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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】水門開閉装置及びチェーン張力調整方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/36 20060101AFI20220331BHJP
   E02B 7/20 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
E02B7/36
E02B7/20 109
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018140200
(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公開番号】P2020016090
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】森川 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】福田 真
(72)【発明者】
【氏名】北島 主計
(72)【発明者】
【氏名】丸山 武志
(72)【発明者】
【氏名】横山 斉昭
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-251404(JP,A)
【文献】特開2015-129390(JP,A)
【文献】特開2017-160768(JP,A)
【文献】特開平11-172659(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01627957(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/36
E02B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータPの駆動による第1のスプロケットの回転駆動によってチェーンを巻き上げて、該チェーンに連結された扉体を上昇させる水門開閉装置において、
前記チェーンを収容するチェーン収容機構と、
モータQと、
前記モータQの駆動によって回転駆動して、前記チェーンを前記チェーン収容機構に案内する第2のスプロケットと、
前記チェーンの前記第1、第2のスプロケット間の領域に生じている張力を検出する張力検出手段と、
前記モータP及び前記モータQのいずれか一方又は双方の駆動を制御して、前記張力検出手段が検出する張力を所定範囲内に収める制御手段とを備えることを特徴とする水門開閉装置。
【請求項2】
請求項1記載の水門開閉装置において、前記張力検出手段は、前記扉体が上昇している際、前記モータQの電流値を基に前記チェーンの前記第1、第2のスプロケット間の領域に生じている張力を検出することを特徴とする水門開閉装置。
【請求項3】
請求項1記載の水門開閉装置において、前記張力検出手段は、前記チェーンの前記第1、第2のスプロケット間の領域に接触して該第1、第2のスプロケット間の領域に生じている張力を検出することを特徴とする水門開閉装置。
【請求項4】
モータPの駆動による第1のスプロケットの回転駆動によって巻き上げられて、連結された扉体を上昇させるチェーンを、モータQの駆動による第2のスプロケットの回転駆動によってチェーン収容機構に案内する水門開閉装置のチェーン張力調整方法において、
前記チェーンの前記第1、第2のスプロケット間の領域に生じている張力を張力検出手段で検出する工程と、
前記モータP及び前記モータQのいずれか一方又は双方の駆動を制御して、前記張力検出手段が検出する張力を所定範囲内に収める工程とを有することを特徴とするチェーン張力調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチェーンを巻き上げて水門の扉体を上昇させる水門開閉装置及びその水門開閉装置のチェーン張力調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水路や河川等の水門には、スプロケット(以下、「第1駆動スプロケット」と言う)を回転駆動させてチェーンを巻き上げ、チェーンに連結された扉体を上昇させる水門開閉装置が設置されている。特許文献1、2、3には、巻き上げられたチェーンに複数の垂れ下がった領域を設けてチェーンを収めるチェーン収容機構を備えた水門開閉装置の具体例が記載されている。そのようにチェーンを収めることで、チェーンにカウンターバランスを連結する必要がなくなり、水門装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0003】
しかも、特許文献2、3に記載の水門開閉装置は、チェーン収容機構が第1駆動スプロケットより高い位置で、人が容易に接近可能な位置に設けられているので、作業員はチェーン収容機構に収められたチェーンを効率的に点検することができる。
そして、特許文献3に記載の水門開閉装置は、回転駆動によってチェーンをチェーン収容機構に引き上げる第2駆動スプロケットを備えることから、チェーンをチェーン収容機構に安定的に案内することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-31949号公報
【文献】特開2005-188058号公報
【文献】特開2017-61852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、チェーンは扉体の負荷がかかった状態となっていることから、使用期間が長くなるにつれて、チェーンは伸びる。特許文献3には、チェーンが伸びて、チェーンの第1駆動スプロケットと第2駆動スプロケットの間の領域に弛みが生じる点についての記載が存在せず、チェーンの弛みをどのようにして取り除くかが示されていなかった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、チェーンの弛みを緩和し又は取り除くことが可能な水門開閉装置及びその水門開閉装置のチェーン張力調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る水門開閉装置は、モータPの駆動による第1のスプロケットの回転駆動によってチェーンを巻き上げて、該チェーンに連結された扉体を上昇させる水門開閉装置において、前記チェーンを収容するチェーン収容機構と、モータQと、前記モータQの駆動によって回転駆動して、前記チェーンを前記チェーン収容機構に案内する第2のスプロケットと、前記チェーンの前記第1、第2のスプロケット間の領域に生じている張力を検出する張力検出手段と、前記モータP及び前記モータQのいずれか一方又は双方の駆動を制御して、前記張力検出手段が検出する張力を所定範囲内に収める制御手段とを備える。
【0007】
前記目的に沿う第2の発明に係るチェーン張力調整方法は、モータPの駆動による第1のスプロケットの回転駆動によって巻き上げられて、連結された扉体を上昇させるチェーンを、モータQの駆動による第2のスプロケットの回転駆動によってチェーン収容機構に案内する水門開閉装置のチェーン張力調整方法において、前記チェーンの前記第1、第2のスプロケット間の領域に生じている張力を張力検出手段で検出する工程と、前記モータP及び前記モータQのいずれか一方又は双方の駆動を制御して、前記張力検出手段が検出する張力を所定範囲内に収める工程とを有する。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明に係る水門開閉装置は、チェーンの第1、第2のスプロケット間の領域に生じている張力を検出する張力検出手段と、モータP及びモータQのいずれか一方又は双方の駆動を制御して、張力検出手段が検出する張力を所定範囲内に収める制御手段とを備えるので、チェーンの弛みを緩和し又は取り除くことが可能である。
また、第2の発明に係るチェーン張力調整方法は、チェーンの第1、第2のスプロケット間の領域に生じている張力を張力検出手段で検出する工程と、モータP及びモータQのいずれか一方又は双方の駆動を制御して、張力検出手段が検出する張力を所定範囲内に収める工程とを有するので、チェーンの弛みを緩和し又は取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る水門開閉装置の説明図である。
図2】同水門開閉装置の説明図である。
図3】同水門開閉装置のモータの制御に関連する構成物の接続を示すブロック図である。
図4】変形例に係る張力検出手段の説明図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る水門開閉装置の説明図である。
図6】同水門開閉装置のモータの制御に関連する構成物の接続を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る水門開閉装置10は、モータ11(モータP)の駆動による第1のスプロケット12の回転駆動によってチェーン13を巻き上げて、チェーン13に連結された扉体Dを上昇させる装置である。以下、詳細に説明する。
【0011】
水門開閉装置10は、図1図2に示すように、基礎部Sに固定されたベース部材14と、ベース部材14に固定された筺体15と、筺体15に取り付けられたモータ11及び手動ハンドル17と、扉体Dに一端部が連結されたチェーン13と、チェーン13が掛けられた(係止された)第1のスプロケット12を備えている。
筺体15内には、モータ11の駆動力又は手動ハンドル17の回転力を第1のスプロケット12に伝える動力伝達機構18が設けられている。動力伝達機構18は、図示しないギア及び回転軸19等の複数の部材によって構成されている。なお、図2においては、筺体15の一部の記載を省略している。
【0012】
第1のスプロケット12は、筺体15内で水平に配された回転軸19に固定され、モータ11によって時計回りに回転駆動させられて、チェーン13を巻き上げ、扉体Dを上昇させる。そして、第1のスプロケット12は、モータ11によって反時計回りに回転駆動させられて、チェーン13を巻き下げ、扉体Dを下降させる。
手動ハンドル17は、動力伝達機構18に連結可能であり、モータ11が停電等で作動しない場合、作業員は、動力伝達機構18に連結された手動ハンドル17を回すことで、扉体Dを上昇させることができる。
【0013】
また、水門開閉装置10は、図1図2に示すように、チェーン13の他端部が取り付けられた対となったレール21、22と、レール21、22がそれぞれ固定された対となった支持部材23、24と、支持部材23、24に回転可能に取り付けられた回転軸25と、回転軸25に連結された第2のスプロケット26と、回転軸25と共に第2のスプロケット26を回転駆動させるモータ27(モータQ)を備えている。
【0014】
レール21、22、回転軸25及び第2のスプロケット26は、第1のスプロケット12の斜め上方(即ち、第1のスプロケット12より高い位置)に配置されている。回転軸25は水平に配置され、それぞれ水平に対し傾斜している直線状のレール21、22は平行に配されている。
チェーン13には、長手方向に間隔を空けて、対となる車輪28、29が取り付けられている。レール21には、図1に示すように、車輪28が掛け留められる複数の受け具30が固定され、レール22には、車輪29が掛け留められる複数の受け具31が固定されている。
【0015】
本実施の形態では、主として、レール21、22及び複数の受け具30、31によって、チェーン13を収容するチェーン収容機構33が構成されている。チェーン収容機構33は、対となる車輪28、29と対となる車輪28、29の間の領域が垂れ下がった状態でチェーン13を収める。
なお、支持部材23、24は支柱部材32に固定されている。
【0016】
チェーン13は、チェーン収容機構33に収められている領域から扉体Dに連結されている一端部に向かって順に、第2のスプロケット26に掛けられ、第2のスプロケット26より低い位置に設けられた案内スプロケット34、35に掛け渡され、案内スプロケット34、35より高い位置に配された第1のスプロケット12に掛けられている。
第2のスプロケット26は、モータ27の駆動によって時計回りに回転駆動して、掛けられているチェーン13をチェーン収容機構33に案内し、モータ27の駆動によって反時計回りに回転駆動して、チェーン収容機構33からチェーン13が送り出されるようにする。
【0017】
モータ27には、図3に示すように、モータ27の回転角を計測する回転角センサ37が取り付けられ、モータ27の駆動を制御するドライバコントローラ38が接続されている。モータ27は、ドライバコントローラ38から通電されて駆動する。ドライバコントローラ38は、回転角センサ37から計測値を得てモータ27の回転速度及び回転方向を検知し、駆動中のモータ27に供給されている電流の値(以下、「モータ27の電流値」とも言う)を基にモータ27に生じているトルクを計測する。
【0018】
ドライバコントローラ38には、モータ27の回転動作(回転速度及び回転方向)を制御するモーションコントローラ39が接続され、モーションコントローラ39には、第1のスプロケット12の回転角を計測する回転角センサ40と、モータ11、27等によって行う事項(例えば、扉体Dの上昇や下降)を決定する制御回路41が接続されている。本実施の形態では、モータ11として誘導モータを採用しており、モータ11は、制御回路41から電流及び指令信号を与えられて、時計回り又は反時計回りに回転する。モーションコントローラ39は、回転角センサ40の計測値から第1のスプロケット12の回転速度及び回転方向を検知する。なお、回転角センサ37、40として、エンコーダやレゾルバを採用可能である。
【0019】
扉体Dの上昇を開始する際、制御回路41は、モータ11を駆動させて第1のスプロケット12を時計回りに所定速度で回転駆動させ、モーションコントローラ39に対し信号を送信する。制御回路41から信号を受信したモーションコントローラ39は、ドライバコントローラ38にモータ27を駆動させるようにし、第2のスプロケット26は、モータ27の駆動によって時計回りに回転して、チェーン13をチェーン収容機構33に案内し始める。
【0020】
扉体Dの上昇が行われている際、モーションコントローラ39は、回転角センサ40の計測値から検出される第1のスプロケット12の回転速度を基に、ドライバコントローラ38にモータ27の駆動レベルを調整させ、第2のスプロケット26がチェーン収容機構33に送るチェーン13の送り速度と第1のスプロケット12がチェーン13を巻き上げる速度とが等しくなるように制御する。このとき、ドライバコントローラ38は、回転角センサ37の計測値を基にしたフィードバック制御により、モータ27が所定の駆動レベルを維持するようにすると共に、モータ27に供給している電流の値を検出する。
【0021】
ドライバコントローラ38は、モータ27の電流値が所定範囲を上回ったのを検出すると、チェーン13の第1、第2のスプロケット12、26の間の領域(以下、「スプロケット間領域」とも言う)に当該領域を引き伸ばす張力が過度に作用しているとみなし、モータ27の回転速度を下げて、モータ27の電流値が所定範囲内に収まるようにする。即ち、ドライバコントローラ38は、モータ27の電流値を基にチェーン13のスプロケット間領域に生じている張力を検出し、当該張力が所定範囲を上回っている際に、モータ27の駆動を制御して、当該張力を所定範囲内に収めるようにしている。本実施の形態では、ドライバコントローラ38がスプロケット間領域の張力を検出する張力検出手段及び検出された張力を所定範囲内に収める制御手段を兼ねている。
【0022】
一方、ドライバコントローラ38は、モータ27の電流値が所定範囲を下回ったのを検出すると、チェーン13のスプロケット間領域に過度な弛みが生じている(チェーン13のスプロケット間領域に生じている張力が正常値より小さい)とみなし、所定時間、モータ27の回転速度を上げて、モータ27の電流値(検出しているチェーン13のスプロケット間領域の張力)が所定範囲内に収まるようにし、チェーン13のスプロケット間領域に生じている弛みを緩和し又は取り除く。
【0023】
ドライバコントローラ38は、モータ27の回転速度を調整して、所定範囲外であったモータ27の電流値が所定範囲内に収まったのを検出した後、第2のスプロケット26によるチェーン13の送り速度及び第1のスプロケット12によるチェーン13の巻き上げ速度を等しくするモータ27の制御を再開する。
【0024】
ここで、ドライバコントローラ38によってモータ27の電流値が所定範囲を上回っているのが検出された際、制御回路41が、モータ11の回転速度を上げさせて、モータ27の電流値が所定範囲内に収まるようにしてもよく、ドライバコントローラ38によってモータ27の電流値が所定範囲を下回っているのが検出された際、制御回路41が、モータ11の回転速度を下げさせて、モータ27の電流値が所定範囲内に収まるようにしてもよい。この場合、ドライバコントローラ38が主として張力検出手段を構成し、制御回路41が主として制御手段を構成することとなる。
【0025】
ここまで、所定範囲外となっているモータ27の電流値を所定範囲内に収めるために、モータ11、27の一方の駆動を制御する旨を説明したが、モータ11、27それぞれの駆動を制御して(例えば、モータ11の回転速度を上げモータ27の回転速度を下げて、あるいは、モータ11の回転速度を下げモータ27の回転速度を上げて)、モータ27の電流値を所定範囲内に収めるようにすることもできる。
【0026】
従って、水門開閉装置10に適用されるチェーン張力調整方法は、モータ11(モータP)の駆動によるスプロケット12(第1のスプロケット)の回転駆動によって巻き上げられて、連結された扉体Dを上昇させるチェーン13を、モータ27(モータQ)の駆動によるスプロケット26(第2のスプロケット)の回転駆動によってチェーン収容機構33に案内する水門開閉装置10のチェーン張力調整方法であって、チェーン13のスプロケット間領域に生じている張力をドライバコントローラ38(張力検出手段の一例)で検出する工程と、モータ11、27のいずれか一方又は双方の駆動を制御して、ドライバコントローラ38が検出する張力を所定範囲内に収める工程とを有することとなる。
【0027】
また、扉体Dの下降を開始する際、制御回路41はモータ11の駆動を開始させ、モーションコントローラ39にドライバコントローラ38を通じてモータ27の駆動を開始させる。これによって、第1、第2のスプロケット12、26は反時計回りに所定速度で回転駆動し、第2のスプロケット26による回転駆動によってチェーン収容機構33からチェーン13が送り出される。
【0028】
扉体Dが下降の際、モーションコントローラ39は、回転角センサ40の計測値から検出する第1のスプロケット12の回転速度を基に、ドライバコントローラ38にモータ27の駆動レベルを調整させ、第2のスプロケット26がチェーン収容機構33からチェーン13を取得する速度と第1のスプロケット12がチェーン13を巻き下げる速度とが等しくなるようにする。このとき、ドライバコントローラ38は、回転角センサ37の計測値を基にしたフィードバック制御により、モータ27が所定の駆動レベルを維持するように制御する。本実施の形態では、扉体Dが下降の際、モータ27の電流値に応じて、チェーン13のスプロケット間領域の弛みを緩和し又は取り除く処理は行われない。
【0029】
ここで、ドライバコントローラ38は、モータ27の電流値を所定範囲内に収める処理(チェーン13のスプロケット間領域の弛みを緩和し又は取り除く処理)を扉体Dの上昇中に行わず、当該処理を扉体Dの停止中に行うようにしてもよい。その処理の具体例を以下に示す。
即ち、第1のスプロケット12を停止させた状態で、モータ27を駆動させて第2のスプロケット26を時計回りに回転駆動させ、計測されるモータ27の電流値が所定範囲を下回っていれば、第2のスプロケット26を時計回りに更に回転駆動させて、チェーン13のスプロケット間領域の弛みを緩和し又は取り除く。一方、モータ27の電流値が所定範囲を上回っていれば、モータ27の電流値が所定範囲内に収まるまで第2のスプロケット26を反時計回りに回転駆動させる。モータ27の電流値が所定範囲内であれば、第2のスプロケット26を停止させる。
【0030】
上述した本実施の形態では、ドライバコントローラ38が張力検出手段として機能しているが、ドライバコントローラ38とは別に、チェーン13のスプロケット間領域に生じている張力を検出する張力検出手段を設けてもよい。そのような張力検出手段として、例えば、図4に示すように、チェーン13のスプロケット間領域に押し付けられたギア42と、ギア42の変位を基に当該領域に生じている張力を計測する測定部43を有するテンション計測器44(即ち、チェーン13のスプロケット間領域に接触して当該領域に生じている量力を検出する計測器)が挙げられる。
【0031】
この場合、ドライバコントローラ38は、扉体Dが上昇する際だけでなく、扉体Dが下降する際にも、テンション計測器44が計測するチェーン13の張力が所定範囲内に収まるように、モータ27の駆動を制御する。よって、チェーン13のスプロケット間領域に弛みが生じている場合、扉体Dが上昇する際及び扉体Dが下降する際に、その弛みを緩和し又は取り除く処理が行われる。
【0032】
また、水門開閉装置10は、扉体Dが昇降する際、第1のスプロケット12の回転速度を基準にしてモータ27の駆動レベルを調整するが、これには限定されない。
以下、図5図6を参酌して、第1のスプロケット12の回転速度をモータ27の駆動レベルの調整の基準としない、本発明の第2の実施の形態に係る水門開閉装置50について説明する。なお、水門開閉装置50において、水門開閉装置10と同様の構成については同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0033】
水門開閉装置50は、図5図6に示すように、モータ11(モータP)の駆動による第1のスプロケット12の回転駆動によってチェーン13を巻き上げて、扉体Dを上昇させ、扉体Dの上昇の際に、モータ27(モータQ)の駆動による第2のスプロケット26の回転駆動によってチェーン13をチェーン収容機構33に案内する装置である。
水門開閉装置50は、図6に示すように、モーションコントローラ及び第1のスプロケット12の回転角を計測する回転角センサを有さず、モータ11、27の駆動は、主として、モータ27に接続されたドライバコントローラ51と、モータ11及びドライバコントローラ51に接続された制御回路52とによって制御される。
【0034】
扉体Dの上昇を行う際、制御回路52は、モータ11への通電を開始すると共に、ドライバコントローラ51に信号を送信する。これによって、モータ11は、第1のスプロケット12を時計回りに回転駆動させ、ドライバコントローラ51は、回転角センサ37の計測値を基にフィードバック制御を行って、モータ27を所定の回転数で回転させる。このとき、ドライバコントローラ51は、モータ27の電流値が所定範囲外であれば、モータ27の回転数を調整して、モータ27の電流値(チェーン13のスプロケット間領域の張力)が所定範囲内に収まるように制御する。従って、扉体Dを上昇させている際、仮に、チェーン13のスプロケット間領域に弛みが生じた場合でも、その弛みを緩和し又は取り除くことができる。
【0035】
そして、扉体Dを下降させる際、第1のスプロケット12は反時計回りに回転駆動し、第2のスプロケット26は、時計回りの方向に所定の力を作用させた状態で、チェーン13から与えられる力によって反時計回りに回転する。これによって、チェーン13のスプロケット間領域は、当該領域を引き伸ばす方向の力が作用した状態、即ち、弛みの発生を防止された状態が維持される。
本実施の形態では、ドライバコントローラ51が張力検出手段及び制御手段を兼ねているが、これに限定されず、例えば、制御手段として、ドライバコントローラを採用し、張力検出手段として、図4に示すテンション計測器44を採用してもよい。
【0036】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、チェーンの第1、第2のスプロケット間の領域に係止される案内スプロケットは1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
10:水門開閉装置、11:モータ、12:第1のスプロケット、13:チェーン、14:ベース部材、15:筺体、17:手動ハンドル、18:動力伝達機構、19:回転軸、21、22:レール、23、24:支持部材、25:回転軸、26:第2のスプロケット、27:モータ、28、29:車輪、30、31:受け具、32:支柱部材、33:チェーン収容機構、34、35:案内スプロケット、37:回転角センサ、38:ドライバコントローラ、39:モーションコントローラ、40:回転角センサ、41:制御回路、42:ギア、43:測定部、44:テンション計測器、50:水門開閉装置、51:ドライバコントローラ、52:制御回路、D:扉体、S:基礎部
図1
図2
図3
図4
図5
図6