(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】反射型液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20220331BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
G02F1/1335 520
G02F1/1335 510
G02F1/13357
(21)【出願番号】P 2018069156
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関 克矢
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-249306(JP,A)
【文献】特開2012-208202(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0027651(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1335
G02F 1/13357
G02F 1/1343
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
反射型液晶表示パネルと、
前記光源から出射された光に含まれる互いに偏光軸が直交する二種類の直線偏光のうち一方の直線偏光のみを透過させる偏光板と、
前記偏光板を透過した前記一方の直線偏光を前記反射型液晶表示パネルの画像表示面に向けて反射すると共に、前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面から出射された前記一方の直線偏光とは偏光軸が直交する他方の直線偏光を透過させる光透過反射面を有する偏光ビームスプリッターと、
前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面と前記偏光ビームスプリッターの前記光透過反射面との間に配置された、光の屈折率が空気層の光の屈折率よりも大きい透明部材と、を有し、
前記偏光板を透過した前記一方の直線偏光が前記透明部材の光入射面から前記透明部材の内部へ入射するように構成された、
反射型液晶表示装置であって、
前記透明部材の表面のうち偏光ビームスプリッターの前記光透過反射面と対向する表面は、第一の面と第二の面とを有し、
前記第一の面と前記第二の面は、前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面に対して傾斜する平面であり、
前記第二の面は、前記第一の面よりも前記光入射面から遠い側に位置し、
前記第一の面は、前記光入射面から前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面に向かって傾斜し、
前記第二の面は、前記第一の面から前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面に向かって傾斜し、
前記第二の面が前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面に対して傾斜する傾斜角は、前記第一の面が前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面に対して傾斜する傾斜角
よりも大きい、
ことを特徴とする反射型液晶表示装置。
【請求項2】
前記偏光ビームスプリッターの前記光透過反射面は、前記透明部材の前記第一の面と対向する第一の光透過反射面と、前記透明部材の前記第二の面と対向する第二の光透過反射面とを有し、前記第一の光透過反射面と前記第二の光透過反射面は、平面であり、前記第一の光透過反射面は、前記透明部材の前記第一の面と平行であり、前記第二の光透過反射面は、前記透明部材の前記第二の面と平行である、ことを特徴とする請求項
1に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項3】
前記透明部材の前記光入射面から前記透明部材の内部へ入射し、前記透明部材の内面で全反射して前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面のうち有効画像表示領域に入射する前記一方の直線偏光の主光束が前記透明部材の内面で全反射する回数は、前記有効画像表示領域内において等しい、ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の反射型液晶表示装置。
【請求項4】
前記透明部材を第一の透明部材として定義した場合において、前記偏光ビームスプリッターを挟んで前記第一の透明部材と対向する位置には、光の屈折率が空気層の光の屈折率よりも大きい第二の透明部材が配置され、前記第二の透明部材の表面のうち前記偏光ビームスプリッターを挟んで前記第一の透明部材と対向する表面は、前記第一の透明部材の前記第一の面と対向する第一の面と、前記第一の透明部材の前記第二の面と対向する第二の面とを有し、前記第二の透明部材の前記第一の面及び前記第二の面は、平面であり、前記第二の透明部材の前記第一の面は、前記第一の透明部材の前記第一の面と平行であり、前記第二の透明部材の前記第二の面は、前記第一の透明部材の前記第二の面と平行である、ことを特徴とする請求項1~
3の何れか一つに記載の反射型液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、反射型液晶表示装置における低背化は、例えば、反射型液晶表示装置の小型化や、観察者と液晶表示パネルの距離を近づけることで、液晶表示パネルの視認性や集光効率を向上させるために必要な技術とされており、さらにその要求は強くなっている。
【0003】
図2は、従来の反射型液晶表示装置を示す縦断面図である。従来の反射型液晶表示装置は、以下の構成を備えている。回路基板1の同一面上には、画像表示面を上方に向けて反射型液晶表示パネル2が配置され、それと隣接するように光出射面を上方に向けて光源3が配置されている。反射型液晶表示パネル2の上方とその周囲には、反射型液晶表示パネル2を覆うように、第一の筐体11が配置され、光源3の上方とその周囲には、光源3を覆うように、第二の筐体12が配置されている。第二の筐体12の内面には、光源3から出射された光を反射型液晶表示パネル2の上方に配置された板状の偏光ビームスプリッター6へ向かって案内するための反射面12aが設けられている。反射面12aから偏光ビームスプリッター6へと進む光路上には、光を拡散させる拡散板4と、互いに偏光軸が直交する二種類の直線偏光のうち一方の直線偏光(以下P波という)のみを透過させる偏光板5が配置されている。偏光ビームスプリッター6は、P波を反射し、それと偏光軸が直交する他方の直線偏光(以下S波という)を透過させる光透過反射面を有するもので、偏光板5から偏光ビームスプリッター6に入射したP波を反射型液晶表示パネル2の画像表示面へ所定の角度で入射させるように傾斜角が決められ、第一の筐体11により保持されている。
【0004】
また、従来の反射型液晶表示装置は、光源3から出射された光を屈折させるための第一の透明部材9と第二の透明部材10を備えている。第一の透明部材9は、偏光板5から出射されたP波が入射する第一の面9aと、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面と対向する第二の面9bと、反射型液晶表示パネル2の画像表示面と対向する第三の面9cとで構成される側面と、それらの側面と直角に接続される互いに平行な2つの底面(不図示)とを有する三角柱状の透明部材である。第二の透明部材10は、第一の筐体11の内側面と対向する第一の面10aと、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面と対向する第二の面10bと、観察者の目7に向かって光が出射される第三の面10cと、反射型液晶表示パネル2の外周部と対向する第四の面10dと、偏光板5に隣接する第五の面10eとで構成される側面と、それらの側面と直角に接続される互いに平行な2つの底面(不図示)とを有する台形柱状の透明部材である。第一の透明部材9は、第三の面9cが反射型液晶表示パネル2の画像表示面と対向するように、反射型液晶表示パネル2の上方に配置されている。第二の透明部材10は、第二の面10bが第一の透明部材9の第二の面9bと対向するように、偏光ビームスプリッター6を挟んで第一の透明部材9の上方に配置されている。第一の透明部材9と第二の透明部材10は、例えば、光の屈折率が1.5程度のアクリルで構成されている。
【0005】
反射型液晶表示パネル2は、電源オフ状態でP波がそのまま液晶を通過するように構成されており、偏光ビームスプリッター6側から垂直に入射したP波はそのまま液晶を通過し、反射型液晶表示パネル2の裏面側に設けられた反射要素(反射電極等)で垂直に反射され、反射されたP波は再び偏光ビームスプリッター6へ向かって進む。偏光ビームスプリッター6はP波を透過しない状態に配置されており、反射型液晶表示パネル2で反射されたP波は遮断されるため、電源オフ状態では黒表示状態となる。
【0006】
一方、反射型液晶表示パネル2は、電源オン状態では液晶がP波をS波へと変換し、S波はP波と同様に反射型液晶表示パネル2の裏面側で反射され、偏光ビームスプリッター6へ向かって進む。偏光ビームスプリッター6はS波を透過する状態に配置されており、反射型液晶表示パネル2で反射されたS波は透過するため、電源オン状態では白表示となる。
【0007】
以上のプロセスは反射型液晶表示パネル2の画素毎に行われ、偏光ビームスプリッター6を透過したS波が観察者の目7に入射し、映像として視認される。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図2に示した従来の反射型液晶表示装置では、透明部材の内面で起こる全反射を利用して筐体の高さを低くしている。しかしながら、P波の主光束が反射型液晶表示パネルの画像表示面に入射するまでの光路において、透明部材の内面で発生する全反射の回数に差ができるため、以下のような問題が生じる。
図2に示した従来の反射型液晶表示装置において、反射型液晶表示パネル2の有効画像表示領域8のうち光源3から遠い領域を有効画像表示領域8aとすると、有効画像表示領域8aへ光が入射する光路は、図中実線で示した矢印であり、第一の透明部材9の第二の面9bと第三の面9cとでそれぞれ1回ずつの全反射を介しており、第一の透明部材9の内面での全反射の回数は計2回となる。一方、反射型液晶表示パネル2の有効画像表示領域8のうち光源3に近い領域を有効画像表示領域8bとすると、有効画像表示領域8bへ光が入射する光路は、図中点線で示した矢印であり、第一の透明部材9の第三の面9cで1回の全反射を介しているのみで、第一の透明部材9の内面での全反射の回数は1回となる。ここで、全反射の回数が2回の有効画像表示領域8aの輝度は、全反射の回数が1回の有効画像表示領域8bの輝度よりも低くなるため、その輝度の差が観察者の目7には輝度ムラとして視認され、画像品質を低下させることとなる。
【0010】
本発明は、以上の問題に鑑みたもので、画像品質を向上させることが可能な反射型液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
光源と、反射型液晶表示パネルと、前記光源から出射された光に含まれる互いに偏光軸が直交する二種類の直線偏光のうち一方の直線偏光のみを透過させる偏光板と、前記偏光板を透過した前記一方の直線偏光を前記反射型液晶表示パネルの画像表示面に向けて反射すると共に、前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面から出射された前記一方の直線偏光とは偏光軸が直交する他方の直線偏光を透過させる光透過反射面を有する偏光ビームスプリッターと、前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面と前記偏光ビームスプリッターの前記光透過反射面との間に配置された、光の屈折率が空気層の光の屈折率よりも大きい透明部材と、を有し、前記偏光板を透過した前記一方の直線偏光が前記透明部材の光入射面から前記透明部材の内部へ入射するように構成された、反射型液晶表示装置であって、前記透明部材の表面のうち偏光ビームスプリッターの前記光透過反射面と対向する表面は、第一の面と第二の面とを有し、前記第一の面と前記第二の面は、前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面に対して傾斜する平面であり、前記第二の面は、前記第一の面よりも前記光入射面から遠い側に位置し、前記第一の面は、前記光入射面から前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面に向かって傾斜し、前記第二の面は、前記第一の面から前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面に向かって傾斜し、前記第二の面が前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面に対して傾斜する傾斜角は、前記第一の面が前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面に対して傾斜する傾斜角よりも大きい、反射型液晶表示装置とする。
【0014】
前記偏光ビームスプリッターの前記光透過反射面は、前記透明部材の前記第一の面と対向する第一の光透過反射面と、前記透明部材の前記第二の面と対向する第二の光透過反射面とを有し、前記第一の光透過反射面と前記第二の光透過反射面は、平面であり、前記第一の光透過反射面は、前記透明部材の前記第一の面と平行であり、前記第二の光透過反射面は、前記透明部材の前記第二の面と平行である、反射型液晶表示装置であっても良い。
【0015】
前記透明部材の前記光入射面から前記透明部材の内部へ入射し、前記透明部材の内面で全反射して前記反射型液晶表示パネルの前記画像表示面のうち有効画像表示領域に入射する前記一方の直線偏光の主光束が前記透明部材の内面で全反射する回数は、前記有効画像表示領域内において等しい、反射型液晶表示装置であっても良い。
【0016】
前記透明部材を第一の透明部材として定義した場合において、前記偏光ビームスプリッターを挟んで前記第一の透明部材と対向する位置には、光の屈折率が空気層の光の屈折率よりも大きい第二の透明部材が配置され、前記第二の透明部材の表面のうち前記偏光ビームスプリッターを挟んで前記第一の透明部材と対向する表面は、前記第一の透明部材の前記第一の面と対向する第一の面と、前記第一の透明部材の前記第二の面と対向する第二の面とを有し、前記第二の透明部材の前記第一の面及び前記第二の面は、平面であり、前記第二の透明部材の前記第一の面は、前記第一の透明部材の前記第一の面と平行であり、前記第二の透明部材の前記第二の面は、前記第一の透明部材の前記第二の面と平行である、反射型液晶表示装置であっても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、画像品質を向上させることが可能な反射型液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による反射型液晶表示装置の一実施形態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明による反射型液晶表示装置の一実施形態を示す縦断面図である。本実施形態の反射型液晶表示装置は、以下の構成を備えている。回路基板1の同一面上には、画像表示面を上方に向けて反射型液晶表示パネル2が配置され、それと隣接するように光出射面を上方に向けて光源3が配置されている。反射型液晶表示パネル2の上方とその周囲には、反射型液晶表示パネル2を覆うように、第一の筐体11が配置され、光源3の上方とその周囲には、光源3を覆うように、第二の筐体12が配置されている。第二の筐体12の内面には、光源3から出射された光を反射型液晶表示パネル2の上方に配置された板状の偏光ビームスプリッター6へ向かって案内するための反射面12aが設けられている。反射面12aから偏光ビームスプリッター6へと進む光路上には、光を拡散させる拡散板4と、互いに偏光軸が直交する二種類の直線偏光のうち一方の直線偏光(以下P波という)のみを透過させる偏光板5が配置されている。偏光ビームスプリッター6は、P波を反射し、それと偏光軸が直交する他方の直線偏光(以下S波という)を透過させる光透過反射面を有するもので、偏光板5から偏光ビームスプリッター6に入射したP波を反射型液晶表示パネル2の画像表示面へ所定の角度で入射させるように傾斜角が決められ、第一の筐体11により保持されている。偏光ビームスプリッター6の光透過反射面は、第一の斜面6aと第二の斜面6bを有している。第一の斜面6aと第二の斜面6bは、反射型液晶表示パネル2の画像表示面に対して傾斜する平面であり、第二の斜面6bが反射型液晶表示パネル2の画像表示面に対して傾斜する傾斜角は、第一の斜面6aが反射型液晶表示パネル2の画像表示面に対して傾斜する傾斜角よりも大きい。
【0020】
また、本実施形態の反射型液晶表示装置は、光源3から出射された光を屈折させるための第一の透明部材20と第二の透明部材21を備えている。第一の透明部材20は、偏光板5から出射されたP波が入射する第一の面20aと、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面と対向する第二の面20b及び第三の面20cと、反射型液晶表示パネル2の画像表示面と対向する第四の面20dとで構成される側面と、それらの側面と直角に接続される互いに平行な2つの底面(不図示)とを有する四角柱状の透明部材である。第二の透明部材21は、第一の筐体11の内側面と対向する第一の面21aと、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面と対向する第二の面21b及び第三の面21cと、観察者の目7に向かって光が出射される第四の面21dと、反射型液晶表示パネル2の外周部と対向する第五の面21eとで構成される側面と、それらの側面と直角に接続される互いに平行な2つの底面(不図示)とを有する多角柱状の透明部材である。第一の透明部材20は、第四の面20dが反射型液晶表示パネル2の画像表示面と対向するように、反射型液晶表示パネル2の上方に配置されている。第二の透明部材21は、第二の面21bが第一の透明部材20の第二の面20bと対向し、第三の面21cが第一の透明部材20の第三の面20cと対向するように、偏光ビームスプリッター6を挟んで第一の透明部材20の上方に配置されている。第一の透明部材20と第二の透明部材21は、例えば、光の屈折率が1.5程度のアクリルで構成されている。
【0021】
第一の透明部材20の第二の面20bと第三の面20cは、互いに接続された平面であり、第三の面20cは、反射型液晶表示パネル2の画像表示面に対して、第二の面20bよりも大きい角度で傾斜している。即ち、第一の透明部材20の第二の面20bと第三の面20cとにより、二段階の斜面が形成されている。第二の透明部材21の第二の面21bと第三の面21cは、互いに接続された平面であり、第三の面21cは、反射型液晶表示パネル2の画像表示面に対して、第二の面21bよりも大きい角度で傾斜している。即ち、第二の透明部材21の第二の面21bと第三の面21cとにより、二段階の斜面が形成されている。
【0022】
図1に示した本実施形態の反射型液晶表示装置と
図2に示した従来の反射型液晶表示装置とを比較すると、以下の相違点と一致点がある。
【0023】
相違点として、第一の透明部材9、20の第一の面9a、20a(光入射面)から入射して光源3から遠い有効画像表示領域8aに入射するP波の主光束において、第一の透明部材9、20の内面で発生する全反射の回数が異なっている。即ち、従来の反射型液晶表示装置では、有効画像表示領域8aに入射するP波の主光束(
図2中の実線矢印)の全反射の回数が計2回(第一の透明部材9の第二の面9bと第三の面9cで各1回)であるのに対し、本実施形態の反射型液晶表示装置では、有効画像表示領域8aに入射するP波の主光束(
図1中の実線矢印)の全反射の回数が計1回(第一の透明部材20の第四の面20dで1回)となっている。
【0024】
相違点として、従来の反射型液晶表示装置では、第一の透明部材9の第一の面9aから入射して有効画像表示領域8aと対向する第二の面9bに直接入射するP波の主光束が第二の面9bで全反射するのに対し、本実施形態の反射型液晶表示装置では、第一の透明部材20の第一の面20aから入射して有効画像表示領域8aと対向する第三の面20cに直接入射するP波の主光束が第三の面20cで全反射しない。
【0025】
一致点として、第一の透明部材9、20の第一の面9a、20a(光入射面)から入射して光源3に近い有効画像表示領域8bに入射するP波の主光束において、第一の透明部材9、20の内面で発生する全反射の回数は互いに変わらず、計1回(第一の透明部材9の第三の面9c、第一の透明部材20の第四の面20dでそれぞれ1回)となっている。
【0026】
つまり、本実施形態の反射型液晶表示装置では、有効画像表示領域8に入射するP波の主光束において、第一の透明部材9の内面で発生する全反射の回数が1回に統一されている。また、第一の透明部材20の第一の面20aから入射して有効画像表示領域8aと対向する第三の面20cに直接入射するP波の主光束は、第三の面20cで全反射せずに第三の面20cを通過して偏光ビームスプリッター6の光透過反射面で反射され、有効画像表示領域8aに入射するようになっている。このようなことにより、有効画像表示領域8aから出射される光の輝度が高まり、有効画像表示領域8全体から出射される光の輝度が均一となる。
【0027】
偏光ビームスプリッター6の第一の斜面6aと、第一の透明部材20の第二の面20bと、第二の透明部材21の第二の面21bとは互いに平行で、それらの間には実質的に空気層が介在しないか、所定の厚さの空気層が介在している。偏光ビームスプリッター6の第二の斜面6bと、第一の透明部材20の第三の面20cと、第二の透明部材21の第三の面21cとは互いに平行で、それらの間には実質的に空気層が介在しないか、所定の厚さの空気層が介在している。このように各面同士が平行であることにより、各面同士の間における迷光の発生の抑制や反射型液晶表示装置の小型化、構造的安定性の向上などが可能となる。
【0028】
第一の透明部材20の第一の面20aと偏光板5との間には、実質的に空気層が介在しないか、所定の厚さの空気層が介在している。第一の透明部材20の第四の面20dと反射型液晶表示パネル2の画像表示面との間には、実質的に空気層が介在しないか、所定の厚さの空気層が介在している。第二の透明部材21の第一の面21aと第一の筐体11の内側面との間には、実質的に空気層が介在しないか、所定の厚さの空気層が介在している。
【0029】
第一の透明部材20と偏光ビームスプリッター6と第二の透明部材21は、必要に応じて両面テープなどを介して互いに一体化され、第一の筐体11により保持されている。拡散板4と偏光板5は、必要に応じて両面テープなどを介して互いに一体化され、第二の筐体12により保持されている。第一の筐体11と第二の筐体12は、それぞれ反射型液晶表示パネル2と光源3を覆うように回路基板1上に固定されている。尚、第一の筐体11と第二の筐体12は、互いに一体的に構成されていても良い。
【0030】
第二の筐体12の内面のうち、光源3の光出射面と対向する領域には、反射面12aが設けられている。反射面12aは、光源3から出射された光の主光束を拡散板4に向けて反射するように角度が設定されている。反射面12aは、例えば、第二の筐体12を白色樹脂で形成したり、第二の筐体12の内面に反射シートなどを配置することにより、反射面として構成されている。第二の筐体12の内面のうち、反射面12aを除く領域は、それらと同様に反射面とされていても良いが、反射面とされていなくても良い。
【0031】
第一の透明部材20の第二の面20b及び第三の面20cの傾斜角は、第一の透明部材9の第四の面20dで全反射して第一の透明部材9の第二の面20b及び第三の面20cに入射するP波の主光束が、第一の透明部材20の第二の面20b及び第三の面20cと空気層との境界面で全反射しない条件に設定されている。全反射しない条件は、例えば、第一の透明部材20の第二の面20b及び第三の面20cと偏光ビームスプリッター6の第一の斜面6a及び第二の斜面6bとの間にある空気層の屈折率をnA、第一の透明部材20の屈折率をnB、第一の透明部材20の第四の面20d側から第三の面20cに入射するP波の入射角(第三の面20cの法線に対する角度)をα、第一の透明部材20の第四の面20d側から第二の面20bに入射するP波の入射角(第二の面20bの法線に対する角度)をβ、とした場合に、スネルの法則を用いて導き出される式「sinα(sinβ)=nA/nB」に基づき決定される。即ち、全反射しない条件としては、第一の透明部材20の第四の面20d側から第三の面20c及び第二の面20bに入射するP波の入射角がそれぞれ式中のα及びβ(臨界角)よりも小さいこと、となる。
【0032】
また、第一の透明部材20の第二の面20b及び第三の面20cの傾斜角は、第一の透明部材20の第一の面20aから第四の面20cに向かって入射したP波が第四の面20dで全反射することも考慮して設定される。第一の透明部材20の第一の面20aから第四の面20dに入射するP波の入射角は、例えば、第一の透明部材20の第四の面20d側から第三の面20cに入射するP波の入射角(第三の面20cの法線に対する角度)をα、第一の透明部材20の第四の面20d側から第二の面20bに入射するP波の入射角(第二の面20bの法線に対する角度)をβ、とした場合に、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面に入射するP波の入射角と光透過反射面から反射型液晶表示パネル2の画像表示面に向かって垂直に反射されるP波の反射角とは互いに等しいことから、第一の透明部材20の第三の面20cに向かって反射されるP波が第四の面20dに入射する入射角は2α、第二の面20bに向かって反射されるP波が第四の面20dに入射する入射角は2βとなる。反射型液晶表示パネル2の画像表示面と第一の透明部材20の第四の面20dとの間にある空気層の屈折率をnA、第一の透明部材20の屈折率をnBとした場合、第一の透明部材20の第四の面20dで全反射する条件は、スネルの法則を用いて導き出される式「sin2α(sin2β)=nA/nB」に基づき決定される。即ち、第一の透明部材20の第四の面20dで全反射する条件としては、第一の透明部材20の第四の面20d側から第三の面20c及び第二の面20bに入射するP波の入射角の2倍の角度(臨界角)よりも、第四の面20dに入射するP波の入射角が大きいこと、となる。
【0033】
本実施形態において、光源3から出射された光の主光束は、
図1中の一点鎖線の矢印で示されるように、第二の筐体12の内面に設けられた反射面12aで反射されて拡散板4に入射する。拡散板4に入射した光は、拡散板4で拡散された後、偏光板5を通過してP波となり、第一の透明部材20の第一の面20aに入射する。ここで、第一の面20aに入射した以降の光の主光束の光路について、光源3から遠い有効画像表示領域8aに入射する光の光路(
図1中の実線の矢印)と、光源から近い有効画像表示領域8bに入射する光の光路(
図1中の点線の矢印)とで、別々に説明する。
【0034】
光源3から遠い有効画像表示領域8aに入射する光の一つの光路では、
図1中の実線の矢印で示されるように、第一の透明部材20の第一の面20aに入射したP波は、第一の透明部材20の内部を通過して第一の透明部材20の第四の面20dに入射する。第四の面20dに入射したP波は、第四の面20dと空気層との境界面で第一の透明部材20の第三の面20cに向かって全反射し、第一の透明部材20の内部を通過して第一の透明部材20の第三の面20cに入射する。第三の面20cに入射したP波は、第三の面20cを通過し、偏光ビームスプリッター6の第二の斜面6bに入射する。偏光ビームスプリッター6の第二の斜面6bに入射したP波は、第二の斜面6bの光透過反射面で反射型液晶表示パネル2の画像表示面へ垂直に入射する方向へ反射され、第一の透明部材20の第三の面20cと第一の透明部材20の内部を通過して第一の透明部材20の第四の面20dに入射する。第四の面20dに入射したP波は、第四の面20dと空気層との境界面で屈折せずに、空気層を通過して反射型液晶表示パネル2の画像表示面に垂直に入射し、そこで映像光(P波とS波の混合光)となって偏光ビームスプリッター6の第二の斜面6b側へ反射される。反射された映像光は、空気層を通過して第一の透明部材20の第四の面20dに入射し、第四の面20dと空気層との境界面で屈折せずに、第一の透明部材20の内部を通過して第一の透明部材20の第三の面20cに入射する。第三の面20cに入射した映像光は、第三の面20cを通過し、偏光ビームスプリッター6の第二の斜面6bに入射する。偏光ビームスプリッター6の第二の斜面6bに入射した映像光に含まれるS波は、第二の斜面6bの光透過反射面を通過した後、第二の透明部材21の第三の面21cに入射する。第三の面21cに入射したS波は、第三の面21cと第二の透明部材21の内部を通過して第二の透明部材21の第四の面21dに入射する。第四の面21dに入射したS波は、第四の面21dと外界(空気層)との境界面で屈折せずに、第二の透明部材21から外界へ出射して観察者の目7に入射し、映像として視認される。
【0035】
また、光源3から遠い有効画像表示領域8aに入射する光のその他の光路では、
図1中の実線の矢印で示されるように、第一の透明部材20の第一の面20aに入射したP波は、第一の透明部材20の内部を通過して第一の透明部材20の第三の面20cに入射する。第三の面20cに入射したP波は、第三の面20cを通過し、偏光ビームスプリッター6の第二の斜面6bに入射する。偏光ビームスプリッター6の第二の斜面6bに入射したP波は、第二の斜面6bの光透過反射面で反射型液晶表示パネル2の画像表示面へ斜めに入射する方向へ反射され、第一の透明部材20の第三の面20cと第一の透明部材20の内部を通過して第一の透明部材20の第四の面20dに入射する。第四の面20dに入射したP波は、空気層を通過して反射型液晶表示パネル2の画像表示面に斜めに入射し、そこで映像光(P波とS波の混合光)となって偏光ビームスプリッター6の第二の斜面6b側へ反射される。反射された映像光は、空気層を通過して第一の透明部材20の第四の面20dに入射し、第一の透明部材20の内部を通過して第一の透明部材20の第三の面20cに入射する。第三の面20cに入射した映像光は、第三の面20cを通過し、偏光ビームスプリッター6の第二の斜面6bに入射する。偏光ビームスプリッター6の第二の斜面6bに入射した映像光に含まれるS波は、第二の斜面6bの光透過反射面を通過した後、第二の透明部材21の第三の面21cに入射する。第三の面21cに入射したS波は、第三の面21cと第二の透明部材21の内部を通過して第二の透明部材21の第四の面21dに入射する。第四の面21dに入射したS波は、第四の面21dと外界(空気層)との境界面を通過し、第二の透明部材21から外界へ出射して観察者の目7に入射し、映像として視認される。
【0036】
光源3に近い有効画像表示領域8bに入射する光の一つの光路では、
図1中の点線の矢印で示されるように、第一の透明部材20の第一の面20aに入射したP波は、第一の透明部材20の内部を通過して第一の透明部材20の第四の面20dに入射する。第四の面20dに入射したP波は、第四の面20dと空気層との境界面で第一の透明部材20の第二の面20bに向かって全反射し、第一の透明部材20の内部を通過して第一の透明部材20の第二の面20bに入射する。第二の面20bに入射したP波は、第二の面20bを通過し、偏光ビームスプリッター6の第一の斜面6aに入射する。偏光ビームスプリッター6の第一の斜面6aに入射したP波は、第一の斜面6aの光透過反射面で反射型液晶表示パネル2の画像表示面へ垂直に入射する方向へ反射され、第一の透明部材20の第二の面20bと第一の透明部材20の内部を通過して第一の透明部材20の第四の面20dに入射する。第四の面20dに入射したP波は、第四の面20dと空気層を通過して反射型液晶表示パネル2の画像表示面に垂直に入射し、そこで映像光(P波とS波の混合光)となって偏光ビームスプリッター6の第一の斜面6a側へ反射される。反射された映像光は、空気層を通過して第一の透明部材20の第四の面20dに入射し、第四の面20dと第一の透明部材20の内部を通過して第一の透明部材20の第二の面20bに入射する。第二の面20bに入射した映像光は、第二の面20bを通過し、偏光ビームスプリッター6の第一の斜面6aに入射する。偏光ビームスプリッター6の第一の斜面6aに入射した映像光に含まれるS波は、第一の斜面6aの光透過反射面を通過した後、第二の透明部材21の第二の面21bに入射する。第二の面21bに入射したS波は、第二の面21bと第二の透明部材21の内部を通過して第二の透明部材21の第四の面21dに入射する。第四の面21dに入射したS波は、第四の面21dと外界(空気層)との境界面を通過し、第二の透明部材21から外界へ出射して観察者の目7に入射し、映像として視認される。
【0037】
尚、
図1中の光路を示す矢印は、あくまでも光路を概念的に示したものであり、必ずしも実際の光路と一致するわけではない。また、部材同士の境界面、部材と空気層との境界面、部材の内部(例えば、反射型液晶表示パネル2の内部)などで生じる光の屈折は、便宜上無視しているが、実際には、そのような光の屈折も考慮して光学系を設計することとなる。
【0038】
本実施形態では、偏光ビームスプリッター6の光透過反射面と対向する位置に傾斜角が互いに異なる第一の透明部材20の第二の面20bと第三の面20cとが設けられている(二段階の斜面が設けられている)ことにより、有効画像表示領域8に入射する光の主光束うち第一の透明部材20の内面での全反射を介して入射する光の主光束おいて、第一の透明部材20の内面での全反射の回数が1回となるようにしているため、観察者の目7に均一な輝度の画像が届くこととなり、反射型液晶表示装置の小型化を維持しつつ、画像品質の向上が達成される。
【0039】
以上の実施形態において、光源3の光を偏光ビームスプリッター6側に照射する方法は、第二の筐体12の内面に設けられた反射面12aを用いた方法に限らず、例えば、光源3の光出射面と偏光板5の光入射面との間に導光板を介在させる方法や、光源3の光が拡散板4に直接照射されるように光源3の光出射面を拡散板4の光入射面と対向させて配置する方法等、種々の方法が選択可能である。また、拡散板4は、光の拡散性が十分確保されている場合などには省略することが可能である。また、光源3は、回路基板1上ではなく、FPCなどで構成される別の基板上に実装することも可能である。
【0040】
第一の透明部材20の第二の面20b及び第三の面20cと第二の透明部材21の第二の面21b及び第三の面21cの表面には、光を偏光ビームスプリッター6の光透過反射面へ垂直に入射する方向から遠ざかる方向へ屈折させる屈折膜が形成されていても良い。この場合、屈折膜の屈折率や厚さは、光をどのように屈折させるかや光の透過率なども考慮して適宜選択されるが、屈折膜は、光の透過をできるだけ妨げない薄膜であるのが好ましい。
【0041】
第一の透明部材20と第二の透明部材21は、互いに異なる光の屈折率を有していても良い。
【0042】
第二の透明部材10の第二の面21bと第三の面21cは、それぞれ、第一の透明部材20の第二の面20bと第三の面20cと平行でなくても良い。また、第二の透明部材10の第二の面21bと第三の面21cは、
図2に示した従来の反射型液晶表示装置における第二の透明部材10の第二の面10bのような一つの平面として構成されていても良い(二段階の斜面でなくても良い)。
【0043】
第二の透明部材21は、必須ではなく、省略されていても良い。
【0044】
第一の筐体11と第二の筐体12は、それらの内部で発生した不要な光を吸収する黒系色樹脂などで構成されていても良い。
【0045】
第一の透明部材20と第二の透明部材21の表面には、不要な光を吸収する黒色系樹脂などの遮光部材が設けられていても良い。
【0046】
第一の透明部材20の第二の面20bと第三の面20cとの接続部、第二の透明部材21の第二の面21bと第三の面21cとの接続部、偏光ビームスプリッター6の第一の斜面6aと第二の斜面6bとの接続部は、平面同士が段階的に折れ曲がるように接続された尖った角部ではなく、平面同士が滑らかに接続された湾曲した角部であっても良い。このように接続部を湾曲した角部とした場合には、接続部が画像内に映り込むのを防止することができる。
【0047】
第一の透明部材20の第二の面20bと第三の面20cとの間、第二の透明部材21の第二の面21bと第三の面21cとの間、偏光ビームスプリッター6の第一の斜面6aと第二の斜面6bとの間には、その他の平面等が介在していても良い。但し、それらの面の間には、その他の平面等が介在せず、それらの面同士が直接接続されている方が、それらの部材の形状等が単純化されるため、それらの部材の製造や反射型液晶表示装置の光学設計を容易にすることができる。
【0048】
第一の透明部材20の第二の面20bと第三の面20c、第二の透明部材21の第二の面21bと第三の面21c、偏光ビームスプリッター6の第一の斜面6aと第二の斜面6bは、平面であることが望ましい。それらの面を平面とすることにより、それらの部材の製造や反射型液晶表示装置の光学設計を容易にすることができる。
【0049】
第一の透明部材20の第二の面20bと第三の面20cが反射型液晶表示パネル2の画像表示面に対して傾斜する角度、第二の透明部材21の第二の面21bと第三の面21cが反射型液晶表示パネル2の画像表示面に対して傾斜する角度、偏光ビームスプリッター6の第一の斜面6aと第二の斜面6bが反射型液晶表示パネル2の画像表示面に対して傾斜する角度は、
図1に示した実施形態における角度に限らず、反射型液晶表示装置の光学設計に応じてその他の角度を適宜選択することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 回路基板
2 反射型液晶表示パネル
3 光源
4 拡散板
5 偏光板
6 偏光ビームスプリッター
6a 第一の斜面
6b 第二の斜面
7 観察者の目
8 有効画像表示領域
8a 有効画像表示領域(光源から遠い領域)
8b 有効画像表示領域(光源に近い領域)
9 第一の透明部材
9a 第一の面
9b 第二の面
9c 第三の面
10 第二の透明部材
10a 第一の面
10b 第二の面
10c 第三の面
10d 第四の面
10e 第五の面
11 第一の筐体
12 第二の筐体
12a 反射面
20 第一の透明部材
20a 第一の面
20b 第二の面
20c 第三の面
20d 第四の面
21 第二の透明部材
21a 第一の面
21b 第二の面
21c 第三の面
21d 第四の面
21e 第五の面