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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】跳び縄
(51)【国際特許分類】
   A63B 5/20 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
A63B5/20 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018108163
(22)【出願日】2018-06-05
(65)【公開番号】P2019208921
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川端 洋明
(72)【発明者】
【氏名】加茂 新
(72)【発明者】
【氏名】浅野 麻美
(72)【発明者】
【氏名】板花 俊希
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】特許第3417877(JP,B2)
【文献】米国特許第04563002(US,A)
【文献】娘のなわとびは,とびなわニュースキッパー,発達ゆっくりっ子の365日。[online],2018年01月04日,http://365.slowstep.info/my-daughters-jump-rope-is-a-tobinawa-new-skipper/,[2021年11月18日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縄と、
前記縄の両端に接続されたグリップとを備える跳び縄において、
前記縄の長さが350cm以下であり、
前記グリップの長さは25cm以上であ
前記グリップの2つの端部のうち、
前記縄と接続されていない側に位置する第1の端部の断面は略三角形で形成されており、
前記縄と接続されている側に位置する第2の端部の断面は略円形で形成されており、
前記グリップが、第1の端部から第2の端部の方向にかけて、テーパーをつけた形状で形成されている、
跳び縄。
【請求項2】
前記グリップは、前記第1の端部から前記第2の端部の方向に向けて9cmまでの位置における断面が略三角形で形成される、請求項1に記載の跳び縄。
【請求項3】
前記グリップは、前記第2の端部から前記第1の端部の方向に向けて5cmまでの位置における断面が略円形で形成される、請求項1に記載の跳び縄。
【請求項4】
前記グリップ前記第1の端部から前記第2の端部の方向に向けて3/10の位置以降からテーパーをつけた形状で形成されている、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の跳び縄。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、跳び縄に関するものであり、特に跳び縄用グリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一人で実施する縄跳びに使用する跳び縄は、1本の縄とその縄の両端にグリップが取り付けられている。跳び縄の使用者は、グリップを把持し、縄を前後に回旋させながら、縄に触れないように上下に跳ぶ運動をおこなう。
【0003】
しかし、跳び縄の縄は長くて柔らかい材料を採用していることが多く、縄の長さや柔らかさをコントロールさせながら回旋させる行為は、縄跳びの初心者にとって非常に困難であった。そのため、以前より跳び縄の回旋を容易に実施できる発明が存在している。例えば、特許文献1には、回旋する縄がアーチ状に容易になることを目的として、グリップと縄とそれらを結ぶ連結部分とを備えたとびなわが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-170805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のとびなわでは、縄の回旋の軸が、グリップと連結部分との接点と、連結部分と縄の接点の2か所となり、幼児などの縄跳びの初心者が跳び縄をコントロールしにくい構造であるという問題点があった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、縄跳びの初心者でも跳び縄をコントロールしやすい、具体的には、縄跳びの初心者でも安定して縄を回旋させられる跳び縄を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の跳び縄は、縄と、グリップと備えている。グリップは縄のそれぞれの端に接続されている。縄は、長さが350cm以下であり、グリップ
は、長さが25cm以上で構成され、グリップの2つの端部のうち、縄と接続されていない側に位置する第1の端部の断面は略三角形で形成されており、縄と接続されている側に位置する第2の端部の断面は略円形で形成されている。さらに、グリップは第1の端部から第2の端部の方向にかけて、テーパーをつけた形状で形成されている。
【0008】
この跳び縄では、グリップの長さが25cm以上で構成されているため、一人で縄跳びを実施する初心者が、少ない腕の振りで縄をコントロールすることができる。これにより、一人で縄跳びを実施する初心者が安定して縄を回旋させられることができ、跳び縄をコントロールしやすくさせることが可能になる。
【0009】
また、上記跳び縄において、好ましくは、グリップの2つの端部のうち、縄と接続されていない側に位置する第1の端部の断面が略三角形で形成されている。この跳び縄では、グリップの第1の端部および第1の端部から第2の端部の方向に向けて9cmまでの位置における断面が略三角形で形成されるため、使用者がグリップを適切な位置で把持するように誘導することができ、より跳び縄をコントロールしやすくさせる。
【0010】
さらに、上記跳び縄において、好ましくは、グリップの2つの端部のうち、縄と接続されている側に位置する第2の端部の断面が略円形で形成されている。この跳び縄では、縄の断面形状が略円形であることから、グリップの第2の端部が略円形で形成されていることにより、縄とグリップの接続部において、縄とグリップの摩擦が起きにくくなり、よりスムーズに縄を回旋させられることができる。
【0011】
さらに、上記跳び縄において、好ましくは、グリップが、グリップの第1の端部から第2の端部にかけてテーパーをつけた形状で形成されている。この跳び縄では、使用者がグリップを把持する位置を柔軟に設定することができる。
【0012】
また、上記跳び縄において、好ましくは、縄の両端に接続されたグリップの長さの和が跳び縄の全長の15%以上となるように形成されている。この跳び縄では、使用者が跳び縄を跳ぶために必要な縄の長さを担保することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上に説明の通り、本発明の跳び縄は、縄跳びの初心者でもコントロールしやすい、具体的には、安定して縄を回旋させられる跳び縄を提供することを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態1による跳び縄を示した正面図である。
図2図1の跳び縄を直線状にした際の模式図である。
図3図1の跳び縄を使用して縄跳びを行っている状態を示した模式図である。
図4】本発明の実施の形態2による跳び縄のグリップの斜視図である。
図5図4の跳び縄のグリップのA-A断面図である。
図6図4の跳び縄のグリップのB-B断面図である。
図7】本発明の実施の形態3による跳び縄のグリップの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
図1図3を参照して、本発明の実施の形態1による跳び縄100の構造を説明する。なお、跳び縄100は、本発明の跳び縄の一例である。
【0016】
図1図3に示すように、跳び縄100は、縄1と、縄1のそれぞれの両端に接続されたグリップ2とを備えている。グリップ2は、縄1とグリップ2が接続されていない第1の端部21と、縄1とグリップ2が接続されている第2の端部22とを備えている。
【0017】
縄1は、ポリ塩化ビニル・スチレン系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、綿、天然ゴムなどの材料が用いられる。より好ましくは、縄1は、ポリ塩化ビニル・スチレン系エラストマー・熱可塑性ポリウレタンが用いられる。縄1にポリ塩化ビニル・スチレン系エラストマー・熱可塑性ポリウレタンが用いられると縄1の径を細く形成することができる。そのため、使用時に縄1の空気抵抗を抑えることができるので、縄跳びの初心者でも縄1をコントロールしやすい。また、縄1の長L1は350cm以下である。一人用の跳び縄は縄1の長さL1は350cm以下で市販されており、使用者の身長や身体的特徴を鑑みて縄1の長さL1を調整することが可能である。
【0018】
グリップ2は、ポリエチレン樹脂・ポリプロピレン樹脂・ポリエチレンテレフタレート樹脂・ポリ塩化ビニル樹脂・ポリスチレン樹脂・アクリロニトリルブタジエンスチレン・ポリアミド樹脂・ポリカーボネート樹脂・メタクリル樹脂・木材・金属類などの材料で作られている。より好ましくは、グリップ2は、ポリエチレン樹脂あるいはポリプロピレン樹脂で作られている。グリップ2がポリエチレン樹脂あるいはポリプロピレン樹脂で作られていると、グリップ2が丈夫かつ軽量に作ることができるので、縄跳びの初心者でも縄1をコントロールしやすい。また、グリップ2の長さL2は、25cm以上が好ましい。図3の記載のように、グリップ2の長さL2が25cm以上であると、グリップ2の第1の端部21の高さが使用者の頭頂部の高さ付近まで到達するため、少ない腕の振りで縄1をコントロールすることができる。また、好ましくは、グリップ2の長さL2は40cm以下である。グリップの長さL2が40cm以上であると、グリップ2を把持した手と縄1が離れすぎるため、縄1が相対的に重量感を感じ、縄1をコントロールしにくくなる。
【0019】
跳び縄100の全長Ltとグリップ2の長さL2を比較した際、グリップ2の長さL2の2つの和は跳び縄100の全長Ltの15%以上であることが好ましい。15%以下であれば、跳び縄100における縄1の長さL1が相対的に長くなりすぎるため、縄1をコントロールしにくくなる。また、グリップ2の長さL2の2つの和は跳び縄100の全長Ltの35%以下であることが好ましい。35%以上であれば、跳び縄100における縄1の長さL1が相対的に短くなりすぎるため、縄1をコントロールしにくくなる。
【0020】
縄1とグリップ2は、様々な方法で接続されている。例えば、グリップ2の第2の端部22付近に回転子を設けても良く、かしめのような固定部材を設けても良い。また、グリップ2は第2の端部22から第1の端部21に向かって、一部もしくは全体が中空構造であっても良い。本来、縄1の長さL1は、使用者の身長や腕の長さなどの身体的特徴に応じて適宜調整可能であることが好ましい。グリップ2が中空構造であれば、縄1の一部をグリップ2の中空部分に収納することができ、縄1の長さL1を調整可能とすることができる。
【0021】
(実施の形態2)
次に、図4図6を参照して、本発明の実施の形態2による跳び縄101の構造の説明をする。本実施の形態2による跳び縄101は、実施の形態1による跳び縄100において、グリップ2の断面形状に特徴を持たせたものである。なお、実施の形態1による跳び縄100と同じ構成要件については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0022】
図4および図5に示すように、グリップ4の第1の端部41は、その端面が略三角形である。さらに、使用者が縄跳び101を実施する際に把持すると想定されるグリップ4の第1の端部41の端面から第2の端部42の方向に向かって9cmまでの位置における断面の形状は略三角形が好ましい。縄跳びの初心者が多い5~7歳の手幅の平均は約7cmであるため、グリップ4の第1の端部41の端面から第2の端部42の方向に向かって9cmまでの位置における断面の形状が略三角形であると、使用者がグリップ4を把持する際、使用者の手幅を覆うことが可能となる。そのため、使用者がグリップを適切な位置で把持するように誘導することができ、使用者は跳び縄をよりコントロールしやすくさせることができる。
【0023】
図4および図6に示すように、グリップ4の第2の端部42は、その端面が略円形である。さらに、グリップ4の第2の端部42の端面から第1の端部41の方向に向かって5cmまでの位置における断面の形状は略円形が好ましい。グリップ4の第2の端部42の端面から第1の端部41の方向に向かって5cmまでの位置における断面の形状が略円形であると、使用者が実施している際にグリップ4の第2の端部42と縄1の摩擦が起きにくくなり、よりスムーズに縄を回旋させられることができる。以上のように構成されるグリップ4の材料および長さは、上述した実施の形態1と同様とすればよい。
【0024】
(実施の形態3)
次に、図7を参照して、本発明の実施の形態3による跳び縄102の構造の説明をする。実施の形態3による跳び縄102は、実施の形態2による跳び縄101において、グリップ4の外形上に特徴を持たせたものである。なお、実施の形態1による跳び縄100と同じ構成要件については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0025】
グリップ7は、第1の端部71から第2の端部72にかけてテーパーをつけた形状で形成されることが好ましい。さらに好ましくは、かかるテーパー処理は、第1の端部71の端面から第2の端部72に向けて3/10の位置P以降で施されることが好ましい。グリップ7にテーパー処理が施されていると、縄跳びの上達具合によって把持位置を調整することが可能となる。具体的には、縄跳びの初心者には、第1の端部71に近い位置で把持することにより、跳び縄102はコントロールしやすさを提供することができる。また、縄跳びが上達した使用者には、把持する位置を第2の端部72に近づけることで、跳び縄102でも縄の回転速度を上げて跳ぶことが可能となる環境を提供することができる。
【0026】
また、グリップ7の第1の端部71にはグリップエンド部73が設けられている。さらに、グリップ7の第1の端部71から第2の端部72に向けて3/10の位置P以降に複数の突起部74が設けられている。グリップエンド部23および突起部74は、使用者がグリップを把持する際の滑り止めの役目を果たすことができる。
【0027】
(効果検証実験)
次に、本発明による跳び縄を使用した際の効果について、実施例および比較例にて検証する。
【0028】
実施例による跳び縄は、上記実施の形態1で説明したように、縄と、グリップと備えた跳び縄であって、グリップは縄のそれぞれの端に接続されており、縄の長さが180cmであり、グリップの長さがそれぞれ30cmで構成されている。
【0029】
比較例による跳び縄は、縄と、グリップと備えた跳び縄であって、グリップは縄のそれぞれの端に接続されており、縄の長さが180cmであり、グリップの長さがそれぞれ14cmで構成されている。
【0030】
実験は、縄跳びの経験が10回以下である5歳~7歳の計7名の被験者A~Gに対して、実施例による跳び縄・比較例による跳び縄において、前回し跳びをそれぞれ5回跳躍成功するまで実施させた。前回し跳びとは、跳び縄を背後から頭上に持ち上げた後、身体の前方を通して足元を通過させる際に上下に跳び越す運動のことを指している。
【0031】
実験の際、被験者の手首にセイコーエプソン社製の慣性センサーM-Tracerを設置し,縄跳びを実施する際の後方から前方への腕の角速度(以下、「速度」という。)を測定した。
【0032】
【表1】
(単位:deg/sec)
【0033】
表1は測定結果を示している。表1によると、どの被験者も比較例の跳び縄に比べて実施例の跳び縄を使用した方が、速度は下がっていることがわかった。この結果より、比較例の跳び縄に比べて実施例の跳び縄を使用した方が、手を後ろから前に回して,跳び縄を後ろから前にもってくる際の腕の振りが小さくなっていることがわかる。ゆえに、実施例の跳び縄を使用した方が腕の振りが小さくなるので、安定して回旋させることができることがわかった。
【0034】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1 縄
2 4 7 グリップ
100 101 102 跳び縄
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7