(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】設備機器運転システムおよび設備機器運転方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20220331BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20220331BHJP
H02J 3/38 20060101ALN20220331BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/00 130
H02J13/00 301A
H02J13/00 311T
H02J3/38 130
(21)【出願番号】P 2018095003
(22)【出願日】2018-05-17
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】小柳 秀光
(72)【発明者】
【氏名】大西 尭
(72)【発明者】
【氏名】山口 亮
(72)【発明者】
【氏名】坂下 泰士
(72)【発明者】
【氏名】三村 渉
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-225550(JP,A)
【文献】特開2014-180187(JP,A)
【文献】特開2014-217091(JP,A)
【文献】特開2018-11497(JP,A)
【文献】特開2016-244521(JP,A)
【文献】特開平10-224990(JP,A)
【文献】特開2017-28816(JP,A)
【文献】特開2010-124644(JP,A)
【文献】特開2015-198523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 13/00
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線を介して通信可能な運転計画サーバ、実績データ保存サーバ、気象予報サーバ、および、設備機器を制御する機器制御サーバを備える設備機器運転システムであって、
前記運転計画サーバは、気象予報補正値演算部、補正後の気象予報値演算部、学習データ期間演算部、過去実績値学習部、予測値演算部、機器性能値分析部、および運転計画演算部を備え、
前記気象予報補正値演算部は、前記実績データ保存サーバから過去の気象予報値および気象実績値を取得し、当該取得した過去の気象予報値および気象実績値に基づいて、気象予報補正値を算定し、
前記補正後の気象予報値演算部は、前記気象予報サーバから気象予報値を取得し、当該取得した気象予報値および前記気象予報補正値演算部で算定した気象予報補正値に基づいて、気象予報値の補正を行い、
前記学習データ期間演算部は、前記実績データ保存サーバから気象実績値を取得するとともに、前記気象予報サーバから予測対象日の気象予報値を取得し、当該取得した気象実績値および気象予報値に基づいて学習データ期間を算定し、
前記過去実績値学習部は、前記学習データ期間演算部で算定した学習期間について、前記実績データ保存サーバから気象実績値ならびに前記設備機器の負荷および出力の実績値を取得し、当該気象実績値ならびに前記設備機器の負荷および出力の実績値に基づいて、機械学習モデルを構築し、
前記予測値演算部は、前記補正後の気象予測値演算部で算定した補正後の気象予報値に基づいて、前記機械学習モデルにより前記設備機器の負荷および出力の予測値を算定し、
前記機器性能値分析部は、前記実績データ保存サーバから前記設備機器の性能の実績値および当該性能に影響を与える要因の実績値を取得し、当該設備機器の性能の実績値および当該設備機器の性能に影響を与える要因の実績値に基づいて、機器性能補正式を算定し、
前記運転計画演算部は、前記機器性能値分析部で算定した機器性能補正式、コスト情報、ならびに前記予測値演算部で算定した設備機器の負荷および出力の予測値に基づいて、前記設備機器の一定時間毎の稼働機器および当該稼働機器の出力量を運転計画として決定し、
前記機器制御サーバは、当該運転計画に従って前記稼働機器を稼働させることを特徴とする設備機器運転システム。
【請求項2】
設備機器を運転する設備機器運転方法であって、
気象予報補正値演算部が、過去の気象予報値および気象実績値に基づいて、気象予報補正値を算定するステップと、
学習データ期間演算部が、気象実績値および予測対象日の気象予報値に基づいて学習データ期間を算定するステップと、
過去実績値学習部が、前記学習データ期間演算部で算定した学習期間における気象実績値ならびに前記設備機器の負荷および出力の実績値に基づいて、機械学習モデルを構築するステップと、
機器性能値分析部が、前記設備機器の性能の実績値および前記設備機器の性能に影響を与える要因の実績値に基づいて、機器性能補正式を算定するステップと、
補正後の気象予報値演算部が、気象予報値および前記気象予報補正値演算部で算定した気象予報補正値に基づいて、気象予報値の補正を行うステップと、
予測値演算部が、前記補正後の気象予測値演算部で算定した補正後の気象予報値に基づいて、前記機械学習モデルにより前記設備機器の負荷および出力の予測値を算定するステップと、
運転計画演算部が、前記機器性能値分析部で算定した機器性能補正式、コスト情報、ならびに前記予測値演算部で算定した前記設備機器の負荷および出力の予測値に基づいて、前記設備機器の一定時間毎の稼働機器および当該稼働機器の出力量である運転計画を決定するステップと、
機器制御サーバが、当該運転計画に従って前記稼働機器を稼働させるステップと、を備えることを特徴とする設備機器運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備機器を運転する設備機器運転システムおよび設備機器運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の設備機器の運転について、運転費用が低額となるような運転計画を決定する設備運転計画決定方法がある(特許文献1参照)。
この設備運転計画決定方法では、翌日の気象予報値に基づいて、電源・熱負荷および再生可能エネルギー出力の推移を予測し、この予測に基づいて設備機器の運転計画を決定する。なお、運転計画を決定する際には、設備機器の機器性能値としてカタログ値を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際には、気象予報値と実績値に誤差があることが多く、電源・熱源負荷や再生可能エネルギー出力の予測に誤差が生じる場合があった。また、設備機器の機器性能値としてカタログ値を用いるため、実際の機器性能は異なる場合があった。よって、運転計画に誤差が生じ、設備機器の運転費用を十分に削減できないおそれがあった。
【0005】
本発明は、設備機器の運転費用を十分に削減できる、設備機器運転システムおよび設備機器運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の設備機器運転システム(例えば、後述の設備機器運転システム1)は、通信回線(例えば、後述の通信回線N)を介して通信可能な運転計画サーバ(例えば、後述の運転計画サーバ10)、実績データ保存サーバ(例えば、後述の実績データ保存サーバ20)、気象予報サーバ(例えば、後述の気象予報サーバ30)、および、設備機器(例えば、後述の電源・熱源機器50)を制御する機器制御サーバ(例えば、後述の機器制御サーバ40)を備える設備機器運転システムであって、前記運転計画サーバは、気象予報補正値演算部(例えば、後述の気象予報補正値演算部11)、補正後の気象予報値演算部(例えば、後述の補正後の気象予報値演算部12)、学習データ期間演算部(例えば、後述の学習データ期間演算部13)、過去実績値学習部(例えば、後述の過去実績値学習部14)、予測値演算部(例えば、後述の予測値演算部15)、機器性能値分析部(例えば、後述の機器性能値分析部16)、および運転計画演算部(例えば、後述の運転計画演算部17)を備え、前記気象予報補正値演算部は、前記実績データ保存サーバから過去の気象予報値および気象実績値を取得し、当該取得した過去の気象予報値および気象実績値に基づいて、気象予報補正値を算定し、前記補正後の気象予報値演算部は、前記気象予報サーバから気象予報値を取得し、当該取得した気象予報値および前記気象予報補正値演算部で算定した気象予報補正値に基づいて、気象予報値の補正を行い、前記学習データ期間演算部は、前記実績データ保存サーバから気象実績値を取得するとともに、前記気象予報サーバから予測対象日の気象予報値を取得し、当該取得した気象実績値および気象予報値に基づいて学習データ期間を算定し、前記過去実績値学習部は、前記学習データ期間演算部で算定した学習期間について、前記実績データ保存サーバから気象実績値ならびに前記設備機器の負荷および出力の実績値を取得し、当該気象実績値ならびに前記設備機器の負荷および出力の実績値に基づいて、機械学習モデルを構築し、前記予測値演算部は、前記補正後の気象予測値演算部で算定した補正後の気象予報値に基づいて、前記機械学習モデルにより前記設備機器の負荷および出力の予測値を算定し、前記機器性能値分析部は、前記実績データ保存サーバから前記設備機器の性能の実績値および当該性能に影響を与える要因の実績値を取得し、当該設備機器の性能の実績値および当該設備機器の性能に影響を与える要因の実績値に基づいて、機器性能補正式を算定し、前記運転計画演算部は、前記機器性能値分析部で算定した機器性能補正式、コスト情報、ならびに前記予測値演算部で算定した設備機器の負荷および出力の予測値に基づいて、前記設備機器の一定時間毎の稼働機器および当該稼働機器の出力量を運転計画として決定し、前記機器制御サーバは、当該運転計画に従って前記稼働機器を稼働させることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の設備機器運転方法は、設備機器を運転する設備機器運転方法であって、気象予報補正値演算部が、過去の気象予報値および気象実績値に基づいて、気象予報補正値を算定するステップ(例えば、後述のステップS51)と、学習データ期間演算部が、気象実績値および予測対象日の気象予報値に基づいて学習データ期間を算定するステップ(例えば、後述のステップS52)と、過去実績値学習部が、前記学習データ期間演算部で算定した学習期間における気象実績値ならびに前記設備機器の負荷および出力の実績値に基づいて、機械学習モデルを構築するステップ(例えば、後述のステップS53)と、機器性能値分析部が、前記設備機器の性能の実績値および前記設備機器の性能に影響を与える要因の実績値に基づいて、機器性能補正式を算定するステップ(例えば、後述のステップS54)と、補正後の気象予報値演算部が、気象予報値および前記気象予報補正値演算部で算定した気象予報補正値に基づいて、気象予報値の補正を行うステップ(例えば、後述のステップS55)と、予測値演算部が、前記補正後の気象予測値演算部で算定した補正後の気象予報値に基づいて、前記機械学習モデルにより前記設備機器の負荷および出力の予測値を算定するステップ(例えば、後述のステップS56)と、運転計画演算部が、前記機器性能値分析部で算定した機器性能補正式、コスト情報、ならびに前記予測値演算部で算定した前記設備機器の負荷および出力の予測値に基づいて、前記設備機器の一定時間毎の稼働機器および当該稼働機器の出力量である運転計画を決定するステップ(例えば、後述のステップS57)と、機器制御サーバが、当該運転計画に従って前記稼働機器を稼働させるステップと、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、気象予報補正値演算部により、過去の気象予報値および気象実績値に基づいて気象予報補正値を算定し、補正後の気象予報値演算部により、この気象予報補正値を用いて明日の気象予報値を補正した。よって、運転計画演算部により運転計画を決定する際、より精度の高い気象予報値を用いることができるから、高精度で設備機器の運転計画を決定でき、設備機器の運転費用を十分に削減できる。
また、本発明では、過去実績値学習部により教師データを用いて機械学習モデルを構築し、予測値演算部によりこの構築した機械学習モデルにより設備機器の負荷および出力の予測値を算定する。この予測精度は、学習データの期間によって大きく変化するため、学習データ期間演算部により、十分な精度が得られるような学習データ期間を決定した。よって、学習データ期間の変化による誤差を低減でき、より精度よく運転計画を決定できる。
機器性能値分析部により、設備機器の性能の実績値に基づいて機器性能補正式を算定した。そして、運転計画演算部により設備機器の運転計画を決定する際、設備機器の機器性能値として、カタログ値ではなく、機器性能補正式に基づいて求めた値を用いたので、より精度よく運転計画を決定できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、設備機器の運転費用を十分に削減できる、設備機器運転システムおよび設備機器運転方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る設備機器運転システムの構成を示す図である。
【
図2】前記設備機器運転システムの運転計画サーバの構成を示す図である。
【
図3】前記運転計画サーバの気象予報補正値演算部が気象予報補正値を算定する手順のフローチャートである。
【
図4】前記気象予報補正値演算部が気象予報補正値を算定する手順の説明図である。
【
図5】前記運転計画サーバの補正後の気象予報値演算部が補正後の気象予報値を算定する手順のフローチャートである。
【
図6】前記補正後の気象予報値演算部が補正後の気象予報値を算定する手順の説明図である。
【
図7】前記運転計画サーバの学習データ期間演算部が学習データ期間を算定する手順のフローチャートである。
【
図8】前記学習データ期間演算部が学習データ期間を算定する手順の説明図である。
【
図9】前記運転計画サーバの過去実績値学習部がニューラルネットワークの重み係数を算定する手順の説明図である。
【
図10】前記運転計画サーバの予測値演算部が電源・熱源機器の負荷および再生可能エネルギーの出力を予測する手順の説明図である。
【
図11】前記運転計画サーバの機器性能値分析部が機器性能補正式を算定する手順のフローチャートである。
【
図12】前記機器性能値分析部が機器性能補正式を算定する手順の説明図である。
【
図13】設備機器運転システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る設備機器運転システム1の構成を示す図である。
設備機器運転システム1は、所定の地域あるいは建物Pにおける、設備機器としての電源・熱源機器50を制御するものである。また、この所定の地域あるいは建物Pには、設備機器としての再生可能エネルギー60が設置されている。
電源・熱源機器50とは、電気式およびガス式の設備機器であり、例えば、熱電併給装置であるコージェネレーションシステム、ヒートポンプ、蓄熱槽、および蓄電池が含まれる。また、再生可能エネルギー60とは、自然活動によってエネルギー源が絶えず再生されるため、継続して利用可能なエネルギーであり、例えば、太陽熱温水器および太陽光発電が含まれる。
【0012】
設備機器運転システム1は、運転計画サーバ10、実績データ保存サーバ20、気象予報サーバ(外部サーバ)30、および、電源・熱源機器50を制御する機器制御サーバ(ローカルコントロールサーバ)40を備える。これら運転計画サーバ10、実績データ保存サーバ20、気象予報サーバ30、および機器制御サーバ40は、通信回線Nを介して通信可能となっている。
【0013】
実績データ保存サーバ20には、過去の気象予報値および気象実績値が記憶されている。具体的には、過去の気象予報値および過去の気象実績値は、過去1週間について30分おきの、乾球外気温度(℃)および水平面全天日射量(W/m2)である。また、この実績データ保存サーバ20には、電源・熱源機器50の負荷の実績値および再生可能エネルギー60の出力の実績値が記憶されている。
【0014】
気象予報サーバ30は、気象予報値を提供するものである。具体的には、気象予報値は、例えば明日について、30分おきの乾球外気温度(℃)および水平面全天日射量(W/m2)である。
【0015】
運転計画サーバ10は、実績データ保存サーバ20に記憶された過去の気象予報値および気象実績値、ならびに、気象予報サーバ30から提供された気象予報値に基づいて運転計画を生成し、機器制御サーバ40に出力するものである。
【0016】
機器制御サーバ40は、運転計画サーバから出力された運転計画に従って、電源・熱源機器50を制御するものである。また、機器制御サーバ40は、実績データ保存サーバ20に、電源・熱源機器50の負荷の実績値および再生可能エネルギー60の出力の実績値を出力する。
【0017】
図2は、運転計画サーバ10の構成を示す図である。
運転計画サーバ10は、気象予報補正値演算部11、補正後の気象予報値演算部12、学習データ期間演算部13、過去実績値学習部14、予測値演算部15、機器性能値分析部16、運転計画演算部17、およびパラメータ格納部18を含んで構成される。
【0018】
パラメータ格納部18は、気象予報補正値演算部11、学習データ期間演算部13、過去実績値学習部14、および機器性能値分析部16で算定した各種パラメータを記憶する。
【0019】
気象予報補正値演算部11は、過去の気象予報値および気象実績値に基づいて、気象予報補正値を算定し、パラメータ格納部18に記憶する。
気象予報補正値演算部11が気象予報補正値を算定する手順の一例について、
図3のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS1では、気象予報補正値演算部11は、実績データ保存サーバから、過去1週間の30分毎の気象予報値および気象実績値を取得する。ここで、過去の気象予報値および気象実績値として、乾球外気温度および水平面全天日射量を用いる。
ステップS2では、気象予報補正値演算部11は、
図4に示すように、過去1週間について、30分毎の各時刻における乾球外気温度の予報値と実績値との差分を誤差として算定する。水平面全天日射量についても同様の作業を行う。
ステップS3では、気象予報補正値演算部11は、30分毎の各時刻における誤差の平均値を、各時刻における気象予報補正値として算定する(
図6参照)。つまり、30分毎の各時刻は1週間で7回あるので、各時刻についての7つの誤差の平均を求める。水平面全天日射量についても同様の作業を行う。これにより、乾球外気温度および水平面全天日射量について、0:00~23:30までの30分毎における誤差の平均値が求められるので、この誤差の平均値を気象予報補正値とする。
【0020】
補正後の気象予報値演算部12は、気象予報値および気象予報補正値に基づいて、気象予報値の補正を行って補正後の気象予報値を算定する。
補正後の気象予報値演算部12が補正後の気象予報値を算定する手順の一例について、
図5のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS11では、補正後の気象予報値演算部12は、パラメータ格納部18から気象予報補正値演算部11で算定した気象予報補正値を取得するとともに、気象予報サーバ30から明日の気象予報値を取得する。
ステップS12では、補正後の気象予報値演算部12は、
図6に示すように、明日の30分毎の各時刻の気象予報値に、この時刻の気象予報補正値である平均誤差量を加算し、補正後の気象予報値を算定する。
【0021】
学習データ期間演算部13は、過去の気象実績値および予測対象日の気象予報値に基づいて、予測精度が最も高くなるような学習データ期間(例えば過去n日前までの期間)を算定し、パラメータ格納部18に記憶する。
具体的には、学習データ期間演算部13は、明日の1時間毎の全ての時刻について、気象予報値に一致する気象実績値が存在する期間を、学習データ期間とする。
学習データ期間演算部13が学習データ期間を算定する手順の一例について、
図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0022】
ステップS21では、学習データ期間演算部13は、実績データ保存サーバから、過去数週間の1時間毎の各時刻の気象実績値を取得するとともに、気象予報サーバ30から明日の気象予報値を取得する。ここで、気象実績値および気象予報値として、乾球外気温度および水平面全天日射量を用いる。
ステップS22では、学習データ期間演算部13は、明日の気象予報値に基づいて、一致しているか否かの判定に用いる一致度の閾値を算定する。例えば、
図8に示すように、乾球外気温度については、明日24時間の気象予報値の平均値が29.40であるので、その1/10である2.9とする。一方、水平面全天日射量については、明日24時間の気象予報値の平均値が250.77であるので、その1/10である25.1とする。
【0023】
ステップS23では、学習データ期間演算部13は、探索期間の初期値を1日に設定する。また、探索対象時刻の初期値を1:00に設定する。
ステップS24では、学習データ期間演算部13は、設定された探索期間に亘って、設定された探索対象時刻の気象予報値に一致する気象実績値を探索する。
例えば、
図8に示すように、明日11:00における気象予報値は、乾球外気温度が32.8、水平面全天日射量が203.0となっている。この場合、過去に遡りながら、乾球外気温度の気象実績値が気象予報値である32.8に一致し、水平面全天日射量の気象実績値がこの203.0に一致する時刻を探す。ここで、乾球外気温度の気象実績値が気象予報値に一致するとは、乾球外気温度の気象実績値が、乾球外気温度の気象予報値±閾値の範囲内にあることを意味し、ここでは、32.8±2.9の範囲内にあることである。
【0024】
その結果、1日前の12:00およびn日前の10:00が見つかった。1日前の12:00では、乾球外気温度が34.8であり、水平面全天日射量が183.0である。乾球外気温度については、差分が34.8-32.8=2.0であり、2.9よりも小さいので、一致していると判定する。また、水平面全天日射量については、差分が203.0-183.0=20.0であり、25.1よりも小さいので、一致していると判定する。
また、n日前の10:00では、乾球外気温度が34.3であり、水平面全天日射量が228.0である。乾球外気温度については、差分が34.3-32.8=1.5であり、2.9よりも小さいので、一致していると判定する。また、水平面全天日射量については、差分が228.0-203.0=25.0であり、25.1よりも小さいので、一致していると判定する。
【0025】
ステップS25では、学習データ期間演算部13は、設定された探索対象時刻の気象予報値に一致する気象実績値が見つかったか否かを判定する。この判定がNoである場合には、ステップS26に移り、Yesである場合には、ステップS27に移る。
ステップS26では、学習データ期間演算部13は、探索期間を1日追加して再設定し、ステップS24に戻る。
ステップS27では、学習データ期間演算部13は、全ての探索対象時刻について探索したか否かを判定する。この判定がNoである場合には、ステップS28に移り、Yesである場合には、ステップS29に移る。
ステップS28では、学習データ期間演算部13は、探索対象時刻を1時間進めて再設定し、ステップS24に戻る。
ステップS29では、学習データ期間演算部13は、探索期間を学習データ期間として設定する。
【0026】
過去実績値学習部14は、気象実績値、電源・熱源機器50の負荷の実績値、および再生可能エネルギー60の出力の実績値に基づいて、機械学習モデル(ここではニューラルネットワーク)を構築する。
ニューラルネットワークは、人間の脳に近似した構造を有する数学モデルである。このニューラルネットワークの特性は、重み係数によって決定される。
そこで、過去実績値学習部14は、ニューラルネットワークに教師データとして入力データと出力データとの組み合わせを与えることで、入力データから出力データを得るための重み係数を決定し、パラメータ格納部18に記憶する。
具体的には、過去実績値学習部14は、パラメータ格納部18から学習データ期間演算部13で算定した学習期間を取得し、実績データ保存サーバから、この取得した学習データ期間に亘って、気象実績値(乾球外気温度および水平面全天日射量の実績値)、電源・熱源機器50の負荷の実績値、再生可能エネルギー60の出力の実績値を取得する。次に、
図9に示すように、過去実績値学習部14は、気象実績値(乾球外気温度および水平面全天日射量の実績値)を入力データとし、電源・熱源機器50の負荷の実績値および再生可能エネルギー60の出力の実績値を出力データとして、ニューラルネットワークの特性である重み係数を求める。
【0027】
予測値演算部15は、重み係数および補正後の気象予報値に基づいて、構築した機械学習モデルにより、電源・熱源機器50の負荷および再生可能エネルギー60の出力を予測する。
具体的には、予測値演算部15は、パラメータ格納部18から過去実績学習部で算定した重み係数を取得するとともに、補正後の気象予報値演算部12から補正後の気象予報値を取得する。次に、
図10に示すように、取得した重み係数を用いたニューラルネットワークに、補正後の気象予報値を入力することで、明日の電源・熱源機器50の負荷の予測値および再生可能エネルギー60の出力の予測値を算定する。
【0028】
機器性能値分析部16は、機器性能実績値に基づいて、真の機器性能値を求める機器性能補正式を算定し、パラメータ格納部18に記憶する。
機器性能値分析部16が機器性能補正式を算定する手順の一例について、
図11のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS41では、機器性能値分析部16は、実績データ保存サーバ20から、電源・熱源機器50の性能の実績値である機器性能実績値(例えば、COPや一次エネルギー利用効率)と、電源・熱源機器50の性能に影響を与える要因(例えば、機器出力や外気温度)の実績値を取得する。
ステップS42では、機器性能値分析部16は、機器性能実績値と機器性能に影響を与える要因との関係を線形回帰して機器性能補正式を算定する。例えば、
図12に示すように、機器出力とCOPとの関係の線形回帰モデルを求めて、機器性能補正式Lとする。このとき上限値および下限値を設定しておき、上限値を超えるCOPおよび下限値を下回るにCOPを異常値として除外する。運転計画演算部17では、この機器性能補正式Lに機器出力を入力することで、実際のCOPを得ることができる。
【0029】
運転計画演算部17は、運転計画(一定時間毎(30分毎)における稼働機器およびその稼働機器の出力量)を決定し、機器制御サーバ40に送信する。
すなわち、運転計画演算部17は、パラメータ格納部18から、機器性能値分析部16で算定した機器性能補正式、コスト情報(例えば、時刻毎の商用電力単価)を取得し、機器性能補正式、コスト情報、ならびに予測値演算部15で算定した一定時間ごとの電源・熱源機器50の負荷の予測値および再生可能エネルギー60の出力の予測値に基づいて、電源・熱源機器50の運転計画を決定する。
具体的には、運転計画演算部17は、特許第5819225号に示すような最適化ロジックを用いて、一日の光熱費やCO2排出量をできる限り削減することを目標として、一定時間毎(例えば、30分間隔)の電源・熱源機器50の稼働機器およびその出力量を決定し、運転計画とする。
【0030】
以下、設備機器運転システム1の動作について、
図13のフローチャートを参照しながら説明する。なお、以下のステップS51~58のうち、ステップS51~54は、運転計画実施日の前日まで(例えば1週間に一度)に行い、ステップS55~57は、運転計画実施日の前日に行い、ステップS58は、運転計画実施日の当日に行う。
ステップS51では、気象予報補正値演算部11が、過去の気象予報値および気象実績値に基づいて、気象予報補正値を算定し、パラメータ格納部18に記憶する。
ステップS52では、学習データ期間演算部13が、過去の気象実績値および気象予報値に基づいて学習データ期間を算定し、パラメータ格納部18に記憶する。
【0031】
ステップS53では、過去実績値学習部14が、過去の気象実績値、電源・熱源機器50の負荷の実績値、および再生可能エネルギー60の出力の実績値に基づいて、ニューラルネットワークの重み係数を算定し、パラメータ格納部18に記憶する。
ステップS54では、機器性能値分析部16が、機器性能実績値に基づいて、真の機器性能値を求める機器性能補正式を算定し、パラメータ格納部18に記憶する。
【0032】
ステップS55では、補正後の気象予報値演算部12が、気象予報値および気象予報補正値に基づいて、気象予報値の補正を行って補正後の気象予報値を算定する。
ステップS56では、予測値演算部15が、重み係数および補正後の気象予報値に基づいて、電源・熱源機器50の負荷および再生可能エネルギー60の出力の予測値を算定する。
ステップS57では、運転計画演算部17が、運転計画を決定し、機器制御サーバ40に送信する。
ステップS58では、機器制御サーバ40が、決定した運転計画に従って、電源・熱源機器50を稼働させる。
【0033】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)気象予報補正値演算部11により、過去の気象予報値および気象実績値に基づいて気象予報補正値を算定し、補正後の気象予報値演算部12により、この気象予報補正値を用いて明日の気象予報値を補正した。よって、運転計画演算部17により運転計画を決定する際、より精度の高い気象予報値を用いることができるから、高精度で電源・熱源機器50の運転計画を決定でき、電源・熱源機器50の運転費用を十分に削減できる。
【0034】
(2)過去実績値学習部14により教師データをニューラルネットワークに学習させ、予測値演算部15によりこの学習したニューラルネットワークにより電源・熱源機器50の負荷および再生可能エネルギー60の出力の予測値を算定する。このとき、学習データ期間演算部13により、十分な精度が得られるような学習データ期間を決定した。よって、学習データ期間の変化による誤差を低減でき、より精度よく運転計画を決定できる。
(3)機器性能値分析部16により、電源・熱源機器50の性能の実績値に基づいて機器性能補正式を算定した。そして、運転計画演算部17により電源・熱源機器50の運転計画を決定する際、電源・熱源機器50の機器性能値として、カタログ値ではなく、機器性能補正式に基づいて求めた値を用いたので、より精度よく運転計画を決定できる。
【0035】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、機械学習モデルとしてニューラルネットワークを用いたが、これに限らず、重回帰分析などを用いてもよい。
また、本実施形態では、運転計画演算部17において、特許第5819225号に示すような最適化ロジックを用いたが、これに限らず、設備機器を極力低コストで運転できるのであれば、どのような最適化ロジックを用いてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…設備機器運転システム
10…運転計画サーバ 11…気象予報補正値演算部
12…補正後の気象予報値演算部 13…学習データ期間演算部
14…過去実績値学習部 15…予測値演算部 16…機器性能値分析部
17…運転計画演算部 18…パラメータ格納部
20…実績データ保存サーバ 30…気象予報サーバ 40…機器制御サーバ
50…電源・熱源機器(設備機器) 60…再生可能エネルギー