IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧 ▶ 株式会社デンソーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】リレーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01H 45/00 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
H01H45/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018139232
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020017399
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 友幸
(72)【発明者】
【氏名】新田 高弘
(72)【発明者】
【氏名】井上 美光
(72)【発明者】
【氏名】樋口 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 正登
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-080745(JP,U)
【文献】特開2007-018913(JP,A)
【文献】実開昭56-075434(JP,U)
【文献】特開2010-238632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁コイル(21)と、該電磁コイルへの通電の有無によりオンオフ動作するスイッチ(22)と、上記電磁コイル及び上記スイッチを収容するケース(23)とを有する複数のリレー(2)と、
該複数のリレーを搭載した搭載基板(4)と、
上記ケースよりもヤング率が小さい材料からなり、上記リレーの振動を抑制する制振部材(3)とを備え、
2個の上記リレーによって上記制振部材を挟持してあり、
上記制振部材に金属板(31)が封止されている、リレーモジュール(1)。
【請求項2】
上記金属板は複数個所、屈曲している、請求項に記載のリレーモジュール。
【請求項3】
電磁コイル(21)と、該電磁コイルへの通電の有無によりオンオフ動作するスイッチ(22)と、上記電磁コイル及び上記スイッチを収容するケース(23)とを有する複数のリレー(2)と、
該複数のリレーを搭載した搭載基板(4)と、
上記ケースよりもヤング率が小さい材料からなり、上記リレーの振動を抑制する制振部材(3)とを備え、
2個の上記リレーによって上記制振部材を挟持してあり、
上記ケースは、互いに連結した複数の壁部からなり、該複数の壁部のうち少なくとも一枚の壁部にスリット(25)を形成してあり、
上記スリットは、上記複数の壁部のうち、上記制振部材を挟持する挟持壁部に形成されている、リレーモジュール(1)
【請求項4】
電磁コイル(21)と、該電磁コイルへの通電の有無によりオンオフ動作するスイッチ(22)と、上記電磁コイル及び上記スイッチを収容するケース(23)とを有する複数のリレー(2)と、
該複数のリレーを搭載した搭載基板(4)と、
上記ケースよりもヤング率が小さい材料からなり、上記リレーの振動を抑制する制振部材(3)とを備え、
2個の上記リレーによって上記制振部材を挟持してあり、
上記ケースは、互いに連結した複数の壁部からなり、該複数の壁部のうち少なくとも一枚の壁部にスリット(25)を形成してあり、
上記スリットは、上記複数の壁部のうち、上記制振部材を挟持する挟持壁部に連結した連結壁部(24 b )に形成されている、リレーモジュール(1)
【請求項5】
上記2個のリレーのうち、一方の該リレーに含まれる上記電磁コイルと、他方の上記リレーに含まれる電磁コイルとは、それぞれの中心軸(A)が互いに平行である、請求項1~4のいずれか一項に記載のリレーモジュール。
【請求項6】
個々の上記リレーの上記電磁コイルは、上記中心軸が、上記2個のリレーの並び方向(Y)と上記搭載基板の厚さ方向(Z)との双方に直交する直交方向(X)を向いている、請求項に記載のリレーモジュール。
【請求項7】
上記制振部材は、上記2個のリレーの上記ケースに接着されている、請求項1~のいずれか一項に記載のリレーモジュール。
【請求項8】
上記2個のリレーと上記制振部材との積層体(18)にテープ(19)を巻回してある、請求項1~のいずれか一項に記載のリレーモジュール。
【請求項9】
上記ケースは互いに連結した複数の壁部(24)からなり、該複数の壁部のうち上記制振部材を挟持する挟持壁部(24)は、その一部分のみが上記制振部材に接触している、請求項1~のいずれか一項に記載のリレーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のリレーと、該複数のリレーを搭載した搭載基板とを備えるリレーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のリレーと、該複数のリレーを搭載した搭載基板とを備えるリレーモジュールが知られている(下記特許文献1参照)。個々のリレーは、電磁コイルと、該電磁コイルへの通電の有無によりオンオフ動作するスイッチとを備える。このスイッチをオンオフ動作させることにより、直流電源から電子部品へ電力を供給したり、供給を停止したりしている。
【0003】
リレーの近傍には、例えばインバータ等のように、交流電流が発生する装置が配されることがある。交流電流が流れると、周囲に交流磁界が発生し、上記電磁コイルに鎖交する。その結果、電磁コイルの鉄心に電磁力が発生して振動することが知られている。そのため、リレーや、上記搭載基板が振動し、放射音が発生する。
【0004】
上記リレーモジュールでは、放射音を抑制するため、個々のリレーの外周面に制振部材を取り付けてある(図29参照)。制振部材を設けると、リレーの振動を抑制でき、放射音を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-200402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記リレーモジュールでは、放射音の低減効果が十分とは言えなかった。すなわち、個々のリレーの外周面に制振部材を取り付けると、制振部材の質量によって抵抗力が生じ、リレーの振動が抑制される。しかし、制振部材の質量は小さいため、振動抑制効果は十分ではない。そのため、リレーや上記搭載基板が僅かに振動し、放射音が発生する可能性がある。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、個々のリレーの振動をより低減できるリレーモジュールを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、電磁コイル(21)と、該電磁コイルへの通電の有無によりオンオフ動作するスイッチ(22)と、上記電磁コイル及び上記スイッチを収容するケース(23)とを有する複数のリレー(2)と、
該複数のリレーを搭載した搭載基板(4)と、
上記ケースよりもヤング率が小さい材料からなり、上記リレーの振動を抑制する制振部材(3)とを備え、
2個の上記リレーによって上記制振部材を挟持してあり、
上記制振部材に金属板(31)が封止されている、リレーモジュール(1)にある。
また、本発明の他の態様は、電磁コイル(21)と、該電磁コイルへの通電の有無によりオンオフ動作するスイッチ(22)と、上記電磁コイル及び上記スイッチを収容するケース(23)とを有する複数のリレー(2)と、
該複数のリレーを搭載した搭載基板(4)と、
上記ケースよりもヤング率が小さい材料からなり、上記リレーの振動を抑制する制振部材(3)とを備え、
2個の上記リレーによって上記制振部材を挟持してあり、
上記ケースは、互いに連結した複数の壁部からなり、該複数の壁部のうち少なくとも一枚の壁部にスリット(25)を形成してあり、
上記スリットは、上記複数の壁部のうち、上記制振部材を挟持する挟持壁部に形成されている、リレーモジュール(1)にある。
また、本発明の他の態様は、電磁コイル(21)と、該電磁コイルへの通電の有無によりオンオフ動作するスイッチ(22)と、上記電磁コイル及び上記スイッチを収容するケース(23)とを有する複数のリレー(2)と、
該複数のリレーを搭載した搭載基板(4)と、
上記ケースよりもヤング率が小さい材料からなり、上記リレーの振動を抑制する制振部材(3)とを備え、
2個の上記リレーによって上記制振部材を挟持してあり、
上記ケースは、互いに連結した複数の壁部からなり、該複数の壁部のうち少なくとも一枚の壁部にスリット(25)を形成してあり、
上記スリットは、上記複数の壁部のうち、上記制振部材を挟持する挟持壁部に連結した連結壁部(24 b )に形成されている、リレーモジュール(1)にある。
【発明の効果】
【0009】
上記リレーモジュールにおいては、2個のリレーによって、上記制振部材を挟持してある。
このようにすると、各リレーの振動をより効果的に抑制できる。すなわち、2個のリレーは、それぞれ振動特性が異なるため、各リレーの振動には位相差が存在する。そのため、2個のリレーによって制振部材を挟持すると、一方のリレーが動いたとき(図8参照)、制振部材を介して反対側に配された他方のリレーの質量全体が、上記一方のリレーに対する減衰要素になる。同様に、他方のリレーが動いたとき、上記一方のリレーの質量全体が、上記他方のリレーに対する減衰要素になる。したがって、個々のリレーを、相手側のリレーに対する減衰要素にすることができる。つまり、より大きな質量を使って、個々のリレーの振動を抑制できる。そのため、振動の減衰効果を高めることができ、リレーや搭載基板から発生する放射音をより低減できる。
【0010】
以上のごとく、上記態様によれば、個々のリレーの振動をより低減できるリレーモジュールを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1における、リレーモジュールの斜視図。
図2】実施形態1における、電源装置の断面図であって、図3II-II断面図。
図3図2のIII矢視図。
図4図2のIV-IV断面図。
図5】実施形態1における、電磁コイルと、該電磁コイルに鎖交する磁束とを表した概念図。
図6図5のVI-VI断面図。
図7】実施形態1における、ある瞬間での、リレーモジュールの平面図。
図8図7とは別の瞬間における、リレーモジュールの平面図。
図9】実施形態1における、リレーの断面図であって、図10のIX-IX断面図。
図10図9のX-X断面図。
図11図9のXI-XI断面図。
図12】実施形態1における、電源装置の回路図。
図13】実験例1における、リレーモジュールの振動特性を表したグラフ。
図14】実施形態2における、リレーモジュールの平面図であって、図15のXIV矢視図。
図15図14のXV矢視図。
図16】実施形態3における、リレーモジュールの側面図。
図17】実施形態4における、リレーモジュールの平面図。
図18】実施形態4における、制振部材の斜視図。
図19】実施形態5における、リレーモジュールの斜視図。
図20図19のXX矢視図。
図21】実施形態6における、リレーモジュールの分解斜視図。
図22】実施形態6における、リレーモジュールの側面図。
図23】実施形態7における、リレーモジュールの分解斜視図。
図24】実施形態7における、リレーモジュールの平面図。
図25】実施形態8における、リレーモジュールの分解斜視図。
図26】実施形態9における、リレーモジュールの分解斜視図。
図27】実施形態10における、リレーモジュールの分解斜視図。
図28】実施形態11における、リレーモジュールの斜視図。
図29】比較形態における、リレーモジュールの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
上記リレーモジュールに係る実施形態について、図1図12を参照して説明する。図1に示すごとく、本形態のリレーモジュール1は、複数のリレー2(第1リレー2A及び第2リレー2B)と、該複数のリレー2を搭載した搭載基板4と、制振部材3とを備える。個々のリレー2は、図9図11に示すごとく、電磁コイル21と、スイッチ22と、ケース23とを有する。スイッチ22は、電磁コイル21への通電の有無によりオンオフ動作する。電磁コイル21とスイッチ22は、ケース23に収容されている。
【0013】
制振部材3は、ケース23よりもヤング率が小さい材料からなる。制振部材3は、リレー2の振動を抑制する。
図1に示すごとく、2個のリレー2によって制振部材3を挟持してある。
【0014】
本形態のリレーモジュール1は、ハイブリッド車等の車両に搭載するための、車載用リレーモジュールである。図2図3に示すごとく、本形態のリレーモジュール1は、電源装置10に用いられる。電源装置10は、直流電源5と、電源ケース51とを備える。この電源ケース51に、上記搭載基板4を固定してある。
【0015】
搭載基板4は、絶縁材料からなる。図3に示すごとく、搭載基板4には、上記リレー2の他に、複数の電子部品6を搭載してある。これら複数の電子部品6によって、インバータ回路11を形成してある。
【0016】
図12に示すごとく、インバータ回路11を構成する電子部品6には、スイッチング素子6Sとコンデンサ6Cとがある。インバータ回路11は、直流電源5から供給される直流電力を交流電力に変換する。この交流電力を用いて、ISG(Integrated Starter Generator)を駆動している。ISGは、停止している上記車両を発進させる際に用いられる。車両が発進した後は、図示しないエンジンを用いて車両を走行させる。発進時にISGを用いて車両を加速させることにより、エンジンの燃費を向上させている。
【0017】
インバータ回路11には、交流バスバー13が接続している。この交流バスバー13を介して、インバータ回路11からISGへ交流電力を供給している。インバータ回路11は、三相交流電力を2系統、出力する。
【0018】
また、図12に示すごとく、電源装置10には、上述したリレー2が設けられている。リレー2をオンすることにより、直流電源5から負荷12に直流電力を供給するよう構成してある。負荷12は、上記車両の搭載部品であり、例えばヘッドライトやラジオ等である。
【0019】
図2図4に示すごとく、電源ケース51内には、上記交流バスバー13が配されている。交流バスバー13は、リレー2の近傍に設けられている。交流バスバー13に交流電流が流れると、周囲に交流磁界Hが発生し、電磁コイル21に鎖交する。その結果、図5に示すごとく、電磁コイル21に交流電流iが流れ、鉄心に電磁力が発生する。そのため、電磁コイル21がX方向(軸線方向)に振動する。
【0020】
また、図6に示すごとく、本形態では、リレー2内に2本の電磁コイル21を配置してある。個々の電磁コイル21に上記交流磁界Hが鎖交し、交流電流iが流れると、2本の電磁コイル21の間にローレンツ力が生じる。そのため、各電磁コイル21がY方向(2本の電磁コイル21の並び方向)に振動する。
【0021】
このように、電磁コイル21に交流磁界Hが鎖交すると、個々のリレー2が振動する。2個のリレー2(2A,2B)は、それぞれ振動特性が異なるため、各リレー2の振動には位相差が存在する。
【0022】
本形態では、リレー2の振動を抑制するため、図1図7に示すごとく、2個のリレー2によって、制振部材3を挟持している。上述したように、制振部材3は、リレー2のケース23よりもヤング率が小さい。制振部材3は、図示しない接着剤により、ケース23に接着されている。
【0023】
図7に、ある瞬間におけるリレーモジュール1を示す。この瞬間では、第1リレー2AはX方向に動いており、第2リレー2Bは静止している。2個のリレー2A,2Bの振動には位相差が存在するため、このような瞬間があり得る。この瞬間では、制振部材3のうち、第1リレー2A側の部分(第1部分30A)は、第1リレー2Aに引っ張られて弾性変形する。そして、振動のエネルギーを熱に変化させる。この際、制振部材3のうち第2リレー2B側の部分(第2部分30B)と、第2リレー2B全体の質量によって、第1リレー2Aの振動が妨げられる。すなわち、第2部分30Bと第2リレー2Bとが、第1リレー2Aに対する減衰要素8になる。
【0024】
また、図8に示すごとく、第1リレー2Aと第2リレー2Bとが逆向きに動く瞬間もある。このとき、制振部材3の第1部分30Aと第1リレー2Aは、第2リレー2Bに対する減衰要素8になる。同様に、制振部材3の第2部分30Bと第2リレー2Bは、第1リレー2Aに対する減衰要素8になる。そのため、個々のリレー2を、相手側のリレー2に対する減衰要素8にすることができ、各リレー2の振動を効率的に抑制できる。
【0025】
次に、リレー2の構造について、より詳細に説明する。図9~11に示すごとく、リレー2は、電磁コイル21、スイッチ22、ケース23の他に、アーマチェア26、ヨーク27、可動ばね29等を備える。スイッチ22は、固定子221と、可動子222とを有する。電磁コイル21に通電すると、電磁力が発生し、アーマチェア26が引き上げられる。そして、可動子222が固定子221に接触し、スイッチ22がオンになる。
【0026】
図9に示すごとく、本形態では、上述したように、ケース23内に2個の電磁コイル21を収容してある。個々の電磁コイル21の中心軸Aは、互いに平行である。
【0027】
ケース23は、図9に示すごとく、複数の壁部24からなる。これら複数の壁部24は、互いに直交し、連結している。ケース23は、エポキシ樹脂等の樹脂からなる。
【0028】
次に、本形態の作用効果について説明する。図8に示すごとく、本形態では、2個のリレー2A,2Bによって、制振部材3を挟持してある。
このようにすると、各リレー2の振動をより効果的に抑制できる。すなわち、2個のリレー2は、それぞれ振動特性が異なるため、各リレー2の振動には位相差が存在する。そのため、2個のリレー2によって制振部材3を挟持すると、第1リレー2Aが動いたとき、制振部材3を介して反対側に配された第2リレー2Bの質量全体が、第1リレー2Aに対する減衰要素8になる。同様に、第2リレー2Bが動いたとき、第1リレー2Aの質量全体が、第2リレー2Bに対する減衰要素8になる。したがって、個々のリレー2を、相手側のリレー2に対する減衰要素8にすることができる。つまり、より大きな質量を使って、個々のリレー2の振動を抑制できる。したがって、各リレー2の振動を効果的に抑制でき、リレー2や搭載基板4から発生する放射音をより低減できる。
【0029】
ここで仮に、図29に示すごとく、リレー2の外面に制振部材3を取り付けただけで、2個のリレー2によって制振部材3を挟持しなかったとすると、制振部材3のうちリレー2から離れた部位(第2部分30B)のみが、リレー2に対する減衰要素8になる。したがって、リレー2に小さな質量しか作用せず、振動抑制効果が小さい。
これに対して、図8に示すごとく、本形態のように2個のリレー2によって制振部材3を挟持すれば、個々のリレー2を、相手側のリレー2に対する減衰要素8にすることができる。そのため、大きな質量を用いて、各リレー2の振動を抑制でき、リレー2の振動抑制効果を高めることができる。
【0030】
また、本形態では、図8に示すごとく、第1リレー2Aに含まれる電磁コイル21の中心軸Aと、第2リレー2Bに含まれる電磁コイル21の中心軸Aとは、互いに平行である。
このようにすると、各リレー2の振動の向きを揃えることができる。したがって、図8に示すごとく、上記位相差によって、2個のリレー2が逆向きに動く瞬間が発生し得る。そのため、個々のリレー2を使って、相手側のリレー2の振動をより効果的に抑制できる。
【0031】
また、図8に示すごとく、個々のリレー2に含まれる電磁コイル21の中心軸Aは、2個のリレー2の配列方向(Y方向)と、搭載基板4の板厚方向(Z方向)との双方に直交する直交方向(X方向)を向いている。
そのため、リレー2の振動がZ方向に伝わりにくくなり、搭載基板4から放射音が発生しにくくなる。
【0032】
また、本形態では、制振部材3を、各リレー2A,2Bのケース23に接着してある。
このようにすると、リレー2が振動したときに、制振部材3を確実に弾性変形させることができる。そのため、リレー2の振動の減衰効果をより高めることができる。
【0033】
なお、制振部材3のヤング率は、1MPa~100MPaが好ましい。制振部材3の材料としては、例えばブチルゴムを用いることができる。
【0034】
以上のごとく、本形態によれば、個々のリレーの振動をより低減できるリレーモジュールを提供することができる。
【0035】
なお、本形態では、搭載基板4に2個のリレー2A,2Bを搭載したが、本発明はこれに限るものではなく、3個以上のリレー2を搭載してもよい。
【0036】
以下の実施形態においては、図面に用いた符号のうち、実施形態1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施形態1と同様の構成要素等を表す。
【0037】
(実験例1)
本発明の効果を確認するための実験を行った。まず、2個のリレー2によって制振部材3を挟持した、本発明に係るリレーモジュール1のサンプル(図1参照)を作成した。また、2個のリレー2によって制振部材3を挟持していない、比較サンプルを作成した。
【0038】
そして、これらのサンプルの振動特性を測定した。この測定では、搭載基板4に加速度センサを取り付け、電磁コイル21に流す電流の周波数を0~7kHzの範囲で変化させた。そして、加速度センサの測定値を電流で除した値と、周波数の関係を調査した。結果を図13に示す。
【0039】
このグラフから、周波数が0~7kHzの範囲で、本発明に係るサンプルの方が、比較サンプルよりも、全体的に振動が抑制されていることが分かる。例えば、周波数が2.6kHzのとき、本発明に係るサンプルの方が、比較サンプルよりも、振動が6dB低い。この実験から、2個のリレー2によって制振部材3を挟持することにより、各リレー2の振動を抑制できることが確認できた。
【0040】
(実施形態2)
本形態は、制振部材3の構造を変更した例である。図14図15に示すごとく、本形態では、制振部材3に金属板31を封止してある。金属板31の板厚方向は、Y方向と一致している。
【0041】
このようにすると、リレー2の振動をより効果的に抑制できる。すなわち、図14に示すごとく、第1リレー2Aが動いた瞬間、制振部材3の第2部分30Bと第2リレー2Bだけでなく、金属板31も、第1リレー2Aの振動を抑制する要素(減衰要素8)になる。同様に、第2リレー2Bが動いた瞬間、制振部材3の第1部分30Aと第1リレー2Aだけでなく、金属板31も、第2リレー2Bに対する減衰要素8になる。したがって、より大きな質量を用いて振動を減衰でき、各リレー2の振動をより効果的に低減できる。
その他、実施形態1と同様の構成および作用効果を備える。
【0042】
(実施形態3)
本形態は、金属板31の数を変更した例である。図16に示すごとく、制振部材3に複数の金属板31を封止してある。
このようにすると、リレー2と、制振部材3の一部と、複数の金属板31とを、相手側のリレー2に対する減衰要素8にすることができる。そのため、より大きな質量を用いて各リレー2の振動を低減でき、振動の減衰効果を高めることができる。
その他、実施形態1と同様の構成および作用効果を備える。
【0043】
(実施形態4)
本形態は、金属板31の形状を変更した例である。図17図18に示すごとく、本形態では、金属板31を複数個所、屈曲させてある。
このようにすると、金属板31の表面積を大きくすることができる。したがって、制振部材3の各部位(第1部分30A、第2部分30B)と、金属板31との間の摩擦力を大きくすることができる。そのため、各リレー2の振動に対する抵抗力を大きくすることができ、振動の低減効果をより高めることができる。
その他、実施形態1と同様の構成および作用効果を備える。
【0044】
(実施形態5)
本形態では、図19図20に示すごとく、2個のリレー2と制振部材3との積層体18にテープ19を巻回してある。これにより、2個のリレー2と制振部材3とを一部品化してある。
このようにすると、テープ19によって、リレー2と制振部材3とをより強く密着させることができる。そのため、リレー2の振動抑制効果をより高めることができる。
【0045】
なお、本形態では、テープ19として、耐熱テープを用いている。これにより、電磁コイル21から発生する熱によってテープ19が劣化しないようにしてある。
【0046】
また、リレー2と制振部材3とは、接着剤によって接着しても、接着しなくてもよい。接着すると、テープ19及び接着剤によって、リレー2と制振部材3とをより強く密着させることができ、リレー2の振動抑制効果をさらに高めることができる。
その他、実施形態1と同様の構成および作用効果を備える。
【0047】
(実施形態6)
本形態は、リレー2のケース23の形状を変更した例である。図21図22に示すごとく、本形態では、ケース23を構成する複数の壁部24のうち、制振部材3を挟持する挟持壁部24aを、Y方向における制振部材3側に突出した形状に形成してある。これにより、挟持壁部24aの一部のみを制振部材3に接触させている。
【0048】
より詳しくは、挟持壁部24aは、図22に示すごとく、Z方向においてケース23の中央部MZに向かうほど、制振部材3までのY方向距離LYが小さくなるよう、湾曲している。
【0049】
上記構成にすると、制振部材3と挟持壁部24aとが接触する部位の圧力を高めることができる。そのため、この部位の摩擦力を大きくすることができ、リレー2の振動をより効果的に抑制できる。
その他、実施形態1と同様の構成および作用効果を備える。
【0050】
(実施形態7)
本形態は、挟持壁部24aの形状を変更した例である。本形態では図23図24に示すごとく、実施形態6と同様に、挟持壁部24aを、Y方向における制振部材3側に突出させてある。これにより、挟持壁部24aの一部のみが制振部材3に接触するよう構成してある。
【0051】
より詳しくは、図24に示すごとく、挟持壁部24aは、X方向においてケース23の中央部MXに向かうほど、制振部材3までのY方向距離LYが小さくなるよう、湾曲している。
【0052】
上記構成にすると、実施形態6と同様に、制振部材3と挟持壁部24aとが接触する部位の圧力を高めることができる。そのため、この部位の摩擦力を大きくすることができ、リレー2の振動をより効果的に抑制できる。
その他、実施形態6と同様の構成および作用効果を備える。
【0053】
(実施形態8)
本形態は、リレー2のケース23の形状を変更した例である。図25に示すごとく、本形態では、ケース23を構成する壁部24に、スリット25を形成してある。
【0054】
このようにすると、ケース23の剛性を低くすることができる。そのため、リレー2が振動した場合、振動をケース23によって吸収することができる。したがって、リレー2の振動をより低減でき、放射音の発生を一層、低減することができる。
【0055】
より詳しくは、本形態では、個々のスリット25は、Z方向に延びている。また、スリット25は、ケース23を構成する複数の壁部24のうち、制振部材3を挟持する挟持壁部24aに形成されている。
挟持壁部24aは、制振部材3に接しており、リレー2が振動したときに、制振部材3から力を受けやすい。そのため、挟持壁部24aにスリット25を形成し、剛性を低減させて、振動を吸収するようにした効果は大きい。
その他、実施形態1と同様の構成および作用効果を備える。
【0056】
なお、本形態では、ケース23を構成する複数の壁部24のうち、一枚の壁部24(挟持壁部24a)のみにスリット25を形成したが、本発明はこれに限るものではなく、2枚以上の壁部24にスリット25を形成してもよい。
【0057】
(実施形態9)
本形態は、スリット25の形状を変更した例である。図26に示すごとく、本形態では、実施形態8と同様に、挟持壁部24aにスリット25を形成してある。本形態のスリット25は、X方向に延びている。
その他、実施形態8と同様の構成および作用効果を備える。
【0058】
(実施形態10)
本形態は、スリット25の形状を変更した例である。図27に示すごとく、本形態では、実施形態8と同様に、挟持壁部24aにスリット25を形成してある。本形態のスリット25は、挟持壁部24aの対角線に沿って延びている。
その他、実施形態8と同様の構成および作用効果を備える。
【0059】
(実施形態11)
本形態は、スリット25の位置を変更した例である。図28に示すごとく、本形態では、ケース23を構成する複数の壁部24のうち、挟持壁部24aに連結した連結壁部24bに、スリット25を形成してある。スリット25は、複数の連結壁部24bに渡って形成されている。
【0060】
上記構成にした場合も、ケース23の剛性を低減できるため、リレー2の振動を抑制する効果を高めることができる。
その他、実施形態8と同様の構成および作用効果を備える。
【0061】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 リレーモジュール
2 リレー
21 電磁コイル
22 スイッチ
23 ケース
3 制振部材
4 搭載基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29