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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】空気還流システムおよび植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/24 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
A01G9/24 G
A01G9/24 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018016391
(22)【出願日】2018-02-01
(65)【公開番号】P2019129787
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】593171592
【氏名又は名称】学校法人玉川学園
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390027580
【氏名又は名称】東京冷化機工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000113067
【氏名又は名称】プリマハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 博之
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕造
(72)【発明者】
【氏名】西川 隆哉
【審査官】佐藤 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-082995(JP,A)
【文献】特開平05-071762(JP,A)
【文献】特開平11-098924(JP,A)
【文献】国際公開第2004/071174(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14-9/26
A01G 9/00
A01G 7/00-7/06
A01G 31/00-31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培室内に栽培棚とともに設置される空気還流システムであって、
前記栽培棚の周囲を前記栽培棚の各段の棚上の各開口部以外からは空気が流れないように前記各開口部以外を閉鎖し、前記栽培棚の長手方向の位置に配置されて前記栽培室を3つ以上の空間に仕切る隔壁と、
前記隔壁のそれぞれに設けられて、前記空間の内の空気吸引空間に存在する空気を吸引し、その吸引された空気を圧縮して、前記空気吸引空間に対して前記隔壁を隔てて隣り合う前記空間の内の空気供給空間に供給することにより、前記空気吸引空間と前記空気供給空間との間に圧力差を生じさせる空気圧縮手段と、
を含み、
前記3つ以上の空間は、前記空気吸引空間の長手方向両側に前記空気供給空間を配置する基本ユニットを有し、
前記開口部は、前記空気供給空間内に開口しており、
前記基本ユニット中の前記空気吸引空間内の前記栽培棚は、各段の棚上の前記開口部から流れてくる空気を前記空気吸引空間の長手方向の途中で前記栽培棚の外に排気可能な主排気口を備え、
前記基本ユニットにおいて、前記圧力差により、前記栽培棚の複数の棚上の各開口部を通して前記空気供給空間から前記空気吸引空間へ流れる空気流を前記棚上に形成させ、前記主排気口から前記空気吸引空間に排気された空気の一部または全部を前記空気圧縮手段によって吸引して空気を還流させる空気還流システム。
【請求項2】
前記主排気口は、前記栽培棚の側壁に形成されており、前記主排気口を部分的に閉鎖する閉鎖板を備える請求項1に記載の空気還流システム。
【請求項3】
前記閉鎖板は、前記主排気口からの空気の排気量を調節可能に前記主排気口に取り付けられている請求項2に記載の空気還流システム。
【請求項4】
前記空気供給空間内に開口する前記開口部から前記空気吸引空間内の前記主排気口の位置までの間に、前記開口部から流れてきた空気の一部または全部を前記主排気口に至る前に排気可能な副排気口を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の空気還流システム。
【請求項5】
前記副排気口は開閉可能に形成されている請求項4に記載の空気還流システム。
【請求項6】
前記栽培棚における各段の棚上の内部空間に向けて突出可能であって前記棚上を流れる空気の一部を遮蔽可能な遮蔽板を備える請求項1から5のいずれか1項に記載の空気還流システム。
【請求項7】
前記棚上の内部空間内の空気流速を検出するための空気流速検出センサと、
前記空気流速検出センサの検出結果に基づき前記遮蔽板の突出量を制御する遮蔽板制御装置と、
をさらに備え、
前記遮蔽板制御装置は、前記空気流速検出センサの検出を通じて、所定の前記棚上の内部空間を流れる空気が第一流速に達していないと判別した場合には前記遮蔽板の前記内部空間からの突出量を減じ、所定の前記棚上の内部空間を流れる空気が前記第一流速以上の第二流速を超えている場合には前記遮蔽板の前記内部空間からの突出量を増すように制御する請求項6に記載の空気還流システム。
【請求項8】
前記空気吸引空間であって前記栽培棚の外部に備えられる第一気圧検出センサと、
前記第一気圧検出センサを備える前記空気吸引空間と前記隔壁を隔てて隣り合う前記空気供給空間であって前記栽培棚の外部に備えられる第二気圧検出センサと、
前記第一気圧検出センサにより検出される気圧と前記第二気圧検出センサにより検出される気圧との気圧差に基づき前記空気圧縮手段の出力を制御する空気圧縮制御装置と、
をさらに備え、
前記空気圧縮制御装置は、前記気圧差が第一気圧差に達していない場合には前記空気圧縮手段の出力を上げ、前記第一気圧差以上の第二気圧差を超えている場合には前記空気圧縮手段の出力を下げるように前記空気圧縮手段を制御する請求項1から7のいずれか1項に記載の空気還流システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の空気還流システムを含む植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の栽培室内に設置される空気還流システムおよびその空気還流システムを備えた植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物を栽培するには、水、栄養分、光のほか、適当な温度や湿度、適量の二酸化炭素、適当な気流速が必要である。従来から、栽培室の天井や壁に空気還流システム、送風機、二酸化炭素注入ノズル等を設置して、温度や湿度、気流速を調整し、適量の二酸化炭素を供給する技術が知られている(特許文献1~4を参照)。
【0003】
空気還流システム、送風機、二酸化炭素注入ノズル等の近傍では、適切に温度、湿度、二酸化炭素濃度、気流速が調整されるため、これらの値は、ほぼ一定に維持される。しかし、それらから離れた場所では、温度、湿度、二酸化炭素濃度、気流速はいずれも不均一となっている。その結果、それらの近傍と、それらから離れた場所とでは、栽培される植物の品質に大きなばらつきが生じていた。
【0004】
このような問題を解決するため、本発明者は、先に、栽培室内に栽培棚とともに設置される空気還流システムであって、栽培棚の周囲を閉鎖し、栽培室を2つの空間に仕切る隔壁と、 その隔壁に設けられ一方の空間に存在する空気を吸引し、圧縮して他方の空間へ供給することにより、2つの空間に圧力差を生じさせる空気圧縮手段とを含み、 生じた圧力差により、栽培棚の複数の棚上の各開口部を通して他方の空間から一方の空間へ流れる空気流を各棚上に形成させる空気還流システム、および当該空気還流システムを含む植物栽培装置を開発した。この結果、圧力差により空気流を形成して各棚上の気流速をほぼ均一にすることにより、温度、湿度、CO濃度もほぼ均一にでき、もって栽培室内のどの場所においても、栽培される植物の品質をほぼ均一にできる(特許文献5を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-147384号公報
【文献】特開2010-45989号公報
【文献】特開2004-329130号公報
【文献】特開2004-275119号公報
【文献】特許第5985348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献5に開示される発明にも、さらなる改良が求められている。それは、植物栽培の規模を拡大したときにも隣り合う空間内の圧力差による空気流を確実に生成することである。
【0007】
本発明は、上記改良の要望に応えるべくなされたものであって、植物栽培規模の大型化にも対応して、隣り合う空間内の圧力差による空気流を確実に生成できる空気還流システムおよび当該システムを備える植物栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するための一実施の形態に係る空気還流システムは、栽培室内に栽培棚とともに設置される空気還流システムであって、前記栽培棚の周囲を前記栽培棚の各段の棚上の各開口部以外からは空気が流れないように前記各開口部以外を閉鎖し、前記栽培棚の長手方向の位置に配置されて前記栽培室を3つ以上の空間に仕切る隔壁と、前記隔壁のそれぞれに設けられて、前記空間の内の空気吸引空間に存在する空気を吸引し、その吸引された空気を圧縮して前記空気吸引空間に対して前記隔壁を隔てて隣り合う前記空間の内の空気供給空間に供給することにより、前記空気吸引空間と前記空気供給空間との間に圧力差を生じさせる空気圧縮手段と、を含み、前記3つ以上の空間は、前記空気吸引空間の長手方向両側に前記空気供給空間を配置する基本ユニットを有し、前記基本ユニット中の前記空気吸引空間内の前記栽培棚は、各段の棚上の前記開口部から流れてくる空気を前記空気吸引空間の長手方向の途中で前記栽培棚の外に排気可能な主排気口を備え、前記基本ユニットにおいて、前記圧力差により、前記栽培棚の複数の棚上の各開口部を通して前記空気供給空間から前記空気吸引空間へ流れる空気流を前記棚上に形成させ、前記主排気口から前記空気吸引空間に排気された空気の一部または全部を前記空気圧縮手段によって吸引して空気を還流させる。
【0009】
(2)別の実施の形態に係る空気還流システムは、好ましくは、前記主排気口が前記栽培棚の側壁に形成されており、前記主排気口を部分的に閉鎖する閉鎖板を備える。
【0010】
(3)別の実施の形態に係る空気還流システムでは、好ましくは、前記閉鎖板は、前記主排気口からの空気の排気量を調節可能に前記主排気口に取り付けられている。
【0011】
(4)別の実施の形態に係る空気還流システムは、好ましくは、前記空気供給空間内に開口する前記開口部から前記空気吸引空間内の前記主排気口の位置までの間に、前記開口部から流れてきた空気の一部または全部を前記主排気口に至る前に排気可能な副排気口を備える。
【0012】
(5)別の実施の形態に係る空気還流システムでは、好ましくは、前記副排気口は開閉可能に形成されている。
【0013】
(6)別の実施の形態に係る空気還流システムは、好ましくは、前記栽培棚における各段の棚上の内部空間に向けて突出可能であって前記棚上を流れる空気の一部を遮蔽可能な遮蔽板を備える。
【0014】
(7)別の実施の形態に係る空気還流システムは、好ましくは、前記棚上の内部空間内の空気流速を検出するための空気流速検出センサと、前記空気流速検出センサの検出結果に基づき前記遮蔽板の突出量を制御する遮蔽板制御装置と、をさらに備え、前記遮蔽板制御装置は、前記空気流速検出センサの検出を通じて、所定の前記棚上の内部空間を流れる空気が第一流速に達していないと判別した場合には前記遮蔽板の前記内部空間からの突出量を減じ、所定の前記棚上の内部空間を流れる空気が前記第一流速以上の第二流速を超えている場合には前記遮蔽板の前記内部空間からの突出量を増すように制御する。
【0015】
(8)別の実施の形態に係る空気還流システムは、好ましくは、前記空気吸引空間であって前記栽培棚の外部に備えられる第一気圧検出センサと、前記第一気圧検出センサを備える前記空気吸引空間と前記隔壁を隔てて隣り合う前記空気供給空間であって前記栽培棚の外部に備えられる第二気圧検出センサと、前記第一気圧検出センサにより検出される気圧と前記第二気圧検出センサにより検出される気圧との気圧差に基づき前記空気圧縮手段の出力を制御する空気圧縮制御装置と、をさらに備え、前記空気圧縮制御装置は、前記気圧差が第一気圧差に達していない場合には前記空気圧縮手段の出力を上げ、前記第一気圧差以上の第二気圧差を超えている場合には前記空気圧縮手段の出力を下げるように前記空気圧縮手段を制御する。
【0016】
(9)一実施の形態に係る植物栽培装置は、前述のいずれかの空気還流システムを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、植物栽培規模の大型化にも対応して、隣り合う空間内の圧力差による空気流を確実に生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、第1実施形態に係る空気還流システムおよびそれを備える植物栽培装置の平面図を示す。
図2図2は、図1の植物栽培装置のA-A線断面図(2A)およびB-B線断面図(2B)をそれぞれ示す。
図3図3は、図1の植物栽培装置のX-X線断面図を示す。
図4図4は、図1の植物栽培装置のY-Y線断面図を示す。
図5図5は、第2実施形態に係る空気還流システムおよびそれを備える植物栽培装置の平面図を示す。
図6図6は、図5の栽培棚の開口部から見た部分正面図であって遮蔽板の突出前後の変化を示す図(6A)および当該遮蔽板を駆動するための制御システムの概略図(6B)をそれぞれ示す。
図7図7は、第3実施形態に係る空気還流システムおよびそれを備える植物栽培装置の図3と同様のX-X線断面図(7A)および有圧扇の出力を制御するための制御システムの概略図(7B)をそれぞれ示す。
図8図8は、図2の主排気口に設けられる閉鎖板の変形例(8A,8B)、図4の副排気口に設けられる引違い窓に代用可能な回転扉の開閉状況(8C)および図4の副排気口に設けられる引違い窓に代用可能な3本の開閉式チューブの開閉状況(8D)をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る空気還流システムおよびそれを備える植物栽培装置について説明する。第1実施形態およびそれ以降の各実施形態において、空気還流システムは、植物栽培装置に含まれる構成要素である。
【0021】
図1は、第1実施形態に係る空気還流システムおよびそれを備える植物栽培装置の平面図を示す。図2は、図1の植物栽培装置のA-A線断面図(2A)およびB-B線断面図(2B)をそれぞれ示す。図3は、図1の植物栽培装置のX-X線断面図を示す。図4は、図1の植物栽培装置のY-Y線断面図を示す。
【0022】
第1実施形態に係る植物栽培装置1は、ここでは、植物5を栽培する栽培室の全体を意味するが、栽培室内の主要な構成要素を意味しても良い。ここでは、植物栽培装置1に代えて、栽培室1と称することもある。空気還流システムは、栽培室1内の栽培棚20とともに存在するシステムであり、栽培棚20の周囲を栽培棚20の各段の棚上の各開口部22以外からは空気が流れないように各開口部22以外を閉鎖し、栽培棚20の長手方向の位置に配置されて栽培室1を3つの空間に仕切る隔壁10,11を備える。なお、栽培室1は、隔壁10,11およびさらに追加される1以上の隔壁によって、4つ以上の空間に仕切られていても良い。隔壁10,11は、好ましくは、一定の厚さを有する木製、プラスチック樹脂製、金属製の板から作製されている。なお、本願において、栽培室1あるいは栽培棚20の「長手方向」若しくは「長さ方向」とは、特筆しない限り、隔壁10から隔壁11に向かう方向若しくはその逆方向(図1における上下方向)である。また、本願において、「空気」は、一般的な空気の他、当該空気中の酸素や窒素等の成分の一部が多いものあるいは少ないものも含むように広義に解釈される。さらに、「空気」に代えて、植物栽培に支障の無いあるいは有益な気体を用いても良い。
【0023】
また、空気還流システムは、隔壁10,11のそれぞれに設けられて前記3つの空間の内の一方の空間Nとして機能する空気吸引空間2に存在する空気を吸引し、その吸引された空気を圧縮して前記一方の空間N(空気吸引空間2)に対して隔壁10,11を隔てて隣り合う他方の空間Pとして機能する空気供給空間3,4に供給することにより、空気吸引空間2と空気供給空間3,4との間に圧力差を生じさせる空気圧縮手段を含む。なお、本願において、「圧力差」は「気圧差」と言い換えても良い。空気圧縮手段としては、各実施形態において、有圧扇30,31,40,41,50,51,60,61を例示できる。有圧扇30,31,40,41は、隔壁10に固定されている。有圧扇50,51,60,61は、隔壁11に固定されている。隔壁10,11は、有圧扇30,31,40,41,50,51,60,61(以後、総称する場合には、「有圧扇30等」という。)を固定する部分に、空気を流すための貫通孔を備える。空気吸引空間2内の空気は、有圧扇30等から隔壁10,11に形成された当該貫通孔を通して、空気供給空間3,4へと流れる。有圧扇30等は、好ましくは、複数枚の回転する羽根を有する大型の換気扇であって、空気に圧力をかけて流れを作り、その静圧が294~392Paのものである。有圧扇30等は、空気の吸入口を空気吸引空間2に向けて、空気の吐出口を空気供給空間3,4に向けるように、隔壁10,11に備えられる。
【0024】
3つの空間(空気吸引空間2、空気供給空間3,4)は、空気吸引空間2の長手方向両側に空気供給空間3,4を配置する基本ユニットを有する。当該基本ユニット中の空気吸引空間2内の栽培棚20は、各段の棚上の開口部22から流れてくる空気を前記長手方向の途中で栽培棚20の外に排気可能な主排気口21を備える。空気還流システムは、前記基本ユニットにおいて、空気吸引空間2の気圧と空気供給空間3の気圧との圧力差および空気吸引空間2の気圧と空気供給空間4の気圧との気圧差により栽培棚20の複数の棚上の各開口部22を通して空気供給空間3,4から空気吸引空間2へ流れる空気流を棚上に形成させ、主排気口21から空気吸引空間2に排気された空気の一部または全部を、空気圧縮手段としての有圧扇30等によって吸引して空気供給空間3,4へと空気を還流させるシステムである。本願の各図において、矢示点線は、空気の流れを意味する。
【0025】
この実施形態では、栽培棚20は、栽培室1の長手方向に4列に配置されている。ただし、栽培棚20の列数は、1~3列あるいは5列以上でも良い。4つの栽培棚20は、空気供給空間3に開口部22を突出させ、空気吸引空間2を貫き、空気供給空間4に開口部22を突出させるように、栽培室1内に配置されている。栽培棚20は、その長さ方向両端に位置する開口部22と、空気吸引空間2内に備える主排気口21とを空間3,4および2にそれぞれ開口させる筒状の多段式栽培棚である。各栽培棚20は、ここでは、7段の棚を有するが、1~6段あるいは8段以上でも良い。また、栽培棚20の開口部22は、この実施形態では、隔壁10,11を超えて空気供給空間3,4内に突き出しているが、隔壁10,11と同じ面に配置されていて空気供給空間3,4内に突き出していなくても良い。これは、他の実施形態でも同様である。
【0026】
主排気口21は、栽培棚20の空気吸引空間2に配置されている部分(隔壁10と隔壁11との間)の長さ方向略中間位置に設けられている。隔壁10から主排気口21までの距離と、隔壁11から主排気口21までの距離とを略同一にして、栽培室1における2つの空気還流のサイズを略同一にすることで、隔壁10に取り付けられる有圧扇30,31,40,41の空気吸引能力と、隔壁11に取り付けられる有圧扇50,51,60,61の空気吸引能力とを略同一に設計できるからである。ただし、主排気口21の位置は、隔壁10と隔壁11との間の距離の中間位置に限定されず、隔壁10若しくは隔壁11のいずれかに近い位置でも良い。
【0027】
主排気口21は、各栽培棚20の両側壁面に設けられている。この実施形態では、栽培棚20の各段の両側面に主排気口21を1つずつ設けている。すなわち、1つの栽培棚20は、合計14個の主排気口21を備える。しかし、主排気口21は、合計14個に限定されない。主排気口21は、各栽培棚20の長さ方向に2個以上備えられ、あるいは各栽培棚21の片側の側壁面のみに備えられるようにして、各栽培棚20において合計1~14個あるいは15個以上備えられていても良い。また、主排気口21は、各栽培棚20の側壁に限定されず、各栽培棚20の筒体における別の壁面に配置されていても良い。
【0028】
図2に示すように、隔壁10は、栽培室1の天上に近い上方位置であって一方の内側壁に近い位置に、有圧扇30,31を上下に並べて備える。また、隔壁10は、栽培室1の天上に近い上方位置であって前記一方の内側壁と反対側の内側壁に近い位置に、有圧扇40,41を上下に並べて備える。同様に、隔壁11は、栽培室1の天上に近い上方位置であって一方の内側壁に近い位置に、有圧扇50,51を上下に並べて備える。また、隔壁11は、栽培室1の天上に近い上方位置であって前記一方の内側壁と反対側の内側壁に近い位置に、有圧扇60,61を上下に並べて備える。ただし、有圧扇30等の位置および個数は、上述の例示に限定されない。
【0029】
隔壁10,11は、各栽培棚20同士の間、あるいは栽培棚20と栽培室1の内側壁との間に、隔壁10,11を通過可能な開閉式の1以上の扉70を備える。扉70は、通常は閉じられているが、作業者あるいは機械等が隔壁10,11を通過する必要が生じたときに開放可能である。ただし、隔壁10,11に扉70を備えなくても良い。隔壁10,11は、扉70が閉じられている通常時には、各開口部22および有圧扇30等を除き、空気吸引空間2と空気供給空間3,4との間に空気の流れる流路を形成しないように、栽培室1に設けられている。有圧扇30等によって空気吸引空間2から空気供給空間3,4に流れ込んだ空気は、空気供給空間3,4から各開口部22に流れ込む。各開口部22から各栽培棚20に流れ込んだ空気は、少なくとも主排気口21から空気吸引空間2へと流れ、再び、隔壁10,11に取り付けられている有圧扇30等によって空気供給空間3,4に流れる。
【0030】
栽培棚20は、各段の棚の下方位置に、植物5に栄養および水分(これらを混合して栽培養液とも称する)を供給可能な栽培トレイ72を備える。栽培養液としては、植物5の成長に必要とされる窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム等を含む水溶液を挙げることができる。各物質の濃度は、栽培する植物に応じて適宜決定することができる。また、栽培棚20は、各段の棚の上方位置に、植物5に光を照射可能な光照射手段の一例であるLED71を備える。LED71以外の光照射手段として、抵抗発熱式の電球を用いることもできる。栽培棚20の筒内の上下左右の各内壁は、LED71からの光を反射させて容易に栽培棚20の外に漏れないようにするため、好ましくは、反射板となっている。ただし、当該内壁の全面を反射板とする必要は無く、当該内壁の一部を、光透過可能な部位としても良い。
【0031】
図2(2A)中のC領域の拡大図に示すように、栽培棚20は、7段の骨組み23を備え、先に説明した反射板による内壁面によって筒状に構成されている。骨組み23は、例えば、アルミニウム製のアングルによって構成されている。図4に示すように、栽培棚20は、空気供給空間3,4内に開口する開口部22から空気吸引空間2内の主排気口21の位置までの間に、開口部22から流れてきた空気の一部または全部を主排気口21に至る前に排気可能な副排気口24を備えることもできる。副排気口24は、栽培棚20の空気供給空間3,4に突出している部分にも備えることができるが、空気吸引空間2に存在する部分に備えることを必須としている。このため、副排気口24は、栽培棚20の空気供給空間3,4に突出している部分に備えなくても良い。この実施形態では、副排気口24は、上下方向に、2段、2段、3段の計3個形成されている。ただし、副排気口24の上下方向の数や、副排気口24の占める棚の段数については、特段の制約はない。例えば、栽培棚20を8段構成として、副排気口24を棚の上下方向に、3段、2段、3段の計3個形成しても良い。
【0032】
副排気口24は、好ましくは、開閉可能に形成されている。具体的には、副排気口24は、開閉可能な引違い窓25a,25b(総称して、「引違い窓25」と称する。)を備える。引違い窓25は、スライド式に開閉可能な構造を有する。図4に示すように、互いに重ならない方向に引違い窓25a,25bを移動させ、引違い窓25によって副排気口24を完全に閉鎖している状態では、栽培棚20を流れる空気は副排気口24から空気吸引空間2(あるいは空気供給空間3,4)には流れない。一方、引違い窓25aに重なる方向(矢印Mの方向)に引違い窓25bを移動させると、副排気口24は開状態となる。この結果、栽培棚20を流れる空気の少なくとも一部は、副排気口24から空気吸引空間2(あるいは空気供給空間3,4)に流れる。
【0033】
栽培棚20は、その両側面に複数個の副排気口24を備えると共に、副排気口24の一部若しくは全部を開閉可能に構成されている。このため、開口部22から主排気口21までの間において開状態とする副排気口24の位置を変えることにより、栽培棚20を流れる空気の一部を排気する位置を調節できる。例えば、開口部22から下流に位置する所定位置から主排気口21までの間の植物5に送る空気量を少なくしたい場合には、当該所定位置若しくはその少し川上側に位置する副排気口24を開状態とすれば良い。また、開口部22から主排気口21までの間の途中で排気する必要が無い場合には、副排気口24を開けなければ良い。
【0034】
栽培棚20の長さ方向に流れる空気は、LED71からの光照射に起因する熱の調節に寄与する。植物5の成長に対して熱が大きすぎる場合には、空気流量を多くする必要がある。一方、植物5の成長に対して熱が小さすぎる場合には、空気流量を少なくする必要がある。植物5に与えられる熱の調節は、有圧扇30等の送風力の調整、LED71の照射出力などの調節によっても可能であるが、副排気口24の開閉位置、開閉箇所の数、開閉量などによっても調節可能である。特に、特定の段、あるいは同じ段の特定ゾーンにある植物5に与える熱を少なくしたい場合には、副排気口24の開閉位置や開閉量の調節を行うのが適している。
【0035】
図2(2B)中のD領域の拡大図および図4に示すように、栽培棚20は、その長さ方向の空気吸引空間2の略中間位置に、主排気口21を備える。主排気口21は、好ましくは常に開状態の排気口である。ただし、主排気口21は、副排気口24と同様、開閉可能に構成されていても良い。主排気口21は、好ましくは、栽培棚20の側壁に形成されており、主排気口21を部分的に閉鎖する閉鎖板26を備える。閉鎖板26は、より好ましくは、主排気口21からの空気の排気量を調節可能に主排気口21に取り付けられている。閉鎖板26は、栽培棚20の側面方向から見て、略V字状に3分割されている(図4を参照)。閉鎖板26aは、その両脇に位置する2つの閉鎖板26bに対して可動に構成されている。また、閉鎖板26aは、好ましくは、板面に複数個の貫通孔を備えるパンチング板である。閉鎖板26bは、貫通孔を有していない一般的な板である。
【0036】
主排気口21は、その下方辺に、外方向に延びるロッド28を備える。ロッド28は、その長さ方向(前記の下方辺から先端に向かう方向)に閉鎖板26aの開閉量を調節可能な凹凸29を備える。凹凸29は、ロッド28の長さ方向に繰り返し形成されている。閉鎖板26aは、閉鎖板26aの上辺に位置する回転軸27を中心に回動可能に構成されている。このため、閉鎖板26aの下端をロッド28の長さ方向の所望位置に固定したい場合には、回転軸27を中心に閉鎖板26aの回動角を調節して、当該所定位置の凹凸29に閉鎖板26aの下端を固定すれば良い。
【0037】
なお、閉鎖板26aの回動をスムーズにするためには、凹凸29の深さを、ロッド28の先端から主排気口21に向かって徐々に深くなるように形成して、閉鎖板26aの下端が弧を描くように回動させるのが好ましい。別の変形例としては、ロッド28を、主排気口21の下辺位置からロッド28の先端に向かって若干上方向に傾斜させても良い。さらなる別の変形例としては、回転軸27そのものを、閉鎖板26aの回動に合わせて上下動可能に構成しても良い。
【0038】
図4の「Open1」に示すように、閉鎖板26aが主排気口21を閉鎖している状態のときには、栽培棚20を流れる空気は、閉鎖板26aに開けられている貫通孔からのみ排気される。閉鎖板26aの開口率は、特段制約されないが、例えば、50~80%の範囲、さらには55~75%の範囲になるように設計可能である。閉鎖板26aが主排気口21を閉じている状態のときには、閉鎖板26aの開口率に応じた分の空気量が外部に排気される。
【0039】
一方、図4の「Open2」に示すように、閉鎖板26aをロッド28の先端方向(矢印Mの方向)に回動させて、閉鎖板26bに対して隙間を生じるように開状態とした場合には、栽培棚20を流れる空気は、閉鎖板26aに形成された貫通孔のみならず、前記隙間からも排気される。このように、閉鎖板26aの回動量を調節することによって、栽培棚20からの空気排気量を調節可能である。この実施形態では、閉鎖板26は、栽培棚20の各段に独立して備えられている。このため、同一の栽培棚20において、各段の単位で空気排気量を調節可能である。
【0040】
植物5としては、サラダ菜、サニーレタス、リーフレタス、チンゲン菜、小松菜、スイートバジル、ニチニチソウ、トマト、イチゴ、ねぎ等を挙げることができる。なお、これらは、植物5の一例に過ぎない。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る空気還流システムおよびそれを備える植物栽培装置について説明する。第2実施形態において、第1実施形態と共通する構成要素については、同一符号を付して、その重複した説明を省略する。
【0042】
図5は、第2実施形態に係る空気還流システムおよびそれを備える植物栽培装置の平面図を示す。図6は、図5の栽培棚の開口部から見た部分正面図であって遮蔽板の突出前後の変化を示す図(6A)および当該遮蔽板を駆動するための制御システムの概略図(6B)をそれぞれ示す。
【0043】
第2実施形態に係る植物栽培装置1a(栽培室1aとも称する)に配置される栽培棚20は、栽培棚20の各段の棚上の内部空間に向けて突出可能であって棚上を流れる空気の一部を遮蔽可能な遮蔽板80を備える。この実施形態では、遮蔽板80は、栽培棚20の内部に向けて突出および当該内部から側壁に向けて収納可能に往復可動な板である。また、栽培棚20は、好ましくは、棚上の内部空間内の空気流速を検出するための空気流速検出センサ81を備える。第2実施形態における遮蔽板80および空気流速検出センサ81は、第1実施形態に存在しない構成要素である。
【0044】
図5では、栽培室1aに配置される4つの栽培棚20の内の3つの栽培棚20の側壁面に、栽培棚20の内方に向かって突出および当該内方から側壁面に収納を可能とする一対の遮蔽板80を対向配置させている。しかし、遮蔽板80は、全ての栽培棚20に備えられ、さらには栽培棚20の長さ方向の任意の位置と数にて備えられても良い。また、遮蔽板80は、栽培棚20の両側壁から突出可能な一対の板で構成されていなくとも良く、例えば、栽培棚20の内部天面から降下およびその逆方向に上昇可能な1枚の板でも良い。
【0045】
図6(6A)に示すように、遮蔽板80を栽培棚20の所定棚上の内部空間に向けて突出させると、その所定棚では、開口部22からの空気の流入量が減少する。空気供給空間3,4からの空気は、その分だけ、他の棚の開口部22に多く供給される。すなわち、遮蔽板80は、所定棚の植物5に供給される空気流量を減らす際に突出される。逆に、所定棚の植物5に供給される空気流量を増やす場合には、遮蔽板80の突出長さを短くし、若しくは完全に側壁方向に収納される。
【0046】
図6(6B)に示すように、栽培室1aは、空気流速検出センサ81の検出結果に基づき、遮蔽板80の突出量を制御する遮蔽板制御装置90を備える。図6(6B)では、1つの空気流速検出センサ81のみを示しているが、2以上を示しても良い。遮蔽板制御装置90は、空気流速検出センサ81の検出を通じて、所定の棚上の内部空間を流れる空気が第一流速に達していないと判別した場合には遮蔽板80の突出量を減じ、所定の棚上の内部空間を流れる空気が第一流速以上の第二流速を超えている場合には遮蔽板80の内部空間からの突出量を増すように制御する。以下、制御の詳細を説明する。
【0047】
遮蔽板制御装置90は、センサ信号受信部91、モータ駆動信号送信部92、記憶部93および空気流量判別部94を備える。センサ信号受信部91、モータ駆動信号送信部92および空気流量判別部94は、ハードウェアとして、中央処理装置(CPU)が処理を行う部分である。CPUは、例えば、記憶部93内に格納されているコンピュータプログラムを読みながら、センサ信号受信部91、モータ駆動信号送信部92および空気流量判別部94の各処理を実行する。記憶部93としては、RAMやEEPROMを例示できる。センサ信号受信部91は、空気流速検出センサ81と有線若しくは無線で接続されている。モータ駆動信号送信部92は、モータ82に信号を送信可能に、モータ82と有線若しくは無線で接続されている。モータ82は、ギア等の駆動力伝達機構83を介して遮蔽板80に接続されている。遮蔽板80は、モータ82の回転に応じて、矢印Mの方向に往復可動である。
【0048】
空気流量判別部94は、空気流速検出センサ81からの空気流量を示す信号を受け取ると、当該空気流量が第一流速(F1)に達しているかどうかを判別して、第一流速(F1)に達していないと判別した場合には、遮蔽板80の内部空間からの突出量を所定量だけ減じるようにモータ駆動信号送信部92に信号を送信する。モータ駆動信号送信部92は、遮蔽板80の突出量を所定量だけ減じるに必要な回転数に関する信号をモータ82に送信する。モータ82は、当該信号に基づき遮蔽板80を駆動する。一方、空気流量判別部94は、当該空気流量が第一流速(F1)に達しているが第二流速(F2)には達していないと判別した場合には、モータ駆動信号送信部92に信号を送信しない。ここで、F2とF1との関係は、F2>F1である。したがって、モータ82は回転せず、遮蔽板80は現状の突出量を維持したまま動かない。また、空気流量判別部94は、当該空気流量が第二流速(F2)を超えていると判別した場合には、遮蔽板80の内部空間からの突出量を所定量だけ増すようにモータ駆動信号送信部92に信号を送信する。モータ駆動信号送信部92は、遮蔽板80の突出量を所定量だけ増すに必要な回転数に関する信号をモータ82に送信する。モータ82は、当該信号に基づき遮蔽板80を駆動する。このときのモータ82の回転方向は、遮蔽板80の突出量を減じるときと逆方向である。なお、第一流速(F1)=第二流速(F2)としても良い。
【0049】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る空気還流システムおよびそれを備える植物栽培装置について説明する。第3実施形態において、前述の各実施形態と共通する構成要素については、同一符号を付して、その重複した説明を省略する。
【0050】
図7は、第3実施形態に係る空気還流システムおよびそれを備える植物栽培装置の図3と同様のX-X線断面図(7A)および有圧扇の出力を制御するための制御システムの概略図(7B)をそれぞれ示す。
【0051】
第3実施形態に係る植物栽培装置1b(栽培室1bとも称する)は、空気吸引空間2に備えられる第一気圧検出センサ101と、空気吸引空間2と隔壁10,11を隔てて隣り合う空気供給空間3,4に備えられる第二気圧検出センサ102,103と、を有する。また、栽培室1bは、第一気圧検出センサ101により検出される気圧と第二気圧検出センサ102,103により検出される気圧との気圧差に基づき有圧扇30等の出力を制御する空気圧縮制御装置110を備える。空気圧縮制御装置110は、前記の気圧差が第一気圧差に達していない場合には有圧扇30等の出力を上げ、第一気圧差以上の第二気圧差を超えている場合には有圧扇30等の出力を下げるように有圧扇30等を制御する。以下、制御の詳細を説明する。
【0052】
空気圧縮制御装置110は、センサ信号受信部111、有圧扇駆動信号送信部112,113、記憶部114および気圧差判別部115を備える。センサ信号受信部111、有圧扇駆動信号送信部112,113および気圧差判別部115は、ハードウェアとして、中央処理装置(CPU)が処理を行う部分である。CPUは、例えば、記憶部114内に格納されているコンピュータプログラムを読みながら、センサ信号受信部111、有圧扇駆動信号送信部112,113および気圧差判別部115の各処理を実行する。記憶部114としては、RAMやEEPROMを例示できる。センサ信号受信部111は、第一気圧検出センサ101および第二気圧検出センサ102,103と有線若しくは無線で接続されている。有圧扇駆動信号送信部112は、隔壁10側に取り付けられている有圧扇30,31,40,41に信号を送信可能に、有圧扇30,31,40,41と有線若しくは無線で接続されている。また、有圧扇駆動信号送信部113は、隔壁11側に取り付けられている有圧扇50,51,60,61に信号を送信可能に、有圧扇50,51,60,61と有線若しくは無線で接続されている。
【0053】
気圧差判別部115は、センサ信号受信部111を通じて、第一気圧検出センサ101により検出される気圧(P1)、第二気圧検出センサ102により検出される気圧(P2)および第二気圧検出センサ103により検出される気圧(P3)を受け取ると、空気供給空間3と空気吸引空間2との気圧差(P2-P1)および空気供給空間4と空気吸引空間2との気圧差(P3-P1)を算出する。ここで、P2およびP3は、P1より大きい。ただし、これらの気圧差の算出処理は、センサ信号受信部111により行われても良い。気圧差判別部115は、気圧差(P2-P1)が第一気圧差(ΔP1)に達しているかどうかを判別して、第一気圧差(ΔP1)に達していないと判別した場合には、有圧扇30,31,40,41の出力を上げる。一方、気圧差判別部115は、気圧差(P2-P1)が第一気圧差(ΔP1)に達しているが第二気圧差(ΔP2)には達していないと判別した場合には、有圧扇30,31,40,41の現状の出力を変えずに維持する。ここで、ΔP2とΔP1との関係は、ΔP2>ΔP1である。また、気圧差判別部115は、気圧差(P2-P1)が第二気圧差(ΔP2)を超えていると判別した場合には、有圧扇30,31,40,41の出力を低くする。
【0054】
また、気圧差判別部115は、気圧差(P3-P1)が第一気圧差(ΔP1)に達しているかどうかを判別して、第一気圧差(ΔP1)に達していないと判別した場合には、有圧扇50,51,60,61の出力を上げる。一方、気圧差判別部115は、気圧差(P3-P1)が第一気圧差(ΔP1)に達しているが第二気圧差(ΔP2)には達していないと判別した場合には、有圧扇50,51,60,61の現状の出力を変えずに維持する。また、気圧差判別部115は、気圧差(P3-P1)が第二気圧差(ΔP2)を超えていると判別した場合には、有圧扇50,51,60,61の出力を低くする。なお、第一気圧差(ΔP1)=第二気圧差(ΔP2)としても良い。
【0055】
(その他の実施形態)
以上のように、本発明の好適な各実施形態について図面を参照しながら説明してきたが、本発明は、上記各実施形態に限定されることなく、種々変更実施可能である。
【0056】
例えば、本発明に係る植物栽培装置1は、空気吸引空間2を空気供給空間3と空気供給空間4により挟んだ基本ユニットのみではなく、基本ユニットの空気供給空間3あるいは空気供給空間4の先に別の隔壁を挟んで空気吸引空間をさらに接続し、その先に隔壁を挟んで空気供給空間を接続するように、基本ユニットに対して空気吸引空間と空気供給空間とを交互に配置した構成を有していても良い。
【0057】
また、空気吸引空間2内の各栽培棚20は、上記各実施形態では、少なくとも主排気口21を開口した1つの筒状の棚であり、栽培棚20の長さ方向に両側壁を分断せずに構成されている。しかし、空気吸引空間2内の各栽培棚20は、主排気口21の位置で途切れており、隔壁10からつながる部分と、隔壁11からつながる部分とに分断されていても良い。その場合、各栽培棚20の長さ方向両端側にある開口部22から流れてきた空気は、上記の分断されている位置から空気吸引空間2内に入り、有圧扇30等に吸引されて空気供給空間3,4に入るようにしても良い。
【0058】
図8は、図2の主排気口に設けられる閉鎖板の変形例(8A,8B)、図4の副排気口に設けられる引違い窓に代用可能な回転扉の開閉状況(8C)および図4の副排気口に設けられる引違い窓に代用可能な3本の開閉式チューブの開閉状況(8D)をそれぞれ示す。
【0059】
(8A)は、主排気口21を覆う図2の閉鎖板26を上下逆さに取り付けた例を開口部22の方向から見た状態を示す。このような閉鎖板26を主排気口21に配置すると、閉鎖板26aの上端を主排気口21から離す方向に移動することによって、主排気口21から排気される空気流量を多くすることができる。(8B)は、(8A)の閉鎖板26bを取り除き、主排気口21とほぼ同一形状(矩形)の閉鎖板26aを主排気口21に備える例を開口部22の方向から見た状態を示す。この例では、主排気口21を正面に見て左右両側には、閉鎖板26aの回動する領域を塞ぐように三角形の壁面120が備えられている。このため、閉鎖板26aを主排気口21の下辺を中心に回動させた際、栽培棚20内の空気は、壁面120の方向からは外に排気されず、ロッド28の方向(上方向)および閉鎖板26aに形成されている複数の貫通孔から排気される。閉鎖板26aを開ける角度を大きくすることによって、ロッド28側の開口面積も大きくなり、もって空気の排気流量を多くすることができる。
【0060】
(8C)は、副排気口24を、軸131を中心に回転可能な回転扉130にて開閉可能な例を外側壁の方向および上方から見た各状態を示す。回転扉130を例えば矢印Rの方向に回転させることによって、副排気口24の開口面積を変えることができる。(8D)は、副排気口24を板140によって完全に閉塞して、その閉塞した板140に3本の開閉式チューブ141,142,143を貫通させた例を外側壁の方向および上方から見た各状態を示す。開閉式チューブ141,142,143において、その内部を黒塗りしているものは閉じている。(8D)は、左から右に向かって、開閉式チューブ141,142,143が全て閉じている状態、開閉式チューブ141,142が閉じていて開閉式チューブ143が開いている状態、開閉式チューブ141が閉じていて開閉式チューブ142,143が開いている状態、および開閉式チューブ141,142,143が全て開いている状態をそれぞれ示す。このように、独立して開閉可能な開閉式チューブ141,142,143を採用すると、栽培棚20の内部から外への漏光を抑制できる。
【0061】
開閉式チューブ141,142,143は、副排気口24ではなく、主排気口21を完全に塞いだ板140を貫通するように備えても良い。また、上記の例では、開閉式チューブは、3本であるが、1~2本あるいは4本以上でも良い。開閉式チューブの一部のみを開閉自在な構成とし、他を開状態にしかできない構成としても良い。
【0062】
先に述べた各実施形態中の構成要素は、互いに組み合わることができない場合を除き、任意に組み合わせることができる。一例を挙げると、第2実施形態に係る栽培室1aに、第3実施形態に係る栽培室1b内の第一気圧検出センサ101、第二気圧検出センサ102,103および空気圧縮制御装置110を備えても良い。
【0063】
また、上記各実施形態では、閉鎖板26は、主排気口21からの空気の排気量を調節可能に主排気口21に取り付けられているが、空気の排気量を調節不能に主排気口21に取り付けられていても良い。また、副排気口24は、必ずしも栽培棚20に備えていなくとも良い。さらに、副排気口24は、開閉可能ではなく、常時、開状態でも良い。また、各実施形態に係る空気還流システムは、少なくとも隔壁10,11と空気圧縮手段(例えば、有圧扇30等)と空気吸引空間2と空気供給空間3,4とを含むが、それらに加えて、養液循環タンク、養液循環ポンプ、除湿機、空気中に浮遊する浮遊物を除去するためのHEPAユニットを備えていても良い。HEPAユニットは、空気中から微小の埃や菌を取り除き、空気清浄するためのHEPAフィルタを含む。HEPAフィルタは、定格風量で粒径が0.3μmの粒子を99.97%以上捕集する能力をもつフィルタであって、クリーンルームのメインフィルタとして用いられる。HEPAユニットは、HEPAフィルタの他、空気を取り込み、HEPAフィルタへ向けて送風するためのファン、そのファンにより空気を取り込む際、比較的大きな埃や虫等を除去するためのプレフィルタを備えることができる。また、有圧扇30等以外の空気圧縮手段として、コンプレッサー、空気砲生成装置などを採用しても良い。
【0064】
植物栽培装置1,1a,1bは、植物5を植栽するための栽培トレイが載置される1段または複数段の棚を有する栽培棚20と、上記の空気還流システムとを含む。ただし、空気還流システムは、栽培棚20を含めるように解釈しても良い。その場合には、空気還流システムは、植物栽培装置1,1a,1bと近似する構成、若しくは同一の構成となり得る。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、植物工場による植物の栽培に用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
1,1a,1b・・・植物栽培装置(栽培室)、2・・・空気吸引空間、3,4・・・空気供給空間、5・・・植物、10,11・・・隔壁、20・・・栽培棚、21・・・主排気口、22・・・開口部、24・・・副排気口、26,26a,26b・・・閉鎖板、30,31,40,41,50,51,60,61・・・有圧扇(空気圧縮手段の一例)、72・・・栽培トレイ、80・・・遮蔽板、81・・・空気流速検出センサ、90・・・遮蔽板制御装置、101・・・第一気圧検出センサ、102,103・・・第二気圧検出センサ、110・・・空気圧縮制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8