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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】組電池用冷却兼加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/655 20140101AFI20220331BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20220331BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220331BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20220331BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220331BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20220331BHJP
   H01M 10/6552 20140101ALI20220331BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20220331BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20220331BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20220331BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20220331BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20220331BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20220331BHJP
【FI】
H01M10/655
F28D15/02 L
F28D15/02 101A
F28D15/02 101H
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6551
H01M10/6552
H01M10/6556
H01M10/6563
H01M10/6567
H01M10/6568
H01M10/6569
H01M10/658
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018072040
(22)【出願日】2018-04-04
(65)【公開番号】P2019185902
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(74)【代理人】
【識別番号】100194467
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 健文
(72)【発明者】
【氏名】岸 正幸
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-535423(JP,A)
【文献】特開2011-165390(JP,A)
【文献】特開2009-134938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/52 - 10/667
F28D 15/00 - 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組電池を構成する複数の単電池を冷却および加熱する組電池用冷却兼加熱装置において、
組電池の下方に配置される単電池と同数の伝熱部材と、復元力を有しかつ伝熱部材の下方に配置される弾性体とを備え、
前記弾性体の上面に、複数の突起または凹みが全体に点在するように設けられ、
各伝熱部材の外面の一部が各単電池の下面に接触させられることにより、各伝熱部材と各単電池との間で熱伝導が行われるようになっており、各伝熱部材が、伝熱部材の下方に配置された復元力を有する弾性体によって各単電池の下面に押圧されている組電池用冷却兼加熱装置。
【請求項2】
組電池を構成する複数の単電池を冷却および加熱する組電池用冷却兼加熱装置において、
組電池の下方に配置される単電池と同数の伝熱部材と、復元力を有しかつ伝熱部材の下方に配置される弾性体とを備え、
前記弾性体の上面に、前記伝熱部材の少なくとも一部が嵌る凹溝が形成され、
各伝熱部材の外面の一部が各単電池の下面に接触させられることにより、各伝熱部材と各単電池との間で熱伝導が行われるようになっており、各伝熱部材が、伝熱部材の下方に配置された復元力を有する弾性体によって各単電池の下面に押圧されている組電池用冷却兼加熱装置。
【請求項3】
組電池を構成する複数の単電池を冷却および加熱する組電池用冷却兼加熱装置において、
組電池の下方に配置される単電池と同数の伝熱部材と、復元力を有しかつ伝熱部材の下方に配置される弾性体とを備え、
前記伝熱部材が、内部に伝熱媒体が流通する伝熱媒体流路を有する直管状であり、伝熱部材の長手方向両端部が、平面視において組電池および弾性体よりも外方に突出しており、1つの組電池を構成する全単電池の下方に配置された全伝熱部材が、長手方向の両端部のうちいずれか一端部においてU字状接続管を介して接続されることにより全体に蛇行状となった伝熱体が構成され、該蛇行状伝熱体に伝熱媒体が流れるようになっており、
各伝熱部材の外面の一部が各単電池の下面に接触させられることにより、各伝熱部材と各単電池との間で熱伝導が行われるようになっており、各伝熱部材が、伝熱部材の下方に配置された復元力を有する弾性体によって各単電池の下面に押圧されている組電池用冷却兼加熱装置。
【請求項4】
組電池を構成する複数の単電池を冷却および加熱する組電池用冷却兼加熱装置において、
組電池の下方に配置される単電池と同数の伝熱部材と、復元力を有しかつ伝熱部材の下方に配置される弾性体とを備え、
前記伝熱部材が、内部に伝熱媒体が流通する伝熱媒体流路を有し、かつ厚み方向が上下方向を向いた扁平管状であり、伝熱部材の長手方向両端部が、平面視において組電池および弾性体よりも外方に突出しており、隣り合う2つの伝熱部材が、長手方向の一端部においてUターン管部により接続されてU字状伝熱体が構成され、該伝熱体の2つの伝熱部材のうちいずれか一方の伝熱部材の他端部が伝熱媒体入口管に接続されるとともに、同他方の伝熱部材の他端部が伝熱媒体出口管に接続されており、
各伝熱部材の外面の一部が各単電池の下面に接触させられることにより、各伝熱部材と各単電池との間で熱伝導が行われるようになっており、各伝熱部材が、伝熱部材の下方に配置された復元力を有する弾性体によって各単電池の下面に押圧されている組電池用冷却兼加熱装置。
【請求項5】
組電池を構成する複数の単電池を冷却および加熱する組電池用冷却兼加熱装置において、
組電池の下方に配置される単電池と同数の伝熱部材と、復元力を有しかつ伝熱部材の下方に配置される弾性体とを備え、
前記伝熱部材がヒートパイプからなり、該伝熱部材の一端部が、平面視において組電池および弾性体よりも外方に突出しており、前記伝熱部材における組電池および弾性体よりも外方に突出した部分に伝熱フィンが設けられており、
各伝熱部材の外面の一部が各単電池の下面に接触させられることにより、各伝熱部材と各単電池との間で熱伝導が行われるようになっており、各伝熱部材が、伝熱部材の下方に配置された復元力を有する弾性体によって各単電池の下面に押圧されている組電池用冷却兼加熱装置。
【請求項6】
組電池を構成する複数の単電池を冷却および加熱する組電池用冷却兼加熱装置において、
組電池の下方に配置される単電池と同数の伝熱部材と、復元力を有しかつ伝熱部材の下方に配置される弾性体とを備え、
前記伝熱部材が、アルミニウムと炭素粒子とが複合化されてなる複合材を含む板状体により一体に形成されており、前記伝熱部材の一端部が、平面視において組電池および弾性体よりも外方に突出しており、前記伝熱部材における組電池および弾性体よりも外方に突出した部分に伝熱フィンが設けられおり、
各伝熱部材の外面の一部が各単電池の下面に接触させられることにより、各伝熱部材と各単電池との間で熱伝導が行われるようになっており、各伝熱部材が、伝熱部材の下方に配置された復元力を有する弾性体によって各単電池の下面に押圧されている組電池用冷却兼加熱装置。
【請求項7】
前記弾性体が断熱性を有している請求項1~6のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【請求項8】
前記弾性体が、天然ゴム、合成天然ゴム、クロロプレンゴムおよびブタジエンゴムからなる群より選ばれる1種または2種以上のゴムからなる請求項1~7のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【請求項9】
前記弾性体が、硬質ウレタンフォームからなる請求項1~7のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【請求項10】
前記弾性体の上面に、複数の突起または凹みが全体に点在するように設けられている請求項2~9のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【請求項11】
前記弾性体の上面に、前記伝熱部材の少なくとも一部が嵌る凹溝が形成されている請求項1、3~9のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【請求項12】
前記弾性体の下面が、該弾性体よりも剛性の高いベース部材によって支持されている請求項1~11のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【請求項13】
前記伝熱部材が、内部に伝熱媒体が流通する伝熱媒体流路を有する直管状であり、伝熱部材の長手方向両端部が、平面視において組電池および弾性体よりも外方に突出しており、1つの組電池を構成する全単電池の下方に配置された全伝熱部材が、長手方向の両端部のうちいずれか一端部においてU字状接続管を介して接続されることにより全体に蛇行状となった伝熱体が構成され、該蛇行状伝熱体に伝熱媒体が流れるようになっている請求項1、2、4~12のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【請求項14】
前記伝熱部材が、内部に伝熱媒体が流通する伝熱媒体流路を有し、かつ厚み方向が上下方向を向いた扁平管状であり、伝熱部材の長手方向両端部が、平面視において組電池および弾性体よりも外方に突出しており、隣り合う2つの伝熱部材が、長手方向の一端部においてUターン管部により接続されてU字状伝熱体が構成され、該伝熱体の2つの伝熱部材のうちいずれか一方の伝熱部材の他端部が伝熱媒体入口管に接続されるとともに、同他方の伝熱部材の他端部が伝熱媒体出口管に接続されている請求項1~3、5~12のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【請求項15】
前記伝熱部材がヒートパイプからなり、該伝熱部材の一端部が、平面視において組電池および弾性体よりも外方に突出しており、前記伝熱部材における組電池および弾性体よりも外方に突出した部分に伝熱フィンが設けられている請求項1~4、6~12のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【請求項16】
前記伝熱部材が、アルミニウムと炭素粒子とが複合化されてなる複合材を含む板状体により一体に形成されており、前記伝熱部材の一端部が、平面視において組電池および弾性体よりも外方に突出しており、前記伝熱部材における組電池および弾性体よりも外方に突出した部分に伝熱フィンが設けられている請求項1~5、7~12のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池を必要に応じて冷却したり、加熱したりする組電池用冷却兼加熱装置に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図3における上下、左右をそれぞれ「上下」、「左右」といい、図3の紙面表側を「前」、図3の紙面裏側を「後」というものとする。
【0003】
また、本明細書および特許請求の範囲において、複数の伝熱機能部材が接続されてこれらが一体に構成されていても、各伝熱機能部材が、それぞれの上方にある当該単電池の下面に互いに独立して追従して接触できるとき、この伝熱機能部材を「伝熱部材」というものとする。一方、「伝熱体」の語は、上記のとおり定義される「伝熱部材」の複数個が接続されて一体に構成された伝熱機能部を意味するものである。
【背景技術】
【0004】
たとえばハイブリッド自動車、電気自動車等の電動機駆動用バッテリー装置として、たとえばリチウムイオン二次電池などの各種の二次電池からなる複数個の小型単電池を直列または並列に接続して組電池の形態としたものが用いられている。特に、電気自動車においては航続距離の延長のニーズから組電池の大容量化や搭載数の増加が求められるので、複数の組電池が直列または並列に接続されるように組み合わされている。
【0005】
ところで、二次電池は、使用温度によって性能や寿命が変化するので、長時間にわたって効率良く使用するためには適正な温度で使用する必要がある。
【0006】
そこで、上述した組電池におけるすべての単電池の温度差を小さくすることを目的として、頂壁外面が平坦な伝熱面となっているとともに、内部に冷媒が流通する冷媒通路を有する金属製冷却部材を備えている冷却装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1記載の冷却装置においては、組電池が冷却部材の伝熱面上に、シリコン樹脂などの合成樹脂からなる熱伝導シートを介して載置され、冷却部材の冷媒通路を流れる冷媒から冷却部材の頂壁および熱伝導シートを介して組電池に伝わる冷熱によって組電池が冷却されるようになっており、組電池の冷却効率をあげるには、冷却部材の伝熱面と熱伝導シートとの密着性および組電池の受熱面と熱伝導シートとの密着性を向上させる必要がある。
【0008】
ところで、上述した組電池においては、各単電池が変形したり、少なくとも一部の単電池が上下方向にずれて受熱面に段差が生じたりすることがある。したがって、これらの変形や段差を吸収して組電池の受熱面と熱伝導シートとの密着性を向上させるためには、熱伝導シートの肉厚を比較的厚くする必要がある。しかしながら、合成樹脂からなる熱伝導シートの熱伝導率は比較的低いので、熱伝導シートの肉厚を厚くすると、組電池の受熱面と冷却部材の伝熱面との間の熱伝導性が低下し、組電池の単電池を効率良く冷却することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5804323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題を解消し、組電池を構成する全単電池を効率良く冷却または加熱しうる組電池用冷却兼加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0012】
[1]組電池を構成する複数の単電池を冷却および加熱する組電池用冷却兼加熱装置において、
組電池の下方に配置される単電池と同数の伝熱部材と、復元力を有しかつ伝熱部材の下方に配置される弾性体とを備え、各伝熱部材の外面の一部が各単電池の下面に接触させられることにより、各伝熱部材と各単電池との間で熱伝導が行われるようになっており、各伝熱部材が、伝熱部材の下方に配置された復元力を有する弾性体によって各単電池の下面に押圧されている組電池用冷却兼加熱装置。
【0013】
[2]前記弾性体が断熱性を有している前項1に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【0014】
[3]前記弾性体が、天然ゴム、合成天然ゴム、クロロプレンゴムおよびブタジエンゴムからなる群より選ばれる1種または2種以上のゴムからなる前項1または2に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【0015】
[4]前記弾性体が、硬質ウレタンフォームからなる前項1または2に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【0016】
[5]前記弾性体の上面に、複数の突起または凹みが全体に点在するように設けられている前項1~4のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【0017】
[6]前記弾性体の上面に、前記伝熱部材の少なくとも一部が嵌る凹溝が形成されている前項1~4のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【0018】
[7]前記弾性体の下面が、該弾性体よりも剛性の高いベース部材によって支持されている前項1~6のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【0019】
[8]前記伝熱部材が、内部に伝熱媒体が流通する伝熱媒体流路を有する直管状であり、伝熱部材の長手方向両端部が、平面視において組電池および弾性体よりも外方に突出しており、1つの組電池を構成する全単電池の下方に配置された全伝熱部材が、長手方向の両端部のうちいずれか一端部においてU字状接続管を介して接続されることにより全体に蛇行状となった伝熱体が構成され、該蛇行状伝熱体に伝熱媒体が流れるようになっている前項1~7のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【0020】
[9]前記伝熱部材が、内部に伝熱媒体が流通する伝熱媒体流路を有し、かつ厚み方向が上下方向を向いた扁平管状であり、伝熱部材の長手方向両端部が、平面視において組電池および弾性体よりも外方に突出しており、隣り合う2つの伝熱部材が、長手方向の一端部においてUターン管部により接続されてU字状伝熱体が構成され、該伝熱体の2つの伝熱部材のうちいずれか一方の伝熱部材の他端部が伝熱媒体入口管に接続されるとともに、同他方の伝熱部材の他端部が伝熱媒体出口管に接続されている前項1~7のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【0021】
[10]前記伝熱部材がヒートパイプからなり、該伝熱部材の一端部が、平面視において組電池および弾性体よりも外方に突出しており、前記伝熱部材における組電池および弾性体よりも外方に突出した部分に伝熱フィンが設けられている前項1~7のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【0022】
[11]前記伝熱部材が、アルミニウムと炭素粒子とが複合化されてなる複合材を含む板状体により一体に形成されており、前記伝熱部材の一端部が、平面視において組電池および弾性体よりも外方に突出しており、前記伝熱部材における組電池および弾性体よりも外方に突出した部分に伝熱フィンが設けられている前項1~7のいずれか1項に記載の組電池用冷却兼加熱装置。
【発明の効果】
【0023】
[1]の発明では、組電池の下方に配置される単電池と同数の伝熱部材と、復元力を有しかつ伝熱部材の下方に配置される弾性体とを備え、各伝熱部材の外面の一部が各単電池の下面に接触させられることにより、各伝熱部材と各単電池との間で熱伝導が行われるようになっており、各伝熱部材が、伝熱部材の下方に配置された復元力を有する弾性体によって各単電池の下面に押圧されているので、組電池を構成する全単電池のうちの少なくとも一部の単電池が上下方向にずれて組電池下面に段差が生じていたとしても、各伝熱部材の外面の一部が確実に各単電池下面に接触する。したがって、各伝熱部材と各単電池との間の熱伝導性の低下が防止され、組電池を構成する全単電池を効率良く冷却または加熱することができる。
【0024】
[2]の発明では、伝熱部材と単電池との間の熱伝導性をより向上させることができる。
【0025】
[3]及び[4]の発明では、各単電池下面と各伝熱部材の外面の一部とをより十分に接触させることができて、各単電池と各伝熱部材との間の熱伝導性をより高めることができる。
【0026】
[5]の発明では、弾性体の上面に、複数の突起または凹みが全体に点在するように設けられているから、組電池の下面に段差が生じていたとしても、各単電池下面に各伝熱部材の外面の一部を十分に接触させることができる(弾性体が組電池下面の平坦度ギャップを十分に吸収できる)利点がある。
【0027】
[6]の発明では、弾性体の上面に、伝熱部材の少なくとも一部が嵌る凹溝が形成されているから、伝熱部材から単電池に付与する冷熱及び温熱が、伝熱部材および単電池以外への放熱が抑制され、伝熱部材と単電池との間の熱伝導性をさらに向上させることができる。
【0028】
[7]の発明では、弾性体によって伝熱部材を単電池の下面に押圧する力が大きくなり、各単電池下面と各伝熱部材の外面の一部とをより十分に接触させることができる。
【0029】
[8]の発明では、直管状の伝熱媒体流路が複数の単電池を跨ぐことなく配置されているから、即ち1つの単電池の下面の長手方向に略平行状に直管状伝熱部材が配置された構成であるから、組電池を構成する単電池の下面の位置が不揃いな状態であっても、各単電池の下面に対して各直管状伝熱部材を十分に接触させることができて、伝熱部材と単電池との間の熱伝導性をより向上させることができる。
【0030】
[9]の発明では、伝熱媒体が並列に流れる構成になっているので、伝熱媒体が直列に流れる上記[8]の発明と比較して、組電池を構成する単電池間の温度のばらつきを抑制することができる(単電池を冷却する場合においても加熱する場合においても単電池間の温度のばらつきを抑制できる)。
【0031】
[10]の発明では、伝熱部材がヒートパイプからなり、伝熱部材における外方突出部分に伝熱フィンが設けられているから、伝熱フィンに効率的に熱を移動させることができて、例えば、組電池を冷却する場合には、組電池に直接に冷却風を当てなくても冷却できる。従来は各単電池間に冷却風の通路となる隙間を設けて組電池を構成していたが、この[10]の発明では単電池を密着させて組電池を構成することが可能であり、組電池用冷却兼加熱装置としてより一層省スペース化を図ることができる。
【0032】
[11]の発明では、伝熱部材が、アルミニウムと炭素粒子とが複合化されてなる複合材を含む板状体により形成されて、伝熱部材における外方突出部分に伝熱フィンが設けられているから、伝熱フィンに効率的に熱を移動させることができて、例えば、組電池を冷却する場合には、組電池に直接に冷却風を当てなくても冷却できる。従来は各単電池間に冷却風の通路となる隙間を設けて組電池を構成していたが、この[11]の発明では単電池を密着させて組電池を構成することが可能であり、組電池用冷却兼加熱装置としてより一層省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第1実施形態に係る組電池用冷却兼加熱装置を装備した組電池装置を示す分解斜視図である。
図2図1の組電池装置の平面図である。
図3図1の組電池装置の一部を示す正面図である。
図4図1の組電池装置に用いられる弾性体の変形例を示す斜視図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る組電池用冷却兼加熱装置を装備した組電池装置を示す分解斜視図である。
図6図5の組電池装置に用いられる弾性体の変形例を示す斜視図である。
図7】本発明に係る組電池用冷却兼加熱装置の第3実施形態を示す斜視図である。
図8】本発明に係る組電池用冷却兼加熱装置の第4実施形態を示す斜視図である。
図9】本発明の第5実施形態に係る組電池用冷却兼加熱装置を装備した組電池装置の一部を示す平面図である。
図10】本発明の第6実施形態に係る組電池用冷却兼加熱装置を装備した組電池装置の一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る組電池用冷却兼加熱装置の実施形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、本発明に係る冷却兼加熱装置が、複数の直方体状の角形単電池からなる組電池を備えた組電池装置において、組電池を構成する単電池を冷却および加熱するために用いられるものである。
【0035】
図1~3に、本発明に係る第1実施形態の組電池用冷却兼加熱装置を装備した組電池装置を示す。これら図1~3において、組電池装置は、たとえば複数の角形リチウムイオン二次電池の扁平状角形単電池(2)からなる組電池(1)と、組電池(1)の全単電池(2)に冷熱を与えて冷却する組電池用冷却兼加熱装置(10)とよりなる。
【0036】
組電池(1)は、複数の単電池(2)を、厚み方向が左右方向を向いた状態で左右方向に並べることにより構成されている。各単電池(2)の左右両面は横長方形であり、長辺が前後方向を向くとともに短辺が上下方向を向いている(図1参照)。各単電池(2)に1対の端子(3)が突出状に設けられており、端子(3)を利用して全ての単電池(2)が直列状または並列状に接続されることにより組電池(1)が構成されている。組電池(1)の下面が受熱面(4)となっている(図3参照)。
【0037】
組電池用冷却兼加熱装置(10)は、組電池(1)の下方に配置される、単電池(2)と同数の伝熱部材(11)と、復元力を有しかつ伝熱部材(11)の下方に配置される弾性体(12)と、弾性体(12)よりも剛性の高い材料で形成され、かつ弾性体(12)の下方に弾性体(12)の下面を支持するように配置されたベース部材(13)と、を備えている(図1~3参照)。
【0038】
伝熱部材(11)は、内部に液状伝熱媒体が流通する伝熱媒体流路(図示略)を有する横断面円形の直管状であり、長手方向を前後方向に向けて配置されている。伝熱部材(11)の長手方向両端部(前後両端部)は、平面から見て組電池(1)および弾性体(12)よりも外方に突出している(図2参照)。1つの組電池(1)を構成する全単電池(2)の下方に配置された全伝熱部材(11)は、U字状接続管(14)を介して前後交互に一体に接続されており、これにより全体に蛇行状となった伝熱体(15)が構成され(図1、2参照)、この蛇行状伝熱体(15)に液状の伝熱媒体が流れるようになっている。伝熱体(15)は、アルミニウム製の丸パイプを蛇行状に曲げることにより作られている。
【0039】
弾性体(12)は、断熱性を有していることが好ましい。弾性体(12)としては、例えば、ゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。中でも、弾性体(12)は、天然ゴム、合成天然ゴム、クロロプレンゴムおよびブタジエンゴムからなる群から選ばれた1種または2種以上のゴムからなることが好ましい。或いは、弾性体(12)は、硬質ウレタンフォームからなることが好ましい。前記合成天然ゴムとしては、イソプレンゴム等を例示できる。
【0040】
ベース部材(13)は、特に限定されるものではないが、例えば、金属、硬質プラスチック等によって形成されているのが好ましい。前記金属としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス等が挙げられる。
【0041】
上述した組電池装置において、組電池(1)を構成するすべての単電池(2)を冷却する場合には、伝熱体(15)の一端部から伝熱媒体である低温の冷却液を供給する。冷却液は伝熱体(15)の全ての伝熱部材(11)および接続管(14)を流れて他端から送り出される。冷却液が伝熱体(15)の各伝熱部材(11)の伝熱媒体流路を流れている間に、各単電池(2)から発せられる温熱が各伝熱部材(11)の伝熱媒体流路を流れる冷却液に伝えられ、組電池(1)のすべての単電池(2)が冷却される。
【0042】
寒冷地において、使用開始前に単電池(2)を適正温度まで加熱する必要がある場合には、伝熱体(15)の一端部から伝熱媒体である高温の加熱液を供給する。加熱液は伝熱体(15)の全ての伝熱部材(11)および接続管(14)を流れて他端から送り出される。加熱液が伝熱体(15)の各伝熱部材(11)の伝熱媒体流路を流れている間に、加熱液が有する温熱が各単電池(2)に伝えられ、組電池(1)のすべての単電池(2)が適正温度に加熱される。
【0043】
図3に示すように、少なくとも一部の単電池(2)が上下方向にずれて組電池(1)の受熱面(4)に段差が発生している場合、伝熱体(15)が組電池(1)の受熱面(4)の形状に追従して部分的に変形し、各伝熱部材(11)の外面の一部が確実に各単電池(2)の下面に接触する。したがって、各伝熱部材(11)と各単電池(2)との間の熱伝導性の低下が防止され、組電池(1)を構成する全単電池(2)を効率良く冷却または加熱することが可能になる。
【0044】
図4に、図1~3に示した組電池用冷却兼加熱装置(10)に用いられる弾性体の変形例を示す。図4に示す弾性体(20)の上面には、複数の突起(21)が全体に点在するように設けられている。なお、突起(21)に代えて、弾性体(20)の上面に複数の凹みが全体に点在するように設けられていてもよい。
【0045】
図5は、本発明に係る第2実施形態の組電池用冷却兼加熱装置を装備した組電池装置を示したものである。図5において、組電池用冷却兼加熱装置(30)は、組電池(1)の下方に配置された、単電池(2)と同数の伝熱部材(31)を備えている。伝熱部材(31)は、内部に液状伝熱媒体が流通する伝熱媒体流路(図示略)を有し、かつ厚み方向が上下方向を向いた真っ直ぐな扁平管状であり、長手方向および幅方向をそれぞれ同一方向に向けた状態で幅方向に間隔をおいて配置されている。伝熱部材(31)の長手方向両端部は、平面から見て組電池(1)および弾性体(12)よりも外方に突出しており、隣り合う2つの伝熱部材(31)が、長手方向の一端部においてUターン管部(32)により接続され、2つの伝熱部材(31)およびUターン管部(32)により1つのU字状伝熱体(33)が構成されている。伝熱体(33)は、アルミニウム押出形材製の真っ直ぐな扁平管を曲げることにより形成されている。
【0046】
伝熱体(33)の2つの伝熱部材(31)のうちいずれか一方の伝熱部材(31)におけるUターン管部(32)とは反対側の端部が伝熱媒体入口管(34)に通じさせられ、同じく他方の伝熱部材(31)におけるUターン管部(32)とは反対側の端部が伝熱媒体出口管(35)に通じさせられている。伝熱媒体入口管(34)および伝熱媒体出口管(35)のうちいずれか一方、ここでは伝熱媒体出口管(35)は同他方の伝熱媒体入口管(34)よりも上方に位置している(図5参照)。伝熱体(33)の2つの伝熱部材(31)の長手方向と伝熱媒体入口管(34)および伝熱媒体出口管(35)の長手方向とは直交するとともに、両伝熱部材(31)の幅方向が伝熱媒体入口管(34)および伝熱媒体出口管(35)の長手方向を向くように配置されている。上方に位置する伝熱媒体出口管(35)に通じる伝熱部材(31)は、伝熱媒体出口管(35)側の端部の近傍で上方に曲げられている。上方屈曲部を(31a)で示す。一方の伝熱部材(31)のUターン管部(32)とは反対側の端部が伝熱媒体入口管(34)の周壁に接続されるとともに、他方の伝熱部材(31)のUターン管部(32)とは反対側の端部、すなわち上方屈曲部(31a)の先端部が伝熱媒体出口管(35)の周壁に接続されている。その他の構成は、図1~3に示す組電池用冷却兼加熱装置と同様である。
【0047】
図6は、図5に示す組電池用冷却兼加熱装置に用いられる弾性体の変形例を示す。図6に示す弾性体(36)の上面には、伝熱部材(31)の少なくとも一部が嵌る伝熱部材(31)と同数の凹溝(37)が形成されている。伝熱部材(31)は、上面が弾性体(36)の上面と同一面上または弾性体(36)の上面よりも上方に位置するように凹溝(37)内に嵌め入れられている。
【0048】
図7は、本発明に係る組電池用冷却兼加熱装置の第3実施形態を示したものである。図7において、組電池用冷却兼加熱装置(40)は、組電池(1)(図示略)の下方に配置された、単電池(2)(図示略)と同数の伝熱部材(41)を備えている。伝熱部材(41)は、厚み方向が上下方向を向いた真っ直ぐな扁平板状のヒートパイプからなり、長手方向および幅方向をそれぞれ同一方向に向けた状態で幅方向に間隔をおいて配置されている。伝熱部材(41)の長手方向一端部は、平面から見て組電池(1)および弾性体(12)よりも外方に突出している。各伝熱部材(41)における組電池(1)および弾性体(12)よりも外方に突出した部分は斜め上方に曲げられて屈曲部(41a)が設けられており、屈曲部(41a)の上面にアルミニウム製伝熱フィン(42)が取り付けられている。
【0049】
ヒートパイプからなる伝熱部材(41)における単電池(2)に接している部分が受熱部(43)となり、屈曲部(41a)が放熱部(44)となっている。なお、伝熱部材(41)となるヒートパイプはウィックレス式である。
【0050】
伝熱フィン(42)は、板状のベース部(45)と、ベース部(45)の上面に間隔をおいて並列状に一体に設けられ、かつ伝熱部材(41)の幅方向に延びる複数のフィン部(46)と、からなる。
【0051】
上述した組電池装置において、組電池(1)を構成するすべての単電池(2)を冷却する場合には、伝熱フィン(42)の隣り合うフィン部(46)間に低温の冷却用空気を流す。
【0052】
単電池(2)から熱が発せられると、当該熱によって、伝熱部材(41)の受熱部(43)が加熱され、この熱が受熱部(43)内の作動液に伝わって作動液が蒸発する。一方、放熱部(44)においては、伝熱フィン(42)によって熱が奪われ、放熱部(44)において作動液が凝縮し、ヒートパイプ内部の圧力が低下する。そして、受熱部(43)で発生した気相作動液が、圧力が低下した放熱部(44)に流れるとともに、再凝縮した液相作動液が、重力により受熱部(43)に流れるので、伝熱部材(41)において、気相作動液の流れと液相作動液の流れが発生し、作動液の循環がおきる。したがって、組電池(1)の全単電池(2)が均等に冷却される。
【0053】
一方、上述した組電池装置において、組電池(1)を構成するすべての単電池(2)を加熱する場合には、伝熱部材(41)となるヒートパイプ内にはウィックを設けておく。この場合、ヒートパイプからなる伝熱部材(41)における単電池(2)の下方に存在する部分が放熱部となり、屈曲部(41a)が受熱部となる。
【0054】
寒冷地において、使用開始前に組電池(1)を構成するすべての単電池(2)を適正温度まで加熱する必要がある場合には、伝熱フィン(42)の隣り合うフィン部間に高温の加熱用空気を流し、伝熱部材(41)の屈曲部(41a)からなる受熱部に熱を供給する。受熱部に供給された熱は、受熱部内の作動液に伝わって作動液が蒸発し、受熱部内の圧力が上昇する。一方、単電池(2)の温度は低いので、単電池(2)に熱的に接触している放熱部においては、単電池(2)によって放熱部から熱が奪われて単電池(2)が加熱され、気相の作動液が凝縮し、内部の圧力が低下する。そして、受熱部内で発生した気相作動液が、圧力が低下した放熱部に流れるとともに、再凝縮した液相作動液が、ウィックの働きにより受熱部に流れるので、作動液の循環が起きるとともに蒸発凝縮の潜熱変化が起こる。したがって、組電池(1)の全単電池(2)が均等に加熱され、単電池(2)の全体が短時間で適正温度に加熱される。
【0055】
図8は、本発明に係る組電池用冷却兼加熱装置の第4実施形態を示したものである。図8において、組電池用冷却兼加熱装置(50)は、組電池(1)(図示略)の下方に配置された、単電池(2)(図示略)と同数の伝熱部材(51)を備えている。伝熱部材(51)は厚み方向が上下方向を向いた真っ直ぐな扁平板状であり、長手方向および幅方向をそれぞれ同一方向に向けた状態で幅方向に間隔をおいて配置されている。伝熱部材(51)の長手方向の一端部は、平面から見て組電池(1)および弾性体(12)よりも外方に突出しており、隣り合う2つの伝熱部材(51)の組電池(1)および弾性体(12)よりも外方に突出した部分が連結部(53)を介して一体に連結され、2つの伝熱部材(51)および連結部(53)により1つの伝熱体(54)が構成されている。各伝熱体(54)における組電池(1)および弾性体(12)よりも外方に突出した部分の上面に、2つの伝熱部材(51)および連結部(53)に跨るようにアルミニウム製伝熱フィン(42)が取り付けられている。
【0056】
伝熱体(54)は、アルミニウムと炭素粒子とが複合化された複合材を含む複合体により一体に形成されている。図示は省略したが、伝熱体(54)を形成する複合体は、たとえばアルミニウムマトリックス、およびアルミニウムマトリックス中に分散した炭素粒子を含む板状の複合材と、複合材の互いに反対側を向いた2つの主面(上面と下面)を覆うアルミニウム製の主面表皮層からなる。複合材は、アルミニウムマトリックスを構成するアルミニウム材料中に炭素粒子が平面方向に分散した複数の炭素粒子分散層と、アルミニウムマトリックスを構成するアルミニウム材料で形成された複数のアルミニウム層とを積層状に備えている。
【0057】
上述した組電池装置において、組電池(1)を構成するすべての単電池(2)を冷却する場合には、伝熱フィン(42)の隣り合うフィン部(46)間に低温の冷却用空気を流す。そうすると、冷却用空気の有する冷熱が、伝熱フィン(42)のフィン部(46)およびベース部(45)と、伝熱体(54)を経て単電池(2)の下面に伝えられ、組電池(1)のすべての単電池(2)が冷却される。
【0058】
寒冷地において、使用開始前に単電池(2)を適正温度まで加熱する必要がある場合には、伝熱フィン(42)の隣り合うフィン部(46)間に高温の加熱用空気を流す。そうすると、加熱用空気の有する温熱が、伝熱フィン(42)のフィン部(46)およびベース部(45)と、伝熱体(54)を経て単電池(2)の下面に伝えられ、組電池(1)のすべての単電池(2)が適正温度に加熱される。
【0059】
図9は、本発明に係る第5実施形態の組電池用冷却兼加熱装置を装備した組電池装置を示したものである。図9において、組電池用冷却兼加熱装置(60)は、組電池(1)の下方に配置された、単電池(2)と同数の伝熱部材(61)を備えている。伝熱部材(61)は厚み方向が上下方向を向いた真っ直ぐな扁平板状であり、長手方向および幅方向をそれぞれ同一方向に向けた状態で、各単電池(2)の下方に位置するように幅方向に間隔をおいて配置されている。伝熱部材(61)の長手方向一端部は、平面から見て組電池(1)および弾性体(12)よりも外方に突出しており、各伝熱部材(61)における組電池(1)および弾性体(12)よりも外方に突出した部分の上面にアルミニウム製伝熱フィン(42)が取り付けられている。
【0060】
伝熱部材(61)は、アルミニウムと炭素粒子とが複合化された複合材を含む複合体により一体に形成されている。図示は省略したが、伝熱部材(61)を形成する複合体は、たとえばアルミニウムマトリックス、およびアルミニウムマトリックス中に分散した炭素粒子を含む板状の複合材と、複合材の互いに反対側を向いた2つの主面(上面と下面)を覆うアルミニウム製の主面表皮層からなる。複合材は、アルミニウムマトリックスを構成するアルミニウム材料中に炭素粒子が平面方向に分散した複数の炭素粒子分散層と、アルミニウムマトリックスを構成するアルミニウム材料で形成された複数のアルミニウム層とを積層状に備えている。
【0061】
上述した組電池装置において、組電池(1)を構成するすべての単電池(2)を冷却する場合には、伝熱フィン(42)の隣り合うフィン部(46)間に低温の冷却用空気を流す。そうすると、冷却用空気の有する冷熱が、伝熱フィン(42)のフィン部(46)およびベース部(45)と、伝熱部材(61)を経て単電池(2)の下面に伝えられ、組電池(1)のすべての単電池(2)が冷却される。
【0062】
寒冷地において、使用開始前に単電池(2)を適正温度まで加熱する必要がある場合には、伝熱フィン(42)の隣り合うフィン部(46)間に高温の加熱用空気を流す。そうすると、加熱用空気の有する温熱が、伝熱フィン(42)のフィン部(46)およびベース部(45)と、伝熱部材(61)を経て単電池(2)の下面に伝えられ、組電池(1)のすべての単電池(2)が適正温度に加熱される。
【0063】
図10は、本発明に係る第6実施形態の組電池用冷却兼加熱装置を装備した組電池装置を示したものである。図10において、組電池用冷却兼加熱装置(70)は、組電池(1)の下方に配置された、単電池(2)と同数の伝熱部材(71)を備えている。伝熱部材(71)は厚み方向が上下方向を向いた真っ直ぐな扁平板状であり、長手方向および幅方向をそれぞれ同一方向に向けた状態で、各単電池(2)の下方に位置するように幅方向に間隔をおいて配置されている。伝熱部材(71)の長手方向一端部は、平面から見て組電池(1)および弾性体(12)よりも外方に突出しており、伝熱部材(71)の組電池(1)および弾性体(12)よりも外方に突出した部分が連結部(72)を介して一体に連結され、すべての伝熱部材(71)および連結部(72)により1つの伝熱体(73)が構成されている。伝熱体(73)における組電池(1)および弾性体(12)よりも外方に突出した部分の上面に、すべての伝熱部材(71)および連結部(72)に跨るようにアルミニウム製伝熱フィン(42)が取り付けられている。
【0064】
伝熱体(73)は、アルミニウムと炭素粒子とが複合化された複合材を含む複合体により一体に形成されている。図示は省略したが、伝熱体(73)を形成する複合体は、たとえばアルミニウムマトリックス、およびアルミニウムマトリックス中に分散した炭素粒子を含む板状の複合材と、複合材の互いに反対側を向いた2つの主面(上面と下面)を覆うアルミニウム製の主面表皮層からなる。複合材は、アルミニウムマトリックスを構成するアルミニウム材料中に炭素粒子が平面方向に分散した複数の炭素粒子分散層と、アルミニウムマトリックスを構成するアルミニウム材料で形成された複数のアルミニウム層とを積層状に備えている。
【0065】
上記組電池装置において、組電池(1)を構成するすべての単電池(2)を冷却する場合には、伝熱フィン(42)の隣り合うフィン部(46)間に低温の冷却用空気を流す。そうすると、冷却用空気の有する冷熱が、伝熱フィン(42)のフィン部(46)およびベース部(45)と、伝熱体(73)を経て単電池(2)の下面に伝えられ、組電池(1)のすべての単電池(2)が冷却される。
【0066】
寒冷地において、使用開始前に単電池(2)を適正温度まで加熱する必要がある場合には、伝熱フィン(42)の隣り合うフィン部(46)間に高温の加熱用空気を流す。そうすると、加熱用空気の有する温熱が、伝熱フィン(42)のフィン部(46)およびベース部(45)と、伝熱体(73)を経て単電池(2)の下面に伝えられ、組電池(1)のすべての単電池(2)が適正温度に加熱される。
【0067】
上述した第4~第6実施形態において、図6に示す弾性体(12)と同様に、上面には伝熱部材(51)(61)(71)の少なくとも一部が嵌る伝熱部材(51)(61)(71)と同数の凹溝が形成された弾性体(12)が用いられてもよい。この場合、伝熱部材(51)(61)(71)は、上面が弾性体(12)の上面と同一面上または弾性体(12)の上面よりも上方に位置するように凹溝内に嵌め入れられる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る組電池用冷却兼加熱装置は、例えば、複数のLiイオン二次電池の単電池からなる組電池を備えた電気自動車において前記単電池の冷却に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0069】
(1):組電池
(2):単電池
(10)(30)(40)(50)(60)(70):組電池用冷却兼加熱装置
(11)(31)(41)(51)(61)(71):伝熱部材
(12)(20)(36):弾性体
(13):ベース部材
(14):接続管
(15):伝熱体
(21):突起
(32):Uターン管部
(33):伝熱体
(34):伝熱媒体入口管
(35):伝熱媒体出口管
(37):凹溝
(42):伝熱フィン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10