(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20220331BHJP
E03F 3/06 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
E01D19/12
E03F3/06
(21)【出願番号】P 2018098212
(22)【出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】505413255
【氏名又は名称】阪神高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592155832
【氏名又は名称】ユニタイト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000186898
【氏名又は名称】昭和コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】新名 勉
(72)【発明者】
【氏名】輿石 正己
(72)【発明者】
【氏名】森脇 孝文
(72)【発明者】
【氏名】宮田 勝治
(72)【発明者】
【氏名】陶 昭男
(72)【発明者】
【氏名】松原 喜之
(72)【発明者】
【氏名】及川 雅司
(72)【発明者】
【氏名】国井 優嗣
(72)【発明者】
【氏名】大坪 考志
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-069064(JP,A)
【文献】特開2009-209574(JP,A)
【文献】特開2015-010370(JP,A)
【文献】実開昭55-121849(JP,U)
【文献】特開2008-190131(JP,A)
【文献】特開2003-293591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
E03F 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う一方のプレキャストコンクリートブロックに設けた雄継手と、隣り合う他方のプレキャストコンクリートブロックに設けた雌継手とを嵌合接続して、前記一方のプレキャストコンクリートブロックと前記他方のプレキャストコンクリートブロックを接合し、プレキャストコンクリートブロックの接合構造体を構築する方法であって、
新たに設置する前記他方のプレキャストコンクリートブロックの軸方向に沿う接合方向一端部側と他端部側とにそれぞれ、前記一端部と前記他端部とからそれぞれ前記軸方向外側に突出させてセッティングビーム材を着脱可能に取り付けるセッティングビーム材取付工程と、
基台の所定位置に設置した既設の前記一方のプレキャストコンクリートブロックとの前記軸方向の間に所定の間隔をあけて前記基台上に仮設受け材を仮設置する受け材仮設置工程と、
前記一方のプレキャストコンクリートブロックと前記仮設受け材の上にそれぞれ前記セッティングビーム材を載せて当接支持させつつ、前記一方のプレキャストコンクリートブロックと前記仮設受け材の間に前記他方のプレキャストコンクリートブロックを仮設置するプレキャストコンクリートブロック仮設置工程と、
前記一方のプレキャストコンクリートブロックと前記仮設受け材の上にそれぞれ前記セッティングビーム材を当接支持させつつ、前記他方のプレキャストコンクリートブロックを前記一方のプレキャストコンクリートブロック側に引き寄せて前記雄継手と前記雌継手を嵌合接続するプレキャストコンクリートブロック接合工程とを備えることを特徴とするプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法。
【請求項2】
請求項1記載のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法において、
前記一方のプレキャストコンクリートブロックと前記他方のプレキャストコンクリートブロックを接合した後に、前記セッティングビーム材を取り外すとともに、接合した前記他方のプレキャストコンクリートを前記既設の一方のプレキャストコンクリートブロックとして、前記受け材仮設置工程と、前記プレキャストコンクリートブロック仮設置工程と、前記プレキャストコンクリートブロック接合工程とを繰り返し行い、複数のプレキャストコンクリートブロックを接合してプレキャストコンクリートブロックの接合構造体を構築することを特徴とするプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法において、
前記プレキャストコンクリートブロック接合工程の後に、嵌合接続した前記雄継手と前記雌継手に軸力を付与してプレストレスを導入するプレストレス導入工程を備えることを特徴とするプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法において、
前記プレキャストコンクリートブロック及び/又は前記セッティングビーム材に、上面の高さ位置を調整する高さ調整機構が設けられ、
前記受け材仮設置工程及び/又は前記プレキャストコンクリートブロック接合工程を行った後に、前記高さ調整機構で前記
セッティングビーム材及び/又は前記他方のプレキャストコンクリートブロックの高さを調整することを特徴とするプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法において、
前記プレキャストコンクリートブロック接合工程では、前記一方のプレキャストコンクリートブロックの接合端面と前記他方のプレキャストコンクリートブロックの接合端面の間隔が前記接合端面に沿う幅方向で同じ間隔となるように制御しながら、前記他方のプレキャストコンクリートブロックを前記一方のプレキャストコンクリートブロック側に引き寄せることを特徴とするプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法において、
前記セッティングビーム材と、前記プレキャストコンクリートブロック及び/又は前記仮設受け材とが当接する当接面に滑動部材を設けることを特徴とするプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法において、
前記プレキャストコンクリートブロック接合工程で前記他方のプレキャストコンクリートブロックを前記一方のプレキャストコンクリートブロック側に引き寄せる際に、前記他方のプレキャストコンクリートブロックを前記軸方向に案内するガイド部材を設けることを特徴とするプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法において、
前記プレキャストコンクリートブロック接合工程時に前記仮設受け材が前記基台上で変位することを防止するためのウェイトを前記仮設受け材に取り付けることを特徴とするプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法において、
前記仮設受け材に一体に取り付けられ、前記セッティングビーム材が挿通する挿通孔を備える押え部と、前記セッティングビーム材の上面に設けられたスライド当接面に当接するように、前記押え部の前記スライド当接面に対向する面に設けられた滑動部材とを有する押えスライド機構を備え、
前記プレキャストコンクリートブロック接合工程時に、前記セッティングビーム材を前記押え部の挿通孔に挿通させるとともに前記滑動部材を前記スライド当接面に当接させた状態で、前記他方のプレキャストコンクリートブロックを前記一方のプレキャストコンクリートブロック側に引き寄せることを特徴とするプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法において、
前記プレキャストコンクリートブロックがプレキャストコンクリート床版であることを特徴とするプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁の床版を構築する手法の一つとして、例えば
図9及び
図10に示すように鋼製桁1上に複数のプレキャストコンクリート床版(プレキャストコンクリートブロック)2を敷き並べ、隣り合うプレキャストコンクリート床版2の端部の間(接合部S)にコンクリート3を打設して一体形成する手法が知られている。
【0003】
また、各プレキャストコンクリート床版2は、例えば、床版本体2aの接合端面から突出するループ状継手4を設けて形成され、各プレキャストコンクリート床版2の鋼製桁1と重なる部分に貫通孔2bを設けて形成される。
【0004】
そして、橋梁の床版(プレキャストコンクリートブロックの接合構造体)を構築する際に、鋼製桁1の上フランジに植設したスタッドを貫通孔2bに挿通させつつ複数のプレキャストコンクリート床版2を所定位置に敷き並べる。この状態で、互いに隣り合うプレキャストコンクリート床版2の接合端面から突出するループ状継手4が橋軸直交方向の幅方向に重なり合い、これらループ状継手4の内部に補強鉄筋(配力筋)5を取り付ける。
【0005】
最後に、スタッドを挿通した貫通孔2bに無収縮モルタルを充填し、さらに隣り合うプレキャストコンクリート床版2の間の接合部Sにそれぞれ間詰めコンクリート3を充填することにより、隣り合うプレキャストコンクリート床版2同士、複数のプレキャストコンクリート床版2と鋼製桁1を一体に接合してなる橋梁の床版を構築することができる(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-26088号公報
【文献】特開2010-236258号公報
【文献】特開2009-264040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の橋梁の床版においては、ループ状継手と間詰めコンクリートを用いて隣り合うプレキャストコンクリート床版を接合するため、ループ状継手(継手部)によって床版厚が決まる。すなわち、ループ状継手は、重ね継手よりも継手長を短くすることができるという大きな利点を有する反面、そのループ形状に応じて床版厚を設定せざるを得ず、一般に床版厚が大きくなる。
【0008】
また、ループ状継手内への補強鉄筋の設置、間詰コンクリートの打設、養生などの現場作業が必要であり、現場作業を極力減らし、施工性のさらなる向上を図ることが強く求められていた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、従来より効率的に橋梁の床版などのプレキャストコンクリートブロックの接合構造体を構築することを可能にするプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0011】
本発明のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法は、隣り合う一方のプレキャストコンクリートブロックに設けた雄継手と、隣り合う他方のプレキャストコンクリートブロックに設けた雌継手とを嵌合接続して、前記一方のプレキャストコンクリートブロックと前記他方のプレキャストコンクリートブロックを接合し、プレキャストコンクリートブロックの接合構造体を構築する方法であって、新たに設置する前記他方のプレキャストコンクリートブロックの軸方向に沿う接合方向一端部側と他端部側とにそれぞれ、前記一端部と前記他端部とからそれぞれ前記軸方向外側に突出させてセッティングビーム材を着脱可能に取り付けるセッティングビーム材取付工程と、基台の所定位置に設置した既設の前記一方のプレキャストコンクリートブロックとの前記軸方向の間に所定の間隔をあけて前記基台上に仮設受け材を仮設置する受け材仮設置工程と、前記一方のプレキャストコンクリートブロックと前記仮設受け材の上にそれぞれ前記セッティングビーム材を載せて当接支持させつつ、前記一方のプレキャストコンクリートブロックと前記仮設受け材の間に前記他方のプレキャストコンクリートブロックを仮設置するプレキャストコンクリートブロック仮設置工程と、前記一方のプレキャストコンクリートブロックと前記仮設受け材の上にそれぞれ前記セッティングビーム材を当接支持させつつ、前記他方のプレキャストコンクリートブロックを前記一方のプレキャストコンクリートブロック側に引き寄せて前記雄継手と前記雌継手を嵌合接続するプレキャストコンクリートブロック接合工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法においては、前記一方のプレキャストコンクリートブロックと前記他方のプレキャストコンクリートブロックを接合した後に、前記セッティングビーム材を取り外すとともに、接合した前記他方のプレキャストコンクリートを前記既設の一方のプレキャストコンクリートブロックとして、前記受け材仮設置工程と、前記プレキャストコンクリートブロック仮設置工程と、前記プレキャストコンクリートブロック接合工程とを繰り返し行い、複数のプレキャストコンクリートブロックを接合してプレキャストコンクリートブロックの接合構造体を構築してもよい。
【0013】
本発明のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法においては、前記プレキャストコンクリートブロック接合工程の後に、嵌合接続した前記雄継手と前記雌継手に軸力を付与してプレストレスを導入するプレストレス導入工程を備えることが望ましい。
【0014】
本発明のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法においては、前記プレキャストコンクリートブロック及び/又は前記セッティングビーム材に、上面の高さ位置を調整する高さ調整機構が設けられ、前記受け材仮設置工程及び/又は前記プレキャストコンクリートブロック接合工程を行った後に、前記高さ調整機構で前記セッティングビーム材及び/又は前記他方のプレキャストコンクリートブロックの高さを調整することが望ましい。
【0015】
本発明のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法においては、 前記プレキャストコンクリートブロック接合工程では、前記一方のプレキャストコンクリートブロックの接合端面と前記他方のプレキャストコンクリートブロックの接合端面の間隔が前記接合端面に沿う幅方向で同じ間隔となるように制御しながら、前記他方のプレキャストコンクリートブロックを前記一方のプレキャストコンクリートブロック側に引き寄せることがより望ましい。
【0016】
本発明のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法においては、前記セッティングビーム材と、前記プレキャストコンクリートブロック及び/又は前記仮設受け材とが当接する当接面に滑動部材を設けることがさらに望ましい。
【0017】
本発明のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法においては、前記プレキャストコンクリートブロック接合工程で前記他方のプレキャストコンクリートブロックを前記一方のプレキャストコンクリートブロック側に引き寄せる際に、前記他方のプレキャストコンクリートブロックを前記軸方向に案内するガイド部材を設けることが望ましい。
【0018】
本発明のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法においては、前記プレキャストコンクリートブロック接合工程時に前記仮設受け材が前記基台上で変位することを防止するためのウェイトを前記仮設受け材に取り付けることが望ましい。
【0019】
本発明のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法においては、前記仮設受け材に一体に取り付けられ、前記セッティングビーム材が挿通する挿通孔を備える押え部と、前記セッティングビーム材の上面に設けられたスライド当接面に当接するように、前記押え部の前記スライド当接面に対向する面に設けられた滑動部材とを有する押えスライド機構を備え、前記プレキャストコンクリートブロック接合工程時に、前記セッティングビーム材を前記押え部の挿通孔に挿通させるとともに前記滑動部材を前記スライド当接面に当接させた状態で、前記他方のプレキャストコンクリートブロックを前記一方のプレキャストコンクリートブロック側に引き寄せることがより望ましい。
【0020】
本発明のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法においては、前記プレキャストコンクリートブロックがプレキャストコンクリート床版であることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法においては、順次プレキャストコンクリートブロックを設置するとともにスライド移動させ、隣り合うプレキャストコンクリートブロックに設けられた雄継手と雌継手を嵌合させることにより、互いの接合端面が面接触した好適な状態にして隣り合うプレキャストコンクリートブロックを容易に接合することが可能になる。
【0022】
そして、このように隣り合うプレキャストコンクリートブロックを接合することにより、容易に且つ効率的にプレキャストコンクリートブロックの接合構造体を構築することが可能になる。
【0023】
また、雄継手と雌継手の嵌合によって隣り合うプレキャストコンクリートブロックを接合できるため、従来のループ状継手を用いた場合のように接合部がその厚さの設定要素となることがなく、設計自由度の高いプレキャストコンクリートブロックの接合構造体を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る橋梁の床版(プレキャストコンクリートブロックの接合構造体)、プレストレストコンクリート床版の接合部構造(プレキャストコンクリートブロックの接合部構造)を示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るプレストレストコンクリート床版の接合部構造(プレキャストコンクリートブロックの接合部構造)を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るプレストレストコンクリート床版の接合部構造(プレキャストコンクリートブロックの接合部構造)の介装材:
図3(a)、くさび材:
図3(b)、皿バネ(バネ部材):
図3(c)の一例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る橋梁の床版(プレキャストコンクリートブロックの接合構造体)の施工方法を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る橋梁の床版(プレキャストコンクリートブロックの接合構造体)の施工方法を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る押えスライド機構を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る押えスライド機構を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る押えスライド機構を示す正面図である。
【
図9】従来のループ状継手を用いた橋梁の床版(プレキャストコンクリートブロックの接合構造体)、接合部構造(プレキャストコンクリートブロックの接合部構造)を示す斜視図である。
【
図10】従来のループ状継手を備えたプレキャストコンクリート床版の接合部構造(プレキャストコンクリートブロックの接合部構造)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、
図1から
図8を参照し、本発明の一実施形態に係るプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法について説明する。
ここで、本実施形態では、本発明に係るプレキャストコンクリートブロックの接合構造体が道路橋や鉄道橋などの橋梁の床版であり、本発明に係るプレキャストコンクリートブロックがプレキャストコンクリート床版、プレキャストコンクリートブロックの接合部構造がプレキャストコンクリート床版の接合部構造であるものとして説明を行う。
【0026】
はじめに、本実施形態の橋梁の床版(プレキャストコンクリートブロックの接合構造体)Aは、
図1、
図2に示すように、従来と同様、基台である鋼製桁1上に複数のプレキャストコンクリート床版(プレキャストコンクリートブロック)2を敷き並べ、隣り合うプレキャストコンクリート床版2の端部同士を接合して構成される。
【0027】
一方、本実施形態のプレキャストコンクリート床版の接合部構造(プレキャストコンクリートブロックの接合部構造)Bは、従来のループ状継手、間詰めコンクリートを用いず、プレストレストコンクリート床版2に雄継手10と雌継手11を設け、隣り合う一方のプレストレストコンクリート床版2の雄継手10と、他方のプレストレストコンクリート床版2の雌継手11と嵌合させて隣り合う一対のプレキャストコンクリート床版2を接合するように構成されている。
【0028】
具体的に、
図1、
図2、
図3に示すように、本実施形態の雄継手10は、円柱棒状の雄側軸部12と、雄側軸部12の先端から軸方向(軸線)O1外側に突出する円柱棒状のピン部(嵌合凸部)13と、雄側軸部12の後端側に螺着されるナット(定着部)14と、支圧板(定着部)25と、雄側軸部12の外周を被覆するように取り付けられる筒状体15と、雄側軸部12と筒状体15の間に充填されるプレグラウト樹脂24とを備えて構成されている。
なお、例えば、筒状体15にはポリエチレン管、プレグラウト樹脂24にはエポキシ樹脂などが用いられる。
【0029】
そして、この雄継手10は、雄側軸部12及び雄側軸部12に取り付けた筒状体15をコンクリートに埋設し、ピン部13を接合端面から直交方向外側に突出させ、プレキャストコンクリート床版2の所定位置に一体に設けられている。
【0030】
また、プレキャストコンクリート床版2には、上面(または下面)から上下方向内側に凹む箱抜き部(操作凹部)16が形成され、この箱抜き部16に雄側軸部12の後端側が突出して露出し、ナット14を螺着可能に構成されている。なお、雄継手10は、プレキャストコンクリート床版2の接合端面側に複数設けられている。
【0031】
本実施形態の雌継手11は、後部側に小径部17a、前部側に大径部17bを設けて形成された略円筒状のケース(嵌合凹部)17と、円柱棒状の雌側軸部18a、雌側軸部18aの先端側に設けられ、ケース17の小径部17aの内面に施された雌ネジに螺合させる雄ネジ部18b、雌側軸部18aの後端側に設けられ、雄継手10の定着部と同様に支圧板25、ナット14(定着部18c)からなる定着ボルト18とを備えている。
【0032】
この雌継手11は、定着ボルト18の先端側の雄ネジ部18bを小径部17aに螺合させてケース17と定着ボルト18を一体にし、ケース17の大径部17bの先端の開口部が接合端面に開口するようにして、プレキャストコンクリート床版2の接合端面側に一体に埋設されている。
【0033】
さらに、雌継手11は、ケース17の大径部17bの内径と略同等の外径を備えて円筒状に形成され、大径部17bの内部に挿入配置される略円筒状の介装材19と、軸方向O1先端側から後端側に向かうに従い漸次その外径が大となるように形成され、先端側を介装材19の後端側の内孔に嵌合させつつケース17の大径部17bの内部に挿入配置されるくさび材20と、ケース17の大径部17bの内部に配設されるとともに、ケース17の大径部17b、小径部17aを繋ぐ段部17cとくさび材20の後端の間に配設される略円環状の皿バネ(バネ部材)21とを備えている。また、くさび材20にはスリット20aが設けられ、雄継手10が押し込まれた際に拡径可能となっている。
なお、
図2中の符号23は定着部補強鉄筋を示す。また、
図3(a)に介装材19、
図3(b)にくさび材20、
図3(c)に皿バネ(バネ部材)21の一例をそれぞれ示す。
【0034】
上記構成からなる接合部構造Bを備えた複数のプレキャストコンクリート床版2を鋼製桁1上に敷き並べて橋梁の床版Aを構築する際には(本実施形態のプレキャストコンクリート床版の接合構造体の施工方法においては)、隣り合う一方のプレキャストコンクリート床版2を所定位置に設置された段階で他方のプレキャストコンクリート床版2を鋼製桁1上に載せ、一方のプレキャストコンクリート床版2の横に並設する。
【0035】
ここで、本実施形態のプレキャストコンクリート床版2は、例えば、8600×2000mmの底盤型枠と、8600×180mmの側盤型枠とを組み付け、型枠内にコンクリートを打設して製作される。このとき、各型枠の内面を成形金型のように削り出し加工するなどして、型枠内面を設計値±0.5mmの精度を確保するように形成する。このような高精度の型枠を用いることにより、本実施形態のプレキャストコンクリート床版2は、設計値に対して±1.0mmの出来形精度を確保して製作される。
【0036】
また、各プレキャストコンクリート床版2は、軸方向O1両端部側の所定位置にアンカーナット、袋ナット等のナットが一体に埋設されている。また、各プレキャストコンクリート床版2には床版用の高さ調整機構40(
図6参照)が設けられている。
【0037】
なお、床版用の高さ調整機構40は、例えば、プレキャストコンクリート床版2の所定位置に予め取り付けられた複数の高さ調整用のボルトであり、ボルトの螺入量を調整することにより、プレキャストコンクリート床版2の下面からボルト先端を突出させ、このボルト先端の突出量を変えることができる。これにより、複数の高さ調整用ボルトの先端が鋼製桁1上に配されるようにし、必要に応じて任意の高さ調整用ボルトをその先端を鋼製桁1に当接させつつ突出量を調整することにより、プレキャストコンクリート床版2の高さ位置、水平を確保することができる。
【0038】
そして、上記のように高精度でプレキャストコンクリート床版2が形成されていることにより、以下の施工方法を適用することが可能になる。
【0039】
まず、
図4(a)に示すように、プレキャストコンクリート床版2を鋼製桁(基台)1上に載置し、床版用の高さ調整機構40によってその上面の高さ位置、水平を位置決めして設置する。
【0040】
次に、
図4(b)に示すように、設置するプレキャストコンクリート床版2に対し、一体に埋設されたナットにボルトを螺合して、例えばH形鋼などのセッティングビーム材27を、フランジをプレキャストコンクリート床版2の上面に面接触させつつプレキャストコンクリート床版2の一端部から軸方向O1外側に突出するように、且つ他端部から軸方向O1外側に突出するように取り付ける(セッティングビーム材取付工程)。本実施形態では、プレキャストコンクリート床版2の軸方向O1両端部側にそれぞれ、複数のセッティングビーム材27を取り付ける。
【0041】
なお、セッティングビーム材27には、設置するプレキャストコンクリート床版2にボルト接合するためのボルト挿通孔とともに、このプレキャストコンクリート床版2の端部から外側に突出する部分にもボルト挿通孔が形成されており、プレキャストコンクリート床版2の端部から外側に突出する部分のボルト挿通孔は、軸方向O1に延びる長孔とする。
【0042】
また、セッティングビーム材27には、
図6及び
図7に示すように、ビーム材用の高さ調整機構35が設けられている。このビーム材用の高さ調整機構35は、例えば、セッティングビーム材27の所定位置に予め取り付けられた複数の高さ調整用のボルトであり、ボルトの螺入量を調整することにより、セッティングビーム材27の下面からボルト先端を突出させ、ボルト先端の突出量を変えることができる。そして、複数の高さ調整用のボルトの先端をプレキャストコンクリート床版2の上面に当接させ、ボルトの突出量を調整することでセッティングビーム材27の高さが調整可能とされている。
【0043】
次に、
図4(a)に示すように、既設のプレキャストコンクリート床版2に対して所定の間隔をあけた位置に、H形鋼などの仮設受け材28を複数の鋼製桁1上に架け渡すように設置する(受け材仮設置工程)。なお、仮設受け材28にも、
図6、
図7、
図8に示すように、例えば、螺入量を調整することで下面から出没可能なボルトを備えた仮設受け材用の高さ調整機構36が設けられ、必要に応じ、鋼製桁1上に設置した状態でその上面が所定の高さで水平に配されるように仮設受け材28の高さ位置を調整できるようになっている。
【0044】
そして、
図4(b)に示すように、既設のプレキャストコンクリート床版2と仮設受け材28の間に、設置するプレキャストコンクリート床版2を配設するとともに、このプレキャストコンクリート床版2の両端部側にそれぞれ複数取り付けたセッティングビーム材27を、既設のプレキャストコンクリート床版2と仮設受け材28に当接支持させて所定位置に設置する(プレキャストコンクリートブロック仮設置工程)。
【0045】
次に、例えば
図4(c)に示すように、ポンプ22a、油圧ジャッキ22b、鋼製ガイド(ガイド部材)等を備えた床版接合装置22を用い、また、プレキャストコンクリート床版2の貫通孔2bを利用し、鋼製ガイド22cでスライド移動方向を制御しつつ油圧ジャッキ22bで既設の一方のプレキャストコンクリート床版2の接合端面に、新たに設置する他方のプレキャストコンクリート床版2の接合端面を面接触させるように他方のプレキャストコンクリート床版2をスライド移動させる。
【0046】
このように他方のプレキャストコンクリート床版2をスライド移動させるとともに、
図1、
図2に示すように、一方のプレキャストコンクリート床版2と他方のプレキャストコンクリート床版2の互いの接合端面側に設けられた雄継手10のピン部13を雌継手11のケース17、くさび材20の先端側に挿入して嵌合させる(プレキャストコンクリートブロック接合工程)。
【0047】
また、このとき、隣り合う一方のプレキャストコンクリート床版2と他方のプレキャストコンクリート床版2の接合端面同士が面接触し、雄継手10のピン部13が雌継手11のくさび材20の内部に押し込まれることによりくさび材20が拡径し、くさび材20が拡径した後、皿バネ21によって縮径する方向に押し戻され、介装材19ひいてはケース17に圧着される。
【0048】
なお、本実施形態のプレキャストコンクリート床版の接合部構造Bにおいては、例えば、軸部12、18がM30の雄継手10、雌継手11を用いた場合に、10~15kNの挿入力(くさび材20の内部への押込力)で約600kNの締結力を得ることができる。すなわち、小さな挿入力で非常に大きな締結力(接合力)を得ることができる。
【0049】
また、このとき、既設の一方のプレキャストコンクリート床版2とセッティングビーム材27が当接する当接面や、仮設受け材28とセッティングビーム材27が当接する当接面に、予めテフロン(登録商標)版などの滑動部材29を着脱可能に取り付けておけば、スライド移動を円滑に行うことが可能になる。
【0050】
さらに、必要に応じ、既設のプレキャストコンクリート床版2と、設置するプレキャストコンクリート床版2との間に目地材を介装するようにしてもよい。
【0051】
さらに、ガイド部材は特にその設置位置を限定しなくてもよい。例えば、既設の一方のプレキャストコンクリート床版2、及び/又は新たに設置する他方のプレキャストコンクリート床版2の側面にセッティングビーム材27と略同様の構成のガイド部材を着脱可能に取り付け、このガイド部材によって確実に軸方向O1に沿う所定方向に案内して他方のプレキャストコンクリート床版2をスライド移動できるようにしてもよい。
【0052】
次に、接合端面同士を面接触させた後に箱抜き部16から雄継手10の定着部としてのナット14を螺入操作する(プレストレス導入工程)。このようにナット14を螺入して締め付けると、雄側軸部12が筒状体15で被覆された状態でコンクリートに埋設されているため、雄継手10(及び雌継手11)にプレストレス(軸力)が導入付加され、このプレストレスによって既設のプレキャストコンクリート床版2と、新たに設置したプレキャストコンクリート床版2の互いの接合端面が大きな力で密着し、強固に接合される。
【0053】
また、基本的にはこの状態では他方のスライドさせたプレキャストコンクリート床版2は鋼製桁1から浮いた状態であるため、プレキャストコンクリート床版2に埋め込まれた高さ調整ボルトを締め付け、適宜必要に応じて、その突出量を調整して鋼製桁1に接触させる。
【0054】
そして、設置したプレキャストコンクリート床版2からセッティングビーム材27を取り外すとともに、
図5(a)から
図5(c)に示すように、仮設受け材28を次のプレキャストコンクリート床版2を設置するための所定位置に盛り替え、上記同様の操作を繰り返し行ってゆく。
【0055】
これにより、本実施形態のプレキャストコンクリート床版の接合部構造B及び橋梁の床版Aにおいては、順次プレキャストコンクリート床版2を設置するとともにスライド移動させ、隣り合うプレキャストコンクリート床版2に設けられた雄継手10と雌継手11を(ワンタッチで)嵌合接続することにより、互いの接合端面が面接触した好適な状態で容易に隣り合うプレキャストコンクリート床版2を接合することが可能になる。
【0056】
そして、このように隣り合うプレキャストコンクリート床版2を接合しながら複数のプレキャストコンクリート床版2を鋼製桁1上に敷き並べてゆくことにより、容易に橋梁の床版Aを構築することが可能になる。よって、従来と比較し、大幅に効率的に橋梁の床版Aを構築することが可能になる。
【0057】
また、雄側軸部12に筒状体15を取り付け、雄側軸部12と筒状体15の間にプレグラウト樹脂24が充填された状態で雄継手10がプレキャストコンクリート床版2に一体に埋設されていることにより、さらに、このプレグラウト樹脂24が硬化中で流動性を保持した状態(粘弾性体)で、雄側軸部12がプレグラウト樹脂24中を移動可能であることによって、多少の施工誤差、位置決め誤差を吸収することができる。この点からも施工性の向上を図ることが可能になる。さらに、雄側軸部12に筒状体15を取り付け、雄側軸部12と筒状体15の間にプレグラウト樹脂24が充填された状態で雄継手10がプレキャストコンクリート床版2に一体に埋設されていることにより、箱抜き部16から雄継手10のナット14を螺入操作すると、雄継手10(及び雌継手11)に軸力を付加することができ、この軸力を締め付け力として隣り合うプレキャストコンクリート床版2をより強固に接合することが可能になる。
【0058】
これにより、本実施形態のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体(橋梁の床版)Aの施工方法によれば、従来より効率的に橋梁の床版などのプレキャストコンクリートブロックの接合構造体Aを構築することが可能になる。また、ループ状継手を用いずに強固にプレキャストコンクリート床版2同士を接合できるため、床版厚の設定自由度を高めることも可能になる。
【0059】
さらに、雄継手10と雌継手11を嵌合接続して複数のプレキャストコンクリート床版2を一体に接合し、橋梁の床版Aを形成するため、橋梁の床版A全体や、一部のプレキャストコンクリート床版2の交換が必要になった場合に、例えば目地部からカッターなどで雄継手10を切断するだけで容易にプレキャストコンクリート床版2を個別に取り外すことができ、新たなプレキャストコンクリート床版2を設置して更新することができる。よって、従来と比較し、メンテナンス性を大幅に向上させることが可能になる。
【0060】
ここで、本実施形態のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体(橋梁の床版)Aの施工方法においては、上記の通り(
図4(c)に示したように)、ポンプ22a、油圧ジャッキ22b、鋼製ガイド(ガイド部材)等を備えた床版接合装置22を用い、また、プレキャストコンクリート床版2の貫通孔2bを利用し、鋼製ガイド22cでスライド移動方向を制御しつつ複数の油圧ジャッキ22bで既設の一方のプレキャストコンクリート床版2に向けて他方のプレキャストコンクリート床版2をスライド移動させる。
【0061】
このとき、他方のプレキャストコンクリート床版2に複数個所で作用する摩擦力、複数の油圧ジャッキ22bによる引き寄せ力が均等に作用しないと、他方のプレキャストコンクリート床版2を均等に引き寄せて好適に一方のプレキャストコンクリート床版2に接合できなくなる。
【0062】
例えば、他方のプレキャストコンクリート床版2に複数の油圧ジャッキ22bで引き寄せ力を作用させた際に、引き寄せ力が転倒荷重となって、セッティングビーム材27を介して他方のプレキャストコンクリート床版2の荷重を支持する仮設受け材28が略材軸周りに傾動/転倒したり、セッティングビーム材27が仮設受け材28から上方に離れるように他方のプレキャストコンクリート床版2に傾動/後部の浮き上がりが発生するなどし、他方のプレキャストコンクリート床版2を均等に引き寄せて好適に一方のプレキャストコンクリート床版2に接合できなくなる。
【0063】
本実施形態のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体(橋梁の床版)Aの施工方法においては、このような不都合に対し、例えば、
図6、
図7、
図8に示すように、仮設受け材28にウェイト(錘)30を取り付ける。
【0064】
また、セッティングビーム材27が仮設受け材28から上方に離れるように他方のプレキャストコンクリート床版2に傾動/後部の浮き上がりが発生することを防止するための押えスライド機構31を設ける。
【0065】
押えスライド機構31は、例えば、門型に形成され、仮設受け材28に取り付けられる押え部32と、セッティングビーム材27の上面に取り付けられ、セッティングビーム材27よりも硬質のスライド当接面33aを形成するスライド当接部材33と、スライド当接面33aに当接するように押え部32に一体に取り付けられた滑動部材34とを備えて構成されている。
【0066】
押え部32は、複数設けられ、それぞれ、仮設受け材28に下端をボルト接合して一体に立設されるとともに、中央の挿通孔32aに一つのセッティングビーム材27を挿通するように位置決めして配設されている。また、押え部32には、
図6、
図7、
図8に示すように、その高さ位置を調整するための押え部用の高さ調整機構37が設けられている。例えば、ボルトの螺入量を調整することにより押え部32の高さが調整可能とされている。
【0067】
スライド当接部材33は、例えば、焼き入れ、研磨して形成された鋼板であり、セッティングビーム材27の上面の所定位置に、且つ鋼板の表面であるスライド当接面33aが押え部32の挿通孔32aを形成し下方を向く面に対向するように、溶接するなどして一体に取り付けられている。
【0068】
滑動部材34は、例えば、ベアリングを備えた機構であり、セッティングビーム材27に取り付けたスライド当接部材33のスライド当接面33aに当接してセッティングビーム材27を円滑にスライド移動させるように構成されている。具体例としては、株式会社フリーベアコーポレーション製のフリーベアスライダー(FBS-1)を好適に用いることができる。
【0069】
そして、上記の押えスライド機構31を備えた場合には、門型の押え部32の挿通孔32aに各セッティングビーム材27を挿通させつつ、仮設受け材28を所定位置に設置する。
【0070】
この状態で他方のプレキャストコンクリート床版2に複数の油圧ジャッキ22bで引き寄せ力を作用させると、他方のプレキャストコンクリート床版2が浮き上がろうとしてもスライド当接部材33が滑動部材34にあたり、押え部32によってセッティングビーム材27が押えられる。これにより、引き寄せ力を作用させた際に他方のプレキャストコンクリート床版2に浮き上がりが生じることを防止できる。
【0071】
また、硬質のスライド当接部材33のスライド当接面33aに滑動部材34のベアリングが当接することで、他方のプレキャストコンクリート床版2を円滑にスライド移動させることが可能になる。
【0072】
さらに、仮設受け材28にウェイト30を取り付けられていることにより、仮設受け材28の傾動/転倒が発生しにくい。
【0073】
これにより、本実施形態よりも他方のプレキャストコンクリート床版2を均等に引き寄せて好適に一方のプレキャストコンクリート床版2に接合することが可能になる。
【0074】
以上、本発明に係る本実施形態のプレキャストコンクリートブロックの接合構造体の施工方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0075】
例えば、本実施形態では、プレキャストコンクリートブロックの接合構造体が道路橋や鉄道橋などの橋梁の床版、プレキャストコンクリートブロックの接合部構造がプレキャストコンクリート床版の接合部構造であるものとして説明を行ったが、必ずしも、本発明に係るプレキャストコンクリートブロックの接合構造体を橋梁の床版、本発明に係るプレキャストコンクリートブロックの接合部構造をプレキャストコンクリート床版の接合部構造に限定しなくてもよい。
例えば、大型のプレキャストボックスカルバートにおいて断面を分割して施工する場合等に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 鋼製桁(桁)
2 プレキャストコンクリート床版(プレキャストコンクリートブロック)
2a 床版本体(プレキャストコンクリートブロック本体)
2b 貫通孔
3 コンクリート
4 ループ状継手
5 補強鉄筋(配力筋)
10 雄継手
11 雌継手
12 雄側軸部
13 ピン部(嵌合凸部)
14 ナット(定着部)
15 筒状体
16 箱抜き部(操作凹部)
17 ケース(嵌合凹部)
17a 小径部
17b 大径部
17c 段部
18 定着ボルト
18a 雌側軸部
18b 雄ネジ部
18c 定着部
19 介装材
20 くさび材
20a スリット
21 皿バネ(バネ部材)
22 床版接合装置
22a ポンプ
22b 油圧ジャッキ
23 定着部補強鉄筋
24 プレグラウト樹脂
25 支圧板
26 座金
27 セッティングビーム材
28 仮設受け材
29 滑り部材
30 ウェイト
31 押えスライド機構
32 押え部
32a 挿通孔
33 スライド当接部材
33a スライド当接面
34 滑動部材
35 ビーム材用の高さ調整機構
36 仮設受け材用の高さ調整機構
37 押え部用の高さ調整機構
40 床版用の高さ調整機構
A 橋梁の床版(プレキャストコンクリートブロックの接合構造体)
B プレキャストコンクリート床版の接合部構造(プレキャストコンクリートブロックの接合部構造)
O1 軸方向
S 接合部