって、
粉末茶Aと粉末茶Bの重量比が1:9~9:1であることを特徴とする、分散性向上剤。
[4] 粉末茶Aと粉末茶Bの重量比が4:6~6:4であることを特徴とする、上記[3]に記載の分散性向上剤。
[5] 平均粒子径が20.0~100.0μmである粉末茶(粉末茶A)を含有することを特徴とする、平均粒子径が7.0~15.0μmである粉末茶(粉末茶B)の香味向上剤であって、
粉末茶Aと粉末茶Bの重量比が1:9~9:1であることを特徴とする、香味向上剤。
[6] 粉末茶Aと粉末茶Bの重量比が4:6~6:4であることを特徴とする、上記[5]に記載の香味向上剤。
[7] 平均粒子径が20.0~100.0μmである粉末茶(粉末茶A)を、平均粒子径が7.0~15.0μmである粉末茶(粉末茶B)に添加する粉末茶混合物の製造方法であって、
粉末茶Aと粉末茶Bの重量比を1:9~9:1に調整することを特徴とする、粉末茶混合物の製造方法。
[8] 粉末茶Aと粉末茶Bの重量比を4:6~6:4に調整することを特徴とする、請求項7に記載の粉末茶混合物の製造方法。
[9] 平均粒子径が20.0~100.0μmである粉末茶(粉末茶A)を、平均粒子径が7.0~15.0μmである粉末茶(粉末茶B)に添加する粉末茶混合物の分散性向上方法であって、
粉末茶Aと粉末茶Bの重量比を1:9~9:1に調整することを特徴とする、粉末茶混合物の分散性向上方法。
[10] 粉末茶Aと粉末茶Bの重量比を4:6~6:4に調整することを特徴とする、請求項9に記載の粉末茶混合物の分散性向上方法。
[11] 平均粒子径が20.0~100.0μmである粉末茶(粉末茶A)を、平均粒子径が7.0~15.0μmである粉末茶(粉末茶B)に添加する粉末茶混合物の香味向上方法であって、
粉末茶Aと粉末茶Bの重量比を1:9~9:1に調整することを特徴とする、粉末茶混合物の香味向上方法。
[12] 粉末茶Aと粉末茶Bの重量比を4:6~6:4に調整することを特徴とする、上記[11]に記載の粉末茶混合物の香味向上方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、香味に優れており、且つ溶媒中での分散性にも優れた粉末茶混合物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(粉末茶混合物)
本発明における粉末茶混合物とは、茶を原料とし、石臼、ボールミル、ジェットミル等によって粉砕された粉砕茶葉を分級したものを、異なる平均粒子径を有する複数の粉砕茶葉を混合したものをいう。よって、本発明における粉末茶混合物には、2種以上の異なる平均粒子径を有する粉砕茶葉を原料に使用することになるが、平均粒子径が大きいものを粉末茶Aと、平均粒子径が小さいものを粉末茶Bとそれぞれ便宜上呼ぶ。
【0014】
なお、本発明における粉末茶の原料は、チャノキ(茶の木、学名:Camellia sinensis)を原料として使用するものであるが、その種類、育成地、茶時期などは特に限定されるものではない。より具体的には、本発明における粉末茶としては、例えば、緑茶、紅茶、烏龍茶、碾茶などを使用することができるが、植物の道管や師管が粉砕時に繊維として残ることから、覆下栽培を原料とした碾茶や、繊維が残らない加工(強火仕上げ等)を施してから粉砕した茶を特に好適に用いることができる。
【0015】
本発明における粉末茶混合物は、平均粒子径が大きい粉末茶(粉末茶A)の平均粒子径が20.0~100.0μmであり、平均粒子径が小さい粉末茶(粉末茶B)の平均粒子径が7.0~15.0μmである。
また、粉末茶Aの平均粒子径は20.0μm~100.0μmであるのが好ましく、20.0μm~60.0μmであるのがより好ましく、20.0μm~55.0μmであるのがさらに好ましく、20.0μm~50.0μmであるのが最も好ましい。
また、粉末茶Bの平均粒子径は7.0μm~15.0μmであるのが好ましく、7.0μm~13.0μmであるのがより好ましく、8.0μm~13.0μmであるのが最も好ましい。
なお、本発明における粉末茶混合物に使用する原料茶の平均粒子径は、上述の粉砕手段を単独又は併用することにより、本発明が定める範囲内に適宜調整することができる。
【0016】
また、本発明における粉末茶混合物は、粉末茶Aと粉末茶Bの重量比が1:9~9:1であるのが好ましく、2:8~8:2であるのがより好ましく、3:7~7:3であるのがさらに好ましく、4:6~6:4であるのが最も好ましい。
なお、ここでいう重量比とは、原料として配合する各粉末茶の乾燥時の重量に基づくものであって、かかる乾燥重量比は、公知の方法により測定することができる。また、かかる重量比は、原料として配合する各粉末茶の乾燥時の重量に基づき、本発明が定める範囲内に適宜調整することができる。
【0017】
本発明における粉末茶混合物の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、7.0μm~100.0μmであるのが好ましく、8.0μm~80.0μmが好ましく、10.0μm~60.0μmがより好ましく10.0μm~45.0μmが特に好ましく、12.0μm~30.0μmが最も好ましい。
粉末茶混合物の平均粒子径は、原料として配合する各粉末茶の平均粒子径に基づき混合割合を調整することにより、本発明が定める範囲内に適宜調整することができる。
【0018】
また、本発明における粉末茶混合物。の粒子径は、0.2μm~500.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.3μm~400.0μmであり、特に好ましく0.3μm~350.0μmである。
【0019】
また、本発明における粉末茶混合物のモード径は、7.0μm~35.0μmであることが好ましく、8.0μm~30.0μmであることがより好ましく、9.0μm~25.0μmであることが特に好ましく、10.0μm~20.0μmであることが最も好ましい。
なお、モード径とは、出現比率がもっとも大きい粒子径チャンネルであり、分布の極大値を示す値である。
【0020】
本発明における粉末茶混合物のメディアン径は、8.0μm~30.0μmであることが好ましく、10.0μm~28.0μmであることがより好ましく、11.0μm~28.0μmであることが特に好ましく、13.0μm~27.0μmであることが最も好ましい。
【0021】
なお、粉末茶Aのモード径は、5.0μm~100.0μmであることが好ましく、7.0μm~90.0μmであることがより好ましく、10.0μm~85.0μmであることが特に好ましく、18.0μm~80.0μmであることが最も好ましい。
モード径とは、出現比率がもっとも大きい粒子径チャンネルであり、分布の極大値を示す値である。
また、粉末茶Aのメディアン径は8.0μm~60.0μmであることが好ましく、15.0μm~55.0μmであることがより好ましく、15.0μm~50.0μmであることが特に好ましく、20.0μm~55.0μmであることが最も好ましい。
メディアン径とは、D50とも表され、粒子を2分したときに、大きい粒子径側と小さい粒子径側が等量となる粒子径を示す値である。
【0022】
なお、粉末茶Bのモード径は、9.0μm~35.0μmであることが好ましく、10.0μm~30.0μmであることがより好ましく、12.0μm~28.0μmであることが特に好ましく、13.0μm~25.0μmであることが最も好ましい。
メディアン径とは、D50とも表され、粒子を2分したときに、大きい粒子径側と小さい粒子径側が等量となる粒子径を示す値である。
また、粉末茶Aのメディアン径は9.0μm~35.0μmであることが好ましく、9.0μm~30.0μmであることがより好ましく、9.0μm~20.0μmであることが特に好ましく、9.0μm~15.0μmであることが最も好ましい。
メディアン径とは、D50とも表され、粒子を2分したときに、大きい粒子径側と小さい粒子径側が等量となる粒子径を示す値である。
【0023】
(食物繊維含有量)
本発明における粉末茶混合物は、食物繊維(不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維)を含有するものであって、その総量(合計量)は、23mg~80mg/100gであるのが好ましく、28mg~70mg/100gであるのがより好ましく、30mg~60mg/100gであるのがさらに好ましく、30mg~50mg/100gであるのが最も好ましい。
粉末茶混合物おける食物繊維量は、粉末茶A及び粉末茶Bに含まれる食物繊維量をモニターしながら両者の配合割合を適宜調整する方法の他、食物繊維を別途添加することでも調整することができる。また、食物繊維の添加方法は、例えば市販の食物繊維や、粉末茶Aと粉末茶Bを造粒して得た食物繊維を含む造粒物などを添加することもできるが、特に限定されるものではない。
【0024】
(粉末茶混合物の製造方法)
本発明における粉末茶混合物は、平均粒子径が20.0μm~100.0μmである粉末茶(粉末茶A)を、平均粒子径が7.0μm~15.0μmである粉末茶(粉末茶B)に添加し、なお且つ粉末茶Aと粉末茶Bの重量比を1:9~9:1に調整することにより得られる。なお、粉末茶Aと粉末茶Bの混合は公知の方法により実施することができ、粉末茶Aと粉末茶Bの重量比は、上述の方法により実施することができる。
【0025】
(粉末茶混合物の分散性向上方法)
本発明の一態様は、粉末茶混合物の分散性向上方法に関するものであって、平均粒子径が20.0μm~100.0μmである粉末茶(粉末茶A)を、平均粒子径が7.0μm~15.0μmである粉末茶(粉末茶B)に添加し、且つ粉末茶Aと粉末茶Bの重量比を1:9~9:1に調整することにより達せられる。
なお、粉末茶Aと粉末茶Bの混合は公知の方法により実施することができ、粉末茶Aと粉末茶Bの重量比は、上述の方法により実施することができる。
なお、粉末茶Aに先行して粉末茶Bを混合機等に投入すると、粉末茶Bが混合機内の壁面に付着しやすいため、作業の簡便性の観点から、粉末茶Bに先行して粉末茶Aを混合機等に投入することが好ましい。
【0026】
(粉末茶混合物の香味向上方法)
本発明の一態様は、粉末茶混合物の香味向上方法に関するものであって、平均粒子径が20.0μm~100.0μmである粉末茶(粉末茶A)を、平均粒子径が7.0μm~15.0μmである粉末茶(粉末茶B)に添加し、且つ粉末茶Aと粉末茶Bの重量比を1:9~9:1に調整することにより達せられる。
なお、粉末茶Aと粉末茶Bの混合は公知の方法により実施することができ、粉末茶Aと粉末茶Bの重量比は、上述の方法により実施することができる。
なお、粉末茶Aに先行して粉末茶Bを混合機等に投入すると、粉末茶Bが混合機内の壁面に付着しやすいため、作業の簡便性の観点から、粉末茶Bに先行して粉末茶Aを混合機等に投入することが好ましい。
【0027】
(分散性向上剤)
本発明の一態様は、平均粒子径が7.0μm~15.0μmである粉末茶(粉末茶B)の分散性向上剤に関するものであって、平均粒子径が20.0μm~100.0μmである粉末茶(粉末茶A)を含有し、且つ粉末茶Aと粉末茶Bの重量比が1:9~9:1に調整することにより達せられる。
なお、粉末茶Aと粉末茶Bの混合は公知の方法により実施することができ、粉末茶Aと粉末茶Bの重量比は、上述の方法により実施することができる。
なお、粉末茶Aと粉末茶Bの混合は公知の方法により実施することができ、粉末茶Aと粉末茶Bの重量比は、上述の方法により実施することができる。
なお、粉末茶Aに先行して粉末茶Bを混合機等に投入すると、粉末茶Bが混合機内の壁面に付着しやすいため、作業の簡便性の観点から、粉末茶Bに先行して粉末茶Aを混合機等に投入することが好ましい。特に、粉末茶Bを単独で混合機に投入すると、粉末茶Bの粒子同士が接着して多きな粒子(ダマ)になる場合があるため、より効果的な分散性を得るためには、上述の投入手順を採用するのが好適である。
【0028】
(香味向上剤)
本発明の一態様は、平均粒子径が7.0μm~15.0μmである粉末茶(粉末茶B)の香味向上剤に関するものであって、平均粒子径が20.0μm~100.0μmで粉末茶(粉末茶A)を含有し、且つ粉末茶Aと粉末茶Bの重量比が1:9~9:1に調整することにより達せられる。
なお、粉末茶Aと粉末茶Bの混合は公知の方法により実施することができ、粉末茶Aと粉末茶Bの重量比は、上述の方法により実施することができる。
なお、粉末茶Aに先行して粉末茶Bを混合機等に投入すると、粉末茶Bが混合機内の壁面に付着しやすいため、作業の簡便性の観点から、粉末茶Bに先行して粉末茶Aを混合機等に投入することが好ましい。特に、粉末茶Bを単独で混合機に投入すると、粉末茶Bの粒子同士が接着して多きな粒子(ダマ)になる場合があるため、より効果的な分散性を得るためには、上述の投入手順を採用するのが好適である。
【0029】
(飲食品)
本発明における粉末茶混合物は、各種飲食品に配合することができる。飲食品の種類は特に限定されるものではないが、例えば牛乳、クリーム、ヨーグルト等の乳製品、各種乳飲料、各種清涼飲料、各種アルコール飲料、各種パン類、クッキーやビスケット等の焼菓子類、パイやケーキ、アイスクリーム、プリン、カスタードクリーム、あずきや白あん等の餡類、饅頭や餅、ガム、バター、ショートニング・マーガリン等の植物油脂、ジャム、チョコレートなどを挙げることができる。
また、本発明における分散性向上剤は、各種液状飲食品や食品原料に好適に配合することができる。液状飲食品の種類は特に限定されるものではないが、例えばヨーグルト等の乳製品、各種清涼飲料、各種アルコール類、各種パン類の生地(液状を含む)、クッキーやビスケット等の焼菓子生地(液状)、プリンやカスタードクリーム等の卵液などを挙げることができる。
さらに、本発明における香味向上剤は、各種飲食品に好適に配合することができる。飲食品の種類は特に限定されるものではないが、例えば牛乳、クリーム、ヨーグルト等の乳製品、パン、クッキーやビスケット等の焼菓子、パイ・ケーキ、アイスクリーム、プリン、カスタードクリーム、あずき・白あん等の餡類、饅頭や餅、ガム、ジャム、チョコレートなどを挙げることができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
【0031】
<試験1>
秋冬番緑茶、碾茶(京都宇治産)、ほうじ茶、紅茶(和紅茶)の4種の茶原料を用意し、各々をボールミル(Retsch ミキサーミルMM400 ヴァーダー・サイエンティフィック社製)で粉砕し、80メッシュのステンレスメッシュで篩がけをし、目視で繊維の有無を確認した。
なお、各原料茶に含まれる繊維の存在が試験に影響しない点を明確にするために、繊維が含まれない碾茶(京都宇治産)を以下の試験に用いたが、秋冬番緑茶、ほうじ茶、紅茶(和紅茶)のいずれについても、碾茶(京都宇治産)と同様の効果が得られることを確認している。
【0032】
【0033】
<試験2>
(サンプル調製)
平均粒子径が120.0μm、100.0μm、50.0μm、30.0μm、23.0μm、21.0μm、20.0μm、15.0μmの粉末茶A(京都宇治産抹茶)と平均粒子径10μmの粉末茶B(京都宇治産抹茶)を表1に記載のとおりの組合せで10gずつ混合し、実施例1~6及び比較例1、2に供する粉末茶混合物を各20gずつ作成した。
【0034】
(分散性評価)
得られた実施例1~6及び比較例1、2の粉末茶混合物を、1200rpmで攪拌されている純水(粘度0.8cP)500g中に各10gずつ添加し、30秒間分散させた。分散後に60メッシュのステンレスメッシュで濾過し、メッシュ上に残った粉末茶混合物を回収した。
ステンレスメッシュごとメッシュ上に残った粉末茶混合物を105℃、2時間、恒温機内で乾燥し、乾燥後のメッシュ上に残った粉末茶混合物の重量を測ることで残存量を算出した(乾燥後のステンレスメッシュ+粉末茶混合物(g)-濾過前のステンレスメッシュ(g))。
また、下記の評価項目で残存量を評価し、更に目視でダマの有無を確認・評価した。
(残存量)
○:粉末茶混合物残存量が3.0%未満であり、良好。
△:粉末茶混合物残存量が3.0~5.0%であり、許容範囲内である。
×:粉末茶混合物残存量が5%を超えており、問題あり。
(ダマ形状)
○:メッシュ上に残存している粉末茶混合物がダマ状になっていない。
(攪拌を追加で行えば容易に分散する状態)
△:メッシュ上に残存している粉末茶混合物の半分程度がダマ状である。
(攪拌を追加で行えば半分程度は容易に分散する状態)
×:メッシュ上に残存している粉末茶混合物がほとんどダマ状である。
(攪拌を追加で行っても容易には分散しない状態)
【0035】
(香味評価)
得られた粉末茶混合物の分散液を下記の評価項目のとおり官能評価を行った。
まずは、訓練されたパネラー5人にコントロールである粉末茶混合物の分散液を官能し、下記の評価項目を共通認識とした。その後実施例1~6及び比較例1、2を評価した。
なお、コントロールは、平均粒子径15μmの粉末茶(京都宇治産抹茶)10gを500gの純水中で高圧ホモジナイザー(マイクロテック・ニチオン社製)を用いて1分間強制的に分散させた粉末茶混合物の分散液を用いた。
(舌ざわり)
○: コントロールと同程度の滑らかさであり、良好である。
△: コントロールに比べ、ややざらつきがあるが許容範囲内である。
×: コントロールに比べ、明らかにざらつきが多く、問題あり。
(粉末茶の味わい)
○: コントロールと同程度の粉末茶の味わい(濃度)の強さを感じ、良好である。
△: コントロールに比べ、粉末茶の味わい(濃度)がやや弱いが、許容範囲内である。
×:コントロールに比べ、粉末茶の味わい(濃度)がかなり弱く、問題あり。
(総合評価)
◎:上記4項目がすべて「○」であり、極めて良好。本件課題を解決している。
○:上記4項目のうち2つ以上が「○」であり、且つ「×」がなく、良好。本件課題を解決している。
×:上記4項目に「×」が1つ以上あるか、「○」が1つ以下である。問題あり、本件課題を解決していない。
【0036】
【0037】
<試験3>
平均粒子径が5.0μm、7.0μm、10.0μm、12.0μm、15.0μm及び20.0μmの粉末茶(京都宇治産抹茶)と平均粒子径23.0μmの粉末茶(京都宇治産抹茶)を表2に記載のとおりの組合せで10gずつ混合し、実施例7~14及び比較例3、4に供する粉末茶混合物を作成した。
なお、分散性の評価及び香味の評価については試験2と同様に行った。
【0038】
【0039】
試験1~3の結果から、平均粒子径20.0~100.0μmの粉末茶混合物と平均粒子径7.0~15.0μmの粉末茶混合物を混合することで、分散性及び香味が良好な粉末茶混合物の分散液が得られることが示された。
特に、平均粒子径23.0~30.0μmの粉末茶混合物と平均粒子径10.0~12.0μmの粉末茶混合物を混合することで、分散性及び香味が極めて良好な粉末茶混合物の分散液が得られることが示された。
【0040】
<試験4>
試験1~3の結果から、平均粒子径20.0~100.0μmの粉末茶(以下、粉末茶Aという)と平均粒子径7.0~15.0μmの粉末茶(以下、粉末茶Bという)を混合することで、分散性及び香味が良好な粉末茶混合物の分散液が得られることが示されたが、粉末茶Aと粉末茶Bの最適な配合比率を明らかとするため、試験4を行った。
粉末茶Aとして23.0μmの粉末茶、粉末茶Bとして10.0μmの粉末茶を準備し、表4に記載のとおりの配合比率となるように混合した。
なお、分散性の評価及び香味の評価については試験2及び試験3と同様に行った。
【0041】
【0042】
試験4の結果から、粉末茶Aと粉末茶Bの粉末茶混合物の中でもの配合比率が6:4~4:6であることで、分散性及び香味が極めて良好な粉末茶混合物の分散液が得られることが示された。
【0043】
<試験5>
更に、試験5として牛乳、生クリーム、バニラアイス及びホワイトチョコレートの各溶媒に粉末茶A(23.0μm)及び粉末茶B(10.0μm)の粉末茶混合物、粉末茶Aのみ、粉末茶Bのみを分散させ、分散性向上及び香味の評価を行った結果を表5~8に示す。
下記表5は、粉末茶混合物を溶解する溶媒を牛乳(粘度10cP)に変更し、下記表6は粉末茶混合物を溶解する溶媒を生クリーム(粘度100cP)に変更し、下記表7は粉末茶混合物を溶解する溶媒をバニラアイスクリーム(粘度500cP)に変更し、下記表8は粉末茶混合物を溶解する溶媒をホワイトチョコレート(粘度3000cP)に変更した。
なお、分散性の評価及び香味の評価については試験2~4と同様の方法で行ったが、香味評価におけるコントロール(参考例A1~A4及び参考例B1~B4)の粉末茶混合物の分散液の溶媒については、試験5~8の溶媒に合わせて牛乳、生クリーム、バニラアイスクリーム又はホワイトチョコレートを使用した。
また、粉末茶混合物の残存量については、乾燥後にそれぞれの溶媒の固形分が若干付着しているため、試験2~4に比べると多い傾向となった。
【0044】
【表5】
(牛乳500gに分散、溶媒粘度10cP)
【0045】
【表6】
(生クリーム500gに分散、溶媒粘度100cP)
【0046】
【表7】
(バニラアイスクリーム500gに分散、溶媒粘度500cP)
【0047】
【表8】
(ホワイトチョコレート500gに分散、溶媒粘度3000cP)
【0048】
試験5~8の結果から、平均粒子径20.0~100.0μmの粉末茶Aと平均粒子径7.0~15.0μmの粉末茶Bを混合することで、種々の食品に添加した場合にも、分散性及び舌ざわりが良好な粉末茶混合物の分散液が得られることが確認され、本発明の粉末茶混合物において分散性が向上していることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、分散性に優れた粉末茶混合物を提供することができ、特に食品添加用途として最適な工業用の粉末茶混合物を提供することができる。