(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
B63B 1/40 20060101AFI20220331BHJP
B63H 5/08 20060101ALI20220331BHJP
B63H 25/38 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B63B1/40 Z
B63H5/08
B63H25/38 B
(21)【出願番号】P 2018024204
(22)【出願日】2018-02-14
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 智之
(72)【発明者】
【氏名】川淵 信
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-33072(JP,A)
【文献】特開平4-257797(JP,A)
【文献】特開昭57-77282(JP,A)
【文献】特開2010-195302(JP,A)
【文献】特開昭49-37386(JP,A)
【文献】再公表特許第2008/099672(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/08, 1/40, 5/08,25/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、
前記左右一対のプロペラが後部に装着される左右一対のスケグと、
前記船体の船尾で
前記左右一対のプロペラの回転中心軸と同軸上に回転中心を有して前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、
を備え、
前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部を有
し、
前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域であって、下端が前記左右一対のプロペラよりも上方側に位置するように設けられる、
ことを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向において、最も低位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の船舶。
【請求項4】
前記船底は、前記左右一対の凸部の間に
船体の幅方向に沿って水平な水平部が設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項5】
前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向に沿って水平または船尾に向けて上方に傾斜することを特徴とする請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項6】
前記左右一対の凸部は、満載吃水線より下方に配置されることを特徴とする請求項1から
請求項5のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項7】
前記左右一対の凸部下端と前記船底の幅方向における中心位置の前記船体の高さ方向の距離は、船底から中心位置高さの2%~30%の範囲に設定されることを特徴とする請求項1から
請求項6のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項8】
前記左右一対の
凸部下端は、前記船体の船首側に向けて
広がることを特徴とする請求項1から
請求項7のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項9】
前記左右一対の
凸部下端における船首側広がり角度は、15度以下に設定されることを特徴とする
請求項8に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2個のプロペラと2個の舵を備える船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、船舶は、輸送効率の向上を図るために船体の大型化が進んでいる。しかし、1個のプロペラと1個の舵を備える従来の1軸船は、船体抵抗の増大に対して、製造することができるプロペラの最大直径が限られることから、プロペラ面積を増加させることができず、プロペラの荷重が増大することによりプロペラ効率が大幅に悪化してしまう。そこで、2個のプロペラと2個の舵を備えた船舶が提案されている。
【0003】
このような船舶は、船体の操縦性を確保するために2個の舵を採用し、各舵を左右舷におけるプロペラの後方に配置している。この場合、左右のスケグの下部を船体の幅方向における外側へ傾斜させる形状とすることで、船体抵抗を低減させている。従来の船体は、船底が船体の長手方向の後方に向けて上方に傾斜した形状をなし、舵軸の位置で計画喫水の付近の高さとなっている。このような船舶としては、例えば、下記特許文献に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-013039号公報
【文献】特開2012-035785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
舵取付部付近が没水した載貨状態の2軸船舶では、船体の周囲を回り込む内向きの流れと進行方向に向いて配置された舵が干渉し、造波抵抗が発生することで推進性能が悪化する。その要因は、2軸船特有の舵配置によるものであり、舵取付部の船体曲面は、外側及び船尾側が上方に傾斜する形状となり、水線面付近の境界層内の流れは船体の傾斜に従って外から内側に向かって流れる。一方、船体境界層よりも外側では進行方向の流れが存在する。この2つの流れに伴い舵高さ方向断面の流向角度は急激に変化しており、舵形状を流れに沿わせる事は難しく舵形状は境界層外側の主流に合わせた形状を採用している。その対策の一つとして、舵取付部の断面を水平にする事が考えられるが、その場合、船尾最後部が水面に幅広く没水してしまう為、主船体の抵抗増加が懸念される。また、別の対策として、左右の舵を船体の幅方向における中心側に寄せて配置して船体断面幅方向の上昇傾斜が緩やかな位置に舵を配置して船体表面流れを推進方向に向けることが考えられる。しかし、効果は微小であり、舵板に舵バルブを設けた船舶の場合は、プロペラ後方に舵バルブを配置できないため省エネ効果を得ることが困難となる。更に別の対策として、舵を斜めに配置し、舵バルブをプロペラボスの後流、取付部を船体の内側にすることも考えられるが、船体の建造時における舵差込みが困難であったり、操縦性能を確保するために舵面積を増大させた事で舵抵抗増化が懸念される。何れの対策も背反事象による推進性能悪化が大きく、従来技術での抜本的改善が見込めない。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するものであり、舵の取付部における造波抵抗を低減することで推進性能の向上を図る船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の船舶は、船体と、前記船体の船尾に配置される左右一対のプロペラと、前記船体の船尾で前記左右一対のプロペラの後方に配置される左右一対の舵と、を備え、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向における前記左右一対の舵が装着される前記船体の船底に、下方に突出する左右一対の凸部が設けられる、ことを特徴とするものである。
【0008】
従って、船体の長手方向における左右一対の舵の回転中心の位置で、船体の幅方向における左右一対の舵が装着される船体の船底に下方に突出する左右一対の凸部を設けることから、船体の左舷及び右舷から船尾周りに流れる水流は、船体における左右一対の舵の取付部にて凸部下端の船長方向に従って流れる。そのため、水流が左右一対の舵の取付部に干渉することが抑制され、船体の後方への流れを阻害することもなく、造波抵抗を大幅に低減することで推進性能の向上を図ることができる。
【0009】
本発明の船舶では、前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向における前記左右一対の舵の回転中心の位置で、前記船体の幅方向において、最も低位置に配置されることを特徴としている。
【0010】
従って、左右一対の凸部が船体の幅方向における最も低位置に配置されることから、船体の左舷及び右舷から船尾周りに流れる水流を左右一対の凸部によりスムースに後方に流すことができる。
【0011】
本発明の船舶では、前記船体の左舷及び右舷と前記左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続されることを特徴としている。
【0012】
従って、船体の左舷及び右舷と左右一対の凸部とは、段差がなく連続する滑らかな曲線部により接続されることから、船体の左舷及び右舷の外側の流れを曲線部によりスムースに左右一対の凸部に導いて後方に流すことができる。
【0013】
本発明の船舶では、前記船底は、前記左右一対の凸部の間に水平面形状をなす水平部が設けられることを特徴としている。
【0014】
従って、船底における左右一対の凸部の間に水平面形状をなす水平部を設けることから、水平部が水面に接触することが抑制され、造波抵抗を低減することができる。
【0015】
本発明の船舶では、前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向において、少なくとも前記左右一対の舵が配置される領域に設けられることを特徴としている。
【0016】
従って、左右一対の凸部を左右一対の舵が配置される領域に設けることから、船体の左舷及び右舷から船尾周りに流れる水流を左右一対の凸部により左右一対の舵が配置される領域にわたってスムースに後方に流すことができる。
【0017】
本発明の船舶では、前記左右一対の凸部は、前記船体の長手方向に沿って水平または船尾に向けて上方に傾斜することを特徴としている。
【0018】
従って、左右一対の凸部を船体の長手方向に沿って水平または船尾に向けて上方に傾斜させることから、船底を流れる水流をスムースに後方に流すことができる。
【0019】
本発明の船舶では、前記左右一対の凸部は、満載吃水線より下方に配置されることを特徴としている。
【0020】
従って、左右一対の凸部を満載吃水線より下方に配置することから、船体の左舷及び右舷から船尾周りに流れる水流が左右一対の凸部に沿って後方に流れるため、水流と左右一対の舵との干渉を抑制することができる。
【0021】
本発明の船舶では、前記左右一対の凸部下端と前記船底の幅方向における中心位置の前記船体の高さ方向の距離は、船底から中心位置高さの2%~30%の範囲に設定されることを特徴としている。
【0022】
従って、左右一対の凸部下端と船底の幅方向における中心位置の船体の高さ方向の距離を船底から中心位置高さの2%~30%の範囲に設定することから、船体抵抗となる船尾端の水没面積を最小とすることができると共に、舵抵抗を低減することができる最適な高さにすることができる。
【0023】
本発明の船舶では、前記左右一対の凸部下端の船長方向位置は、前記船体の船首側に向けて広がり形状をなすことを特徴としている。
【0024】
従って、左右一対の凸部下端の船長方向位置を船体の船首側に向けて広がり形状とすることから、船体の左舷及び右舷から船尾端側に流れる水流が左右一対の凸部に案内されることとなり、船体抵抗を悪化させることなく、舵抵抗を低減することができる。
【0025】
本発明の船舶では、前記左右一対の凸部下端の船長方向位置における船首側広がり角度は、15度以下に設定されることを特徴としている。
【0026】
従って、左右一対の凸部下端の船長方向位置における船首側広がり角度を最適角度範囲に設定することから、舵抵抗を効果的に低減することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の船舶によれば、舵の取付部における造波抵抗を低減することで推進性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図3】
図3は、第1実施形態の船尾を表す側面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の船尾を表す底面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の船尾の変形例を表す側面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の船舶における船尾の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る船舶の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0030】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の船舶の概略側面図、
図2は、船舶の概略底面図である。
【0031】
第1実施形態の船舶は、排水量型の商船であって、例えば、大型石油タンカー(VLCC,ULCC)、LNG船やLPG船、旅客船(カーフェリー)などである。また、第1実施形態の船舶は、2個のプロペラと2個の舵を備える二軸船である。
【0032】
図1及び
図2に示すように、船体10は、船首11と、船尾12と、船底13と、左舷14と、右舷15を有している。本実施形態では、船体10の船長方向(前後方向)をX方向、船幅方向(幅方向)をY方向、船高方向(上下方向)をZ方向として表している。そして、CLは、船体10の幅方向におけるセンターラインを表し、WLは、船体10の満載喫水線を表している。また、PCL1,PCL2は、各プロペラの回転中心線、RCL1,RCL2は、各舵軸の回転中心線を表している。
【0033】
船体10は、船尾12側に隔壁16により機関室17が区画され、この機関室17に主機関(例えば、ディーゼルエンジン)18が配置されている。この主機関18は、推進力を伝達する2個のプロペラ19A,19Bが駆動連結されている。各プロペラ19A,19Bは、船長方向Xに沿う回転中心線PCL1,PCL2を中心に回転することができる。
【0034】
また、船体10は、船尾12に船体10の進行方向を制御する2個の舵20A,20Bが設けられており、各舵20A,20Bは、船高方向Zに沿う回転中心線RCL1,RCL2を中心に回動することができる。
【0035】
以下、本実施形態の船舶における船尾12の詳細な形状について説明する。
図3は、船尾を表す側面図、
図4は、船尾を表す底面図、
図5は、
図3のV-V断面図、
図6は、
図3のVI-VI断面図、
図7は、
図3のVII-VII断面図である。
【0036】
本実施形態の船舶は、
図3から
図7に示すように、船体10の船長方向Xにおける左右一対の舵20A,20Bの回転中心線RCL1,RCL2の位置で、船幅方向Yにおける左右一対の舵20A,20Bが装着される船底13の位置に、下方に突出する左右一対の凸部31A,31Bを設けている。この左右一対の凸部31A,31Bは、満載吃水線WLより船高方向Zにおける下方に配置されている。
【0037】
船体10は、船尾12に左右一対のスケグ32A,32Bが設けられている。そして、左右一対のプロペラ19A,19Bは、左右一対のスケグ32A,32Bの後部に装着され、左右一対の舵20A,20Bは、左右一対のプロペラ19A,19Bの後方に設けられている。
【0038】
左右一対の凸部31A,31Bは、船体10の船長方向Xにおける左右一対の舵20A,20Bの回転中心線RCL1,RCL2の位置で、船幅方向Yにおける左右一対の舵20A,20Bの位置に、船底13から下方に突出するように設けられている。この左右一対の凸部31A,31Bは、船長方向Xにおいて、少なくとも左右一対の舵20A,20Bが配置される領域X1に設けられる。但し、左右一対の舵20A,20Bより船首11側(例えば、左右一対のプロペラ19A,19Bのボス部までの位置)から船尾12までの領域に設けてもよい。
【0039】
即ち、
図1に示すように、船底13は、水平部(ベースライン)13aと、水平部13aから後方に向けて上方に傾斜した傾斜部13bとを有している。そのため、船底13の傾斜部13bは、
図3及び
図5に示すように、左右一対のプロペラ19A,19Bより前方の位置で、左右一対のスケグ32A,32Bの間に船幅方向Yに沿って水平な水平部13cが設けられている。また、船底13の傾斜部13bは、
図3及び
図6に示すように、左右一対のプロペラ19A,19Bの近傍の位置で、左右一対のスケグ32A,32Bの間に水平部13cより高い位置に船幅方向Yに沿って水平な水平部13dが設けられている。そして、船底13の傾斜部13bは、
図3及び
図7に示すように、左右一対の舵20A,20Bの位置で、左右一対のスケグ32A,32Bの位置に左右一対の凸部31A,31Bが設けられ、左右一対の凸部31A,31Bの間に水平部13dより高い位置に船幅方向Yに沿って水平な水平部13eが設けられている。
【0040】
ここで、左右一対の凸部31A,31Bは、下端部が船長方向Xに沿って水平に設けられているが、この構成に限定されるものではない。例えば、左右一対の凸部31A,31Bは、下端部が船長方向Xに沿って船尾12側に向けて上方に傾斜するように構成してもよい。
【0041】
また、左右一対の凸部31A,31Bは、下方に突出した曲面により半円形状をなし、左舷14及び右舷15の湾曲した外面と曲線部13f,13gにより段差がなく滑らかに連続している。また、左右一対の凸部31A,31Bは、水平部13eと曲線部13h,13jにより段差がなく滑らかに連続している。左右一対の舵20A,20Bは、ラダーホーン33と、舵本体34と舵軸35により構成されている。ラダーホーン33は、左右一対の凸部31A,31Bの下面に固定され、舵本体34は、舵軸35によりラダーホーン33に回動自在に取付けられている。
【0042】
なお、左右一対の凸部31A,31Bの間に船幅方向Yに沿って水平な水平部13eを設けたが、この構成に限定されるものではない。例えば、左右一対の凸部31A,31Bの間に船高方向Zにおける上方に突出する湾曲凹部を設けたり、左右一対の凸部31A,31Bの間に船高方向Zにおける下方に突出する湾曲凸部を設けたりしてもよい。
【0043】
そして、左右一対の凸部31A,31Bは、船長方向Xにおける左右一対の舵20A,20Bの回転中心線RCL1,RCL2の位置で、船幅方向Yにおいて、最も低位置となっている。具体的に、左右一対の凸部31A,31Bと、船底13の船幅方向YにおけるセンターラインCLの水平部13eとの高さ方向の距離Z1は、船底13からの中心位置高さZ0の2%~30%の範囲に設定されている。距離Z1が2%未満であると、左右一対の凸部31A,31Bの効果が不十分となり、造波抵抗が発生してしまう。一方、距離Z1が30%を超えると、船尾12が後方に向けて水平位置よりも下方に下がった形状となるため、船体抵抗が生じてしまう。
【0044】
なお、左右一対の凸部31A,31Bに対する左右一対の舵20A,20Bの装着構成は、上述した構成に限定されるものではない。
図8は、船尾の変形例を表す側面図である。
【0045】
図8に示すように、船体10の船長方向Xにおける左右一対の舵20A,20Bの回転中心線RCL1,RCL2の位置で、船幅方向Yにおける左右一対の舵20A,20Bが装着される船底13の位置に、下方に突出する左右一対の凸部41が設けられ、各凸部41に舵スケグ42がそれぞれ固定されている。そして、ラダーホーン33が舵スケグ42の下面に固定され、舵本体34は、舵軸35によりラダーホーン33に回動自在に取付けられている。
【0046】
そのため、
図3及び
図7に示すように、船舶が航行するとき、船体10の左舷14及び右舷15の外面に沿って船尾12側に流れる水流Wは、船体10における左右一対の舵20a,20Bの取付部に到達し、左右一対の凸部31A,31Bの外側をスムースに後方に流れる。そのため、この水流Wが左右一対の舵20A,20Bやその取付部に干渉することが抑制され、船体10の後方への流れが阻害されることはない。
【0047】
このように第1実施形態の船舶にあっては、船体10と、船体10の船尾12に配置される左右一対のプロペラ19A,19Bと、船体10の船尾12で左右一対のプロペラ19A,19Bの後方に配置される左右一対の舵20A,20Bとを備え、船体10の船長方向Xにおける左右一対の舵20A,20Bの回転中心線RCL1,RCL2の位置で、船体10の船幅方向Yにおける左右一対の舵20A,20Bが装着される船底13に、下方に突出する左右一対の凸部31A,31Bを設けている。
【0048】
従って、船体10の左舷14及び右舷15から船尾12周りに流れる水流Wが左右一対の凸部31A,31Bの外側をスムースに後方に流れることから、水流Wが左右一対の舵30A,30Bの取付部に干渉することが抑制され、船体10の後方への流れを阻害することもなく、造波抵抗を大幅に低減することで推進性能の向上を図ることができる。
【0049】
第1実施形態の船舶では、左右一対の凸部31A,31Bは、船体10の長手方向における左右一対の舵20A,20Bの回転中心線RCL1,RCL2の位置で、船体10の船幅方向Yにおいて、最も低位置に配置されている。従って、船体10の左舷14及び右舷15から船尾12周りに流れる水流Wを左右一対の凸部31A,31Bによりスムースに後方に流すことができる。
【0050】
第1実施形態の船舶では、船体10の左舷14及び右舷15と左右一対の凸部31A,31Bとを段差がなく連続する滑らかな曲線部13f,13gにより接続している。従って、船体10の左舷14及び右舷15の外側の流れを曲線部13f,13gによりスムースに左右一対の凸部31A,31Bに導いて後方に流すことができる。
【0051】
第1実施形態の船舶では、船底13における左右一対の凸部31A,31Bの間に水平面形状をなす水平部13cを設けている。従って、水平部13cが水面に接触することが抑制され、造波抵抗を低減することができる。
【0052】
第1実施形態の船舶では、左右一対の凸部31A,31Bを船体10の船長方向Xにおいて、少なくとも左右一対の舵20A,20Bが配置される領域に設けている。従って、船体10の左舷14及び右舷15から船尾12周りに流れる水流Wを左右一対の凸部31A,31Bにより左右一対の舵20A,20Bが配置される領域にわたってスムースに後方に流すことができる。
【0053】
第1実施形態の船舶では、左右一対の凸部31A,31Bを船体10の船長方向Xに沿って水平または船尾12に向けて上方に傾斜させている。従って、船底13を流れる水流Wをスムースに後方に流すことで、造波抵抗を低減することができる。
【0054】
第1実施形態の船舶では、左右一対の凸部31A,31Bを満載吃水線より下方に配置している。従って、船体10の左舷14及び右舷15から船尾12周りに流れる水流Wが左右一対の凸部31A,31Bに沿って後方に流れるため、水流Wと左右一対の舵20A,20Bとの干渉を抑制することができる。
【0055】
第1実施形態の船舶では、左右一対の凸部31A,31Bと船底13のセンターラインCLの船体10の船高方向Zの距離Z1を、船底13からの中心位置高さZ0の2%~30%の範囲に設定している。従って、船体抵抗となる船尾12端の水没面積を最小とすることができると共に、舵抵抗を低減することができる最適な高さにすることができる。
【0056】
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態の船舶における船尾の側面図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
第2実施形態の船舶は、
図9に示すように、船体10の船長方向Xにおける左右一対の舵20A,20Bの回転中心線RCL1,RCL2の位置で、船幅方向Yにおける左右一対の舵20A,20Bが装着される船底13の位置に、下方に突出する左右一対の凸部31A,31Bを設けている。この左右一対の凸部31A,31Bは、満載吃水線WLより船高方向Zにおける下方に配置されている。この左右一対の凸部31A,31Bは、船長方向Xにおいて、少なくとも左右一対の舵20A,20Bが配置される領域X1に設けられる。
【0058】
そして、左右一対の凸部31A,31Bは、下端の船長方向位置が船体10の船首11側に向けて広がり形状をなし、この船首側広がり角度は、15度以下に設定されている。即ち、左右一対の凸部31A,31Bに沿う凸部中心線NCL1,NCL2は、船体10のセンターラインCLに対して所定の広がり角度を有している。凸部中心線NCL1,NCL2は、左右一対の舵20A,20Bの回転中心線RCL1,RCL2を通り、船首11側に向けて広がり形状となっている。凸部中心線NCL1,NCL2の角度を船首11側開きの0度~15度とし、左右一対の舵20A,20Bの角度を凸部中心線NCL1,NCL2に平行とする。そのため、船体10の外側からの流入ベクトルと舵角度が一致することとなり、左右一対の舵20A,20Bの抵抗も低減される。なお、凸部中心線NCL1,NCL2の角度が15度を超えると、舵20A,20B自体が抵抗となり、また、船体10内側の進行方向ベクトルの流れを阻害することで抵抗となる。
【0059】
このように第2実施形態の船舶にあっては、船体10の船長方向Xにおける左右一対の舵20A,20Bの回転中心線RCL1,RCL2の位置で、船体10の船幅方向Yにおける左右一対の舵20A,20Bが装着される船底13に、下方に突出する左右一対の凸部31A,31Bを設け、左右一対の凸部31A,31Bの下端の船長方向位置を船体10の船首11側に向けて広がり形状をなすものとしている。
【0060】
従って、左右一対の凸部31A,31Bを船体10の船首11側に向けて広がり形状とすることから、左右一対の凸部31A,31Bは、船体10の船尾12側に向けて閉じ形状となり、船体10の左舷14及び右舷15から船尾12側までの形状と左右一対の凸部31A,31Bの形状が類似するものとなる。そのため、船体10の左舷14及び右舷15から船尾12端側に流れる水流が左右一対の凸部31A,31Bに案内されるとき、船体抵抗を悪化させることなく、舵抵抗を低減することができる。
【0061】
第2実施形態の船舶では、左右一対の凸部31A,31Bの下端の船長方向位置における船首側広がり角度を15度以下に設定している。従って、舵抵抗を効果的に低減することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 船体
11 船首
12 船尾
13 船底
13a,13c,13d,13e 水平部
13b 傾斜部
13f,13g,13h,13j 曲線部
14 左舷
15 右舷
19A,19B プロペラ
20A,20B 舵
31A,31B 凸部
32A,32B スケグ
33 ラダーホーン
34 舵本体
35 舵軸
X 船長方向
Y 船幅方向
Z 船高方向
CL センターライン
WL 満載吃水線
PCL1,PCL2 プロペラの回転中心線
RCL1,RCL2 舵軸の回転中心線