(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】天井吊支具
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
E04B9/18 A
(21)【出願番号】P 2018012535
(22)【出願日】2018-01-29
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390004145
【氏名又は名称】城東テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 博之
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-080913(JP,U)
【文献】特開2007-247257(JP,A)
【文献】特開平08-082038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/18
E04B 5/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の天井部分に架設され、ウェブとフランジとから断面I字状に形成された梁材に取付けて用いることができる天井吊支具において、
前記フランジの上面と対向可能な上側対向部と、前記フランジの下面と対向可能な下側対向部と、前記上側対向部と前記下側対向部とを連結する連結部とを有し、
前記天井吊支具を前記梁材に取付けるために前記上側対向部と前記下側対向部との間に前記フランジを挟持
して仮止め可能とされた銜え部
と、
前記銜え部よりも上方に配置され前記梁材の前記ウェブに固定するための固定部と、
前記銜え部よりも下方において天井材を固定する止め部と、を備え、
前記連結部は、前記上側対向部及び前記下側対向部の少なくともいずれか一方を弾性変形可能に片持ち状に支持していることを特徴とする天井吊支具。
【請求項2】
建物の天井部分に架設された梁材のフランジを挟持
して仮止め可能な銜え部と、前記銜え部よりも上方に配置され前記梁材のウェブに固定するための固定部とを有する天井吊支具において、
前記銜え部は、前記フランジを挟持した状態において当該フランジと水平方向
側で対向する水平対向部と、前記フランジの上面と対向可能な上側対向部と、前記上側対向部とで前記フランジを上下方向に挟持するための下側挟持部とを有し、
前記下側挟持部は、前記水平対向部の下部から前記上側対向部と前記上下方向に対向する位置まで延在し、前記上下方向において弾性変形可能に片持ち状に形成された下部片と、前記下部片の前記フランジと前記上下方向に対向する部分に形成され、前記フランジと当接可能な当接部とを有しており、
前記当接部は、前記銜え部で前記フランジを挟持する前の状態において、前記銜え部で挟持された前記フランジの下端よりも上方に位置していることを特徴とする天井吊支具。
【請求項3】
前記当接部は、前記下部片から上方に突出して形成されており、
前記下部片は、前記水平方向において、前記水平対向部の前記フランジと対向する側面よりも前記当接部から離れた位置で前記水平対向部に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の天井吊支具。
【請求項4】
前記銜え部の前記上側対向部は、前記上下方向において、前記下側挟持部と対向する2つの平面を有しており、
前記2つの平面は、前記水平対向部の前記フランジと対向する側面から前記水平方向に離れるに連れて、前記下側挟持部から離れる位置に配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の天井吊支具。
【請求項5】
前記水平対向部の前記フランジと対向する側面とは反対側の側面は、前記梁材とは異なる別の梁材を取り付けるための取付面として構成されており、
前記取付面に当接する前記別の梁材の下端と当接して位置決めするための突起をさらに有していることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の天井吊支具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の天井部分に架設された梁材に野縁などの天井材を吊支することが可能な建築用の天井吊支具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の室内において、天井板を設置する際は、まず、梁材に吊支具(天井吊支具)を設置し、この吊支具に野縁を固定し、この野縁に天井板を貼り付けることで、天井板が設置される。このような天井板を設置するための吊支具には、下記の吊支具が知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、梁材のフランジを挟持可能な銜え部を有する吊支具が開示されている。この吊支具の銜え部に、フランジを挟持させて仮固定した状態で、ウェブに止着部材を止着することによって当該吊支具が梁材に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の吊支具は、梁材のフランジの縦幅寸法が、製造時の誤差などによって銜え部に嵌合する所定のサイズよりも大きい場合、銜え部にフランジを嵌め込みにくくなり、フランジが上記所定のサイズよりも小さい場合、フランジと銜え部の下面との間に隙間が生じ、吊支具の仮固定が不安定になるなど、仮固定が容易に行えないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、銜え部でフランジに容易に仮固定することが可能な天井吊支具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の天井吊支具は、建物の天井部分に架設され、ウェブとフランジとから断面I字状に形成された梁材に取付けて用いることができる天井吊支具において、前記フランジの上面と対向可能な上側対向部と、前記フランジの下面と対向可能な下側対向部と、前記上側対向部と前記下側対向部とを連結する連結部とを有し、前記天井吊支具を前記梁材に取付けるために前記上側対向部と前記下側対向部との間に前記フランジを挟持して仮止め可能とされた銜え部と、前記銜え部よりも上方に配置され前記梁材の前記ウェブに固定するための固定部と、前記銜え部よりも下方において天井材を固定する止め部と、を備え、前記連結部は、前記上側対向部及び前記下側対向部の少なくともいずれか一方を弾性変形可能に片持ち状に支持している。
【0008】
これによると、梁材のフランジを銜え部によって弾性的に挟持することができるので、天井吊支具を梁材に容易に仮止めできる。この仮止めによって、作業者の両手を空けることができ、天井吊支具の取付作業の向上を図ることができる。また、仮止めできることによって、梁材に対する天井吊支具の取付位置の調整を容易に行うことができる。
【0009】
また、本発明の天井吊支具は、別の観点では、建物の天井部分に架設された梁材のフランジを挟持して仮止め可能な銜え部と、前記銜え部よりも上方に配置され前記梁材のウェブに固定するための固定部とを有する天井吊支具において、前記銜え部は、前記フランジを挟持した状態において当該フランジと水平方向側で対向する水平対向部と、前記フランジの上面と対向可能な上側対向部と、前記上側対向部とで前記フランジを上下方向に挟持するための下側挟持部とを有し、前記下側挟持部は、前記水平対向部の下部から前記上側対向部と前記上下方向に対向する位置まで延在し、前記上下方向において弾性変形可能に片持ち状に形成された下部片と、前記下部片の前記フランジと前記上下方向に対向する部分に形成され、前記フランジと当接可能な当接部とを有しており、前記当接部は、前記銜え部で前記フランジを挟持する前の状態において、前記銜え部で挟持された前記フランジの下端よりも上方に位置している。
【0010】
これによると、下側挟持部が、フランジを挟持する前の状態において、銜え部に挟持されたフランジの下端よりも上方に位置する当接部を有し、且つ下部片が上下方向に弾性変形可能に片持ち状に形成されているため、フランジの上下方向の厚みが所定の厚みよりも若干小さい又は大きい場合でも銜え部でフランジを上下方向に挟持することが可能となる。このため、天井吊支具を銜え部でフランジに容易に仮固定することが可能となる。この結果、天井吊支具の固定部をウェブに固定しやすくなる。
【0011】
本発明において、前記当接部は、前記下部片から上方に突出して形成されており、前記下部片は、前記水平方向において、前記水平対向部の前記フランジと対向する側面よりも前記当接部から離れた位置で前記水平対向部に固定されていることが好ましい。これにより、下側挟持部の下部片が、水平対向部のフランジと対向する側面に固定されているよりも、下部片の固定位置から当接部までの長さが長くなって当接部の上下方向の変位量を大きくすることが可能となる。このため、フランジの上下方向の厚みのバラツキをより効果的に吸収することが可能となる。
【0012】
また、本発明において、前記銜え部の前記上側対向部は、前記上下方向において、前記下側挟持部と対向する2つの平面を有しており、前記2つの平面は、前記水平対向部の前記フランジと対向する側面から前記水平方向に離れるに連れて、前記下側挟持部から離れる位置に配置されていることが好ましい。これにより、上側対向部の一の平面と下側挟持部との間に対応する厚みを有するフランジ、及び、上側対向部の他の平面と下側挟持部との間に対応する厚みを有するフランジを、銜え部で容易に仮固定することが可能となる。
【0013】
また、本発明において、前記水平対向部の前記フランジと対向する側面とは反対側の側面は、前記梁材とは異なる別の梁材を取り付けるための取付面として構成されており、前記取付面に当接する前記別の梁材の下端と当接して位置決めするための突起をさらに有していることが好ましい。これにより、上下方向の厚みが所定の厚みよりも遥かに大きいフランジを有する別の梁材、または平板状の別の梁材であっても、取付面に当該梁材を容易に取り付けることが可能となる。
【0014】
また、本発明の天井吊支具は、さらに別の観点では、建物の天井部分に架設された梁材のフランジを挟持可能な銜え部と、前記銜え部よりも上方に配置され前記梁材のウェブに固定するための固定部とを有する天井吊支具において、前記銜え部は、前記フランジを挟持した状態において当該フランジと水平方向に対向する水平対向部と、前記フランジの上面と対向可能な上側対向部と、前記上側対向部とで前記フランジを上下方向に挟持するための下側挟持部とを有し、前記上側対向部は、前記上下方向において、前記下側挟持部と対向する2つの平面を有しており、前記2つの平面は、前記水平対向部の前記フランジと対向する側面から前記水平方向に離れるに連れて、前記下側挟持部から離れる位置に配置されている。
【0015】
これによると、上側対向部の一の平面と下側挟持部との間に対応する厚みを有するフランジ、及び、上側対向部の他の平面と下側挟持部との間に対応する厚みを有するフランジを、銜え部で容易に仮固定することが可能となる。この結果、天井吊支具の固定部をウェブに固定しやすくなる。
【0016】
さらに、本発明の天井吊支具は、他の観点では、建物の天井部分に架設され、ウェブとフランジとから断面I字状に形成された梁材に取付けて用いることができる天井吊支具において、前記フランジの上面と対向可能な上側対向部と、前記フランジの下面と対向可能な下側対向部と、前記上側対向部と前記下側対向部とを連結する連結部とを有し、前記上側対向部と前記下側対向部との間に前記フランジを挟持可能とされた銜え部を備え、前記連結部は、前記銜え部と反対側に前記フランジのないタイプの梁材を取り付ける際の位置決め突起を有している。これにより、断面I字状の梁材の他に、平板状の梁材であっても、容易に取り付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の天井吊支具によると、下側挟持部が、フランジを挟持する前の状態において、銜え部に挟持されたフランジの下端よりも上方に位置する当接部を有し、且つ下部片が上下方向に弾性変形可能に片持ち状に形成されているため、フランジの上下方向の厚みが所定の厚みよりも若干小さい又は大きい場合でも銜え部でフランジを上下方向に挟持することが可能となる。このため、天井吊支具を銜え部でフランジに容易に仮固定することが可能となる。この結果、天井吊支具の固定部をウェブに固定しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る天井吊支具の斜視図である。
【
図2】
図1に示すII-II線に沿った断面図である。
【
図3】
図1の天井吊支具の本体を示しており、(a)は断面図であり、(b)は後方から見たときの背面図であり、(c)は前方から見たときの正面図である。
【
図4】
図1に示すロッド部材及び止め具の分解斜視図である。
【
図5】
図1に示す天井吊支具を第1梁材に固定した時の状況を示す状況図である。
【
図6】
図1に示す天井吊支具を第2梁材に固定した時の状況を示す状況図である。
【
図7】
図1に示す天井吊支具を第3梁材に固定した時の状況を示す状況図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る天井吊支具1について、
図1~
図4を参照しつつ以下に説明する。なお、
図1に示す一水平方向である前後方向A、前後方向Aと直交する水平な左右方向B、前後方向A及び左右方向Bに直交する上下方向Cを基準として、以下に説明する。なお、他の図面においても、
図1に示す方向を基準として示す。
【0020】
本実施形態における天井吊支具1は、
図1に示すように、合成樹脂製から構成されており、本体10と、ロッド部材50と、止め具60とを有する。本体10は、銜え部11と、銜え部11よりも上方に配置された固定部21とを有する。
【0021】
固定部21は、
図1に示すように、上下方向Cに長尺な直方体形状を有している。固定部21には、
図2及び
図3(b)に示すように、2つの貫通孔22が形成されている。これら2つの貫通孔22は、固定部21の後面21bから前面21aにかけて貫通するネジ止め用の孔である。つまり、固定部21の前面21aを後述する第1梁材110のウェブ111に当接させた状態で、各貫通孔22に挿入された木ネジなどのビス150によって固定部21をウェブ111に固定することが可能となる(ともに
図5参照)。また、固定部21には、
図3(c)に示すように、前面21aに開口する複数の凹部23が形成されており、固定部21が軽量化されている。
【0022】
銜え部11は、後述の第1梁材110のフランジ112(
図5参照)と前後方向Aに対向する対向部(水平対向部、連結部)12と、フランジ112と上下方向Cに対向する上側対向部13と、上側対向部13とでフランジ112を上下方向Cに挟持するための下側挟持部16とを有している。対向部12は、
図2及び
図3に示すように、ロッド部材50を支持する支持部12aと、支持部12aの前端に立設された前端部12bと、一対の側壁部12cとを有している。
【0023】
支持部12aは、
図3に示すように、直方体形状を有しており、中央には上下方向Cに貫通し、内周面に雌ネジが形成されたネジ孔12a1が形成されている。また、支持部12aの前面12a3及び後面12a4には、凹部12a2がそれぞれ形成され、支持部12aが軽量化されている。
【0024】
前端部12bは、
図2に示すように、上下方向Cに沿って垂直に延在する2つの垂直部12b1,12b2と、水平部12b3とを有する。垂直部12b1は、支持部12aの前端に立設されている。水平部12b3は、水平に延在し、垂直部12b1の上端と垂直部12b2の下端とを繋いでいる。垂直部12b2は、垂直部12b1よりも前方に配置され、水平部12b3の前端部に立設されている。また、垂直部12b2の前面12g2には、
図3(c)に示すように、前方に開口する2つの凹部12b4が形成されており、前端部12bが軽量化されている。
【0025】
一対の側壁部12cは、
図3に示すように、支持部12a及び前端部12bの左右両端に立設されて形成されている。また、一対の側壁部12cは、その上方部分が固定部21の上端部近傍まで延在しており、後面21bの左右両端と繋がっている。
【0026】
また、一対の側壁部12cの左右方向Bの外側面12c1には、
図3に示すように、外側に突出した突出部12dがそれぞれ形成されている。これら突出部12dは、上下方向Cにおいて、側壁部12cの中央部に配置されている。また、支持部12aの左右方向Bの外側面にも、外側に突出した突出部12dがそれぞれ形成されている。つまり、対向部12は、4つの突出部12dも有しており、各突出部12dの後面12d1が側壁部12cの後面12c2及び支持部12aの後面12a4と同一平面上に位置するように形成されている。なお、側壁部12cの後面12c2及び支持部12aの後面12a4は同一平面上に位置している。これら後面12a4,12c2,12d1により、後述の第3梁材310を取り付けるための垂直な取付面12eが構成されている。つまり、取付面12eは、対向部12の後述するフランジ112,212と対向する前面12g1,12g2とは反対側の後面12c2,12d1(側面)に構成されている。
【0027】
また、各突出部12dには、
図3(b)及び
図3(c)に示すように、前後方向Aに貫通する貫通孔12d2が形成されている。貫通孔12d2は、ネジ止め用の孔であり、取付面12eに梁材310を当接させた状態で、各貫通孔12d2に挿入された木ネジなどのビス150によって本体10を後述の梁材310に固定することが可能となる(
図7参照)。また、対向部12は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、前端部12b及び一対の側壁部12cに繋がった2つのリブ12fを有している。これにより、対向部12の剛性が向上する。
【0028】
上側対向部13は、
図2及び
図3に示すように、2つの平面13a,13bを有する。平面13aは、前後方向A及び左右方向Bに平行な水平面であり、固定部21の下面から構成されている。平面13bも水平面であり、水平部12b3の下面から構成されている。2つの平面13a,13bは、対向部12のフランジ112と対向する垂直部12b1の前面(側面)12g1から前後方向Aに離れるに連れて下側挟持部(下側対向部)16から上方に離れた位置に配置されている。より詳細には、平面13aが平面13bよりも上方に配置されている。このように上側対向部13を構成する2つの平面13a,13bが上下方向Cに沿ってずれて配置されているため、上下方向Cの高さの異なる2種類のフランジ112,212(平面13bと下側挟持部16との間に対応するフランジ112、平面13aと下側挟持部16との間に対応するフランジ212)を、下側挟持部16とで挟持することが可能となる(
図5及び
図6参照)。すなわち、銜え部11で2種類の梁材110,210をそれぞれ容易に仮固定することが可能となる。
【0029】
下側挟持部16は、
図3に示すように、下部片17と、当接部18とを有する。下部片17は、前後方向Aに延在する一対の延在部17aと、一対の延在部17aを繋ぐ繋ぎ部17bとを有する。一対の延在部17aは、
図3(a)に示すように、対向部12の下端(すなわち下側の各突出部12dの後方下端)から下方に延在してから、前端が上側対向部13の平面13aと上下方向Cに対向する位置まで前方に延在し、それぞれL字形状を有している。繋ぎ部17bは、左右方向Bに沿って延在し、一対の延在部17aの前端を繋いでいる。つまり、繋ぎ部17bは、平面13aと上下方向Cに対向する位置に配置されており、後述のフランジ112,212と対向可能な位置に配置されている。
【0030】
このような下部片17は、対向部12の下端において、左右両端且つ後端部分に固定されており、弾性変形可能に片持ち状に形成されている。つまり、下部片17が、前後方向Bにおいて、対向部12の前面(側面)12g1よりも後述の当接部18から離れた位置で対向部12に固定されている。
【0031】
当接部18は、繋ぎ部17bの中央から上方に突出して形成されている。つまり、当接部18は、後述のフランジ112,212と対向する繋ぎ部17b(下部片17)から上方に突出し、フランジ112,212と当接可能に構成されている。また、当接部18の先端は、
図2に示すように、後述の突起19の上面19aと同一高さレベルである
図2中二点鎖線で示す仮想水平線Lよりも上方に配置されている。仮想水平線Lは、所定の厚みを有するフランジ112,212が平面13a,13bに当接したときに、下面が位置する仮想線である(
図5及び
図6参照)。つまり、当接部18の先端は、銜え部11でフランジ112,212を挟持する前の状態において、銜え部11で挟持されたフランジ112,212の下端よりも上方に位置している。このように当接部18の先端が仮想水平線Lよりも突出していることで、フランジ112,212が製造誤差などにより、所定の厚みよりも若干小さくても当接部18とフランジ112,212の下面とが当接し、下側挟持部16と平面13a,13bとでフランジ112,212を挟持可能となる。
【0032】
本体10は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、取付面12eに当接する第3梁材310の下端と当接して位置決めするための2つの突起19を有している。各突起19は、延在部17aの後端部から後方に向かって突出して形成されている。
【0033】
ロッド部材50は、
図2及び
図4に示すように、上下方向Cにおいて、中央部から上端部の外周面に雄ネジが形成されたネジ部51と、止め具60を取り付ける取付部52とを有している。ネジ部51の雄ネジは、支持部12aのネジ孔12a1の雌ネジに螺合可能に形成されている。天井吊支具1は、
図2に示すように、緩み止めナット59を有している。緩み止めナット59は、ネジ部51の雄ネジに螺合可能な雌ネジを有している。
図1及び
図2に示すように、ロッド部材50が支持部12aのネジ孔12a1に挿入された状態で、緩み止めナット59が支持部12aと止め具60との間に配置され且つ支持部12aに圧接されるようにネジ部51に取り付けられることで、本体10に対するロッド部材50の位置を固定することが可能となる。
【0034】
ロッド部材50の取付部52は、
図2に示すように、その外径がネジ部51の外径よりも大きい取付部本体52aと、取付部本体52aの下端に形成されたフランジ52bとを有している。フランジ52bは、取付部本体52aの外径よりも大きな外径を有している。取付部本体52aには、
図4に示すように、周方向に沿って互いに離隔して配置された4つの凹部52a1が形成されており、取付部52が軽量化されている。また、取付部本体52aの上部には、環状の溝53が形成されている。溝53は、2分割可能な抜け止め部材54を取り付け可能に形成されている。抜け止め部材54は、
図2に示すように、溝53に取り付けた状態において、その外径が取付部本体52aよりも大きく、内径が溝53の外径とほぼ同じに形成されている。なお、ロッド部材50の上端面及び下端面には、平面視において十字状の凹部55,56がそれぞれ形成されており、プラスドライバーでロッド部材50を回転させやすくなっている。
【0035】
止め具60は、
図2及び
図4に示すように、円筒部61と、固定部62と、円筒部61内に設けられた吸収部材65とを有する。固定部62は、
図4に示すように、略直方体形状を有しており、円筒部61と一体的に形成されている。固定部62は、垂直な固定面62aを有する。固定部62の前後方向Aの両端部には、厚み方向(左右方向B)に貫通する2つの貫通孔62bが形成されている。2つの貫通孔62bは、円筒部61を挟むように互いに離隔して配置されており、一方が固定部62の上部、他方が固定部62の下部に配置されている。固定部62の固定面62aを後述する野縁120に当接させた状態で、各貫通孔62bに挿入された木ねじなどのビス150(
図5参照)によって固定部62を野縁120に固定することが可能となる。
【0036】
円筒部61は、
図2及び
図4に示すように、取付部本体52aの外径とほぼ同じ内径を有する上中空部61aと、上中空部61aの内径及びフランジ52bの外径よりも大きい内径を有する下中空部61bとを含む。吸収部材65は、外径が下中空部61bの内径よりも小さく、内径が上中空部61aの内径とほぼ同じである円筒形状を有しており、円筒部61の下中空部61b内であって取付部本体52aの外周に配置されている。吸収部材65は、ゴムなどの弾性部材から構成されており、後述の梁材110,210,310、本体10及びロッド部材50を介して伝達される振動を吸収することが可能となる。このため、上の階の床面(梁材110,210,310よりも上部)からの振動を下の階の天井(野縁120)に伝播するのを抑制することが可能となる。
【0037】
続いて、本実施形態の天井吊支具1の設置方法について、説明する。まず、建物の天井部分に架設された第1梁材110に天井吊支具1を設置する設置方法について、
図5を参照しつつ以下に説明する。
【0038】
本実施形態における第1梁材110は、I字状梁材であって、木片を樹脂で固めた薄い板状のウェブ111と、ベニアを重ねて圧着成形した積層合板からなるフランジ112とから構成されており、収縮、割れ、ねじれなどの経年変化が生じにくい特性を有している。本実施形態における第1梁材110のフランジ112は、上下方向Cにおいて、設置前の天井吊支具1の平面13bと仮想水平線Lとの間の距離とほぼ同様な厚みを有している。つまり、フランジ112は、平面13bと下側挟持部16との間に対応するものである。
【0039】
まず、
図5に示すように、天井吊支具1を銜え部11で、第1梁材110のフランジ112を挟持し、天井吊支具1を第1梁材110に仮固定する。より詳細には、フランジ112を平面13bと下側挟持部16との間で挟持する。このとき、フランジ112の上面と平面13bとが当接し、フランジ112の下面と下側挟持部16の当接部18とが当接し、下部片17の先端が下方に変位するように弾性変形する。この下部片17の弾性復帰力により、フランジ112が銜え部11で挟持され、仮固定される。
【0040】
この後、固定部21の前面21aをウェブ111に当接させた状態で、後方からビス150を貫通孔22に挿入し、当該ビス150で固定部21(本体10)をウェブ111に本固定する。この本固定を行う際は、銜え部11でフランジ112が挟持されているため、天井吊支具1の仮固定が安定した状態となっている。このため、天井吊支具1の梁材110に対する本固定がし易くなる。この後、ロッド部材50を所定長に調整し、緩み止めナット59を支持部12a側に圧接するように締め込む。なお、本体10に対するロッド部材50の長さ調整は、本体10の本固定の前に調整していてもよい。
【0041】
この後、
図5に示すように、止め具60の固定面62aを野縁120に当接させた状態で、左方からビス150を貫通孔62bに挿入し、当該ビス150で固定部62を野縁120に固定する。こうして、天井吊支具1の設置が終了する。
【0042】
また、第2梁材210に天井吊支具1を設置する場合について、
図6を参照しつつ以下に説明する。第2梁材210も、I字状梁材であって、
図6に示すように、上述の第1梁材110とほぼ同様のものであるが、フランジ112よりも上下方向Cの厚みが大きいフランジ212と、ウェブ211とを有している。第2梁材210のフランジ212は、上下方向Cにおいて、設置前の天井吊支具1の平面13aと仮想水平線Lとの間の距離とほぼ同様な厚みを有している。つまり、フランジ212は、平面13aと下側挟持部16との間に対応するものである。
【0043】
まず、
図6に示すように、天井吊支具1を銜え部11で、第2梁材210のフランジ212を挟持し、天井吊支具1を第2梁材210に仮固定する。より詳細には、フランジ212を平面13aと下側挟持部16との間で挟持する。このとき、フランジ212の上面と平面13aとが当接し、フランジ212の下面と下側挟持部16の当接部18とが当接し、下部片17の先端が下方に変位するように弾性変形する。この下部片17の弾性復帰力により、フランジ212が銜え部11で挟持され、上述のときと同様に仮固定される。
【0044】
この後、固定部21の前面21aをウェブ211に当接させた状態で、上述の設置方法と同様に、ビス150で固定部21をウェブ211に本固定する。この場合も、天井吊支具1の仮固定が安定した状態となっているため、天井吊支具1の第2梁材210に対する本固定がし易くなる。この後、ロッド部材50を所定長に調整し、緩み止めナット59を支持部12a側に圧接するように締め込む。
【0045】
この後、
図6に示すように、上述と同様に、ビス150で止め具60の固定部62を野縁120に固定する。こうして、天井吊支具1の設置が終了する。
【0046】
また、建物の天井部分に架設された第3梁材310に天井吊支具1を設置する場合について、
図7を参照しつつ以下に説明する。第3梁材310は、
図7に示すように、上下方向Cに沿って立設された平板状梁材である。このような第3梁材310に天井吊支具1を固定する場合は、
図7に示すように、天井吊支具1の突起19の上面19aに第3梁材310の下面(下端)310aを当接させる。こうして、天井吊支具1を梁材310に対して位置決めする。そして、本体10の取付面12eを第3梁材310の側面310bに当接させた状態で、前方からビス150を貫通孔12d2に挿入し、当該ビス150で本体10を第3梁材310に固定する。このように天井吊支具1が取付面12e及び突起19を有していることで、平板状の第3梁材310であっても、取付面12eに当該梁材310を容易に取り付けることが可能となる。なお、上述の第2梁材210よりも上下方向Cの厚みが遥かに大きいフランジを有する別のI字状梁材であっても、第3梁材310と同様に、取付面12eに当該梁材を容易に取り付けることが可能となる。
【0047】
この後、ロッド部材50を所定長に調整し、緩み止めナット59を支持部12a側に圧接するように締め込む。そして、
図7に示すように、上述と同様に、ビス150で止め具60の固定部62を野縁120に固定する。こうして、天井吊支具1の設置が終了する。
【0048】
以上に述べたように、本実施形態の天井吊支具1によると、下側挟持部16が、先端が仮想水平線Lよりも突出した当接部18を有し、且つ下部片17が上下方向Cに弾性変形可能に片持ち状に形成されているため、フランジ112,212の上下方向Cの厚みが所定の厚みよりも若干小さい又は大きい場合でも銜え部11でフランジ112,212を上下方向Cに挟持することが可能となる。このため、天井吊支具1を銜え部11でフランジ112,212に容易に仮固定することが可能となる。この結果、天井吊支具1の固定部21をウェブ111,211に固定しやすくなる。
【0049】
また、下部片17が、前後方向Bにおいて、対向部12の前面(側面)12g1よりも後述の当接部18から離れた位置で対向部12に固定されている。これにより、下側挟持部16の下部片17が、対向部12の前面12g1に固定されているよりも、下部片17の固定位置から当接部18までの長さが長くなって当接部18の上下方向Cの変位量を大きくすることが可能となる。このため、フランジ112,212の上下方向Cの厚みのバラツキをより効果的に吸収することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態の天井吊支具1によると、上側対向部13の一の平面13bと下側挟持部16との間に対応する厚みを有するフランジ112、及び、上側対向部13の他の平面13aと下側挟持部16との間に対応する厚みを有するフランジ212を、銜え部11で容易に仮固定することが可能となる。この結果、天井吊支具1の固定部21をウェブ111,211に固定しやすくなる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、当接部18は、下部片17から突出しておらず、下部片17の先端部(前端部:例えば、繋ぎ部17b)であってもよい。この場合、銜え部11に梁材のフランジを仮固定する前の状態において、下部片17の先端部(当接部)が仮想水平線Lよりも上方に位置しておればよい。こうすれば、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0052】
また、下部片17が対向部12の前面12g1から延出して形成されていてもよい。下部片17は、好ましくは対向部12の下端において、前面12g1よりも後方から前方に延出して形成されておればよい。また、下側挟持部16は、対向部12の下部から延出しておればよい。
【0053】
また、銜え部11の上側対向部13は、1つの平面だけ有していてもよい。また、上側対向部13が、上下方向Cにおける高さが互いに異なる3以上の平面を有していてもよい。これら3以上の平面も前方に向かうに連れて、下側挟持部16から離れた位置に配置されていることが好ましい。
【0054】
また、取付面12e及び突起19が設けられていなくてもよい。また、本体10が、固定部21と銜え部11を有し、当該銜え部11が上側対向部13を有しておれば、下側挟持部16の下部片17が片持ち状に形成されていなくてもよい。
【0055】
また、上述の実施形態では、下側挟持部16の下部片17を対向部12の下端において、弾性変形可能に片持ち状に形成した例を示したが、下側挟持部16に代えて上側対向部13を弾性変形可能に片持ち状の突出片として形成してもよいし、さらに、上側対向部13と下側挟持部16の両方を対向部12(連結部)に対して上下方向に弾性変形可能に片持ち状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 天井吊支具
11 銜え部
12 対向部(水平対向部、連結部)
12a4,12c2,12d1 後面(側面)
12e 取付面
12g1 前面(側面)
13 上側対向部
13a,13b 平面
16 下側挟持部(下側対向部)
17 下部片
18 当接部
19 突起
21 固定部
110 第1梁材(梁材)
111,211 ウェブ
112,212 フランジ
210 第2梁材(梁材)
310 第3梁材(別の梁材)
310a 下面(下端)